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『ルナぬるいじめ』 作者: 極楽

ルナぬるいじめ

作品集: 2 投稿日時: 2009/07/19 11:07:18 更新日時: 2009/07/19 20:07:18
魔法の森の深部にある巨大な木。
いつから立っているか判らない古い古い大木の中に、妖精たちの住処があった。
外見からは判らないが、くり抜かれた幹の中に、小さなテーブルやベッドが置かれている。
ミニチュアの家具が詰まった内部は、古くねじくれた外見からはまったく想像できない。
大木に住む妖精だけが知っている、誰も知らない安全な住処だった。

昼食の後。
小さなテーブルを中心に、三匹の妖精が談笑していた。
ふとテーブルに視線を落としたスターサファイアは、隣に座ったルナチャイルドの指に、真っ赤な爛れを見つけた。
人差し指の第三間接から、付け根までの基節の皮膚が、ハニカム状に破れていたのだ。
炎症を起こした皮膚が、沼沢地のように薄皮一枚剥がれている。

スターは好奇心をそそられた。
ルナったら、そんな傷をつけてどうしたの?
かぶれた部分は痛いのかしら。
それとも痒い?
触って見たい。引っ掻いてみたい……。
談笑していたスターは黙り込み、一挙に自分の思考の中に沈み込んでいった。
傷口に触れたら、ルナはどんな反応をするのだろう。
触って見たい、ああ、触って見たい、この気持ち。
ルナの弱点を見つけたような気がして、スターは静かに興奮していた。

何を考えているのか判らない、と言われる事が多いスターは、この日も例に漏れず、突発的な自分の欲望に従った。
おもむろに手を伸ばし、我関せずといった表情で、唐突にルナの人差し指に触れた。
サニーミルクと話していたルナは、突然の刺激にビクリと身体を振るわせた。

「ひゃっ……何よスター」

高い声を上げ、慌てて手を引っ込めるルナ。
胸の前で抱きかかえて、仏頂面でスターを見ていた。
スターは笑顔で疑問を口にする。

「これどうしたの? 痛い?」
「触んないでよ」

険しい視線をしたルナが、不機嫌に呟いた。
スターを警戒するように、ルナは膝の上に手を仕舞い込んだ。

「全然痛くないわ。何でこうなったのか知らないけど、痒いだけね」
「ふぅん」
「ルナはドン臭いもんね!」

元気なサニーミルクの声。
八重歯を覗かせ、笑顔で発言。
リーダーシップを取ることの多いサニーらしい、淀みなくルナを馬鹿にする声だった。

「急になっちゃったんだから、仕方ないでしょ」
「そんなだからルナはいつも逃げ遅れるのよ!」
「それは、いつも私が殿だからでしょう。今は関係ない」

わいのわいのと話す二人。
言葉の応酬を繰り返す二人の間で、スターはひたすら傷口のことを考えていた。
自分の求めるものが目の前にある。
エルサレムを目前にした十字軍のように、スターは熱狂に囚われていた。
使命感が燃え上がる。
スターはどうしても、ルナの指を弄り回したかったのである。

スターは立ち上がると、自分の部屋に飛んでいった。
以前、興味本位で盗んだ救急箱を、スターは使って見ようと思ったのだ。
テーブルに戻ったスターは、白塗りの箱をドンと置く。
真っ赤な八尾十字が目に痛い箱だ。
スターは軟膏を取り出すと、ルナに笑顔を見せた。

「おもし──せっかくだから、薬を使って見ましょ」
「何て言いかけたの? そのうち治るんだから、いらないよ」
「いいじゃん、やってみよ!」
「なんでよ」

頼もしいサニーの援護射撃を受けて、スターは圧迫するようにルナを見つめる。
慈愛に満ちた表情だが、有無を言わせず意思を押し通そうとする力があった。

「だから必要ないってば。だいたいそんな薬が、妖精に効くの?」
「効くに決まってるわ。なんてったって、私が持ってる薬なんだから」
「え、その理由はおかしいでしょ」
「ルナは怖がりね!」

煽るサニー、迫るスター、心底迷惑そうなルナ。
三者三様の表情だが、多数決という民主主義的な意思強制は、ルナを追い込もうとしていた。
なだめすかせること数十分、二人の粘着質な説得は、ついに指を差し出させた。

