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『その狼は呪われている』 作者: タダヨシ

その狼は呪われている

作品集: 2 投稿日時: 2009/08/06 08:05:55 更新日時: 2009/08/06 17:05:55
 朝の空気が土を乾かす匂い。目にちくりちくりと陽が入る。

 目覚める。ここは樹の上。喉に痛みが走る。

「うげっ、げが……ぇぇえええ」

 詰まった悲鳴と同じくして昨日食べたものが口から漏れた。

 生まれたそれは地面に向かって肉色の縦線となって落ちる。

 粘ついた液体が土の上に撒かれる音がする。

 だが、気にすることは無い。いつもこんな調子だから。

 目覚まし代わりに喉からつぅとする気体が体の内側を愛撫する。

 お陰でもう眠気は意識に蝕まれてしまった。

「さて」

 樹の下へと向かう。根元には武器と相手の攻撃を防ぐ物が置いてある。

「ああ、くそっ!」

 さっき自分が生産した刺激臭のする水は、武器と防ぐ物に見事化粧を施していた。

「まったく、よくもまぁ」

 一部だけではなく全体に化粧がなされている。全くもって良心的に。

 だが、このままにしておく訳にはいかない。このままでは仕事ができない。

「悪いね、退いてもらう」

 手で仕事道具と偶発的にお知り合いになった肉色の液体を落とす。手触りは固かったり、滑らかだったりと様々。飽きなくて素敵。

 暫くすると、目の前の麗しき我が仕事道具は本来の姿を現した。

「さて、仕事」

 いや、待て。今度は自分の手に美しき肉色の化粧が付いている。つぅとする匂いが手と恋仲になってしまっては仕事に集中できない。

「洗うか」

 口だけは洗浄行為を発し、落ち葉の中に手を沈ませる。木々が落とした涙に自分の手に付着した液体を擦り付ける。

 お前達にもきれいな化粧を分けてやろう。

 そうやって親切に肉色の液体を落ち葉に全部提供する。

 樹から新たに葉が何枚か落ちた後、自分の手からはつぅとする水は消えていた。匂いも落ち葉の朽ちる腐臭で上品な位に和らいだ。

「そろそろか……」

 仕事道具を手に預ける。はっきり言うと、重い。

 おまけに、持てないと思って腕に力を入れると、何故か持てるのでいらいらする。

 捨てろという考えが何度も頭を過ぎった。

 だが、この重い荷物はどうしても必要なので、置いていく事はできない。

 濁った眼球を手元へと向けた。

 武器には小さな持ち手と平たく大きな刃が付いている。防ぐものには、表に紅い錆が付き、裏には持ち手と多くの引っ掻き傷が見えた。

「行こう」

 見上げると吐き気がする程に青い空と穢れの無い雲が見えた。



 純白の空気を卑しい毛皮で汚し、囚われることの無い風を淀んだ視線で侵す。

 今は空を飛んでいる。これでも一応天狗なのだ。

 だが、一番下っ端の白狼天狗だ。

 その扱いは非道いもので、生きる権利も認められていない。

 理由は肉食の白狼天狗が幻想郷の均衡を崩すやら、妖怪の山の秩序を乱すとか言われているが、きっと後付けだろう。

 たぶん白狼天狗の存在自体が気に入らないのだ。

 しかし、それでもこの体が生きているのには理由がある。 

 ある労働と引き換えに、生きる事が許されているのだ。

 それは、命がけで妖怪の山を防衛する仕事だ。

 何も知らん稚児、きれいな女、呆けに揉まれた老いぼれ。

 これらにも労働の要請は下る。従わないと階級の高い天狗に文字通りの意味で殺される。

 それも階級の高い天狗様の好きな殺され方で。

 さらに、生きる権利といっても、本当にただそれだけで、与えられるものは警備用の衣装と防衛する為の武器ぐらい。勿論、食事なんて無い。自分でいいものを口に運べという事か。

 何ともご立派な平等主義だ。感動の余り痰を吐きたくなる。

 そんな環境においても、上の天狗に対する熱い異議の念は無い。

 いつもの事だから。

 少なくとも自分の痩せた体がこの世に放り出される前からそうだった。

 暫く飛んでいると目の前に大きな流水が見える。妖怪の山の滝――仕事場だ。

 流れる水晶の様な滝の裏にまわる。そこには大きな穴が陰気に体を横たえていた。

 ここが自分の休憩所。いや、待機所か。

 穴の中は尖った岩しかなく、座ったり寝転がると体に刺さる。

 おまけに出口の前には滝がざあざあと走っている。だから、いつの日も穴の中には湿り気が挨拶をしている。さらに細かく言うと陽も当たらないので寒い。

 俺よりも一つでも上の階級の天狗は木造で、背中に刺さらない畳の、湿気とは無縁の温かい家で暮らしているらしい。

 その事を考えると俺はいつも上流の天狗に感謝する。

 ああ、いつも本当にありがとうございます! 鼻の高きお天狗さま。

 こんな酷い場所で休憩できるなんてまるで夢の様です!

 悪い方の。

 主張の強い石が目立つ地面に横になる。背中に心地よい不快感。

 薄暗く、岩しか見えない天井。鼻をくぅくぅと動かす。

 俺は千里先まで見通すという能力を持っているが、疲れるのでやらない。

 害ある侵入者の気配は無い。それ以外は面倒臭いから気付かないふり。

 だが、こちらへ近づいてくる気配を感じる。自分と同じ匂い。

 おお、また来たのか。今日も。

 出口へと眼を向けると、そこには俺と同じ白狼天狗がいた。まだ小さい、母の愛も十分に受け取ってなさそうな、雄の子供だった。背中に小さな武器と薄い防ぐ物を背負っている。

