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『産廃百物語B 「勅令随身保命」』 作者: あぶぶ
幻想郷で不思議な事が起こった。
梅雨の季節、五月雨が麦の葉を濡らし、曇り空の薄暗い世界のジメジメとした湿気が覆う人間の里。
三日三晩降り続いた雨で里の傍らを流れる河の水かさが増し、殆どの村人が家に閉じこもっていた。
ある日、二十歳の青年と十に満たない少女が行方知れずになった。
水の事故か、はたまた妖怪の仕業か。
暫くはこの話題で持ちきりだろうと思われたが、間も無く河川が氾濫し里が濁流に飲み込まれた。
行方の分からぬ者は数十人に上った。
半月程経ち、倒壊した家屋が粗方片付いたのだが、どう言う訳か亡骸が一つも見つからない。
里の瓦礫が流れ着いていた丘も土砂を掘り返して隈なく探したが、徒労に終わった。
「もしや神隠しにあったのでは?」
誰かがそう言ったら、やがてそうだろうと言う事になった。
梅雨が開け八月に入ると、真夏日の猛暑が人肌を焼く太陽の季節がやって来た。
「うーむ……うーむ。これは東か……或いは南か……あるいは……」
木漏れ日の下でダウジングロッドを振る妖怪が一匹。命蓮寺に居候しているねずみ妖怪、ナズーリンだ。
なにやらぶつぶつと呟いてロッドを地面に放り投げたり、奇妙なポーズでプロペラのように頭上で回転させたりしている。
「よし!分かった。南南東の方角だな。距離は数キロってとこか」
傍から見れば謎の行動だが的中率は7〜8割と言うから、精度は十分だろう。
「あれ?つまり命蓮寺のすぐ近くじゃないか。村からも随分離れているし……ミスったのかな??」
実のところ何故この棒を振り回すと探し物に行き着くのかナズーリン本人にも分かっていない。
彼女が一番得意とするのはねずみに探させる方法だが、洪水のせいでねずみ達の集まりが悪く、やむなく不慣れなロッドを操作していたのだ。
頭の上についている耳をヒクヒク動かして迷っていたが、暫くすると命蓮寺の方向に向かって飛び立った。
「やれやれ、どうして私が人間の死体を探さないといけないのか。どうせ妖怪の餌になったに決まっている」
人間の生死などどうでも良いと言うわけではなく、そこまでクールな性格ではない。が、死体の捜索は楽しくない。
ナズーリンは楽しくない事をするのが嫌いなのだ。その上飽きっぽい性で、良く仕事をほっぽって遊んでいる。
重要な任務の最中に昼寝をしているのを星に見つかった時は、猫に尻尾を掴まれたねずみよろしく凍り付いていた。
この任務も聖の命令でなければ引き受ける気など毛頭無かった。聖は人間の里から直に依頼されたと言っていた。
村人からの頼みを無碍に断ってはますます命蓮寺から人が遠ざかってしまうのだろう。
「まあ、死体の足の一本でも持っていけば満足だろう。妖怪の胃袋に入っている為捜索は無駄でしたとさ。めでたしめでたし」
魂魄妖夢は綺麗な和室の座布団の上で正座して、湯飲みの緑茶を時折口に運んではため息を吐いていた。
和室と言ってもここは白玉楼では無い。
ここ、命蓮寺の客間は妖夢が住んでいる屋敷のそれと比べてより質素な造りである事が分かる。
妖夢は目を走らせ部屋の隅々まで掃除が行き届いているのを見て感心する。
妖怪寺と呼ばれている為もっと廃退的な場所だと思っていた。
しかし二刀はすぐ傍らに置き、何が起こってもすぐに剣を抜ける様にしてある。
ピクリと彼女の指先が刀に触れる。廊下を歩く音が聞こえる。やがて音は客間の前で止まった。
スルスルと襖が開き、入ってきたのは一輪と呼ばれる僧侶とピンク色の雲の妖怪だ。
「お待たせしました、妖夢さん。わざわざ冥界から足を運んでいただき感謝しますわ」
「……いえ、人間の里での事は私達も気にかけていたところです。あの洪水で多くの者が亡くなったと聞きます。
なのに冥界に来るはずの霊が見当たらないのです」
「それは初耳です。てっきり死体が見つからないだけかと思っていました」
一輪が驚いた顔を雲の妖怪に向ける。
「雲山、貴方はどう思います」
ピンク色の靄が回転する。下を向いていた者が顔を上げるように、ぼやけた輪郭の髭面を一輪に向けた。
「死体が上がっておらん上に魂も行方知れずとな?
