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『いきおくれいむのからみざけ』 作者: 酔鉄砲
なるほど、あの時は道理で付き合いが悪いと思ったわ。誰のことって、そりゃ魔理沙よ。そう、あの白黒ね。
用も無いのに毎日うちに来ては茶を飲んで一日過ごすような暇人が、さっぱり来なくなったのよ。
それどころか春の宴会も欠席して顔すら見せなかったんだから。考えられないでしょ?あの魔理沙が。
まぁ人にはそれぞれ事情があるし?別に魔理沙のことなんてどーーーーーでもよかったからね、その時は特に深くは詮索しなかったわ。
それから、だいたい一ヶ月くらい経った時だったかしらねぇ。
すごく暖かかったから、たぶん春の終わり頃だったと思うわ。
私は夏物の服を仕立てにもらいに里に降りたの。
そしたらね、本当に偶然だったんだけど、魔理沙に会ったのよ。
あの時はほんっとびっくりして、目を疑ったわよ。他人の空似かとも思ったわ。
何でそう思ったかってーとね、あいつってば似合いもしない着物なんか着ちゃってさ、髪もなんかこう、サラッサラでさ、如何にも女ですって感じだったの。
ガサツでゴキブリみたいな生活送ってた あ の 魔理沙がよ?
悪いモンでも食べたのかしらって本気で思ったわ。
でね、最初は無視しようかと思ったんだけど、何だか凄く気になっちゃってさ。
だって あ の 魔理沙が女になってるんだもん。誰でも気になるでしょ?
だから、声をかけたのよ。そしたら魔理沙ってば、うわぁ!なんて大声だして、顔真っ赤にして慌ててんの。
なんかわかんないけど、凄くいらっとしたわ。
それでさ、何でそんな格好してるのー?って、私聞いてみたの。
どうせ何かの罰ゲームとかでしょ、とは思ってたんだけどね。一応聞いてみたのよ。
そしたらもう、魔理沙の顔がトマトみたいにものすっごく赤くなっちゃってねぇ、どもるばっかりで全然答えないのよ。
私はね、ほんのかるーい冗談で、もしかしたら男でもできたの?って聞いたの。
そしたら、うん、なんて頷くもんだから、私もう堪えられなくて笑っちゃったわ。
つくならもっとマシな嘘つけって。魔理沙に男なんて出来るわけないじゃないって、あの時は思ったねぇ。
うん、思うわよね誰でも。あははははは!
はぁ、で、その時は確かそのくらいの会話ですぐ別れたのよ。
魔理沙が居心地悪そうにしてるから、なんか気ぃ揉んじゃってさぁ。
そっからー……うーん、秋ぐらいまで魔理沙とは会わなかったわねぇ。こっちからアイツに会いに行く用事なんてないし、アイツが来なきゃそんなもんよねぇ。
ん?いや、疎遠になったって感じでは無かったかなー、その時はまだね。今はもう、アレだけど。
ま、とにかく、次に会ったのは秋の初頭ぐらいの時だったのよ。あれは衝撃的だったわ。魔理沙がね、うちの神社に男連れてきたのよ。
ほんと、急によ?そう、何の連絡もなしにひょっこり現れてさ、話があるからあげてくれーなんて言うの。どんだけ自分勝手なんだよ、って思ってさぁ。
まぁアイツがそんな奴だってのはわかってたからね、いつものように客間に通して、えーお茶とー、あと菓子ぐらいは出した覚えがあるわ。
男を入れたのは初めてだったから、ちょっと緊張してたと思う。しかも知らない男だったから尚更よ。
それで、なんか魔理沙がもじもじしてるからね、私なんだかちょっと腹が立って来ちゃってさ、一体何しに来たのよって聞いたのね。
そしたら黙ってた男の方が急に立ち上がってさ、僕たち結婚することになりました!!!ってすごい大声で言いやがったのよ。
はぁ?って思わない?思うわよねぇ!だからなに?みたいな。
私別に魔理沙の親じゃないんだけど!!んなこと言われても、はぁーさいでっか、ぐらいの反応しか出ないっての!!
しかもあいつら私の返事そっちのけで、そんな大声でやめろよー、だのつい熱が入っちゃったよーだの目の前でイチャつき始めて、もう、何なのよ!他所でやれ他所で!!興味ないってぇの!!
