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『ベタコテ東方〜恐怖!地獄の断頭台〜』 作者: 酔鉄
昼下がりの博麗神社。
今日も今日とて霊夢、魔理沙、早苗の三人は縁側で茶をしばきながらのんべんだらりと過ごしている。
「あー、暇ねー」
「暇だな」
「暇ですね」
「本当、暇すぎよね」
「やることないなぁ」
「ですねー」
何度も同じ会話を繰り返して、茶を飲む。団子を食む。
「ところでさぁ、早苗」
魔理沙が話を切り出す。
「お前の奇跡を起こす能力って、具体的に言うとどんなんだ?」
「……」
「ほら、奇跡って言っても色々あるだろ?」
「……」
「大きいのとか、小さいのとか」
「……」
「お、おい、早苗、聞いてる?」
「早苗、魔理沙がアンタの能力について知りたいってさ」
「え?奇跡を起こす能力についてですか?」
「待て、何で私の言うことは無視した?」
「ああ、コレ魔理沙さんの声だったんですね。蝿が飛ぶ音かと思ってました」
「うそぉん……」
ずずずずずず、とりあえずお茶を啜る。
「で、何でしたっけ。蝿の話でしたか?」
「全然違う。いや、だからさ、奇跡を起こすって曖昧だろ?具体的に言うとどんな奇跡を起こせるのかなーって」
「どんなって、そりゃ色々ですよ、色々」
「ずずずずずずずずずず」
「色々ぉ?たとえば?」
「ずずず、ずずずずず」
「例えばー……そうですねぇ、この湯呑みに入ったお茶をよく見てください」
「ずずずずずず」
「ああ」
「何の変哲もありませんね?しかし、私がこうして手をかざして力を込めると……」
「ずずずずずずずずずずず」
「どうなるんだ?」
「ちょっと待って下さい、もう少し、むむむむ……はい!!見事な茶柱が立ちましたぁ!!」
「えぇ〜……ち、ちいせぇ〜」
「ずずずずずずずず」
「なっ!小さいとは何ですか!!これだって立派な奇跡でしょう!!」
「ずずず!ずずずずずず」
「いや、まあそうかも知れんがな。っつーか茶を啜る音うるせぇよ。いつまで飲んでんだよ」
ぱたん、と霊夢の頭をはたく。
「あーよかった。突っ込んでもらえないかと思った。このまま一生啜り続ける覚悟だったわ」
「そんな悲壮な覚悟決めてたのか……」
「ところで早苗、アンタ本当に奇跡を起こせるの?疑わしくなってきたわね」
(急に話しに入ってきたよ)
「な、何を言い出すんですか霊夢さんまで!!今の見たでしょ!?」
「あんなの奇跡の内に入らないわ。ちょっと待ってなさい、今、いいものを持ってくるから」
霊夢は神社の中へと入った。待ってる間暇だったので、茶筒に書いてある成分表を読んでいた。
「なぁ早苗。カテキンってなんだろうな」
「ちょっとセクハラやめてください。訴えますよ」
「ごめん……」
「謝っても遅いです。訴えます」
「シュルルルルル!!パンッパンッパン!!」
「神奈子様のモノマネで誤魔化そうったって無駄ですよ」
「しょ、しょんなぁ〜」
「誰のマネですかソレ?」
「早苗」
「殺しますよ」
霊夢が出てきた。
「お、戻ってきたぜ。って、何だそのでかいの」
「おまたせ。これは、ギロチンよ。首を撥ねる道具よ」
「それでどうするんですか?」
「ここの穴のところに早苗の首を入れて、刃を落とすの」
「は?」
早く早く。霊夢が催促してくるがご了承できない。
「そ、そんなことをしたらアレですよ!!死にますよ!?」
「普通なら死ぬわね。でも、奇跡を起こせるなら別でしょ。別でしょ!?」
「なんで言い直したんですか、っても、無理ですよ!!」
ばきっ!!右の頬に痛みが走る。魔理沙に殴られた。
「な、なにす―ー」
「そうやって!!何でも無理無理って諦めるのかよ!?やってもいないこと、何で無理って言えるんだ!?なぁ早苗。お前ももう新参じゃないんだ。ここに来て8年も経ってるんだからな。そんなお前が逃げ腰で……後から来る者達はどうなるんだよ!?」
「え、あ……」
