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『産廃百物語B 「愚行の報い」』 作者: 紅魚群
※キャラ崩壊注意
大図書館。本棚の森の中に、少しだけ開けた空間があった。
普段そこにはパチュリーが読書に使う机と椅子が置いてあったが、今はそれらは撤去され代わりに巨大な魔法陣が床に描かれている。
「………」
パチュリーは魔導書を片手に、つぶさに詠唱を続ける。
その傍らにいる小悪魔は、魔方陣が少しずつ輝きを増していく様子を、ただじっと見つめていた。
今パチュリーが行っているのは新しい魔法の実験だ。
だが中々に難易度が高く危険な実験なため、この日は図書館への部外者の立ち入りを全面的に禁止していた。
パチュリーの集中力もすごい。喘息の調子がいい日というのもあるが、もう優に1時間以上は詠唱を続けている。
そう、ここまでは非常に順調だったのだ。だが、ふとパチュリーの詠唱が止まった。
小悪魔はぴくりと頭についた蝙蝠の羽を震わせ、小声でパチュリーに尋ねた。
「どうしました?パチュリー様」
「……呪文…忘れた…」
「あれま」
パチュリーは手元の本に目を落とし、次々とページをめくった。
あらかじめ完璧に準備をしたつもりではいたが、ここまで大掛かりでかつ長時間に及ぶ実験では、多少の"抜け"があるのも仕方がない。
そしてパチュリーは手元の本をパタンと閉じる。この本では、抜け落ちた部分を補完することは出来そうになかった。
「……」
パチュリーは魔方陣を見た。詠唱を止めても、魔方陣は今のところ安定しており問題なく起動しているようだ。
少しの間くらいこの場を離れても大丈夫だろう。そう判断したパチュリーは小悪魔に言った。
「ちょっと別の本を取ってくるわ」
「離れて大丈夫ですか?私が取ってきてもいいですけど」
「少しの間だけよ。どの本か心当たりがあるし、そんなにかからないわ。でももし何かあったらすぐに呼んでちょうだい」
「…わかりました」
パチュリーは小悪魔に任せ、一旦その場を離れた。
本棚の角を曲がり、足早に目的の本の場所へと向かう。
「パチュリー様!!!」
本棚の角を曲がってからすぐだった。背後から小悪魔の叫び声が聞こえた。
パチュリーは慌てて足を止め、振り返る。
『ズガガガガガガガ』
斧で木板を連続で打ちつけたような轟音とともに、パチュリーのすぐ目の前にある本棚と床にいくつもの大きな傷跡ができた。
パチュリーのいる位置からは魔方陣は見えなかったが、この凶悪な斬撃は魔方陣から発せられているようだ。
一瞬何が起こったのか分からなかった。あれだけ安定していたのに、どうして。信じられない。
本棚の陰になっているパチュリーの位置には斬撃は届かなかったが、魔方陣のすぐそばに立っていた小悪魔はどう考えても無事では済まないだろう。
かといって今助けに飛び出すことはできない。そんなことをすればパチュリーの体も無事では済まない。
「小悪魔っ!こあっ!!」
胸が張り裂けそうな衝動を抑え、今はただ、名前を呼ぶことしか出来なかった。
魔方陣は1分以上もの間、蓄積された膨大な魔力を斬撃にして辺りに放出し続けた。
その間も、小悪魔から返事が返って来ることはなかった。
「っ…」
ようやく斬撃が止まった。
パチュリーは泣き出しそうなのを必死で堪え、よろよろと本棚の陰から飛び出し、魔方陣のあった場所を、見た。
…そこには、小悪魔はいなかった。
代わりに、床一面におびただしい量の血と肉片。
小悪魔の手、足、頭、髪、腸、肺、脳……――――
「いやあああああああああああああああ!!!!!!!!」
パチュリーは叫んだ。当然叫んだ。
過去にこれほどの大声を出したことがあっただろうか。
そもそも、自分がこれほどの声を出せることすら、パチュリーは知らなかったかもしれない。
足が震え、立つことができない。尻餅をついた。
誰かが、大図書館の扉をドンドンと叩いている音がする。
「パチュリー様、どうされました!?大丈夫ですか!?」
先ほどの斬撃音か悲鳴を聞いて咲夜が駆けつけたようだ。
だがパチュリーは返事を返すことができない。目を見開き、小悪魔だったものを見つめ、痙攣したように体を震わせている。
「開けますよ!」
咲夜は扉についている簡単な施錠を体当たりで破壊し、扉を開けた。
その日の紅魔館はかつてないほど騒然としていた。
小悪魔の遺体を発見した咲夜は、すぐにレミリアにも報告をした。
血相を変え駆け付けるレミリア。そして辺りに散乱する肉片を見るや否や、すぐさまへたり込んでいるパチュリーに問い詰めた。
「パチェ!どうしたの?何があったの!?」
だがパチュリーは返事をしない。呆然自失のまま、床に出来た血だまりと肉片を見つめている。
無理もない。何十年も共に過ごしてきた仲間を一瞬にして失ってしまったのだから。しかも、自分の失態のせいで。
