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『ハラペコラムネとマンプククッキー』 作者: ぷぷ

ハラペコラムネとマンプククッキー

作品集: 2 投稿日時: 2009/07/03 15:10:58 更新日時: 2009/07/04 18:41:23
1、
「いただきまーす!」

ある日の夜。 紅魔館、ダイニングルーム。
美鈴は上機嫌に夕飯を食べていた。
「ううー、やっぱり咲夜さんの料理は最高です!」
「そう? 良かったわ。 喜んでもらえて」
咲夜がニコニコ顔で、美鈴の食事を眺めている。

今日魔理沙が来館した際に弾幕勝負を行った結果、館の一部が破壊されてしまった。
咲夜と美鈴が修理に当たっていたのだが、修理中に咲夜の頭上に、彼女の頭程度の
大きさの石が落ちてきた。
咄嗟に気がついた美鈴が、寸での所で石を破壊し、咲夜を救ったのだ。
人間である彼女に直撃していたら、命にかかわっていただろう。
そのお礼も兼ねて、咲夜が美鈴にご馳走してあげている、という所だ。

━━━ やっぱり、美味しいって言ってもらえると嬉しいわね。

紅魔館には、食に対してやたら注文が多かったり、無関心だったりするの住人が多い。
現に、今日パチュリーに夕食を持って行った際、「さっさと置いて去ってくれ」といった
感じの扱いを受けた。
咲夜は、ここまで自分の作った食事を喜んでもらえるのは、久方ぶりだった。


━━━ 今日はあまり材料が無かったから、大した量を作れなかった。
━━━ 今度はもっと沢山作ってあげよう。


少々下品にがっつく美鈴を見ても、今日の咲夜は注意はしなかった。








2、
翌日の朝方。

レミリアの就寝を確認し、仮眠をとった後、咲夜は出かけた。
用件は2件ある。
咲夜は、まず香霖堂へ向かった。
先日、財布を持っていくのを忘れて、ツケてもらった金額を、払わなければならない。



香霖堂につくと、先客がいた。
主人の霖之助の他、霊夢、永琳がいた。

「あら。 奇遇ね」
「あら咲夜、いらっしゃい。 お茶でも飲む?」
「気がきくわね、霊夢。 ありがとう」
「・・・霊夢。 その茶葉は店の売り物なんだが・・・」
「いいじゃない。 もう飲んじゃってるんだし。 霖之助さんにも入れてあげたでしょ?」
霖之助はため息をつき、勝手にしろとばかりに手を振った。

「丁度良かったわ、咲夜。 ちょっと協力してくれない?」
話を振られた咲夜は、永琳の方を向いた。
「何かしら?」
「この薬の、被検体になって欲しいのよ」
永琳は手に2つ透明の袋を持っていた。
中にはそれぞれ、青のクッキー、黄色の球状の物体が入っていた。
「これは何の薬なの?」
「満腹になる薬と、空腹になる薬よ」


永琳曰く、青のクッキーを食べると満腹に、黄色の球状の物 ━━ ラムネという
お菓子らしい ━━ を食べると空腹になる、とのこと。
「まだ試作の段階で、なるべく多くのデータを取りたいの。 永遠亭の住人には
 協力はして貰えたんだけど、それだと蓬莱人と妖怪兎くらいしか被検体が
 いないでしょ?
 そこで、永遠亭で1回無料で診察するっていう代わりに、霊夢と霖之助さんに
 薬を1個ずつ食べてもらったの」
「ふぅん・・・」
咲夜は永琳から袋を受け取り、じーっとそれらを眺めた。

「結構効くわよ、それ。 朝ご飯食べたのに、昼ごはんが食べたくなったもの。
 で、青い方を食べたら、それがスッて治ったの」
「僕は数日間何も食べなかったかのような感じがしたよ。 たった一つのお菓子で
 自分の腹具合が左右されるなんて、なんとも不思議な感覚だったね」
霊夢と霖之助が感想を述べている。
「妖怪の方が人間より効きやすいみたいなのよね。 ちょっと試してみてくれない?」