それらが無関係とは到底思えぬから、どちらかを見つければ自ずともう一方の行方も分かるのでは?」
「ふむ、そうですね。ではどちらを探すのが容易でしょうか?」
「状況が分からんからな……なんとも言えんが。死体は散々村人が捜したというし、霊の方を見つける方が容易いかもしれんぞ」
一輪はそうですか。と静かに答え次に妖夢の意見を聞いた。
「私も死体が見つからないのと霊の行方知れずは同じ原因があると思います。でも私は死体と霊は同じところにあると思います。
見つかっていないのは霊が肉体に留まっているからだと考えます」
「根拠は何ですか?」
「もし霊が肉体から出れば普通はすぐに三途の川に向かうからです。
よほどこの世に未練を残している霊なら分からないですけど。
でも今回は自然災害だからそれは考えにくいので」
三人は暫く話し合った結果、霊と死体を捜すグループに分かれて捜索することになった。
「では、私と雲山は引き続き命蓮寺の者と死体の捜索を行いますね。妖夢さんには霊の捜索をお願いします。
それから命蓮寺の者を一人同行させてもらえますか?お互いに情報交換が必要でしょうし、何かと役に立つはずです」
「え……?そんな、いいですよ。役に立つだなんて……私の方こそお役に立てるかどうか」
「いえいえ、妖夢さんの霊の知識は捜索の要です。
勝手ながら貴方を呼ぶと決めた時に彼女を同行させる事も決めていましたので」
一輪は物腰の柔らかさとは裏腹に随分と強引な性格らしい。
立ち上がって廊下に続く襖をあけると、ある女性の名を良く通る声で呼んだ。
命蓮寺の墓地は高台にある。春になると桜が咲き乱れ、今の季節は葉桜が風情ある景観を造り出している。
綺麗に舗装された通路に並ぶ墓石も手入れが行き届いており、墓地特有の近づきがたさはまるで無い。
しかし、そろそろ日が傾いて黄昏時を前にすると、昼間は涼しげだった木のざわめきの音が薄気味悪いものに聞こえてくる。
ナズーリンがこの墓場に行きついたのはつい先刻、ロッドの反応がこの辺りで最も強くなるのだ。
「やっぱりそうか。ロッドは命蓮寺の敷地内、特に墓地がある丘の下を示しているみたいだ」
半信半疑だったナズーリンも何度もダウジングを繰り返す内に、ロッドが強く同じ場所を主張したため予想外の結果に同意せざるを得なかった。
「こんな所で何をしているの?」
突如背後から声を掛けられ、ナズーリンは大げさに跳び上がった。
背中から触手を数本伸ばした黒ずくめの少女がいた。
背の低いナズーリンを見上げるように腰を降ろし、大きな目をパチクリさせて探るように顔を覗き込んでいる。
「な、なんだ。鵺か。驚かさないでくれよ」
鵺はにんまりと笑い、彼女が跳び上がったところを真似して見せた。
ナズーリンはムッとして、顔を背けてそのまま立ち去ろうとする。
「冗談冗談。怒んないでよ。ナズが勇敢なのは私が一番良く知ってるからさ」
勇敢と言う言葉にピクリと耳を動かし、ゆっくりと向き直るが、まだ彼女の怒りはおさまっていない様だ。
「何か用かい?君の下らない遊びに付き合っている暇は無いんだけど」
「いやあ、墓場は幽霊が多くて涼しいじゃない。蒸し暑い命蓮寺に絶えられなくってさ、抜け出して散歩してるんだよ。
ナズこそ墓場で何をしているの?」
「仕事中だよ。人間の里の水死体がどういう訳か命蓮寺の敷地内にあるらしいんだ」
「うん?話が見えないんだけど」
ナズーリンが仕方なしに依頼の内容と経過を話すと、