レミリアには詳しい事情は分からなかったが、ともかくあの肉片が小悪魔であろうということは状況的に察することができた。
「パチェ、しっかりして!」
レミリアは両手でパチュリーの体をゆする。だがやはり反応は返ってこなかった。
このままパチュリーをここに置いておくことは得策ではないだろう。
そう判断したレミリアは、半ば無理やりパチュリーの体を背負うと、咲夜に向かって言った。
「パチェは私の部屋で休ませるから。咲夜、後のことお願いね」
「はい、分かりました…」
すでに何人かのメイド妖精たちが何事かと見物に現れていた。
咲夜はそのメイド妖精たちに片付けの指示を出し、レミリアはそれとすれ違うようにして図書館から出て行った。
「あ…あぅ…。こぁ…、こあく…ま…」
廊下を歩いていると、レミリアの背中のパチュリーがうわ言のようにつぶやいた。
レミリアはそれをあやすように、パチュリーの体を軽く持ち上げて背負いなおす。
一応平静こそ保てている。しかしパチュリーほどではないが、レミリアも多少動転していた。
小悪魔の死というのも勿論理由ではあるが、これほどパチュリーが取り乱しているのを見るのが初めてだったからだ。
何十年と共に過ごして、パチュリーは何があっても冷静沈着そのものだった。そのパチュリーが、こんなにも狼狽してしまっている。
パチュリーにとって、小悪魔とはそれほど大切な存在だったのか。
致命的ともいえる心の傷。レミリアは少し、今後が心配だった。
レミリアは自身の部屋に着くと、パチュリーを自分のベッドに寝かせた。
「うっ…ううう…」
パチュリーは泣いていた。
仰向けのまま、涙を拭うこともせず、ただ泣いていた。
レミリアは考える。私は何をすればいいのか。どうすれば、友人の心を慰めることができるのか。
…わからない。わからなかったが、レミリアは左手で、優しくパチュリーの頭を撫でた。
こんなことをして何になるのか。だが何もしないということも、レミリアにはできなかった。
しばらくそうやっていると、パチュリーが嗚咽に混じりに小さな声で言った。
「わたしが……いけないの……」
「パチェ…」
「わたしがあの場を…はなれたから…こあは……ぅ…ぅううう!!!」
「…そんなことないわ。事故だったのよ。パチェは悪くないわ」
レミリアは何があったのか全く知らない。無責任なことを言ってるのかもしれない。
それでもパチュリーが"悪い"とは思えなかった。だって、こんなにも悲しんでいるのだから。
パチュリーが泣き疲れて眠るまで、レミリアはそのそばを離れることはなかった。
どうか、夢を見ていませんように。
そう思いながら涙の跡でぐしゃぐしゃな寝顔を見つめていると、誰かが部屋の扉をノックした。
「お嬢様、終わりました…」
咲夜だ。小悪魔の遺体の処理が終わったのだろう。
「お疲れ様。入っていいわよ」
「はい…」
部屋へと入る咲夜。いつも通りに振舞おうとしているのだろうが、その足が震えているのが見えた。
そしてレミリアは、自分の主としての愚かさを呪う。
いくら死体に慣れている咲夜とはいえ、身内の無残な遺体を処理させたのは配慮が足りなかったと言わざるを得ない。
小悪魔は長年紅魔館で共に生活してきた仲間…家族なのだ。レミリアだって、咲夜だって、胸が裂けるほど悲しい。
「ごめん…なさい咲夜…。辛いこと…させちゃったわね…」
「いえ…」
「……」
言葉が続かない。
あんなパチュリーの前だからと気丈に振舞っていたが、今になって感情が押し寄せてきた。
レミリアは溢れ出る涙を、隠すことはしなかった。
次の日の朝すぐに、小悪魔の葬儀は行われた。
庭園の一画に造られた簡素な石製の墓を囲み、館の者全員が小悪魔の冥福を祈り黙祷する。
祈るレミリアの隣にはパチュリーの姿もあった。
パチュリーはまたぼろぼろと涙をこぼして泣いている。
普段感情を表に出さないパチュリーのそんな姿を、メイド妖精たちは物珍しそうに眺めていた。
「ほらパチェ、戻りましょ」
葬儀が終わり皆が館へと戻る中、レミリアは立ち尽くすパチュリーの手を引いた。
引かれるまま、パチュリーはトボトボと歩き出す。
昨日よりはいくらかマシにはなっているが、小悪魔を失った悲しみはやはりそう立ち直れるものではない。
「しばらくは私の部屋にいていいから。悲しむなとは言わないけど、元気出してよ、パチェ」
「……」
パチュリーは無言のままレミリアの後に続く。
大図書館に戻れるのはいつになるのか。前のパチュリーに戻るのはいつになるのか。
もしかしたらそれはもう無理なことなのかもしれない。
それでも、レミリアは当然放っておくことなど出来なかった。
今私に出来ることはたぶん、一緒にいてあげること。だってパチェは、私の友人だもの。
その日からレミリアはどこにも出かけず、特に会話があるわけではないがパチュリーと一日を一緒に過ごした。