うっ……げぇーーーっぷ。ふはぁーっ……。ん、ああ、大丈夫大丈夫。そんな飲んでない。
で、なんだっけ。ああーそうそう、あのクソ夫婦の話ね。
んでさぁ、魔理沙がね、うちの神社で結婚式を挙げたいとか言うのよ。
そんなものやったことも無いしやりたくも無かったんだけど、まぁ一応友達の頼みだし?
その時は承諾したわ。でも、そっからが面倒だったのよねぇ。ほんっと今思い出しても嫌になるわ。だって結婚式のやり方知らないんだもん。
魔理沙は適当でいいぜーなんて言ってたけど、そんなわけにいかないでしょう?
話し聞いてみたら結構な人数が来るって言うし、下手なことしたらうちの沽券に関わるわよ。
過去の文献やら前例やらとにかく調べまくってさぁ。
魔理沙の着物のこととか当日の流れとか何から何まで手筈を整えてやったのよ?
時間もなかったからほとんど寝てなくて、魔理沙の結婚なんか白紙になってしまえって本当に思ったわ。
自分でも甘やかしすぎかなーなんて思ったけど、でも、ま、何はともあれおめでたい席だしねぇ。
一生の思い出になる場でもあるから、何とか成功させてあげたいって気持ちも強かったと思うわ、あの時は。
で、そっからなんやかんやあって……結局、調べた通りにはやらなかったのよね、確かかなりアレンジを加えたと思う。あまり堅苦しくなるのもどうかと思ったしね。
形だけそれっぽくして、後は流れでって感じだったわ。
自分で言うのも何だけど、かなり上手くいったんじゃないかしら、あの式は。
それから式も滞りなく終わって、最後に魔理沙におめでとう、って言ったの。そんな思ってなかったけど、社交辞令ってのがあるから一応ね。
ったら、魔理沙があの殴りたくなる憎らしい笑顔でさぁ、お前も早くいい人見つけろよ!とか、言ってさぁ……。
ああ、なんかほんともう……。
う る さ い な !余 計 な お 世 話 よ !!!
……って、普通の人なら思うでしょうね。でも私は思わなかったわ。
だってあの歳で結婚なんて早過ぎるし、私には幻想郷を守る使命もあるしね。
魔理沙みたいに遊んでばかりはいられないのよ。男なんていたって邪魔なだけだわ。そう思うでしょ?ねぇ。
それでー、あー、その後のことはよく知らないのよね。式の後もちょくちょく会ってはいたけど、前みたいに話し込むことは無くなったし。
今は全く会ってないわ。アイツはアイツで忙しいみたいだしね。最近、二人目の子供が産まれたってのは噂で聞いたけど。
ふぅ……。まぁ、魔理沙の話なんかどうでもいいのよ。それよりも早苗よ早苗。知ってるでしょ?そう、そいつ。
あいつがさぁ、魔理沙の結婚式にえらく感銘を受けたみたいでねぇ。自分も早く結婚したいーなんて言い出したのよ。
ほんと、自分の立場わかってんのかしらね?未熟な巫女のくせしてさぁ、そんなことに憧れてないで修行の一つでもしたらいいのにって呆れたわ。
え?いや、私は修行なんかする必要ないし、修行しなきゃいけない時はちゃんとするわ。私って結構、真面目なのよ。
ってか、私のことはどうだっていいのよ。早苗の話だって言ってるでしょ。まだ続きがあるのよ。
魔理沙の式から、えーと、冬がきて、春になって……うん、そのぐらいだったかな。早苗が超面倒臭いテンションでうちに来たのは。
大体想像つくと思うけど、どうやら念願の彼氏ができたらしくてね、朝から晩まで延々のろけ話を聞かされたわ。
何度も目障りだから帰れって言ったんだけどね。えらく舞い上がってるみたいで私が何言おうが関係なく話すんだからタチ悪いわ本当に。
だいたい何で私に言いに来るのよ?嫌がらせかしら?お前に彼氏ができようができなかろうが私には何の関係もないし、羨ましくもないっつーの!!
