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『幻想郷を愛する皆様は、どうぞこちらへ』 作者: あまぎ
※このSSは同作品集「招待状をお持ちの方は、どうぞこちらへ」の続きです。
こちらから読み始めても特に問題はありませんが、もし興味がありましたら、そちらも併せて宜しくお願い致します。
「――――」
少女は、眼下で燃えさかる炎を静かに見詰めていた。
煌々と真っ赤に輝く炭。
ゆらゆらと絶えず姿を変え続ける紅蓮の炎柱。
垂らした髪の焼け付く音と、熱の籠もった独特の火の匂い。
身じろぎ一つない。
そこはただ定期的な瞬きがあり、規則正しい呼吸があり、またそれに合わせて彼女の胸が小さく揺れるだけだった。
薪(たきぎ)がはぜた。
細やかな赤い火の粉が数条、薄暗闇に舞い上がっては消えていく。
だが時折、少女の顔にまで届く火の粉があった。その度に少女の柔肌は僅かな火傷を負い、灰の跡を点々と増やしていく。
けれど少女は何も言わず、やはりその黒い瞳の中に炎のゆらぎを捉え続けるだけであった。
再び薪がはぜる。
少女の無反応さに業を煮やしたかのように、炎の海が一層多くの火の粉を吐き出した。
燐光を放って立ち上る火の粉の曲線、それが幾条も束ねられて火花となり、さらにそれが群となって目に見える熱気と化す。
闇を孕んだ大気が熱気に呑まれて湾曲する。だが、劫火が放つ赤光はそれを容易く貫通し、少女に纏わりつく影を鋭く射抜いた。
幼きその姿が照らし出される。
少女は、全裸であった。
丁寧に切り揃えられたその鬢(びん)削ぎ髪は、漆黒と表現するには率直に過ぎ、烏羽色と称するには無骨であった。気品と気迫を兼ね備えたそれは、『墨色』という呼称が相応しく、またそれ以外には有り得なかった。
つややかな肌と整った顔立ち、小振りではあるが形の良い乳房、程よく引き締まった腹部、すらりと伸びた四肢――それはとても十代の少女の身体とは思えぬほど、完成された『女性の魅力』を湛えていた。
それもその筈。
少女は、幻想郷で最も優秀な少女を真似て"作られ"、徹底的な品質・栄養管理の下、この日の為に"飼育"されてきたのであるから――。
「――――ぁ」
何かに気付いたのであろう。
つい、と少女が視線を上げる。その行き着く先には――また別の少女の姿があった。
やや巻き毛がかった金色の髪。やはり全裸で、体付きはやや細く、胸部に浮き出た胸骨と肋骨の分だけ腹がへこんで見えた。
しかし何よりも特筆すべきは、彼女が、無機質な銀の光を放つ鉄網に四肢を縫い付けられている点であろう。
金髪の少女は、泣き叫んでいた。
だがその声は墨色の髪の少女に届かない。
この少女は"成長過程"で聴覚障害を患っていたのだ。しかし耳は聞こえずとも、その音を皮膚で感じ取ることが出来る。
だから――この少女は、全身で感じ取っていた。
"見知らぬ"金髪の少女の叫喚だけではなく。その下――この少女の位置からでは死角になって、中の見えない大きな、非常に大きな黒い鍋――が、何で満たされているのかも。
それは、水よりもずっと粘度の高い液体であった。
それは、水よりも遙かに沸点の高い液体であった。
それは、約300度で沸騰し、やがて発火する透き通った小麦色の液体であった。
その液体が灼熱の炎に熱され、鍋の中でばちばちと弾けるように沸き立ち始めたのを、この少女は肌で感じ取っていたのである。
金髪の少女は、泣き叫んでいた。
しかしその様子を真っ直ぐに見据える、この少女の表情は――如何なる事か、途方もない幸福感に満ち溢れた、天使のようなほほえみであった。
鉄網が動きだす。
静かにゆっくりと、しかし確実に、その鉄網は下降していく。無論、一人の少女を縫い付けたままにして。
その、涙でぐしゃぐしゃに濡らした顔の、限界まで開かれた少女の口から止めどなく迸る――
絶叫、
咆吼、
号哭、
悲鳴、
それら全てが心地良い振動となって、聾唖(ろうあ)の少女の全身に染み渡っていく。
「――――」
聾唖の少女が身をよじる。
炎に照らされた、絹のように白い肌。
うっすらと黒い茂みの生えた少女の恥部からは、透明な蜜が多量にこぼれ、その白い大腿を艶やかに煌めかせていた。
金髪の少女は、泣き叫び続ける。
必要以上に時間を掛けて、彼女の両脚がゆるやかに鍋の中に沈み始めた時も。
汗にまみれたその腹が、激しく上下するその胸が、黒い鍋に隠れて見えなくなった時も。
やがて液体が発火し、彼女の全身が巨大な炎に包まれた時も。
そして――その愛らしくも苦悶に歪んだ顔が、すっぽりと、鍋の中へ消え去ってしまうその時まで。
金髪の少女は、最期までずっと、泣き叫んでいた。
――すごい。
あまりの感動に、聾唖の少女は、知らず呟いていた。
その時、またどこからか、うら若い女性の叫喚が――特徴的なその甘い振動が――響いて来るのを、少女は全身で感じ取った。
「……あは」
股間に手が伸びると同時、水気を帯びた卑猥な音がそこから溢れ出した。
そのまま手を休めることなく、聾唖の少女は鍋から立ち上る赤い炎を見据え、自らの耳にさえ届かぬ声、しかしなお、明瞭な発音で、
「――天国みたい」
と、恍惚の表情を浮かべた。
そうして微笑む少女の横顔は、幻想郷に住まう者ならば誰もが知る――博麗霊夢のそれに、違いなかった。
◆
「ああ……また彼女か。先からずっとだな」
博麗霊夢に瓜二つの少女が、数多の悲鳴の中で自慰に没頭する――その様子を冷めた眼で眺める男があった。
端麗な容姿とすらりと伸びた体躯、中性的なよく通る声を持ち、この場に居る他の誰よりも垢抜けた雰囲気を纏うその若い男の手には、荘厳な飾り付けの施された黒い写真機が握られている。
「気になるならやっちまえよ。あんたも喰いたくて、こっちに来たんだろ?」
囲炉裏を模して四角に切り開かれた床、その中で豪快に燃え盛る炎の熱気を一身に受けながらも作業を続ける別の男が言う。男はその筋肉質な腕で、天井へと伸びる太い鎖を手繰り寄せようとしていた。
「やっぱさ、こういうのは感触が大事なのよ。無知で馬鹿で高慢ちきで役立たずの、だけど顔だけはやたらと良い女が死にそうになって、もう本当に誰も助けてくれないんだってようやく理解した時の、無い力振り絞って必死に暴れるその感触。それが堪らないんだなぁ――っと……、やっぱ油吸うと、さすがに少し……重い、か」
鎖は天井を経由し、巨大な鍋の中へと続いている。
男が息を吐き、体重を乗せるようにして勢いよく鎖を引く――と、ざばりと派手な音を立てて、たたみ一畳ほどもある大きさの鉄網と、そこに磔にされた少女の姿が現れた。
「お、いい出来」
少女――そう、それは確かに、少女であった筈なのだ。
美しかった金色の髪は炎に焦げ付き油で固まり、苦痛を訴えかけるように大きく歪んだままの口や、鼻孔、耳孔、さらには高温に白濁し萎縮してしまった両の目玉の隙間からは、大量の油が一挙に流れ出して止まらない。それは濃い褐色に変色した乳房を伝い、油を呑んででっぷりと膨らんだ腹の表面を滑り、まるで糞尿を垂らしたかのような重い音を立てて再び鍋の中へと落ちていく。熱を加えられたために筋肉は硬化し、首や手足の指は奇妙な角度に折曲がった状態で、鉄網の動きに合わせてゆらゆらと揺れ続ける。
その奇怪なオブジェを、今もまだ少女と――霧雨魔理沙と、呼んでよいものならば。
少なくとも、彼女の全身からもうもうと立ち上る白い湯気は、彼女がもう既に人間ではなく、ただの食材に成り果ててしまったことを主張しているようであった。
「はじめは、くびり殺す真似をしながら犯す……その程度で満足だったんだけどな。最近はもう真似事じゃあ勃ちもしなくなっちまった。……おい、あんたがやらないんだったら、あの霊夢、俺が喰っちまうぜ。女を生のまま少しずつ噛み千切っていくってのも一度やってみたかったんだ」
筋肉質な男は脇で鎖を押さえたまま、きりきりと片手でハンドルを回し始める。
鎖が巻かれ、回収されていく少女の姿を最後に一枚写真に収めると、若い男は写真機から顔を上げ、抑揚の無い声で答えた。
「……いや、済まないが、あの娘は私に調理させてもらう」
「お? ははっ、やっぱ喰う気満々なんじゃねえか。なに、謝るほどのことじゃあない、気にするな。女なんていくらでも居るんだ。第一あの霊夢、どっからどう見てもマゾだろ? もともと俺にゃ合わねぇよ。あーあ、人の肌ってどんな歯ごたえすんだろうなぁ。俺も早く一品仕上げて向こうに行きてぇよ。本当はこいつも鉄網になんか括り付けずに、手足を適当に縛ってそのままドボン! ってやりたかったが、他人様にお出しする以上、見た目だけは綺麗にしとかなきゃいけねぇわな」
多分、磔の方がウケも良いだろうし――
上機嫌な様子で、筋肉質な男が言う。
「……人間の皮膚をそのまま食すのは、あまりお勧めしませんよ」
それにつられて、であろうか。若い男の返す言葉も、僅かではあるが愉快そうな響きを含み始めていた。
また男は興が乗ると口調が丁寧になるという、一風変わった性癖を持ち合わせているようでもあった。