「あっあの……ここでいいんでしょうか?」

 たぶん今日新しくここの警備を担当するように命令された白狼天狗だろう。

「ああ、ここで大丈夫だ」

 俺は簡潔な質問に対し、飲み込みやすい返事を送る。

「あっ、はい。……よろしくお願いします!」

 赤い頬が柔らかさを象徴として可愛らしく動いて、こちらへ挨拶をする。

「おう、よろしく」

 それに対し粗雑で汚く挨拶を返す。そのやり取りを済ますと目の前の子供はちろちろと周りを見た後、またこっちに視線を向けた。

「あの、一体何をしたら?」

 この子供は本当に何も知らないらしい。自分も最初はこうだったかも知れない。

「教えてやる。こっちこい」

 俺は自分の腕でこちらへ引き寄せる動作をする。それに誘われて子供は近づく。

「いいかぁ、白狼天狗の仕事はな」

 口を開いて頭の汚い知識を真っ白な子供に提供する。擦れた朧げな音が喉から漏れる。



「という訳で今は待機でいい。分かったか?」

「はい! はっきりと」

 小さな命は弾ける様に応えた。そしてその場に座り込んだ。

「いたっ!」

 子供は小さな尻をびくんと上げ、驚きの歌を漏らした。

 いやぁ、おもしろいおもしろい。

 やっぱり初めてこの待機所で座る奴を見るのは面白い。どいつの尻も元気に跳ねる。

 にやにやとした顔で見ていたのに気付いたのか、その子供は目をこちらに向けた。

「なに笑ってるんですか!」

 そいつは涙目で言った。俺は反対に乾いた目で言う。

「いやぁ、おかしくってな」

「ひどい! それにどうしてあなたは横になっても大丈夫そうな顔をしてるんですか!」

「んん? ああ、これか。あれだよ、あれ」

「あれ?」

「そうだ、勝手に慣れた」

「そんなのありですか!」

「俺が慣れたからあり」

 この世には理解できない事が沢山ある。どうやらこの小さな雄はそれにぶつかった様だ。

 それでも俺が喜びに歪んだ顔を向けていると、子供は表情を萎ませた。

 今にも小さい目が水を生み出しそうだ。

 まずい。やり過ぎた。

 人をからかうのは罪、人を苛めるのは厄介な罪になる。

 慌てて自分の着物の紐を解く。そして、上の部分を小さな白狼天狗に向かって投げる。

「それを地面に敷け、そうすれば痛くないぞ」

 泣きかけの目をしていた子供は俺の投げた着物を掴むと、自分の尻に敷いた。そいつは暫くぼうっとしていたが、やがてこちらを向いた。

「あの」

「なんだぁ?」

 俺は気だるく返事をする。白狼天狗の子は小さな手足を精一杯動かして言葉を出す。

「ありがとうございます!」

 その穢れていない感謝の声には、悪戯に心を擽られた。一瞬、自分も綺麗になった気がしたが、すぐに元の卑しい心に戻って答えた。 

「そらぁどうも」

 何と適当な言葉か。普通だったら心の広い奴も怒るだろう。しかし、子供は嫌な心を面に浮き立たせなかった。

 その代わり、こちらをちろりと見てからすぐに反対側を向く。

「どうした?」

 俺は不思議に思って白狼天狗の子供に声を送った。

「あの……あなたのが、その……裸が」

 小さな雄は俺の上半身を見つめた。

「ああ? 俺は大丈夫だ。寒くねぇよ」

「いや、そうじゃなくて……」

 その小さな子はまた視線をこちらに向ける。

 視線の先には胸――骨の浮いて汚れた皮膚とその上にぽつりと小さな肉色の粒がふたつ存在していた。

 小さな雄の子、自分の胸、さっきの視線。

 ああ、成る程。そういう事か。

「お前、女の裸を見るのは初めてなのか?」

 そう問うと目の前の小さな雄はさらに顔を赤くした。

「え、あ、はい……お母さん以外は」

 やはりそうか。俺は言葉を続ける。

「そうか、でもな……俺の胸は」

 自分の指を肉色の盛り上がりに近づける。そこには骨と皮しかない薄い胸があった。

「大ハズレだ。男と変わらねぇよ」

 そう言って俺は自分の肉色を弄る。それはぴこぴことお辞儀したり起き上がったりする。「わっ、うわわ!」

 その様子を見ていた幼い雄は頬を最大限にまで燃え上がらせ、掌で眼を覆った。

 俺はその動きがどうしようもなく面白くて笑った。

「ははは! 俺のでこんなんじゃあ、お前、本物見たら失神するな!」

 喉の奥から可笑しさが込み上げてきて、少しの間笑っていた。しかし、それも小さな白狼天狗に投げつけられた着物によって急速に鎮火された。

 さっき俺が貸したそれを手に取ると、小さな子は口を開いた。

「はっ、早く着てください!」

「いいの?」

 俺は意地悪く聞く。子はそれに動じない。

「いい! いいですからっ! 早く着て!」

「座ると痛いよ?」

「いいです! もう慣れましたから!」

 小さな白狼は無理やり刺さる地面に座った。

 しかたがねぇ。言う通りにするか。

 俺はさっさと着物を付け、小さな雄が頬を赤くした肌を隠す。

 

 あれからどれ位の時が走ったのか。穴の中には沈黙と湿気が漂う。

 ああ、いけねえ。なんか空気が重たくていけねぇ。

 なんか話そう。

 俺がそう思った時、先に白狼の子が会話の芽を出した。

「あの、なんで自分の事を『俺』って言うんですか?」

「なんだ、何か問題でもあるのか?」

「だって『俺』は普通、男の人が使うんじゃないんですか?」  

「そうなのか?」

 初耳だ。俺の使っていた言葉は男のものだったのか。

「じゃあ普通、女は何て言うんだ?」

 何故か気になって反射的に質問していた。

「そうですね……たぶん『わたし』とかじゃあないでしょうか」

「そうか」

 俺は頭の中にその言葉を押し込んだ。意味は無い。

「言ってみてください」

「何だって?」

「さっき言った『わたし』って言葉を」

「何で?」

「暇つぶしですよ」

「そうか……まぁいい。言ってやろう。」

 俺は口を動かす。しかし、この言葉……

 わたし。

 たった三文字の言葉。

 それだけなのにまるで、異次元の言葉の如く何とも言えない異物感を感じる。きっと男が女言葉を使う時もこんな感覚だろう。

 かさばった唇を離し、発音する。

「わ、わた……」

 ふと、白狼の子の顔が見える。その口はにやにやしていた。

 その表情を目にした瞬間、俺の心が沸点に達する。

「てめぇ何笑ってんだ!」

 俺は小さな姿に手を掛けて押し倒す。泥の優しさと雲の暴力を含んで。

「うわわっ、ごめんなさい! ごめんなさい!」

 子供は喉の奥から高く不規則な音を一生懸命に撒き散らした。それは小さな笛が独りでに暴れる様を思わせた。

 ほんの一時目が合った。きらりきらりと光っていて底の無い目玉。

 心の踊り狂う火が吸い込まれていく。

 駄目だ。もう、怒れない。

 ああ、くそっ。これだから小さいのは卑怯だ。

「けっ、余計な言葉押し付けやがって。俺はこのままで十分だ!」

 そう言うと俺は小さな白狼から暴力を取り外す。そのまま視線を雄の子から外し、出来るだけ離れる。

「そんなつもりじゃ……」

 汚れの無い、真っ直ぐな声が耳を殴る。その清らかな音に自分の心は耐えられない。

「うるせぇ!」

 汚い言葉を真っ白な子にぶつける。眼には見えていなかったが、小さな体のしゅうと縮んでいく気配を感じた。俺はそのまま下に腰を落とす。

 気分を落とした小さな白狼の心を舐めると、一瞬だけ口の中がじりじりと焼け付いた。

 罪悪感を感じている?

