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『星屑塵屑』 作者: ただの屍
「あんた死ぬわよ」霊夢が仏頂面で言った。
「ふうん」魔理沙が生返事をした。
霧雨魔理沙と博麗霊夢は博麗神社の縁側に並んで腰かけている。二人ともが暇を持て余していた。霊夢は何とはなしに魔理沙にお茶を出した。魔理沙は何とはなしに湯呑みを手に取る。魔理沙は湯呑みの中を覗き込む。そのお茶には茶柱が一本立っていた。魔理沙はそのお茶を一口飲んだ。二人ともが暇を持て余している。魔理沙は此処とは異なる何処か遠くの世界を見出そうとしていたし、霊夢は此処とは異なる何処か別の世界を見出そうとしていた。
「という事は、つまり、その、なんだ」魔理沙は湯呑みを置いて霊夢の顔を見つめた。「私が死ぬ、という事か」
「そうよ」霊夢が魔理沙の顔を見つめる。二人が向かい合う。「そして、あんたは今日中に必ず死ぬ」
「ふうん、そういう事か」魔理沙の両眼の焦点が奥の方向にずれて、霊夢の顔がぼやけてしまった。「どうしてそんな事になってしまったのだろうなあ」
「博麗の巫女であり東方Projectの主人公格である博麗霊夢という存在を介した事によって非現実的で不確かで淫らであった筈の虚構が俺は現実的だ俺は確定的だ俺は遥か昔から支配階級に鎮座している真理だ俺は決して誰にも有無を言わせないのだ俺は現実なんだと同意を誰彼にも求めている」霊夢が無表情で答えた。
「という事は、つまり、その、なんだ、きっと、アリスは己の自我に向かって大いに有利に歪んだ愛を私に押し付ける一方で病的で偏執的に捻じくれた愛を築き上げる事を二人の共同作業にしたいと望んでいるのだろうし文は妖怪の山に形成されているゲマインシャフト及び肥大する社会意志に身を埋めているのだろうから時には事件を起こし語られる側に回っているのだろうなあ」魔理沙の両眼の焦点が奥の方向へと際限なくずれていく。「どうしてそんな事になってしまったのだろうなあ」
「普通の魔法使いであり東方Projectの主人公格である霧雨魔理沙という存在を介した事によって非現実的で不確かで淫らであった筈の虚構が俺は現実的だ俺は確定的だ俺は遥か昔から支配階級に鎮座している真理だ俺は決して誰にも有無を言わせないのだ俺は現実なんだと同意を誰彼にも求めている」霊夢が事務的に言った。
「もしかしたら私が死なない限り今日という時間が終わりを迎えるときが訪れる事はないのだろうか」引きずり込まれるように奥へとずれていく魔理沙の両眼が結ぶ焦点はやがて虚無。虚無とは虚無であり如何なるものも存在しない。時間も空間も無く、虚無とは虚無であり如何なるものも存在しない。色も匂いも音も手応えも無く、虚無とは虚無であり如何なるものも存在しない。天も地も境も無く一切が虚無。「もしかしたら私が死ねば今日という時間の終わりが今すぐにでも訪れるのだろうか」
「あんた死ぬわよ」霊夢が仏頂面で言った。
「ふうん」と言いたかったが、魔理沙の嗄れた声は思うように言葉になってくれない。魔理沙はどうにか声を振り絞った。「ふうん」
年老いた霧雨魔理沙と博麗霊夢は博麗神社の縁側に並んで腰かけている。二人ともが暇を持て余していた。霊夢は何とはなしに魔理沙にお茶を出した。魔理沙は皺苦茶の右手で何とはなしに湯呑みを手に取る。魔理沙は湯呑みの中を覗き込む。そのお茶の中には別の湯呑みが千個入っていた。魔理沙はそのお茶を一口飲んだが味は良く分からなかった。二人ともが暇を持て余している。魔理沙は此処とは異なる何処か遠くの世界を見ているかのように呆けていた。霊夢は明確な意志で以って此処とは異なる何処か別の世界を見出そうとしていた。
「という事は、つまり、その、なんだ」声を絞りあげると手が震えだしたので魔理沙は湯呑みを置いて霊夢の顔を見つめた。「私は死ぬ、という事か」
「そうよ」霊夢が魔理沙の顔を見つめる。二人が向かい合う。霊夢は、皺と染みだらけになった魔理沙の顔を見た。「そして、あんたは今日中に必ず死ぬ」
「ふうん、そういう事か」今や魔理沙の両眼は役目を為さず、焦点も結ばずに瞼の内側でうろうろと彷徨っているだけである。魔理沙は、ぼやけきった世界を見た。「どうしてそんな事になってしまったのだろうなあ。ああ。もしかすると私が死なない限り今日という時間が終わりを迎えるときが訪れる事はないのだろうか。もしかしたら私が死ねば今日という時間の終わりが今すぐにでも訪れるのだろうか」
「虚構に由来する思考と行動を体現する者が主役であるならば物語に依存する都合の良い衝動と凶行という潤滑油に己の存在意義を見出す者が脇役なのだろうか」いつもと同じ声で霊夢が言った。
博麗神社に、抑揚も盛り上がりもクライマックスも見当たらない平坦で一様で不器用な風が吹いた。
「あんた死ぬわよ」霊夢が仏頂面で言った。