「特に年頃の女性の肌は……思いの外、弾力がありましてね。初めのうちこそ、『これはこれで』と愉しめるものですが――ふふ、いくらも飲み込まぬうちに、顎が疲れて来てしまうのですよ。加えて、表皮の産毛や汗腺が邪魔になり、舌触りもあまり宜しくない。それでも皮膚ごと食したいのならば、やはり焼くなり何なりの一手間を掛けるべきでしょう。ああ、もちろん、あなたのように丸揚げにするのも好い調理法ですが」
「へえ……、こりゃたまげたな。あんた人喰いの経験者なのか。見かけによらずエグい趣味してるねぇ」
「私など……おや、向こうでも何か……やっているのか」
若い男の口調が再び、ややぞんざいなものに変化する。それはこの男が、目の前の相手に対する興味を既に失ったことを意味しており、実際、この若い男はその後に投げかけられた問いには曖昧な返事で応えるだけであった。
筋肉質な男は特に気分を害した風でもない様子で、鼻歌を奏でながら霧雨魔理沙を引き揚げると、彼女の身体をクロスで丁寧に拭いてやり、また時には全身を使って魔理沙の腹などを圧迫し、余分な油を取り除く作業に取りかかり始めた。彼の背後では高級そうな大きな白磁の皿と、予め用意してあった各種薬味、調味料がずらりと並んで少女を待ちわびているようであった。
若い男はその作業が適切に、手際よく進んでいくのを確認した後、自らが『向こう』と言った方向――少女の苦悶の声が聞こえた方向へと、歩き出した。
今まさにまた一つ、"作られた少女"の命が途絶えようとしている、その場所へと。
◆
十六夜咲夜は完璧に過ぎるほどの肉体を有していた。
例え無明の闇の中であろうと輝きを失わぬのではないか、そう思われるほど彼女の銀の髪は静謐に光を反射し、そよ風を受ければ、凛と鈴の音でも聞こえてきそうな軽やかさと爽やかさをもってさらりと流れるのであった。肌はその下に通う血管が青く透けて見えるほどに白く薄く美しく、豊満な乳房となめらかなくびれ、健康的に程よく引き締まった尻、それらが形作る淑やかな体躯はシルエットだけで数多の男を魅了し得るであろう。
されど彼女は白痴であった。
彼女はまともに言葉を発することも出来ない。ぷっくりと膨らんだ紅い唇は閉じることを知らず、涎に濡れそぼっては煌めいている。そして普段はうめき声ともわめき声ともつかぬ、低脳で低俗な動物らしい聞き苦しい声を時折、思い立ったように共に漏らす――彼女はただ、それだけの生き物であった。
だがそれでも尚、彼女は幻想郷に住まうどんな女よりも"女"として優秀であった。魅惑的な容姿、本能による性への飽くなき探求心と好奇心、そして何より、彼女は自身が感じているその瞬間においてのみ、信じられぬほど男の性的興奮を呼び覚ます、甘い声――蕩けるような甘い、肉欲にまみれた嬌声――で啼くのであった。
彼女は今宵、既に幾人もの招待客の相手をつとめ、その名器に彼らの子種を存分に注がれていた。
その中の一人が、満足した様子で呟いた。
『これほど美しい彼女のことだ、さぞかし、味の方も良いのでしょうな』
するとすかさず、傍に仕えていた兎耳の少女がにんまりと笑顔を浮かべて男の顔を覗き込む。少女は薄桃色のフリルの付いた可愛らしいワンピースを揺らし、早口で、
『ではではお試しになりますかっ? いえいえお気になさらず、このような娘(こ)はこちらにもあちらにもそちらにだって沢山、本当にたっくさんおりますのでっ』
やはり小動物のような仕草、動きを交えて提案するのである。
『ささっどう調理致しましょう? このまま真っ赤に熱した鉄板の上に放り込んでみますかっ? あーでもでもそうすると皮膚が鉄板にくっついて剥がれちゃうことが多いんですよねぇ、ベリベリベリッて。暴れるから焼きムラも出来てしまいますしっ。う〜ん折角ですから綺麗なまま食べたいですよね――あ、ですよねですよねっ? ならやっぱりオーブンでとろっとろになるまで焼くのがオススメですよ! 実はぁ、ここにはちょっと特殊な人間用のオーブンがあってですねぇ――そうだ、味付けには少し塩を加えたレモン汁を被せてあげるのが一番なんですよっ! 塩は熱の通りを良くしますし、肉の締まりだって増すんですっ。適度な水分は焦げ付きにくくもしてくれますし! そしたらあとはこんがり焼き上げるだけ! どうです、食べたくなってきたでしょ? でしょう?』
少女は終始笑顔であったが、その捲し立てるような話法の裏では何か別の思惑、あるいは感情が重く渦巻いているようでもあった。
その渦の中に、この人間、十六夜咲夜に対する凄まじいまでの悪意が含まれていること――それだけは、誰の眼から見ても明らかであったが。
『……で、いかが致しましょう。調理を是非行ってみたい、という方はいらっしゃいますか?』
兎耳の少女は急に静かになったと思うと、その小柄な体躯で周囲をくるりと見渡し、つやのある声で招待客達にそう呼びかけた。
だが、そこにいる男達は――あるいは女達は――みな"喰う"側の人間であるらしく、今ひとつ反応が芳しくない。それも仕方がないことであった。調理された女はまもなく訪れる晩餐会、そこで皆に振る舞われるのであるから、下手な調理など出来ようはずもないのである。
それならば、思うがままに女をいたぶることが出来る"こちら側"でもう一人や二人、縊り殺していた方が有意義だ――みながそう考えるのも道理であった。
『……では、この娘も"厨房"のどなたかにお願いして……』
たっぷり2回半、周囲を見渡した後に兎耳の少女がそう言いかけた時だった。
一人、静かに手を挙げる者がいるのに彼女は気が付いた。
それは上等な布で拵えた紳士風の装いに身を包む、どこからどう見ても気立てのよい、柔和なほほえみの似合う初老の男であった。
「――私は普段、牛や豚はもちろん、魚ですら怖くて殺すことが出来ないんです。でも、どうしてでしょうかね。この娘のように年若いお嬢さんにならば、何の躊躇いもなく鋭利な刃物をその皮膚に差し込み、ついと滑らせることが出来る。不思議です。本当に不思議なのです」
老紳士が、写真機を携えた若い男に向かって言う。
しかしその視線は、一時たりとも少女から外されることはない。
「特に……このお嬢さんに限っては、以前、里で買い物をしている姿を一目見た時からずっと、私はずっと……。ああ、美しい。なんて、美しい……」
相づち代わりだ、と言わんばかりのタイミングで、≪シャキィ≫、と若い男の写真機が音を立てた。
「……暗くて適わんな」
男はそう呟くと、懐から細長い携帯用の発光器を取り出した。折りたたまれていた反射板を円形に開き、青色のフラッシュバルブ――閃光電球をその中心に嵌め込んだ。
≪シャキィ≫
男が再び撮影する。今度は発光器のスイッチもほぼ同時に押されていた。閃光電球内部のマグネシウムが瞬時に発火し、高温と高熱、そして圧倒的な光を放って被写体を照らし出す。
被写体――十六夜咲夜は、両の足首に鋼鉄製の鋭いフックが通され、逆さ吊りにされている。男がここへ来た時には、既にこの状態であった。
白痴である"この咲夜"は最初こそ痛みに暴れたのであろう、足首から流れ伝う紅い血糊が真下ではなく、脛やこむらを通って大腿へと向かっていることからそれが分かった。
しかしいくら足掻こうとこの状況を抜け出せるものではなく、反って自身に返ってくる痛みが増すだけだと白痴は白痴なりに本能で理解したのであろう。咲夜は涙目になり、時折苦しそうにうめき声をあげながらも、従順にぶら下がっているのであった。
「……おい、じーさん」
男は携帯用発光器の背についたボタンを押し、曇って使い物にならなくなった高温の閃光電球を床に打ち捨てた。
そしてまた新たな閃光電球――今度は無色の、モノクロ写真用の電球であったが――を嵌め込み、老紳士に声を掛ける。
「おい、じーさん。何時までそうして眺めてるつもりなんだ」
男の口調がまたぞんざいなものになってしまうのも仕方がなかった。男の困ったことに、老紳士は特に何をするでもなく、ただひたすら全裸で吊された十六夜咲夜の頬や腹を見詰め、時にはそっと優しく手でさすり、『美しい、ああ、美しい……』とため息混じりの感嘆の声を上げるばかりであったのだ。
長時間逆さ吊りにされたため咲夜の頭には血が上り、顔は不自然に紅潮し、鎖骨から耳の後ろにかけての頸動脈や、こめかみの辺りの血管がぼこりと太く浮かび上がっていた。またそれらの血管はぴくっぴくっと規則正しく脈動し、咲夜の白い胸の奥の奥、肺臓に隠れた紅い心臓が健気に血液を送り出している様を、見る者すべてに誇示しているのであった。
「……まあ、確かに美人ではあるし、女のこういう姿も、そそるものがあると言えばありますがね……」
男の声の調子が、再び変化した。
「……しかし、逆さ吊りにして鑑賞したいのであれば、然るべき処置が必要です。高血圧で血管が破裂してしまう前に、耳の後方、あるいはこめかみに、死なぬ程度の穴を穿たなければ――」
「ああ、いや、これは失敬。なに、見納めというやつですよ。晩餐会には間に合わせねばなりませんからね、そろそろ、始めようと思っていたところです」
老紳士は、やはり見るからに善人そうな、優しいほほえみを浮かべて見せた。そして取り出したのは、直径1メートル半ほどもある大きな木製の桶と、ナガサと呼ばれる狩猟用の鋭利なナイフであった。