パチュリーは椅子に座って、本を読むこともせずただぼーっとしている。
それは以前のパチュリーを知っているレミリアにとって、あまりにあり得ない光景だった。
あんなに読書が好きだったのに。
レミリアは何冊か大図書館から本を取ってきたが、パチュリーがそれらに手を付けることはなかった。
それでも、"時間"が心の傷を癒してくれることは確かだった。
パチュリーがレミリアの部屋に来てから約2週間。
読書もせず、笑顔もまだ見せることはないが、ぽつりぽつりと会話が出来るほどにはパチュリーの精神は回復していた。
そんな中、2人で食べるためのケーキを切り分けるレミリアに、パチュリーは呟いた。
「…私、図書館に戻ってみるわ」
「えっ?」
「だって、いつまでもここにいたらレミィに迷惑だもの」
「迷惑だなんて、絶対そんなことないわ…。でも、戻れるのなら、戻ったほうがいいと思う」
「うん」
回復の兆候。パチュリーが立ち直る努力をしている。
レミリアには嬉しい限りのことだったが、同時にやはり心配でもあった。
あの大図書館に戻っても、パチュリーは大丈夫だろうか。
当時のことを変に思い出して、またふさぎ込んでしまわなければいいけれど。
パチュリーは立ち上がった。
レミリアもついて行こうと席を立つが、パチュリーは言った。
「いいのよレミィ。ひとりで行くから」
「大丈夫なの…?」
「うん、ありがとうレミィ。本当に…」
パチュリーはレミリアの元まで歩み寄り、その体を抱きしめた。
少し驚くレミリア。だがすぐに、レミリアも抱き返す。
身長差のせいで、レミリアの顔がパチュリーの胸に埋もれる形になった。
パチュリーはそっと、レミリアの耳元で言った。
「あなたみたいな優しい吸血鬼、世界中探したっていないわ」
「や、やめてよパチェ…」
ほんのり赤面するレミリア。
それを見て、パチュリーが笑う。
笑った、パチェが。どれだけぶりだろうか。それはどこか儚い、美しい笑顔だった。
パチュリーはレミリアの部屋を出た後、ひとり大図書館に到着した。
長らくここには来ていない。パチュリーは本棚の森をゆっくりと歩きながら、懐かしむように辺りを見回す。
そして、あの場所に到着した。
魔法陣が置いてあった空間。小悪魔の命を奪った忌まわしき場所。
今はもう魔方陣は跡形もなく、以前のようにパチュリーが本を読むための机と椅子が置いてあった。
だが床や本棚に刻まれたいくつもの斬撃の跡が、凄惨たる当時の光景をフラッシュバックさせる。
パチュリーは目を閉じ、下唇を噛んだ。
(ごめんなさい小悪魔、愚かな私を許してちょうだい…。どうか、安らかに…。)
最後の黙祷を告げ、パチュリーは椅子に座った。
机の上に置いてあった適当な本を手に取り、開く。
…ああ、本だ。なんて落ち着くんだろう。
こうやって本をここで読んでいると、自然と気持ちが安らぐような感覚がした。
体が歓喜し、ぶるっと打ち震える。
埃っぽい空気、かび臭い匂い、わずかに差し込む日の光、蔵書を整理する小悪魔の足音。
いつも通りだ、何もかもが懐かしい。ああ、ここは私の居場所…私の大図書館に戻ってきたんだ―――
―――足音…?
パチュリーは咄嗟に振り返った。
だがそこにはいくつもの本の背表紙、整頓された傷だらけの本棚があるばかりで、誰もいなかった。
そう、小悪魔は死んだのだ。空耳だろうか、足音など聞こえるはずもない。
「……」
その小悪魔の足音ももう二度と聞くことはできない。そう思うと、また目頭が熱くなってきた。
溢れる涙を隠すように、パチュリーは机に突っ伏す。
だがいつまでも泣いている訳にはいかない。またレミリアに心配をかけてしまう。
涙を拭い、顔を上げた。
『コツン』
そして背後から、足音。
パチュリーは今度は振り返らなかった。
耳をそばだて、神経を集中させ、その足音がたしかに幻聴でないことをよくよく確認した。
『コツン』
また聞こえた。背後からだ。間違いなく空耳などではない。
「誰?」
訊くと同時に、パチュリーは振り返った。
だがやはり誰もいない。本棚があるだけだ。
「誰かいるんでしょ?魔理沙?」
パチュリーは立ち上がって、本棚の裏へと回る。
しかしそこにも誰の姿もなかった。
「……」
どういうことだろう。気味が悪い。
今パチュリーの持ちうる情報では説明がつかない状況だった。
かといって何かできるわけでもないので、不完全燃焼のまま、パチュリーは仕方なく席に戻り読書を再開する。
読書をしながらも周囲の音に注意を巡らせたが、どうやら足音はもう聞こえなくなっていた。
だが、安心するのも束の間だった。
『……ぁ………。…………ぇ…』
今度のそれは、小さな小さな声。
しかし自身の心音とページをめくる音くらいしか聞こえないこの静寂では、聞き逃しようのない声だった。
パチュリーの全身から、たちまち嫌な汗が噴き出る。
まさか。いや、そんなことあるはずない。やめてよ。