「ふうん」魔理沙が生返事をした。
霧雨魔理沙と博麗霊夢は博麗神社の縁側に並んで腰かけている。二人ともが暇を持て余していた。霊夢は何とはなしに魔理沙にお茶を出した。魔理沙は何とはなしに湯呑みを手に取る。魔理沙は湯呑みの中を覗き込む。そのお茶の中には虹が掛かっていた。魔理沙はそのお茶を一口飲んだ。二人ともが暇を持て余している。
魔理沙が突然立ち上がった。「という訳で、私はこれで」
そう言って階段へと向かう魔理沙を、霊夢は何も言わず見送った。
魔理沙は階段を下っている最中、上から十三段目で、乾き切っていない鳥の糞を踏みつけた。勢いよくテンポよく階段を下っていたので、魔理沙は足を滑らせてしまい、後頭部からぶつかっていくような回転運動を行った。魔理沙は後頭部を角ばった部分に強くぶつけ、致死体積を大きく上回っているのが一目で分かるほどの直角型の大きなへこみを作った。その衝撃で両眼が飛び出した。魔理沙は血を流しながら、重力に従って全身を無茶苦茶に使いながら階段を下りていった。
「あんた死ぬわよ」霊夢が仏頂面で言った。
「ふうん」魔理沙が生返事をした。
霧雨魔理沙と博麗霊夢は博麗神社の縁側に並んで腰かけている。二人ともが暇を持て余していた。霊夢は何とはなしに魔理沙にお茶を出した。魔理沙は何とはなしに湯呑みを手に取る。魔理沙は湯呑みの中を覗き込む。そのお茶の中で黒猫が眠っていた。魔理沙はそのお茶を一口飲んだ。二人ともが暇を持て余している。
魔理沙が突然立ち上がった。「という訳で、私はこれで」
そう言って階段へと向かう魔理沙を、霊夢は何も言わず見送った。
魔理沙は階段を一段飛ばしで下っていく。魔理沙は乾き切っていない鳥の糞を飛び越え、その後何事もなく無事に階段を下り終えた。
魔理沙は自宅まで歩いて帰る事にした。魔法の森にある自宅を目指し歩いて帰っている途中で、魔理沙は後頭部に打撃を受けそのショックで気絶してしまった。実はこういう状態は医学的には危険な状態なのである。
魔理沙が目覚めた時、魔理沙は少女的に危険な状態の下にあった。縄によって後ろ手に縛られ、両足を縛られている。周りには浮浪者の格好をした数人の男がいて、皆揃って下卑た笑いを浮かべている。
我が身に何が行われるか、魔理沙には容易に想像が付いた。フリーセックス地帯の幻想郷ではフリーセックスが盛んに行われているからである。ならばきっと、この浮浪者達は、浮浪者が少女を犯すという状況に興奮する性格の持ち主であり、また、緊縛、着衣もしくは衣服破棄、強姦という状況に興奮する性格の持ち主なのだろう。
魔理沙はこの状況を盛り上げるために、反抗する少女の演技を行おうとしたが、リーダー格らしい、左目に大きな傷のある男が懐から薬瓶を取り出し、魔理沙にとって見覚えのある錠剤を自身の掌に幾つか転がした時、魔理沙の演技は演技でなくなった。
その錠剤の効能を魔理沙は良く知っていた。その錠剤は魔理沙がマジックマッシュルームから作った麻薬であり、幻想郷に広まっている麻薬の一種である。魔理沙はその麻薬を、効果覿面副作用無用と謳って売り捌いていたが、勿論、麻薬には副作用が存在し、精神にも肉体にも害を与える。魔理沙が作った麻薬は、二十四時間以内に三粒以上服用した場合、更に具体的に言えば、肉体の体積に対して、自然解毒が行われていない未排泄の麻薬物質の割合が特定の値を超えてしまった場合、肉体に害を与える。魔理沙はおよそ十時間前にその錠剤を一粒服用した。魔理沙はその麻薬を、効果覿面副作用無用と謳って売り捌いていたが、勿論、麻薬には副作用が存在し、精神にも肉体に害を与える。だから、その錠剤を二十四時間以内に三粒以上服用した場合、更に具体的に言えば、肉体の体積に対して、自然解毒が行われていない未排泄の麻薬物質の割合が特定の値を超えてしまった場合、肉体に害を与える。魔理沙は恐怖した。
その男の掌にはいつの間にか錠剤が十数個のっていた。その錠剤の量は明らかに半数致死量を超えて致死量だった。男は笑っていた。
魔理沙は麻薬の危険性を訴え、説得を試み、命乞いをした。当然死にたくはなかった。
「お願いだから私の話を聞いてくれ。実はこの薬は副作用があって、そんなに飲んだら死んでしまうんだ。死んだら何にもならないじゃないか。お前達は私を抱きたいんだろ? 死んだ奴を抱いてもつまらないぞ。ダッチワイフと同じだ。一粒だったら飲んでも大丈夫だから、そうした方がお互いもっと気持良くなれるしさ。ねっ?」
しかし浮浪者達は死姦に興奮を覚える性格の持ち主であった為、魔理沙の言葉に耳を貸す事はなかった。左目に大きな傷のある男が声を上げて笑った。
「あんた死ぬわよ」霊夢が仏頂面で言った。
「ふうん」魔理沙が生返事をした。