ナガサ――それは、獣皮すら切り裂く鋭い切れ味と、骨に当たろうが欠けず、関節に差し込んで捻ろうが折れぬ丈夫さ、また血を被っても滑りにくい掘りの入った頑丈な柄を兼ね備えた、まさに人間を捌くためにあると言っても過言ではない刃物である。刃先は鋭く尖っており、それでいて刃元は分厚く、その重量を活かして鉈のように獲物を叩き切ることも出来るのであった。
「なるほど。血抜き、ですか」
ええそうです、と老紳士は答え、手際よく準備を進めていく。逆さに吊られた咲夜の真下に桶を配置し、ナガサを軽く研ぎ、さらに後の処理に備えてシンクに水を張った。それは、この老紳士が人を調理するのが初めてではないことをこれ以上なく表していた。
「参考までに、抜いた血はどうなさるつもりでしょう?」
「そうですね……水と調味料を加えた後に加熱して、凝固させた血液ゼリーを付け合わせか、あるいはデザートにでもしようかと」
「へえ……。内臓をいくらか抜き取ってミキサーに掛け、血と混ぜてソースにするというのは?」
「それも考えました。が、今回はレモンソースで戴く予定なので、ちょっと合わないかなと思いまして。可能ならば、膀胱の上部を切り取って中に血液、肉、野菜、少量の米を詰めて煮込んだ血のスープなどをお出しできるといいのですけれどね」
「血のスープ。ああ、血液の凝固作用は、大蒜(にんにく)か何かで抑えるおつもりで?」
若い男がさも事も無げにそう応えたのには、さすがに老紳士も少し驚いたようであった。
血液は外気に触れ、ある一定の温度以上になると自然凝固をはじめる。大蒜には、その凝固作用を抑える成分が含まれているのである。
「ええそうです、良くご存じですね。ただ、私の腕前では、ちょっとそこまでは凝れそうもなくて。残念ですが、それはまた次の機会にさせて頂こうかと。……では、そろそろ」
咲夜の頬をやさしく一撫ですると、老紳士は予め用意していた木板を左手に掴み、それを咲夜の首筋にきつく押し当てた。右手には上物のナガサ。限界まで研ぎ澄まされた玉鋼の光沢が、咲夜の顔を照り付ける。
「ぁ……あ−、あぉおあぁー、ぅう、ぉぁー……」
敏感に生命の危機を感じ取ったのであろうか。今までただ痛がり、苦悶の声を上げるだけであった咲夜の表情に陰りが生じた。
表情だけではない。その美しい身体も、傍目で分かる程に震えだしていた。その小刻みな振動が彼女を吊す鎖に伝わり、彼女を中心に耳障りな金属音が鳴り響きはじめる。
そして驚いたことに――
「あ……ぁ、んっ、あぁ、はぁッ――んぁッ……! ふぁッ、ん…く、…あ、ふっ……!」
――咲夜は、涙をぽろぽろと溢しながら、一心不乱に自慰を行い始めたのだ。
咲夜は、知っていた。
今まで自分の甘い声を聞いた男は、みんな喜んでくれたことを。
咲夜は、理解していた。
今自分が生き延びる為には、目の前の男どもを悦ばせるしかないことを。
「ひんっ、あぁ……んっ、ふぁあ、あぁ……は、ぁんっ……! ゃぁ、…ん、ぁ…ッ」
ぽろぽろ。ぽろぽろ。
咲夜のガラス細工のように透き通った二つの碧眼から、真珠のような涙が溢れて止まらない。
「あ、ん……ふ、ぅ、…ひんっ! ……あ、あは…は、く、ひぃ…んッ……あは、あはは……」
それでも咲夜は懸命にぎこちない笑顔を浮かべ、懇願するように老紳士と若い男、二人の顔を交互に見上げては、甘い喘ぎ声を喉の奥から必死に絞り出していた。
自慰を行うその細い指はただ震えるばかりで既に力など入らないようであったが、それでも咲夜はその五指を無理矢理自らの秘所に擦り付け続ける。
「あひっ、あっ、ぁっ……い、ぁ…ぃ、んぁ、くぅ、んっ……!」
秘所を弄る手は休めず、咲夜は反対側の手を老紳士の股間へと伸ばす。チャックを開こうとする。だが、逆さ吊りの状態では上手くいかない。
もう一度挑戦する。指に力が入らず、上手くいかない。
「……ぅあ、くぅ……! んっ、んッ……ッ!」
何度も挑戦する。上手くいかない。
上手くいかない。
上手くいかない。
「ひ、っ……あ、あは、……んぁ、あは――は、は」
自分は役立たずじゃない。咲夜はまるでそう言うかのように、鬱血しついに青くなり始めたその頭をぶんぶんと振り乱す。
その負荷で、首筋、こめかみに浮いた血管がさらにぷっくりと青く膨れ上がった。それは今にも破裂して、紅い血潮を辺りにぶち撒けてしまいそうな程であった。
「……んっ……く、んッあ、ひ……! ぁ、ぅうッ……ひぅッ!」
その頃になってようやく濡れてきたのであろう。咲夜の声に、本物の嬌声が混じり出した。
咲夜がチャックを開くのを諦め、その手で自分の胸を揉みしだき始めると、その声はさらに甘美な音色を孕み始めた。
「くぁ……あぁっ、ん、ひぁっ、……ふぁああっ、あ、ん、はあぁッ……!」
右手の中指が咲夜の秘所に激しく出入りするたび、水気を含んだ淫らな音が周囲に響く。濃密なメスの匂いが愉悦の声を伴い立ち上る。
中指の動きに合わせ恥部に擦り付けられる親指は自身のクリトリスを刺激していた。結果すぐにそれは充血し、極小のペニスの如く勃起するとその姿を皮膜の外に晒した。そこへやはり親指が激しい刺激を与え続ける。快楽が快楽を呼び、やがて咲夜は呼吸が困難になるほど大きく喘ぎ始めた。
「ぁっ、……かっ、ふっ、ひぁァッ、イ……ッ、あ、あッ、あっ……!」
咲夜を繋ぎ止める鎖のざわめきが増す。
極度の興奮のためか、鋼鉄の鉤に貫かれた脚の痛みのためか――おそらくは、その両方が原因であるが――咲夜の瑞々しい白い肌には玉の汗が水滴のように浮かび、汚れを知らぬ二つの青い眼は焦点を定めることなく常に動き続ける。
「……ゃ、あ、ぁひっ、あぁァアぁッ、ぁァ――あぁッアうぁッ――」
咲夜はその美しい銀髪を振り乱しながら、更なる高み、更なる快楽へ向けて急激に加速していく。
何のことはない。人体は、生命の危機においては、通常の数倍感度が良くなる――これはただ、それだけの話であった。
そして、
「あっ、アぁッ、あぁ――ァあっ、ああォァアあぁあァッ――――ッ!」
彼女が絶頂に達すると同時、
「――あ」
トン、という軽い音がして。
「――あ? ぁ――? ――?ゥ?」
十六夜咲夜の首に、深々と、ナガサの刃が食い込んで、いた。
「――――?」
急に声が出なくなったのを不思議がるように、咲夜の口がぱくぱくと開かれる。
その次の瞬間、咲夜は自分の首にめり込んだ異物の正体を悟り――
「ァ」
ぐりん、と眼球が回転するのを自覚し――
咲夜の意識は、そこで途絶えた。
「ふー……っ」
呼気と共に、老紳士がナガサを素早く引き抜く。その刃の煌めきは微塵も失われておらず、むしろ、ぱっくりと鋭く切り裂かれた咲夜の首筋を見るに、その流麗なまでの刃紋が一層鋭利に輝いて見えるのだった。
一拍遅れて、咲夜の首から真紅の血液が噴き出した。
同時に咲夜の身体――秘所や胸を愛撫していた彼女自身の腕が――重力に従い、糸の切れた人形のごとく不自然に垂れ下がった。
老紳士は咲夜の顔が血に濡れぬよう頭を手でぐいと、傷口を開くように引っ張り、断面から滝のように滴る血液を桶の中へと溜めていく。
彼の眼前では、首からは血液を、股間からは愛液を滴らせる美女の裸体が、絶頂の余韻に身を浸すかの如くびくっびくっと激しい痙攣を繰り返しているのであった。
≪シャキィ≫
爆発的な光が灯り、無機質なシャッター音が響き渡る。
「いやぁ、お見事。お見事です。ほら、彼女もこんなに身を震わせて喜んでくれていますよ」
若い男は賞賛の声を上げ、拍手をもって老紳士を褒め称えた。
「ありがとう。しかし、幾らか力みすぎたかな。ちょっと脊椎に傷を付けてしまったかも知れない。この痙攣の激しさは少し異常だ。心臓が止まってしまっては、血抜きも何も無いのだが……」
「それなら大丈夫ですよ、これくらいなら問題ありません。そもそも脊椎は重度に損傷しようと、心停止に到ることは稀です。経験上、ゴキッとやっても六〜七人に一人程度ですよ、即心停止するのは。ま、大抵は全身不随になって昏倒しますから、結局みんな窒息死するんですがね。あ、ほら、ちゃんと心臓動いてるみたいじゃないですか」
咲夜の首筋からは絶え間なく血液が溢れ出ていたが、それでもやはり心臓の鼓動に合わせて規則的に――時には不規則的に――勢いよく、ビシャビシャと音を立てて大量の血潮が噴き出すのであった。周囲に粘ついた、甘いような、錆びたような血液独特の匂いが満ち満ちていく。
「ん……」
ただその拍動間隔の長さ、一度に噴き出す血液の量は、少しだけおかしかった。咲夜は極度の緊張状態にあった筈で、心臓は頻脈をおこし、血圧は著しく低下している筈であった。しかしこの拍動間隔、出血量は明らかに徐脈のそれであり、急性の高血圧症が咲夜の身体に生じているようであった。やはり脊椎の一部分を傷つけたことが少なからず影響している――男はすぐにそう理解したが、そのことは老紳士に黙っていることにした。
血抜きにおいては、むしろこの方が好ましいのであるから。
無論。
猛烈な勢いで鼓動していた心臓を、無理矢理、脊椎からの電気信号で強引に徐脈へと切り替えられたのであるから、この官能的な女体に掛かる負担は計り知れない程に莫大で――もしまだ咲夜の脊椎が辛うじてでも機能しているのであれば、その負担は信じられぬまでの地獄の苦痛、苦悶となって、彼女の脳へと伝達していく筈であった。
