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『千切りの契り』 作者: アサトモ
!注意!
このSSは東方夜伽話に投稿した同名の作品に、やり残したことを加筆修正したものとなります。八割ほど内容は同じです。何か問題がありましたらお知らせください。ぬえむらちゅっちゅ。
長年海の中でもがいていた私は重力を受け入れて大地を踏みしめる必要はなく、足の筋肉は痩せ衰えた。歩くという感覚を忘れてどれだけ海にいたのだろう。来る日も来る日も船を沈めた。はじめのうちは、私の船を探していた。この海から逃げ出したかった。だけれど、月日が経つにつれていい加減気付いていた。自分の乗っていた船はもうないのだと。囚われた海から逃げ出したいと願ったのは確かに自分だったのに、船を沈めて人様の命を奪っていくたびに自分の首を、自分で絞めていた。錆びついた見えない鎖で海底に釘付けにされて水面はどこまでも遠い存在で、だけど海の中では泣いても周りのしおっからい水に溶けていってしまう。
それでも船を沈め続けたのは行き場のない苛立ちをぶつけたかったからかもしれない。そうして人々の苦しみを得て、妖怪として成長していくたびに私はある種の快感を得ていた。あの頃の私は妖怪としての格を上げるのも大事だったが、なによりも船を沈めることが好きで、溺れされることが大好きだった。生き甲斐だった。
「あの頃はやんちゃしてたなぁ……」
あしはいい。脚も足もいい。むちっとした太もも、可愛らしい膝小僧、すべらかな曲線、ふくらはぎの膨らみ、抜群の跳躍力を生み出す筋肉。キュッと引き締まった足首、くりくりなくるぶし、山なりになった土踏まず。手ほどは動かない指たち、均等に重みがかけられていてバランスよく適度に硬くなった足裏、しなやかなシルエット……。
泳ぎは自画自賛の『人魚』とも言えるレベルだったが駆けるのは不得意で、陸に上がってからは大変苦労した。聖に救われてせっかく呪縛から解き放たれ自由に歩き回れるようになったのに、発達したのは腕力ばかりで、ついぞ美しい理想の足には成長しなかった。
「毎日ジョギングとかしてても足は成長しないし」
「ムラサさん、おはよーございますっ!」
「あっ、おはよう、響子」
目が覚めて日課のジョギングを済ませて帰ってくると甲斐甲斐しく響子が庭掃除をしていた。汗ばんだ額を手の甲で拭いながら軽く挨拶を済ませる。
「今日はいいお天気になるんですよーお洗濯物が良く乾きそうです」
「それじゃあ、ついでにみんなの布団も干さなきゃ。獣だらけでノミいそうだし」
「ふかふかお布団!」
ノミの部分は軽くスルーされてしまったが、太陽の光をたっぷり浴びてふんわりになった布団を思い描き、はしゃぐ響子は純粋に可愛いと思う。彼女が物干し竿周辺を念入りに掃除しはじめたのと、腹の減り具合で何となくの時間を知った。
「お風呂入る時間あるかしら」
聖の足は恐れ多く、まじまじと眺めてなどいられない。ただ、両の小指に霜焼けの跡があるのを知っている。一輪の足は扁平足でつぶれていた。聖復活のために四方を駆けずり回ったためだろう。彼女と同じ働き者の足だ。
星の足は四つ足で歩いていた時分の名残かふくらはぎが異常に発達していた。あれを噛んだら固そうだ。しかも貧乏ゆすり癖持ち。ナズーリンの足はがりがりで肉がほとんど付いておらず、貧相な足をしていた。スレンダーな足は好きだが、いまいち魅力に欠ける。
