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『幻肢』 作者: ミルーシュカ
※男体化ホモです
ぎしり、
ぎしり、
ぎい。
聴きなれた天井を踏む音で意識が浮上する。裸足のぺたぺたと湿った足音がそばまで寄ってくるのを起き上がることも出来ずに待っていると、やがて彼の足が視界の端に映り込む。黒い爪先を目にしたとたん、私の顔は勝手に笑みの形を作り出す。
「飯だぞ」
彼はそう言って、私の身体を抱き起こした。小槌の力で大きくなっても、所詮は小人だからか、私の体躯は彼よりもずっと小さいままだ。布団の上に座るような形で身体を折り曲げられ、そのまま倒れないようにと枕や座布団を背中にふんだんに挟まれた。そしてまるで親鳥のように甲斐甲斐しく、彼は、正邪は箸で私に食事を運ぶ。見た目は申し分なくそこそこ美味しそうなのに、なぜだかいつも味が薄かった。今日も味のしない玉子焼きに大根おろしが乗ったものや、醤油の香りだけのお浸しを口に運ばれる。それらを噛み、飲み込むことしかできない。文句などつけようものなら、次からは食事をさせてもらうことができなくなりそうで恐ろしいからだ。
最後の一口まで味の薄い料理を食べ終えると、蓋のない急須から水を飲まされる。もういいよと舌で押し返すと、彼はそれを床に置いて、食器を下げにいずこへと消えて行った。
「せめて寝かせてくれればいいのに」
芋虫のようにもぞもぞと身体を動かしてみても、まったくなんにもできそうにない。仕方がないので、彼の帰りを待つことにした。食器の擦り合う音がする。近くにいるということだろう。
私には、手足がない。数か月前の異変の時は、間違いなく五体満足であった。
弱者が物を言える世界にするという正邪の野望に利用された形とはいえ、私は封じられていた鬼の世界から逃れてこの楽園で生きていけることが何とも嬉しかったし、その野望が潰えたことは残念だったけれど、私も正邪も力の弱い存在だししょうがないか、と思っていた。
ある晩のことである。
正邪は異変が失敗に終わったにもかかわらず、特に気にしてはいないようにみえた。
普通に食事を作り、普通に風呂に入り、普通に布団を敷いて、普通に眠りに就いた。もちろん私も、普通にそれを受け入れていた、はずだ。
痛みも、衝撃もなかったように思う。
目覚めたころには、私の手足はなにか鋭利な物で切り取られたかのようにふっつりと無くなっていた。
この城には正邪と私しか居ない。となれば当然彼の仕業だろう。私は起きたか、と普段と何も変わらぬ素振りで顔を出した彼に対して、手足の行方を訊いた。怒りと困惑ですごい剣幕になっていたであろう私に彼が返したのは、
「ああ、美味かったよ」
そんな言葉だった。何故そうしたのかすら話さず、彼は淡々と私の手足をどう料理して、どう味わったかだけを述べた。真っ赤な長い舌がペラペラとよく喋り、大切なことは何一つ語らない。いつものことだ。煮えくり返った頭が次第に冷めてくる。聴きだすことは不可能と悟った瞬間だった。
私の身体から切り離された四肢の感覚を時々思い出すことがある。夜ごと疼いて眠れないほどの痛みが、何故か存在していない腕や足の先に現れるのだ。発熱し魘される私を見て流石に正邪も可哀想に思ったのか、鎮痛薬をどこかから持ってきて飲ませてくれた。存在していない四肢の痛みにも、鎮痛剤はよく効いた。
「ファントム・リムって言うんだと」
正邪はそう言って、切り取られていなければそこにあったであろう手のあたりの布団を撫でた。目には何も映らないが、触れられている感覚はある。妙に優しい手つきで私の腕から手の辺りを撫でまわす彼に、わたしは一言そっか、と返した。
過去の話はこれくらいにしておこう。
ややあってから、食器を洗い終わったであろう正邪が湯の張られた盥を持って戻ってきた。手足のない私には浴槽は大きすぎるし、抱えて移動させるのも彼にとっては面倒なのだろう。最近の私の浴槽は、もっぱらこの盥である。
今となってはただ身体に巻きつけているだけの豪奢な着物に手をかけられ、脱がされる。続いて長襦袢、湯文字……一糸まとわぬ姿になった私は、まるで芋虫のようだった。いや、身じろぎくらいしかできないという点においては蛹に近いかもしれない。決して蝶となって羽ばたくことはできないけれど。
慣れた手つきで髪を洗われ、そのままつるりと手を滑らせて、身体へ。
いつものことだ。もう慣れた。食事も入浴も排泄すら、彼の手なしでは出来なくなってしまってからは、裸体を見られるのも、触れられるのも抵抗が薄れたように思える。
