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『フランドールの華麗なる日常7』 作者: 機玉
【戦闘シミュレーションpart2】
さて、昨日の続きだ。
永遠亭、冥界、八雲までは終わったから次は彼岸や天界、特定勢力に属さない妖怪を潰してみようか。
・小野塚小町
距離を操れる死神。
まず三途の川の前で戦うのは怖いのでどっかに誘い出す必要があるが、幸い彼女はよくあちこちをぶらぶらしているらしいのでそこに仕掛けよう。
距離を操れるというのがどの程度の速さかは分からないが私よりも早く間合いを詰められると考えておいたほうが良いわね。
となるとなるべく相手に位置を覚られない状態で戦いたい。
まず距離を操っても壁を抜けられるわけではないだろうから遮蔽物をたくさん用意しよう。
あとは気付かれるまで遠距離から遮蔽物を高速で変えながら爆撃して、こっちまで来られたら装備を固めた状態で肉弾戦かな。
私よりも力強いって事は多分無いと思うしこれで大丈夫だと思う。
・四季映姫
地獄の閻魔様とか勝てるわけないじゃない。
とか言ったら終わってしまうので一応頑張って考えよう。
まずいる場所からして問題だらけだ、是非曲直庁は三途の川の向こう側にあるわけだから行けるわけがない。
だが意外と彼女もオフの時はよくこっちに来ているそうなので死神と同じようにそこを狙えば良いだろう。
全然関係ないけど死神とか閻魔様そんな簡単にこっち来ちゃって良いのかとか色々言いたい事があるが、まあそれは置いておこう。
それで見つけたらどうするかだけど、閻魔様は死神と違って厄介かつ怪しげな道具やら技やらをいくつか持っているので気を付けないといけない。
特に浄頗梨審判とかいうのが厄介だ、自分が敵に回ったら何をしだすか分からない。
なんかこればっかりでつまらないけどやっぱり気付かれない所からボコボコにするのが望ましい。
とはいえ彼女の能力はそういう隠蔽とかに対して有効そう、な気がするのでそういうのもダメなんじゃないかと思う。
打つ手ないじゃん。
そうなるともう初撃の奇襲成功させたらあとは頑張って勝負するしかないわね。
彼岸の妖怪の総評は、ぶっちゃけ戦いたくない。
ここまでは言わなかったけどそもそも死神とか閻魔とか殺せるか分かんないし自分が死んだ時にお世話になる可能性がある相手に喧嘩売りたくない。
また彼女達も必要がなければ下界の事に干渉しないだろうし戦う必要が出てくる可能性も多分少ないだろう。
じゃあ次天界。
・永江衣玖
龍宮の使い。
そもそも会う事が滅多に無いという戦う以前の問題を抱えている妖怪。
例え会えても下界の事にも興味なさそうだし面倒臭がりだというからこっちから手を出しても相手がとっとと姿を隠して逃げてしまうだろう。
この妖怪だけは何があっても戦闘が成立しないだろうから考えないで飛ばそう。
・比那名居天子
幻想郷一帯の地震を鎮めていた生前の功績を讃えられて天人になった地上の神官、名居守(なゐのかみ)……の部下である比那名居(ひななゐ)一族の令嬢という微妙な立場の天人。
先程の龍宮の使いとは打って変わって好奇心旺盛かつ傍若無人でプライドが高い。
ちなみになんでここまで経歴が分かっているかと言うとはたてに頑張ってもらった。
挑発に乗りやすそうな直情的思考だが腐っても天人でお嬢様、それなりに頭は回るだろうし戦闘も強い。
下手な策は弄さずに正面から相手が油断している内にボコボコにするのが良いだろう。
天人五衰という有名な言葉もあるように天人は普通に殺せるらしいし頑張ればいけるんじゃないかしら。
天界の総評は、特に無い。
元々天界の住民は彼岸の妖怪以上に基本下界に降りて来ないし比那名居天子が例外なだけなので彼岸と同じように彼女以外はほっといていいと思う。
次はとりあえず特定勢力に属していないと思われる奴を潰していこう。
・伊吹萃香
最近になって急に現れた鬼。
密と疎を操るという能力を持ち、自身の身体を自在に変化させたり様々な物を萃める事が出来る。
