念願の自機

作品集: 1 投稿日時: 2009/03/19 18:03:25 更新日時: 2009/03/20 07:07:36
※物語の時間は早苗さんの自機化が発覚した直後
※キャラ崩壊、設定崩壊
※"自機"という概念が単独で浮遊する謎の世界観
※若干グロ注意



















「神奈子様、諏訪子様!見て下さい、号外です!号外!号外!」

錯乱気味の早苗が、茶の間に飛び込んでくる。食事中だった2人も何事かと箸を止め、早苗の広げる新聞を見た。
見出しにはデカデカと"守矢の巫女が謎の宝船を追う!"と書かれている。

「ついに私も自機ですよ!?自機!自機!自機!!これも日頃の布教活動が実を結んだんですよ!」

頬を上気させながら興奮した面持ちで早苗が言う。よだれもすごい。
あっけにとられて固まっていた2人だったが、早苗がこちらの反応を待ってることに気付く。神奈子は「あ…ああ、おめでとう」と短く言った。
突然早苗がバンッと机を両手で叩く。驚いた諏訪子が茶碗を取り落としそうになる。

「ちょっと!2人とも起きてますか!?これから私が大快挙をするかもしれないっていうのに、守矢の神なら泣いて喜ぶところですよ!?」
「そ、そうかい…?じゃあ今日はお祝いでもしようか…?」
「あたりまえですよ!それじゃ私は皆に挨拶回りしてきますね!」

言い終わるよりも早いか遅いか、早苗は風神の如く神社を飛び出していった。
残された神奈子と諏訪子は、しばらく早苗が飛び出していった方を眺めた後、何事もなかったかのように食事を再開する。

「ねえ神奈子、自機ってそんなに嬉しいものなの?」
「…さあね。私は面倒事はごめんだよ。」





――――――――――→博麗神社

博麗の巫女は今日も境内の掃き掃除。冷たい風が脇に堪える。

「霊夢さ〜〜〜〜〜ん!!!」

頭上から自分を呼ぶ声。霊夢は厄介ごとでないことを祈りつつ空を見上げた。
早苗は霊夢の前にスタッと降り立つと、先ほどの新聞を見出しが見えるように突き出した。

「霊夢さん!ついに私も自機の仲間入りです!今日はその挨拶に参りました!」
「自機?あなたが?」

満面の笑みの早苗から、霊夢はだるそうに新聞をひったくると、記事を読みながら眉間にしわを寄せた。

「…何かの間違いなんじゃないの?あなたが自機だなんて。」
「え?」

予想もしない霊夢の発言に、早苗の顔から笑顔が消える。私をからかうための冗談だろうか?
そうは見えないからこそ、早苗は困惑した。

「どう考えても実力不足でしょ。あの天狗もいつからゴシップ…もとい、デマ記事を書くようになったのかしら。」
「デ…デマじゃないですよ!神主さんの公式コメントだってありますし…。それに実力的にも、私は霊夢さん達に引けはとってません!」

早苗は憤慨した。仮にも5面ボス、中ボスといえどEX面も任された自分が、まさか実力不足などと言われるとは思っていなかった。
しかし霊夢はあいかわらず呆れたような顔でふうっと溜息をつくと、半ばあきらめ気味言った。

「…まあ本当に決まってしまったなら仕方ないわ。せいぜい私達の足を引っ張らないようにしてね。どうせ役に立たないんだから、家で寝ててもいいわよ。」
「そんな………!!」

霊夢がこんな奴だとは思っていなかった。悲しみより怒りが沸いてくる。弾幕勝負でボコボコにしてやりたかった。
とは言っても、折角自機入りが決まった今の時期に、そんな身内での喧嘩沙汰は避けたい。
なにより霊夢の強さ自身は早苗も認めるところがある。万一負けでもしたら、それこそ赤っ恥だ。

「…失礼させていただきます!」

絶対私を認めさせる…!そう堅く決心をし、早苗は博麗神社をあとにした。





――――――――――→魔法の森

早苗は魔理沙の家の前にいた。霊夢に次ぐ自機キャラ魔理沙にも、当然挨拶をしなければならない。
先ほどの憤りを押さえつつ、ドアをノックする。魔理沙ならきっと私の実力を認め、自機認定を祝ってくれる、そう信じたかった。
しかし何度ドアをノックしても、家の主は姿を現さない。まだ日が昇って間もないが、留守なのだろうか。

