格付け

作品集: 3 投稿日時: 2009/09/12 04:42:36 更新日時: 2009/09/12 19:09:25
「ひぃ! いやぁ、助けてください! 助けてぇ……」

かつての同僚、上司と言えば上司に当たる彼女の哀願の姿。
部下と言えば部下になる私、犬走椛としては極めて微妙な心境である。
しかし、私は彼女を助けるわけにはいかない。
これは幻想郷のためには仕方の無いことなのだから。



今、幻想郷では“格付け投票”という行為が流行っている。
ある条件の下、立候補した有名な人妖を無名の人妖達が投票し、誰が一番になるかを決める投票である。
“敗者は勝者に絶対服従”すると言うルールの下に、あらゆる行為が勝者に許される。
そしてもう一つのルールがさらに投票者達を熱狂させていた。

今日はその最終日であった。



                         ※



今日もまた新しいネタを求めて文は空を飛んでいた。
このところは異変らしい異変がなく、誰も彼もが新鮮な何かに飢えていた。
過ぎたる平和は危険な証。退屈は多くの生命にとっての脅威である。
妖怪に限らずそれは人間にも言え、退屈な時間は何処か苛立たしくもあった。
そんな悶々とした感情を多くの人妖達が持っていた頃、文はある妖精の集まりを見つける。

見つからないように木の上からこっそりと覗いてみる。
すると、赤い服の妖精が緑の服の妖精に何やらやらせている。
緑の妖精は馬のような姿勢になると赤い服の妖精がその上に座った。
羽の根元を座られ、痛みに苦しむ緑の服の妖精を見ながら赤い服の妖精は笑っていた。
耳を済ませると話し声が聞こえてきた。

「うう、もうやめてぇ、いたいよぅ、いたいよぅ」

「ダメよ。あんたは投票で最下位だったんだから、勝者の言う事は絶対なんだから」

「そんなぁ、うぁぁ、いたいいたいー!」

「羽を動かさないでよ! 座りにくいじゃない! もう、こんな羽は邪魔ね!」

「ご、ごめんなさい、ごめんなさひぎいいいいいいいい」

そういって、赤い服の妖精が緑の服の妖精の羽を引きちぎる。
妖精は自己中心的でとても容赦が無い。そんな一面を垣間見れる瞬間だ。
だが文にとって、そんな事はどうでもよかった。
重要なのは会話の内容だった。

「投票……最下位……勝者のいう事は絶対……」

文々。新聞を使って人妖の格付け投票!
敗者は勝者に絶対服従!
これはいける!
そう確信した文は善は急げとばかりに、すぐさま行動を始めた。
まずは協力者を募るべく博麗神社に向かう。
霊夢かあるいは八雲紫にこの話を持ち込めば、退屈をしている連中が食いつくはずだ。
新聞の購読者が増えるという事を期待する一方、自分の中の飢えた感情をも満たせる。
神社につくまでの間の文の表情はとても、とても邪悪な笑みであった。



                         ※



神社には八雲紫と霊夢がいた。
幸運とはあるものだ、そう思いながら二人にこのような企画がある、協力して欲しいと要請したところ、
彼女らは予想通り快諾してくれた。退屈よりかはマシ。判断力の鈍りは著しかった。
八雲紫には企画全体のスポンサー、霊夢には投票場の見届け人となってもらった。
流石に非正規にこのような事を行うわけにはいかなかったからだ。
投票会場は霊夢の希望で博麗神社にした。
投票の際に賽銭箱に一銭投じてからというのも条件に追加された。

また投票活動の際には博麗神社周辺の経路で人間を襲うことを禁じさせた。
こうして準備が進められてゆき、第一回幻想郷格付け投票が始まったのである。



                         ※



投票への参加者と、格付けされる候補者はあっという間に集まった。
やはり皆退屈しているのだろう。
博麗神社という立地上、厳しいとされた投票者は予定よりも集まった。

ただ予想に反して候補者が集まった為、第一回の投票は一組だけとなった。
最初の一組は適当に捕まえたリリーホワイトとどこからかやってきたルーミアだった。
そして投票が始まる。

「しかし自分で企画したこととはいえ、これは不思議な状況ですねぇ」

「投票者の種別を絞らなかったせいね」

「当初の予定では認知度的にも厳しいんじゃないかと思ったんですけどねぇ、予想外です」

それは著名な人妖を除く、無名な人妖同士が存在しあう奇妙な状況だった。
本来ならば食うか食われるかという関係である。
その両者がこのように一つの事に参加しているのは不思議な感覚であった。
そして投票結果が出た。

第一回格付け投票はルーミアの勝利であった。
最初の格付けはどちらが(広義における)妖怪らしいかというものであった。
リリーは春を告げる妖精であるので、妖怪ではないのだが、
元々立候補者が居なかった場合用の予備だった為、止むを得ない。
ちなみに、比率は9:1。圧勝だった。

