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『真夜中のデッド・リミットA−1』 作者: マジックフレークス

真夜中のデッド・リミットA−1

作品集: 5 投稿日時: 2009/10/24 05:43:44 更新日時: 2010/05/08 19:41:07
このSSは同名小説への勝手なオマージュです。
一部幻想郷の設定、地理、キャラクターに独自の解釈と決め付けがあります。
自分は小説と呼べるものを書くのはこれが初めてです。そのため書式や表現に気になる点がありましたらご指摘頂きたいと思います。




























“弱さは宿命であり、強さは安全を意味する”







   午前7時



 楽園の素敵な巫女 博麗霊夢は自分の能力を駆使して空を飛んでいた。目的地は地霊殿、正確にはそこから繋がった間欠泉による温泉「地霊の湯」である。季節は冬、この場に地霊殿の主であるさとりがいたならば、降りしきる雪の中、朝風呂で温泉につかりながら幸せに浸る想像を覗けただろう。

 しかし、その温泉が目前にまで近づいたときに異変は起こった。その異変に気づいたのは霊夢とスキマ妖怪八雲紫、そしてその式たる藍の三名だけであろう。なぜならばそれは幻想郷を囲う結界に起きたからである。結界の一部が崩れ、確認してはいないがおそらく外界と繋がったようだ。それだけならば特に問題ではない。たびたび起こることであるし、自分か八雲が修復すればよく、火急を要する問題でもないので数日以内に解決出来ればいいだろう。温泉をふいにすることも無い。
 結界がほつれている間に外界の人間が幻想入りでもすれば、そしてその者が博麗神社に辿り着ければそのものを送り返す手間にはなるが。
 とはいえ結界が崩れたのは博麗神社の付近なのだ。仮に結界が崩れた直後に外界人が入っても、自分が温泉に浸かった後で十分に間に合うだろう。あの付近で人を襲う度胸のある妖怪はいないからだ。

 そして何よりこの時の霊夢は気づいていなかったが、巫女の強力な勘が神社に戻ることよりも地霊殿に向かうことを無意識下で優先させたのだ。
 すなわち、神社に戻ることは危険であると。





 八雲藍は結界の切れ目が博麗神社に近いこと、冬に入り主が冬眠していることで仕事が山積していることを思い、修復は博麗の巫女に任せることにした。彼女が気づかないはずも無いだろうし、明日になっても直っていなければ主のように皮肉の一つでも言いながら指摘してやろうかと。







   午前8時



ズズーーーーーン

 長い地鳴りの音とともに大地が僅かばかり揺れた。多くの人妖は小さな地震と考え、また一部の者は寝ていた。天人の仕業と考えたものもいたかもしれないが、なにぶん問題になるほど大きい揺れではなかった。
 しかし、これは異常なことだったのだ。幻想郷全域がほぼ同じ規模の横揺れだったのだから。そして、その異常は結界の管理者にははっきりと認知できた。

「藍! 今の衝撃を即座に分析しなさい」

 先ほどまで冬眠していたスキマ妖怪八雲紫は布団から飛び上がる様に起きると、台所で茫然自失に陥っていた自身の式に命令した。

「は、はい、ただいま。これは大地の揺れではありません、幻想郷全域が揺さぶられたようです。幻想郷を囲う結界が振動したとも考えられますが、結界そのものに異常はありません。しかし、しかしです。外界との接点が………感じられません」

 それを聞いた紫は少し思案するような表情をして考え込んだ。彼女にも現状は感じ取れている。しかしなにぶん寝起きであったうえ、寝ていた間の情報が必要である。そのための式であり、実際彼女は有能であった。

「……幻想郷は外界と幾つかの点で接続しているわ。だから幻想郷には外界から忘れ去られたものが流れ着く。幻想郷を創り上げた私や博麗の者は妖怪が妖怪として生きられるため、異能の力を持つ人が人として生きられるためのシステムを構築したの。幻想郷にいる人間はある意味で妖怪の家畜であるけど、絶対数が限られる以上獲りすぎはできない。そのための妖怪退治の人間。そして、臨時の食料及び補充として外界との接続は必須。ゆえに、博麗大結界は世界から僅かばかりずれた次元に構築された空間。それが今の衝撃で接点が切り離されたことにより少しずつ漂流し、いずれは元の世界との交流が不可能な場所に移動してしまう」

「なぜ、このようなことが? いえ、それより紫様の能力ならばこの異変を解決できるのでは? あるいはスキマから直接外界に移動することが可能なのではないでしょうか?」

「わからない。わからない。できる。質問の答えよ。それより、何か兆候は無かった?」

「あ!! そういえば半刻ほど前に博麗神社付近で結界の断裂がありました。申し訳ありません! 報告を怠りました。私がもっと注意すれば……」

「報告しなかった理由を説明しなさい」

 紫の言葉に部下を叱責する様なニュアンスはなかった。ただ、必要な情報を得るための手続きとしての質問だった。

「それほど大きくない断裂だったのと、博麗神社の近辺ということで巫女に任せようかと。よくある事と考えていました。まさかこれほどの大事になるとは……」

「藍がそう判断したのならそうなんでしょ。私が起きてても同じように考えたかもね。霊夢がミスするとは思えないけど、もしかしたら今神社にいないのかもしれないわね」

「異変の解決も博麗の巫女に任せますか?」

「そもそもこの異変を起こしたものが幻想郷にいるかどうかも問題ね。自然に起きたことであるならば誰かを退治しても無意味だし、それに……あまり考えたくないけど最悪のシナリオもあるわ」

「最悪……ですか?」

「そう、最悪。私たちには対処できないし、かつこれを起こしたものは私たちに対して敵意を持っている。すなわち、外界との断絶は私たちに対する宣戦布告であると同時に補給路を断つ、といったところかしら」

 普段自分の主がこのようなことを口走る場合、大抵は口元に嬉しそうな笑みを浮かべながら大仰に言ってのけるのだ。その時藍は、“ああ、また自分はこの方の楽しみにつき合わされるのだ”と感じるものだが、この時ばかりはそうではなかったようだ。紫は真剣な顔をしていたのだから。

「戦争ですか。そのような事を考える者に心当たりが無いわけではないですが、しかし補給路を断った以上は人を食べる妖怪の可能性はなくなりますね。後は竹林の不死者や天人くらいしか考えられません。以前に彼女たちが起こした異変を考えると不可能なことでもなさそうですね」

「私が言っている最悪はそういう事じゃないわ。それなら対処できるし、そもそも私がさっき“私たちと”言ったのは幻想郷の全勢力のことよ。私の予想では敵は幻想郷の外部勢力って意味だったんだけど、この外部は天界や冥界、彼岸のことではないわ」

「……つまり外界のことですね」

「そう、彼らの技術進歩はめざましい。我々にとってたいした期間ではない数十年という年月。彼らの寿命ほどの年月。その間にどれだけ世界が変化するのか、千年も前に外界の進歩についていけずに幻想郷に引きこもった私たちには想像すら及ばない。まして当時の脅威だった外界の進歩は我々の存在を置いてきぼりにした文化的なものであって、現在のものはそれと同時に技術的なものもある。彼らの科学技術が博麗大結界の仕組みを解き、その力を上回ったのかもしれない。それが私の考える最悪の可能性」

「彼らは幻想郷に侵攻しようとしているのですか!? 私たちはただでさえ追いやられた身であるにもかかわらず! なんと恥知らずな……」

「まあ、私たちも向こうから流れ着いたものを勝手に使ってたり人間をさらってきたりしてるけどねぇ〜。いずれにせよ可能性の一つに過ぎないわ。ただ、もしそうだとしたら一番危険なのは霊夢ね。藍の言う結界の断裂は外部からの侵攻の可能性があるから、霊夢が博麗神社にいたら真っ先に捕らえられるなりしているかもしれない。でもそう考えると世界が断絶したことは解せないわね。侵略するにしてもそんなことをする必要はないし、ましてや誰かが幻想郷に入ってきたなら帰れなくなるのですもの。とにかく藍は各勢力のもとに赴き、状況の確認をしつつ今までの話の流れをかいつまんで説明してきなさい」

「しかし紫様の仮説が正しいとは限らないのでは? まだ容疑がかかっている相手と接触して情報を与えることも無いかと。それに我々も情報が少なすぎると思います」

「だから私はこれから霊夢の所に行って状況を見てくるわ。それと私のほうから情報を集めておこうと思うの。藍、あなたを危険に晒すことにはなるかもしれないけど、容疑者だからこそ話をしておいて損はないわ」

「わかりました、そういうことでしたらお任せください。それに紫様から危険な仕事を申し付けられるのは慣れています」

 頼もしい部下を見て微笑んだ紫は、その一瞬後に博麗神社までのスキマを開いた。





ゾクッ―――――――
 博麗霊夢は今まで感じたことの無い悪寒が全身を通り抜けたことを意識した。
 セルシウス度で41を指し示すであろう湯に肩まで浸かっているというのに寒気がとまらない。先ほどの揺れと同時に霊夢は異変を感知していた。