「早苗、お前ならできる。私が、保証する!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「うるさいわねゴキブリ!!」
霊夢は魔理沙にスプレーを噴射した。アレがいなくなる魔法のスプレーだった。
「がほっげほ」
「!の数が多すぎんのよ。くどい」
「何の話だよぉ……けほ」
「じゃあ早苗、そろそろやりましょう。時間も情熱も押して来てるわ」
「え、え、えぇーーー!!」
早苗の首を掴んで、強制的に台にセットさせる。
「ムリムリムリムリ!!」
「ムリムリムリムリ!!」
「ムリムリムリムリ!!」
「同じこと喋らないでください!誰の言葉だかわかんなくなるじゃないですか!!」
「無理じゃないわ。貴女ならきっとできる」
「できないできない!!認めますから、奇跡の力なんてないって、認めるからぁ!!」
「大丈夫だ早苗。大丈夫だから」
「何も大丈夫じゃない!!こんなの、絶対死んじゃう、死にたくないもん!!!」
「はぁー……。そう、わかったわ」
霊夢は深く息を吐いて、神妙な面持ちで話しだす。
「早苗、面白い話を聞かせてあげる。ある一人の、少女の話」
「えっ……」
早苗はゴクリと息を呑んだ。霊夢は郷愁に浸ったような憂いを帯びた顔で、ゆっくりと語る。
「その少女はね、ずっと一人ぼっちだったの。生まれた時から使命を負わされて、毎日修行に明け暮れる日々。だから、友達なんか出来たこともなかったし、友達というものがどういうものなのかも、よく知らなかったわ」
「え……」
「でもね、そんな少女にも、やがて友達ができた。同年代の女の子よ。最初はね、鬱陶しいなぁーなんて思ってたんだけど、満更でもなかったみたいでね。それから毎日のように二人は一緒に遊んでいたわ」
(そ、その少女って、もしかして……)
「そんなある日のこと。少女とその友達は、一緒にお寿司を作ることになったの。簡単な手巻き寿司だけどね」
「……」
「少女は料理なんてしたことがなかったから、友達に教えてもらいながら。その時は、まさかあんなことになるなんて思ってもなかったわ……」
「ど、どうなったんですか?」
「友達にね、でんぶ貸してくれって言われたのよ。あのピンクの、寿司に使う甘いヤツ。でもその少女は無知だったから、でんぶが何だかわからなかったの。
そしてあろうことか、でんぶのことを臀部だと思ってしまった。少女は迷った挙句、静かに友達の前にケツを差し出して、優しくしてね、って言ったわ。
最初、友達は呆然としていたけど、すぐにその少女の想いを受け入れた。こうなることを、友達は望んでいたのかも知れないわね。だってその友達の陰部には、すでに綺麗なミルキーウェイが出来上がっていたんですもの。
友達は少女の柔らかな白桃に手を伸ばして、その奥にある秘所を指でなぞったの。そして砂糖菓子の様に甘い声で、こう囁いた。今夜はお前が手巻き寿司だぜってね。そこから先はめくりめく百合の花園。語り出したらお縄にかかるほどの、淫猥な夜だったわ」
「は?」
「だからね、早苗、やりましょ?ギロチン」
そう言って霊夢は刃を落とそうとする。
「ちょ、ちょっと待って下さい!!だからの意味がわかりません!!」
「なによ、まだ粘るわけ?」
「粘りますよそりゃあ!今の話なんなんですか!!本当にただ愉快なだけの話じゃないですか!!」
「だから言ったじゃない、面白い話って」
「うそぉん……今の、本当なんですか?魔理沙さん……」
「え、あ、え、えーっと……」
「顔を赤らめないでください……なんか、落ち込むわぁ……」
早苗は落ち込んだ。もう、どうにでもなれ、ヤケッパチ、自暴自棄。
「じゃあ、落とすわよ。心の準備はいい?」
「ふ、ふふふ、うふふふ……」
「あー?なに笑ってるんだ、お前」
「ふふふふ、あはははは!!あーいいでしょう、やってみせようじゃないですか!!ギロチン上等ですよ!!」
「やっと覚悟を決めたわね、それじゃ……」