響子の足は体の割に小さく、立つときにバランスが悪そうだった。また内股の癖があるのか膝小僧が歪んでいる。マミゾウの足は細長く、親指の位置が張り出している。脚力は申し分ないだろうが、見逃せないあの太ももの皺はセルライトだ。
ぬえの足は綺麗だった。
欲しい。嫉妬するくらいに私が待ち望んだ理想の足だった。
◆
「いつまで寝てるの」
「気が済むまでー」
一輪は割烹着で、傍らにはフライパンと金属のおたまが投げ出されていた。きっと彼らは存分に金属の打撃音を打ち鳴らし、戦い終えたのだろう。だけど、ぬえはそんな音くらいじゃ起きない。
「ご飯抜きにするわよ」
「そしたら人間食べるだけだし。とんとご無沙汰してたから、久しぶりに食べたらすんごく美味しく頂けるかもしんない」
「……とりあえず布団から出なさい、干せないでしょ、邪魔!!」
痺れを切らしたらしい一輪はぬえの服の首元をひっつかんで宙吊りにし、ゆさぶりをかけている。すごい筋力。はたから見ると強請りにしか見えない。いや、問題はそこじゃないでしょう。
「ねぇ、ここ私の部屋……」
「うん、そうね。潜り込んでたわ」
「一輪、落ち着いて、ね、ね? でもってぬえ。何で入ってきてるの?」
私は彼女と毎晩のように愛し合っている。いや、愛し合っていた。それがつい先日『毎晩毎晩うるさいのよ! あんたら盛りのネコじゃないんだからちょっとは静かにしてもらえない!?』と雲山怒りの鉄拳を持ってして一輪に引き離されてから、ぬえは私の部屋に出入り禁止をくらっていたはずだったのだ。
「えー? せめて残り香だけでも嗅ぎたくて」
「犬。ネコ。けだもの!」
「全部私だからそれ悪口になってないよー。鵺は何でも、その人が思った通りの姿に。一輪が望む姿かたちになって、何でも欲しいこと言ってあげるし、してあげるわよ? くひひっ」
「すんっ…あれ? ぬえ、昨日ってお風呂入った?」
「うんにゃ」
「……水蜜、こいつ起こして。あとついでに、お風呂入れてきて。あんたも汗かいてるでしょ」
どうにも二人は仲が悪い。仲良くしてくれた方が私としては嬉しいのだけれど。それぞれ良いところがいっぱいあると思うのに、どちらも頑固でそれを認めたがらない。
「ぬえーお風呂行こっか」
「うんっ」
「ちっ、こういうところが嫌いなのよ……」
「あれー? いっちりーん何か言った?」
「いいえー別になぁんにも?」
はぁ……、二人の不仲の原因は私らしいんだけどさ。
「ぬえ、人間っておいしいの? というか、ぬえって直接人間食べるタイプの妖怪だっけ」
「恐怖でも人体でもどっちでも美味しく頂けるわよ。んまぁ人間そのままはおやつ感覚というか珍味というかグルメというか?」
「……私も一回くらい食べておけば良かったかしら」
「私、食べる? きひゃひゃっ」
「アンタ、人間じゃないでしょう」
風呂には昨晩の残り湯があったから再び沸かして準備をした。米がまだ炊けていないみたいだったから時間はあるはず。獣臭いぬえのニオイを嗅いでいたら興奮してきてしまった。ただでさえジョギング後で心拍数は上がってドキドキしている。
「ほら、いつまでも脱衣所いるんじゃなくて早く風呂場行くよー」
「眠い、面倒くさいから脱がせて」
