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『ふたりの狂者』 作者: 弥生

ふたりの狂者

作品集: 最新 投稿日時: 2015/08/16 15:20:39 更新日時: 2015/08/17 00:20:39
「フランちゃーん!」

その高らかな声は廊下を響かせた。
以前の彼女はもう少し心があった覚えがある。
…今は完全なる無機質な存在。
いや、以前からそうだったのかもしれない。
彼女は無意識に動く者。

しかし、やはり以前とは違うのだ。
何かが無くなり、何かが詰められた。
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「え?フラン…お嬢様、ですか?」

「そう!どこにいるのかなぁ…」

「えっと…」

「あ、向こう探してくるーー!!」

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「教えてなかったの?……寝てたの?」

「寝てません!起きてました!」

美鈴は必死になって否定する。

「どうして教えていないのよ。」

「だって……。私の口からはとてもじゃないですが言えません。」

下唇を強く噛み締め、血を流す。

「止めなさいな美鈴、痕が残ったら嫌でしょう?」

所持している傷薬を無理矢理塗る。

「ありがとうございます、咲夜さん……ちゅっ…んじゅっ……」

すると急に指を舐めてきたのだ。
私にはどうにも、彼女の心理状態は理解できずにいた。
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再び廊下へ戻ってくると、こいしが立ち止まっていた。
目の前にはフランお嬢様の部屋だった扉。
その扉は開いていた。
もう何一つと残っていない部屋へ弱々しく入っていくと
今度はしくしくと泣き始めた。

そうか…この部屋には何一つ残っていない。
しかし彼女には見えている様だ。
フランお嬢様との思い出が。


私は部屋を後にした。
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「ねぇねぇ」

「何でございましょう?」

こいしの目は赤く腫れていた。

「フランちゃんはどこ?」

「フランお嬢様は……」


……
………
…………甦る記憶。
美しいフランお嬢様の姿。
白い肌紅い唇天使の様な笑顔。
全てが美しかった。
ふっくらとしたお腹
鮮やかな薄紅色の腸
小さく可愛らしい子宮

私が全て奪った。
その全てを奪った。
あの瞬間の……あ……ああ………あああ………!!!

…………
………
……


「…お嬢様は……先日、亡くなりました。」










「どうして嘘付いてるの?」









「は…?」

「どうして嘘付くのって。」

「嘘ではなッ
「亡くなったんじゃなくて…殺されたんでしょ?」

「…………。」

顔全体から汗が吹き出る。
何故気付かれたのか。
いや、ハッタリだろう。私が殺したなどと分かる筈もない。

「私は殺していませんよ。誰かに殺されていたのです。」

これで良い。これで

「誰も疑ったりしてないよぉ?」

……。
一瞬、思考が停止する。
誰も疑っていない。そうか、それなら安心だ。
なら何故こんなにも殺気が強いのだろう。
何だ……この刺さる様な殺気は。私に向けられている…!?

「言った意味が分からなかったかな?」

言った意味?誰も疑ってな………


「気が付いた?誰も貴女が殺しただなんて言ってないのよ?」

「う…あ………」

「ね?どう?当たってた?」

「わっ!私は一切知りません本当ですっっ!!

ゆらりゆらりと私に迫る。

「ちっ違うのですっ!事件の日に私が疑われていてぇっっ!!

ゆらり、ゆらりと。

「そのせいで反射的にっっ!!!

ゆ ら り

「いっ………

嫌あぁあぁああぁあああぁああぁぁぁっっっっっっっ!!!!!」
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「気を失ってるみたいだね。」


「でも許さないよ?」


「こいしのフランちゃんを殺したんだから。」


「こいし、どんな殺され方をしたのかは分からないけど。」


「こうじゃないかなって、こうされたんじゃないかなって。」


「予想して」


「考えて」


「フランちゃんと同じ様になるように」


「私、頑張るから」


「同じ目に遭わせてあげる♪」
どうも、愛する者の帰りを仲間と待つ弥生です。
『愛』『依存』の結末です。

まぁ、自業自得ってことで。

テーマも勿論『自業自得』。これは既に決められた運命でした。

狂う二人、でも愛は圧倒的にこいしの方が上でしたね。
間抜けな咲夜さんは、その後どうなったのかは言わずもがな……。

タイトルのふたりを平仮名にしたのは、
果たしてこいしを人と認識して良いのか迷ったからです。
変換忘れとかじゃないですよ。
弥生
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2015/08/16 15:20:39
更新日時:
2015/08/17 00:20:39
分類
狂者
こいし
咲夜
結末
1. 偏頭痛 ■2015/08/17 19:09:28
読み終わった後に何だかスッキリしました。
2. 弥生 ■2015/08/17 19:16:44
コメントありがとうございます。
悪いことをしたのは咲夜ですからね。
3. レベル0 ■2015/08/17 22:09:23
咲夜はなぜ殺したし。
こいしは妖怪という言葉が立派に似合う妖怪だね。
こいしの罰を受ける咲夜も見たい
4. 弥生 ■2015/08/17 23:33:11
コメントありがとうございます。
殺したのは私の発言の通りです。
こいしの罰を受ける咲夜はいずれ書きます。
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