鵺は聞いているような聞いていないような不思議な表情でじっとナズーリンの瞳を見つめていた。
「なーるほど。ご苦労さんだね。じゃあ引き続き捜索がんばってくださいな」
「言われずともそのつもりさ、君の方こそブラブラしているのなら捜査に協力したらどうだい?」
鵺は目を見開いて手を叩き、なるほどそうだねぇと、わざとらしく頷いた。
「ところでさ。ナズ、ねえ、ナズ。喉渇かない?私、丁度水筒を持ってるんだけど」
「ああ、すまないね。喉はカラカラだ。ダウジングも大詰めだしここを離れたくなかったんだよ。早速もらえるかい?」
「……もちろん」
ナズーリンは鵺が差し出した竹製の水筒の栓を開け、一度に半分近くの量を飲み干した。
「いい飲みっぷりだわ。余程喉が渇いていたんだね」
しかしナズーリンは水筒から唇を離すと、眉をひそめて水筒を鵺に押し付けた。
「鵺、この水何処で汲んできたの?変な味がするわ。舌がピリピリする」
「ああ、そうでしょうね。水に混ぜた薬が神経を冒しているでしょうから」
「え?」
鵺に向けて伸ばしていた腕がぶらんと下がり、指先から水筒が離れて地面を転がった。
「あ、れ……?」
膝が小刻みに振るえ、やがて弛緩した筋肉が体重を支えきれなくなり尻餅をついた。
そのまま仰向けに倒れこんだナズーリンの脇に手を回し、鵺は人目を避けるように彼女の肉体を運んでいった。
「ん、むにゃ」
ナズーリンは消毒液の刺激臭で目を覚ました。
覚醒はしたものの身体の痺れは残っており、指先一つ満足に動かせない。
霞がかった思考で何とか現状を知ろうとすると、手首と足首に擦れる様な痛みがあり、後ろ手に縛られている事が分かった。
(ああ、そんな……最悪)
服が剥ぎ取られている。人に絶対に見られたく無いところまで丸見えだった。
ナズーリンは慌てて人の気配を探ろうと耳を澄ます。
物音一つ無い。濡れたタイル張りの床に頬を貼り付けたまま眼球だけを動かして、薄暗い部屋を見渡した。
かなり大きな空間らしい。薄暗いためよく見えないが、ほんの数メートル先に何かが積み上げられている。
(何かしら?生ゴミの様な臭い……動物の死体でも積んであるのかな?)
よくよく目を凝らしてみると小山の構成物が何か分かった。
人間の山だった。衣類は身に着けておらず、黄色く変色した肉体がグロテスクな芸術品の様に無造作に積み重ねてある。
山からとび出ている腕や足は関節が固まっている為、直線的に宙に伸びており、
時が止まった世界では必要の無い表情筋の硬直で引きつった顔を幾つか彼女の方に向けている。
「あ、ああ……。」
余りの事にナズーリンは失禁した。
歯をカチカチと鳴らし、今見たものを忘れようと目を強く瞑る。彼女の本能がここから逃げ出すべきだと伝えた。
痺れはあるが少しずつ這いずる事は出来る。
ナズーリンは死体の山から遠ざかるように重い身体を引きずって、ようやく二、三歩分の距離を移動した。
しかし今度は三十センチ位の段差に行き着き、
それが起き上がることの出来ないナズーリンにとっては不落の城塞の様にずっと向こうまで続いている。
彼女の背後には一つ人影があった。それは黒髪を指先で掻き揚げて耳に乗せると、ナズーリンの耳元にそっと息を吹きかける。
「ひっ!?」
ナズーリンは殆どパニックを起こして何とか段差をよじ登ろうともがく。
人影はクスクスと笑いながらそんな彼女を見下していた。
「随分と性格の悪い方ですね」
呆れ声が鵺の背後から聞こえた。