「あら?魔理沙に何か用?」

突然後ろから話しかけられ、慌てて振り返る。そこには人形のような姿をした金髪の少女が一人佇んでいた。
見ればわかる。魔法使いだ。少女は続けて言った。

「私も魔理沙に用があって来たんだけど…、どうやら留守のようね。それより貴方、見かけない顔だけど、どちら様?」

とっさに身構えた早苗であったが、どうやら敵意はなさそうである。同時に、早苗の記憶のピースが当てはまる。

「もしかして、アリスさんですか?」
「え?どうして私の名前を?どこかでお会いしたかしら?」
「新聞で見ました。」
「新聞…」

信仰を得るには、まずその地の土台から学ばなければいけない。
早苗は幻想郷に来たとき、射命丸文に頼んで過去の"文々。新聞"をあらかた読ませてもらっていた。
その中にアリスの記事があったのを覚えている。たしか、藁人形がどうとか…でしたっけ。

「藁人形についてじゃなくて、自立人形についての取材を受けたはずだったんだけど。あの天狗、どんな記事を書いたのかしら。確認しとくべきだったわ。
 そんなことより、まだ質問に答えてもらってないわ。どちら様?」

これは失敬、と早苗はお辞儀し、自己紹介する。

「私、守矢神社で風祝(かぜはふり)をしている東風谷早苗と申します。この度は自機に選ばれたので、その挨拶回りに魔理沙さんの所にも来たんですけど…。」
「守矢神社の…?ああ、人里に行ったとき、守矢の信仰を広めようとしている巫女がよく来るって聞いたわ。貴方だったのね。」
「はい。まあ、厳密には巫女ってわけじゃないんですけど…。」
「ふーん…。それにしても自機になったから挨拶回りなんて、変わったことするのね。」
「そ…そうですか?」

早苗は自機という重要な役に就いた。だから、挨拶回りくらい当然のことだと思っていたが、どうやら幻想郷ではそんなこと普通はしないらしい。
しかし常識に囚われてはいけない。こういう気配り(宣伝)こそが、信仰を生むのだ。

「まあ、貴方の好きにしたらいいと思うけどね…。…じゃあ、魔理沙がいないなら用もないし、私は帰ることにするわ。」
「あ、はい。さようなら。」
「さよなら。自機、がんばってね。」

アリスは微笑みながらそう言って手を振り、暗い森の中へと消えていった。

「アリスさんは、いい人みたいですね…。」

早苗は呟き、次の目的地へと向かった。





――――――――――→紅魔館

雲ひとつない空。日もだいぶ高くなって、残冬といえどぽかぽかと暖かい。
紅魔館の門番紅美鈴は、門にもたれながら昼食前にシエスタに入りそうになっていた。ウトウト…。

「あの…。」

早苗が話しかける。するとどうだろう、突然門番は目をカッと見開き、

「今日も門前に異常なしですからどうぞご安心を!!この紅美鈴、命に代えてもこの門を守ってみせますよ!!!」

などと言いながら虚空に高速でパンチやキックを繰り出し始めた。
しばらくそんなことをやった後、訳も分からずおろおろする早苗さんに、ようやく気付く美鈴。

「なんだ、咲夜さんかと思った…」

咲夜さんが来たらこの一連の動作をする決まりなんだろうか?門番っていうのは大変なんだな、と早苗は勝手に思った。
とりあえず自己紹介から始める。魔法の森でのような無礼はもうしない。

「あの…私、守矢神社で風祝をしている東風谷早苗と申します。この度は自機に選ばれたので、その挨拶回りに来ました。」
「はあ…。」

ぺこりとお辞儀をする早苗。さてどうしたものかと頭を掻く美鈴。門を通すのは簡単だが、万一敵だった場合、責任は美鈴にある。
でもまあ邪気は感じられないし、見たところ人間のようなので通してもいいかなとか思っていたら、