霧雨魔理沙と博麗霊夢は博麗神社の縁側に並んで腰かけている。二人ともが暇を持て余していた。霊夢は何とはなしに魔理沙にお茶を出した。魔理沙は何とはなしに湯呑みを手に取る。魔理沙は湯呑みの中を覗き込む。そのお茶の中では小さな泡が絶え間なく発生していた。魔理沙はそのお茶を一口飲んだ。二人ともが暇を持て余している。
魔理沙が突然立ち上がった。「という訳で、私はこれで」
そう言って階段へと向かう魔理沙を、霊夢は何も言わず見送った。
魔理沙はそのまま自宅まで空を飛んで移動した。魔理沙は家に入るとそのままベッドに飛び込み、眠りに沈んだ。
魔理沙は夢を見た。魔理沙は夢の中で、自己を縛る宇宙から脱却し、全てという全てを理解したような気がしたが、目覚めた時には夢の中で知った全てという全てを忘れてしまっていた。魔理沙は四時間程眠っていた。魔理沙が目覚めた時、魔理沙は少女的に危険な状態の下にあった。縄によって後ろ手に縛られ、両足を縛られている。ベッドの横にはアリス・マーガトロイドが立っていた。アリスの両眼は役目を為してはいない、焦点も結ばずに瞼の内側でうろうろと彷徨っているだけである。
「ああ。やっぱり」魔理沙は嘆息した。
魔理沙の言葉に対してアリスは不快を露わにする。「何がやっぱりなのよ」
魔理沙は嫌々ながらも、状況を確かめるように一言ずつはっきりと口に出した。「やっぱりとは、つまり、その、なんだ、きっと、私は貴女を愛しているから貴女も私を愛せ、と言うんだろう」
「そうよ」アリスは唇の片方だけを吊り上げて笑った。「そうよ。分かってるじゃない」
「だから、駄目なんだ」魔理沙は迷惑そうに言った。
「あら、どうして」アリスは左目を時計回りに二周させ、右目を反時計回りに三周させた。
「私にはな、お前の言う愛の形がさっぱり理解できないんだ。私にはな、お前が信じている愛の形が受け入れられないんだ」魔理沙は心の底からそう思っていたので、心の底からそう言った。
「あら、どうして」アリスは左目を時計回りに二周させ、右目を反時計回りに三周させた。
魔理沙はアリスを睨みつける。「お前の言う愛なんてのは嘘だ。まやかしだ。夢だ。幻だ。伝統だ」
アリスは口角を吊り上げ歯をがちがちと鳴らしながら笑っていた。
「もはやそんな言葉は私に何の感動も与えてはくれない。私は全てという全てを知った。そこでは嘘も本当も夢も現も表も裏も内も外もこれもそれもあれもこれらもそれらもあれらも、つまりどれもが一緒。私達の存在が小さすぎるから差異を認めてしまうだけで」
魔理沙はアリスの言葉を聞いた瞬間、手足を縛っている縄を引きちぎった。立ち上がり、アリスに言った。
「じゃあ、真も偽も虚も実も有も無も点も線も円も方も波も粒も一緒なのか」
アリスはにっこりと笑った。
「ええ、真も偽も虚も実も有も無も点も線も円も方も波も粒も一緒なのよ」
アリスはにっこりと笑った。
「ええ、上も下も左も右も前も後も東も西も南も北も一緒なのよ」
アリスはにっこりと笑った。
「ええ、零も一も二も三も四も五も六も七も八も九も一緒なのよ」
アリスはにっこりと笑った。
「ええ、靈も封も夢も幻も怪も紅も妖も永も花も風も地も星も神も一緒なのよ」
アリスはにっこりと笑った。
「ええ、赤も橙も黄も緑も青も藍も紫も一緒なのよ」
アリスはにっこりと笑った。
「ええ、日も月も火も水も木も金も土も一緒なのよ」
アリスはにっこりと笑った。
「ええ、水も金も地も火も木も土も天も海も冥も一緒なのよ」
アリスはにっこりと笑った。
「ええ、何も彼も一緒なのよ」
「うああああああ!」魔理沙は本棚から無造作に幾つか取り出し、アリスに投げつけた。本はアリスに当たる事なく壁にぶつかった。「だったら出ていけ! お前に言わせれば誰も彼も一緒なんだろう!」
アリスは食器棚に近づき、コップを幾つか取り出し、床に叩きつけた。コップが例外なく砕け散っていく。
「ええ、そうよ。確かにそういう事になるわ。そうよね、そう言われたら、そう思っちゃうわよねえ。だって、そういう事だもの。そう言われたら、そう思うのも無理もない話だわ。つまりは、そういう事ですもの。そう思うのも仕方がない。結局はそういう事なのだから、そう思うのが自然。そうとしか言いようがないわ。そんな事、当り前よね。だからあなたは、お前がそう言うのなら、お前もそうあるべきだ、そういう事が言いたいんでしょう。ねえ、そうなんでしょう。そうだと思ったんでしょう。そうだと言うんでしょう。そんな事が言いたいんでしょう。ねえ、そうなの」
魔理沙は本棚から、千ページを超しているであろう分厚い本を両手で取り出し、アリスに投げつけた。千ページを超しているであろう分厚い本はアリスに当たる事なく、勢いよく壁を突き破った。
「そうだ」
アリスは食器棚から、高価そうな皿を数枚取り出し、床に叩きつけた。高価そうな皿が例外なく砕け散っていく。