鬼特有の圧倒的パワーと様々な姿に変化することができる妖術を使いこなす強力な妖怪だ。
倒す為には入念な準備が必要になるだろう。
まず相手を逃がさないように結界で閉じこめなければならない。
霧になったり小さい分身に分裂したりすることもできる彼女は不利になればすぐに身を隠すことができる。
退路を塞がなければまともに戦うことすらできないだろう。
逆に言えばここさえしっかりすればこちらのフィールドで有利に戦いを進めることができる。
あとは柊の葉や鰯の頭を炊いて煙を出す、大豆を粉末にした物をまいて粉塵爆発を起こすなどを繰り返して変化ができない程度に弱らせた後、殴りまくればいいかな。
相手は鬼だから念を入れて適当な洗礼武装でメッタ刺しにしておいてもいいかも知れないわね。
・メディスン=メランコリー
毒を操る人形妖怪。いわゆる付喪神という奴だと思う。
つい最近つい最近誕生した新米のようだが、毒を操る能力を用いて相手の動きを封じつつ追い詰めるなかなか強力な妖怪。
とはいえ場数はまだ踏んでいないので普通に倒せると思う。
毒に侵されないように距離を取りつつ魔法を撃ち込めば良いはず。
・風見幽香
四季のフラワーマスターの異名を持つ古参の大妖怪。
スペルカードルールができてからは基本的に花を利用した弾幕しか披露しなくなったという話だが彼女との戦闘で最も恐ろしいのは鬼ともタメを張る常軌を逸した圧倒的なパワーとそれを活かした格闘だ。
攻撃に死角がほぼ存在しないこの妖怪と直接戦闘するとなればかなり厳しい戦いを強いられる事になるだろう。
相手に地の利がある所で戦っては花と言う名の光学兵器で十字砲火されてまず勝ち目は無い、その上こちらにとって有利な所であろうが花をどんどん咲かされてしまえば無意味だ。
ヤバイわねコイツも強過ぎる、どうしようかしら。
うーん……毒はどうだろう。
こっちは遠い所にいたまま重装備で守りを固めて空気中に流れても薄まらないタイプの毒とかなら戦力削げるかも知れない。
それに無色無臭の毒なら気付かれることなさそうだしなかなかいけそうじゃないかな。
弱ったところを遠距離から叩けばそれなりに勝算はありそうね。
というかこれ別の妖怪にも使えそうな戦法だな、後で書き加えておこう。
今日はここまでかな、最近新しく来た妖怪とかもまだ結構いるし続きはまた今度考えよう。
【熱と冷気のコラボレーション】
先日空と一緒に何かしようと言った時は彼女の希望に従って冶金をしたが、せっかく核融合が起こせるんだからもっと別の事もやってみようかと思った。
そのためにこの前は大雑把にしか調べなかった核融合について少し踏み込んで調べてみたのだが、そこで少し面白い事実を発見した。
よし、早速検証の為に空を呼ぼう。
「こんにちはフランドール、今度は何?」
「こんにちは、この前私とその剣作ったのは覚えてる?」
「うん、詳しくは覚えてないけど一緒に作った事なら」
流石に毎日持ち歩いてれば覚えているのかな。
「それで今日呼んだ理由なんだけど、ちょっと難しいかも知れないからよく聞いてね」
「分かった」
「まず、あなたの能力は核融合を操る事、これは良いかしら?」
「うん、そうよ」
「この前の冶金の時も能力を使って金属を溶かしたのよね?」
「溶かした……と思う、よく覚えてないけど」
「実はその時核融合はしてなかった可能性があるのよ」
「え?」
「後から調べてみたらあの時の炎の温度は核融合にしては低過ぎたみたいなの。
でそれで、改めて空の能力について検証したいから協力してくれる?」
そうでなくても私はあの時近くで一緒に作業していたわけだから核融合が起きていたらその余波で灰になっていたはず。
今更ながらヤバイ程迂闊だった。
「うん、分かった」
「よし、じゃあちょっと付いて来て」
さて、私が空を連れてやって来たのは紅魔館の室内プールだ。
ここならば核融合の実験を行うのに最適の条件が揃っている。