「その前に。私が命を賭けてるんだから、霊夢さんにも何か賭けて貰わないと、不公平ってもんです!!」
それはそうだな、と魔理沙は頷く。霊夢も、まあそうかも、と考える。平和だった。
「……わかったわ。じゃあ、コレをあげるわ」
「何ですか、コレ。紙屑みたいだけど……高価なものなんですか?」
「いや?ただのゴミ」
「そんなもの要りません。そうですねぇ、じゃあもし私が生き残ったら、罰ゲームを受けてもらいましょう」
「罰ゲーム?甘くて美味しいあの……」
「それはマドレーヌ。全然上手くないこと言わないで下さい、話がダレます。
内容は、そうですね……全裸で逆立ちして早苗様万歳!って叫びながら人里一周ツアーってのはどうですか?」
「お、お前馬鹿か?そんなのできるわけ……」
「別にいいわよ」しれっと。
「うそぉん」
別によかった。そもそも、何でこんなことをしているのか忘れかけていた。
「おい、いいのかよ霊夢」
「ま、生き残れたらの話だし。……じゃ、いくわよ」
「ごくり……」
霊夢は刃を支えてる縄を人思いに斬った。拠り所を失った刃が早苗の首目掛けて一直線に振り落ちる。
そしてそれは、その下にあったものを真っ二つに裂いて、地面へと到達した。
「ど、どうなった?」
「あ……斬れてるわ!見てコレ!」
早苗がいた筈の場所には大きな大根があった。大根が、真っ二つになっていた。
「大根よ!これで今晩のおかずには困らないわね!二重の意味で!!」
「そうだなって、い、いや待てよ。そもそも何で大根が……」
「それは私が説明しましょう!!」
霊夢と魔理沙は振り向く。早苗がいた。首から下が地面に埋まっていた。
「なにソレ、新しい遊び?」
「遊びではありません、これは奇跡です。奇跡の力で、ここに都合よく埋まっていた大根と入れ替わったのです」
「そ、そんな……」
霊夢は戦慄く。こんなすごい奇跡を目の当たりにしたのだから無理もないですね、早苗は誇らしげ。
「驚きましたか?これが、奇跡です」
「こんな立派な大根が埋まっていたなんて……気が付かなかったわ」
「そっちに驚かないで下さい」
「ああ、これがあれば三日は食いっぱぐれないな」
「何言ってるの!一ヶ月は持つわよ」
「お前、マジか」
「大根に興味示さないで下さい!私今、すごいことしたでしょ!?」
「さっそく漬物にしましょう」
「甘いぜ霊夢。まずは生のままで味噌をつけてだな」
「話しを聞けええええ!!!!」
早苗はドッヒュンと地面から飛び出してスタッと着地しサンッと立ちガミガミ怒る。
「ベタなことはやめて下さい!大体、大根なんかそんな珍しくないでしょ!!」
「大根が珍しくないなんて、アンタ一体どんな人生送ってきたのよ」
「その言葉、そっくりそのまま返します」
「いやでも、珍しい大根だってあるぜ?変な形したやつとか」
「ああ、ケツみたいな形したやつとかね」
「ケツって言うなよ、せめておけつって言え」
「あ、ケツって言えば早苗んとこの神様は大根好きなの?」
「ちょっと、ケツきっかけでうちの神様を思い出さないでくれます?……好きですけど」
「なら御裾分けしましょう。葉っぱのところでいい?」
「葉っぱのとこだけ!?裾狭すぎでしょ!っていうか、大根の話しはどうでもいいんですよ!!大根の話し禁止!!ノーモア大根!!」
「えぇー、じゃあもう話すことないわ」
「うそぉん……」
早苗は肩を落とす。あれだけ凄い奇跡を披露したのにぃ。しかし早苗は気付いた。ニヤァリと笑う。
「はっはーん。わかりましたよ。霊夢さん、必死に話し逸らそうとしてますねぇ?」
「な、なにがよ。べ、別に、ば、罰ゲームのことを忘れさせようなんて、これっぽちも思っていないけど」
「落ち着け霊夢、全部言っちまってるぜ」
「」
「ふふん。わかりますよぉ霊夢さぁん。全裸で逆立ちしながら人里を一周、だなんて巫女としても人としても終わりですからねぇ……」
「わかってくれる?なら、現金に物言わせながら人里で豪遊、に変えてくれない?」