パチュリーは目を瞑り、少し大きな声を出す。
「っ…!誰なの!?変な悪戯はやめ…て!!!」
語尾がわずかに震えた。
しかし、なんの反応も返ってこない。
恐る恐る周囲を見回すが、例によって人影もなかった。
パチュリーは本を閉じて席を立つと、足早に図書館の出口へと向かった。
何かがいる。分からないが、考えたくもない。ともかく、何かがいる。
図書館の扉を開けると、出てすぐのところにレミリアが立っていた。
ひとりで大丈夫と言ったが、それでもパチュリーのことが心配だったのだろう。
青い顔で出てきたパチュリーを見て、レミリアが驚く。
「ど、どうしたのパチェ?大丈夫…?」
「…聞いてレミィ。図書館にね、誰かいるの」
「へ?」
「急に足音が聞こえたり、変な声が聞こえたり…」
「パチェ…」
レミリアがまた心配そうな顔をした。
違う、違うのレミィ。本当に聞いたの。嘘じゃないの。だからそんな顔しないで。
「やっぱりひとりでここに来るのは早かったかもしれないわね…」
「信じてよレミィ!じゃあ一緒に来て」
「……。……わかったわ」
パチュリーはレミリアと共に大図書館の中へと戻る。
そして机と椅子の置いてある場所まで戻り、2人して耳を澄ませた。
だがしばらくそうやっていても、何も変わった音は聞こえなかった。
「何も聞こえないけれど…」
「そんなはずないわ。たしかにさっき…」
「…少し待って」
そういうとレミリアは左腕を突き出した。
するとその左腕はバラバラに砕け、数匹の小さなコウモリへと変身する。
コウモリたちは飛び上がると四方へと散らばり、図書館内をひゅんひゅんと飛び交った。
「……。誰もいないわね」
数分間そうやって図書館内を偵察したレミリアだったが、諦めてコウモリを自身の左腕に戻す。
「パチェ、やっぱりもう少し私の部屋にいた方がいいんじゃない?」
「私が幻聴を聞いたって言うの?」
「でも、誰もいないわよ」
「そうだけど…」
パチュリーは納得がいかなかった。
断じて幻聴などではない。しかし、図書館内に誰もいないことも事実だ。
するとどういうことだ。私が聞いたあの音と声は、なんだったの?
説明が付かない。いや、本当は説明を付ける方法はある。
でもそれは、その可能性はパチュリーにとって考えたくもないことだった。
小悪魔は、そう、安らかに天に昇ったはずよ。小悪魔は関係ない。
思いなおそう。やっぱりあれは、聞き間違いだったのだ。
そもそも幻聴っていうのは、本人には本当の音に聞こえるものよね…。
「そうね…まだちょっと落ち着いてないのかも。でも少ししたら慣れると思うし、大丈夫よ」
「本当?無理しないで、何かあったらすぐ私のところに来ていいからね」
「ええ…ありがと」
レミリアはまだ心配そうな顔をしていたが、パチュリーが「大丈夫だから」と念押しして言うと、ようやく図書館を出て行った。
またひとりになるパチュリー。
もう多少変な音が聞こえても気にしないようにしよう。それよりも今は、一応確認しておきたいことがあった。
パチュリーは本棚から、霊に関して書いてある本を取り出した。
その中の、「霊が現世に残る理由」について書かれている頁を見る。
『霊が現世に残る理由としては、強い怨みや憎しみ、あるいは未練といった、ほとんどの場合において負の感情が原因である』
そこには、パチュリーの記憶通りのことが書いてあった。
そう、浮遊霊にせよ地縛霊にせよ、霊なんてものは怨恨にまみれた凄惨なものなのだ。
あの優しい小悪魔がそんなものになるはずがない。
私の愚行が原因だったとしても、小悪魔はきっと許してくれるはずよ。
だから、あの音は小悪魔の霊なんかじゃなくて、私の幻聴。それ以外ありえない。そう自分に言い聞かせる。
パチュリーは本を棚に戻し、いつもの席について読書を再開した。
『コツリ』
背後から足音が聞こえる。気にすることはない。幻聴だ。
パチュリーは気にせず、読書を続ける。
ページをめくる手が震えた。文字が頭に入ってこない。
それでもパチュリーは読書を続ける。続けざるを得ない。
だが次のページをめくったところで、パチュリーの体がびくっと跳ねる。
何故なら本のページが真っ白だったから。
手書きの本のくせに落丁だろうか。珍しいこともあるものだと次のページにいこうとしたとき、ふと気付く。
…そのページは真っ白ではなかった。
右ページの真ん中に、小さな汚い文字でこう書いてあった。
『うしろ』
パチュリーは本を投げた。
椅子を蹴飛ばすように立ち上がり、後ろを振り向くことなく全力でその場から走り出す。
途中ローブが足に引っ掛かり転んだが、すぐに起き上がって再び走り出す。
「ひっ…ひっ……はっ…げほっ……ぜーぜー」
急な激しい呼吸で、喘息が発症した。
息が上手くできない。心臓が早鐘のように打ち、頭がガンガンと痛む。
それでも今すぐ図書館から離れたかった。
怖い。怖い。怖い!