「……そりゃ、最ッ高に感じちまうだろうなぁ……」
男は最終的に、先程この少女――咲夜の意識が一瞬で途切れたのは、その苦痛の炎が彼女の脳を焼いたからかも知れないな、という結論に達し、あまりの愉悦に"にやり"と笑った。
しかしそのおざなりな口調から察するに、既に、男の興味はまた別の所へ向かいつつあるようだった。
男が打ち捨てた閃光電球が、かん高い音を立てて跳ね、硬く冷たい床を転がっていく。老紳士は相変わらず咲夜の顔を見詰め続けていたが、男がこの場を去ろうとしているのを何となく感じ取ったのか、ふと、顔を上げた。
「あなたはどうやら相当、人喰いについてお詳しいらしい。今後の参考に、ひとつお聞きしたいのですが、こうして血抜きしている間、女性には呼吸させてあげた方が宜しいのでしょうかね?」
「いや、必要ないよ。どうせ血を半分も流せば心臓は止まってしまうんだしな」
「それは良かった。私には愛する妻が居ますし、それに、この子もこんな老いぼれと口付けを交わすのは嫌でしょうから」
「……なるほど」
その、カニバリズムを嗜む者としては些か清純に過ぎる老紳士の返答に、男は少々、不意打たれたようであった。
「……じゃ、こっちも今後の参考にひとつ。血抜きが終わった後、その肉はどう調理していくんだ?」
「つたない発想で恐縮ですが……四肢は肘、膝の部分で切り落として塩もみしたのち、鉋(かんな)か何かで骨ごと薄く輪切りにして胴体に添えようかと思います。ああ、内臓は一度シンクで水洗いした後にハーブと香辛料で香り付けし、旬の野菜、チーズなどを中に詰めた上で、腹に戻すつもりです。ただ肝臓だけは燻製にして、酒の肴にしてみようかと。胴体は表皮にたっぷりとレモンソースを塗り、あとはそちらの――」
そうして老紳士が指し示す方角には、およそ人間専用としか思えない人型の形状をした、鉄の釜が鎮座していた。
「そのオーブンで、時間を掛けて焼き上げるだけです。よくできていますよね、頭の部分の枷を外し、下の炉の部分の仕切りを動かせば、顔と髪に熱が通らないようにも出来るのだそうですよ」
「そりゃ凄い。いやしかし、あんたの着想も大したもんだよ。四肢を輪切りにして添える、か。確かにそれは見栄えが良さそうだ」
「いえ、そこまで褒められたものでもありませんよ。私は常々、女性は腕や脚がない方が綺麗だと――ただ、そう考えているだけの話でして」
その言葉に、男は今度こそ絶句した。
「あれ、私、何か変な事を口走ってしまいましたでしょうか」
「……いや、良い趣味してるよ、あんた。今後も精進を続けてくれ」
それじゃ俺は行くから――
最後に一枚写真を撮影して、男が立ち去ろうとしたその時だった。
「いやいや、精進なんてとんでもない」
老紳士は、慌てた風に首を振って否定した。
「私は、怖いのです。怖くて堪らないのです。いつか――いつか、そう遠くない未来。愛する孫娘にまで、手を出してしまいそうで――」
そう述べる彼の表情は。
どこまでも純粋な、やわらかな笑顔で満たされていた。
◆
男がその場に立ち会ったのは、全くの偶然であった。
老紳士の元を離れた後、男は最初に眼をつけた霊夢の所へと戻ることにした。幾人ものうら若い少女達が生み落とす悲痛な叫び、欣悦の声が、やはり絶え間なく男の耳朶を打ち続けていたが、女に関してはこれ以上、この男の興味を引くものはないようであった。
ただ、男はこの会場の至る処に配置されたありとあらゆる拷問設備、調理器具、医療用具、束縛道具、処刑装置、刃物、薬剤、その他の大型機材に対しては大きな関心があった。
あの巨大な鍋(聞けば、揚げ具合を確認できる透明な鍋もあるらしい。先程まで他の客が使用していたそうだが)、人型のオーブン、骨ごと薄切りに出来るスライサー、即効性のある媚薬の類、少女達の複製と飼育……それらの画期的発想はもちろん、それを実現してしまう技術力に男はある種の感銘を受けていた。
ゆえにこの男は魅惑的な女よりもむしろそうした技術の結晶を求め、わざわざ迂路にそれてまで周囲を見渡し、また新たなテクノロジとの――あるいはそれを製作した月人との――出会いを期待しつつ脚を動かすのであった。
それが幸を成してか、男は件(くだん)の鍋――つまり、透明な金属という、極めて珍しい物質が天井から吊られているのを発見する。
一体どうした原理であるのか。
それを探ろうと、男がその鍋に近づいていった時であった。男はさらなる幸福を得――予期せぬ人物と出会うことになる。
「――せぇーかぁーいでぇー♪ いちぃばんおォ姫ぇ様ぁーっ♪」
鍋の向こう側で、女性の明るい歌声が花開いた。
「そぉゆーぅあーつかぁい、ここぉーろォーえぇーてぇー――♪」
音程こそ外れてはいるものの、それは澄み切った、清冽な流水を連想させる美しい声であった。
「――よねッ♪」
触れれば手に雫が付くのではないかと思えるほどに瑞々しい、緑の黒髪。
大和撫子と表現するより他にない純然たる美貌、香り立つような絹の肌、輝かんばかりに雅やかな霓裳羽衣。
ふわりと慎ましく、そして軽やかに振り返る所作は天女そのもの。
――蓬莱山輝夜。
この男と蓬莱山輝夜の出会いは、因幡の白兎に授けられた幸運に因るものであったのかも知れない。
また、あるいは……
◆
「そうねぇ……まず金や銀が何故あれほど輝いて見えるか、その理合いはご存じ? 金属透過の秘密はそこにあるのよ」
「いえ、恥ずかしながら。不肖、無学(ぶがく)の輩につき……」
下手に出るような男の受け応えに、輝夜は驚いたような表情を見せた。
黒曜石のような瞳を中心に据えた、美しい双眸が大きく見開かれる――その様子は、されど花の開花を思わせる気品としなやかさを共に備えていた。
「あら、貴方っていつもそんな話し方をするの?」
「……? いえ、永遠亭の姫君を前にして、緊張してしまっている――はは、そんな所ですよ」
男が困ったように笑うと、輝夜はやはり花のような表情の移ろいやすさを以て、その眼をすぅと細め、上目遣いで見定めるように、
「ふぅん……」
そう呟くのであった。そして何の躊躇いも無く、男の顔を深く――互いの息が掛かりそうなほどに深く――覗き込むのである。
そんな輝夜の色気と迫力に、男は圧倒されそうになる。
「少しびっくりしちゃった。だって貴方、そんな丁寧な話し方似合わないんですもの。わたし、てっきり、"天狗みたいな高慢な話し方"するのかと思っていたわ」
「……そう、ですか」
「あ、そう言えば天狗って、"興味のある対象"や、"敵に回したくない人物"を相手にすると、途端に腰が低くなるんですって。貴方もそんな怪しい人物を見かけたら、注意したほうがいいんじゃないかしら?」
「……これはこれは……ご忠告、どう――」
「ああそれと。"普通の人間"は、わたしのことなんて知らない筈なの。だからその点、貴方は物識りだと思うわ。無学者だなんてとんでもない。お洒落な写真機まで持って――貴方まるで"新聞記者"みたいよ。かっこぃーい!」
「…………」
男は笑みを浮かべたまま、しばらく何と返答したものかと逡巡しているようであった。
やがて男が「光栄です」と簡潔に礼を述べ、輝夜に話の続きを促した。輝夜もさして気にした風もなく、明るい声でそれに応えるのであった。
「えっとね。銀がいわゆる"白銀色"に見えるのは、銀という要素の一つ一つが、わたしたちが視認できる光の持つ"色成分"、そのほとんど全てを高効率で反射するからなの。で、そうして反射してきた色を、わたしたちは眼で受け取って『ああ、白銀色なんだな』って判断するわけなのよ。光の色成分を全て反射する物質は、私たちには"真っ白"に視えて、逆に全て吸収しちゃう物質は"真っ黒"く視えるの――……大丈夫? ついてこれてる? やっぱ実物を使って説明した方が分かりやすいかしら?」
輝夜はそう言うや否や、男が返事をする間もなく、自らの指をやはり自らの左眼孔へと突き立てたのであった。
「……ッ!」
「よい、しょっと……あたた」
人差し指、中指の白く長い爪が、瞼をめくり上げ、眼球を抉り出すように奥へ奥へと滑り込んでいく。全体に薄く血管のはしったその左眼球が、下瞼を押し出すようにして飛び出すまでには、男がつめた一呼吸分ほどの時間も必要としなかった。輝夜はぬるりと湿ったその球体を手のひらに収めると、そのまま、両手の爪を使って、濃い暗闇を抱えた左眼孔から伸びる視神経を引き千切ってみせた。驚くほど、出血は少ない。
「じゃ、これ使って説明してみるわね」
そして気が付けば、その眼球も既に半分に――ぱっくりと、二つに切り分けられていた。袂(たもと)に隠れる輝夜の手に、男は小刀の煌めきを垣間見た。
「♪」
眼球の内部から溢れ出す半透明な液体を指で掻き出すと、輝夜は何事もなかったかのようにその眼を用いて男への説明を再開したのであった。
