歌姫☆アリス

作品集: 5 投稿日時: 2009/10/13 23:18:38 更新日時: 2009/10/13 23:25:25
――突然、私、アリス・マーガトロイドの右腕に鋭い痛みが走った。
 唐突も唐突、暇を持て余して一人ティータイムを楽しんでいた時に、急に痛くなったのだ。
 余りの痛みに思わず右腕をもう片方の腕で抑えつける。何かが私の右腕の中を蠢いているかのよう。
 否、何かが私の右腕の中から『出てこようとしている』ような――そんな痛みだ。
 微かに右腕の中からぐじゅぐじゅとぐぐもったような音が聞こえる。やはり、何かが入り込んでいるらしい。
 まさか何かの虫、あるいは妖怪の一種だろうか? 早く対処しなければ――そう思った瞬間だった。
 
「ひぎぁッ!」
 
 先ほどとは段違いの痛みと、ぐちゃっという嫌な音が響いた。痛みが走った箇所を覆う服の生地に赤い色が滲む。
 恐る恐る、左手をがくがくと小刻みに揺らしながら袖を捲くると――右腕には穴が開いていた。
 そして、その穴からは――おっさんの上半身が出ていた。
 
「えっ」
「やぁ」
 
 呆けた声を出した私に、おっさんは陽気そうに挨拶をした。よくみればおっさんは私と同じ服を着ている。何故血で汚れていないのだろう。
 ……どうやら余りに予想外の出来事に私の頭は逆に冷静になっているらしい、そう思いながら私はとりあえず最優先で聞くべきことを聞いた。
 
「あの、どなたでしょうか」
「私か? 私は田口。よろしく」
「え、あ、はい。よろしく……よろしく?」
 
 一周回って冷静になった頭に段々とまた混乱が滲んできた。と、その瞬間――今度は左腕が痛んできた。
 
「いたたたたたたたァ!?」
 
 変な声を上げながらも、私は右腕で左の袖を捲くった。
 
「ひぃっ!?」
 
 痛みよりも恐怖で私は軽い悲鳴を上げた。痛んでいた左腕の皮膚が盛り上がり、もごもごと動いている。気持ち悪い。
 慌ててその蠢いている部分を抑えつけたが――右腕のおっさんがぴょんと私の左腕に飛び移り、私の右手を抑えた。
 
「馬鹿野郎! 早く、早く出てこい! ここは俺が抑える!」
 
 そのおっさんの叫びに反応したのか、先ほどよりも蠢く速度が上がった。非常に痛い。出させるものかと力を込めるが、おっさんの力は存外に強く、潰せそうにない。
 
「クソ、間に合わないか――フッ。俺も、ここまで、か。なぁおいアリスさん」
 
 段々と私の手を押さえる力が弱まったかと思うと、おっさんが話かけてきた。
 
「何よ。喋ってないで早く潰れなさい」
 
 なんとなく辛辣な言葉を投げかけてみる。だが、おっさんはにっかりと笑った。
 
「良かったら、良かったらでいいんだ。敵であるあんたにこんなことを頼むなんて馬鹿な奴と笑ってくれてもいい。だが頼む。
 もし俺の妻と娘に会うことがあったら、『愛していた』と伝えてくれ――」
「バァ〜カ! 遺言なんて今日日はやんねーぜ!」
 
 おっさんの言葉を遮るように、私の左腕の皮膚が破れてそこから出てきた別のおっさんが叫んだ。うわ、魔理沙の服着てる!?
 
「お前だけにカッコつけさせるなんてカッコ悪いこと出来ねーよ!」
 
 そう呟いて、左のおっさんも私の右手の下に潜り込んで支えになった。
 
「さぁ、ここからが正念場だぜ田口よぉ! 流山が出てくるまで、死んでも死なずに抑えつけるぜ!」
「無茶な注文を言ってくれるな、森井。……だが、なんだ。『出来ない気はしない』な」
「その意気だァ!」
 
 え、ちょ。まだ出てくるの? ……ぎゃあ! 今度は頭が痛くなってきたわ!
 