「結界が……。いえ、これは結界が壊れたんじゃない。境界が……消滅した?」

 八雲紫が感知したのと同時刻に博麗の巫女も同様の異変を察知していた。しかし、彼女の全身を包んだ悪寒の正体は“それ”ではなかった。この時も彼女に働いたものは博麗の者を博麗たらしめる証拠、勘であった。霊夢の勘が告げていたのだ、今最も危険なのは自分であると。それが勘である以上理由といった仔細は全く分からない。しかし、霊夢にとってそれは確信と言ってもいいのだ。

 今まで幻想郷のあらゆる勢力と紛争になり、そのつどそれらの勢力の起こした異変を解決してきた。しかし、それは自身の定めたスペルカードルールの下のものであり、相手の命を奪わない決闘によって決着をつけるものであった。まして自分が博麗の巫女である以上、幻想郷内部の何れの勢力も自分を本気で殺そうとすることは考えられない。自分が死ねば幻想郷に重大な危機が訪れるのだ。仮に紫が私の分をカバーしつつ新しい博麗の巫女を早急に用意すれば、何とか崩壊は免れるかもしれないが、そんな命を懸けた博打を打つものは幻想郷にはいないだろう。

 そんな自分の命が危険に晒されている。博麗霊夢はまったく別の観点から八雲紫の想像した最悪の可能性に至った。しかも、それは霊夢にとっては確信に近いものなのである。
 である以上、彼女は今までにない行動を起こさざるを得ない。異変を解決しに行動しなければならないはずの巫女は、幻想郷を守るために自分の命を守らなければいけなくなったのだ。誰かを調伏するのではなく、自分の身を守る。霊夢は自身の能力こそ結界という防御能力ではあったが、戦闘のスタイルは攻めである。単身次から次へと邪魔するものをなぎ倒すことで使命を全うしてきたのだ。

 霊夢は考えた。私の勘はよく当たる。つまり私は何者かに殺されようとしている。死にたくはないし、幻想郷を守る代々の使命の意味でも死ぬわけにはいかない。今までのやり方ではおそらく通用しないだろうから―――

「私一人じゃまずいわね……。こんなことは初めてだけれど、誰かに助けてもらわなくちゃだめね。私自身は周囲に強力な防御結界を張って、その中で博麗大結界と防御結界の維持のために集中する。その上で私の周りを守ってもらうのと、私を殺そうとする不届きなやつを成敗してもらうためにも仲間が必要だわ」

 幻想郷を滅ぼそうとしているのだから、原則として全ての幻想郷の住人に協力を仰げるはずである。その中で今最も近くて力のある勢力は、山の神と天狗・河童の力ある妖怪の大勢力、そして守りに徹するにはうってつけの地底勢力である。彼らに攻守をお願いすればまさに鉄壁、それにおそらく紫はこの異変に気づいているだろう。あの幻想郷の管理者が今まだ寝ているとは考えにくい。

「とりあえず両方に話をつけるところから始めなくちゃ」

 そういい残し、素早く服を着終わった巫女は山の連絡役で顔見知りの新聞屋に会いに行った。





 紫はスキマを通じて一瞬のうちに博麗神社の中に移動した。場所は霊夢の寝室。よく来ているのだろうか?
 そこに霊夢の姿は見えなかったが、周囲を一通り見渡しながら匂いを嗅ぐ。部屋や建物に荒らされた形跡はなく、血の匂いもしない。ここで霊夢が襲われた可能性は低いといえるだろう。寝込みを襲われ無傷で連れ去られた可能性もあるが、霊夢が起床してから行ったと思われる幾つかの痕跡があるのでそれも薄い。
 雪かきでもしているのだろうか。

「霊夢〜いないの〜?」

 そう口にしてから外に出ようとしたとき、紫は気づいた。霊夢のにおいが強く残っていたから見逃しかけたが、ここには普段はない別の匂いがある。非常に薄いが他の人間の匂い、おそらく男。そして油の匂い。霊夢もたまには油を使った料理もするかもしれないが、それとは少し違う鉄臭い油の匂いだ。
 それに気づいた紫は侵入者の存在を確信した。状況から考えるに霊夢は元々この場所を離れていたのだろう。まだ彼女は侵入者の手には落ちていないと考えられる。しかし、その者たちがここにいないとは限らず、彼らも霊夢の帰宅をこの場所で待ち構えている可能性もある。

(ここでそいつらの顔を拝んだ上で滅ぼすことが出来れば、それに越したことはないのだけれど)

 相手の戦力も把握していないのにこちらから仕掛けるのはリスクが大きい。たとえ彼女が幻想郷で上位に入る力の持ち主であったとしても。ましてやその者たちがここで霊夢を待ち構えていたとしたら、先ほど迂闊にも上げてしまった自分の声で気づかれたかもしれないのだ。

(今ここに居続けるのは不利になるわね。おそらく霊夢はすぐには帰ってこない。あの子には巫女としての勘が働くから、ここが危険であれば近づくはずはないわ。なら私のほうから霊夢を探さなきゃ。そのために必要なのは……)

 紫は冷静に周囲の状況を分析した上で再度スキマを開いた。







   午前9時



 霊夢は妖怪の山で最も話のしやすい相手、射命丸文に話をつけたかった。彼女ならこちらの意図を汲み取るのも早いだろうし、立場と交渉術を用いて妖怪の山の有力者に話を取り付けたり、幻想郷最速を自負する彼女に他勢力の下に共闘を呼びかけに行ってもらえるかもと思ったのだ。
 しかし別段彼女の家を知っている間柄でもなく、かつ今日の揺れをスクープとしてどこかに行ったかも知れない以上、探して接触するのは時間のロスが大きいと霊夢は考えた。

「それならとりあえずあの二柱に話をつければ良いだけのことよ。名目上とはいえあいつらは一応は大天狗の上にいる存在なんだし、早苗なら話も通じるでしょ」

(ただ、あの新参たちが幻想郷の危機に関して理解があるか分からないから話しは長くなりそうね)

 そのようにひとりごちながら霊夢は妖怪の山の神社を目指して飛んだ。途中で文と会うかもと思ったがそうはならず、哨戒の天狗とすらも湯に浸かりに来た時に遭遇して空中で会釈されたきり会わなかった。





 紫は天界に来ている。知り合いが神社にいなかったらここだろうと思っただけのことだ。

「お、珍しいねあんたがここに来るなんてさ」

「あなたに頼みごとがあってきたのよ。その前に聞きたいのだけれど、さっきここも揺れたかしら?」

 二本の角を生やして少女のような外見をした彼女は、伊吹萃香という名の鬼である。

「な〜んだそのことか。ああ、ここも揺れたよ。天に浮く天界が地震というのもおかしな話だ。あの天人も揺らされる側になってみれば思うところもあるだろうよ」

 ケタケタケタと萃香は笑ったが、すぐに真面目な顔になる。

「あれは幻想郷全部が揺れたって事だろう? 最初は私も不思議なことだと片付けていたけど、冬眠中のあんたが出張ってくるって事はこいつはヤバイって事なんだろうね。頼みごととやらを聞きたいね」

「お願いしたいことは二つ。霊夢を探して欲しいというのと、幻想郷に外から侵入してきた者達がいるみたいだからその者達の監視、というよりは偵察ね。霊夢は私も探すけど、あなたなら霧になって幻想郷に広がれば広範囲の捜索が可能でしょう? 相手に気づかれることもないのだし」

 萃香は少し思案するような表情をした後で答えた。

「分かった、ここから下に降りて霧散しよう。霊夢を見つけたらあんたの所に萃まって教えるよ。用件は霊夢に直接会って話をするんだったら私はそれでいいんだろう?」

「ええ、お願いね」

「だけど私みたいな鬼に偵察とか監視とかを頼むのは筋違いさ。そういうのは天狗達に頼むもんだよ、それが本職なんだから。私は霊夢のことをあんたに伝えたら、あんたの言う侵入者を探す。だから紫はここで待つといいよ。それとそいつらを見つけたら……そうさな、そいつらの前に姿を現して力比べを挑むかな」

 紫の心中に別段驚きはなかった。鬼とはそういうものだし、萃香との付き合いは長いのだ。まして、彼女がどういう行動をとるかは分かりやすいのだから。

「萃香、私は嫌な予感がしているのよ。霊夢を探すのはあの子が危ないと思えるから、そしてあなたにしてもただですむ相手である保証はないわ。だから色々と知っておきたいの、そのための偵察よ。必要なら天狗に頼むけど、あなたなら進入した者達の場所が同時に複数把握できるから頼んだのよ」

「そんなことはわかってるよ。私らは昔から、徒党を組んで私らに対抗する修行を積んだり小細工を考えてきた人間たちに仲間を退治されてきたからね。鬼達の中にはそれを力でかなわないから卑怯な行為に走った野蛮な連中として憎んだものもいたけどね。私にしてみれば鬼たちは最初から自分が勝つことが分かっている勝負をしているんだ、勝負の意味を成してないのはどっちもどっちさね」

