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『Romantist taste』 作者: 猫好き&Ω
ヨーロッパ調のこじゃれた椅子には割と思い入れがあった。
それはもう古くて、小柄なレミリアが腰掛けるだけでぎし、と軋んでしまう。
そんなアンティークを使い続ける密かな愛着と執着は、幼い容貌に反するに五百年の歳月を積み重ねてきた、レミリア・スカーレットの確かな風格に違いない。
まずは椅子に腰かけた。やっぱり軋んだ。なんだか嬉しい。「待ってたよ」、って語りかけてくれた気がしたから。
天を仰げば幻想の夜空。星が増えてる気がするな。またあの白黒の魔女気取りが騒いでいるのだろう。よい子は寝る時間なのに。
バルコニーはお気に入りであり、手入れは欠かさない――もちろん咲夜が。
日中に利用する際は香霖堂特注のビッグパラソルで天敵の日光を遮断している。ビーチパラソルを無骨に拡大したようなデザインに目を瞑ればなかなか使える代物だ。レミリアは正直、あの若造店主を侮っていた。今はそれなりに評価してるけど。
夜間の今、パラソルは仕舞ってあった。
月光は糧。日光浴ならぬ月光浴至上主義。
ただし、月光だけで満足できたら苦労しない。
十五夜だってそうでしょう? 誰だって月見も団子も求める貪欲な生き物。
「咲夜」
レミリアはパチンと指を鳴らした。
「お呼びですか、お嬢様」
するとどうでしょう。
甲高い摩擦音が響き渡り、山彦となる前に前にそいつは現れた。
リフレーンすらできない一秒は今、自分のプライドを傷つけられていることにショックを覚えて、思春期の少年のように何でも壊したくなっている。
右手に懐中時計、左手にティーセットを揃えたお盆をそいつは持つ。
足元に散らばってるのは五枚のトランプ。スペードのエース、ハートのクイーン、クローバーのジャック、ダイヤのキング。
最後の一枚は無論――ジョーカー。
ジョーカーは彼女の分身。何故なら彼女は詰め――紅い悪魔の切り札だから。
悪魔の忠犬――十六夜咲夜は微笑んでいる。
鷹のように凛とした瞳も剣呑ではない。絶対的な忠誠の表れか、彼女は主人に裏表を見せない。
ただ、見せないだけだ。瞳の裏で息を潜めている。暴かれるのを承知の上で、渦巻く感情をわざわざ隠しているのだ。
駄犬が、とレミリアは小さくぼやいた。
吸血鬼特有の発達した犬歯が月明かりに照らされ、鈍く光る。
意地悪く唇を釣り上げて笑むその優雅な佇まいには悪魔の残忍性と、五百年の歳月による妖しい魔性が絡み合っていた。
「お茶を用意しなさい」
「はい、ただいま」
犬は主人に逆らってはいけない。
咲夜は手慣れた手つきで紅茶を淹れ始めた。
「少し、お待ちを」
「主人を待たせる気なの?」
「ポットから滴る紅茶の音が、お嬢様に相応しい風流かと思いまして」
「へえ……言うじゃない」
白い花型のカップが芳醇な香りで満ちてゆく。
揺らめく薄い朱の水面(みなも)が白い月の光と戯れる。
「お待たせいたしました」
「ご苦労様」
ことり。
レミリアはカップの柄を摘むように握った。
アッサムの香りが鼻腔を撫でる。自然と口角が緩む。いい香り。
「咲夜」
「はい」
「おいで」
「……はい」
どうしてそんなに動揺しているの?