咲夜はまず、ラムネの方を食べてみた。
 ・・・なるほど。
「早朝に朝ご飯を食べて、夕方まで何も食べれませんでした、って感じがするわね」
「・・・それ私、普通なんだけど・・・」
「・・・ごめんなさい」
今日は昼を食べていくかい? と霖之助に言われて、目を輝かせて喜ぶ霊夢を
他所に、咲夜は今度はクッキーの方に手をつけた。
「・・・あ」
腹の感覚が、ラムネを食べる前に戻った感じがした。
「・・・すごいわね、これ。 中々良く出来てるじゃない」
「うん・・・ よく出来てはいるんだけど・・・」
永琳が顔をしかめている。
「? 何か不満なの?」
「・・・効きすぎる気がするのよね。 1個でこれだけ効いちゃうと、数個誤食した
 時が怖いわ」
咲夜は確かにそうかもしれない、と思ったが、
「それはどの薬でも一緒じゃないの? 用法、用量は守らないと危険というのは」
と言ってみた。 しかし、永琳の返事は冴えない。
「うーん・・・ それも一理あるけど・・・ ちょっと効き目は弱めで調整しようかと
 思ってるわ」
プロの立場として心配なのだろう。

「ところで、この薬の用途は?
 多分、ダイエットか何かのためかとは思うけど」
咲夜は尋ねた。
「それもあるけど、例えば食欲が減退しがちな夏場にラムネを食べることよって、
 食欲がわいてくる、とか。
 逆に食べ過ぎてしまった翌日に食事を少なめにするためにクッキーを食べる、
 とかね」
中々有用そうではないか。
「・・・便利そうね。 是非実用化して欲しいわ。
 ところで、この薬で満腹になったり、空腹になったりするのは『感覚』だけ?」
「いい質問ね。 その通り、脳と体の『感覚』だけを変化させるの。
 体の栄養量は、変わらないと考えてもらっていいわ」
成程ね、と咲夜は頷いた。 大体、この薬の特徴はつかめた。

「この薬、10個くらいずつ貰ってもいいかしら?」
咲夜は永琳に提案した。
「そんなに何に使うの?」
と、永琳が驚いたように聞き返したが、
「被検体は多くいた方がいいんでしょ?
 お嬢様と相談して、許可が出れば、紅魔館の面々にも試してもらってみるわ」
と咲夜は返した。
「協力してくれるの? ありがとう。 助かるわ」
永琳は目を細めた。 ラムネとクッキーを10個ずつ別の袋にいれ、咲夜に渡した。
「お礼は弾むわ。 今度、永遠亭に来て頂戴」
「楽しみにしておきますわ」

薬を受け取り、霖之助にツケの分を払い終えた咲夜は、次の目的地、人里へ
向かった。





「今日は、妖夢。 待たせちゃったかしら?」
「あ。 いえいえ、咲夜さん。 今来たばかりですよ」

人里の商店街。
十六夜咲夜と魂魄妖夢が、待ち合わせをした上で会っていた。
「今日はありがとうございます」
「お礼は終わってからでいいわ」
今日二人は、一緒にお菓子を作る約束をしていた。
咲夜が妖夢に教える形で、だが。
「幽々子様があの宴会の日以来、プリンが食べたいとうるさくて・・・」
「半分冗談のつもりで持って行ったんだけどね・・・」

数日前博麗神社で宴会が行われた際、最近お菓子作りに凝っている咲夜が、
試しで作ってみたプリンを持って行ったのだ。
酒には合わないので、売れ行きはあまり良くはなかったが、何人かは
興味を持ったようだった。
そのうちの一人が、西行寺幽々子と言うわけだ。
「早くプリンを持ってこないと、半霊を食べちゃうぞーって脅されました」
あの亡霊の姫君がそういうと、冗談に聞こえないから怖い。