「……ま、そんなわけで。金は"赤"と"緑"成分が高反射、"青"成分が低反射だから、黄色系、つまり"金色"になるってことなのよね。で、その情報はこの錐体細胞で受け取られ、視神経を通って脳へと伝達されるわけ。んー、ここからは少し難しいから簡単に済ませるけど、物質は"ヒトには視えない波長の光"に対しては、反射も吸収もしないことがあるの。確かに照射されたはずの光が、わたしたちの眼の所に返ってこない。かといってどこかで途切れてしまうわけでもない。光が物質を素通りしてしまう状態――つまり、透過状態。この状態を、金属に細工を施して可視光の下でも発生するように調整してやれば――あら不思議、透明な金属の完成! なのでしたっ! …………つかれた」
やっぱりわたし、永琳みたいに上手く語れないわね。
大袈裟に肩を竦める輝夜を宥めつつも、男は未だ興味津々といった様子で次々に質問を投げかける。男は既に、片眼が空洞となっている輝夜と正面から相対することにも何の違和感も畏怖の念も覚えていないようであった。
「その、金属への細工とは?」
「……配位子。逆供与。電荷的密度の低下。こっちの説明はもっともっと面倒だから、パス。永琳に直接聞くなり何なりして頂戴」
「では違う質問を。この透明な鍋は一つしかないのでしょうか? あちらにも一つ大鍋がありましたが、あれは?」
「あれも最初は透明だったのよ。この鍋は熱伝導率の関係で銅を原料にしているのだけれど、ちょっとケチって素銅を使ってみたらあっという間に酸化しちゃって。煤も落ちないし……まあそれは、永遠亭の資金難に由来する失敗だから仕方ないのだけれど。で、こっちの鍋は奮発して、金を5%弱混ぜた赤銅を使ってみたの。肝心の出来は……まあまあ、って所かしら」
「なるほど。この技術を応用すれば、他にどんなことが可能になると――」
思いますか、と尋ねようとして。男は、自身がとうにその応用例を目の当たりにしていることに気が付いた。
「……鈴仙・優曇華院・イナバ」
「そういうこと。原理には割と差があるけれど、発想自体は似たようなものよ。ねぇ、こんな詰まらない話題は終いにして、奥に行きませんこと? 今なら面白い物を見せてあげられるわよ」
輝夜が笑う。丈の長い、薄桃色の袖を持ち上げて指し示すその方向には、明らかに他とは規模の違う、複雑怪奇な『からくり』の姿が見て取れた。
渡りに船、とばかりに男が快諾すると、
「あーっと、その前に。流石にいつまでも片眼じゃ不便よね」
そう洩らすと、輝夜はやはり手慣れた様子で袂から小刀を取り出した。深みのある黒橡の握りには民族的な美しい模様が、そこから奔る古風な刃には奥ゆかしげな反りが施されている。静謐さと獰猛さを兼ね備えたその小刀は、メノコマキリ――アイヌ語で『女性の小刀』と呼ばれる逸品あった。
刃渡りこそ短いものの、充分に人を殺傷たらしめるその刃を、輝夜は自分の左眼孔――空洞となったその孔に、柄木の底に掌を押し当て、深く深く、一息に突き刺した。
小刀が完全に、根本まで眼孔に飲み込まれる。
「あ"ひッ」
奇妙な声が漏れた。輝夜の身体が不自然に跳ね、その衝撃で眼孔から血の飛沫が零れた。鼻からも紅い血液が滴り落ちる。
だが輝夜は倒れない。柄のはえた眼孔に、五指を差し入れ、その握り部分を"ねじる"ようにしてさらに刃を奥へと突き入れる。
「ア"ォォオオあ"」
輝夜の首がガクガクと揺れる。頭が下を向くたび、その眼孔からボタボタと、赤とピンクの入り混じった柔らかい固形物が飛び散っていく。小刀が奥へ押し込まれる度に、ぐじゅりと、何かが潰れる音がした。
「ァ、がッ……」
小便を漏らし、痙攣するたびに気違いの如き声をあげ、そうしてやがて、輝夜の身体が床に崩れ落ちると同時――
「あーあ。まさか漏らしちゃうだなんて。見苦しい所見せちゃって御免なさいね」
――その身体から、一切の傷が消え失せていた。
「ま、でもわたしみたいな美人のおしっこなんて、そうそう見られるものじゃないわよ。ラッキーだと思いなさいっ。あははっ!」
起き上がった輝夜は、当然のように二つの眼球を有しており。
小刀は再び袂の中に収まっていて。衣服に付着した血液や小便までも、跡形も無く雲散していた。
「♪〜♪〜」
そして機嫌良さ気にハミングを奏でつつ、やはり軽やかに歩き出したのであった。
「……ご都合主義の不老不死…………化物め」
男が誰にも聞こえぬ声で、小さく呟いた。
◆
『からくり』は分厚いガラスで隙間なく四方を囲われている。
その中心下部には、河童の里でよく見かけるような"歯車"で構成された横長の機械――動力部があり、一定間隔で区切られた幅広の鉄板がその上面と下面をベルトコンベアのように覆っていた。水平方向に僅かな隙間を空け、その動力部を挟み込むようにして、同形状の履帯がさらに二つ備え付けられている。動力部と左右の履帯、その隙間を抜けた下方では、強力なばね仕掛けを限界まで張り詰めさせた、今にも飛び出しそうなギロチンの如き刃が獲物を待ち構えていた。
「これは……」
ガラスに近づき、食い入るように見詰める男が感嘆の声を上げた。
「この鉄板が、グラインダーの役割を?」
遠くからではただの鉄板に見えたそれは、よく見ると金鋸(かねのこ)を束ね、非常に緻密に、網目状に刃を張って形成された"人間用の鑢(やすり)"であった。
「ええ。肉を削っても詰まったりしないように、刃の配列は工夫されているの。血液なんかは二層構造になった刃の隙間に溜められて、一番下まで行ったときにタンクへ排血されるのよ。洗浄、研ぎも同時に行うように出来ているわ。全部、永琳の設計だけどね。で、底にはミキサーと攪拌機があって、ギロチンでぶった切られて落ちてきた肉片――骨も筋も内臓も、鑢でそぎ落とした肉も、ぜーんぶ一緒くたに混ぜることが出来るの。素敵でしょう? 人間をミンチにするのに、これほど便利なものは他にないと思うわ」
輝夜が袂を天へ向けて持ち上げる。
と、男や輝夜とは『からくり』を挟んだ反対方向から、真白な兎耳が特徴的な少女が現れた。小柄なその少女は、また別の少女――否、"女性"を連れていた。
「おや」
男は女性の顔に見覚えがあった。柔らかな萌葱色の長髪、凛々しくはあるが、まだどこか垢の抜け切っていない、あどけさなを残した顔付き。
服装は簡素で、似合いの髪飾りも無かったが――確かにその"女性"は、東風谷早苗であった。
少女、ではなく女性という表現――それは、早苗の腹がぽっこりと出ていることに起因する。
東風谷早苗は、妊婦であった。
「入れなさい」
「は〜い」
輝夜の命に従い、兎耳の少女が早苗を引き連れ、『からくり』の上部へと通じる段差を上り始める。
当の早苗は、今から何が行われようとしているのか全く理解していないようであった。人を疑うことも知らぬような純粋な眼をして、ついて行く。
「……あれは、誰の子でしょう?」
男が早苗の腹を見て尋ねる。
その脹らみは大したもので、受胎後30週は過ぎているだろうことは男にも知れた。
今すぐに腹の子を取り出したとしても、何とかその子の命を繋ぎ止められる――それ程に成長した子を、早苗は抱えているのであった。
「ん? そんなこと知ってどうするの? ……ああそっか、後で貴方も"食べる"んですものね、産地くらいは知っておきたいか、あははっ。あれは、あの娘自身の子よ」
「……は?」
「どこぞの男の種から出来た食材なんて嫌でしょう? だから、あの娘の細胞から精子を作って、あの娘自身の卵子に受精させたの。知らなかった? 知識と設備さえあれば、結構簡単に出来るのよ」
「へえ、それはそれは……」
「わたしも一度くらいは子を作ってみたいのだけれど、腹の中の胎児は"異物"だと判断されちゃうらしくって。リザレクションしたら一発、そうでなくてもある程度育った段階で消失しちゃうのよねぇ。ま、それはいいとして……そろそろ始めましょうか」
輝夜が兎耳の少女に視線を送る。
『からくり』の四方に張られたガラスの同じ高さになる、階段の最上段。少女がそこに早苗を立たせ、衣服を手早く剥ぎ取った。その裸体が露わになる。
幾筋もの青い血管が浮き出た豊かな乳房、大きめの乳輪、黒ずんだ乳首。血管は張りのある腹にも網の目のように走り、また微かに妊娠線が顕れているようであった。
――でもやっぱり、あんな醜い姿になるのは御免だわ。
理想的な妊婦の裸体を見た輝夜がくすくすと、男に向かっておかしげに呟いた。
「? 何をするのですか?」
早苗は、兎たちの徹底的な"管理"、"飼育"の下で生きてきた。
彼女はいたって健康的で、かつ勉強熱心であったが、その閉鎖された環境故に『羞恥心』というものを知らなかった。同様に外的な『傷』を受けたこともなく、悪阻や頭痛といった生理的に生じる痛み以外には、一切の耐性が無いのであった。無論、彼女は男も知らぬ処女である。
「ん〜、今日は『痛み』と『母性』の勉強ってところかな?」
兎耳の少女が笑って応えた。
「それじゃ、頑張って!」
そう言うと、少女は早苗を背後から――強く、押し出した。
極小の無数の刃が張り巡らされた、『からくり』の中へ向けて。
「あっ……きゃああああああッ」
長身の大人の背丈、その倍はあろうか、その高さから腹を下にして早苗は落下する――
その刹那に。
早苗は、兎耳の少女の言う『母性』という言葉の真意を悟った。
「――ッ、ぁっ」
『我が子を守るため』
早苗はその一心で、腹から落ちるのだけは何としても避けようと試みる――!