なんとか図書館から出て、今度はレミリアの部屋を目指し階段を上る。
だがもう体力の限界だった。
階段の途中で、パチュリーは力尽きて倒れる。幸い転げ落ちることはなかったが、もう体を動かすことはできない。
意識が遠のく。
「ごめんなさい…ごめんなさいっ…こあ……。ごほっ!レミィ……たす…け…て……」
視界がぐにゃりとゆがんだ。
パチュリーの意識は、そのまま闇へと落ちていった。
パチュリーが目を覚ますと、目の前には今にも泣きそうな顔のレミリアがいた。
ここはレミリアの部屋のようだ。
ベッドに横たわるパチュリーの体を、レミリアが抱きしめる。
「馬鹿パチェ!心配したんだからっ!!」
「ぅう…」
ぼーっとした意識の中、パチュリーは何があったのか思い出そうとする。
そうだ、走って逃げて、喘息が発症して…。本に、『うしろ』って書いてあって…。
思い出した。思い出したら、恐ろしさでまた体が震えてきた。
もう誤魔化すことはできない。小悪魔が、小悪魔の霊が、図書館に間違いなくいるのだ。
突然震えだしたパチュリーを見て、レミリアが声を上げる。
「パチェ!?どうしたの!?」
「いるの…!いるのよ小悪魔が…!私のこと許してくれないっ…」
「な、何を言ってるの?」
「こあの幽霊が…。やだっ…!ごめんなさい…ごめんなさい…!!!!」
「落ち着いてパチェ!」
「きっと小悪魔が私のことを怨んで…呪い殺そうとしてるんだわ…」
唇まで真っ青にし、ガタガタと震えるパチュリー。
レミリアは返す言葉に困りながらも、少し考えてから言った。
「そんなわけ無いでしょ。小悪魔がどれだけパチェのことを好きだったのか、私だって知ってるわ」
「だって…私のせいで…。これはその報いなんだわ…」
「……」
レミリアには信じられなかった。
霊の存在を否定するわけではないが、あの小悪魔がパチュリーのことを祟るというのは信じられない。
『ええ、すごいんですよパチュリー様は。あんな魔法、パチュリー様じゃなきゃできないですよ』
『このケーキですか?明日パチュリー様の誕生日なんで、ちょっとその練習をしてたんですけど…。喜んでくれるでしょうか』
『レミリアお嬢様も運がいいですね。パチュリー様みたいないい女性、そうそういないですよ』
…小悪魔がパチュリーのことを悪く言っているところなんて見たことがない。
仮に今回の事故でパチュリーに過失があったとしても、あの小悪魔が祟ったりなんてするとは到底思えなかった。
「悪いけど、やっぱり信じられないわ」
レミリアは正直に思っていることを言った。
パチュリーの言ってることは、全部幻覚や幻聴。そう説明をつけたほうが、レミリアには納得できる。
ただでさえパチュリーの精神状態は不安定なのだ。可能性を考えるなら、その方が高い。
パチュリーはレミリアの言葉を受け「どうして信じてくれないの?」といった顔をする。
嘘をついているわけではないのはわかる。パチュリーにとってはそれが事実なのだろう。
レミリアは優しく諭すように言った。
「…じゃあパチェはさ、あの小悪魔がパチェのことを殺そうとしてるって思うの?」
「だって、足音とか…、声とか…。本が真っ白になって文字が浮かび上がったりとか…」
「それだって全部パチェを殺そうとしてる訳ではないじゃない。もしかしたら単に話がしたいだけかも知れないわよ?」
「そんな軽い理由で霊として現世に残ったりなんて出来ないわ…。霊は強い怨みとか憎悪とか、未練を持ってるものだもの」
「そう…」
言っても無駄かもしれない。
それならばと、レミリアはパチュリーの手を引き、ベッドから引きずり出した。
「えっ…な、何?」
「じゃあ私と一緒に図書館に行きましょ。その小悪魔の霊とやらを見せてもらおうじゃない」
「い、いやっ!怖い…」
「何かあったら私が助けてあげるわよ」
強引にパチュリーを引っ張り、大図書館へと向かう。
初めはパチュリーも必死で抵抗していたが、レミリアの力に敵うはずもないし、一度言い出したら聞かないのも知っている。
途中からは諦めて、大人しくレミリアの後に続いた。
「離れないでよ…!絶対よ…」
「はいはい」
図書館の扉の前まで来たところで、パチュリーが念押しする。
レミリアの服をぎゅっと両手で掴み、ぴたりと体を密着させた。
「ちょっとパチェ、歩きにくいわ」
「うぅ……」
パチュリーの体が小刻みに震えている。
…まあ仕方ないかと、レミリアは図書館の扉を開けて中に入った。
図書館内は特に変わった様子もなかった。
念のためレミリアも注意深く辺りを観察しながら歩くが、何かがいる気配など微塵も感じられない。
そうしているうちに机の置いてある場所に到着した。
傷だらけの床と本棚。たしかにこれを見ていると、あのときの惨劇が思い出されて変な気にもなるかもしれない。
近いうちに取り換えたほうがいいかもね。本棚はともかく、床の方は大変そうだけれども。
「あれっ…。あの本…」
「ん?」
パチュリーが床に落ちている本を指差した。
それは先ほどパチュリーが投げた、真っ白なページに『うしろ』と書かれていた本だ。
レミリアはそれを拾い上げ、開いてみる。
何やらびっしりと、レミリアには読めない言語が書いてあった。
「この本がどうかしたの?」
「それにさっき真っ白なページがあって、そこに"うしろ"って書いてあったの。転換魔法の使用例の次のページよ…」
「言われても分かんないわよ。とにかくどこもそんなページなんてないわよ、ほら」
レミリアはパチュリーにも見えるように本を開くと、流すようにパラパラとページをめくった。
たしかに、どこにもそんなページはない。
しかしパチュリーは何も言わず、不安げにじっと本を見つめていた。