二人は昼食を共にした後、人里を歩いて回り、プリンの材料をそろえた。
「ねえ妖夢。 申し訳ないんだけど、少し手伝ってくれない?」
「構いませんよ。 私にできる事なら」
「ありがとう。 じゃあ、お肉屋さんに行きましょう」
「?」
咲夜は店に向かう道中で、昨日起きた出来事 ━━ 美鈴に助けられたこと、
彼女に夕飯を作ってあげた事 ━━ を話した。
「なるほど。 今度は大量に材料を買いこんで、美鈴さんに御馳走してあげたいんですね?」
「そういう事。 丁度これも手に入ったから、美鈴のみならず、紅魔館の皆に
 美味しいって言ってもらえるチャンスなのよ」
そう言って咲夜は、ポケットからラムネとクッキーの入った袋を取り出した。
肉屋や八百屋などを回り、食材がそろう頃には、咲夜は妖夢にその薬の説明を
終えていた。
咲夜で持ち切れない荷物は、妖夢に持ってもらっている。
「・・・で、この薬でお腹を減らしてもらえば、パチュリー様のように、食事にあまり
 興味を示さない方にも、料理を楽しんでもらえるんじゃないかな? って
 考えたの。 多少食べ過ぎても、翌日はクッキーを食べてもらえば問題は無いし」
「料理を作る身としては、やっぱり美味しいって言ってもらえると嬉しいですからね。
 幽々子様は大抵のものを美味しいと言ってくれるので、普段あまり意識は
 しないのですが」
「もしあなたの料理が美味しくなかったら、大量に食べたりしないわよ」
そうですかね? と照れながら人差し指で頬をポリポリ掻く妖夢を連れて、咲夜は
紅魔館へ向かった。







3、
紅魔館の厨房。

咲夜があれこれ妖夢に指示を出し、妖夢は頷いたりメモをとったりしながら、
プリンを作っていた。

「カラメルも作る?」
「んー・・・ お願いします。 作ってみたいです」

髪の色も似ていることから、二人はまるで姉妹のようだった。


「・・・よし。 あとは冷やすだけね」
先頃氷精より手に入れた氷を使い、プリンを冷やすという、最終工程に入った。
「さて。 じゃあ少し待ちましょうか。
 ・・・あ、今のうちに紅茶の準備でもしておこうかし・・・」

と、その時。

「さ、咲夜さーん!」
厨房の隣の食堂に、声が響いた。 美鈴の様だ。
「何? どうしたの?」
食堂へ向かう咲夜。 妖夢も続いた。
「魔理沙さんが来ましたー! 止めてくださいー!」
見ると、ドリフの爆破後の様な様相の美鈴。
咲夜は溜息をついた。
「図書館向かったの? 魔理沙は」
「そうです・・・ ごめんなさーい、また負けちゃいました」
咲夜は美鈴の元に歩いて行った。 美鈴はその咲夜の顔を見た。


明らかに、怒っている顔である。


咲夜が手をあげる。 美鈴はビクッと目を瞑った。 頭を叩かれると思ったのだ。

その手は確かに美鈴の頭に降ろされた。
しかし、それはゆっくりとしたものだった。 そして、その手は美鈴の頭を優しく撫でた。

キョトンとする美鈴。 二人を交互に見る妖夢。
「・・・妖夢。 悪いけど、ちょっと待っててくれる?
 仇を取ってくるわ。 あの黒白め・・・」
肩を怒らせながら、咲夜は図書館に向かって行った。
「あ・・・ 待って下さーい! 咲夜さーん!」
美鈴がそれを追って行った。

残された妖夢は、待つしかなかった。
「みょん・・・」




ヴワル魔法図書館では、パチュリーと魔理沙の弾幕勝負が行われていた。
「ヘヘッ、今日の私は絶好調だぜ!」
今日、魔理沙は随分と好調らしい。
「うう・・・」
パチュリーは防戦一方だ。
「行くぜ! マスタースパーク!」
魔理沙の放ったマスタースパークをまともに受けたパチュリーは、むきゅーと言って
倒れた。

