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『産廃百物語B 「文々。新聞号外『夏の心霊体験総特集!』」』 作者: 隙間男
「ってなわけで……今日皆さんにあつまっていただきました!」
そうこの場に集まった7人に言うのは射命丸文。文々。新聞の記者である。
彼女の新聞には悪評が付きがちだが、たまにはこういった至って真面目な特集もするのだ。といっても、ゴシップ誌のそれと大差ないものだが。
ちなにみに今回は紅魔館の一室を借りての取材だ。
「で?幻想郷でこんな特集組もうなんて物好きあんたしかいないわよ。何か企んでるんでしょ?」
そう言うのは博霊霊夢。彼女もまた文に呼ばれてこの場に来たのだ。
大方、1日暇だしたまには彼女の取材にでも付き合ってやろうと考えたのであろう
「いやいや、そんなことはありませんよ。『夏のおいしいスイーツ特集』でも組もうと考えていたんですが、ほたてさんに先を越されてしまいまして……」
「へえ……私はホラー特集よりもおいしいお菓子のほうが好きだな。まあ今回の取材には付き合ってやるよ」
そう言うのは霧雨魔理沙。ホラーやら心霊やらは嫌いな類らしいが、霊夢と同様に暇つぶしに来たのだろうか。
「和菓子より洋菓子のほうが好きなんですけど……ケーキあります?」
「ケーキが冷蔵庫にあまっていたのでもってきましたわ。今切り分けますね」
そう口々に言うのは東風谷早苗と十六夜咲夜。彼女たちはおそらく取材に来た文を面倒くさがった神奈子とレミリアにあてがわれたのであろう。あまり今回の取材には意欲は示していない。
「……あのう。早く始めませんか?……早く帰りたいんですが」
彼女たちのトークに対して痺れを切らしたのは魂魄妖夢。彼女は極度の怖がりで、恐らくこの場から早く抜け出したいがために今の発言をしたのだろう
「取材の内容がこんなだったら絶対に付いていかなかったですよ……」
「あはは、まあ内容知らせると絶対にあなたは付いてこないじゃないですか」
どうやら、彼女は文にだまされてここに来たようだ
「まあそうですけど……」
「文。何でこの部屋はまだ夕方なのにこんなにくらいんだ?お互いの顔も見にくいじゃないか」
魔理沙がそう言うと同時に、文を除いた全員がお互いの顔を見る。確かに暗くて誰が誰か認識するのが精一杯だ。
よくよく見れば、全部のカーテンを閉めた部屋の真ん中には細い蝋燭が一本弱々しい明かりを灯しているだけだった。
「それは……まあ雰囲気作りですよ」
「なんだよそれ………」
「それでは、誰からいきますか?誰からでもいいですよ?」
「あ、それじゃあ私から行くわね」
そう言うのは霊夢だった。神社の巫女ともなれば、ひとつくらいお宝話を聞くことができるだろう。文は期待に胸を膨らませた
しかし―――
「……特になし!以上!」
「「「「「え?」」」」」
全員が驚愕の声を上げる。それもそうだろう。数多の異変を解決してきた彼女であり、神社の巫女でもある彼女だ。除霊だとかそういった話の一つ位あるだろう。
「大体、幻想郷には幽霊だってゾンビだっているんだからそんな怖い話探すほうが難しいじゃない!むしろあんたらがどんな話をストックしてるのか気になるわ。まあ皆が話しているうちに考えておくわ」
「や、まあ……そうですね……。じゃあ、次誰かどうぞ」
「霊夢の奴手を抜きやがったな……ずるいぜ。ってわけで私が話そうか」
そう言って魔理沙が椅子に座りなおす。
「あれは確か………」
そう言って魔理沙が話し始めた。
ほら、パチュリーっているじゃないか。
実はさ、私はアイツの部屋に入ったことがないんだよ。だってアイツはいつ行っても大体図書館にいるからな。
ほかで出くわしてもせいぜい外の宴会か紅魔館の廊下だ。
まあ、入ったことがないってのは、つい最近までの話でな―――
「あら魔理沙、どうしたの?」
「本を借りきたんだぜ」