人妖に拍手喝采を浴びるルーミアは、意味も無く両手を広げて十字の姿勢で喜びを表現していた。

「おめでとうございます、ルーミアさん!」
「うん、よくわからないけどありがとう」
「それでリリーホワイトさんをどうしますか?」
「ん、好きにしていいの?」
「はい、どうぞお好きなように」
「ふーん、じゃあ今日のごはんね」
「はい分かりました! リリーホワイトさんはルーミアさんのご飯になります!」

妖怪も人間も、まるで熱に浮かされたように狂喜乱舞する。
射命丸文もまたその一人であった。
霊夢はお賽銭の収集により信仰の回復も出来て、あの煩い守矢に愚痴を言われずに済むと喜んでいる。
八雲紫は久々に面白い見世物になりそうだ、と扇で笑みを隠していた。
そんななか、事実上の死刑宣告を目の当たりにしたリリーホワイトだけが真っ青な顔でその場所にへたり込んでいた。

これこそが悪夢の始まりだとは誰もその時気付くことは無かった。



                         ※



第一回の格付け投票の成功を機に、射命丸文は第二、第三の格付け投票を行い、その結果を新聞に載せて報告した。
すると事情などで投票にいけなかった者達が次々と新聞を購読し、
瞬く間に文々。新聞は幻想郷中にその名を轟かせたのである。

投票者数の増加は博麗神社へのさらなる賽銭の増加を促し、その信仰は守矢のそれに並ぶほどにまで膨れ上がった。
そして“敗者は勝者に絶対服従”というルールは、ハイリスクハイリターンを好む人妖達の注目を集め、徐々にその内容をエスカレートさせ始めていた。

そして新たに導入されたのが“値札”というシステムであった。
これは増大した候補者を纏めて投票させる際に作られたシステムであった。
勝利者以外の敗者の投票数が規定の割合以下の候補者は、投票者達に札にかかれた数の命令を聞かなければならない。
この命令が全て達成されるまで、一切の能力が封じられ、身体能力なども著しく低下するというものだった。

こうしたルール作成やその他諸々の事情が重なり、格付け投票は狂気を孕むようになり始めていた。



                         ※



パチュリー・ノーレッジは人里から少し離れた小屋に居た。
汚らしい部屋。特有の青臭い匂い。
手足は拘束されてはいないが今の彼女には一切の魔法を使うことは出来ない。

彼女もまた格付け投票へと立候補した。
その時の格付け内容は誰が一番魔女らしいかというものだった。
立候補者は霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイド。
負ける要素はないはずだった。
自分こそ魔女に相応しいと思っていたからだ。
しかし結果はまったく別だった。

提示された結果はアリス>魔理沙>パチュリーであった。
結論から言ってしまえば、魔理沙の場合は多くの人妖から恨みを買っているという理由から票が伸びず。
パチュリーにいたってはその存在を良く知らない者が過半数を占めていた。
この結果消去法で票がアリスに集中して、勝利という結果に終わった。

もっと外に出ていればこんなことには……。
そう乾いた笑みを浮かべていると、また小屋の扉が開けられる。
また男達だった。視線を下にやれば彼らの目的は読めていた。

パチュリーの服には“値札”が付けられていた。
認知度不足が災いした結果、投票者達に身体を嬲られていた。
さらに不幸なのは彼女自身は余り意識しなかったその豊満な肉体であった。
それらは人間の男達にはとても刺激的で、必然的に性的な奉仕の命令が過半数を占めていた。

男達は服を脱がさず、そのまま行為に及ぶ。
服を脱いだぐらいで“値札”の効果は消えないが、この方がいいと言う男達の提案だった。

彼らは一度二度では決して満足せず、何度も行為に及び続けた。
たとえ嫌がっても身体は男達の野蛮な欲望に身体を開いていき、やがてパチュリーもまたそれに流されるように溺れていった。



                         ※



格付け投票の暴走は止まらない。
その熱の激しさは依然収まる気配を見せないままであった。
多くの著名な人妖達が参加しては、呑まれていく。
自らの価値を他者に評価される為にその身を投げ出す事など愚かな事だ。
それでもそんなちっぽけな満足感を求めて、やってくるのだ。誰もが狂気に満ちていた。

霊夢は投票による賽銭の増加を喜ぶ一方、著名な人妖が次々と立候補しては落ちていく様は、
その付近に住む妖怪達にも影響を与える。
他の妖怪達が勢力を拡大したり、本来人間が立ち入るべきでない場所にまで人間が立ち入り始めていた。
八雲紫も、事態が余りにも短期的に拡大しすぎている状況を危険視し、射命丸文に警告した。
これ以上は危険だと。事態の収拾がつかなくなる前に、辞めるべきだと。