とはいっても当然このままここで核融合しては紅魔館が消滅してしまうので、あらかじめ室内プール全体を莫大な熱に耐えられる魔法金属でコーティングしておく必要はあるけど。
ちなみに私の部屋は中からだろうが外からだろうが何が起きようともビクともしない設計になっている。
「ちょっと待ってて」
「うん」
持ってきた魔法金属を錬金術を使って室内プール全体に広げる。
さらに冷却魔法の術式を刻み込み、核融合が起きたらすぐに部屋全体を保護できる状態にする。
これでプールに水を張れば準備完了だ。
おっと、私が怪我をしないようにアーマースーツをちゃんと着ておかなくては。
「この前溶かした時あなたは多分熱量を加減してたんだと思うのよ」
「あ〜うん。この前の事は覚えてないけど加減はできるわよ」
「じゃあその加減した熱量で能力を使ってくれるかしら?」
「分かった」
空がプールに向かって炎を放ち、私がそれに解析魔法をかける。
凄い熱量が発せられてはいるけどそれを除けばただの炎ね。
「もう止めていいわよ、ご苦労様。結論から言うとあなたが出しているのは核融合反応でもなんでもなくただの炎ね」
「え、私核融合使えないの?」
空が悲しげな顔を見せたのでフォローしてあげた。
「いや、貴方が八咫鴉の力を身に付けている事は多分事実よ。
そうでなければ触っただけで私が死にかけたりするはずが無いし。
だけど多分今使っている熱量なら核融合を使わなくても普通に出せるから自動的に普通の炎がでるように切り替えられているんでしょうね。
核融合反応で発せられる熱量は多分貴方の想像を遥かに上回るようなヤバい量よ。
そこまで熱量が必要ないから今の炎はふつうの炎なんでしょうね」
多分空が然るべき妖怪に消されなかったのも核の炎使ってなかったからなんだろう。
「なるほどー、じゃあ思いっきり炎出してみれば核の炎出せるのかな」
「見れると思うけど貴方の住んでた地底も幻想郷も、外の世界も何もかも無くなっちゃうと思うから止めといた方いいわよ」
「そうなんだ。うーんそれはちょっと嫌だから止めておこうかな」
「代わりに今日もなんか面白そうな事しましょう」
「お、いいね。今日は何する?」
「そうねえ」
実験が早々に終わったので今日は空と一緒にまた遊ぼう。
さて、何をしようか……そうだ前から考えておいたアレをやってみよう。
「ちょっと待っててもう一人呼ぶから」
私はポケットから通信玉を出して起動した。
「もしもしチルノ?ちょっと今から面白い事するから来て欲しいんだけど…」
というわけでチルノと空と私の三人で今プールにいる。
「あ、あんたこの前の凄い熱い妖怪!」
「え、あなた誰?」
「会ったじゃない!この前あの地面の中にあった変な場所で!!」
「うーん、ごめん私仕事中はちょっと夢中になっててあまり周りが見えてないから……」
「あんな戦って覚えてないとか納得行かないー!!」
「はいはいあなた達の間に何があったのかは知らないけどちょっと落ち着いて。
今日はケンカする為に集まったんじゃないんだから」
「あ、そういえば面白い事するとか言ってたわね。何するの」
「それはねー……あれ、なんだっけ?」
「え?」「は?」
あれ、何しようとしたんだっけ?本当に思い出せない。
「ごめん、なんか知らないけどうっかり忘れちゃったみたい」
「……フランドール、大丈夫?」
「フランドールいくらなんでも呼び出したそばからそれはちょっとあんまりだと思うんだけど……」
「ちょ、ちょっと待って。今必死こいて思い出すから」
えーとマジで何しようとしたんだっけ。
チルノ呼んだってことは多分、というか絶対この娘の能力使った何かしようとしたわけで、空と何して遊ぼうか考えてた時に思いついたってことは空の能力も必要になる事のはず。
という事は熱と冷気を使った何か、即ち!……駄目だ思い出せない。
あーもうなんでこんな時に限って忘れて思い出せないのかなー。
もういいや、思い出すのは諦めて何か別の事考えよう。
熱と冷気暑いのと寒いの熱いのと冷たいの下は大火事上は洪水なーんだそれはお風呂ー、、、そうだ!!