「あんの馬鹿、よりにもよって頭かよ! 走るぞ田口、走れるよな!?」
「あぁ走れる気がする。いや、走れる! いくらでもッ!!」
 
 二人のおっさんが叫んで、痛みで抑え付けの弱まった私の手からすばやく抜け出して、頭に向かって走り始めた。
 
「させないわよッ!!」
 
 わざと体を揺らしてすぐ近くに置いてあった鏡の前まで走り、頭の盛り上がった箇所を確認して――そこに向かって両手を伸ばした。
 走ったことで足場が悪かったのか、まだ彼らは肩の上のところまでしか辿りついていなかった。これなら間に合う――
 
「「うぉぉぉおぉおぉおぉおぉぉぉぉ!!!」」
「ぐぅ!?」
 
 意図していたのではないだろう、飽くまで偶然であろうが――彼らの気合の叫びが、私の耳にダイレクト響いた。
 思わず頭より耳を抑えてしまう。その機を逃すことなく、むしろ好機とばかりに私の手を足場に彼らは頭の上にたった。
 
「ま、間に合ったなァ田口」
「はぁ、はぁ……だが森井。私たちはかなり息切れしているぞ? それでアリスさんの手を抑えられると思うか?」
「思わないが――まぁ、なんとかなるだろ。なんとかするしかないだろ」
「だな」
「舐めてくれるわね……!」
 
 沸々と湧き上がってきた怒りのままに、勢いよく私は自分の頭に手を振り下ろした。
 勿論二人のおっさんに抑えられるが――先ほどよりも、ずっとその力は弱い!
 
「潰れて死になさいッ!!」
「ぐっ……あ、足が震えてきやがったぜェ田口ィ!」
「心配、するなっ……私もだッ……!」
 
 どんどんおっさんたちの力は弱まっている。もう少し、もう少しで潰せ――
 
「いぃぎゃああああああああああ!!」
「な、なんだァ!?」
「急に手を離したぞ……!?」
 
 な、なにこれェ!? 頭が痛い! 流山とかいうヤツが蠢いてる痛みじゃない、まるで頭が何かに揺らされているかのように痛い! それに――
 
「おい、田口。何か……何か聞こえないか?」
「あぁ、……あぁ、そういうことか。まったく流山め、相も変わらず小ざかしいことを」
「? ……ははっ、なるほどな! あいつらしい! 行くぜ田口、さっさとアイツを掘り起こしてやろう!」
 
 おっさんたちが何かを言っているが、聞こえない。そう、何も聞こえない! 『聞こえる音のせい』で、何一つ聞こえないのだ!
 まるで、まるで誰かが私の頭の中で――大音量で楽器を引いているかのような音のせいで!
 
「よし、穴が開いたぜ! 出てこい流山、もう止めていいぞ!」
「ふぅ……先にリハさせてもらったよ、森井」
 
 ようやく音が止み、ひぃひぃと息を切らしながら鏡で頭の上を確認すると――おっさんが三人そろってしまっていた。
 流山とかいうおっさんの服は――え、なんでルーミア? どうでもいいけどその周りにはいつのまにか楽器が置いてある。
 
「さぁ始めるぜ、田口、流山! 俺たちの初ライブだ!」
「おぅよ!」
「あぁ!」
 
 田口というおっさんはベースを、流山というおっさんはドラムに座り、森井というおっさんはギターを持ってマイクスタンドの前に立っていた。
 
「お前らー! 今日は来てくれてありがとなー!」
「「「「「うぉぉぉぉー!!」」」」」
「ちょっ」
 
 気がつけば、いつのまにか私の体中からたくさんのおっさんが顔を覗かせていた。
 
「それじゃ一曲目、『HighWayToTheYourLife』!!」
 
 森井がそう叫ぶと共に、ドラムとギターとベースの音が響いて、曲が始まった。なんとも粗忽な、だが耳にすぅと馴染む曲。
 
――夜のハイウェイに 綺麗な光を輝かす 僕らを乗せた君の車
 
 まだAメロだというのに、何故か私の目からは涙が溢れてきた。あぁ、なんて素晴らしい曲調なのかしら。
 
――爆音響かせ僕らは行くよ 君の車で僕らは行くよ 君と一緒にいつまでも どこまでも
 
 私の色んな記憶が呼び起こされていく。悲しい記憶も寂しい記憶も全て彼らの歌声が塗り替えていく。
 
――さぁ! 飛び出せ! 今こそ分岐点! サービスエリアなんて必要ない!
 