「…まあいいわ。私もしばらくここで本を読んでみるし、もし小悪魔の霊がいるなら何か変なことが起こるでしょ」
レミリアが椅子に座る。パチュリーはそのすぐ隣までもうひとつの椅子を移動させてから、座った。
肩がつくほどの距離だったので正直本が読みにくかったが、言ってもまた泣きそうな顔をされるだけなのでレミリアは黙って我慢する。
パチュリーも慎重な手つきで本を開き、なんとか読書を開始した。
どうせ何も起こりやしないと高をくくるレミリア。衣擦れの音にも敏感に反応するパチュリー。
そんな相反する2人は3時間ほど読書を続けたが、結局何かが起こることはなかった。
ここでレミリアがぶるりと身震いをする。ぴくりと反応してパチュリーがレミリアの方を見た。
レミリアはゆっくりと立ち上がる。
「ちょっとお手洗いに行ってくるわ」
「え…」
「一緒に行くのはさすがに恥ずかしいわよ。大丈夫、すぐ戻ってくるから」
「早く、早く戻ってきてね…」
「ええ」
少しの間とはいえひとりきりになるなど、3時間前のパチュリーなら了承するはずはなかった。
だかここまで何も起こらなかったことでパチュリーの心にも多少の余裕が出来たのかもしれない。
図書館を出て行くレミリアを見送り、パチュリーは本へと視線を落とす。
ひとりきりになった途端、なんだかまた怖くなってきた。やっぱり自分もついて行けばよかった。
そう後悔するも、もう遅い。だがここまで何も起こらなかったのだ。
レミリアが戻ってくるまでの短い間に、"小悪魔"が来たりするはずがない。
そう自分に言い聞かせながらページをめくる。何も異常はない。
『ぴちゃり』
パチュリーは自分の心臓に氷を埋め込まれ、その冷たさが全身に伝わるような感覚を覚えた。
水の音。ここは埃っぽい図書館。外も雨は降っていないし、どこからも水の音などするはずがない。
恐怖を思い出した体がガクガクと震えだす。
やだ、やめてよ。なんでひとりきりになった途端。レミィ早く、早く戻ってきてよ。
『ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ』
水音が激しくなる。どこから聞こえているのか分からない。
パチュリーの顔はまたも唇まで真っ青になり、恐怖で硬直した体は指一本動かすことが出来ない。
そして視界の端に何かが映った。それはパチュリーのいる机の下、すなわち床方向だった。
眼球をゆっくりと動かし、床を見る。
いつのまにか血の水溜りが、パチュリーの足元いっぱいに出来ていた。
「っーーー!!!!!!!」
悲鳴にならない。
反射的に体が動いた。
パチュリーは椅子の上に跳び乗り、血の海から逃れようとする。
だがあまりに動転していたので、バランスを崩して倒れてしまった。
べちゃり
血溜りの中に倒れ込む。生臭い血の匂いが、パチュリーの鼻腔をついた。
気を失いそうだった。むしろ気を失うことができたらどれほど楽だっただろうか。
「あ……ぁ……」
血溜りから這い出て、ゆっくりと立ち上がる。そして歩く。歩く。走る。
「うえあえああああえあああ!!!!!」
奇声を上げて、パチュリーは走った。出口に向かって走った。
着ている服は血を吸って重くなっていたはずだが、不思議と重さは感じなかった。
それよりも今はただ、誰か、誰か、私を助けて。私をひとりにしないで。
体当たりするように扉を開けて、なんとか図書館から出る。
先ほどにも恐怖で図書館を飛び出したばかりだったが、今回の怖ろしさはそのときの比ではない。
レミリアの行ったトイレと図書館は少し離れていた。今はそこまで行っている精神的余裕はない。
パチュリーはすぐ右手にある、地下へと続く階段を駆け下りた。
地下にはフランドールの部屋がある。その扉を、ノックもせず開ける。
「ふぇっ?誰っ!?」
フランドールは着替えをしているところだったようだ。
シャツとドロワーズしか着ていないフランドールに、パチュリーが抱きついた。
「ちょちょちょ!パ、パチュリー?」
「助けて…助けて…たすけてっ……」
抱きついたまま凍えたように震え、うわ言のように繰り返し呟くパチュリー。
最初は赤面していたフランドールも、どうやらそのような浮ついた空気ではないことを察する。
小悪魔が死んでからパチュリーの精神が不安定になっているという話は一応聞いていた。
でもここまでとは。フランドールの中でも、パチュリーは物静かで英明なイメージがあった。
そのパチュリーの見たこともない取り乱しように、フランドールはどうしていいか分からなくなる。
「パチェ!?どこいったの?パチェ!!」
遠くでレミリアの叫ぶ声が聞こえた。
トイレから戻ってきて、パチュリーがいなくなっていたからだろう。
良く分からなかったが、フランドールはそっと、怯えるパチュリーの背中を撫でた。
「お姉さまのとこ行こ?歩けるよね」
パチュリーは震えながらも、小さく頷く。
フランドールの肩を借りながら部屋を出て、階段を上った。
そして開けっ放しにされた図書館の扉をくぐり、フランドールは声を上げる。
「お姉さま!パチュリーが…」
声を聞いたレミリアはすぐに扉のところへ現れた。
フランドールの肩でぐったりとするパチュリーを見て、目を丸くする。
「パチェ…!!どうしたのフラン、何があったの!?」
「わかんない…。急にパチュリーが私の部屋に来て…」
レミリアはフランドールからパチュリーの体を受け取る。
その体は汗でぐっしょりと湿っており、パチュリーは焦点のない目で「ごめんなさいごめんなさい」と呟き続けていた。
「…そういうことなのよ、霊夢」
「ふーん」
次の日、紅魔館のテラスにはレミリアと霊夢の姿があった。
あの一件以降、パチュリーはまたレミリアの部屋に引きこもってしまった。今は咲夜が面倒を看ている。
