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『私の見た夢』 作者: まいん
注意、この物語は東方projectの二次創作です。
オリキャラ、オリ設定が多数存在します。
某国立公園の夜。
辺りではネオンの光が輝く都市の中、その一角の公園だけは場違いな静かさをかもしだしている。
しかし、外灯が少ない公園は夜になると不逞の輩が屯する為、公園は閉鎖されていた。
当然そういった輩が決まりを守る筈も無く、夜の間はスラムの様な場所と化していた。
「ここは? ……日ノ本か? 俺は死んだ筈では? 呼んでいるのか? この俺を……」
その場所に場違いな服装……所謂、制帽に軍服の礼装で佇んでいる老人が居た。
その姿が目立たない訳は無く、すぐに一人の若者に声を掛けられてしまう。
『あ〜、爺さん? ちょっと困っててさ〜。 金貸してくんない?』
声を掛けられた老人は威圧感と威厳ある声で返事をした。
「……貸しても良いが、返す当てはあるのか?」
その声に何も感じずに若者は言葉を返した。
『コスプレ何かしてんだから、金あんでしょ? あんまりもったいぶると、アレしちゃうよ? 痛い事』
その言葉と共に辺りに居たであろう若者達が集まって来た。
『お? リュウちゃん。 そんな爺さんと何してんの?』
『この爺さんさ〜金を貸してって言ってんのに全然貸してくんないのさ……』
『へ〜、ふ〜ん? 俺らのゼーキンで生活してんのにヒデェ話だよな〜? お〜?』
『聞いてくんないならさ〜、ちょっと痛い目、見た方が分かってくれんじゃないの』
一人がそう言うや、若者達は腕捲りをして老人を囲み、輪を縮めていった。
その様子に横槍を刺す間も無かった老人は唐突に質問を投げかけた。
「お前等、国をどう思っている?」
『国? 国の事なんて知りましぇ〜ん! ぎゃはははは……クンニでもしてろよ爺さん!』
「そうか……ところで、その髪は……お前等は毛唐の手先か?」
『毛唐? コレはファッション、頭の固い爺には理解できないでしゅか?』
そうか、と再び呟いた老人は頭を垂れ、ややガッカリした様な仕草をする。
しかし、すぐに顔を上げた老人の顔は瞳に狂気を宿して見開き、裂けるのではないかと思う程に口を吊り上げて笑っていた。
「この火野源史……俺を呼んでいる奴の元に行くまでは死んではやれん!」
着化! 老人はそう叫ぶと、ぶら下げていた腕を正面に突き出す、
腕を捻りながら相手に腕の外側と手の甲を見せる様に動作をすると、
今まで袖で隠れていた金属に包まれている腕が出現した。
制帽も金属の一部らしく一瞬にして正義の味方を思わせる仮面を展開すると、
姿こそ軍人であるが鎧と仮面に身を包んだ戦士に変身した。
若者達の鬨の声と共に老人との喧嘩が始まった。
公園の周りの人々はいつもの事と思いあまり気にしなかったが、
その日は辺りに人の肉が焼け焦げる嫌な臭いを撒き散らす事となった。
〜
“……それでは朝のニュースです。
今朝、国立……公園で焼死体六体が発見され……
警察の調べでは……被害者はホームレス狩りや窃盗、強姦の前科があり……”
「朝から嫌なニュースね……今日はお見舞いに行く日なのに……」
黒の髪に薄紫の掛かった髪を持つ色白の少女、彼女は妹のお見舞いに行く為に準備をしていた。
「にゃあー、さとり様。 でしたら、あたい達もお供しましょうか? 最近物騒みたいですし」
「うにゅ、そうですよ。 私達もお供しますよ。 こいし様、まだ良くならないんでしょう?」
赤髪を両サイドで三つ編みにし黒いリボンで結っている少女と
黒髪で頭に緑のリボンを着けている長髪の少女は共をする提案をする。
さとりと呼ばれた少女は肩を竦めるもやや嬉しそうな表情で言葉を返す。
「燐、空、大丈夫、大丈夫よ。 それよりも家事をよろしくね」
彼女は頭にヘアバンドを着け、ゆったりとした服を着て家から出て行った。
電車に乗って十数分、到着したのは高等医療総合病院と呼ばれる場所。
彼女はいつもの様子で守衛の人に挨拶をすると、守衛も笑顔で挨拶を返した。
彼女は守衛から来客者用のIDを受け取ると集中治療入院棟へと歩みを進めた。
エレベータを降りた彼女は一瞬だけ歩みが止まる。
生唾をゴクリと飲み込むと、意を決して妹の元へと進む為に目的の扉にIDカードを当てる。
ピッ……ピッ……ピッ……。
入った先から規則正しい音が鳴る、コードだらけのガラス張りの部屋。 更に先のドアには面会謝絶の立て札。
ガラスの前には先客が居た。
「神瀬さん?」
「ああ、ごめん。 どうしても……」
神瀬と呼ばれた男性は言葉を噤んだ。
二人の居る部屋の先で、眠ったまま目を覚まさない薄く緑掛かった灰色の髪の少女は、さとりの実の妹こいし。
彼女はとある事件の被害者でおよそ三ヵ月の間、監禁されていた。
その監禁期間、殆どの時間をレイプに費やされるという非人道的な扱いを受けた為、
実行犯を逮捕し発見された時、彼女は自我と共に意識も失ったままとなっていた。
その事件の担当になっているのが彼、神瀬拳。
見た目は若いがそれなりに腕の良い刑事である。
この事件について鑑識から説明を受けた時の衝撃を彼はまだ忘れていない。
『彼女の意識は戻らないでしょう。
採取された精液から検出された遺伝子は百を超えています。
一日何回の責め苦を味わされたかは知りませんが……それだけの目に遭いながら、
目を覚ました所で彼女に普通の生活が過ごせるとは思いません』
その説明を覚えているからこそ事件を解決しなければいけない立場でありながら、
彼女達の事を思うあまり、顔を合わせると彼は言葉に詰まってしまう。
その神瀬にさとりは声を掛ける。
「こいしには悪いですが、私はこの子が返って来た事に安心しています。
私達の事は気にせずに犯人逮捕を頑張って下さい」
空元気、無理な笑顔、辛い記憶、それでもさとりは彼を励ました。
当の彼は行き場の無い怒りを静かに燃やす。
「必ず、必ず犯人は豚箱に送ってやる……だから、だから! こいしちゃん、
お姉さんを元気にしてやってくれ。 さとりちゃん、ごめん……君達が幸せになれる様に俺は俺に出来る事をするよ」