微笑み率100%? 甘いね。幼い女傑の赤い双眸を舐めては困る。
レミリアは楽しくて仕方ない。
くすくす、くすくす。不安ってのはレモネードのように広がる。簡単には収拾がつかない。
咲夜は乱れぬ歩調で主人の一歩手前まで近づき、ゆらり。陽炎のように跪いた。
いかなる時も美しく、優雅に。
これはレミリアが咲夜に叩き込んだ従者の掟。
裏を返せば――忠犬の首輪だ。
血を刷り込んだように赤く、長い爪。
レミリアは爪で傷つけないように、咲夜の顎をくいと手繰り寄せる。
咲夜はもちろん抵抗しない。
嗚呼――レミリアは感嘆する。
美しい。
十六夜咲夜は、とても綺麗な女の子だ。
近くで見れば見るほど、心を奪われそうになる。
少し癖のある銀髪も、薄い桜色の唇も、ナイフを握るのに少し心もとない、か細い指も。
そんな彼女が自分の所有物というこの現実。思わず失禁して、白目を剥いて、頭の天辺から足の裏まで痙攣させてしまいそうになるほど、それは刺激的で快楽的な麻薬だ。
そう、彼女が悪いのよ。
そんなに美しくて、綺麗で、愛おしいから……グチャグチャに壊して、犯したくなるの。
自分のモノに、したくなる。
「ッッッ――――!!!」
押し殺された、音無き悲鳴。
十六夜咲夜の麗らかな美貌は、歪んでいた。苦痛によって。
頬を伝って、ポタ、ポタ。滴っているのは涙なんかじゃない。さらりと滑り落ちる。
くるり、と半回転。
レミリアが起こした行動はそれだけ。
カップを持った手を咲夜の頭上でくるり、と時計回りに半回転させただけ。
それだけで紅茶は零れた。
零れてしまった。カップは最後まで紅茶を守りたかった。でも、無力だったのさ。力無き者は奪われるだけだ。
恋人(カップ)への逆恨みとばかりに紅茶は牙を剥いた。
あの娘を穢してやる。傷をつけてやる。消えないシミを残してやる。
その復讐は叶ったか。
元凶(レミリア)には目も暮れず、自らの激情と先入観に駆られ、紅茶は娘(咲夜)を襲った。
誰もそれを咎めない。この場に第三者は居なかった。
「ッ…っ…………」
熱い、熱い。
耐えがたい高熱の滝に打たれた咲夜。少量といえど、頭から直撃。
苦悶の影が微笑み率を削る。翳ってきた。彼女は苦しんでいるのだ。
それでもまだ、彼女はじっとしている。「待て」と命令された犬のように、動かない。歯を、食い縛っている。
たまらない、堪らない、タマラナイ――最ッ高!!!
ゾクゾクとレミリアの背筋が震える。かちかちと奥歯が鳴る。興奮のあまり、口が言うことを利かないのだ。
トリップ・ダンサー。次は何をしようか――計画なんてもうどうでもいいや。
決めたんだ。
この駄犬を犯す。
美しく、優雅に。
醜く、ただただ汚らしい欲望のために。
鐘が鳴るまで――くすくす、ひひひっ。
「遊んであげるわ……たっぷり、たぁっぷり」
返事はイラナイ。
もう見えない、何も聞こえないの。
妖艶に笑う紅い悪魔の牙には、敬虔なクリスチャンですら服従させる畏怖があった。
Ω Ω Ω Ω Ω
あれから一時間と二分、ただいま三十一秒が経った。
間違いない。時を操れる所以か、誰よりも時間には正確だ。だからこの部屋に時計はない。
唯一時を形にするもの。
それはぐしゃぐしゃのエプロンに入れたままの懐中時計のみ。金色の鎖、ローマ数字の時刻、ナイフを模った針が二つ。円い小さな、宝物だ。
視界がはっきりしない。
靄ではなく、朝霧? それに脳味噌を舐められてる感じ。目もうす開き。脱力しきってた。
そんな彼女の眼には灰色の天井が映っている。見慣れた天井だ。照明はシャンデリア風。灯りを点ければ赤橙色に淡く光る。
「ぅあ…………」
だらんと開いた口から発した声。喉から絞り出したはずなのに、か細い音。
叫んだからだ。何度も、何度も、何度も……叫んだからだ。喉が潰れてしまったの。
破れた白いブラウスが肌にへばり付いてる。
正直気持ち悪い。でも脱ぐ気になれない。ミニスカートもボロボロ。三つ編みおさげは片方だけ、ほどけてる。
中途半端に露出した白い肌。隠す気にもなれない。ここには、自分しか居ないのだから。
十六夜咲夜は溜め息をついた。腹式呼吸。横になっているから、無意識にそうなる。
口腔に僅かな鉄の臭い。気にならない。それより傷だらけだった。心も、体も。
凄惨だった。
咲夜は、犯された。
主人ことレミリアに、強姦された。
六時の鐘――主人が眠りに就く、暁を告げるその鐘が鳴るまで、休むことなく。
緊縛の痕跡が太ももにチラついてる。
鞭だっけ。縄だっけ。うっすらと充血した太い轍が、体中に巡っている。
右手の薬指、爪が剥がれてる。痛いけど、咲夜は泣かない。独りで泣いたって、虚しいだけ。
下着は脱がされていない。
しかし見るも無惨。酷い有様。使いかけの襤褸雑巾のよう。
決められないだろう、心の傷の度合いなど。
本人にしか決められないだろう。
悲しみを教えてくれ。
若しくは哀しさを教えてくれ。
そんな願いをするように、咲夜は片腕で両目を覆う。
お嬢様、咲夜は駄犬です。
でも、頑張りました……お嬢様を満たせたのです。この弱く、軟く、脆い人間の体が、偉大な吸血鬼であるお嬢様を絶頂に導けたのです。
戴いたお休み、十八時間。
咲夜は、さみしくて仕方がありません。
「く……っ、ぅう――ッ……ぅっ、ぅうっ」
嬉しかったでしょ、咲夜?