「ッギ、がぁッ……ッ!」
そして、強引に身体を捻った結果。
早苗は勢いよく、左肩から『からくり』へと叩き付けられ、同時に落下の衝撃で側頭をしたたかに打ち付けることになった。
瞬時に視界が真っ暗になるのを早苗は知覚した。早苗の脳が、反射的に両の眼を瞑らせたのである。
「ひぃッ、あ、ぐッ……」
暗転した世界で襲い掛かってくる、今までに味わったことのない"きつい衝撃"に、早苗は息を詰まらせた。
――ぐらぐらと脳が揺れているような気がする。今自分がどんな体勢なのか把握できない。どこを向いているのかも分からない。巨大な鉄槌のフルスイングで頭を打ち抜かれたようだった。三半規管が狂ったのだろうか。吐き気がする。
早苗は朦朧とした意識を全力で働かせ、懸命に意識を手繰り寄せ続ける。でなければ今にも気絶してしまいそうであった。
けれど。
辛うじて――子供を守ることが、できた。
『守ることができたのだ!』
早苗はそう思っていた。
「……痛ッ、……?」
いや確かに、この落下の瞬間においては、子を守ることが出来たのであろう。ただ、母体――自身の肉体に関する早苗の理解は、少し間違っていた。
人の肉を削ぎ落とすこと。ただそれだけを目的に作られた刃の群れに全裸で飛び込み、"きつい衝撃"程度で済む筈が無いというのに。
「…あ、あ……れ…?」
早苗は考える。
何かが違う。
何かがおかしい。
わたしの身体のどこかが変だ。
腹――腹は、大丈夫、肩……肩も、骨は、大丈夫。
だけど、あれ? なにか、足りない気がする。いたい。いたい?
「……い、たい。いたい。いた、い。いたい……痛……」
早苗の全身から汗が噴き出し、それに呼応するように、恐怖が早苗の脳裏を埋め尽くしていく。
いたい。こわい。いたい。こわい。
肩がいたい。頭もいたい。全身がちくちくする。
眼を開けなきゃ。いや。いたい。起き上がって、眼を開けなきゃ。いやだ。
こわい。いたい。いたいよ。
「……ッ、あっ…つっ…」
意識が拒絶するのを無理矢理黙らせ、早苗は起き上がろうと手をついた。その手にも鋭い痛みが奔る。
頭を持ち上げる。が、なにか、引っかかる。激痛に身を震わせると、何かが剥がれるような感触とともに、頭が床から離れた。
早苗は恐怖に震えながらも、ゆっくりと決死の思いで、その眼を見開いた。
「――ひ、ぁ、――」
緑の髪が、頭皮ごと抉れ、そこに落ちていた。
肩の赤い肉が尾を引くように、冷たい鉄の板にこびり付いていた。
早苗は無意識に手を側頭へ当てた。自慢の髪の滑らかな感触はそこに無く、代わりに、ざらざらに傷ついた硬い骨の感触があるだけであった。
「、ぁ、い、いた――」
半ば放心状態になりながらも、痛む左肩に眼を向けた。
薄い赤の筋繊維が覗くそこから、ぷつぷつと無数の血の球が浮かび上がってきていた。血の球は周辺のそれとくっつき、瞬く間に大きくなり、重力に従い一条の赤い筋を残して零れていった。それからは、血と激痛が傷口から無尽蔵に溢れ出して止まらなかった。
「きゃああああああああああぁああああああああああああああああぁあああああああああああああああああああああああああああ」
早苗の絶叫が、周囲を埋め尽くした。
「おーおー、これはまたエグい……」
早苗の金切り声――否、それを遙かに凌駕した咆吼が『からくり』のガラスを震わせる。
男と輝夜は、早苗のその様子を見て、明らかに楽しんでいた。
「なんのこれしき。本番はこれからよ。ぽちっとなっ」
陽気な声で輝夜が押したのは、鉄板内部に高圧電流を流し、通電熱によりその表面を数百度まで加熱させるスイッチであった。
通電による熱伝導は早い――すぐに、早苗の表情に焦りの色が浮かぶ。
「もちろん直接感電させることも出来るけど、今日はこっちにしておくわ。傷口は焼いてあげた方が出血が少なくなって長生きするだろうし、何より、見ていてこっちの方が面白いもの」
言いつつ、輝夜が今度はやや古風なナスビ型レバーを少しだけ右に倒した。すると動力部の歯車が豪快な音を立てて動きだし、早苗を乗せた鉄の鑢(やすり)が、やはり右方向への回転を始めた。
動力部の左右終端に位置する履帯は、敢えてそうしてあるのであろう、動力部の回転とは逆方向に動き始める。
「へえ。端まで行ったらもっとエグいことになりそうだ。ちょっとだけ空いてる隙間、あれがポイントですね。脚なんか挟んじゃったら大変だなあ」
「大変よー? わたしもやったことあるけれど、うん、なかなか刺激的だったかな。脚を挟まれた時はすぐ必死に抜け出さないと、ギロチン刃でスッパーン! ってなるからね。あ、そのスイッチはあなたに任せてあげる」
「これはどうも。……その前に一枚、っと」
≪シャキィ≫
その撮影音を境にして、二人は口を閉ざした。
ガラスの向こうでは、全身に脂汗をかきながら、高温になりつつある鉄の鑢の上で、熱から逃れようと小さく何度も何度も跳ねる早苗の姿があった。その度に重そうな腹が上下に揺れ、鋭い刃が足の裏にめり込んでいく。
絶え間なく生じる年若い女の悲鳴。その心地好いメロディに聴き入りながら、二人は早苗の最期を見守ることにしたのであった。
◆
「ひっ、あッ、たっ助けてッ…下さ、いッ……!」
早苗は分厚いガラスに必死にへばりつき、自分を見詰める二人に向かって懇願した。だが、その二人は口元をさも愉しげに歪めるだけであった。
鉄板は既に肉が焼けるほどに熱く、早苗はもうまともに立つことすらままならなくなっていた。
「おっお願い、ぎっ、しま…、す……ぅッ……ぅぁ……!」
早苗の眼から、大粒の涙が――おそらく無意識のうちに、溢れ出す。早苗の視界は滲み、身体にも力が入らなくなる。零れた涙が早苗の足元で音を立てて蒸発した。
鉄板から立ち上る熱気が、足の肉の焼けて縮む感触が、その生々しい音が、その要素の一つ一つが早苗の恐怖を倍加させていく。
「ぁ、つぃいいいいいいい、ぃた、いたいよおぉおおおおおおおおおおお、あッ、ああぁああッ!」
止め処なく涙を溢し、焼けて床に張り付く足を引き剥がし、激痛に噎び半狂乱になりながらも、早苗は鉄板の流れに逆って跳ねるように進み続けるしかなかった。早苗の着地地点には、点々と赤い足跡が残されていく。
止まれば腹の中の子が死ぬ。今の早苗の正気を繋ぎ止めているのは、ただその一心であった。
「ほらほらぁ、もっとキビキビ動かないとヤバいよー? たぶんそのうち加速することになるし、今のうちに死ぬ気で余裕作っといた方がいいと思うなぁっ」
早苗の頭上から、兎耳の少女が声を掛けた。早苗は前へ前へと足を運ぶのに必死であり、もう振り向くための気力すら持ち合わせて居なかったが、その"加速"という言葉には身を震わせずにいられなかった。
「ひぅっ、ぎ、あがっ……!」
早苗は今の、幼児が這うようなスピードで流れる鉄板に逆らうのでさえ精一杯であった。
そんな彼女に、これ以上に速く動け、と迫るのは確かに酷な話であった。あまり急いて進みすぎると、それだけで足の肉がごっそり持って行かれてしまう。高く跳ねすぎると、今度は足に刃が深く食い込んでしまう。かといって普通に歩いていては、両足が炭化して動くことすら出来なくなるだろう。
故に、早苗自身もこれ以上は無理だと――被害を最小限に抑えるべく、今のところはまだ現状維持にすべきだと――そう判断した。
だが、早苗はすぐにでも少女の忠告に従い、多少足の肉が削げるのにも構わず、果敢に前進しておくべきであったのだ。
「……あ、うぁっ!?」
早苗が小さく、ほんの少しだけ跳ねて前へ進もうとしたその瞬間、足元の鉄板の速度が急激に増したのである。
それは輝夜の気まぐれの操作によるものであったため、加速自体は一過性のものであったが――早苗は、その腹の大きさ故にバランスを崩し、鉄板の上で転んでしまっていた。そして、早苗が転んだのは動力部の端にほど近い場所であった。
「あっ、ぃあああっひっ、熱いッ、ああッ、んッ、ぎ、くうっ……!」
早苗は痛みと熱に悶えながらも、腹を守りつつ、なんとか起き上がろうとする。が、腹の大きい妊婦は、そうそう簡単に体勢を立て直せるものではない。横を向き、肘と手を使って身体を支え、四つん這いになって、そしてようやく、ゆっくりと立ち上がれるようになるのである。