「あら?お客さん?」

丁度外出の時間だったらしく、メイドと日傘を差した吸血鬼が門から現れる。

「あ、咲夜さんとお嬢様、丁度いいところに。実はかくかくしかじかでして…。」

2人に説明する美鈴。2人にお辞儀をする早苗。お辞儀を返す咲夜。目を細め早苗を観察する吸血鬼。
早苗は咲夜と吸血鬼に関してはすでに知っていた。というか、今日はその2人に挨拶に来たようなものだった。
十六夜咲夜、5面ボスにして怒涛の自機率。自分と同じ5面ボスの彼女に、早苗はある種の嫉妬のようなものを持っていた。
しかしそれも昨日まで。次の自機は彼女ではなく、私が選ばれたのだ。と、早苗は誇りに思った。
吸血鬼の方はたしか、レミリアとかいう名前だったか。
それなりに実力はあるらしいが、霊夢にあっさり負けたあたり、大した事ないのかもしれない。

美鈴の説明を聞き終えてからも、レミリアは早苗の観察を続ける。

「咲夜、守矢神社って?」
「たしか妖怪の山にある神社だったかと存じております。少し前に幻想郷の外から引っ越してきたとか…。」
「ふーん。」

いかにも興味なさそうに返事をするレミリア。だが急に、何かを思いついたかのように手をポンと叩くと、悪戯っぽく笑って言った。

「そうだ。このレミリア・スカーレットが、直々にあなたを弾幕でテストしてあげるわ。」
「はい?」

何を言い出すんだろうこの吸血鬼は。レミリアは日傘を持ったままフワッと空に舞い上がる。

「自機っていうのはボスと違って、何よりも被弾しないことを重視するのよ。あなたノロマそうに見えるけど、ちゃんと避けれるのかしら?」

得意気に話すレミリア。
とりあえず舐められているのはわかった。でもまあいい機会かもしれない。ここで私の実力を見せつけ、その傲慢な態度を挫いてやろう。

「わかりました。お願いします。」
「返事はいいのね。…咲夜、美鈴、下がりなさい。」
「かしこまりました、お嬢様。」
「じゃあ私は門番小屋の方に行ってますね。」

レミリアは咲夜と美鈴が門の中に入ったのを確認すると、早速スペルカードを取り出した。

「そうね…。まずはここらかしら。」

紅符「スカーレットシュート」




◆――――――10分後――――――





「何?あなた、ふざけてるの?」

怒りのこもったレミリアの声が早苗の耳に入る。が、倒れている早苗にはほとんど認識できなかった。
服は所々大きく裂け、体は傷だらけ。左腕の肘があらぬ方向に曲がり、両足はひどい火傷でケロイド状になっていた。
辛うじて意識はまだあったが、激しい痛みのせいで頭が朦朧とする。悔しさか、痛みのせいか、涙が止まらない。

「なんなのよこいつ…。期待はずれもいいとこだわ。殺してやろうかしら。」
「お嬢様。」
「…わかっているわ、咲夜。黙ってなさい。」

門の影で待機していた咲夜が忠告する。殺してはいけない。それがルールだ。

「でもほんとに腹が立つわ。自機になったとか、わざわざ得意気に報告に来たと思ったらコレ?
 それに何?その格好。こんな実力で、霊夢の真似でもしてるつもりかしら。不愉快よ。」
『ドカッ!』
「っうぐぅ!!!」

レミリアが早苗の腹に蹴りを入れる。痛みでうずくまる早苗だが、それ以上の抵抗はできない。

「…す゛びま゛……ぜん、も゛う…ゆ゛るしで…くだざい…………!」

涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で、早苗が声を搾り出して懇願する。
そのあまりの醜さにレミリアは嫌悪し、今度は顔面に蹴りを入れる。

『バキ!』
「!!!…………あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

早苗が絶叫を上げる。鼻の骨が折れたようだ。ドクドクと鼻血が噴流する。
…ふと、レミリアはある違和感を覚える。なんだろう…、この感じは。
遠い昔にも感じた、この忘れかけていた感覚。獲物をいたぶる、残虐な思考。
咲夜がここに来たころから、だんだんと薄れていったような気がする。これは…


"楽しい…?"