決心強く言葉を残し去って行く。 弱弱しい目をしていたさとりは少しの元気を貰った。
神瀬と入れ替わりで入って来たのは病院の医者黒間院長であった。
「彼女の病状の経過をお話したいのですが、少しよろしいですか?」
ええ、とさとりは返す。
「見ての通り、彼女は眠ったままです。
体の外傷は完治したものの脳波は眠っている時と同じ波形を繰り返しています。
下手に手術をして目覚めさせるよりも彼女を経過観察をして自然に回復させる事が望ましいと思います」
説明を受けたさとりは、解りましたと短く返事をして深く頭を下げた。
黒間院長はお大事にと短く話して、去って行った。
誰も居なくなった病室に残ったのは二人の姉妹。 さとりは妹の名が張ってある所を見る。
“古明地こいし”
古明地、この国で一二を争う財閥だった姓。 事実、彼女達の祖父はその時代を統べる長であった。
しかし、盛者必衰と言おうか……その祖父の死と共に血で血を洗う一族の抗争が起こった。
彼女達の父は人が良く、後継者争いから数歩身を引き、彼女達が今住んでいる場所を貰い受けただけだった。
争いの激化した一族は分離、独立。 争いが終わった後は見る影も無くなった。
そんな事は知らずにこの世に生を受けたさとりとこいし。
だが、彼女達の出産の時に母を失う。 不幸は続くもので父もすぐに他界。 天下に知る者は二人だけとなった。
ある日、一族を語って姉妹の家を別々に訪ねた者が見た目の同じ位だった燐と空であった。
姉妹は頼れる者が居ない為、彼女達を無謀にも家に上げた。
だが、姉妹の祖父の財産といって彼女達は自らの全財産を姉妹に提供した。
そういった経緯があって、彼女達四人は一緒に暮らしていた。
ちなみにココ高等医療総合病院は最新の治験の実験台になる事で医療費を限りなく無料にする事ができる。
最新の医療を受ける事が出来る事が魅力であるが、当然治る見込みがある者しか入院は出来ない。
〜〜
数時間を妹と二人きりで過ごしたさとりは面会時間終了が近い事に気付く、
またねこいし、ガラス越しにそう言ったさとりは入口から出て行った。
いつもと同じく守衛にIDを返却して帰路に着く。
だが、いつもと違う事があった。
面会終了の時間が近いのに多くのキャブオーバー型の大き目の自動車が道に並んでいた事だった。
それを気にする事もなくさとりは帰りを急いだ。
来た時と同じく電車に揺られて十数分、
一人欠けてしまったけれど愛する家族の居る家に無事に帰ってきた事に安堵する。
ドアを開けると、燐と空は元気良く挨拶をした。
「「おかえりなさい、さとり様」」
ええ、おかえりと気の無い風な返事を返すさとり。
であるのだが内心はこいしの事もあり、二人の元気の良い挨拶は非常に嬉しいのである。
食事をしながら話をする。
こいしの悲しい話はしないが楽しい事、嬉しい事、面白い事は皆、積極的に話す。
テレビはついているが見ている者は居ない。
三人とも悲しみや辛い事を埋める様に話し続けていた。
風呂も三人で入る。 二人で入るにはゆったりだが三人ではキツメ。
寂しいから辛いから、彼女達はいつも一緒。
暖かさを感じれるから安心できるから……。
それぞれの部屋はあるが、昼間しか居る事はない。
寝るのも一緒、一人が居なくなってから、三人とも夜が怖い。
夜の魔物が誰かを攫って慰み者にされないようにお互い手を繋いで眠りに就く。
夜の道を歩く火野はこれから起こる事を少し楽しみにしトランクケースを引いていた。
「くくく、これから巡り会うのは太陽の御者と太陽の使いか……運命を感じるよ……」
〜〜〜
けたたましいサイレンの音で彼女達は目を覚ました。
外は日が昇っておらず、暗いままであった。
近くで事件があっては困る為、テレビの国立情報チャンネルをつけ、
各々の持つ携帯電話で情報の収集を行う。
まず、テレビから目的の声が聞こえた。
“こちら国立高等医療総合病院。 犯人の数は不明です。
テロリストは病院を占拠した後の行動は……犯人が発砲してきました”
テレビには生放送で中継がされていた。
モザイクが掛かっているが、入口の門にもたれ掛って座っている人を見るに、
そこに居るのは死体であると推測ができる。
「あ、あそこには……こ、こいし様が……」
半狂乱になりそうになりながらも、燐は声を絞り出す。 顔は青ざめ、呼吸も荒い。
空も顔が青いが幾分かマシであった。
「空、燐を安心させてあげて……」
言葉に我に返った空は燐の震える肩を抱き留め、安心させる様に話を始めた。
さとりは、というと……自身の携帯電話で妹のいる病院のサイトにアクセスをしていた。
「な、何をしているのですか?」
若干の落ち着きを取り戻した燐はさとりに尋ねる。
「地図を見ているの、何回も行っている場所ですもの……妹の為に手をこまねいて待っていられますか」
「うにゅ〜、さとり様やめて下さい。 むざむざ犯人に捕えられる様な行動は危ないです」
制止を呼びかけたのは空であった。 燐は何かを思い出し、先程よりも震えだしてしまったからだ。
「大丈夫よ、問題ないわ……」
「にゅ、ですが、こいし様と同じ目に……」
「お空!!!」
燐の一際大きな声、家の中は静まり返り、得も言えぬ空気が流れる。
その沈黙から逃げる様にさとりは動き出す。
いつものヘヤバンド、いつもの薄紫を基調としたゆったりした服。 大丈夫よ、絶対に……。そう言葉を残し家を後にした。
残された二人は震えながら体を寄せて追いかける事さえ出来なかった。
〜〜〜〜
「まいったな〜」
小声で呟いたのは神瀬刑事である。
彼は病院から帰ろうと思っていた所に病院占拠の犯人達と出くわしてしまった(犯人に存在は知られていない)。
倉庫に身を隠して、知られる前に鍵をかけた。 だが、圧倒的に敵の数が多過ぎる。
これが映画やドラマであるならば一人で圧倒する事も可能であるが、
様々な訓練を受けた彼であるからこそ多勢に無勢と思い知らされてしまう。
「確か、少し見ただけで敵の数は50以上、
持っていた火器は貫通性に優れた弾丸を装填出来るライフルだったかな?