「………」

「外から来た人間が、そういう“戦いに真剣な人間”だって言うのなら、私は私の流儀で勝負したいだけだよ。それで私が負けて、死ぬって事になったとしたら。私は鬼達の勝負に負けて喰らわれてきた人間達の気持ちが、少しは分かるってもんだろうさ」

 萃香は理解していたのだろう。霊夢の身に危険があるということは、幻想郷の存亡がかかっていることなのだと。幻想郷がなくなれば、鬼達の居場所はもうどこにも無いのだ。であるがゆえに紫は全勢力を共闘に導いて戦うべきと考えたのだろうが、萃香はそれよりも自身の戦いがしたかったのだ。
 紫のような、天狗のような、人間のような戦い方ではなく、鬼の戦い方がしたかった。

「わかったわ。それじゃあ、霊夢のことはお願いね」

「あいよ」

 それだけで両者には十分だったのだろう。
 スキマ妖怪は天界に残り、鬼は霧散して下界に散った。





 哨戒の白狼天狗である犬走椛は真っ先にそれに気がついた。白い雪上を白い服を着た者達が移動していて、それを雪の降る朝にこの距離から発見できるのは彼女だけだろう。
 彼女は千里先を見通す能力を有しており、球体表面でない幻想郷では地表でリーマン幾何学を適用する必要は無い。つまり障害物と高低差さえなければ、地平線の存在しない幻想郷の結界の端から端まで見届けられるのだ。そして彼女の能力は千里先の人間大の生物の運動がくっきりと目視できるということだ。しかもレンズの類で遠くの映像を拡大しているのではない。彼女の目には遥か遠方の点にしか見えないものがぼやけず見えているだけであり、仮に千里先の人間が手信号を送っていれば、それを認識できる程度の能力なのである。逆に見えていても動かない物の意味するところを理解することは難しい。しかし、スコープなどで映像を拡大してみることはすなわち視野の狭さに繋がる。椛はそれをせず120°程の視界を確保しつつその精細を見ることができ、対象が運動していればそれを発見できる。それは彼女の哨戒としての能力の高さに繋がっている。
 余談だが、空にある星を“みえる”というのは見通せるのとは違う。そうでなければ普通の人間でも7万5千里先の月が見え、数百万光年先の恒星が見えるのだから。

「裾野からこちらへ向かって移動している……。数は18、大きさと地上を移動していること、複数が連携のとれた移動を行っているからおそらく人間。全員白い服を着ている。近づく速度は遅いけど……これはやはり警告すべきでしょうね」

 その時椛が見た者達はある種の陣形の様な物を9人ずつで2つ組みつつ山に接近していた。椛は相手が妖怪の山の勢力圏に入るのは、今の速度から計算しておよそ半刻後とみて、それならばこちらから出向いていって牽制すべきであると考えた。人間が妖怪の山に訪れることは河童との技術交流等たびたびある。しかしその場合大抵は事前に通知されているし、何より向かってくる者達にはどことなく胡散臭さとでも言うか嫌な感じがしたのだ。

「文さんに言ったら“おもしろそう”とか言ってインタビューして記事にでもするのでしょうか。しかし、あの者達の雰囲気には妙な感じがします。統制の取れた行動をしている人間というのは注意が必要ですね」

 誰に言うでもなく口にして椛は持ち場から飛翔した。彼女の役割は妖怪の山に入ってきたものを捕捉し、それが敵意あるものであれば威力偵察をかねた戦闘を行うことである。偵察が目的なので、相手が弱ければ打ち負かして追い返し、相手が強ければ退却して上に報告すればいいのだ。
 近づいてきた者達は飛行してきた椛に気がついたようで動きを変えた。数名がその場に伏せて姿を隠そうとし、残りも動きを止め椛を観察しているようだ。

(18人のうち4人が伏せたようですね。しかし空から見れば丸見えなのですが……)

 椛は彼らに空から近づいていきながら少しばかり呆れていた。人間の考えることはよくわからない。
 そうしているうちに椛は彼らのすぐ傍まで飛んできた。過去椛は不法侵入した者に対して会話することも無く弾幕で攻撃したことがあるが、それはその者が周囲と戦闘しながら山に向かってきているのが持ち場から見えたからである。まあ、その時はあっさりと撃退されてしまったが、本来は言葉の通じる相手には会話してお引取り願っているのだ。そもそも普通の人間にいきなり弾幕をぶつけたら死んでしまうかもしれないし、それは天狗の評判を下げ人間を盟友とする河童たちと不仲になってしまう。
 そして椛はその者達と会話をするために先頭を歩く者の前に3mほど間隔をあけて降り立った。

「これより先は妖怪の山です。用が無いのならお引取り願いたい」

 椛は天狗としては人間に対しかなりへりくだった物言いで目の前の者達に告げた。元々下っ端天狗で自尊心が大きくなかったことと、上司の文の影響かもしれない。
 目の前の者達はお互いに目配せしあい、そのうちの一人の男が切り出した。

「私たちは博麗の巫女と呼ばれる方に用があって伺いました。こちらにいらっしゃると聞いたのです」

 その男が言っていることは事実だろう。椛は朝湯に浸かりに来ている霊夢を見ているのだから。その者達が見慣れない格好をしている事が気になったが、つまり彼らは外の世界から来た者達ということだろう。であるならば気になるのは人数だ。普通は幻想入りする外界人はたいてい1人だと聞いている。何故18人もいるのだろか? ……18人? そういえば椛は地に降り立ってから数えていなかったが、目の前にいるのは14人だ。

(伏せた4人は同じ高さからは見えにくいのか)

 彼らがとった行動の意味は分かるが、いずれ戦闘になるとすれば意味を成さないのだ。まあ、外界人なら妖怪に対して必要以上に警戒したり恐れたりしてもおかしくは無いのだろう。椛はそう考え、彼らの目的を達成させてやれば何事も無くこの件は片付くだろうと踏んだ。

「ええ、博麗の巫女ならば妖怪の山にある地霊の湯にいると思います。しかしそれも一刻ほど前来られたことなので、現在もそこにいる保障はありません。おそらく博麗神社に戻られたかと思いますが、そうでなければ山の守矢神社か地霊殿でしょう」

「地霊の湯とか場所の名前はよく分からないのだが、教えてはいただけないだろうか?」

 聞き返してきたのは先ほどと同一の男だったのだが、もみじは気にならなかった。

「地霊の湯は山の中腹の間欠泉から吹き出たお湯の温泉です。地霊殿はその付近にある洞窟の奥にある地底の建物のことで、守矢神社は山の頂上付近にある風の神を祭った神社です」

 相手の男は不思議そうな顔をして思案し始めた。椛は地底の建物のくだりが外界人には理解しづらかったのだろうと考え、こう続けた。

「あなた達が山に入る必要は無いですよ。私が巫女をつかまえてあなた方のことを伝えましょう。それにいずれ巫女は博麗神社に戻るでしょうから、あなた方も博麗神社で待つのか良いでしょう」

 そういって椛は男たちに別れを告げ、山に戻ろうとした。

「ああ、お待ちください」

 男は椛を呼び止めて右腕を上に掲げた。
 椛は振り向いて男を見る。自然と彼の顔と右腕に視線がいく。

「?」

「ご親切に有難うございました」

 そういって男は右腕の肘から先を前に倒した。

「???」

 椛は膝から崩れ落ちて雪の中に埋もれた。頭部と胸部からおびただしい血を流し、ピクリとも動かなくなった。大地は真っ赤なカキ氷の様相を呈する。

 倒れる前に絶命していただろう。頭部には眉間と右目があった場所に穴が開き、胸部は左胸と胸の谷間の計4箇所に小さな穴が開いていた。それは人間の指ほどの穴だったが、倒れた後の椛の後頭部には大きな瓢箪のような形をした穴があき、背中と腰には拳ほどの穴が一つずつあいていた。
 亜音速で飛来した金属体は椛の眉間に吸い込まれるように激突し、頭蓋骨を粉砕して前頭葉と脳幹を滅茶苦茶にした後で後頭部に大きな穴を穿って飛び出していった。同時に胸の谷間に突き刺さったものは、たやすく肉を裂きながら脊髄に衝突して方向を変えながら椛の右わき腹から抜けた。それから200ミリ秒程遅れて椛の右目のすぐ下と左胸に同様のものが入っていった。目から入ったものは残っていた脳をかき回しながら後頭部から飛び出し、その穴は眉間を貫いたものが作った穴と繋がった。左胸に入ったものは僅かに骨に当たりながら真っ直ぐ心臓を貫いて反対側から飛び出していった。これにより脳幹の生命維持機能が途絶えたことが伝わる前に、椛の心臓は大量の血をポンプのように撒き散らしながら停止した。

 犬走椛の死に顔を残った口と左目から読み取るならば、“不思議そうな顔”となるだろう。彼女は自分が死ぬ瞬間までそれに気づかなかった。何の音もしなかったし、目に見える範囲で動いたものは目の前の男の腕だけだ。彼の腕に気をとられていなかったならば、伏せた人間がいたところが一瞬光って自分に向かって飛んで来る物体を視認できたかもしれないが、四分の一秒も無かったであろうその時間では何も出来なかったことに違いは無い。
 痛みを感じることも自分が死んでいくことも分からなかったのは、こと人間にとっては幸いな死に方の一つに入るかもしれないが、妖怪にとって同様であるかどうかは分からない。彼女を殺した者達も興味ないだろう。