「よし二人共、アイス天麩羅作りましょう」
「「何それ?」」
私は二人を連れて自分の部屋に戻ってきた。
たまに知り合った奴に見せると意外そうな顔をされるのだが私は料理がそれなりに好きだ。
魔法と同じように色々試行錯誤が出来て楽しいし、何より美味しい物を作るという目的がはっきりしている点でやりやすい。
そんなわけで私の部屋にはそれなりに立派なキッチンが備え付けられている。
具体的に言うと霊夢がお金の力だブルジョワだとぶつぶつ言う程度には立派な設備だ。
そんなわけで天ぷらを作る程度ならばわけはない。
「えーと牛乳、卵、バニラビーンズ、グラニュー糖、バターに生クリームと。それから衣に使う小麦粉かな」
「本当にアイスを天ぷらに出来るの?溶けちゃいそうなんだけど」
「頑張れば出来るらしいわよ。外の世界の料理が伝わって最近人間の里で天ぷら屋が作ってるって聞いたわ」
「うーん私天ぷらは作ったこと無いんだけど」
「ほとんどは私がやるから大丈夫よ、二人は私を手伝ってくれればいいわ」
「「分かった」」
というわけでまずは材料をバニラビーンズをこそぎだして卵から卵黄だけを分けておく。
今回は繊細な作業をしなければならないので全部念動力で慎重に行う。
続いて材料の一部を混ぜて加熱。
「空、火出してこのボウル温めて」
「分かった、どれぐらいの火力?」
「弱くていいわ、水を沸騰させられるぐらい」
「能力使ってお湯を沸かしたことは無いから分からないけど、とりあえず弱火になるようにしてみるわ」
前回の冶金の実験から空とはちょくちょく火力調節の訓練を一緒にしており。主に低い温度に留める方向で結構彼女の腕は伸びた。
おかげで私の補助なしでも料理に使える火を生み出すことが出来るのだ。
さて、そこからの細かくて繊細な調理工程については省略し、冷やす所まで飛ばす。
「チルノ、このボウルゆっくり冷やして」
「オーケー、やっと私の出番ね」
チルノにゆっくり冷やしてもらい、慎重に様子を観察しなが見守ってなんとかアイス完成。
今回は省略しまくってるけど実際のバニラアイス作るとなると本当に大変なので作りたいと思った諸君は入念な準備の上で慎重に望んで欲しい。
「おー美味しそうじゃない!」
「すごーい良い匂い!」
「まだまだ、確かにバニラアイスは美味しいけど今日はここからが本番よ。
今からこのアイスを熱々の油の中にダイブさせ、揚げる!」
「え、そんな事したら溶けちゃうでしょ?」
「チルノの言う通りだし、水を熱い油に入れたらダメってお燐も言ってたから危ないんじゃない?」
「至極もっともな意見ね。でも大丈夫、こんな時の為に魔法があるのよ」
他の魔法使いが聞いたら激怒しそうなセリフだが気にしない。。
私に言わせれば便利なものは何に使おうが本人の勝手だ、ただしやった事に伴う責任も全て本人が負うという前提のもとでだが。
というわけでバニラアイスを適当な大きさに丸くし、空気温度その他諸々を全く通さない丈夫な薄い結界で一つ一つを丁寧に包んでいく。
続いて包んだ結界ごと衣に漬けながら油を入れた大きい鍋を用意する。
「チルノ、危ないかも知れないから念のためキッチンから出て私の部屋にいて。
空、この鍋思い切り温めて頂戴」
「よしきた、それー」
次の瞬間、鍋と油は心中してしまった。
「ごめん、私の言い方が悪かったわ……キッチンにあるのは料理用のただの鍋だから鍋と油が蒸発しない程度に思い切り熱を加えて」
「分かった」
二回目は何事も無く鍋を温める事ができ、無事中の油も音を立てて沸騰を始めた。
よし、いよいよ本番だ。
「さあバニラアイス選手のダイビングテクニックとくとご覧に入れましょう、鍋の中にドーン!」
ふざけて大げさな言い回しをしたが勿論急にブッ込んだら油が跳ねて危ないので念動力で持ち上げてゆっくり入れる。
あとは特筆すべき作業も無し、揚がったら油から取り出して料理は終わりだ。
「よしできた、後は食べる前に結界を解除するだけね」
「そういえばフランドール、人間もこれ作ってるって言ってたけど、人間も結界使えるの?」
「おお、空結構良い質問するわね。答えは使ってるかも知れないし何か別の方法があるかも知れない、よ。