「なんで?そんなの霊夢さんが楽しいだけじゃないですか。嫌ですよ!!」
「」
「ちょっと誰ですかー?さっきから無意味に括弧出してるの。そういうのやめて下さい、本筋からズレるんですよ!!」
「いちいち反応するからズレるんだろ?なぁ霊夢」
「気安く話しかけないで」
「えぇー……」
キリがなかった。
「もういいです。まぁ、さすがにあの罰ゲームは惨いので、霊夢さんにチャンスをあげましょう」
「略して霊チャンね」
「今のは聞かなかったことにします。えー、貴女が私と同じことができたら、罰ゲームの話は無しにしてあげましょう。このギロチン刑で、生き残れたらね。それが、霊夢さんに与える最後の慈悲、チャンスです!」
「略して霊チャンね」
「えぇー、何で流したことをまた言うの……?」
「霊夢は病的にしつこいんだよ。私も昔は」
「魔理沙さんには聞いてません。黙っててくれます?」
「よくしつこく粘着されてたよ。あれはまだ知り合って間もない時」
「黙らないよ、この人……。ま、まぁいいです。阿呆な魔理沙さんは放っといて、さぁ、どうするんですか!霊夢さん!」
「どうするったって、そんなの決まってるじゃない」
霊夢はギロチン台に自ら首をセットした。
「ほほぉー。いいんですか?それで。死にますよ?」
「私は死なないわ。まだ残機が3つ残ってるし」
「そういう発言は慎んで下さい。人の命は一つしかありませんから」
「……ぷっ!!あははは!」
「なに笑ってるんですか?」
「ヒトの命はヒトつしかないって、ダジャレ……ぷぷっ」
「そこそんな面白くないでしょ!別にダジャレを言ったつもりもないし!」
「いいから早くやってよ。時間が惜しいわ」
「じ、自分で引き伸ばしたクセに……!!もういいです。お望み通り、殺ってあげますわ!!」
早苗は縄を切った。さっき斬ったはずの縄が復活していることについては、意外にも誰も言及しなかった。
ギロチンは霊夢の首を目掛けてゴォオンと落下する。そしてそれは、ストン、と霊夢の首を――落とさなかった。
霊夢の首より数mm手前で、刃が止まっている。
「な、なんで……?あっ!!さては何か細工をしましたね!」
「私は何もしてないわ。ただ落下位置を調整しただけ」
「それを細工したって言うんですよ!ていうか何時の間に……?ていうかそんなことできるの……?ていうかズルくない……?」
「ていうかていうかうるさいわね。アンタは発情期のアライグマか!!」
「いやそのツッコミはよくわかんないんですが……これズルくないですか!?魔理沙さんもそう思うでしょ!?」
「だから私は霊夢にこう言ったんだよ。股間が痒い時にムヒを塗っても意味ないぜって。そしたら霊夢が」
「えぇー、まだ語ってる……。しかも何ですかその思い出。逆に気になってきた……」
「とにかく、私の勝ちね。罰ゲームはナシってことで」
「うそぉん……」
霊夢はギロチンから抜け出して、ぽんぽんと服に付いた砂を払う。
「じゃ、次は魔理沙の番ね」
「そうですね、ここまで来たら全員やらないと」
「そして私は霊夢の雌穴にキンカンを塗りたくったんだ。そしたらもうベトベトに濡れ始めて」
「まだ言ってるし……。しかも卑猥な領域へと突入している」
「いい加減黙りなさい!!」
「ぐべぇ!?」
霊夢は殴った。魔理沙を。
「に、にゃにすんだよぉ……」
「ごめん、あまりに魔理沙がつまらなかったからつい……」
「つまらなかったら殴るのかお前は」
「基本的には」
「マジか……」
「私は二人とも殴りたい気分なんですけど。さっさと話し進めません?」
「なんだっけ、大根の話だったっけか?」
「そうそう、まずはどう調理するか決めないとね」
「それはもういいって言ってるでしょうが!!何で掘り返すんですか!」
「大根だけに掘り返すってか。今のはどうだろうな、霊夢」
「う〜ん。惜しいわ。20点ってところかしら」
「は、腹立つわ〜この人達!!20点って全然惜しくないし!!洒落を言ったわけじゃないんですってば!!」