レミリアが今日こうやって霊夢と話をしているのは、いつものようにただお茶を飲んでいるというわけではなかった。
「だから霊夢、あなたに"除霊"をお願いしたいのよ」
「でもその話だとさ、本当にその小悪魔の霊がいるとは限らないじゃない。パチュリーの幻覚とか、思い込んでるだけかもしれないんでしょ?」
「仮に何も霊がいなくても除霊したってことにすれば、パチェも安心してきっと元に戻ってくれるわ」
「…うーん。本当は除霊なんて専門じゃないけど…。まあできなくはないけどね」
とりあえず霊夢は了承する。
レミリアとはそれなりに交友はあるし、仕事料も貰えると言うのなら断る理由はなかった。
交渉が終わったので、レミリアと霊夢はさっそく大図書館へと向かった。
図書館の入り口には咲夜とパチュリーの姿もあった。先ほど連れて来るように頼んだのだ。
「パチェ、霊夢が除霊してくれるから、もう怯えることなんてないのよ」
「ほんとに…大丈夫なの…?」
「大丈夫よパチュリー。私に任せなさい」
霊夢は懐から除霊用の札を取り出す。そして先陣を切って、大図書館の中へと足を踏み込んだ。
その後を、レミリアとその服をぎゅっと掴んだパチュリーが続く。
「いるわ」
入ってすぐに霊夢が言った。レミリアが聞き返す。
「い、いるって、幽霊が?」
「ええ。さっき霊はいないかもしれないって言ったけど、確かにいるわよ」
「ひっ…。ほ、ほら…だから言ったのに…」
パチュリーが怯えた表情のままさらにレミリアの服を引っ張った。
「ほ、本当にいたのね…。ごめんなさいパチェ、私が間違ってたわ。…で、それは小悪魔の霊なの?」
「そこまではわかんないわよ。でもまあ何もないのにいきなり霊が沸いたりすることなんてないし、まあその小悪魔の霊でしょうね」
霊夢は机の置いてある場所まで進み、手際よく何枚かお札を床に貼り付けた。
淡く白くお札が光る。と思ったが、すぐにそのお札は輝きを失ってしまった。
「はい終わり」
「え?」
「除霊、終わったわよ」
「うそ…。そんな簡単に終わるものなの?」
「だってすごく低級な霊だったんだもの。死んだ小悪魔の霊って言うからもっと凶悪なのかと思ってたのに」
霊夢は床の札をはがしてもう片づけを始めていた。
レミリアもパチュリーもぽかんと拍子抜けする。
ここまであっさりと行くと、逆に不安になってくるのも無理はなかった。パチュリーが霊夢に聞いた。
「ほ、ほんとにもうここに霊はいないの?」
「信用してよ。間違いなく除霊は完了したわ」
「でも、怨みを持って死んだ霊は強い地縛霊になるって、本に書いてあったのだけれど…」
「たしかにその通りよ。でも、実際に力の弱い霊だったんだからしょうがないじゃない。そもそも怨みなんてなかったんじゃないの?」
「で、でも、だったらなんで私を怖がらせるのよ…!」
「それはわかんないけど、強い怨みがあるならそんな怖がらせるとかじゃなくてもっと本当に恐ろしいことをしてくるわよ」
「けど…」
霊夢の言うことはもっともだ。パチュリーにもそれはわかる。
ただ、不安なだけだった。あんな怖い思いをもう二度としたくないだけだった。
「パチェ、霊夢が言うんだから間違いないわよ」
レミリアがパチュリーに言う。
パチュリーはまだ半信半疑だったが、霊夢からもしものときのために対霊用のお札を渡され、しぶしぶ納得せざるを得なかった。
あの一件から1週間後。パチュリーはひとり、大図書館で本を読んでいる。
あれからもう変な音も、奇妙な現象が起こることもなくなっていた。
たしかに除霊は完了したのだ。しかし安心する反面、やはり疑問も残った。
どうして小悪魔は霊としてここに残ったのだろう。
ただ私を怖がらせるためだけに現世に残っただなんて、どう考えてもおかしい。
パチュリーはパタンと本を閉じた。
考えても仕方ないか。だって、小悪魔の霊魂はもうこの世から消えてしまったのだから。
パチュリーは次の本を読もうかと、机の脇に積まれた本の山に手を伸ばす。
そしてその姿勢のまま固まった。
『ピキキ』
妙な音がした。足音でも、声でもなかったが、確かに背後から何か音がした。
ほんのりと冷や汗が吹き出る。いや、今のはきっと風で建物が軋んだ音よ…。きっとそう。
『ギギギバキ』
さっきより大きな音だった。木材が砕けるような、初めて聞く音だった。
パチュリーはすぐさま、懐に常備していた対霊用の札を取り出す。
流石に見ないわけにはいかない。
札を構えたまま、パチュリーはゆっくりと後ろを振り返った。
パチュリーの背後にあった本棚が、こちらに向かって倒れてきていた。
「ぁ…」
気付くのが遅すぎた。
本棚に収納してあった本が、傾きに耐えられずばらばらとこちらに落ちてくる。
巨大な"面"が、こちらにむかって倒れてくる。
…聡明なパチュリーは瞬時に理解した。
あの魔方陣から放たれた斬撃によって本棚の中ほどが曲がり、密かに倒れるほどにまで損壊していたことを。
そして小悪魔が何のために霊となってここにいたのか。何故『うしろ』と本に書かれていたのか。何故私を怖がらせてここから遠ざけようとしたのか。
力の弱い小悪魔の霊が、主を敬愛する小悪魔の霊が、精一杯何を伝えようとしていたのか。
なにもかも、気付くのが、遅すぎた。
何トンもある巨大な本棚は、パチュリーに覆いかぶさるようにして倒れた。
轟音。砕ける机、椅子、骨、頭蓋。
想像を絶する圧力を全身に受けたパチュリーは、耐えられるはずもなく、即死だった。
END
ホラーはやっぱり難しいです。
パッチェさんのキャラが崩壊しまくってるけど、こういうのも可愛いよね。
Thank you for reading!