「確かに全てが同じなら私の相手は誰でも構わない筈だし、そもそも相手がいなくてもいい筈だし、もっと遡れば全てという全ての意味が無くなるわ。だから私はつまらない真実なんか決して受け入れやしない。勝手に自分で意味を見出すわ。真実を尽くし辿りついた果てから生まれるは虚構。永琳や紫でさえもそうしているように、私、いや、私達もそうするだけ」
魔理沙は本棚に乱暴に両手を差し入れ、振り回し、全ての本を床にぶちまける。
「黙れ! 孤独魔女!」
アリスは食器棚に乱暴に両手を差し入れ、振り回し、全ての食器を床にぶちまける。
「あら、私が電子欠損化合物だと言いたいの? まるで自分が超原子価化合物であるかのような言い草ね。まあ、そういうところも好きなんだけど。ああ、もしかして私が孤立電子対だと言いたかったのかな。でも孤立電子対があるなら配位結合を形成できるじゃない。でも、強力で安定な共有結合の方が好みかしら? だって、六重結合できるんだもの、ロマンチックよねえ。でも金属結合だって捨て難い。ファンデルワールス結合は弱々しいけど嫌いにならないで。イオン結合によって出来た結晶が脆いのは硬いからなの。硬いから脆いの。ガラスだって同じ。ねえ、水素結合の事はどう思う?」
魔理沙は空になった本棚を持ち上げ、アリスに投げつけた。本棚はアリスに当たる事なく、玄関戸をぶち壊して家の外へ飛び出した。
「もう私の前で喋るな! 臭いんだよ! 糞に塗れたその肛門を私の目の前で二度と鳴らすな!」
アリスは空になった食器棚を持ちあげ、床に叩きつけた。木で出来た食器棚が大きな音を立てて塵になった。
「いくら私でも、その無理解頑固一徹厚顔無恥無知蒙昧愚図愚鈍大馬鹿大阿呆な態度だけは絶対に許せない。もう、あなたの主体性を取り上げるしかない」
アリスは左目を時計回りに二周させ、右目を反時計回りに三周させた。魔理沙の家の至る所から、沢山の人形が、美味そうな餌を期待するゴキブリのように這い出てきて、アリスの下に集った。アリスが左目を時計回りに二周させ、右目を反時計回りに三周させると、人形の群れが一斉に魔理沙に襲いかかった。
「あんた死ぬわよ」霊夢が仏頂面で言った。
「ふうん」魔理沙が生返事をした。
霧雨魔理沙と博麗霊夢は博麗神社の縁側に並んで腰かけている。二人ともが暇を持て余していた。霊夢は何とはなしに魔理沙にお茶を出した。魔理沙は何とはなしに湯呑みを手に取る。魔理沙は湯呑みの中を覗き込む。そのお茶には深い皺が平行に三本刻まれていた。魔理沙はそのお茶を一口飲んだ。二人ともが暇を持て余している。
魔理沙が突然立ち上がった。「という訳で、私はこれで」
そう言って階段へと向かう魔理沙を、霊夢は何も言わず見送った。
魔理沙はそのまま人里まで空を飛んで移動した。
人里には一匹の鴉天狗がいた。魔理沙には、その鴉天狗が新聞の記事になるような事件を求めているように見えた。
あの鴉天狗は射命丸文に似ている、外見も雰囲気も本人そっくりだと魔理沙が考えている間に、その鴉天狗が魔理沙を見つけた。
「魔理沙さーん」
そう言いながら、こっちに近づいてくる鴉天狗。その声質と歩き方、私を知っている事からして、あの鴉天狗は文で間違いなさそうだ、と魔理沙が考えている間に、文と思わしき鴉天狗が魔理沙の目の前まで来ていた。実際、その鴉天狗は射命丸文であった。
魔理沙は「よう、文」と声を掛けようとしたが、文の手刀が既に魔理沙の首を刎ねていた。一瞬の後、魔理沙の首が地面に転がり、次いで胴体が崩れ落ちた。
文が大声を張り上げる。「さあさあ皆さん、人が一人、午後の人里、雑踏が往来する平和な日常の真っただ中で殺されました! 通り魔が現れました! 殺人事件が起きましたよ! これは大事件だ! こいつは凶悪犯罪だ! きっと極悪な犯人の仕業に違いない! 大変な事になったぞ! 面白い事になったぞ! さあさあさあさあ! 殺人事件の第一目撃者に成りたい人は今すぐここに来てください! 関係者として出演したい方も集まってください! 犯人希望の方は今すぐ来ないと枠が埋まってしまいますよ! さあ、あんたらのつまらない人生に刺激の花を添えてやりましょう! その花言葉は虚構!」
人里の至る所から、沢山の人間が、美味そうな餌を期待するゴキブリのように這い出てきて、文の下に集った。
「あんた死ぬわよ」霊夢が仏頂面で言った。
「ふうん」魔理沙が生返事をした。
霧雨魔理沙と博麗霊夢は博麗神社の縁側に並んで腰かけている。二人ともが暇を持て余していた。霊夢は何とはなしに魔理沙にお茶を出した。魔理沙は何とはなしに湯呑みを手に取る。魔理沙は湯呑みの中を覗き込む。そのお茶には目に見えない塵が浮かんでいた。魔理沙はそのお茶を一口飲んだ。二人ともが暇を持て余している。それから二人は五時間程、暇を持て余した。
魔理沙が突然立ち上がった。「という訳で、私はこれで」
そう言って階段へと向かう魔理沙を、霊夢は何も言わず見送った。