   午前10時



 霊夢は守矢神社に着いていた。その境内には射命丸文と東風谷早苗の二人がいて、祭られている神たる八坂神奈子と洩矢諏訪子の2柱も社内にいるらしい。霊夢は現状と自分の勘に関することをとりあえず二人に説明した。

「結界の管理者である霊夢さんが結界に関する異常を感じたことや、外界との繋がりが無くなったとおっしゃるのでしたら私はそれを信じるしかありません。私で協力できることがありましたら仰ってください。ただ……」

「ただ?」

「その…勘というのは……どうなんでしょう? 今のお話を聞くと、幻想郷の結界がよくないことになっているのならば霊夢さんやその八雲さん達で直しに行かなければならないのではないですか?」

「そうしたいのは山々だけど、私が死んだら幻想郷そのものが滅びるわ。そして私を殺そうとしている者がいる。だから守ってほしいのよ。そいつらをやっつけてから対処を考えることにした。わかった?」

「そこがよく分からないんです。霊夢さんが殺されるかもって部分は霊夢さんの勘なんですよね?」

 ハァ、と霊夢は溜息を吐いてただ一言。

「そうよ」

 ……勘などというものは他人に説明できるものではないのだ。一緒に異変を解決した友人や古くからいる妖怪などは、博麗の巫女の勘というものを知ってはいるが、この新参は自分では奇跡などと言う抽象的にも程がある能力を振り回すくせに、勘は非科学的だから信用できないとでも言うつもりだろうか。

「あんたはさっきから黙ってないでなんか言いなさいよ」

 先ほどから霊夢の説明を手帳に書き記していた文は、こっちは危機的状況だと言っているにもかかわらずとても楽しそうだった。

「え〜はいはい。とりあえず早苗さん、霊夢さんの言ってることは本当ですよ。幻想郷が滅ぶ〜というくだりも、勘がよく当たるというのもです。私はこれから霊夢さんの言うとおりに大天狗様のところにお話を伝えてきます。それから椛にでも声をかけて見回りに参加しますよ。でも、ほかの勢力のところに協力を仰ぎに行くというのは承服できませんねぇ。私たちの力だけでは不足ということになりますし、そもそも他の方々が簡単に協力してくれるとは思えません。こちらにいらした様に霊夢さんが直接行ってお話しなければ説得なんて出来ませんよ」

「それについてはいいわ。私が言うのもなんだけど、たぶん紫が手を回してる気がするわ。あいつの方が裏から色々やってるでしょ」

「今日は直接会ってないんですよね? よくそこまで考えられますね〜、信頼しあっている仲ってやつですか?」

 文はニヨニヨしながら霊夢に聞く。こいつは何がそこまで楽しいのだろうか。

「あんた自分で危険な役回り引き受けたのがわかってるの? ま、そういうことだからとにかくお願いね。山の妖怪達が総出で狩り出せばどうにでもなるでしょ。私は地底に行ってさとり妖怪に匿って貰うわ」

「では私は神奈子様と諏訪子様に今のお話をお伝えして、それからお二方と対応を考えてまいります」

 文と早苗が自分の立場を決めてこれでこの話は解散になった。

(やっぱりどいつもこいつも今日のことは駆け引き材料くらいにしか思ってないわね。ただの異変ならそれでもいいんだけど……)

 霊夢は幻想郷の各勢力たちは自分が頼みごとをすれば引き受けてくれるとは思っていたが、仲間になってくれるとは初めから考えてはいない。そもそも霊夢も仲間とともに異変に立ち向かうなどというのは、友人と協力して解決にあたったことがあるだけだ。それ以上の、例えば同盟の様な物を組んだ勢力があるのならばそれは幻想郷のバランスを犯しかねないからだ。そして、霊夢自身も単身で別枠の一勢力なのだ。





 霧雨魔理沙は友人であり、またよきライバルでもあるアリス・マーガトロイドと喧嘩をしていた。彼女たちは自分たちの住む魔法の森から少し離れた場所の空中でいがみ合いをはじめ、そしてそれは弾幕勝負に発展した。揉め事はスペルカード戦と呼ばれるスポーツのような決闘法により決着をつけるのは幻想郷の常識である。そもそも彼女たちの争いの原因はくだらないものであったのだが……。

「おいおい、私はちゃんと謝ってるんだぜ。形あるものはいずれ壊れるんだから良いじゃないか。ましてこれは災害なんだ、それを許してくれないというのも心が狭いじゃないか」

「あなたの言うことはもっともよ。でも、それは私が言うべきことなのよ。あなたは割れたカップを私の元に返しにきて、ただ謝ってくれればそれでよかったの。そうすれば私があなたが言ったようなことを言ってあなたを許してあげれたわ」

「なんだ、じゃあこれで解決だな。よかったよかった」

「だけどあなたがしたのは割れたカップを持って家に来て、“地震で割れたから返すわ。メンゴメンゴ”って半笑いで言っただけじゃない! それに言った後で割れたカップの入った袋を押し付けてそそくさと帰ろうとするし。第一メンゴって何よ! 謝る気無いでしょ! それに私の家も揺れたけど、机の上にあるほとんどの物は動かなかったわよ! 相当に不安定なところに放置してたか、別の事ですでに割れてた私のカップを地震をこれ幸いと言い訳にして持ってきただけでしょう?」

「なんだ、被害妄想の強いやつだな。結局のところ言い争いなんかしてても埒が明かないだろ? ここは幻想郷らしくスペルカード戦といかないか? 私が勝ったらこの話はチャラな」

「あなたがちゃんと謝ればそれですむ話でしょうが……。いいわ、やってあげる。私が勝ったら私にちゃんと謝ってもらうわ、それと新しいカップを買ってプレゼントしてもらおうかしら」

「それでいいぜ」

 それで決闘は開始された。魔理沙は星弾を周囲にばら撒き、アリスは攻撃用の人形を展開する。互いに手の内は知っていることであり、二人とも幻想郷では実力者だ。強大な力を持つ存在というわけではないが、なにぶん両者は戦いなれしており、ことスペルカード戦においては経験が重要である。魔理沙は大胆さと相手の攻撃を分析する能力を、アリスは冷静さと複数の人形を同時に操れる集中力をそれぞれ持ち合わせている。二人が組めばかなり有用な戦闘単位であっただろうし、実際そうだった。

 魔理沙はスペルカードを宣言してレーザーを周囲に展開し、同時にアリスもスペルカードを宣言して爆発する人形を魔理沙に向かって特攻させる。
 魔理沙のレーザーは魔法陣が移動しながら放たれ、一部は地上の木々を薙いだ。加減しているのでそれで真っ二つにはなりはしないから森林破壊ではない。妖怪に当たれば多少出血させるし服は焦げるので、それで勝負ありになる。アリスの人形は魔理沙の星弾による迎撃にあって大きな音とともに爆発を起こした。人形の体が爆発するようになっているため、破片による殺傷能力は殆ど有していない。近くで爆発したら殴られたような衝撃が体を走り、感覚器官が揺らされてフラフラになるだけだ。
 スペカ戦は相手の攻撃力は問題ではなく、実際に当たった回数で決まるのだから。

 だがそのようなことを知らないものが見れば、彼女たちの行為は戦争そのものであり、周囲に破壊を撒き散らしているとしか思えない。事実、体力のある妖怪や特殊な方法で防御している人間でなければ、彼女たちの攻撃は脅威である。

 魔理沙はアリスの攻撃を迎撃することに成功したが、魔法陣によって展開したレーザーもアリスにはよけられている。相手の攻撃を封じ込めつつこちらの攻撃を当てるには、パワーで終始圧倒するしかない。
 アリスは魔理沙の攻撃をかいくぐりつつ人形で攻撃しようと試みたが、全て撃破されてしまった。魔理沙のことだから次は力押しで来るだろう。それを避けることに集中し、攻撃が途切れた瞬間にカウンターを狙おう。

(ニヤッ)

 両者の顔に笑みが浮かぶ。

 魔理沙はマスタースパークのスペルを発動した。魔理沙は体を空中で固定して攻撃を行う。目の前の敵はこの攻撃の前で反撃してもマスパにかき消されるから攻撃に集中できる。轟音と閃光とともに力が奔流して目の前を薙ぎ払う。
 魔理沙は大きな音を上げて吼える八卦路に力を入れながらも、遠くで乾いた音がしたのが聞こえたような気がした。アリスの爆発人形のような音だった。それが何かは分からなかったが自分の下腹部が熱くなったので見ると、へそから下、太ももの付け根から上の部分が抉れていた。そこにあったはずの肝臓や腎臓、骨盤やら女性である証明までがずたずたに引き裂かれているか、もしくはごっそりと抜け落ちている。魔理沙に痛みは無かったが、当然力をこめることが出来なくなってスペルは消散し、自分は地面に落下していった。魔理沙の体に劇的な変化がもたらされたのは魔理沙が遠くの音を聞いた半秒前だったのだが……。