8/24 修正 8/31 コメ返信
>>1
ありがとうございます。
天国でパチュリーの魂が小悪魔と出会えたのなら、少しは救いがあるかもしれませんね。
>>2
パッチェさんも小悪魔もいい子なんです。ただ巡り合わせが悪かっただけで…。
圧死パチェ万歳!!
>>3
後味の良し悪しはともかく、オチには結構気を使っているので嬉しい限りです。
口寄せ…。霊夢ちゃんは妖怪退治専門だから、きっと口寄せは苦手でしょう(焦
>>4 NutsIn先任曹長さん
幽霊だからといって怨霊だと決めつけてしまったのが悲劇の原因ですね。
小悪魔ちゃんの伝え方もちょっと不器用だった感も否めませんが。
>>5
一応小悪魔の起こす怪現象がホラー要素なんですが、正直ホラージャンルを名乗っていいのか怪しいです。
フランちゃんのシーンは不要だったかもしれませんが、なんか可愛いような気がしたので入れてみました(基本行動原理
>>6 ハッピー横町さん
そういう感想がいただけるのは嬉しい限りです。
みんな優しいのに悲劇が起こっちゃうっていうのも、切なくてやるせなくて大好きです。
>>7
自責の念でボロボロになってしまったパッチェさん。
原作に近いパッチェさんなら冷静に小悪魔の意図を汲み取って危機回避できたかもしれませんね…。
>>8
ありがとうございます。
クズがいる話も好きですが、こういうのも大好きです。
>>9 穀潰しさん
読みやすさはかなり意識しているので、そう言っていただけるととても嬉しいです。
「可愛いパッチェさんを書こう!」と意気込んだ甲斐がありました。圧死パチェ万z(ry
>>10
ひとりのときしか出てこなかった理由は「ホラーだから」という部分の方が大きかったかもしれませんw
タイトルの意味はその通りです。まあ除霊を提案したのはレミちゃんなんですけどね…。パッチェさん哀れ。
>>11
切なくやりきれない話は大好きです。
悪意のない悲劇の方が、誰も幸せにならない感が強いような気がします。
>>12 ギョウヘルインニさん
怖がりで動転しちゃったパッチェさんは中々に歯がゆい子。
優しさだけでは人は救えませんでした…
紅魚群
作品情報
作品集:
30
投稿日時:
2012/08/20 23:26:33
更新日時:
2012/09/05 20:07:45
分類
産廃百物語B
パチュリー
レミリア
小悪魔
除霊してしまったからもう小悪魔に謝ることも出来ない
パッチェさんの魂は何処に行くのかしら
ぱちぇは圧死がよく似合う。
小悪魔は偉いね。うん。まあぱちぇが人に恨まれるわけないけど。
みんな何も悪くないいい話だった。
怖がりぱちぇかわいい!けど圧死ぱちぇも大好きだよ。
でも霊夢も巫女なんだから口寄せすればいいのにぃ・・・
見事にオチましたね〜!!
か弱い小悪魔の僅かなデータ量の情報伝達は、敬愛すべき主に最後の最期になるまで通じませんでした。
小悪魔がもたらす不可解な現象にドキッとした
どうでもいいがフランの着替えにもドキッとした
明確なクズやワルが存在していることが多いここ産廃で、そういう話はひときわ、切ない。
綺麗なオチに、思わず涙腺が緩みました。
でもだからといって小悪魔としっかり話し合って許してもらおうとかそういう考えにもいたれない優しくも弱いパチュリーかわいいです。
すばらしい
とまれ、読みやすく、しかし場景の分かりやすい描写。無駄のなく、すらすらと進むストーリー展開。大変勉強になりました。
脅えるパチェさん可愛い。でも潰れるパチェさんはもっと可愛い。
怖がりパチェって言うより小悪魔の霊だからこそこんなにビビってたんだろうね
パチュリー一人のときしか小悪魔が出なかったのはレミリアと一緒なら本棚が倒れてきても大丈夫だからかな?
タイトルもなにげに切ない。愚行っていうのは実験失敗のことより小悪魔の想いに気付かず除霊してしまったことか・・・
無力感がたまらんな。
パチュリーが小悪魔に怯えるだけでなくいいたいことが気付けてば良かった。
夜に電気消して読むんじゃなかったよ…。
小悪魔の霊に怯えるパチュリーがかわいかった