「ん……」
たとえ、本来入れるためにできていない箇所に触れられたとしても。
石鹸の滑りを借りた指先が、少しの抵抗の後、入り込んでくる。不快感から逃れるように深く息を吐くと、宥めるように背中を撫でられた。バランスの保てない身体は、そのまま彼の方へと倒れ込む。虚弱児のように痩せた身体の感触が、布越しに感じられた。
「ふ…っう、ぁあ…はぁ」
ああ、情けない。彼の服に顔を埋めながら、不快感が徐々に別の何かにすり替わっていく感覚に抗えないことが情けない。気持ち悪いはずなのに、気持ち悪いのに―――求めてしまう、欲しがってしまう。
「んくっ…んんん…っひ、あっ」
「…ん、柔らかくなってきた」
ぼそり。おそらく正邪にとっては単なる独り言だったのだろう。それを聞いた途端に身体が火照る。脳が、痺れていく。
「はっ…ぁ❤うぅあ……っひ❤んんんんっ❤❤」
箍が外れる、とはこういうことを言うのだろう。もう何も考えられない。碌に頭が働かない。ただ、気持ちいい。気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい―――それだけだ。先ほどまでは不快で戻しそうだった刺激が、とてつもなく甘く感じられる。ああ、どうしよう。壊れてしまった。
ぶちゅぶちゅと石鹸の立てる音すら気持ちいい、だなんて。
「あっ、やあぁ……ん❤ぬいちゃやだぁ……っ」
気持ちよさを追っていた矢先に、指が引き抜かれる。十分ほぐれたということだろう。見ることはできないが、尻たぶを開いたならきっと、つつましく閉じていたそこがぽかりと口を開けてひくひくと震えているのに違いなかった。
「せいじゃぁ…っなんでぇ…?どぉしてぇ?」
「湯冷めするといけないからな」
盥の中のすっかりぬるんだ湯で軽く自分の指をすすいだのち、正邪は私をそこから引き揚げた。体を拭かれて、また元通りに着物を着せられる。通すことのできない袖が、主を失ってさびしそうにしていた。
盥の湯を捨ててくると言って、正邪は私を布団に戻して部屋を出ていく。まって、いかないで、と縋るような声で求めても、聞き入れることはなかった。
追いかけたくても、服の裾を掴みたくても、私にはできない。置いて行かれたら、そこまでなのだ。
「…ん、ぁ…っは……おなか、ぁっ❤おなか、あついぃ………っんんン❤あついよぉ…」
腸内に残った石鹸のせいなのだろうか。じくじくと、痒みにも似た疼きが蟠っている。もぞもぞと身体を捩ったところで少しも楽にならず、敏感になった皮膚に着物や布団が擦れて、余計に悪化してしまった。情けなく勃起した性器が、着物をはしたなく持ち上げ、濡らしてしまっていた。
「ぁっ、んぅ❤正邪ぁ…せいじゃぁ❤❤はやくっ、はやくもどってきてぇ❤❤❤」
はあ、と熱い息を吐きながら、私は彼の名前を呼ぶ。正邪、と。もうすっかり蕩けきったそこは、女性器とはまた違うだろうが、同じように種を求めて綻び、潤んでいるのに。
「せーじゃ、」
「……そんな甘えた声出すなよ」
戻ってきた。戻ってきて、くれた。
それだけ、たったそれだけなのに。
(どうしてこんなにお腹がきゅんきゅんするのぉ…?)
元はと言えばこんな風にしたのは正邪なのに。わかっているのに。
「んっ❤あむぅ…んちゅっ」
近づけられた口元にしゃぶりつく。唇を食んで、催促するように舐めれば、少しだけ開いてくれるのを私は知っていた。正邪は自分から口づけてはくれない。いつも私から、あるいはこちらから強請らない限りは、決して。
少しだけ開いた隙間に、たどたどしく舌を伸ばす。ぽってりとした長い舌を愛撫し、吸い付いてみた。じゅるぅ、とやらしい音をわざと立てて、誘う。そうしてすっかり慣れきってしまったことを思い知るのだ。
「はっ❤はっ❤せい、じゃぁ……」
着せたばかりの着物を乱暴に脱がすのを、彼が好んでいるかどうかまではわからない。けれどこの行為に及ぶのはいつも私の入浴の後、着物をきれいに着せてからだった。それは今日もかわらない。
着物が皺になるとか、汚れるとか、そんなことはすでにどうでもよくなってしまっている。早く満たしてもらいたい、疼きを鎮めてもらいたい。それしかなかった。半分勃起した彼の陰茎が、スカートを押し上げているのが見える。
舐めたい。舐めて、大きくして、それから――ー
その視線に気づいたらしく、正邪の口元が歪む。私の唾液でべとべとに濡れたそこから、長い舌がのぞく。前髪の一握りぶんだけ赤い部分までもが、意地悪そうに揺れていた。
「舐めたい?」
