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『私の中に闇がある。』 作者: うらんふ

私の中に闇がある。

作品集: 4 投稿日時: 2009/10/01 00:04:55 更新日時: 2009/10/01 09:04:55
 私の心の中に闇がある。
 それは、深い、深い、本当に深い闇だ。

「・・・こくん」

 喉を鳴らし、私はそれを飲み込んだ。血の匂いが鼻腔をくすぐる。じわりとした感触が喉を落ちていく。なんともいえない味わいが広がっていく。

「アリス、こっちも」
「・・・うん」

 ゆったりとしたパジャマのような、淡い紫のワンピースを着ている魔女、パチュリーが私にむかって手を伸ばした。差し出されたそれを手に取り、しばらく眺めた後、私はそれを口にした。

「まだ、残っているから」
「うん・・・全部食べないとね」

 薄暗い部屋の中、私とパチュリー、二人の魔女が咀嚼し、噛み砕く音だけが響いていた。私も、パチュリーも、血まみれだった。
 それどころか、部屋中が血で紅く染められていた。

 ぺちゃり。

 私の口元から、紅い液体が零れ落ちた。

「ふふ・・・あなた、まるでレミィみたいになっているわ、アリス」
「そう?」

 胸元を血で紅く染めた私に向かって、パチュリーがそういった。今、私たちがいるのは、紅魔館の地下室。そして紅魔館の主であるレミリア・スカーレットは、血を吸うときによく失敗して、胸元を血で染めてしまうのだ。

「まぁ・・・どうでもいいけどね」

私は気のない返事をかえすと、再びそれに手を伸ばした。

 肉。
 大量の、肉。
 時折見える白いものは、骨。
 あとは、血。赤。紅。

 私は、目を閉じた。

 パチュリーと私の、噛み砕く音だけが聞こえてくる。ときおり、飲み込むときの音が聞こえてくる。

 それ以外は、全て、闇。

 私の心に中には、闇がある。

 それは、深く、深く、あまりにも深く、からっぽで・・・




■■■■■




「アリスさん、おはようございます」

 明るい日差しの中、きらきらと輝く表情で、緑髪の少女が私に挨拶をしてきた。
 ちょうど人里におりて色々と買い物をすませていた私は、大きな袋をかかえたままで答えた。

「・・・」

 私は、怪訝そうな顔をして、言葉を続けた。

「どなた、だったかしら?」

 見覚えがあるような、ないような。少なくとも、私の知り合いに、こんな小さな女の子はいない。可愛らしい笑顔・・・可愛い子はたくさんいるけれど、私に声をかけてくるような子なんていない。

 私は、魔女なのだから。
 私に話しかけてくる人間なんて・・・

「分かりませんか?」

 私の思考は、そこで中断された。
 少女は嬉しそうに笑うと、彼女がしていた髪飾りを指差した。

「これと、これを見ても、分かりませんか?」

 ヘビ。
 カエル。
 その特徴のある髪飾りに・・・私は見覚えがあった。

「あれ?もしかして、あなた」
「はい」

 その少女は手を後ろで組み、あどけない笑顔を浮かべていった。

「その節は、先代がお世話になったということで、有難うございました。これからは私が引継ぎをさせていただきますので、どうかこれからも宜しくお願いいたします」

 そうなのか。
 そういえば以前、山の神社の巫女が、重い病気で倒れたと聞いた。あの頃にはもう私もほとんど神社を訪れることをしなくなっていたから、すっかり忘れていたのだけど。

 奇蹟は、起こらなかったらしい。
 いや、それとも起こっているのか?