「わかってるわよ。ほんの冗談なんだから大声出さないでよ」
「そのほんの冗談が多すぎるんですよ!」
「はいはい……。じゃ、魔理沙。覚悟はいい?」
「え?は?なん……え?」
魔理沙はいつのまにか断頭台に首を乗せていた。
「ちょ、ちょっと待て!!ほ、本気かよ?」
「本気も本気。大マジよ」
「ああ、コレやってないのは魔理沙さんだけですもんね♪」
「音符つけんな憎たらしい!!私は無理だって!死ぬからな!?絶対死ぬからな!」
「魔理沙さぁん。何でやってもないこと無理って言えるんですかぁ〜?」
「うわコイツむかつくぅ〜!!ここぞとばかりに仕返ししてきやがる!!なぁ霊夢やめてくれよぉ!友達だろ!?」
「そうね、じゃあや〜め〜……ない!!」
「何だソレ!?こんな時に下らないことするのやめてくれよ!」
「もういいですよ霊夢さん。一気にやっちゃいましょ」
「わかったわ」
「やめろおおおおおお!!!」
霊夢は縄を斬った。魔理沙の首に刃が届き、そしてそれは普通に魔理沙の首を斬って落とした。ゴロン、と首が転がり血が大量に溢れてくる。
「……死んだわね」
「……ええ、なんか、普通に死にましたね」
しばらく沈黙する。
「って、どうするんですかぁ!!魔理沙さん死んじゃいましたよ!?」
「殺すつもりでやったんだから当然でしょ?なに慌ててるの?」
「いや、そうかもしれないけど……魔法とか使って切り抜けるものだとばかり思ってたから……」
「戯け!!魔理沙がそんな器用なことできるわけないでしょうが!!!!」
「えぇー、何で怒ってんの……?ってか、私達人を殺しちゃったんですよ!?どうにかしないとヤバいですって!!」
「うーん、そうねぇ。……あっ!!」
「何か思い付いたんですか?」
「魔理沙が真っ二つで……魔理二つってのはどうかしら」
「あーもう喋んなくていいです。私が対策考えるんで黙ってて下さい」
「冗談よ。だいたい、対策なんて考えるまでもないじゃない」
「と、言うと?」
「だからさ、魔理沙の帽子を、この大根に被せるのよ」
「はぁ」
「で、ここにこうやって、顔を描くの」
「……」
「ほら。ね?解決したでしょ?」
「いや、何も解決してませんよ!?これを魔理沙さんだと認識する人なんかいるわけないじゃないですか!!」
「うるさいなぁ、わかったわよ。じゃあ、私が魔理沙の帽子を被って、魔理沙の代わりをするわ」
「そしたら霊夢さんがいなくなっちゃうじゃないですか」
「私の代わりは早苗がやるのよ。同じ巫女だし」
「いやいや、なら私の代わりがいないじゃないですか」
「早苗の代わりは別に要らないでしょ」
「要りますけど!?要りまくりですけど!!」
「じゃあ早苗の代わりはこの大根が……」
「だから大根じゃ無理なんだって!!ってか、回りくどいだけでやってることがさっきと一緒じゃないですか!!」
「えぇー。じゃあもう方法ないわ」
「うそぉん……」
方法はなかった。魔理沙は死んでしまった。
「くすん……まさか死んでしまうなんて……これでは二柱に顔向けできません……」
「早苗、そんな落ち込まないで。過ちを犯すことは誰でもあるわ」
「あなた慰める立場じゃないでしょ……ああ、このまま私は人を殺した巫女として、可愛すぎる殺人者として名を馳せてしまうのですね……」
「可愛すぎるは付かないと思うけど……そもそも殺人者の時点で可愛くないし」
「はぁ。もういいです。せめて魔理沙さんの遺体を埋葬しましょう。火葬か土葬か、どっちにしましょうか……」
「ああ、火葬で頼むぜ。土葬って何か土臭くて嫌だしな」
「そうですか、魔理沙さんがそう言うなら……は?」
「私は土葬の方がいいと思うわ。自分の体が徐々に朽ちていってると思うと興奮するでしょ?」
「いや、ちっとも。私はお前と違ってノーマルなんだよ」
「ちょ、ちょっと!何で魔理沙さんがいるんですか!?」
「何でって言われてもなぁ。まだ残機あまってたし」