んっとにもう……。んっ、んっ、ぷはぁ。おかわり貰えるかしら。あー、割らなくていいわ。ありがと。
えー、それでぇ、まぁアイツがー、その、彼氏ができたとかで有頂天になっちゃってね、神社の仕事とかほっぽりだして遊びに行ったりすることが多くなったらしいのよね。
アイツんとこの神様ったらそりゃあもう怒ってたわよ。自分とこの巫女が色恋に現を抜かして遊び惚けてるんだから、当然っちゃ当然よねぇ。
で、そっからしばらくしてさ、そのアイツんとこの神がー、えっと名前なんてったっけアイツ。忘れたけどアイツがさぁ、言うのよ。
早苗が最近男と遊んでばかりいるから、貴女から一言ガツンと言ってやってくれませんかってね。
な ん で だ よ !! 自 分 で 言 え よ !!
……なんて、心の狭い人間なら言うかもしれないけど、私は器が大きいからね。
や さ し ぃ く どうしてかしらー自分で言えばいいんじゃないのー?って聞いたわ。
そしたらあいつ何て言ったと思う? 早苗が幸せそうだから、自分からは上手く言い出せない、だってさ。
いや言えよ!!アンタ神様でしょうが!!何をつまらない遠慮してんのよ!!しかもそれって嫌な役を私に押し付けてるだけじゃない!!!
って、魔理沙みたいな性格の悪い人なら言うでしょうね。私は絶対言わないけど。
でもそれは私が介入するような問題じゃないし、やんわり断ったわ。
自分とこの問題なんだから自分達で解決しなさいって説教かましてやってね。
人間に諭される神ってどうなのよ?って思ったけど、神って意外と人間くさいとこもあるからねぇ。
んでー、それからー、結構時間経ったから、私も早苗のことなんかすっかり忘れて暮らしてたんだけどね、ある日突然早苗がうちに来てさ。
しかも、男を連れてよ。あと何故かアイツのとこの神まで来たわ。
たぶん蛙のやつもいた気がするから、四人ね。四人でぞろぞろ雁首揃えて来たわけ。
でね、まー、その時点で何となく予想はついてたんだけどさ。なんかこんなの前もあったなーって思ってたら案の定よ。
あのでかい方の神がさ、早苗が結婚することになったから貴女のところで式を挙げさせてくださいって言い出したの。
ねーほんとに……ねぇ……意味わかんない!今思い出しても意味わかんない!自分のとこでやればいいじゃない、何でうちなのよ!!!
魔理沙の式に憧れたから? そんなん知るか!!こっちの苦労考えろっての!!面倒くさいのよ色々と!!!
だいたいアイツ早苗が男と会うのを止めたかったんじゃないの!?何みすみす結婚まで漕ぎ着けられてるのよ!!威厳なしかお前は!!
はぁ、はぁ、うぷっ……はぁ。んあ? あー、式はちゃんとやったわよ。
だってやらざるを得ないでしょ。断ったら何か嫉妬してる嫌な女みたいになるじゃない。
でも腹立ったから祝儀袋に湯葉を五枚入れといてあげたわ。
ああ、あれを開けた時の奴等の反応を想像すると今でも胸がすくわねぇ最高よ全く。
でー、それでー、早苗は結婚した後もちょくちょくうちに来てたのよね。
あの夫婦、喧嘩ばっかりしてたから、拗ねた早苗が泊まりに来ることがよくあったわ。
最初はざまあみろそのまま離婚しちまえって思ったけど……。いや、思ってないけど。人間が出来てない魔理沙辺りならそう思うかもしれないわねってことよ。
私は断じて思ってない。まぁ、でー、そう、早苗が泊まりに来てさ、毎回毎回散々酒飲んで愚痴って、迷惑極まりなかったわ。
何がむかつくってね、あいつら喧嘩する割りにすぐに仲直りすんのよ。
ああいうの無性に腹立たない?仲直りする為に喧嘩するようなやつ。
別にするのは勝手だけど、私を巻き込むなっての。時には男がうちに上がりこんで来てさ、三文芝居を見せ付けられたりもしたわ。
てめェらの仲直りする現場なんて誰も見たくないってのによ。お話でしか出て来ないような歯の浮く台詞ばっか吐いてさ、気持ち悪いったらありゃしない!!
はぁーーーー…………。…………。ん、寝てない。おきてる。そんあ飲んでないひ。っひく。
……あいつらの会話、思い出すと今でも鳥肌が立つわ。俺が悪かったー、とか……いいえ私も悪かったのよ、とか言ってさ……こんなとこにいないで帰ってこいよ、とか……。
こ ん な と こ っ て 何 !? こ ん な と こ で 悪 か っ た わ ね !