魔理沙はそのままアリスの家まで空を飛んで移動した。
アリスの玄関戸には鍵が掛かっていなかった。
「あれ、確かアリスの家には大抵、施錠魔法が掛かっている筈だが」
そのまま魔理沙は戸を開ける。戸を開けたすぐその先に、見るも無残な状態のアリスが床に転がっていた。アリスの体には強姦された形跡が見られた。いや、強姦という表現はあまりよろしくない。アリスの体には乱暴された形跡が見られた。アリスの体は所々欠けていて、残された部分も所々は生理機能を失っているように思えた。いや、この表現はあまりよろしくない。アリスはアリスされていた。そして乱暴されてアリスされたアリスの横には、手を血に染めた一匹の鴉天狗がいた。魔理沙には、その鴉天狗がアリスを乱暴しアリスした犯人であるかのように見えた。
あの鴉天狗は射命丸文に似ている、外見も雰囲気も本人そっくりだと魔理沙が考えている間に、その鴉天狗が魔理沙を見つけた。
「魔理沙さーん」
そう言いながら、こっちに近づいてくる鴉天狗。その声質と歩き方、私を知っている事からして、あの鴉天狗は文で間違いなさそうだ、と魔理沙が考えている間に、文と思わしき鴉天狗が魔理沙の目の前まで来ていた。実際、その鴉天狗は射命丸文であった。
魔理沙は「おい、文」と声を掛けようとしたが、文の手刀が既に魔理沙の首を刎ねていた。一瞬の後、魔理沙の首が地面に転がり、次いで胴体が崩れ落ちた。
文が大声を張り上げる。「こいつは面白い記事になるぞ。面白い面白い、実に面白い記事になるぞ。ああ、面白い記事になりそうだ。必ずや面白い記事になるに違いない。早く、早く。早く記事になれ。ああ。今回は私が記者担当じゃなくて事件担当なのが悔しい、物凄く悔しい。口惜しい。恨めしい。残念無念。私なら最高に面白い記事にして一面を飾ってやるのに。ああ、周りに人がいない。これでは、事件発覚が遅れるかもしれない。こんな事件を眠らせておくなんて。ああ、ああ。悔しい。物凄く悔しい。今すぐにでも面白い記事になりそうな事件だったのに。面白い記事になるに違いないのに」
「あんた死ぬわよ」霊夢が仏頂面で言った。
「ふうん」魔理沙が生返事をした。
霧雨魔理沙と博麗霊夢は博麗神社の縁側に並んで腰かけている。二人ともが暇を持て余していた。霊夢は何とはなしに魔理沙にお茶を出した。魔理沙は何とはなしに湯呑みを手に取る。魔理沙は湯呑みの中を覗き込む。そのお茶は強い光を激しく何度も点滅させた。魔理沙はそのお茶を一口飲んだ。二人ともが暇を持て余している。それから二人は六時間程、暇を持て余した。
魔理沙が突然立ち上がった。「という訳で、私はこれで」
そう言って階段へと向かう魔理沙を、霊夢は何も言わず見送った。
魔理沙はそのまま屋台まで空を飛んで移動した。
屋台のそばで着地した魔理沙はそのまま屋台に入ろうとしたが、そこで、席に座り、魔理沙に背を向ける一匹の鴉天狗を見た。魔理沙には、その鴉天狗が仕事を終えて屋台で一杯やっている最中のように見えた。
あの鴉天狗は射命丸文に似ている、外見も雰囲気も本人そっくりだと魔理沙は考えた。実際、その鴉天狗は射命丸文であった。
魔理沙は屋台に背を向け、ゆっくりと家に向かって歩き出した。
魔理沙は自宅まで歩いて帰る事にした。魔法の森にある自宅を目指し歩いて帰っている途中で、魔理沙は後頭部に打撃を受けそのショックで気絶してしまった。実はこういう状態は医学的には危険な状態なのである。
魔理沙が目覚めた時、魔理沙は少女的に危険な状態の下にあった。縄によって後ろ手に縛られ、両足を縛られている。周りには浮浪者の格好をした数人の男がいて、皆揃って下卑た笑いを浮かべている。
我が身に何が行われるか、魔理沙には容易に想像が付いた。フリーセックス地帯の幻想郷ではフリーセックスが盛んに行われているからである。ならばきっと、この浮浪者達は、浮浪者が少女を犯すという状況に興奮する性格の持ち主であり、また、緊縛、着衣もしくは衣服破棄、強姦という状況に興奮する性格の持ち主なのだろう。
魔理沙はこの状況を盛り上げるために、反抗する少女の演技を行おうとしたが、リーダー格らしい、左目に大きな傷のある男が懐から薬瓶を取り出し、魔理沙にとって見覚えのある錠剤を自身の掌に幾つか転がした時、魔理沙の演技は演技でなくなった。
その錠剤の効能を魔理沙は良く知っていた。その錠剤は魔理沙がマジックマッシュルームから作った麻薬であり、幻想郷に広まっている麻薬の一種である。魔理沙はその麻薬を、効果覿面てきめん副作用無用と謳って売り捌いていたが、勿論、麻薬には副作用が存在し、精神にも肉体にも害を与える。魔理沙が作った麻薬は、二十四時間以内に三粒以上服用した場合、更に具体的に言えば、肉体の体積に対して、自然解毒が行われていない未排泄の麻薬物質の割合が特定の値を超えてしまった場合、肉体に害を与える。魔理沙はおよそ十六時間前にその錠剤を一粒服用した。魔理沙はその麻薬を、効果覿面副作用無用と謳って売り捌いていたが、勿論、麻薬には副作用が存在し、精神にも肉体に害を与える。だから、その錠剤を二十四時間以内に三粒以上服用した場合、更に具体的に言えば、肉体の体積に対して、自然解毒が行われていない未排泄の麻薬物質の割合が特定の値を超えてしまった場合、肉体に害を与える。魔理沙は恐怖した。