 アリスは魔理沙のマスタースパークが消えて轟音と閃光がやんでいくのを見ていぶかしむ。回避に専念していた彼女は魔理沙の様子は見えていなかったが、静かになった空を魔理沙が落下していくのを見て状況に気がついた。魔理沙が下腹部から出血しながら落下しているのを確認した彼女はすぐさま魔理沙の下に向かう。

 魔理沙は地面に激突した衝撃によって、僅かながら腰の部分で繋がっていた上半身と下半身が千切れて別れた。同時に忘れていた激痛が襲ってきたが、叫び声を上げることすらできなかった。自分の命が腹の下から流れていくのが感じ取れる。もはや考えることも億劫になっていったが、アリスが自分のほうに向かってきているのは見えた。

(これはアリスがやったんじゃない)

 それだけは薄れ行く意識の中で考えられたことだった。

 アリスは魔理沙が落ちたところに着き、彼女の半身を抱き起こした。とめどなく涙が溢れ出し、どうすれば彼女を助けられるかという思考が脳を駆け巡っては消えてゆく。

「ア……リ…………」

「魔理沙ぁ……魔理沙ぁぁ…………ま」

 言いかけて彼女の頭は爆ぜた。右側頭部から左側頭部に抜けたそれは己の仕事を完全に果たしつつも、彼女の顔面には殆ど影響を与えずに通過した。友を思い涙に濡れた彼女の顔は、生前もそうであったが、とても美しかった。

「ア……アリ…………ゴポッ」

 抱き上げられたままの格好で魔理沙は地面に下ろされ、支えを失ったアリスの体重が上半身に加わった。

 アリス・マーガトロイドは大切な友人の命が失われつつあることに絶望しながら逝った。
 霧雨魔理沙は大切な友人の命が目の前で失われたことに絶望しながら逝った。

 ……アリスの命を奪った第2撃は魔理沙の体を抉った攻撃と違い後にも先にも音はしなかった。これは二人の命を奪った者、奪った武器が違うことを意味しているのだが、それは彼らの都合であり、もはや彼女たちには関係の無いことである。







   午前11時



 萃香は地上に霧散することによって広範囲の情報を同時に取得してゆく。その中には霊夢が守矢神社で話した情報もあり、現在移動している“同じ様な格好をした男たち”の動きも捕捉していた。

(霊夢はこれから地霊殿に行くみたいだね。私もあそこに帰って勇儀や霊夢と一緒にいるのもいいんだけどなぁ、やっぱりこんなチャンスはめったに無いよね)

 再度萃って各々の情報を自分一人に集計した萃香は“敵”の勢力を把握していた。

(博麗神社に9人、妖怪の山と神社の間に散らばっているのが29人だね)

 それだけ確認して萃香は天界の紫に一旦報告に行くことにする。その後のことはもう決めている。このとき萃香は雪の上の椛の死体を確認していた。





 霊夢は地霊殿に着いていた。当然今回はだれとも争うことなく、主である古明地さとりと対面している。

「何度も話すのも疲れるし、あんたなら私の心を読んで状況を理解できるでしょ。ちゃっちゃとやってちょうだい」

「会話が出来ないペットたちの心を読むことはありましたが、話すのが面倒くさいという人の心を読むのは初めてですよ」

 嫌われ者の妖怪は少し呆れながら能力を使った。しかし、自分の能力を気にしない人間はさとりにとっては心安らぐ存在だ。彼女が自分を頼っているなら助けてやりたいという意識もあった。

「……お話は大体わかりました。我々があなたの警護を引き受けましょう。しかし、ご存知のように我々はその種の訓練や経験があるわけでもありませんし、なにより私のペットたちは統率が取れているわけではありません。それに私には旧都の者達に命令できる権限があるわけではないのです」

「それはわかってるわ。ここまで進入するのには時間稼ぎになるだろうから選んだのよ。敵が何であれ妖怪の山の勢力を突破した上で、旧地獄を通って地霊殿に進入してこの奥の間まで来るのは大変でしょう? それにあの蜘蛛とか鬼とかには来るとき簡単に話はつけてきたから易々とは突破されないわよ」

「なるほど、ですが霊夢さんは灼熱地獄で待機されるのではないですか? あそこならば並大抵のものでは進入することすら出来ない場所です。霊夢さんなら空を倒したときのように結界で防御できるのではないですか?」

「たしかにそうだけど、あそこは熱いのよ。自分を守る結界も重ねなきゃいけないし、博麗大結界の維持にも力を注がなきゃいけないわ。あんなに熱いところでいつまでかかるかわからないようなことに集中力を維持できるわけ無いじゃない」

「はぁ、それだともし戦いになればここが最終戦場になるということなのですね。しかし……今日のあなたは考えていることと口に出していることが一致していますね」

「私のことを単純だとでも言いたいわけ? あんたと駆け引きしても意味ないし、そもそもそんなことする必要も暇も無いのよ」

「いえ、前回のようにそれらが一致しないことよりはいいと思いますよ。裏表の無い性格は人間にとって美徳ではないですか?」

 そう言ってさとりは微笑んだ。





「と、いう訳なんです」

 東風谷早苗は神社の2柱に博麗の巫女との話を伝えた。

「ふうん。そりゃあたしらは幻想郷のことを熟知している訳じゃないけど、未だに新参扱いされるのも気に食わない。あの子の勘に付き合わされるというのもなんだかね」

「でも新聞記者の天狗の話じゃ、大天狗を含めた山の妖怪達は侵入者を排除するように動くんでしょ? 一応ここの妖怪達から信仰される身分としては、協力してやったほうがいいんじゃないかい」

「ただ文さんは今回のことを記事にするおつもりらしいので、事を大きくしているのかもしれません。霊夢さんもにしても、私達が乗っかったところで“釣りですた〜(プゲラ”とかやるおつもりなのかもしれないですよね」

 神奈子・諏訪子((たまに早苗はよくわからない日本語を使うなぁ))

「まあとにかく様子見だね、実際に山が攻撃されてから出て行けばいいさ。真打は後から登場するものだからね。それまで麓の巫女には前座を勤めてもらえばいいのさ」

「神奈子様がそうおっしゃるなら私たちはそういたしますか」

「異議な〜し」





 射命丸文は空を翔けていた。彼女は幻想郷最速を自負するだけあってもう用件は果たしていた。上司たる天狗に話をつけて天狗の幹部にあらましを伝えた後、侵入者には断固たる対応をとるという確認を取り付けた。この話がどこまで広がっていくかは上の判断によるが、いずれにせよ文にできるのはここまでなのだ。
 今彼女は哨戒の白狼天狗、犬走椛を探している。彼女には文の新聞を手伝ってもらったり、彼女の手に負えなかった侵入者の迎撃に自分が向かったこともある。お互い手伝いあっているというわけだ。まあ、殆どは椛が文に振り回されているのだが。

「あの子が持ち場にしているのはこのあたりなのですが……。いませんねぇ。もしや」

 文は椛の持ち場から辺りを見渡す。

「まあ私も目は良い方ですけど、椛の能力を買われた持ち場から私が見ても無理ですねぇ。巫女があれだけあせっているので相手も手練かもしれませんが、椛も勝てない相手に対しての引き際は判っているでしょうから……」

(まってください、椛はここを持ち場にしていて、今はいないということは侵入者と接触していることでしょう。侵入者が何者であれ椛は説得を試みるはずです。あの子は無益な弾幕戦も殺生もしないのですから。私でも弾幕戦が始まってれば遠方でも見えますし、椛もいくら遠くが見えるからと言って山に入ってもいない相手と戦いはしません。勝つか負けるかしたらこっちに戻ってくるのですし、つまり今椛は侵入者と接触してお話をしている最中と言うことですね!)