お役に立てたのよ、咲夜?
なのに、なんでこんなに胸が苦しい?
どうしてつらそうに泣いてしまう?
狂ってるのはどっちなんだろ。
君も彼女のようなモラリティスレイヴ? 偏見、常識、良心、理性。奴隷になるのはさぞ楽だろう。
早く耳にへばり付いた色眼鏡を地面に叩き付け、踏み潰せ。
怒りに任せて何度も、何度も。
イデオロギーなんかに囚われてはいけない。
虚仮脅しに縋れば、そこでロマンはおしまいさ。
Ω Ω Ω Ω Ω
お腹空いた。
腹が減っては戦は出来ぬ。
中華まん二個じゃ足んねーよ!
幻想郷がYellow Monkeyこと紅美鈴。黄色い肌に紅い髪の門番は腹ペコだった。
あまりにもゲートキーパーという名のシエス……失敬。激務に疲れたゆえ、一時休憩。
目指すは本館の一回に在りし大食堂。咲夜さ――には頼めません。妖精メイドにでも一品お願いしよう。外でも食べられる携帯食糧希望。
「う〜〜、はらへりんぐナイト」
まだ朝だ。
つーか早朝だ。
雀がちゅんちゅん。
働きたくないでござる。
まぁ、好きでやってるから愚痴は所詮建前に過ぎない。
紅魔館に門番の必要性は無い。主人のレミリアは非日常を愛する。その体現である侵入者はいつだって大歓迎だ。
美鈴は知っている。レミリアは気紛れで我儘だが、寛容な女傑。
紅魔館門番の意義。それ即ち、自由。お好きにどうぞ。貴女に任せるわ。
美鈴は自由だった。門番など肩書だ。立ち位置は自由。持ち場を離れようが職務放棄にはならない。
有難いね。美鈴は素直にレミリアに感謝していた。
悠久の時を嫌でも生きなきゃいけない妖怪にとって、居場所と暇潰しは必需品さ。
日常と非日常が絡み合う幻想郷。その渦中に存在する紅い屋敷。
自由も刺激もある――最高じゃないか。
自由に縛られた浮雲は大股で廊下を歩く。
血のように赤いカーペットが敷き詰められたこの屋敷に足音は響かない。
閉め切られたカーテンが暗闇を誘うのだ。
この屋敷は燃える太陽を嫌っていた。
飯食ったら何しよう。
太極拳、シエスタ、最近始めたアコギ。
よし、アコギでいっちょ弾き語りショーだ! 観客はこれから集めりゃいい。
ハナから仕事という選択肢はない。何事もほどほどが一番さね。過労はよくないよ? 自愛は大事。
わくわくと美鈴、スキップする。
てってけてってけ。柵を越える羊のようだ。
「め〜りさんのひっつじぃ〜♪ ひっつんっ……おぅ、ぅぇえ?」
「あら、美鈴。おはよう」
急ブレーキで軋む美鈴の靴。ヘンな声上げた。心臓飛び出そうになった。
それもその筈。ご主人様ことレミリアお嬢様に遭遇した。屋内でも日傘を差す理由は、カーテンだけでは安心できないからだ。
ただいま午前の八時強。夜型のお嬢様は自室で毛布にくるまってる――筈だけど。
「なにしてん――いえ。御機嫌ようお嬢様。この時間帯に起きてるなんて、珍しい」
表に曝した困惑を回収する美鈴。溌溂な歌声に対する羞恥は無し。
「無理に畏まらなくていいわよ。長い付き合いだし」
「そうもいきませんね。黄色い猿は礼儀に厳しいのです。そしてそれが誇りなのですから」
「へえ……言うじゃない」
レミリアは目を細めてくすりと微笑んだ。
ただの幼女にここまでの風格、色気は無い。
長生きってのは恐ろしいね。
「まあ、それはさておき。こんな時間にどうしたんです? はは〜ん。さてはトイレに行き忘れたのか、ママの子守唄が欲しくなったのか、はたまたこっわ〜い夢を見て眠れなくなり、誰かに添い寝を頼もうと徘徊している最中なのか……真実は、いつもひとつッ」
「残念ながらゼーンブ、ハズレよ。まあ子守唄には時折憧れるけどね」
というか、寝てた前提なのね――口元を掌で隠し、うふふとレミリアは苦笑した。
イマイチ面白くなかったか? 美鈴は自分のセンスが未熟だと痛感する。
「あ、でも……添い寝なら、ね」
パチンとレミリアは指を鳴らす。
なんか閃いたご様子。ぺろりと舌を出してる。碌でもない命令を示す仕草だな。
やれやれと、美鈴は真摯な眼差しで聞き入る。
腹減った。まあ、仕事だから仕方ない。後回しだ。