その男の掌にはいつの間にか錠剤が十数個のっていた。その錠剤の量は明らかに半数致死量を超えて致死量だった。男は笑っていた。
魔理沙は麻薬の危険性を訴え、説得を試み、命乞いをした。当然死にたくはなかった。
「お願いだから私の話を聞いてくれ。実はこの薬は副作用があって、そんなに飲んだら死んでしまうんだ。死んだら何にもならないじゃないか。お前達は私を抱きたいんだろ? 死んだ奴を抱いてもつまらないぞ。ダッチワイフと同じだ。一粒だったら飲んでも大丈夫だから、そうした方がお互いもっと気持良くなれるしさ。ねっ?」
しかし浮浪者達は死姦に興奮を覚える性格の持ち主であった為、魔理沙の言葉に耳を貸す事はなかった。左目に大きな傷のある男が声を上げて笑った。
「あんた死ぬわよ」霊夢が仏頂面で言った。
「ふうん」魔理沙が生返事をした。
霧雨魔理沙と博麗霊夢は博麗神社の縁側に並んで腰かけている。二人ともが暇を持て余していた。霊夢は何とはなしに魔理沙にお茶を出した。魔理沙は何とはなしに湯呑みを手に取る。魔理沙は湯呑みの中を覗き込む。そのお茶の中では美しい桜の花が咲いていた。魔理沙はそのお茶を一口飲んだ。二人ともが暇を持て余している。それから二人は六時間程、暇を持て余した。
魔理沙が突然立ち上がった。「という訳で、私はこれで」
そう言って階段へと向かう魔理沙を、霊夢は何も言わず見送った。
魔理沙はそのまま屋台まで空を飛んで移動した。
屋台のそばで着地した魔理沙はそのまま屋台に入ろうとしたが、そこで、席に座り、魔理沙に背を向ける一匹の鴉天狗を見た。魔理沙には、その鴉天狗が仕事を終えて屋台で一杯やっている最中のように見えた。あの鴉天狗は射命丸文に似ている、外見も雰囲気も本人そっくりだと魔理沙が考えている間に、その鴉天狗が魔理沙を見つけた。
「魔理沙さーん」
そう言いながら、手招きする鴉天狗。その声質と、私を知っている事からして、あの鴉天狗は文で間違いなさそうだ、と魔理沙は考え、その鴉天狗のそばに腰かけた。実際、その鴉天狗は射命丸文であった。
魔理沙は席に着くとまずは酒を注文した。そして、そばに座っている文を見た。「よう、文。仕事帰りか?」
「そうよ。今しがた仕事を終えたばかり。そしてここに来たばかり」
今さっきここに来て、魔理沙より先に酒を頼んでいたらしい文に酒が出され、魔理沙に酒が出された。
酒が進むと、文が愚痴をこぼした。
「面白い記事になりそうな面白い事件があるんだけど、どうも記事になるのが遅れそうで、それが悔しくて堪らない」
「文は妖怪の山に形成されているゲマインシャフト及び肥大する社会意志に身を埋めている身だから仕方ないさ」
「そりゃあ、まあ、そうなんだけどさあ」
「社会の中で暮らしていくには超自我が大切なんだ。今夜は愚痴ぐらいなら聞いてやるよ」
「それじゃあ、私もあんたの愚痴を聞いてあげようか」
「面白い物を蒐集する癖があるんだけど、どうやらそろそろ家には入りきらなくなりそうで、それが悔しくて堪らない」
「魔理沙は自己意識に形成されているエス及び肥大する欲動に身を埋めている身だから仕方がない」
「そりゃあ、まあ、そうなんだけどさあ」
「一人で暮らしていくにも超自我は大切なんだよ。今夜は愚痴ぐらいなら聞いてあげる」
二人は、酒を飲み交わし、愚痴不満冗談本音をこぼし合う。
「あんたが死んだら、私が最高に面白い記事にして一面を飾ってあげよう」
「そいつは、死ぬまで考えたくない話だなあ」
やがて二人の酔っ払いは別れる。
魔理沙は屋台から自宅まで空を飛んで移動した。魔理沙は家に入るとそのままベッドに飛び込み、眠りに沈んだ。
魔理沙は夢を見た。魔理沙は夢の中で、自己を縛る宇宙から脱却し、全てという全てを理解したような気がしたが、目覚めた時には夢の中で知った全てという全てを忘れてしまっていた。魔理沙は日付の変わる一時間前に目を覚ました。魔理沙が目覚めた時、魔理沙は少女的に危険な状態の下にあった。縄によって後ろ手に縛られ、両足を縛られている。ベッドの横には博麗霊夢が立っていた。霊夢の両眼は役目を為してはいない、焦点も結ばずに瞼の内側でうろうろと彷徨っているだけである。
「いかなる理由があろうとも、お前はこれから一方的に殺されるんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ」