「よーし! じゃあ今日も本を借りていくぜ!」
鼻歌を歌いながら、本の物色を始めようとする魔理沙。

しかしその時。

「待ちなさい」
彼女の背後から、聞き覚えのある声がきこえた。
咲夜だ。

「なんだ? お前も私とやるか? 言っておくが今日の私は・・・」
魔理沙が言い終わるのを待たずに、咲夜は無数のナイフを魔理沙に投げた。
「うおっと!? いきなりすごいやる気だな!」
魔理沙は器用にそれをよけつつ、八卦炉を構える。
しかし、気がつくと魔理沙は、四方八方360度、ナイフに囲まれていた。
「・・・今の今まで、とっても機嫌がよかったのよ?私。 
 よくも邪魔してくれたわね!」
「うわ! ちょ、ちょっとタンマ!」
魔理沙は次々と咲夜の弾幕を被弾した。
咲夜の怒りは激しく、魔理沙がボロボロになっても尚やめない。
「うう・・・ 降参だよ・・・ もうやめてくれ・・・」
魔理沙は、目に涙を浮かべている。
「昨日も今日も、どれだけ紅魔館と住人を痛めつけてくれれば気が済むの?
 あまつさえ、人のオフの時間に茶々を入れてくれて・・・!」
咲夜は魔理沙にナイフを向けた。
「ひっ・・・!」
怯えるように頭を抱える魔理沙。

「咲夜さん! ストップストップ! もう勝負はついてますって!」
美鈴が慌てて仲裁に入った。
咲夜はそれで毒気を抜かれた様子で、ナイフをしまった。
「・・・魔理沙。 今日はこの辺で見逃してあげるわ。
 帰りなさい。 あと、偶には本を返しに来て頂戴」
咲夜はパチュリーに一礼し、小悪魔と美鈴の傷が大したことがないことを確認すると、
図書館から去っていった。


━━━ どうしたんだよ、あいつ。 やけに怒っていたな

咲夜が去ったのを確認してから、魔理沙はゆっくりと起き上った。
「そういうわけだから。 今日は引き返して」
「・・・ああ、わかった。 今度来る時は、全部とは言わないけど、借りた本を
 持ってくるよ」
パチュリーに帰るよう促され、魔理沙は帰るとした。

その時。
ふと魔理沙が周辺の床を見ると、青のクッキー、黄色の球状の何かが入った
袋が落ちていた。

はて? 何だろうこれは?

魔理沙は首を捻ったが、青のクッキーの方を持ち帰ることにした。
これぐらいはしても罰は当たらないだろう。

「じゃあな、パチュリー」
クッキーの入った袋をポケットにしまい、魔理沙は帰路についた。




「あれ?」
魔理沙が帰った後、図書館の掃除をしていた小悪魔が、ラムネの入った袋を発見した。
「パチュリー様。 何ですかね?これ」
主人の元に行き、彼女に見せる小悪魔。
「何かしらね。 私のものじゃないわ」
「となると、魔理沙さんですかね?」
「・・・かもしれないわね。 ちょっと調べてみようかしら」
パチュリーはラムネを袋から出し、においをかいだ。 わずかに、甘い匂いがする。
舐めてみようか? ・・・いや、万が一毒だったらどうしよう。

「ん? パチュリーさん。 それ、なんですか?」

 ・・・適任がいるじゃないか。
小悪魔と同じく掃除をしていた美鈴が質問を投げてきたので、パチュリーは
「ああ、美鈴。 これ、魔理沙が置いて行ったお菓子みたいなの。
 食べてみない?」
と美鈴にラムネを手渡した。
「ぱ、パチュ・・・」
慌てる小悪魔の口を抑えるパチュリー。 美鈴は訝しげながらも、ラムネを口に入れた。