 いや、そんな事は無い。自分は汚い。そんな想いなんて存在しない。

 相手を気遣うのは自分の得になる時だけだ。

 俺に他を想う繊細な心は無い。

 そんな心は、あってはならない。

 滝の水が一滴地面に落ちる時間か、胸の鼓動が何百回働いた間かは覚えてはいない。だが、確実に心は迷っていた。頭の中に解けない鍵が絡み合う蛇の如く増殖する。

 まぁ、いつもの事なのだが。そして、その答えも決まっている。

 それは俺にそんなもの無いという答えだ。

 結論を導き出すと、鼻が妙な香りを受け取る。

 辛く、酸っぱくて甘い。

「ああ、いつもの」

 それは破壊と侵入の香りだった。

 俺は体を縦に伸ばして小さな雄へと振り向く。そして、いつも通りの言葉を投げ付ける。

「おいっ! 仕事だ。出るぞ」



 空の青さと雲の白さが交わる場所にふたつの白狼。片方は汚れを吸った灰色の毛、もう片方は何者にも染められていない真っ白な毛。

 俺と小さな子は風と踊り、飛ぶ。ちょいと上品さが足りないお客様の相手をする為に。

 後ろに付いている純白の白狼にちろりと目を向ける。小さな体は真剣にこちらにくっついてくる。その両手には武器と防ぐ物がぶるぶる震えながら一生懸命に保持されていた。

 きょろりとした黒目が緊張を溜めて、今に噴火しそうな顔をしている。

 普通の奴ならかわいいと思うのだろう。俺はそうは思わないが。

 しかし、心の尖った部分が丸くなっていく感じはした。

 幼い白狼は口を開いた。口の中にはまだ完全に育っていない犬歯が見える。

「あっあの、敵と戦うにはどうすればいいんでしょうか?」

 出た、よくある質問。口調に違いはあれども大体同じ問いかけ。だが、口での説明は苦手なのでこの言葉を投げ返す。

「今日は俺の仕事を見て覚えろ。でも、ちゃんと自分の身は自分でどうにかしろよ」

 俺の声を聞いた幼い雄はほぅとした様子で返事を送った。

「はい、ちゃんと見て覚えます!」

 その澄んだ音を聞いた後はもう、振り返らない。仕事が終わるまで。

 暫く飛んでいると遠くに黒い点が見える。きっとあれが世話の焼けるお客様だろう。

 少し近づくと黒いそれは数多くの弾を放ってきた。

 弾幕――いつ生まれた技術かは知らない。弾は人工物でも自然物でもどんなものでも構わない。本来は美しさを競うために作り出されたものらしい。

 だが、それは平和な場所での話あり、妖怪の山を侵略する者にとっては十分な範囲と殺傷力を兼ねた殺し合いの道具として認知されている。

 今の場合もそれは間違いではない。目前の敵から発せられる弾は明らかに弾幕勝負の出力を超えており、もし体に当たったらその部分は千切れ飛んでしまうだろう。

 当然自分もその弾幕を使えるのだが、体力を無駄に使うので極力使わない事にしている。

 俺はそのまま弾遊びが好きなお客にお近づきになる。もちろん、その殺傷性のある素敵な贈り物には触らずに。

 弾の動きのみを見て距離を詰める。敵の位置は匂いで確かめた。

 敵がどんな姿をしているのかは見ない。

 人、妖怪、獣、その他色々。

 覚えていても意味は無い。

 どんな姿、心、言葉を発しても武器を向けて殺すのには変わりが無いから。

 次会った時にはどちらかが動かない肉の塊になっているから。

 更に近づく。自分と弾の間隔が狭くなる。着物の端に弾が掠ってちぃちぃと焦げた。

 さて、そろそろか。

 俺は防ぐ物を前に向けた。構えたそれに弾が当たってがつりがつりと重い音がする。

 ちょいと進む速度が落ちるが気にしない。そのまま弾が生まれる場所に接近する。

 ある程度弾幕の奥に出ると、今までとは違った柔らかいものが俺に当たった。

 おお、もうここまで来たか。

 そう思った俺はもう片方の腕に預けていた武器に力を入れ、語りかけた。

 なぁ、近くにお友達がいるんだ。お前も遊んでみないか?

 武器を持ち上げる。

 えっ? 自分は触れ合うのが下手? 

 武器の尖った部分を柔らかいお友達に触れさせる。

 大丈夫! 大丈夫! あいつは優しいぞ。

 武器の刃をお客に押し付ける。刃はそのままそこへ沈んでいく。

 全部受け止めてくれるさ、お前の刺さる部分も切れる部分でさえも。

 武器がずっぷりとお友達に沈んだ後、溺れた様な声が聞こえた。

 ほら、あいつは温かくて優しかっただろう? それに……

 武器を体から引き抜く。お客に穿たれた穴から赤くて温かいものが噴き出した。

 俺達に、こんな素敵な化粧をしてくれる。

 体に、武器に、防ぐ物にぬろりとした赤い水が降りかかる。この時ばかりは心が羽根の様に軽くなる。何も考えられなくなる。

 赤い幸せを感じ取っていると、ぐちゃりと音がした。どうやら優しいお友達は地面に落ちてしまった様だ。

 ああ、なんてかわいそう。

 俺は自己中心的な慈悲を携えながら下へ向かった。

 

 降りた場所は川岸の砂利の上。そこにはさっきまで生き物の形をしていた肉が転がっていた。

「おーい。大丈夫かぁ?」

 俺は随分わざとらしい声で肉片を撫でた。優しく可笑しく。

 武器で突いてみたが、全く反応は無い。どうやら、もう生きていないようだ。

 ああざんねんざんねん。安らかなお眠りを!

 悪意の篭った見送りの思いを添え、刃を胸だった部分に勢い良く突き刺した。

 ははっはっはっは! 楽しい芸術品の出来あがり。

 胸の形をしていたものはその姿を崩して、命も死も否定したオブジェとなった。

「ふぅ……」

 少し時間が経って落ち着いた俺は周りを見回した。そういえば幼い白狼の姿が見えない。

 あいつ、何処に行った?