それは早苗も例外ではない。
「あ――いやあぁッ! ううぅ、いやぁ、ぃやだぁああ――ッ!」
早苗は必死になって起き上がろうとしたが――
その位置からでは、間に合う筈が無かった。
「ぎ――が、ぁあ"ぐうぁがぁああ"あ"あ"あ"はがぁッ!」
四つん這いになった状態から、早苗の両の脚が、動力部と履帯の僅かな隙間に飲み込まれていく。
ゆっくりと回転する二つの鉄の鑢が、圧倒的な力を持ってみるみるうちに肉を抉り取り、同時にめきめきと音を立てて骨すら削り取っていく。
「あ"――! あ"あ"――!!」
もはや身体が傷つくことも顧みず、四つん這いのまま手と肘を全力で行使し、そこから抜けだそうとする。しかし巻き込まれた脚がつっかえ、逃げることすら早苗には不可能に近かった。
「やぁあ"あ"あ"あ"――! とめッ、と、め"でぇえぇえ"え"え"え"え"え"」
二つの鑢が早苗の脚をふくらはぎ辺りまで飲み込んだ時であった。早苗のその願いが聞き届けられたのか、鉄板の動きが停止した。
ただし、その瞬間――
「あーあー、言わんこっちゃない。ご愁傷様ーっ」
そんな声がしたと思うと、早苗の足先に、鈍い打撃を受けたような感覚が奔った。
「ぇあ"……?」
もはや痛みも麻痺していた早苗には、その衝撃が何を意味するのか分からず、ただ、脚全体が軽くなったような気がしたのであった。
「ま、イっちゃったもんは仕方ないよっ。ねぇ、回転が止まってるうちに抜け出して、もっと進んでおいた方がいいんじゃないかなっ?」
「ひ――ひ、あ、ひぃ――」
早苗は既に自分の身に何が起きているのかも、自分がいま何を考えているのかも分からないほどに錯乱していたが、この少女の言うことには素直に従っておくべきだと、本能のようなものが脳を通じて自身の身体を動かした。
ぎちりと隙間に挟まっていた筈の脚は、随分細く、またぼろぼろになってしまったからであろうか。回転が止まっている間であれば、驚くほど容易く引き抜くことが出来た。早苗は、恐る恐るといった様子で両の足先を流し見る。と、そこにはくるぶしであろう大きな白い骨が血に濡れ、むき出しで残っているばかりで、そこから先はすっぱりと切断され消え失せているのであった。
「――ぃ――ぁ、ぅ――――」
早苗はもう、どうになかってしまいそうだった。
だが、涙に濡れたその表情を半笑いの表情に固め、股間から温い小便を垂れ流しながらも、早苗はその足を引きずってまた前進を始めたのである。
「ひ――おおぁ――ぎ――」
それはきっと、未だ『母性』が失われていなかったためであろう。
足首を失った早苗はもはや立つことも出来ず、右手と両ひざを使って這うばかりであったが、その際に腹が鉄板に触れぬよう、左手を代わりに敷いていた。
ずりずりと這い進む度に左手の甲はえぐれ、溢れ出した血が蒸発する音が響き、そうして進んだ跡では足首から流れ出たの大量の血液が小便と混ざり、溜まりとなって、ぼこぼこと沸騰している――そんな地獄絵図がそこにあった。
「お、すごい! 頑張れーっ! 回転が再開するまでに、7割くらい進んでおけばまだ何とかなるかもしれないよっ! そしたら私からも、子供だけは助けて貰えるように頼んであげるからっ」
半死半生ながら、凄まじい気迫で這い続ける早苗に、兎耳の少女がそんな声を掛けた。
なぜ回転が再開しないのか――もし傍から見る人がいたならば、それをまず不審に思ったであろう。だが早苗はそれがいくら異常であろうと、不気味であろうと、少女の言葉を信じて動き続けるしかないのであった。
「が――ぁッ―はッ―も、ぉ、ち"ょ、っと……」
早苗の身体、特に手と足は重度の火傷を負い、痛覚神経まで焼け付きつつあった。また妊婦であるのに大きな声を出し暴れたたことで内臓が圧迫され、呼吸もうまく出来なくなってきていた。
「――あ、――お、おぉう"ぇえ"え"ぇえ"」
胃の中身を全て嘔吐する。糞便を漏らす。幾度も幾度も失神しそうになる。
だがそれでも、早苗は進み続けた。
そうして、どれくらいの時間が過ぎたころであろうか。おそらく、外から眺める者にとってはものの数分。しかし、早苗にとってはその数百倍の体感時間を過ごした後――
「うんっ。7割達成かなッ! おめでとうっ!」
元気な声が響いた。
「ぁ――」
そこで初めて、早苗は頭上を仰ぎ見た。薄桃色のワンピースを着た、兎耳の少女の声。
それは早苗にとって、救いの声に他ならなかった。
「じゃ、姫様ーっ?」
「なーに、イナバーっ?」
ああ、この子だけは助かるんだ。
私は死んじゃうかも知れないけれど。
地獄の苦痛の中に身をうずめながらも尚、早苗がそう、一種の幸福を掴みとった――その瞬間であった。
「――逆回転、お願いしまーっす! 高速で!」
「え――……?」
「りょーかーいっ!」
淡い期待は粉微塵に砕け散り。
早苗は、絶望というものを思い知る。
「ぎひぃい"い"い"……い"っ! い"ぃッ! がぁあ"ッ……!」
早苗は、逃れようと身をよじる暇さえなかった。
鉄板が高速で稼働し、残り3割の距離を無に帰すと、そのまま早苗の右手を飲み込んだ。
丁度それに合わせて稼働速度も緩められたが、その余りの勢いに、早苗は履帯に顔面をぶつけることになった。
「ア"ギャっ――ア"ががガガがぎぎゃアッ」
動力部とは逆回転をしている履帯は、早苗の下顎から唇、そして鼻を完全に削ぎ落としたところで停止した。
「ぶッ……ぶふッが、ぁッはぁッ……ぶ、……ぁ、……ギッ!」
顔面から血を噴き出しているその間に、右手にまた"あの鈍い感触"が打ち据えられるのを早苗は感じた。
頭上と、ガラスの向こうから感嘆の声がし――そして、「次を1分持ちこたえたら、今度こそ助けてあげるわ。本当よ」という声が、聞こえた。
すぐにまた動力部が、早苗をのせた鉄板が、逆回転を始めた。
「……ぁ……ぶ、ふ、……ぐッ」
早苗は最後の気力を全て使い切るつもりで、先程と同じように、左手で腹を庇いつつ、右手と両ひざで流れに逆らおうとした。
だが、手首から先の存在しない右手でどう抗おうというのであろう。碌に時間を稼ぐことも出来ず、あっという間に、後が無くなってしまった。
次に挟まれてしまったら、間違いなく全身がミンチにされてしまうことを早苗自身も理解していた。だから、手段を選んで躊躇っている余裕などなかった。
「――ぅ、う、ぁあ"あ"あ"あ"あ"あああああああ!」
早苗はもう殆ど原型をとどめていないその左手も使い、四つん這いになって進もうと試みる。
その途端、突き出た腹の皮が擦れて抉れ、黄色い皮下脂肪が丸出しになった。
「ぉあ"あ"あ"ああ"あ"あ"あ"あ"あ"ああ――」
次の瞬間には皮下脂肪も全て削ぎ落とされ、そして、
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"――!」
そして。
大きな胎児を抱え、極限まで張り詰めていた子宮が、破れ。
何やらの膜と一緒に、大量の羊水が――溢れ出した。
「あ……ああ! ……ああああ……ぁ……! ……あ! あああッ!」
早苗は気違いのような慌てぶりでその腹の傷を押さえ込もうと躍起になったが、この時にはもう、まともに使える手がないことに愕然としているようであった。右腕はただの棒、左腕は焦げた肉塊である。そんな腕で、腹から羊水がこぼれ出ていくのを、腸が飛び出していくのを、そして――小さな胎児が鉄板の上へと落ちてくるのを防ごうというのは、所詮無理な話であったのだ。
「ひ……ひひ、ひぁ、ひっ、ひひっ」
臍の緒の繋がった胎児の、柔らかな頭をその2本の棒と肉で包み込むように蹲ると、ついに、早苗は狂ってしまったようであった。
「ひひっ、ひひひひ……ひ、ひゃはっ。はは、。ははああはッ! あははひ、い、痛、あははい、。たっ。あつ、あひひぅっ」
そうして早苗は――否、その親子は――徐々に、狭い隙間の中に飲み込まれていった。
途中、何度も詰まりそうになり、その度にギロチン刃の叩き付けられる衝撃がその二人分の肉を揺らしていた。
早苗は、最期の最期まで、狂った声で笑っていた。
輝夜がカウントを始めてからジャスト1分。
『からくり』の鉄板の上には、誰も居なくなっていた。
今回も特別出演:産廃住民の皆様
でした!
