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『みんな大好きアリスちゃん』 作者: パワフル裸ロボ
魔法の森の一角にひっそりと佇む一軒の家。ここには人形を操る魔法使い、アリス・マーガトロイドが住んでいる。彼女は今、新たな人形の仕上げに取り掛かっている。
チクチクと魔法繊維の糸を通し、なんとも愛らしい人形の最後の合わせ目を縫い合わせていく。この人形は、弾幕ごっこに使うものではなく、インテリアの一種として飾るためのものだ。
「よし、と」
縫い合わせが終わり、最後に余分な糸を切り離して終わりである。そこでアリスは糸切りバサミを手に取る。
「お邪魔するぜー」
突如、バキン、という錠前の破損音と共に、知り合いの魔法使いが押し入ってきた。
「暇だから紅茶をご馳走になりにきた」
「帰れ」
思わず手に握った糸切りバサミを投てきした。見事に侵入者の眉間に突き刺さる糸切りバサミ。
「酷いじゃないかアリス。せっかくこの私が来たっていうのに」
額からドピュッと血を吹き出しながら、侵入者の魔法使い、魔理沙はヘラヘラ笑う。
「こなくていいわよ」
アリスはアリスで、新たな糸切りバサミを取り出して人形を仕上げた。
「よし、出来た。悪いけど魔理沙、私これから出かけるから出てもらえない?」
「ん、どこ行くんだ?」
ズポッと糸切りバサミを引き抜きながら、魔理沙が尋ねる。額から吹き出る血の勢いは増したが、本人もアリスもまるで気にしていない。
「神社よ。この人形を霊夢に届けるの」
フフッと微笑むアリスに、魔理沙は雷に打たれたかのような(背景エフェクト)衝撃を受けた。
「な、なん、なんだって!? 霊夢にプレゼントだと!?」
「違うわよ。霊夢が、私の作った人形が欲しいっていうから作ったの」
丁寧にリボンをし、緩衝材を敷き詰めた箱の中にそっと寝かせ、蓋を閉じる。アリスはそれを、寝かしつけた赤ん坊をベッドに寝かせるかのような慈しみの表情をしてやってのけるものだから、魔理沙は思わず見惚れてしまう。
「さ、早く出てよ。鍵付け直すから」
「あ、ま、待った! 私も行く!」
「? あらそう。まあいいわ」
魔理沙によって破壊された錠前に魔法の糸でつなぎ合わせる応急措置を施し、アリスは飛び立った。その後を魔理沙が箒で追い掛ける。
「荷物持とうか?」
「遠慮しておく。あなた、飛び方が乱暴だもの」
「(´・ω・`)」
数分後、アリスと魔理沙は神社へと降り立つ。縁側に座り、湯飲みを握りながらそわそわしていた霊夢が、ぱあっと笑顔を咲かせる。
「いらっしゃい、アリス」
「お邪魔するわね、霊夢」
「おいおい私もいるぜ?」
だが魔理沙は無視された。
「早速で悪いけど……」
「ええ、出来てるわよ?」
そわそわしている霊夢に、アリスはにこりと微笑むと、抱えてきた箱をそっと差し出した。霊夢はそれを国宝かなにかを受け取るかのように、若干震えながら両手で受け取った。
膝の上に箱を乗せ、開けてもいい? と視線で訴えかける。アリスはいいわよと笑みで返し、霊夢は早速静かに箱を開けた。
「……わぁ、か、可愛い……」
普段の霊夢からはあまり想像できない、年相応の少女らしい感想を洩らし、中に眠っていた人形を大事そうに抱え上げる。
「この子、あなただと思って大事にさせてもらうわ」
「そんな大袈裟な。でも、気に入って貰えて何よりだわ」
名前はアリスにしようかしら、やめてよ恥ずかしい、となにやら凄くいい雰囲気の二人に魔理沙は爆発した(背景エフェクト2)。
「だぁー! アリス、私が人形欲しいって言ってもくれなかったくせになんで霊夢には手作りまでしてあげるんだよ!」
「だってあなた大切にしなさそうだし」
言い返そうと思った魔理沙だが、自分で自分の家の状況(貴重な魔導書が絨毯のような状況)を思い出し、結局何も言えなくなった。はっとして霊夢のほうを振り返ると、とてつもなく勝ち誇り優越感に浸ったドヤ顔で魔理沙を見ていた。
「おいコラ脇巫女、なに勝ち誇った顔してんだ〆るぞ」
「あらやだ、負け犬が吠えたくってるわ。やってみろ」
そして弾幕ごっこが始まった。
「おはよーございます! 朝から騒がしいですね」
「あら、おはよう早苗。ちなみに言うともうすぐお昼よ。それと霊夢なら今忙しいわよ」