 突き立てた武器を肉の鞘から抜き、川の上流へと歩いていく。

 足が沈んで歩きにくい。これだから砂利は嫌いだ。

 澄んだ水の流れ、秋色を着飾った山、元気な黄色を溜め込んだ陽。

 この世は素晴らしく、そして美しい。

 自分は下等で醜い。

 己と世を比較すると何とも悲しく、何とも可笑しい。

 それをどうにかしない自分に若干の怒りと楽しさを感じて生きている。

 少しの時間川岸を歩いていると、嗅ぎ慣れた匂いがする。

 間違いない、あいつの匂いだ。

 俺はその香りのする向きへと足を進ませる。さっそく、純白の頭が見えた。

 何とあいつは砂利の上に寝転がっている。

「けっ、俺が命懸けてるのにあいつは優雅にお昼寝かよ! いいご身分だな!」

 俺は急燃焼したはらわたを抱えたまま、その小さな白狼に近づいた。

 顔を奴の目線上に位置し、腹の中から太い声を浴びせる。

「おい! おまえ! 昼ね……」

 燃え上がった言葉は途中から鎮火した。その幼い子の姿を見たから。

「ああ……よかった。やっ、と、あえましたね」

 薄くて平らな腹からは赤い湖が生まれ、艶のある白い縄が飛び出ている。

 きっと、弾幕に耐え切ることが出来なかったのだろう。 

 それから、何とか被弾しながら川岸に降りた。

 それで、今は自分の体を砂利の上に零している。

「そうか。よかったな」

 俺はあえて腹に開いた穴については触れないで、言葉を編んだ。

 白狼天狗は医療行為を受けられる権利も無い。もちろん、受けたとしてもこの傷では死ぬ事は明らかだったが。

「と、ずっと、さがし……した。もり、のなか」

 言っている事が滅茶苦茶だ。この辺りに森は無い。

「そうか」

 それでも俺はそれしか喋らない。何故なら目の前の小さな白狼はもう別の世界を覗き始めていたから。

「てくださひ」

「何を?」

 突然提出された願いに戸惑う。意味が分からなかった。

「あなたが『わたし』っていいてくださぁひ」

「そうか……分かったよ」

 俺の唇は蠢き、死にかけの白狼に意味のある音を生み出す。

「わたし」

 さっき言った時は詰まっていた声が、馬鹿みたいに滑り出た。

「ふふ」

「何が可笑しいんだ?」

 俺は優しく温かく清らかに笑った顔に問うた。

『きれいだなって、おもったんです』

「誰が?」

『あなたが……』

「そうか?」

『ええ、はじめてみたときからきれいだなって』

 小さな眼には嘘の煌めきが見えない。本当の言葉、心の言葉で話している。

『だから、もったいないなって……』

「何が?」

『おねえさんみたいなひとが、きたないことばをつかうのは……』

「そうだったのか……」

 あの時こいつがにやにやした顔を向けたのは、単純な嬉しさからだった。

 俺は一瞬黙ったが、不良な口が言葉を散らした。

 自分みたいな汚れた生き物が、絶対に使ってはいけない言葉。

「ありがとう」

 自分が吐いた言葉はもう子供には届かなかった。

 もう、幼い白狼は現実の俺を見ていない。

『きれいだ……おねえさんは、やっぱり、きれい』

 幼い目の意志は、もう屑星みたいに細くて弱くなっていた。

 俺は今にも者から物になりそうなそれの手に自分の掌を乗せた。

 野暮な動作だと自分でも思った。だが、体は自分の考えから逃げ出していた。

『ああ、ぽかぽかしてきもちがいいや。』

 幼い白狼は自分の体から出たものを地面に広げながら、心地良さそうに瞼を閉じる。

『ねぇ、おねえさん、ちょっといいかな?』

「何だ?」

『いまだけ、ほんのすこしだけ……』

 そこで声は耳でも聞き取れない言葉になって消えた。同時に幼い命がただの生き物の形をした肉に変わっていく。

 完全に機能しなくなった器から心が染み出す。

 その心は消えていく一瞬、俺に絡みついた。

 まるで、母親にあやしてもらいたい赤ん坊の様に。

 文字やら理屈では判別できない小さな、幼い心の温かさと愛らしさ。

「そうか、よかったな」

 俺は白狼の子が発した最後の想いに、意味の無い返事をした。

 気付けば、自分の掌から伝わってくる熱さはどんどん退いていく。

 もうただの物となった白狼の子から手を離した。

 もうこいつの口は喋らない。

 もうこいつの綺麗な肌には命が走っていない。

 もうこいつの元気な手足は動かない。

 もうこいつの命は全て零れ落ちてしまった。

 その様子を暫く見つめた後、俺の口は愉快に動く。

「ははははは! こいつぅ、こいつっ、死にやがった! 死にやがった!」

 いつもこうだ。俺は同胞がくたばる事すらも悲しめずに嘲り笑い。

 始めはちゃんと悲しんでたのに。

 もう狂っちまったのか。

 いや、それ以前に悲しんでどうにかなるのか?

 真面目に悲しんでる奴の方がどうかしてる。

 俺はぶちまけた泥みたいな心を背負って清らかな、今生まれたばかりの物を見た。

 はは、きれいだきれいだ。

 白狼天狗には死んでも墓が建てられる事は無い。言うなれば生ゴミと同じだ。

 かわいそうだなぁ。おはかもないんだってよ。

 綺麗な肉の塊は何も答えない。俺は言葉を続ける。

 このままほったらかしなんだってさ。

 白狼天狗の形をした生ゴミは何も答えない。俺は許可を求める。

「もったいねぇよなぁ……」

 だったら、だったらさ。

 俺と一緒にならないか?

 さっきまで一応の思考を備えていた白狼天狗は狂った、痩せた生き物に全てを飲み込まれた。

 

 俺は着物を体から外した。小さな白狼だった物からも着物を解き放つ。

 今、ここには自分の汚らしい肌色とさっきまであいつだったきれいな体しかない。

 汚れの年月も経っていない体を澱んだ黒目で愛でる。

 腹には赤くていいにおいのする花が咲いている。

 おまえは素敵だ、そのおなかだって今すぐ可愛がりたいよ。

 だが、それはまだ後のお楽しみ。その前にまだまだやることがある。

 俺はそれの脚の間に付いている物に目をぎぃと向けた。

 そこには雌である自分には無い部品が小さな存在感を示していた。

 指みたいな肉は、白くて薄い衣にすっぽりと覆われ、先からは黄色い滴が光っている。

 さらに根元には弾力のありそうな袋があり、その中にはふたつの愛らしい珠あるのが窺えた。

 はは、こいつは随分と柔らかそうだ。    

 細長い肉を先に楽しみ、後に珠と遊ぶのもいい。先に珠を飲み込んでから、指みたいな肉と戯れるのもいい。

 でも……

 俺は口を大穴の如く割れさせ、細長いのも、袋も、一気に舌に乗せた。

 やっぱり、これが一番だな。

 口の白い鋸で、いとおしい肉達を引き離す。

 始めは可愛い抵抗が存在していたが、俺がそれすらも無視して白く尖った刃で攻め立てると、何とも大人しく足の間から逃げ出してくれた。

 少し前まであいつだった物が、今となっては自分の口の中に含まれ、取り込まれようとしている。

 俺はその事がとてつもなく嬉しくなって、つい慌てて顎を何度も何度も動かしてしまった。

 そうすると舌の上はまるで夢の国。弾力があったり、あっさり潰れたり、何かでびしゃびしゃになったりと飽きることが無い。

 饐えた酸の揺らめきと何も知らない無用心さが口の中に広がった。

 鼻腔にはまだ熟していない雄の臭気。

 せっかちな舌が幼い白狼の一部を喉へと送る。

 ごくり。

 体の中に穢れの無い稚児が取り込まれる。いや、取り込んでいる。

 俺の命とあいつだった肉が熔けこみ、熱さと甘さが絡んでいく。

 他の個体を奪い、我が物とする。

 ああ。

 満たされている。

 俺の中に別の命が差し込まれる。

 俺は、一瞬自分が何であるのかさえも忘れた。

 体の中の生き物が暴れる。優しく、甘く、汚らわしく命令する。

 もっと、食べたらどうだ? 幸せになりたいんだろう?

 俺がどう思おうと拒否権は無い。行う行動は一緒。

 口の中の肉を全て飲み込むと、いつのまにか武器を手に取っていた。

 持っているものを振り下ろす。

 腕の付け根、脚が付いてるところ、脚の根元、腕がくっ付いているところ。

 何かが心地よく千切れる音がした。

 気付けば幼い子には手足が無い。調理済みの食料の如く。

 何でだろうな?

