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『屍人姫』 作者: Ruka
私が白玉楼(この屋敷)に初めて来た時、庭に植えてある桜が丁度満開の季節で、
これ以上咲かないだろうという位、咲き乱れていた。
だけど一番大きな木だけが、満開の一歩手前の所だった。まだ幼かった私はこの理由について特に何も考えなかった。
仮に理由を誰かに訊いたとしても、遠い昔の記憶故、すっかり忘れてしまっているだろう。
ここに来てから春、夏、秋、冬と季節のサイクルを何回、いや、何十回しただろうか。それでもあの桜だけ満開になる事は決してなかった。
ある時私は、勇気を出して幽々子様にあの桜だけが満開にならない理由を聞いてみた。
「幽々子様、どうして西行妖は春になっても満開にならないのですか?」
「妖夢にはまだ話していなかったわね。あの桜…………満開になる事はないのよ。」
「え?! 一体どういう事なのです? 」
「この前書斎にあった古い本に書いてあった事だから、本当かどうかは分からないけど。西行妖の根元には誰かの亡骸が埋まっているんですって。」
「亡骸?! 」
「ええ。西行妖は呪われていてね、満開になる度に人が死んでいくの。もう二度と悲しい事は起こさせまいと、
亡骸の主が生前、命と引き換えにあの木を封印したのよ。あの木が満開にならないのはその亡骸の所為よ。」
一体誰の亡骸なんだろうか。何故命を犠牲にしてまであの桜に封印をしたのだろうか。そんなに危険な物なんだろうか。
好奇心と疑問が、次から次へと脳内に浮かんでいった。
「妖夢、あの桜を満開にしましょう。」
「そんな事出来るのですか?」
「満開にして、あの亡骸の主を復活させるのよ。」
「それって使者を蘇らせるって事ですか?! 」
「ええ。だから今すぐ幻想郷中の春を集めて来なさい。」
余りにも唐突だった。唐突すぎて例えるなら鳩が豆鉄砲を食らったような、そんな気持ちだった。
でも幽々子様の命令なら無茶苦茶な内容でも仕方がない、と私は幻想郷中の春を集めに出かけた時、巫女と魔法使いと女中に立て続けに打ち負かされた。
主を護る事が出来なくて悔しかった。それと同時に己の未熟さをひしひしと感じた。
幽々子様の反魂の儀も失敗に終わり、結局桜の木の下に埋まっている亡骸が誰なのかは分からないまま終わった。
――――――あの事件から三カ月程が過ぎようとしていた時、私は衝撃の事実を知ってしまった。
あれは草木も眠る丑三つ時の時間帯、私は突然の尿意に目が覚めてしまった。トイレまで少し遠いから一人で行くのが怖くて、
このまま寝て明日の朝まで待っていようとしたけど全然寝付けなくて。幽々子様に着いてきて貰おうと起こそうとしたのだけど、中々起きなかった。
仕方なく私は、半身が潰れてしまいそうなくらい強く抱きしめながらトイレへ続く廊下を歩いて行った。
昼間だとそう長く感じないのに夜中だと無限に広がるような感じがする。廊下を半分程歩いた時、庭の奥の方が
薄桃色にぼうっと光っているのを見つけた。
私はトイレに行くという当初の目的を忘れて光の方向へと駆け寄り、光のする場所の前まで来た時言葉を失った。
「?! 」
西行妖の根っこがうねうね、と動いていたんだ。何十年と白玉楼で暮らしてきた。庭の木の剪定の時この木の根っこは
何回も目にするけど動いた所なんて一度も見た事がない。これは何かの間違い…………?
そういえばこの木は封印される前大勢の人の精気を吸ってそのまま殺しちゃってたんだっけ…………
今は封印されてるから、死んだ人に精気なんてないから、だから…………
――――――気が付いたら私は西行妖の根元を掘り起こしていた。
どれくらい掘っただろうか、なにやら木の板が見えてきた。棺桶だろうか。更に私は掘り続けた。
棺桶蓋が少しだけ、開いているのが見えた。木の根っこは隙間の中へと続いている。
正直死体なんて見たくないし、なにより私にそのような趣味はない。でも開けないといけない気がして、
ゆっくりと蓋を開けたんだ。
「……………………っ! 」
棺桶の中で眠っていた亡骸は、千年近く時が立っているから既に白骨化しているだろうと思っていたが、
冥界は常に気温が低くて湿度もあまり高くない場所であった為、蝋人形のような姿になっていた。
だが普通の蝋人形と一つだけ違う点があった。それは、根っこによって犯されているように見えた。
それでも蓋を開けた時の腐臭は凄かった。私は今までこの世で一番臭い物はこぼした牛乳を拭いた雑巾だと思っていたけど、
それ以上に臭かった。言葉では言い表せない。そんなレベルである。
私は亡骸の顔を見て、先程隣ですやすやと眠っていた幽々子様を思い出した。髪型や服装は違えど、寝顔が恐ろしいまでに似ている。
まさか幽々子様………………?
「!? 」
ぼーっとしていた時、私は全身に違和感を感じた。木の根っこが触手のように伸びていって、鎖骨、胸の先端部分、
そして膣口といった普段滅多に触る事のないような場所をさわさわと、いやらしい手付きで愛撫していたんだ。
気持ち悪いのに…………嫌なのに…………怖いのに…………だけど背筋がゾクゾクしてくるよ…………
これが快感って物なんだろうか………はぁあ…………
不快感より快楽が勝ってしまった私は、女としての本能に支配されていた。股から若干粘り気のある液体が
つぅと太股の内側を流れだした。このまま快楽に溺れてしまいたい。
「ぁあっ! 」
触手の内の一本が、膣の中へと侵入した。私の処女喪失の相手がまさかの西行妖になるなんて。
でもそんな事はどうでもいい。早く動いて、私を乱して、中をグチャグチャに掻き混ぜて欲しいんだ。
「はぁ……はぁはぁっ……ぁんっ………」
触手相手にヨガリ声を上げて、淫らに腰を振っている私の姿はお笑いそのものだろうね。
「あぁぁんっ! 」
触手が一番奥を刺激した時、激痛が走り、頭の中が真っ白になった。
それと同時に、股から何やら生温かい液体が流れていくのが分かった。まさか漏らすとは。
――――――「ようむー、ようむー。」
「!? 」
幽々子様の声が何処か遠くから聞こえてきた。思わず私は飛び起きた。
「だいぶうなされてたみたいよ? 」
「はぁぁー…………」
あれは夢だったの………………?
「そうそう、シーツに世界地図を描いているわよ。後でとりかえておきなさいね。」
「なっ?! 私がおねしょ?! 」
まさか、この年にもなってオネショをするとは…………恥ずかしい限りだわ。
――――――あの夢を見て以来、私は夢と同じ事が起こるのが怖くて、西行妖の根本で眠っている
亡骸の正体はこれ以上追及しない事にした。
- 作品情報
- 作品集:
- 31
- 投稿日時:
- 2013/06/13 17:18:43
- 更新日時:
- 2013/06/14 02:18:43
- 分類
- 妖夢
- 西行妖
妖夢と幽々子に、触れてはいけないと、起こしてはいけないと、西行妖が『夢』を見せていたのかも……。