先ほどの小山の一部がもぞもぞと動き、白い肌の女が這い出てきた。しかし他の死体同様、艶の無い肌はくすんだ色をしている。
「面白いよ。今度は星の名を何度も呼んでいる。ははは、ほんとにナズは可愛いな〜」
二人はナズーリンにも聞こえかねない大きさの声で話しているが、段差をよじ登ろうと荒い呼吸を繰り返している彼女はそれどころではない。
ようやく上半身を段差の上にあずけると、ずっと床が続いていると思っていた彼女には酷な事だが、水を張った凹みが大浴場の湯船の様に向こう側の壁面まで続いていた。
体力を消耗した彼女がせめて喉を潤そうとして水に顔を近づけた時、人間の眼球が一つ浮かび上がってきた。
ナズーリンは勢い良く水面に嘔吐した。その時バランスを崩し、水面に顔をつけてしまう。
苦しそうにもがく様を見て鵺は声を殺さずに笑いこけた。
「あのぅ……早く助けないと死んでしまいますよ?」
「あはは、まあまあ、もう一寸だけ。もう一寸、見てようよ。ふふふ」
鵺はナズーリンの肉体から起き上がろうとする気力が無くなって、ぐったりと動かなくなった頃、ようやく彼女の尻尾を掴んで引きずり上げた。
「ほら……その子、息してないじゃないですか」
「あちゃ〜」
二人は慌てて介抱した。鵺がナズーリンの肺に息を吹き入れると苦しそうに水を吐き出す。
「ナズ?ナズ〜?大丈夫?」
「う……あ……ぬ、え?」
「あ〜良かった。ナズが死んじゃったら、私、すっごく悲しんじゃうよ」
白々しい台詞を吐く鵺の隣で、もう一人の少女はオドオドとナズーリンの顔を覗き込んでいる。
「ぬ、え……こ、こ……は?」
「ああ、ここは神霊廟だよ。命蓮寺の下にとんでもなく大きな空間があって、そこに建ってるのさ。
まあ、ナズーリンもそんなこと知ってるよね。
私さ……ここが発見されてからちょくちょく遊びに来ててね。いろんな人と話して仲良くなったんだ。
すっごく良い人たちだよ。」
早口で話す鵺の言葉を半分も理解出来ていなかったが、自分を拉致したこの妖怪が命蓮寺を裏切っている事だけは分かる。
「たす、けて」
「うーん、出来ればそうしてあげたいんだけど。無理なんだよ。ごめんね」
「……!?」
いかにも申し訳無さそうな表情をしているが、目の前にいる妖怪が、自分の想像していたよりも遥かに邪悪な内面をしているのだと悟った。
始めは得体の知れない場所に見知った顔があると言う安心感を彼女に感じていたが、鵺の薄情さに絶望してナズーリンはぽろぽろと涙を流す。
「あの、そんな言い方無いんじゃないですか?この子怯えてます」
「あーもー五月蝿いなー。芳香の真面目ちゃんは……鬱陶しいから御札貼ってよ」
芳香と呼ばれた少女は酷く傷ついた感じで顔を背けると懐から札を取り出して頭に貼った。
キョンシーには付き物のあのお札だ。貼り付けると彼女の目から生気が引き、代わりに口元に貼り付けたような笑みを浮かべた。
「うーん。良い気分だ。一寸歌でも歌いたい良い気分だー」
「あはは。調子出てきたじゃない」
「いや、うん。思ったんだけどさ。この子って見てるとスゲー苛めたくなるんだわ。あはは」
芳香はフラフラと暗闇の中に歩いていくとバケツと注射筒を持って現れた。
よいしょ。と言って、二人の前に液体の入ったバケツを置いた。鵺は一寸引き気味に芳香に尋ねる。
「おやおや〜?芳香さん?このバケツに入った液体はなんなんですか〜??」
「いい質問だね鵺くん。これは浣腸液と言ってね、専門的に言えばグリセリン希釈液……だっけ?