 でも、そんな事はどうでもいい。

 目の前には新鮮な細い指と骨と肉が付いているご馳走がある。

 とてもおいしそうだ。

 たべよう。

 俺はいつの間にか調理されたご馳走にに舌を触れた。

 全くざらつきの無い肌。白くて何も生えていない様に思えたが、育ったばかりの薄く、透明に近い毛が芽吹いていた。

 俺は犬歯を白い上質な布に滑り込ませる。それはゆっくりと沈んでいく。

 質の良いすべすべした肌が破れる。その後には命を含んだ肉の感触。それまた後にはただ純粋ながちりと当たる骨。

 うまい、これは当たりだ。

 俺は別に慌ててもいないのに顎を、唇を、喉を急がせた。

 硬い芯に付いている柔らかい肉を剥がし、腹の中へと発送する。

 一体、この命で何人目だろう。

 ふと俺は思った。答えはもう分かっている。一応、確認したかったのだ。

 自分が数え切れない程の白狼の命を、肉を喰らった事を。

 そんな事を考えている間も、口から出た赤い蛭は命を啜っていた。

 それに同期して黄ばんだ歯も精密な道具のように動く。

 暫くは何の考えも無く、何の視線も感じずにずっとその行動を繰り返した。

 もう、俺の中にはさっきまで幼い白狼だった物が沢山入っている。

 さっきあれ程転がっていた美味しそうなご馳走が、今では腕の形をした物一本だけになっていた。

 その一本の腕に対しても確実に食欲を感じていた。しかし、それは最後の楽しみとして取っておく事にしよう。

 さぁて、次は……

 俺は白狼の雄だった物に鼻を向ける。その体からはいい匂いがした。

 それは主として腹に開いた穴から漂ってくるようだった。

 眼球を向けると、そこには赤い水の溜まり、ぬろぬろと輝く白い縄があった。

 はは、今日はすごい。ご馳走だらけ。

 俺は穿たれた穴に頭を沈ませた。澄んだ空気から、濃厚な赤い海へと落ちていく。

 視界や嗅覚は全て赤い液体の中に深く浸かっていった。

 喉が蠢き、命の赤を少しずつ、しかし貪欲に汲み上げる。

 ぴちゃり、ぴちゃ。

 口の中に命が満ちるとゆっくり、だが大量に首の裏へとそれが提供される。

 俺の奥底まであいつの赤が染み渡る。

 体が揺れる。熱く、冷たい火が中で暴れまわる。

 気付けばもう目の前には赤い湖は無い。残っているのは白くて細長い縄しかない。

 白いといっても実は桃色に近く、白さが目立つのは今まで赤い湖と対比されていたからであった。

 俺はそのぬろりとした縄を穴から引きずり出す。

 するとその縄に続き、色々な形の袋が飛び出てきた。

 おおっ! 素敵。これが手品というものか。

 俺はそれがとても嬉しくて、小さな白狼から引き出したものにじゃれついて舌を滑らせた。

 引き出した紐はとても美味しかった。

 ひょろりとした縄については弾力があり、噛み千切るのが楽しかった。さらに中には沢山の詰め物が入っていた。色は緑から赤、白から茶色まであって、歯ざわりに違いはあれど、どれも良い味だった。

 でも、袋の方にはまだ口を付けていない。

 何故なら、どの袋の中にも変な液体が入っており、どれも美味しくないからだ。

 だから、今は切り離した袋達を川の中で洗っている。

 袋を水に浸け、指で内側も外側も撫でるようにしてぬめりを取る。

 完全に不快な液体を取り払うと、やっと口の中に放り入れた。

 うん! いいね。やわらかい。

 噛むとぷちりぷちりと音がして、爽やかな味が舌の上で演劇をする。

 もう、愉快で愉快で堪らない。

 俺は川から上がると、また小さな白狼だった物に口を踊らせた。



 もういくつあいつの体を飲み込んだのか。

 空気を取り入れるための大きな袋、胸の下の赤くて小さな塊、腰周りの小さな膨らみ、骨に付いている繊維。

 全部、喰いちぎったり、噛み潰した。

 残っているのはまだ手の付けられていない頭と骨ぐらいだった。

 俺はついに頭に手を出す。始めはそうっと口を触れさせる。

 薄くて、汚れを知らない唇。

 俺はそのきれいな二枚の桜色に赤くて穢れた蛭を走らせる。

 良い味。今にもあいつの息がこちらに吹きかかってきそうだった。

 考えもせずに、口の白い刃が動く。そして……

 ぷちちっ、ぷちっ、ごくり。

 さっきまであいつに付いていたはずの桜色はもう喉を通って腹の底へと落ちていた。

 始めは優しくしていたつもりだったが、この味を、命を、体に取り込んでしまってはもう止まらない。

 俺は衣を蝕む虫の様に、周りの肉を味わっていった。

 表面の白い皮が無くなればその下の肉を。

 その肉が無くなればもっと下の赤い肉を。

 気付いてみれば、目の前には目玉のはまった真っ白な頭骨しかない。

 ちろりと一瞬見ればもう食べられる物は眼球しか残って無いように見える。

 しかし、よく考えればこの白い頭には一番のご馳走が隠されていた。

 さて、最もいい物を食べよう。

 俺は武器を持ち、腕を振り上げた。そして、そのまま白さ煌めく頭骨へと振り下ろす。

 ごしゃっ。

 硬い物が壊れる心地よい音。

 うん、よしっ。上手く行った。

 さっきまで一つだった頭骨は、武器の刃の恩恵によって二つに分かれていた。

 耳にあたる部分から縦に割れ、芽吹いた種の様に広がっている。

 俺は眼球のついていない、後ろの方の頭を手に取った。

 それから、自分が作り出した断面にうっとりとする。

 ああ、やっぱりいいなぁ……この絵柄は。

 俺の視線の先にはさっき腹の中で見た紐とはまた違った白さの模様が存在していた。

 まるで雪の薔薇が咲いたみたいだ。

 芸術とはまさにこの事なのだろう。

 感動している心とは裏腹に手は白い肉をかきだし、口の中に運んでいた。

 ありとあらゆる感情が広がり、果ての無い白痴の中に飲み込まれる感覚がした。

 うまい。

 心はのんびりと確実に味わいたいのに、体はそれを待ってはくれない。

 白く、てろてろとした肉を口に運ぶ。

 おいしい。

 美しく、知識の入った肉を食べる。

 素敵だ。

 生きていたら思考に使うであろう部分を喰らう。

 ああ、食べるのは最高だ。

 その時間は幸せしか存在しなかった。

 欲のみの幸せ。

 意識がはっきりすると、もう二つの器に白い肉は滓という位にしか存在しなかった。

 このまま滓を舐め取るのも良いが、俺はもっと上品な食事をする。

 川の水をちょいと手で掬い、骨の器に垂らす。

 白い器に溜まった水溜りに滓を溶き、肌色がかった液体にする。

 俺は骨の器に渇いた口を付け、そのままそれを傾けた。

 ごくり、ごくんっ。

 手掴みで食べた時とは全く別の感覚が俺を捕らえた。

 生臭い川の水とあいつの知識だった物が混ざって、何とも生き物臭い味を表現していた。

 体が痺れる。自分が段々と腐敗していく様な気がする。

 己の妙な感覚を味わっていると、もう器である頭骨は眼球を残しただけの白く、空っぽの入れ物となっていた。

 それを見た俺は目玉を引き出す事にした。眼が付いている方の頭骨を手に取る。

 白いお面の黒い眼は二つともこちらを見つめている。

 正面から指で取り出すのもいいな。

 と思ったが、すぐに考えを変化させた。

 駄目だ。下手すりゃあ傷が付く。

 俺の頭はいつも通りの答えを生産する。

 だったら、そうだな……

 手を白い顔の裏に回し、指で眼球を押し出す。

 始めは押されている眼も外されまいと健気な抵抗をするのだが、暫くするとまるで赤ん坊をあやす玩具みたいにぽろりと取れる。

 取り出した眼球にはびろりと細くて長い根が付いている。

 俺はその根を口に含み、少しずつ喉に通していく。

 ちゅっ、ぱ。ちゅ。

 あまりにもしゃぶる音が良かったので、図らずも目を閉じた。耳には気味が良い合奏しか入ってこない。

 ちゅ、ちゅ、ぷちゃ。

 ……ん?