「……しょーがないわね、ほらバンザーイ!」
「ばんざーい」
両手を上げるように促し、下から上まで一気に引っこ抜く。こういう時にワンピースは脱がせやすくて助かる。無駄な肉は一切付いていない(胸にもあんまり付いていない)引き締まった華奢な体が眼前に晒される。昨晩洗っていない髪と体からの体臭が鼻についてムラムラして困る。下着とニーソのみになったぬえが猫のように体をしならせ、あくびと伸びをするのから目が離せない。
「ふにゃあぁぁ……っん、ねむ」
「ニーソ脱がすわね」
「ん」
行儀悪く洗面台に腰かけたぬえのニーソを片方はくるくるとドーナツを作りながらめくっていき素足を晒す。もう片方はそのままズリリと引き下げ脱がせていったが、途中で魔が差して手を止めた。おもむろに口を開けて、そのままニーソックスごと足を咥える。
「ぁむうう」
「ほんと足好きねー。汚れてるよー?」
「蒸れててさいこー」
「へんたい」
少々の寝汗を吸ったニーソを味わう。舌で足の指をひとつずつ確認しながら舐めしゃぶればさらに幸せな気分になる。ぬえの足は最高だ。それを包み込むニーソも同様に。
「すんっ…、またジョギング? ご苦労なこったねぇ」
「汗臭い? ごめん」
「これくらいの方が水蜜のにおいがして好きー! すんすんっ」
ぬえは屈んだ状態の私の首筋に鼻を近付けニオイを嗅いでいた。汗臭いはずだろうから、少しだけ恥ずかしい。恥ずかしさを紛らわすためにもニーソの先端を歯で挟んで引っ張って脱がせ、真っ白ぴかぴかの両足がお目見えする。いつまでもこの、ぬえ臭いニーソを咥えてぶら下げておきたい気持ちは山々だったがここは素足本体を拝みたい。ぺっと床にニーソを落としてぬえの足を掴むと呆れ顔が視界に入った。
「水蜜含めてさー……みんな私のこと獣、けものって言うけど。水蜜の方がよっぽどケモノだと思わない?」
「いいでしょ」
「まっ、どーぞ?」
露わになった足に頬擦りしながら足裏の感触を確かめる。ふにふにの足の皮は今日も素敵で、この後の手入れの度合いを考えながらも口は彼女の足の指に移っていた。甘噛みしたり舐めたりしながら、口を窄ませてちゅぼっと吸い込む。
「ん、ふっ…」
含んだまま、れろれろ舌を転がしているとこれだけで全ての汚れが取れるのではないかという気分になってしまう。彼女はつまらなさそうに空いている方の足をぶらぶら動かし、未だにあくびを続けていた。
「ねーいつまでしゃぶってんの、お風呂入るんじゃなかったの?」
「『気が済むまでー』かしら?」
「まねっこしないでよ」
「だって、ねぇ?」
「………みなみつ、あせ、たまってる」
ぴょんと洗面台から降りたぬえに壁際まで迫られて、私は身動きが取れなくなった。めいっぱい外部に舌を出し、首を捕らえられ、私の数倍ざらりとした舌で舐めくすぐられる。
「ふゅ……ひ、ぅ!」
「鎖骨の三角形んとこ、たまってるよ」
「う、あああ、ああやっぱりお風呂入ろう、すぐ入ろう、汗流そう!!!」
「貴重な水蜜のしおー 塩分補給ー みなみつのおしおー!」
「違う『しお』に聞こえるから、やめて」
「はいはい」
「はいは一回!」
「は〜〜〜いぃ」
ぬえを引きはがし、他愛ない会話を続けながら彼女の残りの下着を全て取り去る。自分も服を脱いで洗濯カゴの中に突っ込んだ。よし、準備OK!