 文はそのように結論付けて自称幻想郷最速で飛び出した。霊夢の言から相手は椛の持ち場と博麗神社との直線上にいる可能性が高いと見て、神社に向けて飛んだ。

 上空20mという高さは低空ではあるが、背の高い木にぶつかることも無く地上を見渡しながら飛ぶにはいい高さである。彼女は高速で飛行しながら地上を見たが、草原地帯はいまやほとんど白一色であり、見るものはないように思えた。
 妖怪と戦おうという妖怪退治の人間は、今や一部の力ある能力者が主であり、彼(彼女)らはスペルカードを用いた決闘で勝負を付ける。下級の知恵の無い妖怪ならば話にならないので命を奪うこともあるが、彼らにはそれは造作も無いことなのだ。文は失念していた。力なき人間が集まり、知恵を用いて強きものを滅ぼすことがあることを。そもそも天狗の方が人間よりもあらゆる面で上であり、見るべき人間は一部の傑出したものだけであると考えていた。他の自尊心の強い天狗と比べて文はソフトな方だったが、種族に刻み込まれた侮りは抜けなかったのだ。相手が人間であれば負けるはずが無いと。自分も椛も。

 よく目を凝らせば見えていたのだろうか。雪の上で白い服を着て伏せ、白くカラーリングされた筒状のものを自分に向けている者を。冬そのものに擬態した彼らは椛には発見されてしまったが、文には見えなかった。戦闘は派手なものが良しとされる幻想郷と、ただ静かに各々が仕事を行うことが戦争であると考える者達の違いがここで出ただけだ。

「があっ!!!」

 文は飛行中に鋭い痛みに襲われ、すぐに顔を手で覆った。止め処なく血の涙が目から溢れ出す。急激に失速し、前後感覚もなくなって墜落していく。
 彼女の落ちたところは散開している男達のほぼ中心だった。この状況でも考えうる最大の警戒を行っている男達は、弾幕戦の勝利に奢ることもなく文から距離をとったまま彼女の体を十二分に破壊した。最初に文を襲った攻撃以外は音がほとんどしなかった。僅かな音はしんしんと降る雪に吸収されていく。
 文は地に落ちたときのうめき声もすぐさまか掻き消され、数秒の後に物言わぬ肉塊と成り果てた。お喋りな新聞屋としては非常に静かな最後であった。

 最初に彼女を襲ったのは直径3mmほどしかない鉄の粒だった。しかしこれらは秒速150mを超える速度で放たれ、さらに彼女は彼らに向かってきたので移動速度も加算されていた。約250発の粒は20°の広がりをもって拡散し、文に襲い掛かった。それは俗にバードショット(鳥撃ち弾)と呼ばれ、12ゲージのショットガンで用いられるシェルの一つである。ただ普通の警察や軍では散弾を用いるとしてもバックショット(鹿撃ち弾)と呼ばれる直径7〜9mm程の鋼球が7〜15発入っているものを使うのが一般的だ。バードショットは人間相手だと遠距離では威力がなく、また近距離で当たった相手には小さな粒が体中に食い込んで惨たらしいからだ。

 彼らが文を狩猟用の弾で撃ったのは空を飛ぶ鳥のような妖怪を撃ち落すためだったのだが、皮肉にも鴉天狗の文は実に相性が悪かったらしい。文には11発の鉄球が食い込んでいたが、もともとたいした威力もなく、まして妖怪の体は人間より丈夫なのでそれらの弾は皮膚から5〜10mmめり込んだだけである。彼女が不運だったのは11発のうち7発は手足と胴で殆どダメージはなかったが、4発が顔の、それも2発が上手い具合に両の目を潰す様に当たったのだ。威力のない弾でも生物の弱点である目に当たれば、十分にその仕事を果たすことが出来たのだ。残りの2発も上唇に当たって前歯を砕いたものと左頬に当たって口内を切り裂いたことにより、文は呻き声を上げて落ちるより他になかったのである。







   午後0時



「というわけで、霊夢は地底にいると思う。私はそこまで行った訳じゃないけどね。敵は確認しただけで博麗神社に9人と山と神社の間に29人が散らばってたよ。それと、見張りの天狗が一人殺られてた。場所は天狗が山のテリトリーだって言ってる所の境界近く。たぶん警告しに出向いていって返り討ちだね」

「その29人の方は固まっていたの?」

「いんや、天狗を殺ったのはたぶん18人で固まってた連中だね。あいつらは雪の上を歩いていたけど結構早かった。もう山に着いてるんじゃないかな。後は9人が森の方を慎重な感じで通ってて、残りの2人は山から離れた沼でなんかしてた。ま、連中の考えてることを当てるのはあんたの仕事だろうね」

「ふ〜ん。18人の方はもしかして半分くらいの人数で距離を開けていないかしら?」

「ああ、そういえばそんな感じだ。よくわかったね」

「彼ら人間の戦い方よ。9人で一組になって行動しているのでしょう。つまり4組あるということね。となると、2人組の方が私みたいなのからすれば気になる存在ね」

「さっきもいったけど、そういうのは紫に任すからさ。できるだけ早く霊夢に協力してやんなよ。見張りの天狗の死体、積雪に埋まってたけど体に穴があいてたぞ。人間や普通の動物に強力な弾幕をぶつけるとあんな風になるけど、いくら油断してたからって戦い慣れしている哨戒の天狗が一方的にやられるなんて事考えられるかい? やつらの攻撃は私らを十分殺せるもんだってことを皆に伝えないと、これから似た様な死体がどんどん増えることになるよ。山の妖怪もそれ以外の連中も、どうせ皆たいした危機感も持っちゃいなくて勢力争いに利用することしか考えていないんだろうからね」

 普段あまり突っ込んだ会話もせずにふらふらしている萃香だったが、今彼女は彼女なりに状況を分析した上で幻想郷に対して冷徹な批判をしていた。幻想郷は閉ざされた楽園であったからこその闇があるといえる。それは楽園から地獄に追い出された鬼だから理解していたことなのかもしれない。

(萃香の言ってることはもっともね。ここの天人共と話をしたけれど、どいつもこいつも相手にもしない。下界の下賎な民のことなど知らないと言うことかしら。彼らの存亡にもかかわる事だとと言うのに……。藍の報告を聞けばおそらく同様の話が聞けるに違いないわ。この際山の妖怪達にはもっと犠牲を出してもらうのもいいわね。他の勢力を説得できる材料になるし、河童や天狗や山の神にしても自分の認識を改めるいい機会だわ)

「アハハッ♪」

 紫が物騒なことを考えていることを見抜いたのか、萃香が楽しそうに笑う。

「……もう行くのね?」

「ああ、楽しみだよ。わかってると思うけど、私が行くのは神社の方さ。山の方は山と地底の連中に任せればいい。博麗神社にいたやつらは霊夢が帰ってきたときの待ち伏せだろうね。あんたの言うように9人が一組だって言うのなら好都合さ、あいつらの戦い方を見れるんだからね」

「……全員倒したら山で合流しましょう。嫌な話だけど、その頃には天狗や河童達もあなたが来てくれたことに感謝するような状況になってるかも知れないから」

「じゃあね。紫」

 そう言って萃香はまた天界から地上に降りていった。残った紫はスキマを開いて藍を迎えにいった。





「ねえ、どうしたのよ。あの暴力巫女の言うことを真に受けてるんじゃないでしょうね? あんたがここに来るなんてさ」

 嫉妬心を操る妖怪であり力はさほどないが鬼の一角である、水橋パルスィは力の権化ともいえる鬼の星熊勇儀と会話していた。場所はパルスィが普段居ついている橋の上。勇儀が訪ねた形である。

「いやあ、なんかここにやばいやつらが攻めてくるから倒してくれって言われちゃってねぇ。山の天狗たちも戦うことになってるらしいんだけど、ここまで来るかもしれないってさ。ちょうど暇してたところだし、あれだけ出来る人間が泡食ってるんだから期待もあるしね。その話に乗ったってわけさ」

「何よそれ。私なんかここに悪いやつらが来るから倒せって、それだけよ。殆ど通りすがり際に命令されたようなもんよ。何であんただけ特別なのよ、妬ましい」

 パルスィはそういったが、この前に黒谷ヤマメとキスメに会ったときの霊夢も同様のものだった。勇儀だけ詳しく話したのは彼女が強いからだろう。いずれにせよ、この程度の会話を交わしただけで、“話をつけた”としていいのか怪しいのだが。

「まあいいじゃないか、ここも住めば都なんだ、それを外から来て荒らしていかれるのは腹が立つことだしな」

 片方は乗り気ではないし片方はノリノリだが、これでヤマメたちも含め地底には地霊殿にいたるまでに幾つかの防衛ラインが引かれることになった。もちろん彼女達が意図して出来たものではないのだが。








   午後1時



 萃香は博麗神社の東側に散らばっている9人の人間の周囲に霧散して漂った。やはり彼ら以外の人間はこの付近にいないようだ。このまま霧の状態で彼らの精神をいくらか弄ることも出来るが、萃香はそれをする必要を感じなかった。

(私が求めているのは戦いだ)

 萃香は彼らが向いている方の正面、9人のうち先頭の男に狙いをつけた。そしてその男の目の前に萃って実体化したのだ。相手の男達は一様に驚愕したが僅かな時間で自分を取り戻すと、前の方の何人かは手に持った箱の様な物や槍の様な物を置き、腰についていたそれらよりずっと小さいこれまた箱の様な物を手にする。そしてそれらとともに萃香に対して冷たい殺気を向ける。それを確認した萃香は少し嬉しくなった。

「あんたら私と力比べをしないか?」

「Open fire!」

 萃香の言葉が届いたかどうか、9人の真ん中辺りにいた人間から号令が発せられると人間達が攻撃を開始してきた。とはいっても、萃香は先頭の人間の真正面に出たから、攻撃してきたのは先頭の男とその左右少し離れた所にいた者達だ。他の者達は3人は逃げ出すように背を向けて走り出し、3人はこちらを向いたまま後ろ足に遠ざかるように移動している。3人の持つ小さな箱は弾を放つ武器であるようで、小さな弾が萃香の体にいくつも食い込んだ。

(見えない、避けられない弾幕なんてここじゃあルール違反だよ!)