「んー・・・ これは・・・」
美鈴がそれを噛み砕いて飲み込んだ。
「どう? 美鈴。 おいしい?」
「ええ、程よい甘さでなかなかおいしいです」
「・・・ふーん。 じゃあ私も食べてみようかしら?」
パチュリーもラムネに手をつけた。 確かに美味しいかもしれない。
「変わってるけど、数粒齧る位なら結構いいかもしれないわね」
「じゃあ私にも下さいー」
と小悪魔も食べてみた。 小悪魔は、へぇ〜こういう味なのか、といった感じの表情を
しながら、ラムネを食べていた。 どうやら気に入ったようだ。


「・・・あれ? なんかすごくお腹が空いてきました・・・」
不意に美鈴がそんな言葉を漏らした。
「・・・そうね。 なんでかしら、私もなのよ」
パチュリーが続いた。
「私もなんかすごく空いてきました。 まだお夕飯には大分早いんですけどねー・・・」
小悪魔も強烈な空腹感を感じてきたようだ。
「うう・・・ パチュリー様。 これ、食べてもいいですか?」
美鈴がパチュリーに、ラムネを食べてもいいかと尋ねた。
「いいんじゃない? 私のものじゃないし。 ・・・あー、でも小悪魔にも
 3個上げてくれない?」
「了解です〜」
二人はラムネを分けた。 美鈴は4つ、小悪魔は3つ。 一遍に口に入れた。








4、
「待たせたわね」

咲夜が食堂に戻ってきた。
厨房でプリンをじーっと見ていた妖夢は、咲夜の声を聞いて食堂に姿を現した。

「咲夜さん、お帰りなさい。 黒白退治は終わったのですか?」
「ええ。 滞りなくね。 さ、試食してみましょ?」
二人でプリンの入ったケースを食堂に運び、適当な皿とスプーンを用意する。
適当な大きさに切り取って皿に運び、カラメルをかけて出来上がり。

「じゃあ、頂いてみましょうか」
「はい!」
二人同時に口に運ぶ。

「うーん・・・ まろやかで柔らかい味ですねー おいしいです!」
「初挑戦でこれだけの物が作れるなら十分ね」
「咲夜さんのおかげです。 ありがとうございます!」
「フフ、ありがと・・・」

妖夢は少々不器用な所があるが、学習能力が無い子ではない。
何度か作れば、直ぐに自分のレベルに到達するだろう。

ニコニコ顔でプリンを食べる妖夢を見て、咲夜はフッとデジャヴを感じた。


━━━ ああ。 昨日の、美鈴だ。


笑顔で夕飯を食べる美鈴。

美鈴のみならず、咲夜も幸せだった。
食卓の笑顔は、その場の全員を幸せにするのだ。
妖夢にも、その幸せを経験してもらいたい。
そこで、咲夜は提案した。

「ねえ妖夢。 図書館に美鈴とパチュリー様と小悪魔がいるの。
 彼女たちにも食べてもらわない?」
妖夢は心配そうに
「だ、大丈夫ですかね? 他人に出せるものでしょうか・・・?」
と聞いてきたが、
「このクオリティなら大丈夫よ」
と咲夜は返した。

適度な大きさにプリン切って皿に移す、という事を三回繰り返した後、食事運搬用の台車に
それらを乗せて、咲夜と妖夢は図書館に向かった。








お腹が空いた。


2,3か月、何も食べていない感じがする。
これ程まで空腹を感じるのはいつ頃ぶりか。
いや、一度も経験していないかも知れない。


美鈴はその場に蹲ってしまった。 立つ元気すらないらしい。


はらがへったなにかたべたいおにくがたべたいおさかながたべたいやさいがたべたい
くだものがたべたいぱんがたべたいこめがたべたいにくがたべたいにくがたべたい
にくにくにくにくにくにくにくにくにくにくにくにくにくにくにくにくにくにくにくにく



