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『ふたりの狂者』 作者: 弥生
「フランちゃーん!」
その高らかな声は廊下を響かせた。
以前の彼女はもう少し心があった覚えがある。
…今は完全なる無機質な存在。
いや、以前からそうだったのかもしれない。
彼女は無意識に動く者。
しかし、やはり以前とは違うのだ。
何かが無くなり、何かが詰められた。
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「え?フラン…お嬢様、ですか?」
「そう!どこにいるのかなぁ…」
「えっと…」
「あ、向こう探してくるーー!!」
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「教えてなかったの?……寝てたの?」
「寝てません!起きてました!」
美鈴は必死になって否定する。
「どうして教えていないのよ。」
「だって……。私の口からはとてもじゃないですが言えません。」
下唇を強く噛み締め、血を流す。
「止めなさいな美鈴、痕が残ったら嫌でしょう?」
所持している傷薬を無理矢理塗る。
「ありがとうございます、咲夜さん……ちゅっ…んじゅっ……」
すると急に指を舐めてきたのだ。
私にはどうにも、彼女の心理状態は理解できずにいた。
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再び廊下へ戻ってくると、こいしが立ち止まっていた。
目の前にはフランお嬢様の部屋だった扉。
その扉は開いていた。
もう何一つと残っていない部屋へ弱々しく入っていくと
今度はしくしくと泣き始めた。
そうか…この部屋には何一つ残っていない。
しかし彼女には見えている様だ。
フランお嬢様との思い出が。
私は部屋を後にした。
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「ねぇねぇ」
「何でございましょう?」
こいしの目は赤く腫れていた。
「フランちゃんはどこ?」
「フランお嬢様は……」
…
……
………
…………甦る記憶。
美しいフランお嬢様の姿。
白い肌紅い唇天使の様な笑顔。
全てが美しかった。
ふっくらとしたお腹
鮮やかな薄紅色の腸
小さく可愛らしい子宮
私が全て奪った。
その全てを奪った。
あの瞬間の……あ……ああ………あああ………!!!
…………
………
……
…
「…お嬢様は……先日、亡くなりました。」
「どうして嘘付いてるの?」
「は…?」
「どうして嘘付くのって。」
「嘘ではなッ
「亡くなったんじゃなくて…殺されたんでしょ?」
「…………。」
顔全体から汗が吹き出る。
何故気付かれたのか。
いや、ハッタリだろう。私が殺したなどと分かる筈もない。
「私は殺していませんよ。誰かに殺されていたのです。」
これで良い。これで
「誰も疑ったりしてないよぉ?」
……。
一瞬、思考が停止する。
誰も疑っていない。そうか、それなら安心だ。
なら何故こんなにも殺気が強いのだろう。
何だ……この刺さる様な殺気は。私に向けられている…!?
「言った意味が分からなかったかな?」
言った意味?誰も疑ってな………
「気が付いた?誰も貴女が殺しただなんて言ってないのよ?」
「う…あ………」
「ね?どう?当たってた?」
「わっ!私は一切知りません本当ですっっ!!
ゆらりゆらりと私に迫る。
「ちっ違うのですっ!事件の日に私が疑われていてぇっっ!!
ゆらり、ゆらりと。
「そのせいで反射的にっっ!!!
ゆ ら り
「いっ………
嫌あぁあぁああぁあああぁああぁぁぁっっっっっっっ!!!!!」
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「気を失ってるみたいだね。」
「でも許さないよ?」
「こいしのフランちゃんを殺したんだから。」
「こいし、どんな殺され方をしたのかは分からないけど。」
「こうじゃないかなって、こうされたんじゃないかなって。」
「予想して」
「考えて」
「フランちゃんと同じ様になるように」
「私、頑張るから」
「同じ目に遭わせてあげる♪」
どうも、愛する者の帰りを仲間と待つ弥生です。
『愛』『依存』の結末です。
まぁ、自業自得ってことで。
テーマも勿論『自業自得』。これは既に決められた運命でした。
狂う二人、でも愛は圧倒的にこいしの方が上でしたね。
間抜けな咲夜さんは、その後どうなったのかは言わずもがな……。
タイトルのふたりを平仮名にしたのは、
果たしてこいしを人と認識して良いのか迷ったからです。
変換忘れとかじゃないですよ。
弥生
- 作品情報
- 作品集:
- 最新
- 投稿日時:
- 2015/08/16 15:20:39
- 更新日時:
- 2015/08/17 00:20:39
- 分類
- 狂者
- こいし
- 咲夜
- 結末
悪いことをしたのは咲夜ですからね。
こいしは妖怪という言葉が立派に似合う妖怪だね。
こいしの罰を受ける咲夜も見たい
殺したのは私の発言の通りです。
こいしの罰を受ける咲夜はいずれ書きます。