「痒いところはありませんかー」
「右耳の後ろお願いしまーす」
「はぁーい」
ぬえが爪を立てないように気を付けながら指の腹で私の髪を洗っている。うっすら開けた視界は湯気の白色で、密着してくる彼女のささやかな胸が肩に当たって思考は桃色だった。
「他に痒いとこないー?」
「んー……しいて言うならお股?」
「みな、それ下ネタ」
「ぬえは痒いとこないの? さっき私が洗ってあげたけど」
「私もお股かしらー? ぬゅふふ〜♪」
「まず先に頭流すのお願いするわ」
湯をかけながら彼女の手がくまなく頭皮を撫で回し、シャンプーを流していく。次第に流れ落とされる泡。風呂場の熱以上に自分の体が熱くなっていくのを感じて溜息が漏れる。髪を掻き上げるとそこには愛しいひとの姿。
「触って欲しい?」
「みなは、触りたいんでしょう?」
含み笑いの応酬。
滴る水滴と怪しい笑み。
「あし、さわらせて」
ぬえを交替で風呂椅子に座らせて、石けんを泡立て、丁寧に洗ってやる。恭しく足先にキスをするのが合図。たっぷりの泡で足全体を包む。すべすべの肌を感じながら、指と指の間、爪と指の間は特に念入りに洗った。軽石に石けんを塗りたくって足裏に優しく滑らせる。定期的に手入れしてやれば力を入れることなく、柔らかい状態を保つことができる。彼女はこれを、いつもくすぐったいと身をよじった。
脛とふくらはぎは、骨と筋肉を辿るように洗う。皮膚の下で体を覆っている筋肉をなぞる。硬さと柔らかさの絶妙なバランス。無駄がなく歪みもなく、惚れ惚れする。脛側から皮膚越しに骨を辿っていくと、ぞわぞわするらしく震えていた。可愛い。
そのまま上がっていき、ももの付け根まで泡で包み込んで洗い清める。垢擦りなんて無粋なものは使わず、手だけで十分だった。柔肉は驚くほど私の手に馴染んだ。そこまで洗うと彼女はタラタラと蜜を滴らせ、名前を呼ぶのだった。
「み、な……、蜜」
苦しげに私の名前を呼ぶ。私しか聞いたことのない声音で、私を呼ぶ。
「濡れてるわよ」
「知ってる………ぅ、くっ、はあ」
彼女、ぬえの痴態を見て欲情しないやつがいたら男女問わず不能だと思う。しめった吐息が私を包んで、脳髄を揺すぶって身体の芯を火照らせる。ぬえの声は人を惑わす力があると思う。
短絡的ではあるが―――…えろい
この一言に限る。
ぬえは頬を染めて、陰部は熟れたように赤く染まっている。互いの呼気と風呂場の湯気とで空気は湿ってより一層高ぶらせた。
「こんなに垂らして……もったいない」
「ゃ、そ、………んなの言わないで、んん゛っ」
「さあ、どこを洗って欲しいの?」
「もっと気持ちいとこ……んなぁ!! みぃな、」
「いい声」
「みっつ……!!」
脳髄に響いて、脊髄を震わす。子宮まで響いて、私は切なくなる。私の下腹部はぬえの声に反応して、名前に不足ないくらいの蜜を垂らしていた。舌を出して浅い呼吸で喘ぐぬえは『どうぞ私を食べて下さいな』と言ってる仔羊に思えて、性的に食べるか、本当に食べてしまおうか迷う。ぬえが欲しいという欲求。私は彼女の足が欲しくて堪らなくなっていた。はしたなく股を開いて濡れそぼる自分を見せた。股を開くことによって同時に蜜壷も口を開き、ヒクつくそこは辛抱ならずにたらぁんと愛液を垂らして床を汚す。自らの指で押し広げて期待と興奮で熟し切った私自身を曝け出し、誘う。
「ぬーえー……ちょうだい?」
「んぐっ、はぁ、あげる、みぃなー」
女の匂いがあたりを包み、それはきっとぬえの敏感な嗅覚を刺激していることだろう。生唾を飲み込んじゃうところが可愛い。ぬえだって既にとろとろの、ぐじゅぐじゅなのに。入れて欲しくて、自分で入れたくて、堪らないだろうに。我慢して私を優先してくれるこういうところ、大好き。
湯船の縁に腰かけて開脚する。嬉々として、だけど蕩けてだらしない顔したぬえがその正面に陣取って私の足を掴んで、自分の足を伸ばしてくる。