「どうしたの? 美鈴」

めいりんはかおをあげました
めのまえにはいざよいさくやさんがいました

「あ、立てるのね? 大丈夫?」

さくやさんがたっています
なにかをはこんできたようです
さくやさんはめいどちょうです

「顔色が随分悪いようだけど・・・ 風邪でも引いたの? 目も充血しすぎておかしいわよ?」

さくやさんはとってもゆうしゅうなにんげんです
とてもきれいでかわいくてあたまのいいにんげんです
そう、さくやさんはにんげんです

「ちょ、急に寄りかかられても困るわよ」

そう、さくやさんはじんにくです

「大丈夫ですか? 美鈴さん」
「・・・休みましょう?美鈴。 休憩室に連れて行くわ。
 妖夢、度々申し訳ないんだけど、この台車を・・・」

そう、さくやさんはごはんです






ガブッ





「キャアアアアアアアアアアア!!!」
図書館に、悲鳴が響いた。



美鈴が、咲夜の首筋に噛み付いていた。

目を見開いて口をパクパクさせる咲夜。
正気とは思えない瞳で、今度は咲夜の腕に噛み付く美鈴。
あまりに突然な事に、呆然とする妖夢。

「あぐぅ!!」
仰向けに倒される咲夜。
美鈴は、今度は咲夜の下腹部に噛み付いた。

「痛い! いだい、いだい゛い゛い゛い゛!!
 やめて美鈴!! やめてぇぇぇぇぇぇ!! 」
そんな咲夜の願いは全く届いていないかの様だ。 

「おいしい! 咲夜さん! すごく美味しいですよぉぉ!」
満面の笑みで咲夜の腹に、手と口を突っ込む美鈴。 ニコニコ顔で『食事』をする。

「がぁぁぁぁ! 食べ・・・ ないで・・・ げほっ! ゴホッ!!」
咲夜が吐血した。 彼女の腹から、内臓が見えている。

「美鈴さん!!! やめてください!!!」
妖夢が美鈴を抑えようと、必死に美鈴を咲夜から引き離そうとしている。
しかし、力が違いすぎる。


ふと、美鈴の手と口が止まった。 口から、腸の切れ端がはみ出ている。
「め、美鈴さん・・・」
ホッとする妖夢。
「・・・妖夢さん」
美鈴が、呟く様に妖夢に話しかけた。
「な、何ですか?」
出来るだけ冷静に。 冷静に。
妖夢は震える声で返答した。

美鈴が妖夢の方に向いた。
妖夢は美鈴の表情を見た。




拳の後に。




「ブッ!!!」
殴られた妖夢は、壁際まで吹っ飛ばされた。
「あ、あああ・・・」
鼻の骨は折れているかもしれない。 鼻血が止まらない。

「邪魔、ですよ」

遠目でもわかる。
美鈴は、鬼の形相に、鬼の覇気を放っていた。

「ひっ・・・!」

その恐怖に耐え切れず、ガタガタと震えだす妖夢。



その時、妖夢は肩をガシッと捕まれた。
振り向くと、小悪魔が居た。
「今日は、妖夢さん」
小悪魔は会釈した。
「・・・あ、え、えと・・・」
自分が鼻血を出していることも忘れて、顔も拭かずに小悪魔と対面する妖夢。
爽やかに笑う小悪魔の口の周り、そして襟元は真っ赤だった。


「よ、よう、む・・・」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「に、にげて・・・ 早く・・・」
図書館の主、パチュリーの声だ。
妖夢は彼女の方に振り返った。


 ・・・自分の目はおかしくなったのだろうか?