このねずみちゃんのお尻の穴にこの注射器でちゅ〜っと注入して、可愛いところを観察しちゃおうて魂胆なのだ♪」
「て、天才?」
「先人の偉大な知恵なのだよ。それじゃあ鵺君。ねずみちゃんのお尻の穴をもちっとこっちに寄せてくれたまえ」
「アイアイサー」
二人の話を聞いている内に真っ赤になったナズーリンが弱弱しい反抗を見せるのだが、全くの逆効果。
火に油を注ぐとはこの事だろう。はあはあと、大きな息づかいで興奮した二人がナズーリンに迫る。
鵺は爪を立ててナズーリンを拘束している足首の紐を切り、足を持ち上げてまんぐりがえしの格好をさせると、舌をだらんと垂らした芳香が下卑た笑い声を立てながら丸見えになった尻穴に注射器を差し込んだ。
「んんっ……!」
ナズーリンがくぐもった声を上げる。芳香はそんな反応に喜んで注射器のピストンをゆっくりと押し込む。
液は全てナズーリンの腸内に入った。
「あ、ああ……」
「「おお?」」
「で、る……!出ちゃ……う、よおっ!」
わくわくしながら二人は彼女の尻穴を覗き込む。
二人の視線に耐えられずナズーリンはやだやだと駄々をこねるがそんなことで決定的な瞬間を見逃す二人ではない。
しかし余りに早く浣腸液が出ても薬が効かないだろうと思った芳香がナズーリンの尻穴に中指を突っ込んで栓をした。
その瞬間、消え入るような声をあげてナズーリンがオシッコを噴射する。
噴水のように放射状に噴出した尿に芳香がわざと顔を近づけて顔面に浴びると、ナズーリンは涙と鼻水でクチャクチャになった顔で夢でも見ているかの様な表情をした。
「うーん、この格好じゃあ私が良く見えないな」
鵺はナズーリンをマングリ返しさせたままひっくり返し、尻を上、頭を下にして、彼女の足首を掴んで固定する。
「よーし、完璧!これで一寸顔を上げればナズのおマンコも肛門もバッチリ見えるよ」
「い、たい……お腹、痛いぃ」
どうやら神経を麻痺させていた薬が効果を失ってきたらしく、ナズーリンの抵抗が少し強くなってきた。
もっとも突き出されたお尻をもぞもぞと動かすのが精一杯の様だが。
「た、助け、て……!星、星……!!」
「ナズ……ねえ、ナズ?星が来るわけ無いでしょう?」
「んん?ねえねえ!この子もうすぐ出すよ。指先に硬い物があたる。くくく、便秘だねぇ〜。これは」
「ん、そうなの?ねえ、どうなの?ナズ」
ナズーリンはイヤイヤと首を振ってまた頬を涙で濡らすばかりだ。
鵺は涙と汗と鼻水で濡れたナズーリンの顔を見下ろして、やさしく微笑みながら話しかける。
「ねえ、ナズ、ナズはどうしてそんなに可愛いの?どうしてそんなに情けないの?きっとナズは世界一情けない妖怪だよねぇ」
「ち、ちがうぅ……!」
ナズーリンの羞恥に染まっていた顔から少しずつ血の気が引いてきた。ガタガタと肩を震わせて脂汗を流す。
どうやら限界のようだ。
「あ、も、もううぅ……!だめぇ!」
鵺が芳香にアイコンタクトで合図すると。ナズーリンのアナルに根元まで入っていた指がゆっくりと抜かれる。
薬液が肛門から流れ出て彼女の腹を濡らす。
「い、やだっ。見ないでぇ……!」
プックリとアナルが盛り上がり一塊の便が出てきた。球状のそれはナズーリンの身体を転がり首筋から床に落ちた。
次に出てきたのはやや柔らかめのうんこで、彼女の性器の上に落ち、滑り落ちて腹部で止まる。
「ひっく、ひっく」
しゃくりあげる様に泣くナズーリンは最後に健康的な色の十センチ程のうんこを勢い良く排泄した。
それは宙を飛んで彼女の顔の上に落ちた。
「や、やあぁ。うえっ、く、くさいいぃ……!うっ、げえぇええぇえええ!」
茶色の便を顔に乗せたまま、またナズーリンはゲロを吐く。もはや彼女の顔は涙と汗と鼻水とゲロとうんこで滅茶苦茶だ。
白目をむいて時たま胃の内容物を吐き出している。
少々やりすぎたと思った鵺は芳香と協力してナズーリンを左右から抱えて先ほどの水槽に彼女の身体を浸し、
自身も水に入って彼女の顔や髪の毛から汚れを洗い落とした。
「よしよし……ごめんねぇ、ナズがあんまり可愛いからついやり過ぎちゃったよ」
ショックで放心状態のナズーリンを水槽から上げるのは一苦労だ。しかも小腸が足に巻きついて足をとられそうになる。
芳香が上から彼女を引っ張りあげた。ナズーリンを随分気に入ったようで唇に何度もキスをしている。
「さてと、そろそろ皆が我慢できないってさ。鵺はもう部屋を出た方が良いよ」
「あ〜、もうか〜。寂しいよ……ナズ、さよなら。今日はすっごく楽しかったよ。
本当はずっとずっとナズと一緒にいたかったんだけど、
ナズがここを見つけちゃうんだもん。仕方ないよね?
