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『紅魔館館長殺害事件:解決編』 作者: ただの屍
霊夢は“紅魔館でレミリアが殺された”という報告を受け、紅魔館へやってきた。事件を調査したところ、あまりにも不思議な事件であった為、一旦退却することした。
今、霊夢はさとりを嘘発見器として借用すべく地霊殿を訪れている。
さとりは霊夢の意識を読み取って事件のあらましを大雑把に理解する。何だか面白そうな事件だったので、さとりは紅魔館に顔を出してみることにする。
そして、霊夢はさとりを連れて紅魔館に再度やってきた。
紅魔館の大広間。五つの椅子が横一列に並び、左から、咲夜、美鈴、小悪魔、パチュリー、フランドールの順に座っている。
その五人の前に、仰向けになったレミリアの屍体がある。レミリアの頭部は破裂しており、四肢は無い。左胸には大きな刺し傷があり、その他の部分には無数の切り傷。更には内臓が引きずり出され、全身の血が抜き取られていた。さとりはレミリアの破裂した頭部をのぞいたが、脳は見当たらなかった。吸血鬼には脳がないのか、それとも持ち去られたのか、さとりはその場にいる者の意識をそれとなく探ってみたが真相は分からなかった。
霊夢とさとりは椅子に腰かけ、レミリアの屍体を挟んで五人と向かい合う。
霊夢が五人に言う。「今から再度質問をするけど、その質問に先程と同じように答えてちょうだい」
五人の意識が了承の態度を示す。
霊夢が五人に聞く。「レミリアが死んだ時、あなたは何をしていた?」
五人が左から、順番に口を開く。
「睡眠状態に入っていたと思われます」
「私は一日中、夜を通して門番をしていました」
「お盆だったので魔界に帰省していました」
「私は図書館の地下にある研究室で魔法の研究をしていたわ」
「ずっと昔から地下牢にいたよ」
五人とも、口述と意識に矛盾は生まれない。
ふと、さとりは違和感を覚えた。紅魔館には妖精メイドがいるのではなかったか。
さとりは霊夢に耳打ちし、霊夢の意識から回答を得る。紅魔館の正規の従業員は咲夜と美鈴だけで、異変時だけ妖精メイドをアルバイトとして雇っていたらしい。地霊殿にも思い当たる節があったので、さとりはそれ以上の追及を止める。
霊夢が五人に聞く。「レミリアが死んだと分かった時、あなたは何を思った?」
「レミリアの死を嘆き悲しんだ」
そのような意味の言葉を五人全員が並べる。そして次のような意味の言葉を並べた。
「レミリアの屍体を持ち去った犯人を必ずや捜し出し、罰を与える」
霊夢の意識から得た情報通りの反応だったので、さとりは思わず口元を歪める。
霊夢は続けて聞く。「レミリアの屍体なら、あなたの目の前にあるわよ」
五人が答える。
「そんな筈はありません。私は日頃から口を酸っぱくして、“館長たる者、メイドや門番などに気軽にものをおっしゃってはなりません”と申し上げているのですが、お嬢様はご理解なされませんでした。仕方なくある時、私はナイフでお嬢様の心臓を一刺しさせていただいた後、御身を切り刻ませていただきました。そのような私の苦悩を、お嬢様は察してくださり、お涙をお流してご改心なさいましたのです。だから地べたに頭を擦りつけているその屍体がお嬢様の御身である筈がありません」
「お嬢様は、私のことを“常に惰眠を貪り、仕事をさぼっている門番”であるとお思いなさっていました。無論、私が仕事中に眠ったことなど一度もありません。そこである時、私は自分の仕事への誇りとお嬢様への忠誠心をご理解していただくためにお嬢様の元へ参り、お嬢様の皮膚の上から内臓を掴んで引っ張り出させていただきました。お嬢様は、私がそうせざるを得ない心境をご理解なさり、私をお許しなさいました。そのような寛大な御心をどのような者にも傾けなさったお嬢様がこのような酷い仕打ちを受ける筈がありません」