「ああそう。ちゃんと返してよね………」
「はいはい了解っと」
その日、私はいつも通り大図書館で本を借りにきたんだ。
まあしばらくパチュリーと談笑したり本を探したりで楽しい時間を探していたのだが……
「ねえ魔理沙……私の部屋に来ない?」
「えっ…ちょっ……それはどういった意味で……?」
「単純にあなたに本を貸したら返ってこないから全部私の部屋で読めばいいと思ったのよ。何考えてるの」
「あ、ああそう言うことか……じゃあ遠慮なくお邪魔させてもらおうかな」
「ん。まあついてきなさい」
そう言って私はパチュリーについて行き、彼女の部屋に移動したんだ。
それは図書館の立地とは違い、割と風通しの良い部屋だった。
特徴的なのは、部屋の中でフロアが分かれていることだった。要するに、紅魔館の1階と2階のどちらからでも彼女の部屋へ行くことができることだった。
「図書館とはぜんぜん印象が違うな」
「本当に大切な本はこの部屋で大切に保存してるわ。風通し、光の当たり方までベストに調整してるのよ」
確かに彼女の本棚は日の当たらなく、それでいて風通しの良いところにあった。
一部カビが生えているようなのもある図書館のとは大違いだった
「まあ、魔理沙はここで本でも読んでおいて。紅茶は咲夜がもってくるでしょうし。私はお風呂に入ってくるわね」
「……今、咲夜はレミリアと博霊神社に遊びに行ってるぜ?」
「……あっ」
そう言うとパチュリーは何か考え込んだ様子でしばらく黙り込んだ。
少し考えたところで私にこう言ったんだ。
「お風呂の準備手伝ってくれない?咲夜にいつも手伝ってもらっているんだけどこれがまた力仕事で……」
「いいけど、何をすればいいんだ?」
「ちょっとついてきて」
そう言うとパチュリーは私を2階まで連れて行ったんだ。
その時点で嫌な予感がした。風呂掃除なんてのは妖精メイドの仕事だ。わざわざメイド長にやらせることなんてロクでもないことばかりだろうからな。
ビンゴ。案の定ソレだった。
「コレの中にここの人間を入れて……扉を閉めてほしいのよ」
それは外の世界の拷問器具だった。おぞましい鉄の人形で、胴体が空洞なんだ。で、その扉の部分には無数の釘が植えつけられている。
そして空洞の中には排水溝のような穴があった。おそらく血液がそれを伝って浴槽に流れ込む仕組みなんだろう。
そしてソレのそばには無数の死体。どれもこれも血液を絞り出されたかのようにカサカサボロボロのミイラみたいになっていたんだ
「助けてください!!お願いします殺さないで!!」
おそらくは外界の人間だろう。みずぼらしい格好の少女が私に助けを求めている。
「えっ……これは……?」
「知らないの?『鉄の処女』よ。外界の中世の名門貴族が拷問に使っていたって言うアレよ。文献とかで見たことがあるでしょ?」
「そう言うことじゃないだろ……!」
「じゃあなによ?まさか、ここにある死体とその女の子にでも同情してるわけ?」
「ああそうさ!何が悪い?こんなの正気の沙汰じゃない!」
「……魔理沙、あのね」
「なんだよ!!もうお前の話なんて聞きたくない!」
「魔女って言うのはこういったことも儀式として行うのよ。私のコレは健康のためで、あなたが知らないだけでアリスも命蓮寺の僧侶も――――」
「やめろ!!!聞きたくない!言わないでくれ!」
「ちょっ!魔理沙!!」
半狂乱になった私は一番近くにあった窓を突き破り、そのまま一直線に家まで帰って鍵をかけてしばらく震えていた。
パチュリーとはあの日以来あっていない。
「ってのが私の話だ。ほかにもいろいろあるんだがこれが一番怖い話だな」
そういって紅茶を飲み一息吐く魔理沙
「ほほう。なかなか面白いですねぇ……ちなみに、どれくらい前の話なんですか?」
「1週間前だな。丁度」
「だからこないだまでビクビクしていたのね。あんた」
「じゃあ時間も推してるし、次いきましょう―――」
「いや、少し待ってください」