 今でも、山には、二柱の神様と、その巫女が住んでいる。そういえば文々。新聞にスクープとして描かれていたっけ?新しい巫女・・・早苗さんが、「次の早苗さん」になったとかならなかったとか。
 どちらにしても、私にはあまり関係のないことだ。これからもずっと、神は死ぬことがないのだから、二柱だけはずっとそのままで残り、ただ仕える巫女だけが代替わりしていくのだろう。
 カエルと、ヘビの髪飾りをつけた、早苗という名の巫女が。

「おはよう」

 私はそう挨拶をすると、笑った。

「これからも、よろしくね」
「はいっ」

 社交辞令。
 私にとって大切な人間は・・・一人しかいない。




■■■■■




 私の中に、闇がある。
 私たちの中に、闇がある。

 それを、全て食べ終えた私たち二人は、血の匂いで充満したこの紅魔館の地下室の中で、お腹をささえて横たわっていた。
 立ち上がる元気はない。気力もない。
 全て、食べ終えた。お腹が痛い。心が痛い。

「パチュリー・・・」

 返事がない。ただ、はぁはぁという息の音だけが聞こえてくる。ふと隣をみやると、肩で息をして、苦しそうなパチュリーの姿が見えた。
 血たまりの中に横たわっているから、紫だった服が血を吸って、今では真っ赤な服をきているかのように見える。
 それは、私もなのだろう。
 私は、自分の両手を見てみた。

 紅い。

 血はすでに乾いている。正確には、紅いというよりも、赤黒い、というべきなのだろうか?

 ぺろり。

 私は舌を伸ばし、それを舐めてみた。
 鉄の味がした。

「はぁ・・・」

 いっぱいになったお腹をさすり、壁にもたれかかり、腰をおろし、虚空を見つめる。暗い部屋の中、意識が吸い込まれていくような気がする。深い、闇。

「・・・掃除が、大変そうね」

 こつん、と頭を壁にあてる。石の感触がつめたい。
 誰が掃除をするのだろう?
 もう。

 あのメイド長は、いないというのに。




■■■■■

「紅茶を入れましょうか?」

 私が紅魔館を訪ねたある日、そう尋ねられた。
 いつものことだ。紅魔館のメイド長は瀟洒で完璧で・・・そして気がよくまわる。

「お願いしてもいいかしら?」
「もちろんです」

 その答えと同時に、彼女の手元に、先ほどまではなかった紅茶のセットが用意されていた。暖かそうな湯気と、美味しそうな匂いがする。

「まぁ、座りなさいよ」

 声をかけてきたのは、紅魔館の主である吸血鬼、レミリア・スカーレット。面白くなさそうな顔で座っている。

「咲夜、私にもちょうだい」
「そういわれると思いまして」

 先ほどまで何もなかったテーブルの上に、レミリアの分の紅茶と、お菓子が並べられていた。

「ありがとう」

 不思議にもなにも思わず、レミリアはティーカップを手に取る。白磁のそれは、レミリアの透き通った病的な白さと対比してみえる。

「私も、いただくわね」

 そういって、すすめられたまま、腰掛ける。いい椅子だ。私の部屋の椅子とは比べ物にならない。紅魔館の調度品は、全て手入れも行き届いており、また上品に仕上げられている。
 この全てをとりしきっているのが、紅魔館のメイド長である十六夜咲夜だ。
 人間に対して懐疑的な私ですら、彼女には一目おいている。彼女は、瀟洒だ。

「あら。美味しい」
「いつもと違う葉をつかってみました。お嬢様に気に入っていただけたのなら、光栄ですわ」

 そういって、にこりと微笑む。すでに皺の多いその顔は、メイド長という役職にふさわしい落ち着きとたたずまいを与えている。
 レミリアはゆっくりと紅茶を飲み・・・カップから唇を離し、咲夜を直接みるのではなく、カップの中にうつった初老の女性の姿を見つめて、まるで吐き出すようにいった。

「咲夜も、吸血鬼になればいいのに」
「私は、今のままでいいのですわ」

 咲夜は、笑った。

 昔は、輝くように美しかった、冷徹さの中にも透き通るような美しさのあったその顔は、今では深い皺が刻まれ、美しい、とはいえなくなっている。
 いや、本当は、美しいのだろう。
 見た目ではなく、この瀟洒なメイド長は、内面が美しいのだろう。
 そう分かっていても、寂しさを感じてしまう。