 妙な音がしたので俺は瞼を開いた。唇の元には半分欠けた眼球があった。

 ああ! くそ、潰しちまった!

 心の中に粘りつく苛立ちが降り出した。しかし、頑張って考えを改める。

 いや、まだ片方が残っている。大丈夫だろう。

 俺はもう片方の球の根に舌を這わせ、少しずつ飲み込んだ。

 今度は視覚を落とさない。また眼を齧ってしまうといけないから。

 ほんの少しの間、優しく、意地汚く口を動かすと眼球から生えていた細い紐は完全にその姿を無くしていた。

 もう掌の上には白と黒が目立つ球体しかない。

 光り輝く宝玉を見つめているだけで頬が下がっていく。

 ふふ、最後のお楽しみだ。

 俺は光の宿る球を自分の脚の間にある肉色の線にねじ込む。

 すると肉色の線はその口を開き、白目が眩しい宝玉を取り込んだ。

 今、俺の中にあいつの眼が入っている。

 そして、じぃと俺の中の赤を睨みつけている。

 その事を感じると頭の中が喜びに満ちていく。

 正気が流れ出して、甘い欲のみが残る。

 体に流れる命が暴れる。

 体の中にある宝玉をさらに深部へと贈る。

 ちゅるちゅると光り輝く白目と黒目が自分の路を滑っていく。

 どんどん深く、さらに滲みこんで。

 もうかなり中まで沈み込んだだろう。

 このままでは自分の中に宝玉が入ったままだ。

 はやく、かき出さないと。

 だが、それは俺の指がする仕事じゃない。

 体に入った球を取り出すのは……

 今までずっと残しておいた一本の腕に目を向ける。

 俺はそれを手に取り、指の部分を自分の縦線に滑り込ませた。

 指は微妙に曲がっていて入りずらかったが、無理矢理奥へと向かわせる。

 自分の中をあいつだった部分が触って、どんどん深く溶け込む。

 一瞬、俺は有害な甘さに浸かったが、それだけでは足りない。

 もっともっと。

 手に持っているそれに力を込めて、さらに中へと押し込んだ。

 腕がどんどん肉色の線に沈み込んでいく。

 あいつだった部品が俺の中を弄くり回すと火が体を舐める。

 あいつだった部品の尖った部分が俺の中を傷つけると、とても楽しくなる。

 思考が堕落に喰われて、欲望の塊となる。

 俺があいつを道具として操っているのに、まるで俺があいつに道具として操られている様な痺れ。

 もっとあいつに使われたい。

 もっとあいつに取り込まれたい。

 もっとあいつに自分の柔らかい部分を潰されたい。

 もう今まで備わっていた考えも外れ、ただひたすらに腕を自分に押し込む。

 激しく俺はあいつに取り込まれる。

 近くて遠い、遠くて近い場所であいつと俺は熔け合うんだ。

 あいつの指が俺を内側から傷つける。

 肉色の線から、俺の赤い命が滴となって零れている。

 痛い。肉が燃えるようだ。

 けれども、それすらも狂った楽しみの甘い調味料にしかならない。

 まだ足りない。まだ足りない。そうでもしなければ……

 激しく自分の内側をかき回す。自分の中に改めて他者がいる事を悟る。

 俺は、きっと、生きていけないだろう。

 口から唾液が垂れているのが自分でも分かる。

 しかし、それを分かっていても止められないし、止めたくは無い。

 湿った炎が体を、心を、感覚を蝕み、俺の中の空っぽに何か生暖かくてどろどろしたものを与えてくれる。

 ああ、これはいいや。

 もう、生きるのも死ぬのもどうでもいい。

 俺の中に毒々しい花が咲いて、そのまま体を溶かしていく。

 頭の働きは暑い黒に飲み込まれ、何もかもが消えていった。



 騒がしい水が駆ける音。瞼が開くとそこは川岸だった。

「何故、俺はここに?」

 密かな疑問を感じたが、辺りに散らばっている着物や武器、指先がべとべとになった腕、かつては生き物だった白い物を目に入れると、自分が何故ここにいるのかを思い出した。

「そうか、俺は……」

 また喰ったのか。

 本当にただそう思っただけで何の悲しみも怒りも無い。

 きっと、俺の心はもう穴が開いて、全てが漏れて、消え去ってしまったのだろう。

 その証拠にまだ肉が付いている腕を見ると、迷わずに餓えた唇を付けた。

 皮膚を千切り、赤色の繊維を飲み込む。

 うまい、やはりお前はうまいなぁ。

 けれども白い骨は無関心にただ放る。

 これの繰り返しをしているといつもある事を思う。

 やはり俺が生きているのはくだらない。

 やはり俺には何の価値も無い。

 そして、いつもあの動作を行うのだ。

 己の命を否定するお遊び。

 完全に俺は白い腕を白い骨に変えると、今度は地面に寝転がっている武器を手に取る。

 武器の刃を地面に突き立て、そのまま切れ味のある部分に向かって自分の首を触らせる。

 喉を武器の刃に押し付ける。

 一瞬、皮膚がそれを取り込んだかと思うと、切れ味は凶暴性を発揮する。

 ぷちんっ。

 その音と同時に麗しき喉を撤退へと導くと、そのまま砂利の上に仰向けになった。

 喉に出来た傷は浅く、俺を死へと引っ張り込むには全く足りなかった。

「……くそっ! まただ、また」

 俺は生きてしまった。

 世の中には自分よりもずっと生きる価値のある白狼がいるというのに。

 何故、俺以外の白狼が死ななければならない。

 何故、俺は死ねない。

 俺みたいなゴミはさっさと死ぬべきなのに。

 何度も何度も地面に拳を打ち付ける。

 冷たく、湿った痛み。

 けれどもそれは死には程遠い。

 そんな事は分かっていたが、それでもまだ手は自分を傷つけていた。

 手に穴が穿たれ、そこから湿った苦痛が漏れようとした時だったか。

 俺は腹に下に妙な違和感を感じて拳を止めた。

 何かが俺の中を通っている。

 何かが俺の中から出てくる。

 脚の間にある肉色の線が膨らむ。

 そして、そいつが顔を見せた。

「これは……」

 忘れていた。すっかりこれの存在を。

 白さに縁取られた黒い円――あいつの目玉がこっちを見つめていた。

 巻き戻される奴との記憶。

 あの、命が消え去る前に零した言葉。

『きれいだ……おねえさんは、やっぱり、きれい』

 あいつの笑った顔が見える。温かく、穢れなく、きれい。

「ああっ! くそっ!」

 心にある真っ黒な自傷の火がしゅうと消えていく。

 卑怯だ。これだから小さい子供は卑怯だ。

 俺はその小さな球を摘み上げ、自分の目線に置いてから語り掛ける。

「余計なことしやがって」

 口ではそう迷惑そうに言っていたが、心はその真逆で一杯だった。

 目の前にある美しい宝玉は何も知らない、何にも汚れていないといった様子で光り輝く。

 俺は唇を開き、また自分に似合わない言葉を吐いた。

「ありがとうよ」

 言葉を放ち終えると、摘んでいた美しい珠を口に放り込んだ。

 迷わず、噛み潰す。

 何も考えず、飲み込む。

 もう、あいつの肉は全部自分の中だ。

 食事を終えた俺はあいつの着物と尖った骨を持ち、自分の防ぐ物へと向かう。

 防ぐ物の表には赤い錆が付いている。こちらの面には用事は無いので裏返す。