そう言ったのは咲夜だった。紅魔館のメイド長であり、先ほどの話の隠れた主要人物ともあって場に緊張が走る。
「確かに、『鉄の処女』はパチュリー様の部屋に存在します。」
「しかし、私は彼女の入浴の手伝いもしたことがありませんしこの紅魔館にそんな数の人間が仕入れられたなんてことは記録されていませんし記憶にもございません」
「じゃあ、なんでアイツはそんな嘘をついたんだ……?」
「ま、まあ気を取り直して次いきましょうか!次誰が行きます?」
「じゃあ私が」
そういってピンと手を挙げたのは妖夢だった。半人半霊という立場からどのような物語を繰り出すのだろうか。周りも期待が膨らむ。
それは、私が幽々子様と一緒に散歩していたときのことでした
いつものように、団子と夕食の食材を買いに行ったのですが、どうしても夕食のメニューが決まらなかったのです
幽々子様は和食派です。よってメニューも割と似たようなものになるのです。
「幽々子様、今日は何が食べたいですか?」
「ん〜。妖夢が作ったのなら何でもいいわよ」
「そうじゃなくて……もう少し具体例を示してくださいよ」
「じゃあ鮎とか食べたいわねぇ」
「ふむふむ……鮎と」
「味噌汁はどうしますか?」
「そうねぇ……恐怖の味噌汁を頼もうかしら」
「麩ですか?承知しました」
「そうじゃなくて……恐怖よ」
「えっ?」
恐怖の味噌汁……聞いただけで嫌な響きがしました。
最初は幽々子様のちょっとした冗談だと思っていたんです
「あれは凄く美味しいのよ〜。なんだか力がみなぎるようで」
「は、はあ……」
「只、材料集めが大変なのよ」
「その材料とは?」
「エクトプラズム」
エクトプラズムとはなんとも科学的な響きがしますが、そんな物質、もとい食材を私は聞いたことがありませんでした
その珍妙な響きの食材を知るのは幽々子様だけです
私は、その食材がどこで手に入るか問いました
「そこにあるじゃない。目の前にあっても中々手を出せなくて困ったものだわ」
「以上で私の話は終わりです」
そう言うと妖夢は深々と頭を下げた
「で、コレのどこが怖い話なんだ?拍子抜けしたぜ」
魔理沙の言葉を聞いた妖夢はムっとした様子で自身の背後を指差す。
そこには、いつもの半霊がいなかった。
「ああ……食べられたのね」
「そ……そう気を落とすなって、そのうち戻ってくるだろ」
「そうですね……」
少し捻くれた様子で妖夢が答えると、文が次の語り手を探し始めた。
「さて……次は誰が行きますか?」
「じゃあ私からひとつ」
「咲夜さんですか。どうぞ」
目の前の紅茶を少し飲んだあと、咲夜は語り始めた。
紅魔館でメイド長をさせていただきかれこれ長い時間が経っていますが、私もまだまだ未熟なものです。
お嬢様に紅茶の温度を指摘されたり茶葉を指摘されたり、特に紅茶関連に関してはお嬢様の求めるものを提供できなかったのです
そこで、私は幻想郷の中でも屈指の紅茶好きに師事させていただくことにしたのです。
「あら、紅魔館のメイドさんね。こんなところまで何の用かしら?」
「貴女がおいしい紅茶の入れ方を知っていると聞きまして」
「……入りなさい」
幻想郷の中でも特においしい紅茶を振舞うとか噂されているアリスさんのところへお邪魔させていただき、しばらく紅茶に関して師事されていただいたのです。
確かに彼女の紅茶はすばらしく美味しく私ですら感嘆の涙を流しそうになりました。『ああ、自分は今までどれほど不味い紅茶を淹れ、飲んでいたのであろう』と。
まあ、こんな話をしていてもアレなので、本題に戻らせていただきます。
「アリスさん、最近人形の姿とか趣向とか変わってきました?」
「あら、やっぱり気がついたのね?流石だわ」
アリスさんの人形は、一昔前はかわいらしい刺繍の施された小さい人形だったじゃないですか、今回見たものは少し違ったのです。
不気味の谷現象ってあるじゃないですか。人形やロボットが人間に近づいてきて、ある一線を越えると嫌悪感を感じるって言うアレです