意地の悪いような、ともすれば子供をあやすような甘い声。私の事を知り尽くした上で、仕向ける声だ。
「なっ、にゃめたいっ…にゃめさせてぇ…❤正邪の半勃ちおちんぽ…お口の中で大きくさせてぇ❤❤」
腕のない私には、握ることも触れることもできない。口元に運ばれた、まだ柔らかさのある性器を銜えると、馴染みきった塩気が舌の上に乗せられた。口の中に広がって、どろどろに頭が溶かされる。美味しいはずはないのに、彼を気持ちよくさせようと唾液があふれて、包み込もうとして。
縦に割れた尿道を舌でつついて、滲んだ先走りを味わってから、あぐあぐと喉を開いて押しこむ。少し詰まった呼吸や、あえかな喘ぎ声が耳に届いてぞくぞくした。そのまま頬の内側を使って扱きあげると、少しずつ質量が増して、気道を塞ぎそうなまでに成長してくれた。ずるりと口から抜き出しても、まだ反ったままの形を保っている。
淡くきれいな色の、使い込んでいるようには見えないそれがどうしようもなく愛おしいような気がして、舐めているだけで余計に疼いてしまう。
「正邪、せいじゃぁ…も、いい?ちゃんと…おっきくしたからぁ❤だからもういれへぇっ…おひりっ、おひりさみしぃよぉ…❤❤んきゅぅ!?」
ごろん、と押し倒され、したたかに背中を打って一瞬呼吸が止まった。いくら布団が敷いてあったとはいえ、急に倒されてしまえば然程変わりはないようだ。
「ちょっと待ってろ」
正邪は私の背中や腰に枕や座布団を詰め、高さを調整しようとする。正直なところ、焦れて焦れて仕方がない。
はやく、と私は強請った。はやく、はやく――――はやく犯して。
「せいじゃ、はやく…はやくぅ…っ❤っあ❤おちんぽはいってきてぅ❤」
一切の遠慮も感じさせずに挿入された性器に自分の体内が待っていたと言わんばかりに吸い付くのがわかった。内部に残っていた石鹸や、刺激から身を守ろうと単なる防衛本能のためだけに分泌された腸液が、正邪の体液が潤滑剤となって、熱く火照った内部に行きわたって、抜き差しされるたびにじゅぷじゅぷと泡立つ音がした。
「んひっぅ❤あっ❤やぁあんっ❤おなかぁっおにゃかのきもちぃとこごりごりされるのいいのぉっ❤❤ごりごりされるといっぱいきもちぃよぉっ❤」
痛みも苦痛もなく、みっしりと奥まで入り込まれて、知り尽くされた箇所を遠慮なく甚振られるのが堪らない。眉を顰めて腰を進める正邪の顔がまた、快感の一つとして脳を満たす。快感にすり潰されてなめらかになった脳が、体のあちこちから流れていくようだった。
「んいいいぃぃいいぃっ❤❤らぇっ❤ひんにゃっ!ひんにゃうぅ❤きもひよしゅぎへぇ…ひんにゃいしょうらよぉ…」
「こら…っン❤ちょっと緩めろって…ばっ、」
「らぇらよぉっ❤できにゃっひぃいんっ❤できにゃいにょぉっ」
挿入られているのか、抜かれているのか、段々と判らなくなってくる。ただ、そこに入っているものの質量が、段々と増してきているような気がした。
「はぁっ❤はっ❤せーじゃっ、種付け、してぇっ❤わらひのおしりまんこはらましぇ、はらましぇてよぉっ❤❤せーじゃのいっぱいおにゃかでのみたいのぉっ❤…あっ❤くるっ❤せーえきくるっ❤❤せーえきっ❤おひりまんこにどくどく出されていっひゃ❤いっひゃぁあ❤」
腹の中に吐き出されたそれは、当然のように人肌で、決して快感でも何でもない。しかしそれに引き金を引かれるように、私は達してしまう。
意識が濁る。気の抜けたように私の上に倒れ込む正邪を抱きしめて、背を撫でてやるのを思い浮かべる。当然ながら空想の私の腕は、彼を抱きしめることができなかった。
結局、どうして正邪が私の手足を奪ったのかはわからない。何がしたかったのか、単純にこんな行為に及ぶためにしては随分と犠牲が大きいような気がした。
無意味な行為を終えた後、彼は決まって隣で眠ってくれる。ゆるりと私の胴に巻き付いた細い腕にくるまれながら、私はいつも考える。教えてと言っても教えてくれないのは判っている。
それでも、腕まで奪うことないじゃないか。逃げられないようにするなら、足だけを絶てばいい。そうじゃないのだろうか。
空想の腕では、強張った背中を抱くことも、優しく撫でてやることも出来ないのに。
「ねえ正邪、どうしてよ」
ミルーシュカ
- 作品情報
- 作品集:
- 32
- 投稿日時:
- 2014/10/10 18:37:25
- 更新日時:
- 2014/10/11 03:37:25
- 分類
- 正邪
- 針妙丸
- 男体化
- ホモ
- だるま
でもなんでだるま……
切なすぎてホモになるぅ……