 あいつの着物を裏返し、己の目で嘗め回す。

 俺はほんの一瞬それをした後、尖った白い破片を握り、防ぐ物の裏を引っ掻いた。

 意味も無く、激しく、激しく、激しく。

 その変わった活動を完遂すると、周りの状況に気付いた。

 散らばった真っ白な欠片、赤い化粧をした砂利、持ち主の無い着物と道具。

 着物と道具はどうしようもないが、それ以外は片付けておきたい。

 俺は赤い砂利と白い破片を拾い次第、川に投げ込んだ。

 目玉がはまっていた部分だけを残して。

 砂利の上にひとり寂しげに転がっている白い顔を拾う。そして、そのまま川へと入る。

 いつも、誰かと別れる時はこうしているのだ。

 俺は最後にまたあいつの顔を見る。

 あいつだった骨を陽に当てて覗く。

 もう白い皮膚は無い。

 俺が食べたから。

 もう優しい笑顔を作る唇は無い。

 俺が飲み込んだから。

 もう輝く視線は見えない。

 俺が噛み潰したから。

 自分は何と酷い奴なのだろう。あんなにきれいな奴を食べちまうなんて。

 だが、同時に考えている事とは別の想いが湧き立っているのも感じた。

 頭が考えるよりも先に俺はあいつに口を付けた。

 場所はきれいな眼。

 そこは空っぽで、何も無かったが、確かにあの純白の温かさを受け取った。

 そして、俺が絶対に出してはいけない言葉が生まれる。

 ああ、好きだ。 

「愛しているぞ」

 その声と同時に手の力が解けて、あいつの骨が川に落ちた。

 ぽちゃりと水音がすると、さっきまで持っていた白い破片は流れる水に軽々と流されていく。

 空っぽの眼から川の水が流れて、泣いている。

 俺は透き通った水晶の波にさらわれていくあいつを見て、慌ててその後を追った。

 しかし、やはり水の素早さに敵う訳もなく、白い骨は彼方へと去ってしまった。

 ここにはもうあの幼い白狼はいない。

 俺が食べて、川がもらっていったから。

 すでにこの場所には小さな子は見えない。

 何も無いはずだった。しかし……

『きれい、やっぱりおねえさんはきれいだ』

 存在しないはずの声。

 俺は辺りを見回したが、何もいない。

 意味も無く口を開き、どこから流れたのか分からない声に答える。

「違う、わたしは」

 いや、こうじゃないな。いつも通りにしないと。

「俺は」

 自分の大部分を占めている特徴を話す。

「きたないよ」

 返事は無かった。代わりに頭にあいつの穢れの無い笑顔が浮かんできた。

 何かが内側から溢れ出す。冷たく、激しく、乱暴。

 俺はどうにも耐え切れなり、口を開いてそれを天へと撒き散らす。

 大きく喉が鳴る。

 酷い音が空へと飛んでいく。

 どこまでも広がっていく俺の声。

 だけどそれは言葉の姿を成していなくて、まるで獣の咆哮だった。

 目から流れた熱い水が顔を滑っていくのが分かる。

 俺は自分に問い掛けた。

 泣いている?

 ああ、そうさ。

 悲しんでいる?

 いいや、違うね。俺みたいなけだものが悲しめる訳が無い。

 じゃあ、何で泣いている?

 今日は美味い肉を沢山食ったからね。あれだよ、嬉し泣きだよ。

 本当に?

 そうだ。もし、俺に悲しめる程の心があれば、あいつを喰ったりなんてしないだろうさ。

 俺はひたすら吼えた。

 蒼い空と燃え上がる太陽に訴える為に。

 自分には生きる価値が無いと。

 しかし、どんなに吼えても空と太陽はこちらを優しく見下ろしている。

 その美しさと優しさは俺の醜さを引き立たせ、まるで拷問の様だった。

 もう、喉は痺れて何も出て来ない。目から漏れる涙も同様だった。

 俺は頭を下げて、川面を見つめた。

 全く濁りの無い輝きが見える。続いて、自分の体が見えた。

 あいつの命でどこもべとべとだった。

 やっぱり、汚れているのは俺だけか。

 誰にでもない確認。

 まあいい。とりあえず、洗おう。

 川の水を自分に降りかけ、赤いあいつを洗い流す。

 俺はまた、死ぬのを諦めた。



 川が体の赤化粧を取り去っていく。

 それと同じくして赤い命が透き通った川におしゃれをする。

 暫くすると俺はいつもの貧しい姿へと戻っていた。

 骨と皮と必要最低限の肉で構成されたぺらぺらの胸に視線を流す。

 そして素直な感想。

「これが女の胸だってさ」

 俺は自ら吐いた言葉に口をにぃと釣り上げた。そして、腹をぶるぶると震わせて、綺麗とは言い難い声を振り撒く。

「ひひひ、ひはっ、ひはっ、ひへへ!」

 笑いが収まると、自然と腹に目が動き、止まった。

 胸の下はあの幼い白狼の命が限界まで詰まっていて、肥え太った蝦蟇みたいに膨らんでいた。

 俺はそこに手を当てて、優しく撫でた。

 まるで胎児を気遣う母親の様に。

 存在しない子を愛でながら、ある問いを発する。

 自分にも子が宿る日が来るのだろうか?

 妙な疑問だったが、すぐに答えは出た。

 無いよ、そんなもん。一生。

 簡潔で、どうしようもない答えを受け取ると、俺は安心しながらも悲しい心になった。

 ふと、空気を切り裂く音がする。何かが圧倒的な速さで空を舞う。

 俺はそちらへと目を向ける。

 黒く汚れ無き髪、機能的で優美な服、女を蓄えた姿、上品な仕草。

 一匹の鴉天狗が俺の傍に着地する。

 こいつは何て物好きだろう。いつもの事だけど。

 上品な身分なのにわざわざ卑しい身分の俺に会いに来る。

 そして、いつもあの質問をするのだ。

「何をしているのですか?」

「あぁ? 決まってるだろ、体洗ってんだよ」

 俺が下品な言葉遣いをしても、この鴉は表情を燃え上がらせない。

 基本的に上位の天狗は嫌いだ。

 しかし、こいつの容姿と言葉遣いを見ていると、自分が卑しい獣である事に納得を覚えられた。

 最近では肩から写真機とか言う妙な道具を提げている。

 いつも通りの顔で上位の鴉は問う。

「もう一人の方はどうしたのですか?」

 俺は目の前の天狗から視線を外して答えた。

「辞めたよ、あいつは。仕事が辛過ぎるってさ」

 何と下手な嘘。白狼天狗は一生この仕事を辞められないのに。

「そうですか」

 鴉はそれしか答えない。いつも通りの反応。

 俺はその声を聞くと、引き続いて体を濯ぎながら質問する。

「なぁ、文」

「何ですか?」

 俺は口を開く。懲りずにまた、昨日と同じ質問。

「ここで汚れを落としたら、下流の川はどうなるんだ?」

「そうですね……」

 鴉はわざとらしく悩む仕草をする。もうこの動作を何度繰り返しただろう。

「きっと汚れは途中で消え去って、下流には何も残らないでしょうね」

「そうか」

 俺は朧げな返事を返すと、川岸に立って自分の着物を肌に纏わせた。そして、汚れ一つ無い空を見上げる。

「もうそろそろ、仕事へ戻る」

「そうですか、頑張って」

 全く感情が読めない、いつも通りの声。

 武器と防ぐ物を持ち、天へと飛び上がる。

 俺はいつまで侵入者を殺せばいいのだろう?