これは私がどんな食べ物か聞いて勝手に考えた作り方だからもっとちゃんとした作り方があるのかも知れないけど、まあそこは商売道具なんだから聞いても教えてくれないでしょうね」
「ふーん」
「おーいチルノ、出来たから食べるわよ」
「もう出来たんだ」
チルノを呼んで三人でリビングのテーブルを囲む。
念動力で皿を取り出し、鍋から盛りつけて完成だ。
「よしじゃあ今から結界を解除するから冷めない内にどんどん食べてね、ただしチルノは外の衣が熱いかも知れないから気を付けて。
空は、まあ何も気にしなくて大丈夫でしょう。
じゃあいただきます」
「「いただきまーす」」
三人で一緒にアイス天ぷらを食べ始めた。
「おーあったかくて面白い!」
「外は熱いけど中が冷たいから普通に食べれるわね、美味しい」
「うんうん、我ながら結構よく出来てるみたい」
最初にこれ考えたの誰なんだろうなー、アイス揚げるとか正気とは思えないけど、そういう常識では考えれないような事をする奴がいるから人間は面白い。
「今日も楽しかったわねー、二人のおかげで美味しいも食べられたし良かった良かった」
「でも最初に私達を呼んだ理由は結局思い出せなかったのよね?」
「ごめんなさいきっとその内多分思い出します」
【夢】
気が付くと私は白衣を着て妙な場所に立っていた。
今いるのは巨大な水槽のふちだ。
水槽の中には底が暗くて見えなくなるほどの大量の水が貯められている。
中では何か巨大な生物が動いている、鋭い牙を口に大量に生やしたいかにも獰猛そうな水棲生物だ。
私は実際に見た事がないから分からないが所謂鮫という奴なんじゃないかしら。
私が立っている水槽のふちに目を移してみると私と同じように白衣を着た人間達が等間隔に並んで立っていた。
彼等はじっと動かずに立ったまま黙って水槽の中の様子を観察している。
物音一つしない奇妙な空間の中で私は今度は水槽の反対側のふちに見てみようとしたその時、突然頭上で何か物音がした。
見上げてみるとそこには巨大な「腕」が動いていた。
巨大な腕と言っても別にそこにだいだらぼっちが居た訳ではなく、鋼鉄で出来た腕だけの謎の物体が唸りを上げて動いている。
これはは恐らく外の世界にある重機とか言うものかも知れない、何かの写真でだけ見たことがある気がする
腕の付け根は水槽の端に向かって伸び、そこではやはり白衣を着た一人の人間が手を使って何かを動かしていた。
どうやら彼がこの腕を操っているようだ。
腕を動かして何をする気なんだろう?
私が天井の腕の動きを観察していると、おもむろに腕が水槽の反対側へと伸び、巨大な手で何かを掴み取った。
腕はそのまま何かを水槽の上に持って来ると中にそれを落とした。
すると、中にいた生き物が動きを変え、それに向かって殺到するとあっという間にがぶがぶ噛み付いて食べてしまった。
その様子を見ながら私の側にいた白衣達は初めて動きを見せ、どこからか筆記用具を取り出すと水槽の様子を観察しながら何かを書き留めた。
私は何もしなかったが誰も何も言って来なかったので別に何もしないままで良いのだろう、きっと。
それよりも腕が何を掴んだのか気になったので、今度こそ水槽の反対側を観察して見ることにした。
反対側を見てまず目についたのはその圧倒的な量だ。
がらがらのこちら側とは違い、向こう側には何かが物凄い量で置かれている。
あんなに置いておいて落ちないのだろうか、とか思ってたら私の意思を汲んだようにその内の一個がもぞもぞ動いて水槽の中に落っこちた。
水槽の中の生き物にも見向きされず、落ちてしまったそれはぶくぶくと水槽に沈んでやがて見えなくなった、あの生き物は腕が落としたものしか食べないのだろうか。
それにしても、先ほど動いたという事はあれは生きている何かなのかも知れない。
私はもっとよく目を凝らして反対側を見てみる事にした、吸血鬼の視力ならば頑張れば反対側の物の正体も見極められるかも知れない。
あれは、胴体がとても大きい生き物かな?頭と胴体の大きさに対して手足が不自然に短いのが目に付く。
頭は普通に大きさなのにまるで亀を縦向きにしたように手足が短い、いや、あれは……手足が無い?