可哀想だけど、でも永遠に続くわけじゃないから……出来れば苦しまずに死ねるといいね」
空ろだったナズーリンの表情が死と言う言葉でまた恐怖に引きつる。
鵺の後姿に手を伸ばして、何事か呟いているが彼女に肩を貸している芳香にも何を言っているのか分からなかった。
鵺が部屋の扉に手を掛けた時、後ろからナズーリンの奇声が聞こえた。それはとても少女の上げた悲鳴には聞こえなかった。
後ろを振り返った鵺は先ほどの小山が消え、代わりに二人のいた場所に奇妙な塊が出現したのを見たという。
「やっぱり間違い無い。つい最近、ここを大量の霊が通過した形跡があります」
妖夢は命蓮寺を出るとすぐ、気になることがありますと言って連れと一緒に墓地にやって来た。
そして地面に手のひらを当て、暫く考えてから村紗水蜜の不思議そうな顔に向かってそう言った。
「その霊ってのは里の人間の魂ですか?」
「ええ、数も大方一致しますし……おそらくは」
村紗はそこまで分かるものかと驚く。自分より遥かに年下の少女が頼もしく思えた。
「しかしこの墓地を通ったのかい?誰かが気付いてもよさそうなものだが……」
「えっと、私が前来た時も随分広い墓地だと驚きましたし、それに命蓮寺から遠くに行くほど手入れが行き届いていないみたいです」
「ああ、確かにね。南の方は殆ど森と墓地が一体化している感じだよ。
そのせいで神霊廟なんてものが地下にあるのも気付かなかった……って、まさか」
「ええ、どうやら霊たちはその神霊廟に向かったみたいですね」
「ふむ、だが大したものだね。私も長年幽霊をやっているが全く分からんよ」
「……同類の臭いがします」
「えっ?」
「この霊から、死んでも生きてもいない者の気配がするんです。
私以外にこんな気配を感じたのはここで不死者と戦った時以来です」
二人が木々の隙間を縫うように伸びている小道を歩いて墓地を進んでいくと、
殆ど森と言っていいくらい木が密集している所で薄っすらと光る発光体を見つけた。
「敵……?」
妖夢は素早く剣に手を掛ける。が、村紗が手でそれを遮った。
「いや、あれは家の者だよ。おーい、鵺ー!」
村紗が声を掛けると発光体はフワフワと近づいてきて二人の前で人間の姿に変わった。
「君達……こんな所に何か用かい?」
さも不思議そうに探りを入れる。
「いや、妖夢さんがこの辺りに人間の魂が連れ込まれた形跡があると言うんだ。
命蓮寺が人間の里から死体の捜索を頼まれたのを知っているかい?」
幼顔の妖怪は目を閉じて、静かに首を横に振った。
「そうか、悪いんだがこの事を命蓮寺に伝えてくれるかい?私達は神霊廟に向かわなければならない。
もし奴等が関わっているのならば応援が必要だからね」
「あ、ああ。そうだね」
それじゃあ。と言って村紗が小道を奥に進みだした時、妖夢が剣を抜いて鵺に向かって突きつけた。
「な、何をするんだ!?」
「退いて下さい!」
長刀を振って鵺の頭の上の空間を切り裂く。
「ぎゃあ!!」
悲鳴が聞こえ、何も無い場所に青白い電流が流れかと思うと、それは次第に人型に変わっていった。
「皆さん下がってください。神霊廟の奴です。私が切り伏せます」
その時妖夢の背後でうめき声と何かが倒れる音が聞こえた。驚いて振り向いた妖夢のわき腹にも鵺の拳がめり込んだ。
「知っているかい?」
・・・
「知っているかい?君は」
・・・
「知っているのかい?」
「何のことです?」
妖夢が目を覚ましたのは彼女の見慣れぬ空間だった。傍らに死体の山を見つけて思わず悲鳴を上げてしまった。
薄暗いタイル張りのこの部屋で気を失っていた時、耳元で何かしら囁かれた。その声で目覚めたのだ。
「いや、私が貼っているこの御札のことさ、この言葉の意味を知っているのかと聞いたのさ」