霊夢が右腕を振り上げた。その手には鉞が力強く握り締められていた。
「あんた死ぬわよ」霊夢が仏頂面で言った。
「ふうん」魔理沙が生返事をした。
霧雨魔理沙と博麗霊夢は博麗神社の縁側に並んで腰かけている。二人ともが暇を持て余していた。霊夢は何とはなしに魔理沙にお茶を出した。魔理沙は何とはなしに湯呑みを手に取る。魔理沙は湯呑みの中を覗き込む。そのお茶には蟻が何匹か浮いていた。魔理沙は湯呑みを投げ捨てた。魔理沙は霊夢に体を向け、左手で霊夢の顔をこちらに向けさせ、右手で霊夢の両眼を潰した。霊夢が縁側から転げ落ち、のたうち回った。
魔理沙が立ち上がった。「という訳で、私はこれで」
そう言って階段へと向かう魔理沙に対して、霊夢は何も言えなかった。
魔理沙はそのまま地底界まで空を飛んで移動した。
魔理沙は地底の隅で蹲ったまま霊夢から身を隠し続けた。しかし、何秒何分何時間何回何十回何百回時間が経っても今日という日が終わらなかったので魔理沙は恐怖して何秒何分何時間何回何十回何百回時間ずっと震え続けた。それから何秒何分何時間何回何十回何百回時間が経ってからようやく体の震えが収まったので、魔理沙は自宅まで空を飛んで移動した。魔理沙は家に入るとそのままベッドに飛び込み何秒何分何時間何回何十回何百回時間横になっていたが眠りに就く事はできなかった。しかし、何秒何分何時間何日何回何十回何百回時間が経っても今日という日が終わらなかったので魔理沙は恐怖して何秒何分何時間何回何十回何百回時間ずっと震え続けた。それから何秒何分何時間何回何十回何百回時間が経ってからようやく体の震えが収まったので、やっと魔理沙は眠りに就く事ができた。
魔理沙は夢を見た。魔理沙は夢の中で、自己を縛る宇宙から脱却し、全てという全てを理解したような気がしたが、目覚めた時には夢の中で知った全てという全てを忘れてしまっていた。魔理沙は日付の変わる一時間前に目を覚ました。魔理沙が目覚めた時、魔理沙は少女的に危険な状態の下にあった。縄によって後ろ手に縛られ、両足を縛られている。ベッドの横には博麗霊夢が立っていた。霊夢の両眼はくり抜かれており、いかなる役目も為さない。霊夢の顔面は赤黒く濁っている。とっくの昔に両眼から流れ尽くされた筈の血が未だに顔面を覆い、とっくの昔に両眼から流れ尽くされた筈の血が未だに顔面にへばりついている。
「いかなる理由があろうとも、お前はこれから一方的に殺されるんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ」
霊夢が右腕を振り上げた。その手には鉞が力強く握り締められていた。
「あんた死ぬわよ」霊夢が仏頂面で言った。
「ふうん」魔理沙が生返事をした。
霧雨魔理沙と博麗霊夢は博麗神社の縁側に並んで腰かけている。二人ともが暇を持て余していた。霊夢は何とはなしに魔理沙にお茶を出した。魔理沙は何とはなしに湯呑みを手に取る。魔理沙は湯呑みの中を覗き込む。そのお茶は腐っていた。魔理沙は湯呑みを投げ捨てた。魔理沙は霊夢に体を向け、左手で霊夢の顔をこちらに向けさせ、右手で霊夢の両眼を潰した。霊夢が縁側から転げ落ち、のたうち回った。魔理沙は霊夢に跨り、顔面を殴打した。非力な魔理沙がどれだけ必死に殴っても霊夢は死ななかったが、やがては餓死した。霊夢が餓死すると、魔理沙は博麗神社の中に入って包丁を探した。入ってすぐの卓袱台の上に包丁と昼飯があった。魔理沙は神社の中を隈なく探したが、包丁も食べ物も卓袱台の上の分だけしかなかった。その日暮らしの霊夢らしい、と魔理沙は思った。魔理沙は卓袱台の前に腰をおろし、昼飯を食べた。昼飯は握り飯が二つと干し肉が一切れだった。美味かった。魔理沙は昼飯を食べ終えると、包丁を手にして霊夢の下へと向かった。その包丁の刃渡りは長かった。その包丁は人体なんか容易く切れそうに思えた。魔理沙は死んだ霊夢を見て覚悟を決める。魔理沙は包丁を霊夢の首に当て、膝を使って押し込んだ。霊夢の顔が包丁を支点にして起き上がり、魔理沙の眼前に迫った。覚悟を決めたところで結局、魔理沙は殺人に関して処女であった。自分が散々殴って跡形もなく変形させた霊夢の顔が、魔理沙の覚悟を跡形もなく吹き飛ばし、処女膜を強引に破って、中を滅茶苦茶に犯した。魔理沙の内臓が必死に暴れ回り、さっき食べた昼飯を吐き出させた。吐き出す物が無くなると魔理沙はぎゃあぎゃあ喚いた。首を切り落とすのはもう無理だと思った。魔理沙は霊夢から逃げ出し、自宅まで空を飛んで移動した。魔理沙は家に入るとそのままベッドに飛び込み、気を失うように眠った。魔理沙は夢を見た。魔理沙は夢の中で、自己を縛る宇宙から脱却し、全てという全てを理解したような気がしたが、目覚めた時には夢の中で知った全てという全てを忘れてしまっていた。四時間程眠ったような気がしたが、実際には時間は一秒たりとも進んでいなかった。
