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『階段掃除は一段落休憩しましょう。すると幽々子様が申し訳なさそうな顔をして来ました。なんだかわかりませんが、今度こそ訴えます。』 作者: ギョウヘルインニ
「妖夢、ごめんなさい」
「何ですか? 幽々子様」
ようやく休憩を終えて階段掃除を再開する気になった妖夢のところに幽々子があらわれた。
とても、申し訳なさげな顔をしている。
「実はあなたに払った先月の給与を過払いしていたみたいなの」
「だから、なんですか?」
11月の給与に本来無いはずの、電車の定期料金5000円が入っていた。
「今月の給与で過払い分を相殺したいのよ」
「そんなの嫌です」
「ごめんね。会計係りの幽霊には厳重注意したから。今後無いようにするから」
「注意するのは当たり前です。でも、一度貰ったものは返したくありません」
「ごめんね。本当にごめんね。でも、返してもらわないとこまるの」
給与過払いは過去にもあった。その都度幽々子が悪いわけでもないのに謝って、過払い金を返してもらってきた。
妖夢だけ特例を許すわけにはいかない。
「……泥棒」
「え?」
「いや、これって詐欺になるんでしょうか?」
「もしかして、私のことをいってるの?」
「当然じゃないですか。私のことを騙して酷いです」
妖夢が文句を言っている傍らで、幽々子は手を握りしめて沸いてくる怒りを抑えて冷静になる努力をしていた。
「……ごめんなさい。……今後無いようにするから」
「謝っても駄目です。もう、私は許しません。私は訴えます。来月の給与は慰謝料を加味してもらいます」
妖夢は階段に噛んでたガムと唾を吐いて、出て行ってしまった。唾は幽々子の靴にかかった。
「……また、パチュリーのところに行ったのね。相談料5000円なのに。それを返してくれれば全部解決するのに」
こうして、妖夢はまた弁護士のパチュリーに相談しに来たのだった。
「……どうです? 今日はこんなことがあったんですよ。酷いです。私は訴えます」
「過払いね。う〜ん、嫌な気持ちになるのはわかるけど。返してあげて」
何を言っているのだろうと言う顔で妖夢はパチュリーのことを見た。
「はい? 返せって?」
「ええ、これは返してあげないとだめよ」
「ふざけないでください」
「いや、ふざけてないわ」
見つめ合うふたり。
「この、嘘つき紫ミートパイめ!」
「な、何をするの? 痛い!」
短い沈黙の後に、怒りをあらわにした妖夢が平手でパチュリー頬をひっぱ叩いた。
「当然の報いです」
そういって、妖夢は痛がってるパチュリーの頭に唾を吐いて出て行った。
「酷い、痛いよぉ。……あれ?」
律儀にも5000円札が置いてあった。パチュリーは痛みを堪えてそれを金庫にしまった。
「あ、ちょっと、待ってください」
すると、妖夢が血相変えて戻ってきた。
「ひぃ! な、何?」
頭を抱えて怖がるパチュリーに妖夢が近づいてきた。
「5000円落としました。どこですか?」
「5000円? さっきの相談料?」
「相談料? は! 何ですかそれ」
「5000円のこと」
「盗ったんですか? 返して下さい」
「……一度、受け取った料金は返せないわ」
「返せない? この、いやそうですね良いですよ」
面白いことになったと妖夢は思った。こいつの言っていることは過払いじゃないかと勝手に思い込んで裁判に訴えることにしたのだった。
「と、言うわけですよ。閻魔様」
「何が、と、言うわけですよ。ですか」
そして、妖夢は思い立ったら吉日たった改行二列で裁判所に来て裁判を起こす算段だった。
「そうですよ。幽霊の親分と、紫マニアに慰謝料と過払い金を取ってください」
「もう、あなたには何を言って良いのかわかりません。私は閻魔失格なのかも知れません帰って下さい」
「な! 何ですか! 閻魔様のクセに責任放棄しないでください」
「……帰ってください。帰って!」
映姫はもう何が何だかわからなくなってしまっていた。この半分幽霊には幾千もの言葉を尽くして理解させることができない。
「豚め! 喰われてしまえ!」