「私は、いつか死ぬ人間ですから」

 飲み干されたカップを片付けながら、咲夜はいった。

「だから・・・生きている間は、一緒にいますから」

 レミリアは何かを言いたそうに唇を開けたが・・・胸を押さえて、何も言わなかった。
 風が吹いた。

 時を止めることが出来る彼女は、他人よりも早く、時を重ねていく。

 それをやめることができるはずなのに、彼女は、やめることはしなかった。
 彼女の人生は、残りの人生は、全てレミリアの為に使われるのだ。咲夜はそれを望み・・・そしてレミリアも、彼女が望むことをとめることはしない。
 たとえ運命をねじまげたくなっても。

 思いは、ねじまげることは出来ないから。



■■■■■

 私の中に、闇がある。
 深い、深い、深淵が。

「生まれそう?」
「・・・もう少し」

 壁に手をやり、はぁはぁと息をもらしながら、パチュリーが私の方にお尻を向けていた。すでに下半身は裸になっており、脱ぎ捨てられたドロワーズが床に打ち捨てられている。

「ひくひくしてる」
「ひゃぅっ」

 私は、パチュリーの肛門に指をあてた。しっとりと濡れたそこは、少し抵抗をした後、私の指を飲み込んでいった。
 人差し指を差し込んでいく。少し、まわす。そうすることにより、肛門の奥深くまで入れることができるからだ。

「あぁ・・・あん・・・」

 私が指を動かすたびに、パチュリーが甘いといきをあげる。

(この声を、魔理沙は聞いていたのかしら?)

 私の心に闇がある。

「もっと・・・優しくして・・・」
「駄目」

 パチュリーの懇願を無視して、思いっきり、指をねじ込む。

「あひゃぁっ」

 パチュリーが、悲鳴とも、あえぎ声とも区別のつかない声をあげた。関係ない。関係ない。私には、関係ない。
 私は自らのお腹をさすった。そこは、まるで妊婦のように、ぱんぱんに膨れている。中で何かがうごめいている気がする。もちろん、それは単なる気のせいで、中にはいっているのはただの・・・もうすでに・・・消化された、うんちだけなはずなのだけど。

「届いたわ」

 パチュリーの尻に顔をうずめて、指をパチュリーの身体の奥深くにまで差し込んで、私はいった。

「今、指にあたってる」
「・・・どんな感じ?」
「柔らかい」

 指を、動かす。

 パチュリーの直腸の中は、外壁はすべすべとしている。もっとひだがあるものかと思っていたのだけれど、どうやらそうではないらしい。指を動かすたびに、パチュリーのお腹の中にあるもの、パチュリーのうんちも一緒に動いていく。
 私は、残ったもう一方の手で、パチュリーのお腹をさすった。こちらも、ぱんぱんに膨れている。私と同じだ。

「うんち・・・暖かい」

 私は、パチュリーの身体の中のうんちを、ずっと触っていた。

「もうすぐ、生んでもいいからね」
「・・・うん」

 パチュリーが、こちらを見た。焦点の定まらない目をしている。頬は紅潮して、口元からよだれがたれ落ちている。

「その後は・・・アリスの番よ」
「分かっているわ」

 私は、お腹をさすった。
 中に、うんちがたくさんつまっているお腹を。

「二人で、生みましょうね」




■■■■■

「返しにきたぜ」

 いつも窓を破って入ってくる彼女が、その日はちゃんと、扉から入ってきた。ぎぃ・・・と音をたて、紅魔館の図書館の扉が開いた。

「魔理沙・・・」
「私は、約束は守るんだ」

 図書館には、私と、パチュリーがいた。パチュリーは、泣きそうな顔をしている。私だって、同じ顔をしているのだろう。見えないけれど。私だってそれは分かる。

「バカ」
「まさかバカといわれるとは思わなかった」

 そういうと、魔理沙は大きな袋を差し出した。

「借りていた本だ」
「盗んだ本でしょ?」
「違う」

 そこで、魔理沙は咳き込んだ。

 げほっ・・・げほっ

 見ているこちらが心配になってくるような咳き込み方だった。魔理沙は・・・その老婆は、骨と皮だけになったその身体が壊れてしまうのではないかと思うほど、強く咳き込んでいた。
 それを見ていた私とパチュリーは・・・少女の姿のままだった。
 肌の色も、瞳の色も、輝きも、艶も、昔と変わらない。
 変わったのは、魔理沙の方だけだった。