「……わかったわよ。はい。すぐ終わらせてね」
「もちろんよ」

スターは満面の笑みを浮かべる。
念願かなったときのような、神々しい表情だった。
スターははやる心を抑えながら、ルナの手をそっと持つ。
余ったほうの手で、鉄製の缶から軟膏をすくい上げた。
乳白色の軟膏が、スターの指にべっとりと付く。
ぷよぷよとした軟膏を、スターはゆっくりとなすりつける。
始めは穏やかに、傷口を確かめるように、表面をなぞった。

「──ッ」

冷たい軟膏と、スターの指に、ルナは声を上げそうになった。
自分で触るのとは違う刺激に驚いたのだ。
スターはすりすりと優しく、ルナの指を舐る。
傷口の全ての隙間に煉りこむように、しなやかに指を動かした。

「ぅぅ……」
「何かしら」
「な、なんでもないわよ」
「そう」

スターはおすまし顔で治療を実行。
表情には出さないが、このくらいで悲鳴を上げるなんてどうしたのかしら、と思っているような表情だった。
ルナはスターを心の中で叩きながら、不思議な感覚を覚えていた。
かぶれた傷口はかきむしりたいほど痒いときがある。
それが自分とは違う力加減で、傷口をこね回されていると、不思議な快感が伝わってくる。
痒みと痛みがごちゃ混ぜになった感覚。
もっと触ってほしいような、やめてほしいような。
嬲られている自分の指。
マゾ的な感覚がルナを捕らえ、このまま身をずっと身を任せていたいと思ってしまったのだ。

「痛かったら教えてね」
「ええ。早く終わらせて」

心にもないことを呟くルナ。
僅かに頬が熱かった。

「く……うぅ……!」

軟膏を擦り付けているだけなのに、ルナの切ない声が響く。
スターはにっこりと微笑んだ。
スターはスターで、自分の好奇心を満足させるまで、ルナの指を弄り回すつもりだった。
傷口の愛撫を通して、指の筋肉、繋がっている神経、骨の形まで把握していた。
指の内部に痛みを伝えることで、むず痒いような感触を、指の奥の神経に伝えることに熱中していたのだ。
皮膚を弄り回すことで刺激に敏感にし、心地よい痛みと痒みの境界線を、ルナの身体に押し付ける。
軽度な性感マッサージといったところだろう。
期待通りの反応を返すルナに、スターはどうにも興奮してきたのだ。

「いぃぃ……」

微量の艶の混じったルナの声が響く。
ルナの表情に、スターは心をツンツン刺激された。
親指と人差し指で傷口をつまみ上げ、破れた皮膚を引っ張るように、軟膏を擦りこむ。
こね回された傷口からは、赤い血が滲み、軟膏が痛々しいピンク色に染まっていた。

ルナは痛みと気持ちよさの先に快楽の切れ端を感じ、それを脳内で反芻していた。
スターは痛めつけながら、満たされていく好奇心に、満足感を感じていた。
真昼間の居間の中で、二人きりの世界が展開される。
自分の事を最優先にしてしまうのが、妖精というものなのである。
途中から静観していたサニーミルクは、コーヒーカップを持ったまま、引いていた。
サニーは口を半開きにして、汗が頬を伝っていった。
透明になる能力を使っていないはずなのに、サニーは自分がいなくなっているのではないかと、考えていた。

「はい、おわりよ」
「……ありがと」

僅かに上気した頬で、一仕事終えた二人。
心地よい満足感と、暖められた快楽神経。
二人は意味ありげな視線を交わしあう。
言葉にしなくても、伝わるものはあるのだ。

「あんたたち、おかしくない?」

サニーには伝わらなかった。
コミュニケーションとは難しい。
呆れかえったようなサニーの表情に、スターとルナは、顔を見合わせて苦笑したのだった。





おわり
塗りつけるからぬるいじめ……。
お読みいただき、ありがとうございました。
極楽
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2009/07/19 11:07:18
更新日時:
2009/07/19 20:07:18
分類
スターサファイア
ルナチャイルド
グロ表現なし
1. 名無し ■2009/07/19 21:03:58
この後、より強い興奮を求めてどんどん過激な傷口弄りを死ぬまで繰り返して、生き返って記憶無くしても性癖だけは引き継がれてまた繰り返し・・・という無限連鎖を想像した。
2. 名無し ■2009/07/19 23:17:06
是非続きを・・・
3. 名無し ■2009/07/20 19:30:26
ソフトだがちんこたった
4. 名無し ■2009/07/29 01:11:24
美しい・・・
なんて絵画的な風景・・・
5. 名無し ■2010/06/05 13:38:54
ぬるいじめだれうまw
この発想はなかったけどなんかエロいw
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