「ある時、私はパチュリー様が儀式にお使いなさるための生肉を探しておりましたので、レミリア様のお手足を頂戴することに致しました。レミリア様は大変驚かれましたが、私が事情を申し上げると、“それならば肉体を差し出すのは吝かではない”とお答えなさいました。そしてパチュリー様はレミリア様のお手足をお使いなさり、紅魔館繁栄のための儀式を執り行われました。それなのに、館長であるレミリア様がお亡くなりになられるという紅魔館最大の不幸がどうして起こり得るでしょうか」
「小悪魔の契約延長の時期が来たからレミィの血液をあげることにしたんだけど、その時ちゃんと同意は取ったわ。“私はあなたのためにこの血を捧げましょう”って言ってくれた。でもレミィだって馬鹿じゃないんだから、自分が死ぬほどの量の血液を差し出す筈がないじゃない。この屍体がレミィの屍体なら、レミィは自分の命も計算できない大馬鹿者だということになるわよ」
「私は外に出たいって、お姉様に何度もお願いしたんだけど、どうしても首を縦に振ってくれないからお姉様の頭部を破壊しちゃった。そしたらお姉様が何度も首を縦に振って、“フラン、そのうち好きな所に連れて行ってあげるわ”って言ってくれたの。だからお姉様が私を置いて先に死ぬ筈がないわ」
先程までの彼女らの意識というのは言葉の奥に己の存在を仄めかす程度であったが、ここにきて意識が前面に大きく広がった。
その意識を見たさとりは感動で身体が打ち震える。ここまで綺麗な意識を五つも同時に見たのは初めてのことであった。意識をどこまで遡っても滑らかに連続していて、継ぎ目と捉えることができる箇所は一つもない。そこには完全なる独自の世界が形成されていた。世界と意識との間に一切の矛盾がなく、意識の全てが外界の全てを賛美し、外界の全てが意識の全てを祝福していた。
これは神が与えたもうた奇跡か、果てしない追求の末の楽園か、はたまた紛れもない現実なのか。さとりは興味を持ったが、真実を知る術を持っていない。
さとりは霊夢に耳打ちする。「これは我々には手の出しようがない事件であり、我々が真実を理解することは恐らく不可能です。この事件は閻魔に任せるしかありません。私は意識の表面を読み取ることしかできませんが、閻魔は生前の行いの全てを見通すことができると言われています。閻魔ならばこの事件を解決に導いてくれるでしょう」
「迷宮入りなんてしたら評判落ちないかなあ」霊夢はそう呟いてから、レミリアの屍体を指差す。「それじゃあ、この屍体は貰っていくわよ」
さとりは改めて驚嘆する。五人の意識が何の反応も示さなかったからであった。
二人は紅魔館を出て、レミリアの屍体を日光に晒して灰にする。「これで狂言の可能性も無くなったわね」
さとりはレミリアの灰を見ながら呟いた。「私に声を掛けてくれたことを感謝します。お蔭様で大変素晴らしいものが見られました。あの五人の意識は美の極致であり、芸術だった。でも」
「でも、それ故に恐ろしかったんでしょう」霊夢はさとりの言葉を遮る。
さとりは、自分の意識でも読み取られたのかと思い、霊夢の顔を見る。霊夢はまだ笑っている。
「あなた、鳥肌が立っているわよ」
さとりは自分の全身を眺めてから、やはり先程の事件は我々の常識の外部に位置する出来事だったのだと結論付ける。
「美しいからこそ感じる恐怖。どこか羨ましがっている自分がいる」
「生きてりゃああいうことも起こるものなのかしら」
「というわけで、この世は生きてる奴が一番不思議なんですよ」
二人がそのような意味の言葉を交わしていると、紅魔館の内部で、五つの意識が椅子から離れて日常へと戻る。
「今日はどの葉を使おうかしら」
「今日も私が紅魔館の門を守る」
「紅魔館に居られて私は幸せだ」
「あの魔法の研究を進めようか」
「外へ出られる日が楽しみだな」
そのような意識がさとりの意識に流れ込んできたので、二人は紅魔館を後にした。
作品情報
作品集:
28
投稿日時:
2011/08/19 21:26:59
更新日時:
2011/08/20 06:26:59
分類
百物語とは関係のない馬鹿話
ちゃんと話してくれたことと全く矛盾が無い。
我欲を捨て、皆のために尽くす名君の不慮の死。
愛おしい彼女の死出の旅が幸多からん事を。
素晴らしいカリスマ溢れる当主だ。少なくとも5人の中では