「あぁ・・・メイド長がいなくなってから・・・もうどれだけたったかな?」

 一通り咳が終わった後、魔理沙はそういうと、袋を広げて、中から貴重な魔道書を取り出してきた。

「昔は、中に入るのも一苦労だったもんだぜ。門番は軽く突破できるけど・・・まぁ、10回に8回は寝ていたから突破というほどのことではないけど、その後でひかえていた咲夜が大変だったからな・・・おかげさまで、10回に2回くらいしか本を借りることができなかったからな」
「盗む、の間違いでしょう?」
「借りる、で間違っていないぜ」

 そういうと、皺だらけでくしゃくしゃの顔で、それでも笑顔を浮かべながら、魔理沙はいった。

「パチュリーやアリスと比べたら、私の人生の方が圧倒的に短いんだから、全部私の死後に回収すればいいだろう?って、借りるときにちゃんと私はいつも言っていたぜ。死ぬまで、借りていただけだ。でもまぁ、死んでから来てもらうのも悪いし、ちゃんと死ぬ前に返しにきたんだから、感謝の言葉を一つもらってもいいくらいだぜ」

 勝手な言い分だ。
 魔理沙は・・・勝手だ。

 私の心を、パチュリーの心を、乱すだけ乱して、そして去っていくつもりなのだ。

「どうして」

 不老の魔法を、手に入れなかったの?
 そう聞きかけて、やめた。
 今となってはもう遅いし・・・仮に若返ることが出来たとしても・・・幻想郷の寺の主のように、若返ることが出来るとしても・・・魔理沙は、それをしないことが分かっているからだ。

 咲夜も、魔理沙も、頑固者だ。

 今になって、あの時の、レミリアの表情の意味が分かる。
 レミリアだって、咲夜とずっと一緒にいたかったのだ。死ぬまでではなく、ずっとずっと、一緒にいたかったのだ。
 時折、レミリアが一人で、何もつがれていないティーカップを、彼女お気に入りのティーカップを眺めていることがある。

「最近、紅茶が美味しくないわね・・・新しいメイド長でも雇おうかしら?」

 そういって、誰も雇わずに、もう何年、いや、何十年たったことだろう?紅魔館に、メイド長はもういない。これからも、メイド長がくることはないだろう。
 咲夜がいない夜を、ずっとずっと、レミリアはすごさなければならないのだ。

「私も」

 同じだ。
 皺皺で、文句ばかりいって、自分勝手で。
 それでいて、キラキラと輝いていて、まぶしくて。
 好きで、好きで、大好きで。
 そんな魔理沙が、もうすぐ、いなくなってしまう。

「魔理沙」
「おっと」

 私がいいたいことが分かったのか、魔理沙は私の方を振り向いた。

「全部言わなくてもいいぜ」
「・・・」
「私ももう年だから、あんまり大きな荷物をいっぺんに運ぶことができなくなってな、今日はパチュリーから借りてた本しか持ってきていないんだ。アリスのものは、また明日持ってくるから、だからそんな顔で私を見ないでくれ」
「・・・バカ」

 私はうつむいていった。

 なら、返してよ。
 私の心を、返してよ。
 返せないでしょう?返したって、受け取り拒否してやるんだから。



 
■■■■■




 私の心に、闇がある。
 もう、消えることがない闇が。ぽっかりと空いたその闇は本当に深くて。吸い込まれそうで、それでも、吸い込まれることはなくて。
 だから私は、悲しくて、切なくて。
 この悲しみを共有できるのは・・・

「魔理沙、生まれたぁ・・・」

 私は、うんちまみれになっていた。
 パチュリーの肛門からひりだされてくるうんちを、全身で浴びていた。茶色いぬるぬるとした感触が、私の毛穴全体からしみこんできてしまいそうだった。
 しみこんできてほしかった。少しでも、一緒になりたかった。