どーせ私の神社は客も男も寄り付かないような寂れた神社よ!妖怪退治しか能のない女が住まう悲しき神社よ!!そもそもこの神社、神とかいるわけ!?
一回も見たことないんだけど!!どうせなら恋愛の神とか住み着きなさいよ!!それならお賽銭もガポガポだわ!!!なぜなら私が入れるからね!!
はあーーあーあ……。ぷっふぅーーーー……。おかわりちょうらい。大丈夫よぉ、酔ってらいから。どうせ、独り身だし。ああ、割らないでいいわ。どうせ独りだし。
んー……。最近は早苗も来なくなったわねぇ。子供もできたらしいし、私みたいな孤独を絵に描いたような女にはもう用がないってことでしょ。
ええ? そんなことないって? あるでしょ。あるわよ……。
……。アイツらはいいわよね。自分の好きなように生きれて。私は違うわ。自分の使命を全うすることに精一杯で、遊ぶ暇なんかありゃしない。
妖怪退治して、怪しい奴を監視して、異変が起きて、それを解決したらまたすぐ異変が起きる……。そんな生活を続けてたら、時間が経つのもあっという間。
周りはどんどん変わっていくのに、私は変わらない。変えられない……。気付いたら、もう少女じゃなくなっていたわ。
時の流れって残酷よね。勝手にどんどん進んで行ってさ、ついていけない者は容赦なく置いていくんだもの。
私は、置いてかれた。定められた運命でしか生きられない、哀れな巫女。
うっ……うええええええぇぇぇぇぇん。なんでなのよぉおおおお、ぐす、ひっく。らんで、私は巫女なのよおおおおおぉぉぉ。
うぐっ、どうして、博麗らのぉよぉおおおおおん。ううう、わらひだって、おんななのよぉ?ううっいっく。
う、うああああああああん。らんでなのよおおおおおおおおお。わらひもれんあいしてみたいのにいいいいぃずずずず。
……ひっく。……ぐす。
…………。あ?アンタ今笑ったわね?らんか文句でもあるわけぇ?なぁに、はっきり言いなさいよぉ。
どうせアンタもわらひのこと馬鹿にしてんでしょ。遊びの一つも知らない色気無しの生涯独身確定女だって思ってるんだしょ?
そうよぉ、わらひはどうせ、そうなのよぉ。かわいそぉーな女の子よぉ。誰も、わらひのことなんか気にもしてないのよぉ。
そーおもうでしょ?ならアンタがさぁ、その、代わりらさいよ。わらひの代わりに幻想郷を守りらさい。
決めたわ。今日からアンタは博麗の巫女よぉ。それがいいわよぉ。
そしたら私はこんあ寂れた神社はアンタにまかせて、里で住むのよ。ふつーのおんらのことしてねぇ。それで、それで……。
うっひ。ひひ。ぐひひひひひひ。あっははははははははは!!そんなん無理だっての!!無理、不可能!あはははっははははは!!
は、ははは!あーおかしい、いーひっひひひひ!!
っぷ、あは、あはははははははははは!!あーーーっはははっは、はっははははははは、はぁ。
……………うっ!!おぼろえろえろろろろろろろ!!げぅううえ!はぁ、はぁ、ぐっぷ!!
うげええええええええええ!!!!ぐふっ。ひへぇー、へぇー。うぅぅううううぇ"い"!!!!
うくっ……。ぐっふぅーーーーーーーーーーー……。
…………………。ちょっと一瞬だけ寝る。うん。だいじょぶだいじょぶ。よこになるだけらから、すぐおきるから、へいきよ。くぅー…………。
「はぁ、やっと寝たわ」
つまみ、酒、吐瀉物。諸々の片づけを終えて小鈴はようやく一息つく。
「はぁーーー。しっかしまあ」
何のために神社に来たのだろう。今日の、目的は。果たせてないし果たせそうにない。
「言い辛いわぁ。私も結婚するって。もう、言わなくていいかなぁ」
帰ろうか、家族が家で、待っている。
作品情報
作品集:
32
投稿日時:
2015/06/13 07:44:29
更新日時:
2015/06/13 16:44:29
分類
霊夢
淫売というよりクソアマ的な意味で・・・