Ω Ω Ω Ω Ω
紅魔館、三階。
突き当たりの廊下を右に曲がると、その部屋に辿り着ける。
その部屋が何なのか。それはこの屋敷に住まう者なら皆御存知。
メイド長こと悪魔の忠犬、十六夜咲夜の自室(プライヴェートルーム)だ。
ぼりぼりと美鈴は後ろ髪を掻く。
どうしたもんかねぇ、と呟く。
なぜ、私はここに居るのか。
フィロソフィ的な自問ではなく、先程エンカウントした奔放な紅い悪魔に対しての問いかけ。
――実は咲夜で遊んじゃってさ、ちょっとやり過ぎちゃったのね。
――その罪滅ぼしに今日は私が家事全般をやるから、貴女には咲夜のケアをお願いしたいのよ。暇なんだからいいでしょ?
――え? 自分で蒔いた種なら、自分でなんとかしろって?
――そうねぇ。やってやりたいけど、やってやりたいんだけどぉ……、
――あんな姿見たらね、もう……ッ! くっ、くすくす…くすくす………。
――ねえ、めぇりん……貴女も綺麗よねぇその赤い髪ぃ……うふふh
「おっかないったらありゃしないなぁ……」
回想(キネマ)は最高のフィルムで上映(うつ)される。迷惑極まりない。ポップコーンだけじゃなく、ドリンクもバランス良く寄越せ。
露骨に逃げながら引き受けたのは、やはり自分の身が可愛いからだ。
美鈴は久し振りに見た。あんなに昂ぶってるお嬢様。
こりぁあ、咲夜さんも相当派手に嬲られただろう。御愁傷様。今回が初めてじゃない。
癒しのキューピッドが参りましたよ〜。悪魔に脅されたのはトップシークレット。
装飾はネームプレートのみのドア、長方形で分厚い木の板。質素。以上。特筆事項無し。
女の子なんだからもうちょい可愛らしく飾りつけようよ……。
美鈴ははぁ、とやるせなさそうに溜め息をつく。
こんこん。
「咲夜さ〜ん。めーりんでーす」
こんこん、こんこん。
「開けてくださーい。ぷりーずオープンドアー」
ここんこん、こんこんここんこん。
「ちゅーしたげるからあーけーて〜」
こん。
ノックをやめた途端、シーンと哀しき無響の鳥籠。
帰ろうかな。
アコギ弾きてーし。
「もー、勝手に入っちゃいますよ〜」
帰れたら誰だって定時に帰る。
それが出来ないから残業が存在すんだよ。
がちゃっと軽やか引き戸を開けた。
鍵を掛けないのが癖だってもう知ってる。あの子はズボラ。職務以外には無頓着な、抜けた女の子。
さて、入ったはいいが、真っ暗。
朝なのにカーテン閉め切ってるからか。
なんとまあ遮光性に優れたカーテン。流石吸血鬼のお屋敷ですこと。
「…………」
居る。
気配、吐息、寝息。
ここには人が居る。なら帰れない。
照明点けるのめんどくさい。
そもそも美鈴は着火器具を常備してない。この部屋のどこかに仕舞われてるだろうが、暗闇なので探す気もない。
カーテンを開ければ即解決だ。
「いいお天気ですよー。カーテン開けちゃいますね―」
有無を言わさず入口から直進。手を伸ばせばほら、薄布一枚掌握完了。
美鈴は何度もこの部屋に来ていた。だから窓がどこにあるか、それは既に記憶済みだった。
しゃっ。
すらりとカーテンは滑らかに開く。朝の陽光が雪崩れ込む。
部屋は瞬く間に明るみを帯びていった。
雲隠れは解かれた。
彼女が姿を現した。
広いベッドの上に倒れた彼女。
十六夜咲夜は、そこに居た。
「ありゃま……」
思わず美鈴は息を呑む。
酷いね。つい、口から本音が洩れた。
放り投げられた五体は仰向けで、食い千切られたブラウスや壊されたフリルのミニスカートから覗く白い肌は、痣と血で汚れていた。
紅い嵐に虐げられたなれの果てか。
乳房は露出し、二の腕は丸見え、ボタンは生き残れず、僅かに残ったフリルには黄色いシミがこびり付いてた。
きっと失禁したんだろうなぁ。
美鈴は、改めて眉を顰める。
涙化粧が物語る暴行の軌跡。開いたままの眼はどんより淀んでいる。死んだ魚の眼がいい例だ。彼女の水晶体は曇りきっていた。
生理現象なのか、咲夜は僅かに痙攣している。
夢の中でも彼女はまだ、泣きながら犯され続けていると言うのか――?