全員がボディアーマを装着して……」
聞こえない程の小声で分析を行う神瀬。
何度分析を繰り返しても八方塞である事が理解出来てしまう。
おまけに刑事の彼が見つかれば、間違いなく命の保障は無く、
更に人質の命の危険さえ増えてしまう。
「状況が動くまで潜むしかないな……」
「お、お空。 もう、大丈夫……だよ……」
「お燐、まだこんなに震えているじゃない」
「でも、でも……さとり様を止めないと……私達でもさとり様を止める何かを……」
燐の目に携帯電話が入る。
「電話だ、電話で交互に止めよう」
ppp、ppp。 留守電に転送します。
ppp、ppp。 留守電に転送します。
何度もコール、何度も留守電にメッセージを残す。 13回程でようやく二人はその行動をやめる。
「駄目だよ、お燐。 効果が無いよ……電話に出てくれないよ……」
「まだ何か、出来る事が……警察だ……警察に相談しよう」
“ppp、ppp。 はい、こちら……警察署です”
警察に連絡が繋がるも次の言葉が出てこない、
何を伝えたら良い? 何を求めたい? 何をして欲しい? 言葉が出ない。苦しい助けて欲しい。
言葉が出ない。
「…………」
“只今、非常事態につき緊急性の高い要件意外は……プツッ”
「駄目だ、あたい達に出来る事は何もないよ……」
空に泣きながら抱き付く燐。
「怖い、怖いよ。 誰か、誰か……さとり様を……こいし様を助けて……」
空も抱きしめ返しながら震え涙を流した。
二人の残る家の玄関に歩み寄る老人、大きなトランクケースを持ちながら家に向かって小声で呟いた。
「ふふふ、ようやく見つけた。 ここの奴が俺を呼んだ。 戦争で使う筈だった戦略装甲……適合出来れば良いな……」
〜〜〜〜〜
電車の始発で病院まで来たさとり、日が出ていないとはいえ、
すべての道は封鎖されており忍び込むのは容易ではない。
と、突然パニックに陥った人々が我先に逃げ出して来た。
犯人たちが入口付近に殺到していたマスコミや野次馬に発砲し、多くの警官、一般人が死傷した。
彼女は発砲音がした事は気付いていたが、詳しくは知らなかった。
だが、今の状況をチャンスと考え、隙を突いて林の茂っている裏の窓から病院に易々と侵入する。
その光景は先程の一騒動により見ている者は皆無であった。
侵入した場所は医療器具の保管庫。
当然、ドアの外には見張りが立っているのだが
先程の余波で聴力が一時的に弱って侵入時の音は聞き取られなかった。
素早く移動して無音状態の携帯電話を扱う、病院サイトのリアルタイム映像を駆使して妹の場所まで行こうと言うのだ。
こういう場所を占拠する際には電源を落とす事が良くある筈だが、何故かそれは行われていなかった。
ごめんください、と家主の居ない家に訪ねる老人。
一方、家に残された燐と空は早朝の来客者を出迎える。
「朝早くすまない。 俺は火野源史という。 突然だが、お前達は力が欲しいのだろう?」
図星を突かれる二人。 だが、切羽詰まったその状況、
藁にも縋りたい二人は立ち話も何だという事で客間に通す。
中に通され椅子に座った軍服の老人は勝手知ったると言わんばかりに話を切り出した。
「ここに、俺の最高傑作の二つがある。 東亜の切り札、一機当万の兵器。
その名も戦略人型決戦装甲、五型”火焔猫”、六型”霊烏路”」
「……そ、それが……何なんですか?」
「この二つがお前達に力をくれる……ただし、その鎧に認められればな」
「う、うにゅ。 着る着る。 早く頂戴……」
燐は空の行動を制止し、睨みつけながら老人に質問をした。
「ただでくれる訳じゃないでしょう? 見返りは何?」
目を瞑りソファーに深く腰を沈めて顔の力を抜く。 そして、ふぅと一息吐いて答える。
「一つ、鎧に適合する事。 一つ、君達をとある場所に連れて行きたい」
「断ったら?」
ふふ、と静かに笑い答える。
「断れないさ。 家主が帰って来るまで時間がある。 幸い俺は何も食わなくて大丈夫だ……じっくりと考えると良い」
〜〜〜〜〜〜
さとりは見張りに捕まった。
保管庫の先は医療薬品の貯蔵庫であり危険物が保管されている。
もし侵入者が居た場合、特に危険だという事で見張りは定期的に警邏をしていた。
三人一組で行われていた為、保管庫に侵入の痕跡がある事に気付かれた。
あとは三人で粗捜しをしてあっという間である。
三人の一人が骨振動の通信機で連絡を取るとテロリストの隊長の元へ連れて行けと指示を受けた。
二人に銃を突き付けられたさとりは生きた心地がしなくなり、血の気が引き、その場にへたり込んでしまう。
一人の男がさとりを担ぎ、隊長と呼ばれる者の所へと運ばれた。
「どうしたもんかな〜」
相も変わらずに神瀬は慎重に辺りを窺っていた。
今、手に入った情報は各部屋の前に見張りが居る事と部屋によっては見張りが居ない部屋がある事。
倉庫のダクトから移動して見つかりにくく辺りの様子を窺える場所に到達した。
その時にテロリストに担がれている少女を発見する。