「まだ・・・出る・・・」

 パチュリーが肛門を開く。

「待って!」

 私は急いで、パチュリーの肛門に唇を近づけた。ひくついた肛門。そこに舌を差し込む。匂いが鼻腔に広がる。パチュリーの肛門の皺の一本一本が見える。その一本一本を舐めとる。

「いいよ、出して」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 ぶりゅりゅりゅりゅりゅ・・・

 固形のうんちは全て吐き出されていたから。
 出てきたのは、液体になったうんちだった。
 すごい勢いでパチュリーの肛門から噴出してくるから、私は顔中でそのうんちを浴びることになった。

「あん・・・魔理沙・・・いっぱい・・・」

 私はそのうんちを手で顔中に塗りこんでいった。少し、目の中に入る。痛い。それでも、かまわない。これは全て・・・魔理沙なのだから。

「アリス・・・次は・・・私に・・・」

 絶え絶えになった息で、全てをひりだして力のなくなった瞳で、パチュリーは私に懇願してきた。
 そのお腹は、もう膨れてはいない。
 全て今、ひりだしたから。
 地下室は、闇と、血と、糞で充満していた。

「いいよ、パチュリー」

 うんちの匂いに包まれたまま、私はいった。髪の毛にも、パチュリーのうんちが・・・魔理沙が、しみこんでいる。

「お口を、あけて」

 あははははははははははははははは
 あははははははははははははははは
 あははははははははははははははは

 私たち二人は、魔女二人は、いつまでもいつまでも、うんちをお互いに塗りたくり、咀嚼し、飲み込み、吐き出し、ひり出し・・・




■■■■■




「永遠って、どんな気持ちですか?」

 魔理沙の死んだ日、私とパチュリーは、永遠亭の扉を叩いていた。
 何か目的があったからではない。
 むしろ、何の目的もなかったからだ。
 もう、魔理沙はいない。
 けれど、私たちは生きている。
 この気持ちをどうにかしてほしかった。
 分かってくれる人がほしかった。
 そうしているうちに・・・なぜか・・・ここに来ていたのだ。

「魔理沙が死んだのね」

 迎えてくれたのは、八意永琳。
 月の頭脳と呼ばれていて・・・輝夜と共に、永遠を生きる者。

「それで、どうするつもり?」

 永琳は、私とパチュリーを迎え入れてくれた。側を、てくてくとうどんげとてゐが走り抜けていく。あぁ、この光景は変わっていない。彼女たちは、変わっていない。幻想郷は、変わらない。
・ ・・変わるのは、人間だけだ。

「どういうつもり、と言われても」
「何の考えもないのでしょう?」

 永琳は、笑った。

「生き返らせてあげましょうか?」
「え?」
「魔理沙を」
「・・・」
「寂しいんでしょう、あなたたち?」

 くくく
 後ろで、輝夜が笑っている。

「いいわよ。私なら出来る。魔理沙を生き返らせてあげることもできるし、その魔理沙が、今度はあなたたち二人だけをずーっと愛してくれるようにしてあげることもできる」

 くくく
 くくく
 くくく

「なんなら、二人に分けてあげてもいいわ。アリスと、パチュリー、それぞれに一人ずつの魔理沙をあげましょうか?好きにしてもいいわよ。なんだって出来る」

 くくく
 くくく
 くくく

「永遠をあげましょうか?ずーっと、永遠に生きることの出来る身体を。私なら、出来るわよ」

 くくく
 くくく
 くくく
 後ろで、輝夜が笑っている。
 笑っている。
 笑っている。
 でも。

「でも、それで、いいのかしら?」

 目は、笑っていない。
 永琳も、目が笑っていない。
 顔だけが笑って、その奥底は・・・深淵。深い深い、闇。

 ぞくり。

 怖い、と思った。

 私は始めて、怖い、と思った。
 昔・・・どれくらい昔だっただろう?夜が明けない夜、月の隠された夜。私は、魔理沙と共に、彼女たちと弾幕で・・・

 ぞくり。

 どうして、あんなことができたのだろう?

