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『姫様が可愛いペットを得るまでの小話』 作者: 沼
輝夜と永琳が永遠亭に腰を落ち着けて間もないころの話。
ある日輝夜が永琳の研究室を覗くと、フラスコの中に奇妙なものがうごめいていた。
黒くどろりとしたタールのようなそれは、ところどころ泡立ちながらぐねぐねと蠢いている。
どうやら生き物らしい。
永琳に話を聞いてみると、竹林の奥で見つけて拾ってきたとのこと。
永琳は優しい。しかしマッドな一面もある。
きっとこの子はこれからいろいろ実験されてしまうのだろうなあと輝夜は少し気の毒に思った。
永琳がこの奇妙な粘塊の研究を進める中、輝夜は暇つぶしもかねて大きな水槽に放り込まれているそれによく話しかけた。
粘っこいタール生物は随分大きくなった体をくねらせ、笛を吹くような音を響かせることでそれに応えた。
戯れに縊り殺した雀を与えてやれば、体からのばした触手でハートマークを作って喜びを表現するような愛嬌もあった。
自由自在に変わる姿を見るのだって面白い。
永琳にとっては貴重な研究対象でも、輝夜にとっては可愛い娯楽生物でしかないのである。
そんなおかしな粘塊との生活がしばらく続いたある日、永琳が唐突に粘塊の処分を決定した。
研究の結果、太古にかつて主人だった生物に反乱し壊滅的な打撃を与えた原形質生物であることが判明し、このまま手元に置いておくのは危険だと判断したとのことだった。
勝手に拾ってきておいてあんまりな話である。
結局輝夜のとりなしにより、粘塊は永琳が見つけた場所に離されることになった。
永琳はいかにこの生物が危険なものか、将来輝夜の身に及ぶかもしれない危険にもふれて反対したが輝夜は折れなかった。
水槽越しとはいえよく親しんだ生物が切り捨てられるのは忍びない。
それに危険だなんだというが、どうせ自分たちは死なないのだからという思いもあった。
粘つく大きなタールの塊が、ずるりずるりと竹林の奥に消えていく。
時折名残惜しげに動きを止めながら、ゆっくりと遠ざかるその姿を輝夜と永琳はじっと見送った。
これが最初で最後かもと粘塊を撫でてやった輝夜の右手はべったりと黒い粘液で汚れていた。
その後しばらくして永遠亭に兎が住み着くようになり、以前とは比べ物にならないほど屋敷に音が増えた。
しかしそんな中、どれほど兎たちが騒いでいても必ず輝夜の耳に届く音があった。
笛を吹くような音が竹のざわめきに紛れてやってくる。
永琳は聞こえないという。
そういえばあの子はあまり永琳にはなついていなかったなと輝夜は小さく笑った。
さらにしばらくして永い夜が明け永遠亭が少しずつ外と交流をもつようになった頃、永遠亭に奇妙な兎が一匹増えた。
黒い体毛が艶やかな兎だった。
その兎は他の兎たちの呼びかけに一切答えず、兎たちのリーダーであるてゐにすら応えなかった。
鈴仙にも永琳にすら応えず、ただ一人輝夜の言うことだけはよくきいた。
今日もその黒兎は輝夜の膝の上でおとなしく丸くなっている。
「少し散歩に行きたいだけなのに、やれ供をつけろだの自分の手が空くまで待てだのと永琳はやかましい。ねえ、もう私たちだけで抜け出してしまいましょうか」
ぼやく輝夜姫に黒兎は一鳴き。
「テケリ・リ」
はじめまして。
全集読んで古のものってだいぶショゴスこきつかってるよな、可愛がってやればそれなりになついたんじゃないのと思ってできた小話です。
で、幻想郷でショゴスを普通に可愛がりそうな人として真っ先に思いついたのが姫様でした。
永琳はミ=ゴと話が合いそう。鈴仙とてゐは普通に発狂しそう。
沼
作品情報
作品集:
31
投稿日時:
2012/10/26 14:39:09
更新日時:
2012/10/26 23:39:09
分類
輝夜
可愛いペット
不死者の余裕で、『それ』を相棒にしましたか。
『それ』が輝夜に反乱を起こす時――、彼女が愛した幻想郷が危機に瀕した時、命令に背いて独断で強大な敵に立ち向かい――。
過去のクトゥルフで幻想郷がヤバイ