「さとりちゃんか……助けないと、しかし危険に直面する事は……」
「こんにちは、かわいい侵入者さん」
そう言うやいなや、男はさとりの服をまさぐり、ある物を没収する。
あっ、私の……竦んで声の出せない彼女も思う事は出来た。
「可愛らしい携帯だな……ふぅん、心配されてるな? めでたいことだ」
そう呟いて、履歴に電話をかける。 セキュリティ? 拒否できないこの状況では何の意味もなしません。
ppp、ppp。 着信の鳴る燐の携帯、相手はさとり。 鎧の事で悩んでいた燐は一喜して通話のボタンを押す。
さとり様、そう言おうとした燐に話し掛けられたのはドスのきいた男の声。
「おう、さとりは俺等が預かった。 助けたかったらすぐに病院まで来い。 いいか? 遅れれば遅れる程、酷い目に遭わせるからな」
ブツッと電話が切られる。 続いて空の電話に掛けられ、出ようか悩むが火野に進められて電話を聞く。
「おいこら、何か喋らんか! いいか? これが一つ目の警告だ……おい、さとりの服を刻め」
ブツッ……。 ppp。
送られてきた写真はさとりの服が切り刻まれた写真で所々下着が見える物であった。
「どうする? まだ悩むか?」
「うにゅ! 悩まない! さとり様を助ける!」
決心強い瞳は行動にも現われた、渡されて抱えていたトランクケースを開き、漆黒の鎧を急いで着ていく。
着終わった空はブカブカの鎧を纏っていた。
だが、鎧は急激に縮み空の体型に適応する。
次いで襲って来たのは……痛み、痛み、痛み、痛み、痛み。
五感のすべてが痛み以外を感じなくなる。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ、ぎゃあああぁぁぁぁあああああ!!!」
その様子を呆然と見詰めていた燐は、何とか我に返り怒りながら老人に詰め寄る。
「あれは何だ? 一体何をした?」
「言ったろ? 鎧が適合者を決めると……所で君はあの子と同じ様に救いたい子が居ないのか?」
「……良いわよ、絶対勝ってやる……絶対さとり様を救うんだから!」
空と同じく鎧を纏う、同じく燐の体型に適応する鎧。
同じく、適合者か確かめる為に鎧は彼女を試す。
「いぎゃぁぁぁぁぁああああああ!!!」
「始まったか。 ふふふ……早くお前達の完全な姿を見せてくれ」
〜〜〜〜〜〜〜
「さて……知り合いを見つけておきながら、手を拱いている訳にもいかなくなった……」
一フロアに数人から数十人テロリストが居ると確認して、一番上の階層には三人しか見張りが居ない事に気付く。
神瀬はそのフロアを制圧してヘリによる降下突入の橋頭堡に出来ないかと考えた。
また、狭いフロア故に一度に多くの相手が殺到する事態を避けれる事も選んだ理由だ。
「ワンマンアーミーなんて奴は存在しないんだが……そんな事も言ってられないか……」
三人の視界がバラバラになり、各個撃破の絶好の機会が起こる。
彼は退避場所から音も無く飛び出し、人間としては神速の動きで一番端の者に襲い掛かる。
テロリストは一瞬で敵を知覚し、無駄の無い判断で分析する。
そして、相手が生身である事に一瞬の油断が生まれる。
当たり前だがテロリストは三人でライフルにボディアーマーも着込んでいる。
……ドッ……。
神瀬の拳は一瞬にして槍と化し衝撃のみが敵を貫いた。
拳を受けた者はあまりの衝撃に息が詰まり片膝を付こうとする。
その隙を見逃さず後ろから裸締めにして他の敵からの盾にする。
テロリストは素早い判断で狭い通路で二方向に分かれて対峙するも味方は既に盾にされた後であった。
三対一だが状況は神瀬に圧倒的に有利であった。
捕まっているテロリストの口元が楽しげに吊り上がった。
それが合図である様に威嚇の為に向けていた二つのライフルが火を噴いた。
パパパン! パパパン! パパパン!……。
貫通に適した銃弾はボディアーマーを着込んだ者ごと神瀬を貫いた。
敵越しとはいえ多数の銃弾に貫かれて無事な人間はいない。
神瀬は弾丸の威力に押され壁に叩きつけられ壁に沿ってズズズと座り込んでしまう。
一方、ライフルを撃っていた者の一人は拳銃を腰から抜くと瀕死の味方の頭に突きつける。
瀕死の者は何かを言った後、頭を撃ち抜かれて物言わぬモノに成り果てた。
負傷した神瀬は残った二人のテロリストにラップで拘束されボスの元へ連れて行かれる事となった。
……ガッ、ドサッ!
銃床で叩かれ神瀬は床に突っ伏す。
さとりは神瀬に声を掛け、無事であるかと聞こうとした。
だが、素早く顔を上げた神瀬の額に拳銃を突きつける光景を目の当たりにして、声を失う
「お前さんの身のこなし……普通じゃ無い様だな?」
神瀬から言葉は返って来なかった。 何か言えば誰かに迷惑が掛かる、目の前の少女にも迷惑が掛かる、その一心であった。
パンッ!!!
答えを聞かずに大きな乾いた音が部屋に響いた。
神瀬の額には焼け焦げた穴が開き、銃弾を吐き出したであろう後頭部からは真っ赤な花が咲く。
ビシャァァァァ!