というわけで(たぶん)こんばんは。あまぎです。
2つ目の産廃投下作品になります。
今回は色々あってちょっと急いで書き上げることになってしまったので、
落ち着き次第、こっそりと細かい所を修正していくかも知れません。
もっとこう、自信をもって『最高傑作だ!』って言えるような文章をいつでも書けるようになりたいものです。
SS書いているその間だけは、自分でもそう思っているのですけれどね。いざ読み直すと、へこむことが多くて困る。
ええと、話は一応キリの良いところで切ってはいますが、予定よりも若干短くなってます。だって霊夢ちゃんまだ生きてるもん! はやく●●●●にしてあげたいな!
そんなわけでこのSSはまだ続きます。
次回は晩餐会(サラダもあるよ)からスタートして、輝夜を思い切り凌辱して……今度こそ、若干のストーリー性を混ぜて行きたいところ……!
最後に一言。
咲夜さんほど白痴が似合うキャラはいない!
次のタイトルは、
『続・幻想郷を愛する皆様は、どうぞこちらへ』の予定です。
それでは皆様、またお会いしましょう。
最後までありがとうございました。
◆7月28日追加分(コメント返し)◆
>>NutsIn先任曹長さん
書いている僕も、これちょっと脂っこいなーとは思っておりました。
でもまあ、永琳プロデュースですから、晩餐会では栄養面もきっちり調整してくれる筈であります。
しかし流しそうめんの発想には思わず脱帽ですw
天才といわざるを得ません……
ハンティングでも飲み会でもなんでもいいのですが、
いつか産廃のみなさんとこうしたお話をしてみたいですね。
>>みそしるさん
うっひょう! 熱烈なコメントありがとうございます!
あなたのコメントで、僕はまた続きを書き進めることが出来ます……!
こちらこそ、これからもよろしくお願い致します。
>>3さん
>今まで読んだssの中で一番容姿の描写が素敵だ。
この文字を読んだ瞬間、ニヤニヤが止まらなくなってしまったじゃないですか……! 嬉しすぎる。
でも、僕の文体だと、多分『こいつの文章読みにくいなー装飾過多でうざってぇ』と思われる方もいると思うのですよね。
僕は基本的にこの作品みたいな書き方しか出来ないので、
『読みやすい』、『シンプル』、『ギャグ』、そうした内容もいつか上手く書けるようになりたいと思っています。
>>4さん
ここだけの話、9月まで予定がギッシリになっちゃったので、
それから書き始めるとなると……ぐぬぬ。
こんな僕の作品に期待して頂けるのはとても嬉しいです。
期待に応えられるよう、頑張って書きますね!
>>5さん
>私は一瞬で大量に処刑されていくのが好みなのですが
Oh...なんだか大物の香りがします……!
でも、僕もちょっと興味沸いてきました。
そういうタイプはあんまり詳しくないので、オススメの作品(SS、小説、映画、形式問わず)がありましたら、ぜひ教えてください……!
月一でこういう公開処刑やってるBARとかあったら、僕も行くと思います。きっと。
>>6さん
やった! 僕の作品でついに抜いてもらえた!
いやぁ、嬉しいものですね。また良かったら報告してください^p^
ちなみに、前作・今作と、執筆中に僕も一度ずつ…ゲフンゲフン
>>7さん
白痴咲夜さんお気に入りです。
今回はゴミクズ、咲夜さん、クソビッチの三人(+子供)が調理されちゃいましたが、
その調理具合はそのキャラに対する僕の愛の度合いが表れているような気がします。
ゴミクズ→霊夢ちゃんの引き立て役
咲夜さん→マジ天使
クソビッチ→クソビッチ早苗まじクソビッチ
ついでに言うと、顔が綺麗なまま残っているのも咲夜さんだけであります。
皆様、コメントありがとうございました。
今後とも宜しくお願い致します。
◆投稿日〜7月28日分 ここまで◆
◆8月3日追加分(本文修正ついでにどうでもいい補足)◆
そういえば、老紳士さんの初登場時、僕は"初老"という言葉を使いました。
お気付きの方もたぶんいらっしゃったでしょうが、実はこれ、ちょっとした誤用であります。
初老という言葉は、もともと40歳の異称なのですね。
ただ、高齢化社会の昨今では60歳辺りの方のことも指すようになって来ているそうなのです。
ですから、老紳士を初老と表現するのは『少し違って少し正解』、ってところです。
じゃ、僕はなんでわざわざそんな微妙な言葉を使って彼を描写しだんだ? と思われるかも知れません。
それに対する解答はいたって明快、『字面が似合うから』 ただそれでけであります^p^
このように、僕は言葉をその場面の雰囲気重視で選んじゃうところがあります。
ただ、完全な誤用の文章を書くつもりはありませんので、もしそうした箇所を発見されたらこっそり教えて頂けると嬉しいです。
ちなみにこの作品に出てくる技術は、一応、理論上は全て(たぶん)実現可能なものばかりです。
倫理やらなにやらの障害が多々ありますが、良かったらどなたか実現してください。
特に内臓透け透けの女の子とか、誰か作ってくれないかなー^p^ 僕買うよ!
◆8月3日分 ここまで◆
◆9月27日追加分(コメント返し)◆
>>木質さん
悪徳と背徳そのものを愉楽として扱えるのは、金持ちだけの特権なのです……!
魔女狩りを行っていた時代では、貴族たちが本当にこういった虐殺ショーを開催していたかも知れませんね。
うらやまし!
>>9さん
>クローン系のネタは一度きりというプレミアを失う代わりに、やりたい放題というオプションが得られますが…
これは鋭いご意見!
その通りなのですよね。ですから、『聾唖』だとか『白痴』、『妊婦』といった特殊な属性を付加して、ただのクローンとの区別を図ったのであります。
え? 魔理沙? ……実は彼女一人だけ、『本物』っていう属性だったりして……ね……?
> 是非そのご機嫌取りが今回は無駄だという事を分らせて絶望させたくなります。
うふふ、そういう時こそクローン技術を活用しないと……大量生産された、幻想郷に住まう少女達の紛い物。
その中からあなたの好きな性格、お好みの属性の子を選んで、思う存分いたぶることが……!
>>10さん
YATTA-! 僕は描写を密に書かなきゃ気が済まないタイプなので、そこを褒めてもらえると自信が出ます。
クソビッチ早苗さんは多分もう出番ないですけど、輝夜ちゃんのそういうシーンなら次回作にいっぱいあるよ!
今しこしこ書いておりますので、もうしばらくお待ち下さい。
◆9月27日分 ここまで◆
あまぎ
http://mixi.jp/show_profile.pl?id=7115127&from=navi
作品情報
作品集:
27
投稿日時:
2011/07/24 10:56:05
更新日時:
2011/09/27 13:08:39
分類
霊夢
魔理沙
咲夜
早苗
命乞いオナニー
胎児
永遠亭
蓬莱山輝夜
地下の月都万象博覧会
女の子だって動物だよ、食べちゃってもいいじゃない。
う、うぉえっ、げれれれれ……。
ふぅ、失礼。週末、飲み過ぎたようです。
脂っこい物はちょっと……。
あっさりした物、そうですね……、『流しそうめん』が食べたいな……。
見目麗しい水着姿(全裸よりそそります)の女性がウォータースライダーを滑ってきて、
スリルを味わった後、シュレッダーで本物の恐怖を味わい、
千切りになったものを、皆さんでつるりっと頂く、と。
後は、ハンティングとか。
先程ようやくSVDに合板製ストックを取り付け終わったので、試し撃ちをしたいのですよ。
このネタはよく映画でありますけれどね。
皆さんで銃と獲物を自慢しながら御狩場焼きと洒落込むのも一興。
では、また素敵な『素材』や『技術』を楽しみにしています。
綺麗かつ読みやすい文章で、綺麗かつおぞましい内容!!!!
さりげなく科学的に興味をそそられる知識まで入ってて、前回の疑問点にも説明がついて。
いやあ、気持ちいい。
すごい好みです。これからもよろしくお願いします。
そして残酷でありながらも美しい殺人描写……最高です、続きにも超期待!!
私は一瞬で大量に処刑されていくのが好みなのですが、
月一ぐらいであなたの講じる処刑が見てみたいものです。
コメントを読んでいると、流しそうめんが食べたくなりますねぇ。
良すぎます!最高です
一口でいいから俺も食べたい
全ての殺害方法に感動しました。
まさに悪徳と背徳の極みです。
このシリーズは存分にやりたい放題にやって、無くしたプレミア感を補って余りある惨状(排水的に良い意味)で素敵です。
しかしまぁ、白痴咲夜のオナニーみたいな「染み付いた奴隷根性」は嗜虐心を煽りますねぇ…
是非そのご機嫌取りが今回は無駄だという事を分らせて絶望させたくなります。
その誘惑に負けて甚振ったりしないでサクッと捌いた老紳士は流石というべきでしょうか。
髪の色、肌の色が説明されることで状況がより鮮明になるんだなぁ、勉強になります マル
そして、この輝夜姫に「Gスポットはどこですか?」って質問して子宮を取り出して顔を赤らめながら
説明してくれる場面を幻視した。
つか、あとがきw早苗に何の恨みがあるんだw 否、これも愛か。