 通常の人間なら蜂の巣になっている攻撃を受け続け、それでも少女の姿をした鬼は正面の男に突っ込んでいく。男はここに来て判断を誤ったことに気がついた。目の前の少女は手で顔を覆っている。手や胸や腹に弾は食い込んでいるのに、彼女の動きは止まる気配がない。男達にはそれが信じられなかった。これもまた一つの驕りであり、常識にとらわれた結果かもしれない。戦争ではそれらは両者に襲い掛かる死神の魔の手なのだ。
 正面の男が連射した弾丸が十発に届かない内に距離をつめられ、少女は顔を覆っていた手を振りかぶって男の鳩尾を殴りつけた。

「!?ーーーーッ!?!?」

 特殊なベストを着用していたはずの男は、想定されなかった攻撃を受けて数m吹き飛ばされる。絡めとるように点の攻撃を防ぐためのベストは、面の衝撃をダイレクトに男の体に伝えた。トラックにはねられたような衝撃を内臓に受け、肋骨が砕け散り臓器が破裂する。飛ばされた先で枯れ木に激突し、男は動かなくなった。

 萃香はそれでもダメージを負ってはいた。痛みは問題ではなかったが、体に食い込んだ弾丸は彼女の動きを阻害しているようだ。すぐにでも残りの二人が素早く自分に攻撃を加えてくることが予想できる。

(なら、これでどうだっ!)

 萃香は体を小さく分解し、男達が反撃を開始する間に霧へと姿を転じる。その際体に食い込んでいた弾丸は支えがなくなり地に落ちた。霧と化した萃香は弾丸を排除すると同時にお互いに有効な攻撃が出来ない状態になり、戦いは仕切り直された。違うのは男達の一人は死亡し、萃香は再出現するとダメージが残っていることである。

 姿の見えなくなった萃香に対して二人の男は互いに近づき背を合わせるようにした。お互いの死角をカバーするためである。その際先ほど地面に置いた武器を再度手にしている。萃香が現れてから構えたのは近距離で有効な武器であり、PDW(個人防衛火器)とも呼ばれている。対して彼らが最初から構えていたのは中・遠距離用のバトルライフルと呼ばれるものである。攻撃力・命中精度・射程距離は高いが取り回しが遅くなるから持ち替えたのだ。
 だが、いくら小さくて扱いやすくても効かないのでは意味が無い。実際には効果はあるにはあるのだが彼らにそれを検証している暇は無く、とりあえずより強い武器で攻撃することが次善の行動であるとしてそれを行ったまでだ。

(あれはさっきのよりも強そうだ。となればそれを使わせなきゃいいんだ)

 霧と変じた萃香は彼らの行動を観察しながら周囲を漂った。そして彼らの頭上に出現したのだ。

 予想出来なかったわけではない攻撃だが、死角からの攻撃に行動が一瞬遅れてしまう。頭上に気配を感じた一人は地を蹴り前に飛び出して雪上を転がったが、もう一人の方はそうせずにその方向を向くという行動をとった。長物を構えた姿勢のまま全身で振り返りながら上を見上げた。

 その瞬間に萃香の足に顔面を踏みつけられて地に倒れ伏す。少女の体重が重かったのか、あるいは鬼の力というものなのか、男は鬼の足で地面に叩きつけられてそのまま押しつぶされる。頭蓋骨が砕け散り脳漿が周囲の雪に花を咲かすようにぶちまけられた。

 二人目の男を殺した瞬間に彼らの反撃が行われる。最初に逃げた6人は3人ずつに分かれて萃香から100m以上の距離を開けつつ攻撃してきたのだ。彼らの攻撃は正確を極め、かつ最初の攻撃より重かった。数発が萃香の左脇腹に当たり内臓に達した。頭部を狙った攻撃が鬼の角に当たり、頑丈な角は飛んできたそれの角度を変えて逸らした。萃香は衝撃で頭がくらくらしたが、すぐさま霧と化した。彼らの攻撃が最初の攻撃と違い連射ではなかったことが救いだった。

 萃香の五里霧中という名のスペルカードは、霧散することによる霧からの弾幕と無敵時間、そして出現してからの数秒間の被弾期間がある。彼らに対して用いた戦術はこれとは逆であり、霧散しているときに弾幕で攻撃するのではなく、出現時に攻撃を加えるものである。霧散しているときに弾幕を使えば、妖力を使ったことにより霧散している時間が短くなる。そして霧とはいえ無敵ではないので、弾幕で場所を特定されれば攻撃される可能性がある。今まで彼らが放った弾では効果は無いが、他に攻撃手段があるかもしれないので慎重にならざるを得ない。

 萃香は感嘆していた。最初に自分から離れた者達は距離を開けて自分を攻撃してきたのだ。彼らは逃走したわけでなく、おそらく示し合わされた行動に違いない。何より、残った3人は私に対する囮だったのだ。彼らは私に攻撃を加えつつ注意を惹きつけ、他の仲間達が絶好の機会に必殺の一撃を加える。それが命がけの行為であることは最初の一人が殺されることで判っている筈。だが残りの二人は臆さなかったのだ。そして萃香は霧の状態で残った一人の男を見た。

(ああっ! 私が求めていたものはこういうことだったんだ!)

 その男は武器を構えたまま目を閉じて集中していた。目を開いても見える範囲は限られ、萃香がどこから来るか判らないからとの判断だろう。萃香が姿を現した直後に反応できるように構えているのだ。死を覚悟しなければ出来ないこと、そして死から生を掴み取るために出来ることをするという訳だ。

(この男達は仲間を信じ、そしてその仲間とともに勝利が得られるならばそれに命を賭す覚悟を決めている。間違いなくこの人間たちは私が戦うに相応しい相手だ。これが本当の戦いというものなんだ!!!)

 萃香は狂喜した、この戦いに大いなる喜びを見出したのだ。こんなことはいつ以来だろうか? 霊夢たち力ある者達との宴会に関した戦いも素晴らしいものだったが、あれはいわば遊びとしての楽しさだった。鬼の戦いは殆どがそのようなものだったから疑問にも思わなかったが、今は違うとはっきり言える。これが真剣勝負なのだ。
 憎しみでも悲しみでも怒りでもない、ただ淡々とした厳然たる死のみがそこにある勝負。
 互いにその自覚があるからこそ、一瞬に全身全霊をかけられる。

 萃香は男から離れたところで実体化し、彼らがそれに気づいて自分を狙う前に周囲の物を萃めて玉にした。それは多くが雪で少し土と石が混じった雪玉になった。大きくしている時間は無かったので、人の頭くらいの大きさになったそれを素早く男に投げつける。直後に援護している者達からの攻撃を受けたが、すぐさま霧散したのでダメージは無かった。
 雪玉は萃香の能力により大きくないながらも密度が高くなり、雪は結合して氷玉と言える硬さだった。高速で投げつけられたそれを男は避けきれずに、顔を武器で守るように手を上げた。その際右手の甲に玉が当たり、重量のあるそれは男の右手を砕きつつ銃ごと顔面に叩きつけるように衝突した。男は昏倒し、雪上に沈んだ。

(死んではいないけどもう戦えない。後は向こうの6人)

 萃香が霧になり残った6人に狙いを定めているとき、その6人は先ほどの場所からさらに神社の北側に移動していた。素早く移動を終えると、やはり3人ずつに分かれて互いの背を合わせて構える。両者は50m程の間隔をあけていて、全ての範囲をカバーできる上に、相手の頭上が見えるものが一人はいるので死角を完全に相殺していた。

(同じ手で挑めば返り討ちになる。あいつらは誰かがやられるたびにその経験を生かして戦うのか)

 萃香は一方の集団に狙いを定めるとその頭上に移動した。そこで萃まって実体化すると同時に

「Upper side!」

「ミッシングパープルパワー!」

 巨大化した。実体化したときにそれを捉えた者が言葉を発し、それを聞いた相手のグループは素早く散開する。しかし、巨大化した萃香はその内の一人が前に飛び出した位置も着地地点に含んでいた。巨大萃香に踏みつけられた男はダンプカーに轢かれたような挽肉になってしまった。
 巨大化した萃香は離れていた3人から集中的に攻撃を加えられ、飛びのいた2人もすぐさま立て直して攻撃してきた。狙いの付けやすい体だからか、先ほどの重い攻撃が連射されて襲ってくる。だが巨大化していた萃香には頭部や胸にライフル弾が撃ち込まれても致命傷にはならない。今後は飛び上がって霧散して今までの攻撃の繰り返しだ。
 男達が全滅するか、自分のダメージが累積されて体力と妖力が尽き、霧にも巨大な姿にもなれなくて死ぬかの二つに一つだった。

