理不尽

妖怪の山にひっそりと存在する一軒家

しっかりした赤煉瓦作りの住宅が烏天狗の姫海棠はたての住処である

登場したてのはたては、人気投票では上位を飾っていた

だが時代の流れにより、新たなる新参が登場

時間の流れにより、はたての人気は落ち、今では40台まで転落

その点、霊夢は可愛いよな！今でも1位だもんな！

過去の栄光となったはたては若干引きずりながらも、今日も今日とて家に引きこもり、いそいそと新聞作りに励んでいた

個人で発行する案山子念報は、全てはたて自身の手で作成している

もちろん印刷機器など所有する金は持ってはおらず、全部手作業で行っている

しかし、ここん所面白いネタもなくてスランプ状態

愛用の手帳を開き、ページをめくるが、とても新聞に載せれるようなクズネタしかなかった

「はぁ〜あ……いいネタ転がり込んでこないかなぁ〜……」

椅子の背もたれが軋む音をあげる

お気に入りの携帯の画面をぼんやりと見つめながらボタンを叩く

キーワードに適当な入力し、念写のボタンを押す

博麗の巫女……と念写してみたところ、画面に映し出されたのは、巫女が境内で掃除している映像だった

しかし、よく表情を見てみると……寝ている

巫女が立ったまま寝ているのだ

「スゲェ！凄いけどこれはネタにもならないわね……」

「う〜ん、ネター……ネター……」

いっそ家から出て自らネタ探しに出ようと頭に浮かび上がる

しかしインドア派のはたてには外出する気は中々起きないのだ

「守矢の巫女っと…………こちらもダメね……」

そんな時であった

それはほんの思いつきであった

「………………巫女の秘密っと」

なんとなく打ち込んだキーワード

眠気で半分落ちようとしていたところ、携帯の画面に映し出された

その画像を見た途端、寝落ち手前のはたての意識は一気に覚醒した

「うぇっ！？な、なにこれ……？」

信じられない映像が映し出されたそれを食い見るように見つめる

「ま、まさか、こんな事って……これは大大大スクープだわ！賞間違いないわ！」

机に乱雑に置かれた物を押しどかし、原稿に筆を走らせる

置かれた物を床に盛大にぶちまけたが、今はそれどころではない

この真実をみんなに知らせなくては！

しかし執筆途中ではたての手はピタリと止まった

（あれ…？）

茫然としていると、突然視界が歪むと同時に真っ暗へと暗転

何が起きたのか分からないままはたての意識は消えた

机に突っ伏すはたての背後には、隙間妖怪の姿があった

隙間妖怪は床に落ちている携帯を拾い上げると、有無を言わさずそれを粉砕

そして、永遠の眠りについた烏天狗をスキマへと放り込むと、自身もスキマの中へと消えて行った

あとは誰もいなくなった

数日後

今日も博麗の巫女は境内ではき掃除を勤しんでいた

「暇ねぇ……まぁ、何も無いのがいいのだけどね」

一通り掃除を終えた後、縁側に腰を下ろし、一服しようと思った矢先、新聞が置いてあった

「いつの間に配ったのよ、文……」

一応、新聞の日付を確認する

古いのだったらただのゴミなのである

霊夢にとっては新しくても古くてもゴミなのは変わりない

一面には天狗のことがデカデカと載っていたが、霊夢は関心なかった











『間欠泉センターで烏天狗姫海棠はたて死亡！毒ガスによる中毒死か？！』