 魔理沙は、死んでしまった。
 私は、パチュリーは、残されてしまった。

 悲しい。
 張り裂ける。

 でも。

 永遠の前からみたら、魔理沙も、私も、パチュリーも、等しく同じで。

 ぞくり。

 あぁ。

 彼女たちは、何度この光景を見てきたのだろう。
 愛する人が死んで。死んで。死んで。

 死ぬことが、出来て。

 自分は死ぬことが出来なくて。

 供養することは出来ても、供養されることは出来なくて。

 長い長いときを超えてきたのに、この先には、それ以上に、長い長い道があって。その先は、見えなくて。いつか幻想郷も、星も、何もかも。

 消えるのに、自分たちだけは消えることができなくて。

「失礼しました」

 私と、パチュリーは、それだけいって、永遠亭を去った。

「それほどでも」

 永琳は、輝夜は、笑って送り出してくれた。
 ぱたん。
 扉が閉まる。
 明かりが中から漏れてくる。
 もう夜だ。
 でもこの夜は、いつか明ける夜だ。
 永遠亭の中と違って。





■■■■■




 私の中に、闇がある。
 この闇は、いつから出来たのだろう。
 闇が語りかけてくる。
 それでいいの?本当にいいの?
 私は分からないから、いつも答えない。

「あぁ・・・魔理沙ぁ・・・」

 私は、肛門に力を入れた。
 ぶりゅぶりゅと音がして、何度目か分からない排泄がはじまる。皺が広がり、大きくなり、中から塊がひりだされてくる。
 くちゅり。
 パチュリーが糞を口に含んでいる音が聞こえた。

「私にも、私にもちょうだい・・・」

 パチュリーを引き寄せる。パチュリーは抵抗することもなく、糞だらけの顔をこちらに向けてくる。パチュリーだけじゃない。私だって糞だらけなのだ。
 この部屋の中で、うんちのこびりついていない「もの」は何もなくなっていた。
 私も、パチュリーも、衣服も、テーブルも、椅子も、空気さえも、ひりだされたうんちがこびりついていた。

「うんち・・うんちぃ・・・」

 舌と舌がからまる。
 床に落ちていたうんちを手に取ると、まだ暖かいそれをパチュリーの背中に塗りたくる。

「あぁ・・・まるで魔理沙に抱かれているみたい」
「魔理沙、こんなに暖かかった?」
「うん」

 身体中をうんちでまぶしたパチュリーが、それをローションのようにして私に抱きついてぬるぬると引き伸ばしながらいった。

「暖かくて・・・柔らかくて・・・優しかった」
「魔理沙・・・」

 優しかったよね。
 私たちの気持ちをしっていて、それでいて、自分の好きなように行動していた。
 縛り付けることができなくて、私だけじゃなくて、パチュリーにも、同じように接していた。
 そんな自由な魔理沙が大好きで。

「魔理沙・・・」

 私は、自らの乳首に塗りこめられていたうんちを掬い取った。

「今では、あなたがこんなに近い・・・」

 ぺろりと舐める。
 うんちの味がする。苦い。苦くてはきそうだ。

「アリス」
「うん」
「私の中に、うんちを・・・魔理沙をいれて・・・」

 そういうと、パチュリーは股を開いた。
 濡れている。とろとろとした愛液がしたたり落ち、床のうんちに混ざる。

「私の子宮の中に、魔理沙を感じたいの」
「うんちで妊娠しちゃうかもよ?」
「魔理沙とならいい」
「・・・抜け駆けは許さないわよ」

 私はうんちを手に取ると、そっとパチュリーの女性器に塗りこんだ。

「一緒に、しましょう」

 にゅるり、にゅるり。
 うんちが塗りこめられていく。クリトリスにうんちが塗られ、手が動くたびに快感が走り抜けていく。
 パチュリーも、比較的大きなうんちを見つけると、それを私の女性器に塗りこめる。