なるほど、あれは人間か、少なくとも人間の形をしていたものなのかも知れない。
不自然に短い四肢は恐らく元々あった手足を切り落とした跡で、そこを何かで包んでいるように見える。
また顔に相当する部分には全員仮面が被せられていて、髪は全員剃り上げられているわね。
これでは誰がどう見ても元がどんな姿だったのか検討も付かないだろう。
あるいは敢えてそうしてあるのかも知れないが。
と、夢中で見ていたせいかここで私は足を踏み外して水の中に落ちてしまった。
やはり水中の生き物には襲われなかったけど服がずぶ濡れになっちゃったわね。
どうしようかと考えていると近くにいたと思われる白衣の人間が音もなく私の前に立った。
何をする気かと思うと私の腕を掴んで無造作に引っ張り上げた。
私を助けるためというにはなんとも味気ない素振りね、単に私がプールの中にいては邪魔だったのかも分からない。
こうしている間にも腕はちゃくちゃくと仕事を進め、白衣達はメモを取っていたから可能性は十分にある。
引き上げられた私は一応礼を言ったが、彼はそれを無視して横を指さした。
よく見てみるとプールの端にドアが見える、あそこに行けということらしい。
この部屋には特にもう目新しい物は無かったので私は大人しく従って出ていくことにした。
ドアを出るとそこにはシャワールームがあった。
さらにシャワールームのドアを開けると脱衣所があり、私の服が用意されていた。
ずぶ濡れのままでは流石に嫌だったのでありがたくシャワーを浴びさせてもらうことにした。
自分が着ていた白衣とスーツを脱ぎ捨ててシャワーの水栓を捻った。
水槽の水は冷たかったので温かいお湯が心地良い。
身体が温まった所で脱衣所に出てタオルで身体を拭き、用意されていた服を着た。
今度は先ほどとは全く違う青いドレスだ。
先程の服とは全く違うが、私は気にせずに脱衣所のドアを開いて出た。
脱衣所を抜けるとそこは舞踏会の会場だった。
たくさんの人間が楽しげに踊ったり用意された席で談笑したりしている。
私が子供の頃にはこんな舞踏会がよく開かれていた気がする。
お姉様は両親にくっ付いて楽しそうに歩き回っていたが、私は全く興味を惹かれなかったので端っこに座ってひたすら飲んだり食べたりしていたっけ。
でもよくよく見ると私の記憶にある舞踏会とは違う点がある。
全員が顔に仮面を付けているのだ、しかもどれも個性のない同じような地味な仮面だ。
誰も彼も楽しそうにしているのに付けている仮面がそれなのでなんだかおかしい。
と、そこで先程のプールの反対側にいた人間もどきを思い出した。
ああ、よく見ればあれがつけていた仮面もこの人間達が付けている仮面にそっくりかも知れないわね。
それから軽くこの部屋を見回してみたが、特に目新しい物は無かったので空いた席にあった適当な料理と飲み物を拝借して舞踏会場を出た。
どの人間も自分がしている事に夢中だったので誰も私には気付かなかった。
舞踏会場を出ると今度はリビングだった。
リビングといっても紅魔館のような立派なものではなくごくごく普通の庶民の家にありそうなリビングだ。
今度は部屋の中に誰もいなかった為、真ん中に置かれたソファーに座って一休みする事にした。
前のテーブルに持ってきた飲み物と料理を置いてゆっくり身体を横たえた。
とりあえず喉を潤そうと思って飲み物に口を付けたらそれはコーヒーだった。
「マズイ、私は紅茶派なのよ」
そこで、目が覚めた。
「っていう夢を見たのよ。私って自分がまともだとは思ってないけどこんなおかしな夢見るほどおかしかったのかと思うとなんだかへこむわ」
「夢なんて大抵は支離滅裂な内容でしょ。別に気にする必要もないと思うわよ」
「そっか、お姉さまも夢は支離滅裂なのね。
じゃあなんで夢って自分が考えたこととは思えないぐらいおかしな内容になったりするのかしら?」
「そんな事、私に分かるわけ無いじゃない」
そんなある日の朝御飯の席での会話。
後書き
お久しぶりです、更新が随分遅れてしまい申し訳ありません。
久しぶり過ぎてキャラが変わってる奴がいるんじゃないかと少し不安です。
今回実は皆さんに謝らなければいけないことがもう一つあります。
【熱と冷気のコラボレーション】で突然フランドールが何で呼んだのか忘れたとか言い出していぶかしんだ方も多いでしょう。