陰陽玉がマスタースパークを相殺した頃、早苗が神社を訪れた。霊夢は弾幕ごっこ中であるため、アリスが出迎える。
「ああ、いえ、霊夢さんはいいんです。あなたに用事があったんですよ、アリスさん」
「私に?」
早苗は、背負っていた風呂敷を縁側に下ろし、広げてみせた。中には、おそらく幻想郷のものではないと思われる本が数冊あった。
「以前にお話してた、外の世界の小説です。倉庫の中から見つけて来たので、持ってきました!」
「わざわざ探してくれたの? そんな無理しなくてもよかったのに。でも、フフ、ありがとう、早苗」
「な!」
「は!?」
霊夢と魔理沙が、ようやくその出来事に気が付く。すぐさま弾幕ごっこを中断し、二人の元に駆け寄る。
「え、なにそれどーゆーこと? プレゼントで気を引こうだなんて随分姑息な真似をするのね」
「抜け駆けとは汚いなさすが2P汚い」
「おやおや、求めてばかりで何も与えようとしないお二方にそのようなことを言われる筋合いはないと思いますがぁ?」
早苗が至極最もなことを言うので、二人はぐぅの音も出なかった。
「いい度胸じゃないの。ちょっと面貸しなさいよゆとり」
「新参が頭に乗るとどうなるか、体に教えてやるぜ」
「人の身でありながら神に昇華した現人神のこの私にたかが人間が勝てると思わないことです」
そして弾幕ごっこは再び始まった。三人が三人、本気の本気で相手を撃墜しに掛かっている。
「本当に仲がいいわね。羨ましいわ」
アリスは一人、なぜ三人が争っているかもわからずに楽しそうに笑った。
「あらあら、喧嘩はあまりよろしくなくってよ」
そんな折り、縁側に座るアリスの隣に、スキマから滑り降りてきた紫が優雅に降り立った。手には茶菓子とお茶。
「あなたも如何かしら、人形遣いさん?」
「ありがとう、いただきますわ」
行儀よく、頭を一つ下げてから茶菓子をつまみ、口に入れる。ちなみに茶菓子は紫の手作りで、それを食べるアリスの様子を目を見開いて観察している。何故か息遣いが荒い。
「紫、あんたいつの間に……」
ゼェゼェと、ボロボロになって肩で息をする霊夢が降りてきた。次いで同じくボロボロの魔理沙、最後にサービスシーン一歩手前な早苗が降り立つ。
「うう……二人いっぺんは無理ですよぉ」
「ほざいたお前が悪い」
肩で息をする二人は、紫が持ち込んだ菓子を見て、それを美味しそうに食べるアリスを見た。そして、紫が事態に気が付き二人を止めようとするその前に、高速で菓子を口に詰め込んだ。
「ふかれららあわいおおがうあい(疲れたら甘いものがうまい)」
「はげおうれふ(禿同です)」
「ちょ、あなたたち、なんてことを!」
紫が反応した時には、すでに菓子は全滅していた。空になった皿を片手に、ワナワナと震えだす紫。溢れだす妖力が可視化していたが、二人は素知らぬ顔で菓子を飲み込む。
「まあまあ、お茶でも飲んで落ち着きなさいって」
「あら、霊夢、ありがとう」
「あ、ごめん手が滑った」
あまりにもわざとらしい言葉とともに、緑色の濁流が美しい金髪を汚れさせる。帽子の上から前衛的な被り物を乗せられた紫の脳内で、何かが切れた。
「フフフ……愚かな人の子よ。この理想郷の管理者であるこの私にこの仕打ち。その覚悟のほどはどうかな」
「来いよ老外。子離れさせてやるぜ」
「世界の中心はもうあなたではないのですよ」
「証明するわ。幻想郷の巫女の力は、生みの親を既に上回ったことを」
こうして、管理者vs人間三強の戦いの火蓋は切って落とされた。やはり原状をいまいち理解しないアリスが、本当に仲が良いわね、と笑う。
空に、豪華絢爛な花火が舞い踊る。
「おやおや、随分賑やかなこと」
そんな声が聞こえ、アリスは視線を上から横に移す。そこに居たのは、大きな日傘を低めに持った瀟洒なメイドと昼間だというのにのこのこ出張ってきた幼い吸血鬼だった。
吸血鬼が、よいしょ、と博麗神社の縁側に腰掛ける。そこはアリスのすぐ隣。
「ご機嫌いかがかな、人形遣い」
「ええ、よろしいわよ」
フフッと優しく微笑みかけるアリスに、レミリアは直視を避け、適当な庭石に視線を逃がす。
「霊夢は今取り込み中か。随分悪いタイミングに来てしまったらしいな。まあいい、霊夢への用件は後回しにするとして。人形遣い、おまえに伝えることがある」