「石けん、ついてるから」
「うん」
「しみるかも、だよ?」
「だいじょーぶ」
石けんの泡と自らの愛液の潤滑を得て、手の指よりは幾分か大きい足の親指がぬりゅ…。入ってきた。異物感も泡の痛みも、これといってない。
「あひ、っ……ふ、う」
くいくいっと指の関節を曲げ伸ばしされ、私の大事な部分は押し広げ、ほぐされる。親指と小指部分をくっつけるように器用に足を丸めて、やや小さくなった状態でさらに入ってきた。ぬえの足は元々すらっとしていて小さいが、それでも手や舌に比べればその質量は比ではない。
―――暴力的な刺激で気持ちが良い。
「えっろい顔……私もう我慢できない」
「シてい…よ」
「ん……、っ!」
紅く色づいた指がただれた唇を掻き分けて、さらに奥へと入って水音を立てている。彼女の自慰を食い入るように見つめた。性臭が溢れ返って私の鼻をくすぐる。
―――噎せ返るような性のニオイで気持ちが良い。
指が動くたびに足の動きは緩慢になっていき、ついには止まってしまった。そのぶん指の動きは激しくなり、音と泡を立ててぐちゅぐちゅ。高みへと昇り詰めている。
―――ぬえの痴態で気持ちが良い。
引き抜かれてしまった足先には私の愛液がまとわりついて粘っこく、ぬらぬら光っている。
―――足で犯されていたという認識で気持ちが良い。
足の付け根部分は彼女の愛液が伝い光り、汗が噴き出ている。足全部が輝いて見えた。欲しい。欲しい、欲しい欲しい欲しいほしいほしいほしい、、、、、、欲しい。欲しい、欲しい、ほしい、羨ましい、憎い、見たくない、壊したい、欲しい。
「んくぁぁぁふぅ、お風呂ですると後片付け楽っ、んはぁ」
黒い、暗い思惑が私を満たす。
昏い、食らいたいような思惑。
「えっ、みなみつ…?」
アンカーを思いきり振りかぶった。妖力の具現化たる私の相棒は何時でも何処でもポンと出せて、対象物に躊躇することなく食らいつく。
「いぎっ、ぁ?゛ あ゛い゛だああぁぁい」
「ぬえ、気持ちいい、気持ちいい」
「気持ち…ぃ…っ?」
「そう、これは気持ちいーのよ」
「あはっ……き、もぢぃ…! これきもちぃの、っ…みな……っぁ!!」
気の済むまで、それはぐちゃぐちゃになるまで。好き勝手にぬえをいたぶる。そこに私の意識はほとんどなく、激情だけが牙を剥いて私は欲望に従順になる。アンカーを振りかぶり、振り下ろす。柔らかい皮膚に冷たい金属が食い込んでぬえを食い荒らす。筋繊維を千切っていく音が、ぶちぶちと鼓膜に反芻する。毛細血管からの滲む血も、血管から溢れる大量の血も私を興奮させるスパイス。本当は私がこんな足が欲しかった。
「いだぁ゛、あひぃ、……きもち、い゛ぃぃい」
でも、自分では手に入れることが出来ないから奪いたくて、無意味だと分かっていても切り取ろうと躍起になる。たまにこんな気持ちに憑りつかれてどうしようもなくなってしまうのだ。私が振り下ろすたびにぬえは喘いで悲鳴を上げて、血とか若干の肉片とか、ヤバそうな汁とか色んな液体が撒き散らされる。風呂のタイルは傷付けないように細心の注意を払いながら、ぬえの足を切断にかかる。
「い゛だぁっ、うぐげぇっ……!!」
ぬえの脚は柔らかいから、私の高ぶった妖力そのままを具現化したアンカーの先端はいとも容易く、めり込んでいく。肉の最奥部まで届いて、コツンと硬いものに当たった。これは骨だ。ここから先は切り込みを入れるのではなく、自分の売りの腕力を活かして力任せ無理やりに骨をへし折っていくだけの簡単なお仕事っ!!
「よっこいせっと」
「あぎゃあああ゛あ゛あぁ゛ア゛ァ゛いだい゛い゛あああみなみ゛づぅうぅぅ゛゛!!!!!!!」
「いつものことじゃない、我慢してよ、ほーら、気持ちいい、気持ちいい」
汗まみれ、涎まみれ、涙まみれ、血まみれ、愛液まみれ、鼻水まみれ。全身鵺汁まみれ!