 俺はいつまで仲間を喰らえばいいのだろう?

 微かな疑問を抱え、また仕事場へと戻る。

 あの命と死が曖昧な場所へ。

 飛翔した灰色の狼は、白い雲に溶け込んで見えなくなった。

 黒髪の天狗はその様子をじっと見つめていた。

 何も無い硝子玉の眼に若干の悲しさを滲ませて。

 あの人は一体いつまで悲しい循環を繰り返すのだろう?

 あの人の苦しみは一体何処で終わりを遂げるのだろう?

 答えは知っていた。しかし、認めたくなかった。

 鴉天狗は手帳を開いた。その中にはびっしりと字が広がっている。

 ペンが純白の紙の上を滑る。ある名前が刻まれる。

 それは、先程あの白狼が食べた命の名前だ。

 もう、あの白狼が飲み込んだ命で何冊の手帳が黒く染まったのか、はっきりと分からなくなっていた。

 それでも文は書き続けていた。

 悲しみも楽しみも哀れみも使命感も無く。



 朝が目覚めた匂い。太陽の元気が瞼に刺さる。

 俺は樹の上にいる。意識が芽吹き出した。喉に付けた傷が自己主張する。

「うげっ、げが……ぇぇえええ」

 昨日食べた幼い白狼が口から漏れた。そのまま土の上にぴちゃぴちゃと落ちた。

 すっかり眠気を粉砕した俺は根元に向かう。そこには武器と防ぐ物が置いてある。

「今日は運がいいな」

 今の俺は機嫌が良い。

 何故なら地面に広がった同胞の飛沫は仕事道具とお知り合いになっていなかったから。

 武器を片手に持ち、防ぐ物を見つめる。

 表には葉の形をした錆がへばり付いている。

 裏には持ち手と数え切れない程の傷――今まで喰らった白狼の名前が刻まれていた。

 無理矢理彫り込まれた名前達を見ると、今でもはっきりとあいつらの顔が浮かんでくる。

 俺はそれを目に入れると、いつも思う。

 ああ、俺も早くお前達と同じ様に死にたいよ。

 少しでも早く温かい顔をして、生きる事に別れを告げたい。

 どんなに侮辱されたって、喰われたっていい。

 俺は大体やったから。

 でも、この体はまだくたばらない。

 防ぐ物を持ち、何も無い空へと飛び立つ。いつも通りの仕事場へと向かう。

 きっと、俺にはまだ死ぬ資格が無いのだろう。

 きっと、俺は死すら持っていないのだろう。 

 それでも、俺は欲しい。

 死ぬ自由が。

 今日も仕事をして、自分は命あるものを殺す。

 また殺すのかい? 敵を? それとも味方を?

 ああ、どっちもだよ。

 赤の命と悲鳴が染みた毛を身に付け、死臭の衣を纏い、狂った目の輝き。

 良心に絡まれながらも、悪徳に走る情動。

 悲しむべき死すらも喰らい、己の糧とする貪欲さ。

 自分の持っている刀や盾の名前も知らない無能。

 この美しい幻想郷に生まれた最後の、そして最大の汚れ。

 しかし、それでもあの幼い白狼が言った言葉は間違ってはいなかった。

 その狼が椛型の錆が浮いた盾を構え、死に向かって真っ直ぐ蒼い空を駆ける姿は、確実に綺麗だったから。

 

 その狼は呪われている。

 愛すべき同胞を喰らい、いつまでも悲しい生を続ける呪い。
わたしの知ってる椛はこんなお方です。
タダヨシ
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2009/08/06 08:05:55
更新日時:
2009/08/06 17:05:55
分類
※ハッピーエンドなし
ある白狼天狗の日常
グロ
無駄に長いよ
1. 名無し ■2009/08/06 18:13:45
最初は「俺…?」と思ったけどすぐに引きこまれてどうでもよくなりました
いや、美しい
個人的に最後の淡々としたあややにとても感銘を受けた
2. 名無し ■2009/08/06 20:29:29
やはりあなたはただものではないな

胸が締め付けられる。よい。
3. 名無し ■2009/08/06 22:56:43
文学部←絵腐乱としてはもう少し推敲していただきたい【心情、情景の表現など】
4. 名無し ■2009/08/07 00:37:01
序盤で「ゲロを化粧とか椛は相当頭弱いな」と思いながら読んでたが
読み終わった今、この椛のゲロを汚物扱いするほうが狂ってると思った
5. 名無し ■2009/08/07 01:04:16
最高のセックスだった
椛とタダヨシさんに乾杯
6. 名無し ■2009/08/07 21:58:18
こんなに重量感を感じる小説を読んだのは久しぶり。
原作でセリフのないキャラクターに、厚みのある物語を感じることのできるあなたに乾杯を。
7. 名無し ■2009/08/08 03:14:16
独特の言い回しというか、文章に才能を感じた。
8. 名無し ■2009/08/11 22:39:23
夢中で読みました。
この椛に、何故か憧れる自分がいました。
9. 名無し ■2009/11/04 21:40:13
>「ここで汚れを落としたら、下流の川はどうなるんだ?」
これは数少ない友人のにとりへの気遣いなんだろうか?
10. タダヨシ ■2009/11/05 16:27:34
>これは数少ない友人のにとりへの気遣いなんだろうか?
特に答えは決めてません。排水口読者みなさんの感性に委ねています。
11. 名無し ■2009/11/08 04:43:38
>>10
タダヨシさんに返答が戴けるとは思わなかったw
あなたの作品には今後も期待しています
12. 名無し ■2009/11/08 13:51:38
むしろにとりが「この化学薬品でイチコロというわけよ!」してそうだ
13. 名無し ■2010/06/05 23:19:45
悲しいと思った、切ないと思った
でもそれよりも綺麗だと思った
14. 名無し ■2010/10/18 17:39:21
『山月記』を思い出した。
15. 名無し ■2011/02/04 02:36:31
久しぶりに本作を読み、現在自分の持っている犬走椛像が大きくこれに依存している事を改めて感じました。
一般的?な、弄られキャラなワンコ椛でなく、血腥くハードボイルドな狼兵士…と書いてしまうと、俗というかこの作品の椛の良い所をどうも表現出来ていませんが…
本作にやられた私の椛像は現在も概ねそういった方向です。
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