その一線を越えたかのような人形がたくさん置いてあったのです。
「かわいいでしょ」
「え……そうですね」
それは、お世辞にも『かわいい』と言えるものではありませんでした。
どちらかと言えば、人間のようなリアルさがあったのです。
特に顔や、体の細部。手や足などがほとんど人間と大差ありませんでした
「前の人形……ほら、上海達はどうしたんですか?」
「ああ、ここに飾ってあるわよ」
確かに、彼女達は不気味な人形とは反対の位置に飾られていました。
普通に飾られているようにも見えますが、私には底知れぬ不気味さを感じたのです。
「ああ……日も暮れそうだわ。今日はここに泊まっていきなさい」
「で、でもお嬢様達は……」
「彼女からは手紙を預かっているわ。『私達は自力で何とかするから、たっぷり修行してきなさい』らしいわ。ほら、これが手紙」
確かにお嬢様の字でそれは書かれていました。それですっかり安心した私は彼女の家に泊まらせて頂くことにしたのです。
そして、私はその不気味な人形のことはすっかり忘れてしまって彼女と夕食を共にし、談笑してその後眠りにつきました。
すっかり熟睡していた私ですが、深夜、ふと眼が覚めたのです。
ふと周りを見渡すと、私にベッドを貸してくださり、自身はソファーで寝ると仰っていたアリスさんがどこにもいませんでした。
「………?」
このまま寝てしまえば明日になってしまうし、本当はそれでよかったのですが、私にはそれが許されていなかったのでしょう。
そのまま眼がパッチリと冴えてしまったのです。
そして、覚醒した意識で耳を澄ませば、家の外で話し声が聞こえていたのです。
「―――いやぁ、お姉さんも物好きだね。こんな部分だけほしいなんて、フェチなのかな?」
「そんなのじゃないわ、必要な部位だけを提供してもらったらそれで十分なのよ。私は」
「ふぅん……まあ、また必要になったらあたいに連絡してくれたらいいよ!」
「ええ。そうさせてもらうわ」
「じゃ。いい夜を」
気になって窓から覗いた先には、最近出てくるようになった地底の猫と、アリスさんが楽しそうに談笑していたのです。
それ自体は別に気にならなかったし、どうでもいいことだったのですが、彼女がアリスさんに提供していたものがすごく気になり、同時に、とてもいやな予感がしたのです。
私は彼女が家に入るのを確認したら、すぐにベッドへ戻って寝たフリをしました。
……予想道理、彼女は私のいる部屋には戻って来ずに、隣の部屋へと入っていきました。
その部屋は、一回昼に入ろうとしたのですが、鍵がかかっていたので、入ることを断念していたのです。
……一度鍵さえ開けば、私が時間を止めて部屋へと侵入することは容易です。ささっと部屋に入って彼女の死角で息を潜めました。
アリスさんは、猫が持ってきた箱を開けると、にやにやと薄気味の悪い笑みを浮かべました。
私はそれが気になり、再度、時間を止めて箱の中を確認しました。
それは、人の面の皮、手、足などのパーツでした、魔女となって、食事を取る必要もなくなっているし、そもそも彼女が人を食することなど万に一つも考えられません。
私はいやな予感がしました。
案の定、部屋を見渡せば何かの素体。おそらくは人形のボディーのようなものでしょう。
私は、ここから逃げ出したい気持ちとここで何が起きているのか見届けたい気持ちが共存していました。
結局、ここで最後まで何が起きているのか見届けようと思い、再び死角に回りました。
「〜〜♪」
彼女は慣れたような手つきで、パーツを何かの液体が入った水槽の中に漬け始めました。そして、また別の水槽からパーツを取り出すと、それを今度は人形に取り付け始めたのです。
そのパーツは、さっきのものよりも一回りも二回りも小さくて、人形のサイズにぴったり合うものとなっていました。
水槽の中の液体は凝縮作用があるのでしょうか?私には到底理解の及ばないものでした。