「ア……ああ。 か、神瀬さ……」
「お前、こいつを知っているのだな? そうだな……さとり、お前にペナルティだ。 その切り刻まれた服を脱げ!」
神瀬が殺された怒りに身を任せ、涙を浮かべて反論をする。
「何故、私がそんな事をしなくちゃ行けないの!?」
その怒りの表情を見たボスは下卑た表情で舌なめずりをして、何かを思い出した風に話を返す。
「そうだな……お前には可愛らしい妹が居るそうじゃないか? 確か名前はこいしと言ったか?」
男の言葉に血が昇った頭から血の気が引いていく。
言葉を返せずに、あああと呟くのみである。
「どうだ? 俺は紳士的でね……提案するが断れば、妹がどうなるかなぁ?」
くっ、さとりは悔しそうに歯噛みし、恥じらいながらゆっくりと服を脱いでいった。
パシャ……!
男は携帯で写真を撮り。 ある所に電話を掛ける。
ppp……。
「俺だ! 俺は短気でね、あんまり苛つかせるんじゃねえぞ、オイ! 証拠は送ってやる。
お前等の愛しのさとりがどうなるか楽しみにしていろ」
プツッ……。
その一方的な会話を聞いていた、さとりは頭の中を不安と恐怖の感情に支配されてしまう。
「がああぁぁぁぁぁあああ!!!」
「ゆうぅうぅぅぅうぅぅぅ!!!」
痛みと痛みと痛みに耐える二人。 彼女達の携帯の留守番電話に男の声が登録される。
痛みに耐えている彼女達にもその声は聞こえ、明確な殺意を覚える。
ppp……。
彼女達は確認できないし、側に居る火野も興味が無い様子で確認さえしなかった。
送られてきた写真は衣服を剥ぎ取られ下着の姿で自らの恥ずかしい部分を隠しているさとりの写真であった。
〜〜〜〜〜〜〜〜
先程、写真が撮られてから、あまり時間は経っていない。
男は同じくさとりに話しかけた。
「おい、さとり。 下着を脱げ」
「な、何で、指示に従わないと……」
「妹さんもかわいそうだよな、愛情を持たない姉を持ってよぉ。 で? どうすんだ?」
顔を下げて、同じく歯噛みをする。 脅されて不本意な決心。
しかし、妹を事実上の人質にされている状況では従うしかなかった。
ブラを外し、胸は手で隠す。
またも男は写真に収め、電話をする。
「おいおい、ここまで来たらさとりがどんな目に遭うか解ってんだろ?
俺としても外部と連絡が取れる奴を野放しにできねぇんだわ」
電話を切り、メールで写真を送る。
またも、少し時間が経ち。 今度も下着を脱げと指示をされる。
無駄と分かっていても抵抗を言う。 すると妹と一言男から言われる。
抵抗の手段は無い。 さとりは男の言うがままであった。
ショーツを脱いださとりは足を曲げて、胸と下の部分を器用に隠していた。
男は側に居た部下数人に顎で指示を出すと、部下達はさとりの手と肩を抑え、足を開かせてM字開脚の格好にした。
毛の無いそこはピッチリと閉じて綺麗な割目を形作っていた。
誰にも見せた事のない部分を見られ、写真に撮られ。 恥ずかしさと悔しさで顔を真っ赤に染めて顔を背ける。
一応の用件が終わり解放された後、男は同じ行動を取ろうとした。
「や、やめて……その写真は送らないで」
さとりの声を聞いた男は顔を向けずに答える。
「丸見えだぞ? それに……すぐにそんな心配は出来なくなる……」
さとりに答えを言った後、同じく電話、メールを行った。
おい、と男は部下に先程と同じく顎で指示を出す。
先程と同じくM字開脚でさとりは拘束される。
抵抗するも華奢な少女では何の効果も無かった。
「さとりが退屈しているだろうと思って。 少し交流会をしよう。
お前、ちょっと手マンしてやれ。 俺は動画を撮るからな」
「いっ、嫌。 誰か! 誰か助けて……」
あまりの恐怖にさとりは助けを求める。
しかし、その願いは届かずさとりの秘裂には何処の誰とも分からぬ男の指が侵入する。
恐怖に慄き震える体は本能の訴えよりも少量の潤滑液しか分泌しなかった。
「いっ痛い! 痛い、抜いて抜いて!!!」
元より楽しむ気など毛頭無い。
ただ指で膣内をかき回す、指の感覚が膣に馴染む様に緩急をつけて出し入れを繰り返すだけであった。
それから、数十分。 さとりの股間は先程より多くの潤滑液を分泌していた。
とはいえ、彼女の感情に快楽は無く、ただ嫌悪の感情のみを浮かべていた。
荒い息遣いも、おそらくはこの理不尽に対する怒りなのであろう。
そのさとりに流し目を流し、動画を撮影していた携帯をボスは操作する。
それに気付いたさとりは先程までの表情が焦りに変化して叫ぶ。
「やっ、やめて! それは送らないで! あの子達に……」
「るせぇな! そんなら勝負して、お前が勝ったら送らないでやる。 ……お前等!」
ボスが指示を出すと、先程までさとりを拘束していた男の内、三人が下半身を露出させる。
「嫌、なっ、何をする気!」
「ククク、ナニをするんだよ! こいつらは超早漏だ。
さとりよぉ手と口だけ使って五分でそいつら三人をイかせたら……
お前の用件を聞いてやろう。 それじゃ、スタート。 後五分だからな」
さとりに近づき、彼女には何も手を出さない男たち。