「帰って!」
妖夢は映姫の顔に唾を吐きつけて怒りながら帰って行った。
そのころ、幽々子は階段で妖夢が吐いていったガムを金属のヘラで削っていた。
「とれない、これとれないわ」
妙に粘着なガムは、地面にへばりついて取れなかった。
かれこれ、3時間たっていてなんだか涙が出てきた。
妖夢が階段そうじを終えると、丁度お昼の休憩時間になった。すると、幽々子が自分と耀夢の給食弁当をもって現れた。
白玉楼は、毎日一食340円の弁当を注文していた。
「今日の給食弁当は、なんかメニュー表と違いませんか?」
「ええ? ああ、そういえばエビフライがメニュー表の写真より一本多いわ」
「あれ、私のは逆に一本少ないんで聞いたんですよ」
「あ、そういえばそうね」
「もしかして、私のから抜きました?」
「抜いてないわ」
本当に幽々子はやっていなかった。弁当屋が間違えて盛り付けてしまったのだった。
「じゃあ、何で一本私のエビフライが少なくて、幽々子様のが一本多いんですか?」
「知らないわ」
そんな事実を二人は知らない。知るすべも無い。
「……知らばくれるな! この痴れ者! お前は食い意地が張っているから私の弁当から抜いたんだ」
「こら妖夢! なんて、口の利き方するの」
「弁当泥棒のアンタには十分ですよ」
「ひどい。私はやってない」
幽々子は悲しくて、まだ口も付けていない弁当を置いて、階段を走って降りていった。
幽々子はたくさん食べるのが大好きだ。しかし、信頼されている思っていた妖夢に弁当泥棒呼ばわりされてとてもショックだった。
「何処に行く気ですか? 逃げるなんて卑怯ですよ」
犯罪者の、幽々子を追うか。それとも、目の前に食べる者が居なくなった弁当を食べるか妖夢は迷った。
「う〜ん、幽々子様はどうせここしか帰るところも無いですし、弁当捨ててしまうのはもったいないですね」
ひとまず、妖夢は給食弁当を2食、食べることにしたのだった。
「いや、幽々子、貴女が相談に来るなんて思わなかったわ」
「助けてパチュリー、私は最近の妖夢が怖い」
今回初めて、幽々子はパチュリーのところに相談に来たのだった。
「ところで、貴女は5000円持っているの?」
5000円なんて大金を幽々子はもって居なかった。
「え? 5000円も払わないといけないの?」
「ええ、弁護士になるには大変だからそれぐらいの料金は取って当然だと思うわ」
パチュリーは暇つぶしで弁護士の資格をとったのだがここでは伏せてある。
「30分の相談に、5000円高すぎる」
「そう? なら帰って」
5000円、340円の給食弁当17食、食べてもおつりが来るではないか。
「……わかったわ」
「わかったのね。じゃあ、5000円」
このころの小悪魔は鉛中毒を患っていていた。大量の鉛を含んだ白粉を付け過ぎたのが原因だった。でも、この話にはなんら関係ないし小悪魔は出てこない。
「……最近、妙に妖夢がおかしな知識を身につけていたのはあなたのせいだったのね」
「え? そこがわかったの?」
とんでもないやつだと、お互いに思っている。にらみ合う二人、その視線はお互いを牽制し合っている。
すると、幽々子は右手を差し出した。
ぶたれる。とパチュリーは思った。小悪魔によくぶたれるのでとても怖かった。
「どうしたの?」
「ぶ、ぶたないで」
「え? 握手よ」
「握手?」
「そう、これからも妖夢のことをよろしくね」
「わ、わかったわ」
幽々子の思考は良くわからない。何がなんだかさっぱりだ。
そして、幽々子はパチュリーに5000円渡して出て行った。
ぶたれると思ったパチュリーは、怖くて汗ばんだ手で5000円札を強く握り締めた。強く、強く、握り締めた。
ギョウヘルインニ
作品情報
作品集:
31
投稿日時:
2012/12/30 05:12:40
更新日時:
2012/12/30 16:44:12
分類
妖夢は幽々子とパチュリーと映姫に唾を吐いた。
もはや、妖夢が言っていることが正当な権利ではなく、暴論になってきている……。
今度は幽々子様に訴えられて社会的地位を失うんじゃないのか?
弁護士も裁判長も妖夢を嫌っているし。