別に恐ろしくはありませんが、底知れぬ不気味さがあり私はその場で目を見開いて呆然としていました。
「……いつまでそこで隠れているつもりかしら?」
そのとき、彼女が私に声をかけてきたのです。
時間を止めて動いていたし、死角に回り込んでいるから絶対にバレないはずだと思っていたのですが、どうやらばれていたようです。
「どうしてここにいるとわかったのですか?」
「ここにいる人形は皆私と感覚を共有しているわ。私にとっての死角でも人形にとっての死角じゃなかったのよ」
「で、どうする気です?こんなものを見られてしまえば私も只じゃ済まされないんでしょう?」
「えっ………あはははははは!それはないわ!」
「……?どうしてですか?」
「どうしてもこうしても……」
「私の一番大きい目標は達成したからよ」
そう言うと彼女はいつの間にか抜けていた私の髪の毛を掴むと、一番大きい水槽の中に投げ込みました
「培養には数週間かかるわ」
「貴女は何を言って―――」
「私の新しい人形……どれもどこかの誰かさんにそっくりだとは思わない?」
前の人形と見比べたときの違和感。その正体がそのときハッキリしました。
それは、人形では到底出しえない個性。まさに人間そのもののようだったということです。
「……まさか」
「そのまさかよ。外の世界ではクローンとか呼ばれているそうね。私はそれを応用しているわけよ」
「今日彼女から仕入れたパーツはそれとは別件で使うもの」
「霊夢、魔理沙……まあ大体の顔見知りはもう、人形にしてしまったかしらね」
「本人にも直接迷惑はかかっていないし。時間はかかるにしても合理的でしょ?」
「………ええ」
「さ、空も白んできたし朝ごはんでもしましょうか!」
結局、その日は彼女と朝ごはんを共にし、夕方まで紅茶のレクチャーを受けたあと紅魔館へと帰りました。
しかし、彼女は終始不気味な笑みを浮かべていましたし、彼女の言っていた『別件』と言うものの正体もわからないままです。
この一晩で私の中には抜けきらない気持ち悪さが広がっていきました。
「と言うお話でした」
そう語り終えると、紅茶をすすり始める咲夜。
「どうりで咲夜さんが淹れた紅茶が美味しいと思ったわけです」
「いやいや……そっちじゃないだろ。アリスの奴なにやってんだか」
「これはアリスさんの家に突撃取材もありえますねぇ。それでは、早苗さんで最後ですねお願いします」
そう言うと早苗は今まで崩していた足を正座に戻し、語り始めた
―あれは、私が幻想郷に来る前の話です。幼かったころから、私の傍らには常に神奈子様と諏訪子様がいました。
当時は、引っ込み思案で友達も少なく一人で……厳密には1人と2柱で遊んでいることが多かったのです。
そんな中、私に一人の友達ができました。私と同じくらいの年で、私と同じような性格。
私達2人が同調して、仲良くなるのにはそれほど時間が掛かりませんでした。
どんなときも2人で一緒にいました。それだけで私はとっても幸せな気持ちになれましたし、彼女もまた同じ気持ちだったのでしょう。
しかし、そんな友情も幸せも長くは続きませんでした。
初めて出会ってから1年が過ぎた夏のある日、彼女は亡くなりました。
いえ、正確には私が殺してしまったのです。
私が信号を無視し、車にはねられかけたところを彼女が庇って亡くなってしまったのです。
通夜、葬式と実感もなく進み、涙を流すこともなかったその姿は大人たちにとっては異常だったのでしょうか。
彼女の母親は半狂乱になりながら私に掴みかかってこう言ったのです
『神社の娘?笑わせんな!神の加護なんてありゃしないんだよ!現に娘は死んだ!アンタはどうだ?え?そうやってのうのうと涙も流さずに生きてるなんて反吐が出るよ!この×××野郎!』
彼女のお母さんはその後引き摺られて葬式会場から姿を消し、彼女のお父さんは私と両親に対してすごく頭をさげて謝っていました。彼曰く、