「そこまでです」
悲しみってのは捨てない限り消えないんだ。
美鈴は咲夜を優しく抱き起こした。ツンとする臭いが鼻腔に纏わり付く。
それでも美鈴は抱擁をやめない。こんなに華奢な、お人形のような体でよく耐えたものだ。純粋に感動していた。
汚物にまみれた肢体が美しい。泣き腫らしたお顔が可愛らしい。
「この世で本当に不幸なのは、自分を一番不幸だと妄想する弱い意志ですよ」
美鈴は咲夜が大好きだ。妹のようで、愛おしい。
ゆっくり、美鈴は咲夜を穢す傷痕を撫で始めた。円を描くように、綿を転がすように優しく。
「いたいのいたいの、とんでけ」
淡い金色の光が美鈴の指先から溢れる。
じわ、じわ。傷痕が徐々に小さくなる。表面だけでも癒したい。
美鈴の気功が乙女に巡る。巡る、廻る、核まで届かなくとも。
完全には、癒えないだろう。子供騙しでしか、ないのだろう。
それでも美鈴は撫でる。痕跡を消す。痛みも消して、あげられたらな……。
「眠ろう……せっかくのお休みだから、ね」
やがて、美鈴は歌い始める。
そよ風のような小声で、泣き叫ぶように。
彼女は今、怒っていた。
そして同時に、微笑んでいた。
おひさ。
社会の荒波で溺死しそうになったけど、生きてるから良しとする! マイホームに帰れた気分だぜ!
さて、半年以上前に放置していた今作……なんか鬱い。最初はほのぼのエロで行きたかったんだ。
気が付いたら暗めだ。プロットは大事だね。文章が稚拙なのはごめん、これで精一杯なの。
色々書きたいことはあるが、キリがないからここまで。
最後にガンちゃん、期待してくれるとコメントしてくれてたNutsIn先任曹長(長らくゴメン! コメ返し何故かできねーからお返事できんかったorz)、そして読者様!
最後まで閲覧ありがとうございました!
生きてたらまたなんか書くよ! あでゅー♪
猫好き&Ω
作品情報
作品集:
30
投稿日時:
2012/03/25 12:05:17
更新日時:
2012/03/28 01:30:58
分類
THE
YELLOW
MONKEY
鬱っぽい
産廃万歳
3/28に加筆修正
続編執筆可能性アリ
その間に私はプライベートでいろいろありましたが。
さて、今回は感情の発露の下手くそな、紅魔館の主従と門番のお話ですか。
よくもまあ、負の感情をあっけらかんとひけらかし、泣いて笑ってレイプして、ってか。
お嬢様は従者を大事に思っているからこそ、プライベートには踏み込まないようにして、門番に尻拭いをさせたんですね。
門番はそんな主人にぶつける負の感情を表す代わりに、従者を癒すことに専念する。
従者は忠誠の代償に愛情を、汚辱を、憐憫を。
深く醜く刻まれた瑕に染み入る、ささやかな暖かな癒しの歌、堪能しました。
次回作も楽しみにしていいですね? 勝手にしますよ。
それはすでに"紅魔館の日常"の一部に食われているのかも
非日常が日常へ この幻想郷 常識など通用せぬ か
甘美な夢の中を洒落た文章と共に進む
わたしとあなたの間に流れる贅沢な一時…
もっと、もっと見てみたい。
NutSin先任曹長さん
<こんな自己満足文章にそこまで深いこと言ってくれるなんて嬉しいねぇ。産廃はやっぱり居心地がいいよ♪
<んー、でも個人的にオチが弱かったから、そのうち追記、または続編書くかもしんない。そしたらよろしくね♪
十三さん
<洒落た文章とかサイッコーの誉め言葉だよ、結婚してください!
3の名無しさん
<君もトリップ・ダンサーかい? 期待してくれてるのかして待ってておくれ!