そう言うとキョンシーの妖怪は気味の悪い声で笑う。何が可笑しいのか妖夢には分からなかった。
信じがたい事に刀を奪われていなかったので短刀を素早く抜いて目の前の少女に突きつけた。
「ははは、不死者に刀を突きつけてどうしようってんですか〜?」
「ゾンビでも細切れになれば指一本動かせないんですよ」
にやりと笑って芳香は突きつけられている刀に手を伸ばす。
驚いて一瞬反応が遅れたが、切っ先を彼女の頭に向かって突き出した。
それは芳香の頭部を貫くことは無かった。
手のひらに突き刺さった刀がつばの所まで食い込んでいるが、短刀の長さが足りず額の数センチ手前でストップしている。
芳香がもう一方の腕を伸ばしてきたので刀を突き刺したまま後ろに飛び退いた。
「こ、今度こそ!」
妖夢は意気込んで長刀を抜くと、芳香との間合いを図るように切っ先を彼女に向ける
「あはははは、あっはっはっは!」
芳香は手に突き刺さった短刀を妖夢に向かって投げつけ、同時に自身も飛び掛った。
「舐めすぎです」
妖夢は短刀を柄の部分を掴んで難なく受け止めると、長刀を振るって額の御札を真っ二つに切り裂く。
芳香は途端に勢いを失いそのまま跪いた。
「知ってますよ。導師がその札でキョンシーを操ってるんですよね?暫くそこで蹲ってて下さい」
妖夢は部屋を見渡し出口を探すがそれらしき物は見当たらない。
おそらく死体の山の後ろに隠れているのだろうと当たりを付け、回り込んでみるとやはり鉄製の扉があった。
同時に村紗がうつ伏せに倒れているのも見つけ、急いで駆け寄る。
が、死体の山に不用意に近づきすぎた。黄色い腕が一本伸びて彼女の足首を掴んだため派手に転んでしまった。
「な、何が?」
すぐに芳香の様な不死者だと分かったが、刀を振って掴んでいる腕を切り落とそうとした時、自身の手首を村紗に掴まれてしまった。
「離して!」
怒って村紗の顔を見ると、顔面が崩れていた。おそらく酸のような物で溶かされている。
額には芳香と同じ札が貼り付けてあった。
「知っているかい?」
鳥肌が立つ。妖夢が倒れこんだまま声がした方を振り向くと、札が剥がれた芳香がフラフラと近づいて来ていた。
妖夢の傍らで立ち止まり、懐から新しい札を取り出すと、彼女を見下ろして話し出した。
「これは、この札を貼ると気分がいいんだ。何でも出来る気がする感じって分かる?凄い開放感があるんだ。
この札がどういった物か分かるかい?こいつを頭に張ってるとこの札の裏っ側が世界の殆どを占める様になるんだ。
試験の前に緊張で眠れない事があるだろう?
もし、部屋の中にデカイ猛獣がいたら試験の事なんて頭から吹っ飛んでるはずだよねえ。
どんな恐怖も忘れられるほどの恐怖ってのは何だと思う?それが目の前にぶら下がってるんだよ。分かるかい?」
ま、間に合った……のはいいんですけど。
コメ返し
NutsIn先任曹長さんへ
芳香ちゃんがホント屑な子になっちゃった。変身ヒーローみたいに御札はってパワーアップって感じにしたかった。
2. 名無しさんへ
妖夢は三月精のへたれイメージが強かったので弄られキャラにするつもりでした。
夜伽でナズーリンがスパンキングされてるのを見るまでは……。
キーハックさんへ
東方キャラが出ればどんな文章も一寸は読めるようになるのかな?
設定からキャラから全てを自分で作れるようになりたい。
あぶぶ
作品情報
作品集:
30
投稿日時:
2012/08/21 14:55:52
更新日時:
2012/08/29 21:45:49
分類
産廃百物語B
ナズーリン
鵺
芳香
スカトロ
芳香ソロ!!
そうきたか!!
でも油断しちゃったね
そして妖夢ちゃん。君はよく頑張ったよ。でも残念だったね。(^^
死体の山、酸で溶かされた顔
言葉の持つ恐ろしさがヒシヒシと伝わってくる作品でした。
おつかれさま