 これが歌。これが彼らの魂! 気がつけば私も、体中のおっさんたちと共に――全身全霊を込めて、拳を何度も何度も振り上げていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「とまぁこれが私が歌手になろうとしたきっかけなんですよ、文さん」
「なるほどー。まさかそんな経緯で歌手になっただなんて」
「えぇ、当時は本当に驚きの連続でしたが――この道に入れたのはあの出来事のお陰です」
「なるほどなるほど」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「まぁでも残念でしたね、歌手を目指して自費でCDデビューしたはいいものの一枚も売れず、
 その際の借金でこうやってAV女優になってしまったんですから」
「失礼なことを言わないで下さい。私、この仕事好きなんです」
「す、すいません」
「いいんですよ、どうせ友達も誰もわかってくれませんでしたから。みんな私に近寄らなくなっちゃった」
「……それじゃあ今日の撮影の概要をお話ししますね。今日のタイトルは『大乱交(潮)スプラッシュブラザーズ』です。
 で、こちらが男優さん三人。右から田口さん、流山さん、森井さんです。彼らも昔歌手だったけど落ちぶれてこの道に」
「えっ――」
「「「あっ――」」」
 

――そうさ、ラブストーリーはいつだって――突然に始まるんだ!(完)
前にみた悪夢を参考にノリと勢いだけで書いた
狼狐
http://demonwolf.syuriken.jp/
作品情報
作品集:
5
投稿日時:
2009/10/13 23:18:38
更新日時:
2009/10/13 23:25:25
分類
アリス
歌姫
栄光への道筋
けいお○!
多分分類的にはナンセンス
1. 名無し ■2009/10/13 23:23:44
(^_^)


(^_^) えぇっ・・ww
2. risye ■2009/10/13 23:28:58
えっ・・・
3. 名無し ■2009/10/13 23:36:15
えっ
4. 名無し ■2009/10/13 23:37:23
えっ
5. どっかのメンヘラ ■2009/10/13 23:49:25
Good end・・・なのか?
6. 名無し ■2009/10/14 00:02:38
えっ・・・
7. 名無し ■2009/10/14 00:18:15
狼狐、一緒に病院行こう・・・ついてってあげるから・・・
8. 名無し ■2009/10/14 00:25:18
あんたおかしい…おかしいよ…
9. 名無し ■2009/10/14 00:25:21
俺が病院になろう
10. 名無し ■2009/10/14 00:45:43
ぜひとも林先生に見てもらうことをおすすめする
11. 名無し ■2009/10/14 00:50:17
ここが病院だ
12. 名無し ■2009/10/14 01:04:11
唖然
13. 名無し ■2009/10/14 02:10:51
悪夢なら仕方無い
14. 名無し ■2009/10/14 02:17:49
狂気が伝染しそう。
もっとやれ。
15. 名無し ■2009/10/14 02:49:23
これは凄い
16. 名無し ■2009/10/14 03:20:41
俺にはこういうの、一生書けない
推敲とか勉強とか、そういうののベクトル上に無いもの
近寄る術が無い
17. 名無し ■2009/10/14 04:04:02
AVとか売春とかいいよね。
主に愛情が混ざらない性行為は人間の本質を表すような気がして大好きだよ
18. 名無し ■2009/10/14 04:30:32
処置なし!
19. ぷぷ ■2009/10/14 06:15:16
これはひどいw
20. ジョルジュ ■2009/10/15 02:32:55
/(^o^)\ナンテコッタイ
21. 名無し ■2009/10/17 13:06:26
急に全身が溶けたり、奇形になったり、おっさんが生えてきたりアリスさんも大変ですね
名前 メール
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