早苗の折れて2倍ほどに膨れ上がった左腕に、レミリアは視線を合わせる。
あれを足で踏みつけたら、どんな声で鳴くのだろう。もう怒りの感情などなくなっていた。とても気分がいい。
ためしに少しだけ足でつついてみる。

「……ひぎぃ!!!!」

痛みに身をよじらせる早苗。もう少し強くつついてみる。

「……い゛だい゛ぃい゛い゛い゛!!!!!」

思い切り踏みつける。

「!!――――ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
「お嬢様!おやめください!」

たまらず咲夜が制止しようと飛び出して来る。うっとおしい。

「黙ってろと言ったのが聞こえなかったのかしら?邪魔よ。」

そう言うとレミリアは、手加減もせず咲夜を殴りとばした。殴られた咲夜は吹っ飛び、門壁に激突して動かなる。
再び早苗を見下ろす。先ほどの踏み付けが相当痛かったのか、いまだにのた打ち回っていた。

「あら、まだまだ元気そうじゃない?人間も意外とタフね。」

レミリアは次の虐待方法について考える。目を潰そうか?それともグングニルを突っ込んでみようかしら?…流石にそれは死にそうね。
よし決めた、足を切断しよう。火傷が目障りだわ。レミリアはグングニルを取り出すと早苗の右足目掛けて…


「水符!ベリーインレイク!!」


突如頭上に大量の水泡が現れる。直後、それらはレミリアに向かって猛スピードで落ちてきた。
日傘のせいでレミリアの反応が遅れる。とっさにかわそうとするが、避けきれず、直撃。
それに巻き込まれるよりも早く、魔理沙が早苗を回収する。

「ぐああああああああああ!!!」

流水は吸血鬼の弱点、体の自由を奪う。日傘も吹き飛ばされ、直接日の光を浴びるレミリアは、身を焼かれる痛みに悶え苦しんだ。

「おい!早苗!しっかりしろ!」
「これはひどいわね…。」

早苗を安全な場所に移動させた後、魔理沙とパチュリーが簡単な治癒魔法をかけ、とりあえずの出血を止める。

「魔理沙、咲夜をお願い。」
「あ、ああ。」

魔理沙が咲夜に駆け寄る。軽い脳震盪を起こしているだけのようだ。命に別状はない。
一方パチュリーは、這い逃げようとするレミリアに近づき、対吸血鬼用の気絶魔法をかける。気絶したのを確認し、日陰に移動させた。
先刻の轟音を聞きつけ、美鈴も門番小屋から何事かとやってくる。

「な、何ですか!?さっきの音は?」
「美鈴、丁度いいところに来たわ。レミィ達を運ぶのを手伝ってちょうだい。」
「パ…パチュリー様!?これは一体…。」
「魔理沙、貴方はその子を永遠亭に連れて行ってあげて。その怪我、私じゃ完全には治せないわ。」
「わかった…。」

魔理沙は早苗を背負うと、瞬く間に飛び去り、見えなくなった。
パチュリーは空気を固めた担架を作り咲夜を乗せると、頭を揺らさないように細心の注意を払いながら館の中へ運んだ。
そのあとを、レミリアを背負った美鈴が続く。

「あの…パチュリー様?一体何があったんです…?」
「…いつかのために、気絶魔法を習得しといてよかったわ。ここにいる間は、対吸血鬼魔法はいくらあっても困らないわね。」
「あの…。………。」

美鈴は聞くのをやめた。





――――――――――→永遠亭

「また自機を逃してしまったわ!」

永遠亭の姫、蓬莱山輝夜が、地団駄を踏む。早苗のように自機にこだわりを持つものは、幻想郷に何人かいるが、輝夜もその1人だった。

「姫、朝から何回目ですか…。姫はそんなに活動派じゃないし、別にいいじゃないですか。」
「自機になって喜んでたあなたに言われたくないわね。」

ギクリとする鈴仙。
輝夜ほど執着していなかったとはいえ、初めて自機に選ばれたとき、嬉しく思うところが一切無かったと言えば、嘘になる。
誰にだって自己顕示欲は多少あるのだ。

「しかもこんな年端もいかない小娘に…。」

輝夜は新聞を畳に叩きつけた。見出しにはデカデカと"守矢の巫女が謎の宝船を追う!"と書かれている。





迷いの竹林も、空から行けば、迷わない。今日は霧も薄かったため、魔理沙はまっすぐ永遠亭に辿り着くことができた。

「おい誰か!急患だ、開けてくれ!」

魔理沙が門を叩く。しばらくして、門がギギっと開き、1匹の妖怪兎が姿を現す。

「そんなに叩かなくても聞こえてるよ…、って魔理沙じゃん。どしたの?」
「ああ、てゐ、怪我人だよ!すぐ永琳を呼んでくれ!」

そう言って背負っている早苗を見せる。てゐは早苗の顔を見てギョッとした。血と涙でグシャグシャの顔。鼻はつぶれ、目の焦点は定まっていない。

「わ…わかった。診療室に案内するから、ついてきて。」

慌てて魔理沙を招き入れるてゐ。
てゐに連れられて小走りで診療室に向かう。そのあいだも早苗は「ゆるじてくだざい…。ゆるじてくだざい…。」と、うわごとの様に繰り返し呟いていた。