多少わざとらしくそう言った後、レミリアはアリスに向き直り、縁側に立ち上がった。何事かと、アリスは若干高くなったレミリアの顔に視線を合わせる。
「人形遣いよ……悪いことは言わない。この私のものn」
レミリアの言葉はそれ以上続かなかった。小さな陰陽玉がアリスに当たらないようにレミリアを吹き飛ばしたからだ。神社の中に突っ込んだレミリアだったが、陰陽玉は手で受けとめていた。
「はっ、巫女風情が。この程度の不意討ちでこの私を倒s」
陰陽玉を砕き見上げた先で、今の玉の数十倍はある巨大な陰陽玉がいくつも連なって飛んで来る、極太の光線が降り注ぐ、借り物の御柱が突っ込んで来る、デンシャと呼ばれるものが飛び込んでくる、そんな運命が見えた。
「ちょ、待」
──この日、博麗神社は倒壊した──
「いーい度胸だ下等生物どもが。種の違いを徹底的に教えてやろう」
「お嬢様に泥を付けた罪、身を持って償うがいい愚か者共」
「はっ、弱点ばかりの吸血鬼ごときが、魑魅魍魎を制する力を持った巫女にかなうと思ってるの?」
「落ち目の種族のくせして偉そうに。こりゃおしり叩きのお仕置きが必要だな」
「現人神である私から見れば、吸血鬼のほうか遥か格下なのですが?」
「あらあらうふふ」
六者六様の怒りを込めて、妖気を放出する。口実こそそれぞれではあるが、内心は皆同じである。
「けほっけほっ……ちょっと、やりすぎなんじゃないかなぁ……」
神社潰れてるし、と、アリスは一人蚊帳の外。未だに皆が挨拶程度の弾幕ごっこをしているものだと思っている。
「あら、何か凄い音がしたと思ったら、まあ、随分と大胆なリフォームをしたのね」
そんな、そこらの有象無象なら素足で逃げ出すような状況の中、場違いなほどのんびりした声が聞こえた。はたと皆がそちらを振り返ると、色の抜け落ちた長髪に年不相応な愛らしいサイドアップ、背中には三対の羽をもつドレス姿の女性がいた。
「あのー、すみませーん。アリスちゃんがこちらにおみえになってると思うんですが。なにやら強い力が交じり合ってて、細かい位置がわからないんですよね」
女性、魔界神である神綺は、睨み合っていた六人に話し掛けた。六人はそれに毒気を抜かれ、一気に妖気が萎んでいく。
「あ、ママ!」
アリスが神綺の姿を確認すると、縁側から飛び降りるような勢いで離れ、神綺のほうに駆け寄っていく。
「あら、アリスちゃん!」
神綺はそんなアリスを優しく抱き止める。身長的には若干アリスの方が大きいが、抱き付いて胸にスリスリするその姿はまるで子供である。神綺は微笑むと、よしよし、とその頭を撫でてやる。
「ねえママ、私、一杯魔法の勉強や研究頑張ってるよ。約束どおり、もう立派な魔法使いにもなったんだよ。だから、いつけっこんしてくれるの?」
その、神綺の胸の間からアリスが発した言葉に、場の空気が完全に凍り付いた。
「あらあらアリスちゃん。魔法というのはまだまだ奥が深いものよ。そうねー、アリスちゃんの魔法の知識が、お母さんより沢山になったら、立派な魔法使いとして認めてあげるわ」
「ホント!? そしたらけっこんしてくれる!?」
「ええ」
じゃあもっと魔法の研究頑張る! とアリスは神綺の胸に顔を押し付ける。神綺は優しく微笑みながら、そんなアリスを撫でている。
六人はみな、始めから敗北していたことを悟り、風化して風に流れていった。
このような運命を読めなかった! このレミリアの目を持ってしても! 紅のレミリア、一生の不覚!
アリスと神綺様の関係って、だいたいがアリス←神綺様で子離れできない神綺様に反抗期全開なアリスがほとんどですよね。こーいうアリス→神綺様があってもいいと思います。ちなみに、本当はもっと沢山のキャラを絡ませようと思っていましたが、収拾が付かなくなりそうだったのでやめときました。
パワフル裸ロボ
作品情報
作品集:
31
投稿日時:
2013/01/09 12:12:34
更新日時:
2013/01/09 21:12:34
分類
アリス
まとも
短い
こりゃ、コテコテのラブがコメしたSSですね〜。
結局、ママには敵わなかったのでした。ちゃんちゃんっ!!
ありがてえ……!ありがてえ……!
リア充だから爆発した(予定)
なんて書いてるけど心のどこかではこういうアリスを求めていた・・・!
見終わって驚いた。
こういう文章を書きたいなぁ