ぬえの下の唇はすっかり開き切って蠢いて、何か食わせろと無言の訴えをしていたから指を一本入れてあげた。ものすごい勢いで肉襞が絡み付いてきて、危うく食い千切られそう。
「ここが良かったかしら?」
「イイっ、ああ゛あ゛んはぁ、っそこがっあはっ゛!!!」
「一本じゃ足りないってこっちの口がしゃべってるわ」
片手はぬえの内側を、反対の片手はぬえの外側を、犯す。指を一本から二本に増やして中身を掻き出して掻き混ぜる。どろどろ液が溢れてきて、足からの流血と混じって辺り一面は赤と白。ぬえの下半身を構ってあげながら足の切除も続行していて、ぱっくり美味しそうな肉の断面と、その奥に見え隠れする骨も、赤と白。おめでたい。アンカーに力を掛け続けていたら、みしっ……と骨が軋む音が微かに音が聞こえてきた。
「二本じゃ足りないでしょう。三本がいい?四本がいい? それとも拳ごと?」
「よ゛、っつ、親指は、げふぁ゛っお豆さんグリグリしてえぇぇ!!!!」
「りょーかい」
お望み通り四本の指を突っ込んで手の平がお腹の裏側に当たるようにして、手招きする塩梅で指を動かす。空いた親指は剥けて膨らんだ真っ赤なお豆さんに触れる。
「気持ぢい゛い゛んんひひひぃぃん、あああ―――っっつつ゛あああ゛あ゛」
「イっちゃいなさい、頭ぜーんぶ空っぽにして、気持ちいいことにだけ集中してればいいのよ」
ピンと弾いて、身体に向かって垂直にグリグリ押し潰して、こねくり回して。いじめて、可愛がる。爪を立ててお豆さんを、お腹側を掴んでざらざらの部分を、一緒に強烈に押し潰した。と同時に、渾身の力を込めて最後の一撃を骨に。
「イク、いぐ、いくう゛う゛うぅーー゛ーあああ゛イ゛っちゃう!!!!!!」
「可愛いかわいい、私のぬえ。アンタのあし、今だけ私にちょうだい」
「みなああああァァァアア゛ァ゛―――っっ!!!!」
落雷にも似た音がぬえの脚からした。
シャワーの音が、水滴が、規則正しく私たちに降りかかる。火照った体を冷ますのと、血なまぐさいニオイを多少は緩和してくれるからありがたい。
「ぬえ」
「んふぁっ、なあにぃ」
「ごめんね、いたかったでしょう」
「……みな、ちゅぅ」
「はいはい」
「はいは一回!」
「はいっ」
視界の片隅には本体と離ればなれになったぬえの御御足が転がっている。とてつもない達成感と虚無感に襲われながら、呼ばれて唇に触れる距離まで近づいた。
「みなみつぅ……んー」
「ぬーえー」
「もっと、えーって、べろ」
「んえー」
「そうそう」
ぬえの促す通りに、顎下に舌がくっつくんじゃないかと思うくらいまで出してぬえの広げた腕の中に飛び込んだ。ささやかすぎる胸のクッションがあって、湿った唇と舌が私に触れた。歯を食いしばって痛みを耐え抜いたであろう、ぬえの口内は血の味がした。その味をもっとゆっくり味わおうと思ってさらに口を開けた途端、
――――… ぶちん
鈍い裂傷音がして痛みが広がった。
「っぎ、いだい゛」
「私の足とおあいこ」
慌てて口を押えると、ボタボタっと手に血が溜まる。口の中がスカスカになって空いた部分を埋めるように痛みが広がった。いつものこととはいえ、毎回とても痛い。
「ひょーがない、こ、ね」
私がぬえの足を欲してたまらないように、ぬえは私の舌が欲しくてたまらないらしい。
「はんぶん ふぁべられた」
「今日は半分以上食い千切った、けけっけ!」
噛み千切った舌の塊を口から吐き出し、これ見よがしに見せつけてくる。ぶにぶにつついて弾力を楽しんでいて、ちょっぴり気味が悪い。今しがたまで自分の一部だったものが、今ではただの異物でぬえの手中で弄ばれている。
「あむぅっ」