さとりは当面の事で頭が一杯だった。 一先ず、両脇の男の逸物を手で握り、たどたどしい動きでシゴき始めた。
正面の逸物を口に含む事は躊躇い、何も出来ずにいた。
「はい、さ〜んぷ〜ん」
ボスの声が響く、さとりは手の動きを速くするが効果はまったく無かった。
正面の男は痺れを切らし、さとりの頭を掴むと、焦りによって半開きになっていた口に逸物を押し込んだ。
「ふぶぅ、ぶぇぇぇ……」
ぬっぽ、ぬっぽ……。 まるで玩具でも扱うが如く、さとりの頭を前後させる。
そんな事をされるものだから、さとりの手は当然止まり、えずきながら目には涙を溜めていた。
「ざんね〜ん、時間切れ。 罰ゲーム! さとりは俺達全員にレイプされてしまいま〜す。
おい、お前等命令だ。 隊員百人。 一時間で一周させろ。 射精すのは口かマンコだけだ。
俺は動画を撮って又送ってやるさ」
そういうとボスは携帯を使い動画を送信した。 当然、いつもの脅し文句も忘れずに電話した。
ボスからの電話。 理不尽な要求。 さとりの悲痛な叫び。
怒りは怒りを呼んだ。 痛みを数倍上回る怒り。
彼女達は望んだ。理不尽に無慈悲に殺戮を行える、闘争の開放を。
燐の体は変化した頭に猫を思わせる耳が生えた。
尻には同じく二つに分かれた尻尾も生えた。
空も同じく変化した背中には烏を思わせる漆黒の翼が生えた。
胸には真っ赤に燃え滾る宝石の様なものが浮かんだ。
体に流れる痛みは同じ、しかしその痛みをもっても彼女達を止める事は出来ない。
怒りが痛みを上回ったのだ。
「おお、俺の娘達よ……ついに適合した体を見つけたか……。 では試運転に行こう、ついて来い」
火野が言うと、燐と空は返事をして家から消えて行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時の警察庁長官は頭を抱えていた。 何に対して? といえば病院の占拠事件に対してだ。
最初の発砲の時点で死者17名。
神瀬刑事から送られた情報と生き残っている病院の監視モニタから推測したテロリストの数はおよそ百人。
要求は人質の院長から通して行われた、薄紫の髪と薄緑の少女が透明な壁の前で手を重ねて頬を重ねる絵、だけであった。
人質に被害は出ていない様だが、モニターに見えた連行された少女を見る限り、何かしらの暴行を受けてい可能性が高い。
このままでは遅かれ早かれ、他の人質も……。
警察庁長官は強行突入の決断を下そうとした。
その場所に入ってくる軍服の老人火野と漆黒のローブに身を包んだ者が二人。
「神瀬君。 あの時は私の元で青臭い理想に燃えていた将校だったな?」
『あんたは誰だ? 何故この場所に入ってこれた』
「おいおい、冷たい奴だな……あの時は狂気の沙汰と俺を止めたではないか?」
火野は袖を捲り金属の腕を見せ付けた。
『そ、それは……と、いう事は貴方は火野将軍?』
「そうだ。 死にぞこなったぞ。 だが、恩人を救う機会を得た」
『な、何をする気です?』
「答えは是しか受け付けん。 今からそう長くない数時間後。
人間の視覚が衰え始める時間。 お前の頭を悩ます奴等を皆殺しにする。
この国に無用な混乱を招きたくないなら……
我々の姿が確認されない様に報道と侵入の規制を掛けた方が良いのではないか?」
警察庁長官は慌てて一斉指示を指揮者に出した。
「そう、それでいい。 相手は別のテロリストに無慈悲に皆殺しにされた。
お前が国を思い、長として生き延びたければ、そこからはお前の手腕に掛かっている……」
言葉を残し、長官の前から火野達は消えて行った。
「ひあっ、ひああああああああああ!!!」
太陽は真南に昇った。 さとりは多数の男に囲まれて、レイプされていた。
既に数十人に膣内射精をされ、嫌悪に顔を歪めて叫び声を上げていた。
「は〜い、一時間経過。 何だ、全然終わってないじゃん。 ペナルティ! もう一周追加。」
「あ”あ”あ”……あ”あ”……」
犯され続けたさとりの心は大分壊された。 途中から壊れた蓄音機の様な声を出すばかりであった。
「あんがい早いな。 そんな時は魔法の言葉! おい、さとり。
あんまり詰まんねぇと……お前の妹のこいしを同じ目に遭わせるぞ」
「ひっ、やめて! やめて! こいしの心をこれ以上壊さないで……」
「おい、今どん位だ?」
だが、その答えに明確な答えは返って来なかった。
「仕方ないな、お前等もう一周だ。 やったね、さとりん! チンポが増えるよ!」
「むぇぇぇぇ、ぶげぇぇぇぇ……」
外が薄暗くなり始めた頃、漸く男達の攻めが中断された。
正しくは数週したから性欲を持て余す者が居なくなった為である。
「さてと、そろそろ頂くか……」
テロリストのボスは動画の撮影を終えて、ズボンを脱いで逸物をさらけ出す。
床にうつ伏せに倒れ、浅い呼吸を繰り返しているさとりは顔を赤らめる事も抵抗する事も出来なかった。
ボスは華奢なさとりの脇を掴んで持ち上げると、背面騎乗位の姿勢で勢い良く逸物に向けて腰を埋めさせた。
ぬぶぶぶ……。
「あっ……がっ……」
「それにしても、お前は潰れるのが早いな……お前の妹はもっと長い間楽しませてくれたぞ?