『人の生き死には神様が決めるもので、人が決めるものではない。娘はたまたま早く神様に目をつけられてしまっただけなんだよ』
だそうです。私は彼女と二度と私に会えないと実感した反面、彼女にまた会える気がしてこう言ったのです。
「ねえねえ、また――ちゃんとあそべるかな?」
「そうだね。早苗ちゃんがいい子にしていたら――ちゃんもきっと喜んで遊びに来てくれるよ」
出棺のとき、私は彼女に対して、再び遊ぶ約束をしました。
「――ちゃん。また一緒に遊ぼうね」
『うん!』
確かに彼女の声で、そう聞こえました。彼女の魂は報われたのでしょうか、成仏できたのでしょうか。
数日後の夜、私は不思議な夢を見ました。
死んだはずの彼女が、私の隣で話しているのです。
「一緒に遊んでくれるって言ったよね?」
「うん!」
「じゃあ……いまからあそぼ…………」
そういって彼女は私に手を差し伸べました。その手は青白く、生気を感じれるものではありませんでしたが、子供の私は別に臆することもなく、その手を握り返そうとしました。
「早苗!その手を握り返したら駄目だ!」
「えっ……」
一瞬、神奈子様の声が聞こえたと思ったら、私と彼女の間に割って入ってきました。
「なんで……?」
神奈子様に対して、私より速く彼女が問いました。
「……元の場所へと帰れ、さすれば赦す。今ここですぐに去りなさい」
「でも……」
「去れ!!」
そう言うと、彼女はしょんぼりとした様子で姿を消し、後には私と神奈子様だけが残りました。
その瞬間私は夢から覚め、神奈子様の気配を感じて周囲を見渡しました。
「神奈子様……」
「早苗……赦しほしい。彼女は……」
「……?」
「悪霊になってしまったんだ。もう早苗と彼女を会わせるのは危険すぎる。私には成仏させることはできない」
神奈子様の話では、私が彼女に最後にした声掛けで、彼女の中に未練が生じてしまい、現世に留まってしまったらしいのです
「じゃあ……」
「そうだ。彼女は一生あの場で苦しみ、やがて人を巻き込む存在となるだろう。そうなる前にできることは……」
「言わないでください」
「わかっているさ……しかし、どうするのだ?彼女はそのうちあの場所で人を巻き込んでさらに膨れ上がり強大な存在になるぞ」
「今の早苗ですら祓えないのにそこまで大きくなったら誰にもどうしようもない」
「………少し、考えさせてください」
当時幼かった私は、ハッキリとした結論を出せずに先延ばしにしてしまったのです
案の定、彼女が亡くなった場所では1週間と経たないうちに同年代の少女が事故に巻き込まれることが頻発しました
全て、決断を躊躇った私の責任です
「早苗、もう時間がないぞ……」
「わかってます神奈子様」
「今の私に成仏させることができないなら、封印して、いつか彼女を成仏させることができる力を手に入れるまで眠ってもらいましょう」
幼い私は、彼女の存在、霊魂を完全に消滅させると言う神奈子様の提案を退け、彼女の魂を封印するという結論に至りました。
これは、お互いに辛い選択ですが、それでいて最良の選択でもありました。
深夜、私はこっそりと自宅を抜け出し、あの事故があった場所へと向かいました
あの日以来、私はあの場所を避けて行動していたのでそこへ行くのは彼女が亡くなって以来でした
大通りから遠い場所にあるその道は、深夜ということもあって人っ子一人いない状態でした。
そして、事故のあった信号機の近くまで来ると、私は凄まじい嫌悪感に襲われました。
「っ……ここまで膨れ上がっていたのね」
神奈子様がそう言うまで、私にはそれが何なのか理解できませんでした
それは、悪霊の塊でした。幾多の子供の魂が合体して、誰が誰ともわからぬおぞましい姿に彼女は変わり果てていました
「早苗、これもっていなさい」
そう言われ渡されたのは白い本です。中には何も書かれていません。
そこからは自分でも何が起きているかわかりませんでした。いつの間にか神奈子様の傍にいた諏訪子様が何かを唱えると、それは一瞬にして消滅して、白い本の中に吸い込まれていきました。