「だからそういうこと言うのやめて下さいって!!他に何か理由あるでしょ!」
「早苗、常識に捕らわれてはいけないのよ。何たってここは、幻想郷なんだからね」
「そんな馬鹿な……いくら常識外れでも限度ってもんがあるでしょ……」
「じゃあ早苗、こういうのはどうだ?私は、お前の奇跡の力で助かった、そういうことにしておくんだ」
「いやそう言われても……」
「ありがとうな、早苗。お前の能力バカにしてごめん」
「え、あ、わ、わかればいいんですよ、わかれば」
「許して、くれるのか……?」
「ん、まぁ、魔理沙さんは大事なお友達ですしね、許してあげないこともないですよ?」
「早苗……!」
「ふふっ。じゃあ仲直りしたところで、大根でも食べましょ」
「そうだな」
「これだけ大きいと食べ応えありそうですね!!」
「全く早苗は食いしん坊なんだから」
「あはははははは!!」
こうして早苗は日々、間違った常識を植えつけられていくのであった。
一方その頃永遠亭では。
「はぁ……はぁ……」
「ようやく追い詰めたわよ、てゐ」
「うっ……うどんげのクセにっ……!!」
「何か言ったかしら?」
鈴仙は疲労で動けないてゐの顔に刀を突きつけた。背後は壁で、前方には鈴仙。逃げ場はもう、無い。
「あ……いや、その……や、やめてくださいって……」
「やめないわ。私はね、貴女にはもう愛想が尽きたのよ。ガキの遊びに付き合ってやってただけなのに調子に乗っちゃってさ。それでもてゐは大事な友達だから、と思って今日までやってきたけど―ーもう嫌になっちゃった」
「う、うどんげ……?」
「だからね、もう終わりにするわ。その元凶を絶つことで」
「え……」
鈴仙の太刀筋はあまりにも早かった。一瞬でてゐの左肩を貫き、深々と刃を差し込んだ。そこから血飛沫がぶしゃっと弾け飛び、てゐの表情は苦悶に歪む。
「あ、あぐぁあああああああああああ!!!!」
絶叫が響き渡り、てゐはその場に倒れこむ。鈴仙はてゐに馬乗りして、その腕を切断すべく何度も刀を振り下ろす。
「あぐ!!あがぁ!!あっががが……!!」
「じっとしなさい!!上手く斬れないじゃないの!!」
「ご、ごめんなざい"!!もう、うぐぅ!!い、いたずら、しないからああああああああ!!」
「謝る必要はないのよ。てゐが本当は良い子だってことは、私も知ってるから」
そう言って鈴仙は更に力を込めて、てゐの左腕、そして右腕までもズタズタに切刻む。
「悪いのはこの腕!!この足!!こんなものが付いてるから、てゐは悪戯がやめられないのよね!!そうに決まってるわ!!!!」
「がぁっ!!ごふっ……ぃ、ぃやぁ……」
部下の妖怪兎達が遠くから眺めているのがぼんやり見えた。誰も、止めようとはしてくれない。止めることなど、出来るはずも無かった。
一方その頃紅魔館では。
「た、大変よパチュリー!私の能力が無くなっちゃった!!」
「それは本当なの?フラン」
「ほ、本当よ!!ほら、こうしても壊せない!!」
フランは手を開いて閉じる。しかし、何も起きない。パチュリーは考え込んだ。
「それは大変ね……ちょっとみんなを呼んでくるから待ってて」
程なくしてパチュリーは舞い戻った。咲夜、美鈴、レミリアを引き連れて。
「フラン、能力が使えなくなったって言うのは本当なの?」
レミリアが食い気味にフランに問う。
「え、ええ本当なのよお姉様。どうしよう、私おかしくなっちゃった!」
「うぅーん……そうね。美鈴」
そう言ってレミリアが指をパチンと鳴らすと、美鈴は一歩前に出た。
「はい」
「フランが本当に力を失ったのか、試してみなさい」
「承知しました」
美鈴はフランの正面に立ち、息をゆっくり吐きながら気を練る。何かよくない予感がする。フランが一歩下がろうとしたその時。
「ごぶぅぉ!!?」
重い拳が、フランの腹にめり込んでいた。わけもわからず、フランは咳き込む。
「げふっ!……あくっ……ら、らんでぇ……?」