何を隠そう、こいしを監禁してレイプ漬けにしたのは俺達だ」
じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ……。
「お前も同じ目に遭わせてやるさ。 これからずっとな、くくく……はっはっはっ……」
それから十数分続いたピストン運動。 さとりは涙を流して逃げようと抵抗するも
腕を掴まれ、無理矢理腰を上下させられれば、抵抗どころでは無かった。
理不尽に対する怒りはあれど自身の非力を呪った。
びゅるっ、びゅ、びゅ。
男の射精を自身の胎内の一番奥で感じる。 余りある嫌悪感。
妹を壊した者に犯される恐怖。胃の中に多く射精された精液が逆流する。
「ップ……ゲェェェェェェ!!! オゲェェェェェ!!! ウェェェェェェ!!!」
「おっと? おらおら、もっと吐け! そうしたら……また腹ん中に沢山注ぎ込んでやるからよぉ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
暗くなり始めた町はゴーストタウンと化した。
病院を中心に敷かれた規制は警察の威信を掛けられた。
既に多くの警察ヘリに先導されている民間報道のヘリが居る。
中には強行突破をしようとしたヘリが居たが、あえなく撃墜された。
その様子に地上の報道で無謀を行おうという者など居る筈も無かった。
電気の供給はされているが灯りのない町は真っ暗であった。
その中を行進する三人。 何処からか一人二人と増えていき。 20人弱まで増えていった。
病院の前に到着したそれは銃を構えるテロリストを無視して整列した。
ローブの二人と軍服の老人以外は、皆が皆同じく広い肩幅に四角い顎、角刈りの作業服であった。
軍服の老人火野は号令する。 恩人に不届きを働くゴミ供を掃除せよと。
一様に同じ姿の作業服は気を付けの姿勢から腕を真っ直ぐ前に伸ばし、
次いで手の甲と腕を正面に見せつける様に上げる。 袖から現われた金属の腕、
彼ら量産型は病院に突入を開始する。
入口にいたテロリストは射撃を開始。けたたましい射撃音が量産型を襲う。
しかし、貫通力が自慢の弾丸が敵の生身へ到達する事は無かった。
真っ直ぐ近づく量産型。 射撃を続け様ともあっという間に接近を許してしまう。
ゴシャン!!!
人体から聞こえるとは思えない音。
受けたテロリストは顔面が陥没する者、脳漿を飛び散らせる者、眼球を飛ばす者。 多種多様であった。
制圧をした量産型は右腕を伸ばす。 すると手の平側から小型の拳銃が飛び出し。 それを掴むと、そのまま警戒に移行した。
病院内を靴音を響かせて移動する集団。
テロリストたちは強行突入を受けてボスからの指示を受けた。
階段とエレベーターからの挟み撃ち。 その行動は残念ながら遭遇戦となってしまう。
一度に二人が目と鼻の先から火野に向けてライフルを向ける。 対する火野は両腕で顔をガードする。
パパパン! パパパン! パパパン!
「愚か者が! 銃弾の効かない相手の生身を狙わないとは何事だ!」
その声に習い顔に銃を向けようとするも火野は標準よりも速く、上から銃を掴む。
赤熱化! 小さく呟くと手の平が熱を帯び始め、銃を焦がしていった。
テロリストが熱さに銃を離すと、火野は距離を更に詰めて男達の顔を片手づつで鷲掴みにした。
ジュゥゥウゥ!!!
辺りに人の焼け焦げる臭いが立ち込める。 テロリストは断末魔の叫び声を上げ続け抵抗するも数秒後に絶命した。
病院内に音が響く。 銃音。 破裂音。 炸裂音。 断末魔。 鬨の声。
百を数えていたテロリストの数も数える程まで数を減らしていた。
病院の端末と量産型が繋がれ、ボスの居る部屋以外で殲滅戦が展開された。
ある者は潜んでいた所を発見され殺害された。ある者は人質を盾にするも、銃を撃つ前に殴り殺された。
それは凄惨な殺戮劇であった。
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殲滅戦の間にも火野とローブの人物は目的の場所に進む。
目的の部屋。 辺りに敵が居ない事が確認され、
付き添っていた量産型はドアの両端に立ち、腕を伸ばす。
すると、他の者と同じく手の内側から収納されていた拳銃が飛び出し、
それを握り締めると、そのまま警戒に移行した。
ガタンッ!
「よぉ、よくここまで来たな。 だがな、さとりを殺されたくなかったら、回れ右だ! ご苦労さん、さっさと帰りな!」
「嫌、見ないで! 見ないでぇ」
背面立位、逆駅弁。 結合部が完全に火野達にさらけ出されている。
恥ずかしい部分を見せ付けられ、さとりの顔は涙に濡れて真っ赤に染まっていた。
その脅しに屈する事は無く、ローブの二名は一歩踏み出して、さとりに話しかける。
「「さとり様ごめんなさい。 あたいに、私にもっと力があれば……こんな目に遭わせなくてすんだのに」」
火野の口元が満足そうに吊りあがる。 さとりは我に返ったかの様に二名を見る。
「へっ、なにをゴチャゴチャ言ってやがる……」
ボスの言葉と同時にさとりの頭に銃が突きつけられる。
それに反応した二人。 一人は地を這い、一人は天井に沿った。
人の知覚出来ない速さは同時にローブを置き去りにした。
現われた人物は漆黒の鎧を身に纏い、人外の姿となった燐と空。
燐はボスの目を手の平で隠す。 空はさとりを取り返し、拳銃のスライドを握る。
「「赤熱化!」」
二人で叫ばれた言葉と同時にボスからは悲鳴が上がる。
高温になった赤鉄は顔を焼き、拳銃の温度を上げ手の平をも焼いた。
突然の衝撃に膝を付く。 下がった顔に燐の拳が炸裂した。
ゴキィィ! 人の骨が折れたとは思えないエグイ音。 鼻が完全に砕け、止め処なく血が溢れてた。
拳を引いた燐は仰向けに倒れたボスに圧し掛かり、二度目の拳をめり込ませた。
同時に空はボスの股間を踏み付ける。
やはり音は常識から外れた音を響かせた。
頬骨も完全に砕け、寝ているにもかかわらず支えを失った眼がドロリとこぼれた。
グチャッ! ブチィ! 視神経で繋がっていた目を引き千切り、襟を掴んで燐は激昂して叫んだ。
「謝れ! さとり様に、さとり様に謝れ!」
脳はあまりの事態にすべての痛みを遮断している。
ボスは何事も無かったかの様に話し始め手には先程落とした筈の拳銃が握られていた。
「自分で命を捨てれねぇ、手前らカス共はこれからもつれー思いを引き摺るんだろうな……くくく、あばよ……」
パンッ!