魔理沙は気を取り直し昼飯を摂り直してから、博麗神社まで空を飛んで移動した。博麗神社には霊夢の屍体が、魔理沙が逃げ出した時と全く変わらない姿のままで放置されていた。霊夢の屍体は死後硬直すら始まっていなかった。霊夢の首には置き残された包丁が刺さっていた。新鮮な血が流れ出ていた。時間が事態を進めてくれる事は永遠にないのだ。魔理沙の全身の毛が逆立った。
魔理沙は霊夢の首の切断を再開する。魔理沙には霊夢の首の切断を再開するしかなかった。魔理沙は殺人に関してはもう処女ではない。ぎゃあぎゃあ喚き、血を見るなりすっ飛んで逃げ出したあの頃の魔理沙ではない。そうだ。あの頃の私ではない。魔理沙は覚悟を決める。魔理沙は包丁を霊夢の首に当て、膝を使って押し込んだ。刺すような恐怖はもう無かったが、殺人行為から生まれる生理的嫌悪感がただただ生まれ続けた。膝から伝わるごりごりした感触ああこれは骨だ気持ち悪い首から流れる血吹き出す血嫌な臭い嫌だ嫌だ手が汚れる顔が汚れる全身が汚れる包丁が首に埋まる膝が首に触れる首ががくがく揺れて膝に触れる両側から挟まれてああああああ気持ち悪い霊夢の目潰れてぺしゃんこの目ぷらぷら揺れる舌がぷらぷら揺れるああああああああああああ気持ち悪い両膝で包丁を押す両手を地に付ける霊夢の顔が目の前にあって私は土下座しているみたいだ両膝で交互に同時に交互に同時に揺さぶって揺さぶって押す押す押す早く早く早く早く死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねああああああああああああああああああああああああああああああああああもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だこっちを私を見るな見るな見るな見るな見るな許して許して許して許して許して許してごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい私は泣いていた。
霊夢の首を切り落とした後、境内の中にいつの間にか出来ていた大きな穴と土の山を魔理沙は見つけた。境内の中にいつの間にか出来ていた大きな穴に霊夢の屍体を落とした。魔理沙は土の山から土を霊夢の屍体に被せていく。霊夢が土によって完全に見えなくなった時、魔理沙は唐突に強烈な吐き気を感じた。土砂物に吐瀉物が降り掛かる。魔理沙はを昼飯を吐き終えてからは血を吐き掛けながら、土を掛けて穴を完全に埋めた。全てが終わった時、日付の変わる一時間前になっていた。
魔理沙はゆっくり立ち上がった。「という訳で、私はこれで」と言い残す気力も無かった。ふらふらと階段へと向かった。
魔理沙はそのまま自宅までよろよろと空を飛んで移動した。魔理沙は家に入るとそのままベッドに飛び込み、死人のように眠った。
魔理沙は夢を見た。魔理沙は夢の中で、自己を縛る宇宙から脱却し、全てという全てを理解したような気がしたが、突然霊夢が夢の中に現れた。その衝撃で、夢の中で知った全てという全てを忘れてしまった。夢の場面が強制的に切り替わった。魔理沙は自宅で目を覚ます夢を見ている。魔理沙は自分が少女的に危険な状態の下にある事に気付いた。縄によって後ろ手に縛られ、両足を縛られている、という夢を見ている。ベッドの横には博麗霊夢が立っていた。いや、霊夢ではなかった。何故霊夢だと思ったのか魔理沙自身にも分からない。ベッドの横には虚無が広がっていた。虚無とは虚無であり如何なるものも存在しない。時間も空間も無く、虚無とは虚無であり如何なるものも存在しない。色も匂いも音も手応えも無く、虚無とは虚無であり如何なるものも存在しない。天も地も境も無く一切が虚無。
博麗霊夢、霧雨魔理沙、アリス・マーガトロイドの死は、妖怪の山に住む天狗達全ての虚構思考を奮い立たせ三人の死を面白く想像させ面白い記事を書かせ面白い新聞を発行させた。天狗達の書いた面白い新聞は多くの者に読まれ、しばらくの間、誰もが噂話に花を咲かせた。議論めいた言葉が何処においても誰彼の間においても交わされたが、事件の検証だけは遂に一度も行われなかった。誰もがつまらない真実など知りたくなかったからである。誰もが咲かせた噂話の花。その花言葉は虚構。
元ネタは「虚人たち」と「ダンシング・ヴァニティ」。
ただの屍
- 作品情報
- 作品集:
- 27
- 投稿日時:
- 2011/07/14 08:09:19
- 更新日時:
- 2012/01/30 19:18:38
- 分類
- 星屑なる産廃が如く輝く産廃なる塵屑
よく読んでも、斜め読みしても、訳分からん。
細切れにして咀嚼しても、丸呑みしても、消化不良。
上手いと思っても、下手だと思っても、これは嘘偽りの物語。
元ネタ初めて聞いた 元ネタ的にはこれは魔理沙の走馬灯なのか