しかし文はこれを呑まなかった。
何故辞める必要があるのか。多くの人妖がこの格付け投票を求めているのだ。
求めているなら続けるべきだ。そういって聞かなかった。

そして八雲紫はそんな彼女にこう一言残していった。
「今度は貴女の番かもしれないわよ?」と。

そう、射命丸文はまだ気付いていなかった。
企画者側である彼女は気付くはずもなかった。

まさか自分が候補者にされるなど。



                         ※



その夜、射命丸文は考えていた。
次の格付け投票のテーマは何にしようかと。
すると夜更けに家の戸を叩く音がした。
こんな時間に誰だろうか、そう思って扉を開けた瞬間、意識が飛んだ。

目覚めた時には博麗神社。
身体は縛られていた。身動きが取れない。
下を見るとそこには無名の人妖達。
そして辺りを見回すと、そこには喝采を受けるミスティア・ローレライの姿があった。

「お目覚めのようね、文」
「ゆ、紫さん? こ、これはどういうことですか…」
「見ての通りよ? 格付け投票最終回」
「な、何勝手に終わらせてるんです、それにコレは一体…」
「まだわからない? 貴女は候補者として選ばれ、貴女は負けた。それだけよ」
「え、え、え、ちょ、ちょっと待ってください、そんなはずが……」
「さぁ連れて行って頂戴。何をしても構わないわよ」
「ちょっと、やめて、やめなさいよ! 触らないで! 殺すわよ! って、あ、あれ? 風が出ない?」
「値札の回数分しっかりお願いを聞いてあげるのね」
「ひぃ! 嫌ぁ、嫌否厭いやイヤイヤァァァァァァ!!!」

絶叫めいた叫びを上げながら、男らに連れて行かれる文。

「射命丸文の確保ご苦労様、犬走椛さん」
「貴女からさん呼ばわりされると、何処か不吉です」
「ふふふ、安心なさい。取って食べるわけではないのだから」
「理由がどうであれ同じ天狗を貶めるのに協力するのは、いい気はしませんが」
「その代わり、貴女の立場について大天狗に掛け合ってあげると言ったでしょう?」
「まぁ、そうですが。ともあれ私はこれで失礼します」

そういって、連れて行かれる文を見届けると彼女は妖怪の山へ帰っていった。
そして入れ替わるように霊夢がやってきた。

「終わるとなると呆気ないものね。あの熱気が嘘のようだわ」
「多くの者が射命丸文がああなる様を望みそれが叶った結果ね。満たされたから飽きたのよ」
「そういうものかしらね、私には分からないわ」
「ともあれこれで賽銭が減ってしまうわね、霊夢。また守矢からお小言を貰うわよ?」
「別にいいわ、どうせその場限りの賽銭にそこまで拘りはしないわ」
「それなら長く続くように、信仰集めに走ればいいじゃない」
「イヤよ、そんなの。面倒臭い。それにあんたらが頻繁に来るから人間が来ないんじゃないのよ」
「うふふ、まあいいでしょう。ともあれ疲れたから寝るわ、じゃあね霊夢」
「はいはい、おやすみなさい。ったく少しは片付けていきなさいよ……」

そして霊夢は残された格付け投票会場の片付けを一人ですることとなったとさ。

めでたしめでたし。
退屈というか変化の無い日常は幻想郷では最大の敵だろうなぁ。

もう少し纏められたと思うんだけど、性欲をもてあましてついパチュリーのを書いた。
が、まるでエロくない。 抜けない。 なんてこった。
いつかネチョグロも書いてみたいものです。

なんというかこんな感じのお話を他の人が書いてるのを見てみたいとか言っちゃう私は敗北主義者ですかね。

※指摘ありがとうございます、修正しました。
※台詞部の改行を修正。 見やすいかな?
名前がありません号
作品情報
作品集:
3
投稿日時:
2009/09/12 04:42:36
更新日時:
2009/09/12 19:09:25
分類
射命丸文
格付け
1. 名無し ■2009/09/12 04:51:12
リリーかわいい..
2. pnp ■2009/09/12 05:16:25
すばらしいシチュエーションで面白かったです。
3. 名無し ■2009/09/12 08:30:35
話の流れとして、ふつう導入→状況説明→導入の続き(本番)という展開が予想されるところを、
導入→状況説明で終了してしまった風なのが物足りない感じがしますね

つまり文たんがゴミクズのように扱われる描写をもっと見たいよ
4. 名無し ■2009/09/12 09:36:39
うーん、シチェーションがいいだけにボリューム不足がもったいない。
性的な意味で嬲られるパチュリーの様子や、文がどんな目に遭ったのかをもっと描写してほしかったです。
5. 排気ガス ■2009/09/12 10:07:30
…値札…ナズーリン…格付け…
6. 名無し ■2009/09/12 15:33:46
パッチュさんの豊満な肉体をふがふがしたいよぅ
7. ウナル ■2009/09/12 17:04:19
うおおっ!
妄想がモクモク膨らむシチュレーション!
もっと展開して貰いたい!
8. 名無し ■2009/09/12 19:06:11
ミスティアw
売れない新聞屋と鰻が出ない鰻屋ではさぞ良い勝負だったでしょう
9. 名無し ■2009/09/20 15:01:05
設定も出てくるキャラもとても楽しめました。
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