ボスは自らのこめかみに拳銃を当てると躊躇せずに引き金を引き、愉悦に歪む顔と共に辺りに頭の中身を散乱させ命を失った。
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すべてが終わった。 テロリストの生存者はゼロ名。
燐は亡骸に跨ったまま呆然として鼻先から汗をたらし、空は助け出したさとりに先程まで着ていたローブを羽織らせた。
脅威は去ったとはいえ、妹の安否が気になったさとりは、今だ恐怖に震える体を動かし、空に行き先を伝えた。
こいしの部屋に到着した一同、その場には院長の黒間が居た。
到着に対して無事を喜ぶ看護師達。 だが、さとりの姿は無事とはお世辞にも言えなかった。
その時、こいしから唐突に声が掛けられた。
「お姉ちゃん、酷い姿ね」
「貴女よりマシよ……おはよう、こいし」
普通に交わされる会話に黒間は脳波の数値を見ながら非常に驚く。
「ば、馬鹿な……こいしさんの脳波は気を失っている時と同じなのに……」
さとりとこいしの体から無数のコードが伸び胸の前には眼球を思わせるモノが光の加減で見えたり消えたりしていた。
その場に突然の銃声が響く。
パンッ!
乾いた銃声はさとりの腹を貫いた。
「くくく、終わりか……もう終わりだ」
拳銃を撃った黒間はブツブツと落胆した声を発していた。
「私は見たんだ、薄紫の髪と薄緑の少女が透明な壁の前で手を重ねて頬を重ねる絵を。
それに心を奪われた私はそれを探し続けた……そして、遂に君達を見つけた。
絵と同じだった君達をあいつ等に襲わせて、側に置いておこうとしたんだ」
パンッ! パンッ!
「だが、それもこいしの目覚めで台無しだ……起きている人間に何の興味も無い……」
黒間は銃口を今だ、寝たままのこいしに向ける。
それを、止めたのは銃で3発撃たれたさとりの声であった。
「……そうね。 すべてはおしまいよ……さぁ、眠りを覚ますトラウマに沈みなさい」
さとりの髪は薄紫の色に変化した。 先程見えた透明な眼球が発光した様に見え、黒間は自身の精神が泥沼に沈む感覚に襲われた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
暗い世界、黒い背景。
黒間という男はその場に浮かぶ一つの絵を見ていた。
長い間探し続けた絵。 それを自分の物にしたく手を伸ばす。
ふふふ、お兄さんソンナモノが欲しいの?
うふふ、お兄さん欲しかったモノは違うものでしょ?
正面の絵、その左右に佇む二人の少女。 二人とも目を瞑っている。
姿は補色の関係、片方は薄紫、もう片方は薄緑。 胸には眼球を思わせるモノ。
万華鏡の様に言葉を発する度に増える姉妹。
本当は私達みたいな女の子を犯したかったんでしょ?
玩具の人形の様に囲みたかったんでしょ?
気にしなくていいよ。
貴方は自分の世界に沈めばいいの。
だから、一緒に暮らしましょう。
世界を忘れて、身も心も……。
少女二人は鋭い爪で両目を突き、グチャグチャと音を立てて眼球を抉りだしていく。
黒間の周りに居る万を超える少女、彼女達は一様に抉り出した目を差し出した。
コレがアナタノ望んだ世界よ。
黒間の顔はドス黒い笑みに破顔していた。
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涎を垂らし、傍から見たら錯乱していると思われる男、黒間院長は持っている拳銃をこめかみに当てると又もブツブツと呟き始める。
「ふへっ、俺は幸せ者だ……」
パンッ!
「終わったな……では約束通りの事をしてもらおうか……火焔猫、霊烏路。
ここから見える大きな山を知っているな?
あそこの山頂に鳥居だけの不思議な場所がある。
世界に忘れ去られ、知る者はお互いだけとなったお前達を受け入れてくれるだろう」
火野の言葉を聞き、空はさとりを燐はこいしを抱きしめ、無言でその場から去っていった。
一人に戻った火野は病院を後にして、最初に居た場所の公園に向かった。
途中で小耳に挟んだ病院占拠事件解決の報、彼には関係の無い事だ。
到着した時には辺りはすっかり暗くなっていた。
周囲に現われた暴漢の気配を感じつつ、彼は星の見えない空を眺め小声で呟いた。
「古明地の爺様……あんたにもらった恩、少しは返せたか? 俺はこの時代でも人に忘れてもらえない亡霊の様だよ……」
その日も公園では喧嘩があり、周囲に焼死体の出来る臭いを撒き散らした。
- 作品情報
- 作品集:
- 30
- 投稿日時:
- 2012/05/25 18:42:54
- 更新日時:
- 2012/05/26 03:42:54
- 分類
- さとり
- 燐
- 空
- こいし
- オリキャラ
- 現代風
美しい姉妹に魅せられた。
美しい姉妹のふれあいに魅せられた。
美しい姉妹の絵になる光景に魅せられた。
美しい姉妹に魅入られた、愚か者の夢。
現実の大地に囚われ、衝天すること叶わぬ亡国の霊は、愚者の悪夢に囚われた主の元に赴く従者達に夢の国への片道切符を授けた。
美しい姉妹を解放した従者は、忘れ去られた者達の楽園である夢の国へ去って行った。
旅立つことが叶わぬ霊は、現世で灼熱の釜に塵芥をくべ続けるであろう。
愚か者は相手に悪夢をもたらすため、自らの生を終わらせた。
愚かな決断のため、永遠の悪夢が始まった。
夢に囚われるは愚者。
夢を語るは聖者。
何はともあれ素晴らしい夢でした