「おいひーの?」
「おいしぃよ、みなみつも食べる?」
「いららい」
再び口に入れて、ゆっくりと咀嚼をしている。私の身体を、一部ではあるが、こま切れにして噛み砕いて飲み込まれて腹に収まっていき一つになる様を見るのは気持ちが悪い。だからこそ、余計に嬉しくて堪らない。
「みなぁ」
「んぁぃ」
キスをねだる合図。血まみれの口内にぬえが舌を入れてきて、所構わず舐め回す。噛み千切った断面をざらりとした舌先でチロチロくすぐられて痛みと痺れが体中を駆け巡る。ぬえの口も私の血で血まみれで、目の色と相まって顔が真っ赤なお猿さんみたい。
「いだい゛、いだぃ、んじゅぃ゛……気持ちいい、痛いけど、いたいから、いらいのが、気持ぢい゛い゛ぃ゛……!!!!」
「れるぅっ、ぅちゅん、みにゃみちゅううん、くちゅん……」
「むぅぇー あーっ、いぎっ」
傷口にぬえの唾液がまぶされて、痛みが緩和される気がした。飲み込み切れない唾液は私の喉を通り抜けてごくん。飲み込んでひとつになった。
彼女は私のことを人魚だと言う。他人を溺死させることのみが生きがいだったあの日々に決別し、聖のために陸に上がったはいいが、私のすべきことは特になかった。仏教なんてどうでもいい。私は聖のために。なのに、聖は封印されてしまった。地の底、それすらも超えて魔界に。私と一輪は地底に封印された。恩人はおらず、すべきことのない毎日。聖に会うのは不可能だと思っていた。そんな折、ぬえに出会った。
『海で自由自在に泳ぎ回り、人々の命を奪っていった。それは、舟幽霊としてとてもまっとうな生き方だ。何を恐れる必要がある、何を恥じる必要がある? 妖怪として当たり前の生き方だ。今は違っても、お前が妖怪であることは変わらない事実だよ。むらさは美しい人魚だよ』
妖怪としての私を認められたのは初めてだった。もちろん、あの頃の自分は悔やんでいる。悪いことだって。でも。存在否定でもなく、矯正でもない、肯定をされたのは初めてで、ムラサと村紗、どちらも許されたような気がした。ぬえは、私の本質を認めてくれた。そうして私たちは恋に落ちた。真っ逆さまに溺れて、互いしか見えなくなるほどに。
はじめての契りはあまり気持ちの良いものではなかった。ぬえの性癖は噛み千切ることで、私はいたるところを食い千切られた。耳を、指を、乳房を、舌を。舌が足らず、うまくしゃべれないのを、ぬえは好んだ。まさしく人魚そのものだと。私はぬえの足がうらやましく、こんな足になれたら良かったのにと嫉妬した。私……そう、人魚姫は、美しい足が羨ましかった。
傷付けたぬえの足から立ち上る血のにおいに釣られてキスをした。私たちは暗黙の了解で傷口に歯を立てることはない。キズにキス。
舐めて、くすぐって、キスをする。私の舌の傷口と、ぬえの足の傷口をくっつける。これは、私たちなりの優しい愛情表現。キズでキス。
互いの血液が混じる感覚、痛みの共有、苦痛に歪む声、表情。痛みは臨界点を突破して快楽を感じた時と同じような反応を起こす。だから、痛みとは快感であり、傷付けることは愛し合う行為に他ならない。もちろん、ある程度の手加減はして。
傷付けて
壊して
愛し合って
溺れさせることが好きというのは私の本質に深い部分に根差していたようで、ぬえがどうしたらもっと私に溺れてくれるのか。快楽に溺れてくれるのか。そればかりを考えるようになった。そして行き着いた答えがこれだった。
「歌ってよ、みなみつ、私のために」
「んっ」
声がうまく出ない人魚は歪んだ旋律を奏でる。歌には程遠く、嬌声と呼ぶには色気がない。風呂で反響して、日常の中にあって自分たちは非日常を楽しんでいた。