「大丈夫よ、治るわ。完全に骨が砕けてたから、左腕は少し時間がかかるけど。」

早苗の治療を終えた永琳が、手術室から出てきて言った。それを聞いた魔理沙が、ホッと胸を撫で下ろす。

「よかった…。私は葬式が大嫌いだからな。」
「…まあ、命に係わるような怪我は無かったけどね。でも、もう少し遅かったら、左腕や両足はダメだったかもしれないわ。もう心配ないけど。」
「そうか…。いろいろと悪いな。」
「いいのよ。貴方だって、ボランティアなんでしょ?」

永琳がにっこりと微笑む。少し照れ臭くなって、魔理沙は帽子で顔を隠した。

「それよりも何があったの?彼女の傷、普通じゃないわ。」
「ああ、私だって初めから知ってるわけじゃないんだけどな…。」

とりあえず魔理沙は自分が見た限りのことを永琳に伝えた。
朝から本を物色しに、大図書館に行っていたこと。急に顔色を変えて飛び出していったパチュリーのこと。そして、門前で見たレミリアのこと。

「そう…。あの吸血鬼が…。」
「あんなことする奴だとは思ってなかったぜ。大方人間なんて、食い物か遊び道具ぐらいにしか思ってないんだろうな。」
「一応吸血鬼の契約があるから、殺したりはできないはずなんだけど…。」
「わかるもんか。少なくともあのときパチュリーが気が付かなかったら、間違いなく早苗は殺されてたぜ。」

魔理沙が憤りながら言うが、普段のレミリアを知る永琳には、にわかには信じられなかった。
所詮は悪魔ということだろうか。

『ゴーン』

時報の音に、時計を見上げる2人。時刻はとうに夕刻を過ぎていた。

「あらもうこんな時間?あなたはどうするの?夕食ぐらいなら、御馳走するけど。」
「いや、紅魔館の方も気になるし、もう帰るよ。早苗のこと、よろしく頼んだぜ。」
「わかったわ、まかせて頂戴。」

魔理沙は永琳に会釈すると、夕闇の空に飛び立って行った。

「さてと、夕食の準備をしなきゃ。」

足早に台所へ向かう永琳。襖の向こうで聞き耳を立てていた輝夜に、気づくことはなかった。









皆が寝入った深夜、暗い病室で寝息を立てる早苗の傍らには、輝夜の姿があった。

「私が自機になるために、貴方には万が一にも復帰されたら困るのよ…。」

輝夜は布団を剥ぎ取り、包帯まみれの早苗の体を抱き上げる。
辺りを見回し、誰もいないことを確認すると、輝夜は早苗を抱えたまま永遠亭を出て、迷いの竹林へと向かった。
竹林の中には、月の光も届かない。暗闇の中を笹の葉が擦れ合う音だけが、不気味にこだまする。
輝夜は適当な地面に早苗を置いて距離をとった後、物陰に隠れて待った。

しばらくすると、人でも動物でもない何かの気配が集まりだす。闇と血を好む妖獣たちが、人間の匂いに釣られて集まって来たのだ。

「ニンゲン…。」
「チノニオイ…。」

たちまち妖獣たちが眠っている早苗の回りを取り囲む。
はじめは警戒して匂いや妖気を探っていたが、一匹の妖怪狼が、たまらず早苗の足に噛み付いた。

「…………………!!!!!!!!!!!ぎゃああぁああぁぁあああああ!!!!!!!!!!!」

突然の激痛に、早苗は目を覚まし、絶叫する。
これを契機に、他の妖獣たちも次々と早苗に喰らいつく。

「!!!――いだい゛いぃいい゛いぃい゛ぃぃ!!!!!… …あ゛ああ゛!――な゛に…が……! …だれ゛か…ぁ ず…げで …ぁ゛――ぃ――――――」

その牙は腕を引きちぎり、腹を喰い破り、臓物を引きずり出す。大量の血が噴出し、非常に生臭い。
眼球が飛び出すほど目を見開いて泣き叫んでいた早苗だったが、すぐにその声は聞こえなくなった。代わりにぐちゃぐちゃと肉を貪る音だけが辺りに響く。
輝夜はそれを見届けると、薄ら笑いを浮かべて永遠亭へと帰っていった。