実はあれ単に私が書こうと思ってたネタを忘れてしまっただけなのです、続きについては急遽考えなおしてなんとか持たせました。
本当にすみません、思い出したらまた改めて書かせて頂きます。
そして今回自分の失態を押し付ける形になってしまったフランドール、ごめんさい。
ではここまで読んで下さった皆さんありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
12月14日コメント返信
皆さん感想ありがとうございました
>>NutsIn先任曹長さん
いつも長い感想を書いていただきありがとうございます。
戦闘シミュレーションについては今回あまり変わり映えのしない話になってしまったので次回はもうちょっと違う展開の仕方をしてみたいと思います。
空の忘れっぽさはちょっと謎ですね、このss結構物騒な事結構言ってる割には物騒な展開はあまり無いかも知れません。はい、最後のセリフは作者の代弁となっています。
夢については、作者が見た夢を少々アレンジして書いた物になっています、考察しがいのない元ネタですみません……フランドールが何を考えているのかは書いている作者もあまり良く分かっていない状態です。
>>んhさん
ありがとうございます、フランドールは今後もやりたい事を色々試行錯誤していくと思いますのでよろしくお願いします。
>>3
ありがとうございます、大好きだと言っていただけると非常に励みになります。これからもこのシリーズは書き続けたいと思っていますのでよろしくお願いします。
>>4
ありがとうございます、自分が書いたキャラを好きと言ってもらえると嬉しいです。
そういえばフランドール強そうな能力持ってましたよね。次回言及してみるようにします。
揚げバターは正気とは思えませんでしたね、誰がどんな発想のもとに生み出したのか気になります。
このフランドールは吸血鬼や貴族である事を誇りとしてはいませんが、それによって生じるメリットがある為煩わしく思っているわけでも無いという感じです。恩恵を受けられる立場である事を合理的にありがたく思っています。
機玉
http://beakerinsect.blog136.fc2.com/
作品情報
作品集:
29
投稿日時:
2011/12/10 11:15:54
更新日時:
2011/12/22 15:59:55
分類
フランドール・スカーレット
霊烏路空
チルノ
レミリア・スカーレット
短編連作
12月22日コメント返信
待った分、より一層面白く読ませていただきました。
【戦闘シミュレーションpart2】の感想
結局、不意打ちが一番有効となりましたか。
実際、無理に戦う必要の無い相手ですがね。
【熱と冷気のコラボレーション】の感想
常温核融合でもやろうとして、それを危険視した『然るべき妖怪』に記憶を消されたのかと思いましたよ。
フランちゃんの最後の台詞は、作者様の物ですね。
結局、妙に手の込んだアイス天麩羅作りとなりましたか。
これはこれで面白かったですが。
【夢】の感想
白衣を着て観察者になったのは、フランドールは支配者階級であるとの暗喩か?
『鮫の餌』に手足が無くて無個性なのは、一般庶民だということ?
『舞踏会の参加者』も餌と同様に見えたのは、餌と同様に興味を引くものではないということか?
最後、リビングで飲むコーヒーは、一般庶民の生活に憧れてはいるが、相容れないことを自覚している?
以上、勝手な憶測でした。
フランちゃんの試行錯誤っぷりが相変わらずかっこかわいい
このシリーズ大好きです〜
このシリーズのフランちゃんが好きです
「きゅっとしてドカーン」すれば大抵の相手は倒せる気が…とも思いましたが某動画のように溜め時間に距離を詰められたらと考えると色々と考えられますね。
「人間は面白い」ふと、メリケンが作った究極の超高カロリージャンクスナック「揚げバター」を思い出してしまいましたw
研究者、探求者としての自分(フランちゃん)は生き生きとしてるけど、高貴な者、吸血鬼としての自分はつまらない。そんな感じに思えました。
このシリーズの続きを期待してます。
夢の話は産廃的な展開になるんじゃないかとすごくワクワクしてたけどそんなことなかったぜ!
賢くて達観してるけど好奇心旺盛でたまに人間らしいミスや考えもしちゃうこのフランちゃんが可愛くて仕方ないです