パチュリーの左腕が、完全に無かった。
パチュリーの右足が、半分無かった。
パチュリーの片目が、パチュリーの、の、の、の、

「はや、く・・・」
「あ、ああああ・・・・」
ガチガチと歯を鳴らし、涙を流す妖夢。

「妖夢さん」
そんな状況でも小悪魔は、いつもの声のトーンで妖夢に話しかける。
「は、はひ・・・」
恐怖に引きつった顔で、妖夢は小悪魔に返答する。
「妖夢さんは、半人半霊なんですよね?」
質問する小悪魔。
「え、は、はい。 そうれす、はんれーです・・・」
これが今の妖夢にできる、精一杯の返答だった。

「半人、ですよね?」
「はい・・・ はんじんです・・・」
「じゃあ、人肉率50%ですね!」







「やめてぇぇえぇぇぇぇぇぇ! お願い!!!」

「お、じょう、ま・・・ たす、け・・・ くだ・・・ さ・・・」

「ぐぎゃあああああああああ!!! 痛い!!! 痛いぃぃぃぃ!!!!」

「あ・・・ う・・・」

「うう゛!! がぁぁ!! うぎぃ!!」

「         」











5、
「うーん・・・ イマイチですね」


『事』が起きてから30分後。

美鈴がどこか残念そうな、失望したような口振りで言った。

「食材としても半人前でしたね。 妖夢さんは」
「イマイチ、ですか?」
「食べ比べて見たらどうです?」

美鈴が小悪魔に『腕』を差し出した。
齧り付く小悪魔。

「おー・・・ これは濃密な味ですね! さすが100%は違いますね!」
「でしょ?」
ニコニコ笑いながら『食事』をする、2名。

髪の色や長さが似ていることから、2名はまるで姉妹のようだった。








昨日に続き、今日も美鈴は笑顔で『食事』をしていた。
昨日に続き、今日も『食事』を用意したのは咲夜だった。









fin
・薬は用法&容量を守り、正しく服用しましょう。
・飲みすぎ、食べすぎには注意しましょう。

産廃には初投稿です。



※9の方
御指摘感謝。 修正しました。
ぷぷ
http://blog.livedoor.jp/pupusan/
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2009/07/03 15:10:58
更新日時:
2009/07/04 18:41:23
分類
メイン:咲夜
美鈴
美食家:小悪魔
引き金:パチュリー
とばっちり:妖夢
1. 名無し ■2009/07/04 00:27:39
呂律の回らない妖夢に萌えた
2. 名無し ■2009/07/04 01:04:50
本能は抑えられんなぁw
3. 名無し ■2009/07/04 01:07:31
もう片方もあるんだよね?
4. 名無し ■2009/07/04 02:31:45
こういう、ホンワカと残酷の混ぜ物はたまらんですタイ
5. 名無し ■2009/07/04 02:43:24
これなんてバイオハザード?(
6. ■2009/07/04 03:16:31
これはなかなかの良作。
7. 名無し ■2009/07/04 03:29:56
まりさは満腹過ぎて飢え死ね
8. 名無し ■2009/07/04 10:27:38
パチュリーは何だかんだで命だけは助かってそうだなw
9. 名無し ■2009/07/04 21:49:23
こういうほのぼのした展開が急転直下するようなのは大好きです。
10. 名無し ■2009/07/04 23:25:49
満腹クッキーの方はリアルで食べたことあるけどかなり効果あったな
魔理沙サイドも見たかったぜ
11. 名無し ■2009/07/05 20:03:00
タグに加害者:魔理沙をつけくわえたらいいと思う。
12. 名無し ■2009/07/05 23:13:21
可愛そうで見ていられない、とても素敵なお話でした
妖怪が極限まで飢えたら、まぁこうなりますよね
13. 名無し ■2009/07/06 01:00:06
魔理沙は胃の中のものを残さず吐き出しても収まらない満腹感にのた打ち回って
その苦痛のあまりやがて脳が自死を選択するよ
14. 名無し ■2009/09/05 23:17:16
美鈴が妖怪だってことを改めて思い出させられました
その頃魔理沙は大量の胃液と血をを流しながら喉に
手を突っ込んで中身を必死に掻き出そうとしているんですねわかります
15. 名無し ■2010/05/14 19:08:14
魔理沙はどうなったんだろうな…
今度自分で試してみるか
16. 名無し ■2010/05/30 15:53:29
これ全部魔理沙のせいじゃねえかああああ
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