「ちょっと美鈴!何やってるのよ!!」
レミリアは美鈴に詰め寄り、怒りを露にした。フランは少し安堵し、息を整える。
「はぁ、はぁ、お姉様、こんな無礼なやつ、クビに……」
「いい?腹を殴る時はね、こうやるのよ!!」
「へ?おねえ……はぐぅ!!!」
ゴスン、とフランの腹部に衝撃が走る。先程よりも更に重く、打ち所も悪い。一瞬、意識が吹き飛んだ。
「うくッ……あかかかか……!!」
「さっきの貴女のパンチは狙いが下過ぎるの。あれじゃあすぐ呼吸が通ってしまうわ」
「済みません、お嬢様。修行が足りませんでした」
精進しなさい、とレミリアが言うと、美鈴は頭を深々と下げ後ろに下がった。
「さて、ここまでやられてやり返さないってことは……本当にフランは力を失ったみたいね」
「かっ……っかっはぁ……!」
息ができない。腰砕けになり、立つことさえもままならない。
「じゃ、咲夜。そういうわけだから、パーティの準備をしてきて」
「了解しましたわ、お嬢様」
「美鈴は館の者達を全員集めて、今すぐによ」
「はい!!!」
咲夜は一瞬にしてその場から姿を消し、美鈴も疾風の如く部屋から飛び出した。
「に……にゃに……?にゃにがおこっているの……?」
ようやく息が通るようになったフランだったが、未だ頭に靄がかかっていて状況が把握できない。
レミリアはフランの髪を引っ張って、強制的に体を起こした。頭皮に痛みが走り、フランはぐぐぐ、と悲痛な声を漏らす。
「これからパーティーをするのよ、フラン」
「ぱ、ぱー、てぃー……?」
「そうよ。我侭放題の厄介な妹を、みんなが見ている前で滅茶苦茶にするの」
「ぇ……」
「きっと盛り上がるわぁ。だってみんな、貴女のことが嫌いなんだもの」
「き、きら、い……?」
涙が滲んできたと思ったら、すぐに決壊してフランの顔をぐちゃぐちゃに濡らす。
「うん、嫌いなの。パチェも咲夜も美鈴も、そして私も。我侭だし言うことは聞かないし。暴虐で自己中心的な奴を、好きになる者なんていないでしょ?」
「そん、な……。うそだよ……」
「そうね、嘘だったわ。今まで貴女にかけた優しい言葉も安心できる場所も、全部偽り。貴女に駄々捏ねられると困るからそうやってきただけのこと」
「う、ううう……。えううううううぅ……」
「いーい?フラン。私は何度も、貴女にこう教えてきたわ。力を持つ者は、力の使い方を誤ってはいけないって。強過ぎる力は、存在するだけで恐怖となるのよ。それを恣意的に行使するとなれば、その恐怖は更に肥大して、やがて憎しみへと変わってしまう」
レミリアはフランの首根っこを掴み、言葉と共にギリギリと力を込める。
「あがっ……!!」
「だから、力を持つ者は相応の振る舞いをしなければいけないのよ。それを、何度も私は貴女に言ったわ。でも、貴女は聞き入れなかった。自分の気に入らない者は全て破壊して、排除してきた」
「う、うえっ……ぐ、ぐ……!!」
「これはね、その報いよ。自業自得なんだから、誰も恨んじゃ駄目よ?恨まれるのは、貴女の方なんだから」
そこでフランは気絶した。精神的なショックと首を絞められたことによる酸素不足で、体が意識を手放すことを選んだ。
しばらくの暗黒の後、次にフランがその瞳に映した光景は、万雷の拍手が鳴り響くパーティー会場と、狂喜乱舞する聴衆の姿だった。
一方その頃博麗神社では。
「はぁー。茶が旨いなぁー」
「そうねぇ」
「鉄板ですねぇー」
ずずずずずずず。三人は茶をすする。大根を食む。
「はぁーー」
「「「平和だなぁー……」」」
三人はしみじみ、そう思ったのだった。
ありがとう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
酔鉄
作品情報
作品集:
32
投稿日時:
2015/06/27 11:31:19
更新日時:
2015/06/27 20:31:19
分類
霊夢
早苗
魔理沙
うどんげにとどめを刺したイタズラの内容が気になるw