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某日 文々。新聞 一部抜粋


○月×日、永遠亭近くの迷いの竹林にて、仰向けで倒れている女性の死体を、竹林の見回りをしていた藤原妹紅(人間)が発見した。
調べによると、死体はほとんど骨だけのような状態だったため身元の特定は難航するかと思われたが、身に着けていた髪飾りから東風谷早苗(人間)であると断定。
遺体は同日の内に守矢神社へと運ばれた。
早苗氏は一週間ほど前から行方が分からなくなっており、行方不明前日まで彼女を治療していた医師、八意永琳(人間[自称])は、
「まさかあの状態で動けるとは思わなかったわ。しっかりと監視をしてなかった、私の責任ね…。」(永琳)
と涙ながらに語った。当時早苗氏は重度のストレス障害だった疑いもあり、錯乱して永遠亭を抜け出したところを竹林の妖獣に襲われたものと思われる。
ストレス障害の原因については、現在調査中。
次回の自機入りが確定していただけに、非常に悔やまれる事件となった。ご冥福をお祈りする。

葬儀のご案内………………(以下略



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ある日の昼下がり、博麗神社には霊夢と輝夜の姿があった。

「あら、結構似合うじゃない。どこからどうみても、東風谷早苗ね。」
「…蓬莱山輝夜として出るのは、ダメだったのかしら?」
「しょうがないでしょ。もう早苗が自機って、外の世界では決まっちゃったし。あんたがやりたいって言ったんだから、そのくらい我慢しなさい。」
「…わかったわよ。」

髪を緑に染め、青巫女衣装に身を包む輝夜。脇がスースーして落ち着かない。

「あとそれから、もうちょっと早苗っぽく喋りなさいよ。」
「早苗っぽく………ですか?」
「上手いじゃない。早苗っぽいスペルカードの練習もしといてね。本人より貴方のほうが役立ちそうだし、期待してるわ。」
「はい…。」

何か釈然としなかったが、念願の自機入りを果たした輝夜であった。




初投稿


早苗さんの扱いがひどいけど、別に嫌いじゃないです。むしろ好きです。ぐへぇ。
紅魚群
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2009/03/19 18:03:25
更新日時:
2009/03/20 07:07:36
分類
早苗
霊夢
魔理沙
紅魔館
永遠亭
微グロ
1. 名無し ■2009/03/19 18:49:30
早苗さんのイタさがツボった。

けど自機昇格おめでとう。楽しみにしているからね。
2. すぐ自慢する ■2009/03/19 19:42:16
フルーツはこれだから困るよな
3. 名無し ■2009/03/19 20:19:51
自業自得だよ早苗ちん
4. 名無し ■2009/03/19 20:26:56
本当に早苗さんならやりそうだ

自分的には輝夜が自機でも嬉しいんだが
5. 名無し ■2009/03/19 20:51:59
まさかの輝夜エンド。フルーツざまぁw
6. 名無し ■2009/03/20 22:32:18
早苗さんが愉快だった
7. 名無し ■2009/03/22 14:42:30
調子こいた早苗さんはかわいいな!
8. 名無し ■2009/03/29 10:11:15
早苗はともかく、咲夜の方は可哀想だと思った
2人が気付いた後の気まずさとか見てみたい
9. 名無し ■2009/04/18 22:05:46
そういえばなんでここじゃ早苗がKYだったりゴミだったりするのが多いんだ?w
10. 名無し ■2009/07/30 04:56:17
↑そりゃ早苗さんだからとしか言いようがないな、アリスだからと同じさ

しかしあれだね、やはり自己顕示欲は身を滅ぼすね
11. 名無し ■2014/06/02 23:35:34
輝夜=早苗
ハッ!!まさか今まで俺が早苗だと思っていたのは全部輝夜だったんじゃ…。
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