神奈子様の話では、もともと存在としての格が違うので封印させることは容易だが、そういった神ではないので成仏だけはどうしても不可能とのことです。
数年後、私は現人神としての力を手にしましたがあえて神としての道を歩まず、巫女としての道を歩み、幻想郷に来ました。
巫女としてはまだ未熟なため、彼女を成仏させることはまだできませんが、いつか彼女を成仏させることができる時が来ると思います。
「こんなお話でしたが、いかがですか?」
「とりあえず危険なものを持っていることはわかったわ。今度私のところに持ってきなさい」
そう言うと霊夢は早苗を睨みつけた。
「は、はい……」
「重い話ですね。まあそれだけ記事も書きがいがあるのですが」
「さて、霊夢。まだ何も話していないのお前だけだぜ?」
「ん〜……。私も何あったはずだから思い出そうとしてるのよ……」
「あっ!これよこれ」
そういって霊夢は巫女装束のポケットから何かを取り出した。
「ん?なんだよこれ」
「目玉のようですね」
「目玉?また不気味なものを……」
「最近なんか常に見られていると思っていたのよ。それで神社中くまなく探してみたらほら。こんなに」
そういって霊夢はポケットの中から再び大量の目玉を取り出した。それは色とりどりに輝いていて、不気味に光っている。
「うわっ!気持ち悪いなぁ!」
「でしょ?誰が置いたのかしら……まあ見当はつくけどね」
「……とりあえず気持ち悪いですし、叩き潰しませんか。」
「そうね。何かこっちを見てるようで気持ち悪いわ」
「河童のところへ持っていって調べてもらいたいんですが……まあ駄目でしょうねこの雰囲気では」
「んじゃあ、とっとと潰してゴミ箱の中にでもすてましょう」
そう言うと6人は思い思いの方法で目玉を潰し、ゴミ箱の中に捨てた。
「ふぅ……何かスッキリしたわ」
「霊夢さん、あの目玉に精気を吸い取られたんじゃないのですか?」
「あははは!あるわけないじゃない!」
「んじゃ、今日の取材はおしまいってことで、また新聞ができたらお配りしますねー」
「出来は期待せずに待ってるぜー」
「ははは、では皆さん今日はお開きってことで、さようならー!」
「〜〜♪」
「…………おや?」
文の目線の先には八雲紫がいた。彼女がこんな時間に姿を現すのは珍しい。
いつもの式神の姿もなく、異様な様子を放っていた。
「紫さん。こんな時間に珍しいですねぇ」
「あら。そちらこそ……」
「ん?そういえばその目、どうしたのですか?」
「失明した」
その後文の姿を見たものはいない
全てにおいて後味の悪い話を書いてやろうと思ったら全てにおいて中途半端になった典型的な例。もはや心霊でもホラーでもなくギャグの話もあります
隙間男
作品情報
作品集:
30
投稿日時:
2012/08/21 12:58:07
更新日時:
2012/08/21 21:58:07
分類
産廃百物語B
射命丸文
自機組
パチュリー
幽々子
アリス
神奈子
諏訪子
ショートショート
オムニバス
魔理沙……、パチュリーから嫌われているんじゃね?
妖夢……、半霊って自然発生するもんなの?
咲夜さん……、アリスのドン引きする趣味にあまり動じてないね……。
早苗……、『それ』を将来使役するようになったりして……。
霊夢を愛するゆかりん。
恋は盲目と申しまして……。
それって人形師の範疇を越えて医学や科学の畑でやる仕事な気もするんだよなあ…
とゆーか死体を素材にするとかどこの外印さんだよw
そして幽々子…妖夢の事を食べたかったのか…(not性的な意味で)
ぱちぇはもう騙してでも魔理沙殺してやれよ。ぱちぇに小細工は似合わないよ!
魔理沙に恐怖を植えつけただけのぱちぇは優しすぎるかわいい!
うわああ魔女のの秘密が気になります…
部分が全体を形作っていくオムニバス形式はやっぱり面白い