掴み合って、もがくように抱き合う。喘いで繰り返す肺呼吸は生きている証。素晴らしい足を手に入れることは出来なくとも、暖めあって折り重なって眠ることが出来る。ああ、水底の暗く冷たい、死の世界を知らなければ。彼女を求め愛し合うこともなかったのだろうか。ぬえは傷付いた足を引き摺りながら私を押し倒す。生温かい息が首元に当たって、今度は喉笛を噛み千切られるのだろうかとぼんやり考えた。危うく殺人現場だから、あとで風呂場を掃除しておかなければ。上に向かって手を伸ばす。恋い焦がれた水面は掴もうと思えば掴める気がした。
◆
風呂を上がって再び私の部屋でいちゃいちゃしていた。あぁ、もちろんお風呂掃除は念入りにしてから。足を負傷したぬえをお姫様抱っこで運んで(御御足の方も一緒に)、引きっぱなしだった布団に彼女を転がした。落ちないようにきゅうと抱き着くぬえが可愛くってもう1ラウンド行きたい気分だったがさすがにそれは自制した。遅くなると一輪に怒られちゃうし。ささくれのように毛羽立ってしまった足が勿体なくて「修理」しようと思い立つ。「治療」ではない。専用の道具なんてないからその辺にあった凧糸と裁縫針で代用する。
「ぬえ…いらいのがまんしれれね」
「縫え、ってまたそれー? いい加減きちんとしたの買ってよ」
「いーやぁー」
細く鋭く尖った針先が皮膚を食い破る。ぷちっと音を立て血の珠が吹き出して、いい匂いがして舐めた。傷口さえ塞いでしまえば翌朝にはくっついている。きちんとした道具・方法で縫合すればより良いのだろうが、あくまでもこれは二人だけの楽しみだった。
「いぎゃあっ、みなあぁ、ほんっと裁縫ヘタクソ!!」
「らって、これしかぬうもの、ないもの」
上手く縫えなくて同じところを何度も縫った。肉が盛り上がってボコボコになるはずなのに、私の好みぴったりの今までと寸分狂わぬ元の足に戻る。ぬえが年中履いているニーソの下に、誰がこんな傷痕があると信じるだろうか。私だけが知る秘密、二人だけの秘密。
「……みな、気持ち良かったね」
「そーね」
「またシようね」
「えぇ、もちろん」
次第に濃くなっていく朝食の香りに腹が鳴るが、舌をほとんど失ってしまったのであまりおいしく食べられないかもしれない。痛覚の中に快感がある。背徳感の中に幸福感が潜む。
「みなみつ」
「ぬえ」
「すき」
「だいすき」
互いに千切って、契って。奪って、求め合う。ちぎるたびに、私たちは深く愛し合う。深みにハマる。誰にも立ち入らせたりはしない。理解されなくっていい。これが私たちの愛の形。
「「あいしてる」」
どこまでも、どこまでも、溺れ行く。光の届かぬ深淵の世界へと。
はじめまして。
ぬえむらが好きなのですが、それ以上にぬえちゃんを痛めつけるのが好きみたいです。
【追記 5/9】
1様 二人とも、所詮は欲望に従順な妖怪ということなのでしょう。
2様 ご存知のようで嬉しいです、ありがとうございます。やっぱりこれって変化球なんですかね。一応、自分の中ではどストレートのつもり……お互いにお互いのことしか見ていない彼女らの関係が好きです。
3様 ありがとうございます(・∀・)bグッ
コメントありがとうございました!!
アサトモ
- 作品情報
- 作品集:
- 30
- 投稿日時:
- 2012/05/03 09:28:48
- 更新日時:
- 2012/05/09 01:17:16
- 分類
- ぬえむら
- ムラぬえ
- 封獣ぬえ
- 村紗水蜜
- ねちょもあるよ!
ここまで来ちゃったら二人の世界はもう邪魔できませんね。というか邪魔した瞬間に粉々にされそうだ。
恐ろしや。