 部屋が、匂う。
 私の匂い?
 パチュリーの匂い?
 魔理沙の匂い?
 うんちしか匂わない。

「あ」

 入ってきた。
 奥に、私の中の、一番大事な場所に。

「パチュリーにも・・・」

 うんちを、差し込む。
 溶けたうんちがローションとなり、私の腕が、簡単に、にゅるにゅると中に入り込んでいく。
 お互いが、お互いの中に、入り込んできていく。
 私の子宮の中に。
 パチュリーの子宮の中に。
 うんちが・・・魔理沙が・・・入り込んでいく。

「絶対に、許さないんだから・・・バカ・・・」

 私は、泣いていた。

 魔理沙が死んでから、初めて、私は泣いた。

 今まで、どうして泣けなかったのだろう?

 泣けることは幸せだ。

 パチュリーも泣いていた。

「・・・魔理沙・・・魔理沙・・・魔理沙・・・」

 かえってこない。
 それは分かっている。
 分かっていても、我慢することは出来ない。

 だって。好きなんだから。
 好きだったのではなく、好き、なのだから。

 今までも、これからも。

 だから本当は、言うべき言葉は分かっているのだ。

「バカ」

 じゃなく。

「有難う」




 私の中に、闇がある。
 いつからか、生まれた闇だ。
 闇は消えない。消す必要もない。

 魔理沙は、光だった。
 魔理沙に出会うまで、私は、生きてはいなかった。
 息をしていて、行動していたけど、ただ、それだけだ。
 私は、生きていたのではなく、まだ死んでいなかっただけだ。

 魔理沙と出会うことで、私は始めて、生まれることが出来た。

 それは暖かい光で。暖かすぎて、時には熱くて。
 いつか消える日だからこそ、それを知っていた彼女は、一生懸命生きていた。

 光は消えてしまった。
 なら闇も消えてしまう?

 違う。
 私の中に、闇がある。
 闇があるからこそ、光だって、まだ私の中に残っているのだ。

 魔理沙のことが、大好きで。
 今までも大好きで。これからも大好きで。

 だからこそ、私は先に行こうと思う。

「有難う」
「さようなら」

 私が「さようなら」って言ったら。
 あなたなら。
 どう答えてくれるだろう?

 たぶん。

 面白いことが大好きで、少し人をおちょくることが大好きで、それでいて、人一倍優しいあなたなら。

「闇の中からさようならか・・・」
「なら・・・」
「私がいうべき言葉は決まっているな」

 少しはにかんだ後、いたずらそうな笑顔を浮かべて、魔理沙は、笑って言うだろう。

「そーなのかー」







おわり
スカトロは究極の愛情表現です。
普段してはいけないことだからこそ・・・だからこそ、「愛する人」にだけは見せることが出来るのです・・・って、けーね先生がいってた(嘘)。

人類は十進法を発明しました。
数えてみましょう。

1、2、3、4、5、6、

「おーい、今何時だい?」
「7時ですよ」

8、9、10

・・・なんかおかしいな?

というわけで、スカトロと同じくらい落語好きなうらんふでした。

とってんからりのぷぅ

・・・というか、私の描く作品って、食糞率100パーセントですね(笑)。
うらんふ
http://shirayuki.saiin.net/~akaihitomi/
作品情報
作品集:
4
投稿日時:
2009/10/01 00:04:55
更新日時:
2009/10/01 09:04:55
分類
スカトロ
アリス
パチュリー
魔理沙
食糞
1. 名無し ■2009/10/01 12:11:11
美しすぎるじゃないか
2. 名無し ■2009/10/01 13:00:06
糞の話なのに不覚にもうるっと来たじゃないか
3. 名無し ■2009/10/01 19:38:27
パチュリーでる作品少ないよね
4. ぐう ■2009/10/01 20:54:44
>>闇があるからこそ、光だって、まだ私の中に残っているのだ。
かっこいい・・・・・
5. 名無し ■2009/10/01 23:44:44
スカだけではなく、普通の別れ話でもなく
最後だから曝け出したくもなるよな…

いい。すごく
6. 名無し ■2009/10/02 23:33:39
死ぬ前に本を返しに来る魔理沙に泣いた
うんこもぐもぐ
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