「さあさ、鬼との根比べだよ〜」

 霧の姿のまま、人間に聞こえるように声を発した。その声は傷だらけになった少女とは思えないような楽しそうな声である。

 男達は萃香が消えている間に三度北側に素早く移動した。そして萃香が現れるだけの時間を計っているのか、萃香の攻撃に備えてまた陣形を組んだ。

 そして萃香は男達の直上で巨大化した姿を現し………。

 直下にいた者達はすぐさま飛びのいた。今回は誰も潰されてはいない。
 萃香は頭部から血を流しながら着地し、元の大きさに戻っていった。周りの男達は武器を構えて自分を狙っているが、誰一人として今の彼女を撃ちはしなかった。そして神社の方向の雪の中が僅かに光ったと思うと、萃香の心臓が破裂した。
 崩れ落ちた萃香は心臓のあった場所から外に出て行く自分の命と、脳の一部が破壊されたことによる消え入る意識の中で考える。

(まだ、いたんだ   こいつら9にんとも      おとり         みんなしてこっちにいどうして             )

 これは彼女の望む結果だったのだろうか? 萃香は彼らのうち3人を屠り1人を戦闘不能にせしめたが、彼らに導かれた場所で最後まで見えていなかった敵に殺された。

 彼らが来た世界では“敵を先に発見することはその時点で半分以上勝負はついている”という言葉がある。彼らの戦いはお互いを認識しあっての戦いではなかったのだ。一方が敵を認識したら、相手にこちらも発見される前に殺してしまうのが鉄則だった。
 だが萃香が戦いの最中に感じた喜びもまた事実。死に方が幸せだったかなど冥界に着いた彼女に聞くほか無いが、少なくとも生き方は幸せだったに違いない。





 藍と合流した紫は互いの情報を交換し合う。ブレーンは紫だが、手足となって働く藍も情報が多い方が行動の幅が広がる。

「永遠亭、紅魔館、白玉楼の主たちと太陽の畑の風見幽香は様子見です。情報が少なくては動けないなどの理由を付けて協力は保留されました。状況が変わるか独自に調べてから協力するとの事です。彼岸は船頭としか話せませんでしたが、ハッキリと協力を拒否されました。顕界のことに首を挟むことは出来ないとのことです」

「大体予想通りの話ね」

 残念な結果のはずだが、紫も藍も最初から分かっている答えだったので問題にしなかった。彼らに事情を伝えたことと、今後の協力を示唆されれば十分だったのだ。

「地霊殿には行っていませんが、命蓮寺と妖怪の山の勢力は協力を取り付けました。両者とも自分たちに出来ることがあれば言ってほしいと申し出てきましたが、何を申し付けていいか分からないので情報を集めてこちらから後々お願いに伺うと保留してきました。命蓮寺は主がアレなので分かる気もしますが、山の天狗が素直に協力をすると言ったのには疑問があります」

「それはたぶん霊夢が先に話をつけたのでしょうね。霊夢は守矢の神社と新聞記者の天狗に話をつけた後で地霊殿に向かったらしいわ。そこで篭城するつもりなのでしょう。天狗たちはあなたがきて話したことが記者の話の裏づけになったから協力を約束したのよ。あなたに霊夢のことや自分たちの聴いた話のことは話したかしら?」

「……いいえ。他とほぼ同じ対応です。私の話を聞いて少しばかり周囲の意見も聞き、結論を言われました」

「そう。彼ら天狗は情報が武器であり盾であることを理解している種族だから。両方の情報を占有することで他に対して有利に立てるというわけね。だからあなたにもそれを悟られて追及されないように振舞った。私達もこの場でそれを知る事になったのは予想できなかったのかもしれないけど」

「……この期に及んで勢力争いですか。彼らの山が主戦場になるかもしれないと言うのに」

「だからこそよ。山で戦いになるとすれば、出来るだけ自分達の力で片付けたいでしょう? 自分達のみの力で侵入者を滅することが出来れば内外に力を見せつけれる。他の勢力のものが協力と言いつつ山に侵入して暴れるのも面白くない。だけれど、もし博麗の巫女や私達が警告する相手が自分達の独力で手に負えない相手だったら? そこまではプライドの高い天狗は考えないでしょうけど、少なくともある程度の犠牲が出るとしたらどうかしら? 他の連中は参加していない戦いで自分達だけ犠牲を強いられる。これはこれで腹の立つことよね? だったらそいつらの相手は“協力者”とやらに任せて趨勢を見守るというのも選択肢の一つ。それらを見極めて判断することにこそ情報は必要と言うわけよ」

「…………」

 言葉も無い。藍は結界の異常を肌で感じているからこそ真剣であったが、ここの住人たちはそれどころではないらしい。もっと重要なことがあるかのように行動するのだ。そしてわが主はそれすら予想の範疇のようなのだ。

「それぞれがそれぞれの考えで行動している限り、統率はとれない。そもそも誰かの元で動くような者達じゃない。だけど、それぞれの行動が予想できれば全体の流れも漠然と見えてくるわ。彼らのことは彼らの判断に任せましょう。これ以上の余計な介入をすると結果的にやりづらくなるかも知れないから」

「はい」

「じゃ、とりあえず命蓮寺に行って山の神社や天狗たちと協力して侵入者と戦ってくれるように言ってきて頂戴。山の神たちは態度を決めかねているみたいだから押しになるし、妖怪達は協力するといった手前追い出せないでしょ。彼女達はいい緩衝材になってくれるわね♪」

「了解しました」   (恐ろしいお人だ)

 藍は主に頼もしさと一抹の恐怖を感じたが、反対に今回の異変に関しての脅威は小さくなった。
あとがき

 初製作、初投稿のSSです。色々なSS置き場をROM専で見てきたつもりでしたが、ここ産廃に出会ってからは自分で作品を作りたいという欲求が初めて湧いてきました。
 冒頭のダブルクォーテーション内は同名小説からの引用です。以前より幻想郷の戦争というものを描いてみたかったのですが、その際に自分が感銘を受けた作品を参考にさせて頂いた次第です。
 スティーブン・ハンター小説のファンの方、某げっしょーファンの方、私には作品を貶める意図はありませんので、どうぞお許しください。
 私の未熟なSSでも同小説に興味を持っていただけた方、よろしければ一度お手に取って見てください。

 最後になりましたが、読んでいただいた全ての人に謝辞を。全霊を持って完結させ、皆様に読んでいただけるよう努力いたします。



5/8/2010 本文一部修正、読みやすくなったかと思います。
マジックフレークス
作品情報
作品集:
5
投稿日時:
2009/10/24 05:43:44
更新日時:
2010/05/08 19:41:07
分類
幻想郷戦争
某げっしょーを超える戦いを描きたい
1. 名無し ■2009/10/24 16:33:01
いきなりゴミクズとアリスが死んですっきりしました

まだ出てないけどフランちゃんにはぜひ頑張ってほしいです
2. 名無し ■2009/10/24 17:07:00
何人生き残るかな、生き残らない戦争も素敵だな
3. 名無し ■2009/10/24 17:59:29
※1
すっきりする場面じゃあねえだろ……
4. 名無し ■2009/10/24 19:36:38
萃香はどんな武器で殺されたの?対物ライフル?RPGとかの成型炸薬弾?
こういうふうに幻想郷の危機(?)なのに勢力争いとかで各勢力が一丸にならずに様子見する感じがよかった。ときめいた。
やっぱり個人的にフランちゃんは生き残って欲しい。でも紫ババアはみじめに死んでほしい。
5. 名無し ■2009/10/24 20:21:43
鬼が対物ライフル程度で死ぬとは思えないから、対妖怪用の何か凄い武器なんだろう。
煎り豆鉄砲とか。
まだ敵の目的も正体も分からないけど、今後が楽しみで仕方ない。
6. ああああ ■2009/10/24 20:35:24
自機組や最強クラスが早くも4人……
ソリッド・スネークレベルが一個小隊で襲ってきたようなもんだな……

「18人じゃ無理だろ」と思ってたが、
戦争物テレビゲームの人数ばかり多いザコ軍人とは別次元の、
プロっぽさが良く伝わってくるな

デッドラのフランクさんを呼ぶんだ!!
7. 名無し ■2009/10/24 20:37:07
40人程度の少数精鋭でどれだけ殺せるんだろう
。楽しみだ。
それとも増援が来て殺戮かな。楽しみだ。
8. 名無し ■2009/10/24 20:42:52
こいつらの正体も気になるな
正式な軍人なのか、それとも傭兵部隊みたいなもんなのか

とにかく全裸待機してます

※7
あんま具体的すぎる展開予想はやめた方がいいと思うけど
確かに元の世界にはまだまだ控えがいる可能性があるんだよな……
もし彼らが全滅前提の斥候部隊だったらそれこそ目も当てられないな
9. 名無し ■2009/10/24 21:16:11
侵略者達がゴミのように始末されていく続きに期待
10. 名無し ■2009/10/24 21:19:16
化け物を倒すのはいつだって人間だ、って旦那が言ってた

>>5
なぁに桃太郎の話でさえ剣と動物に負けたんだ
吸血鬼だってニンニクエキス配合の銀の弾丸打ち込めば死ぬよ
人の技術だって進化してるんだから現実で化け物がいても倒せる…と思う
11. 名無し ■2009/10/24 22:40:15
これはいいものだな…
人間と妖怪の容赦ない戦いが楽しみだ
次も期待してまってます
12. 名無し ■2009/10/24 23:11:37
もっと殺したり殺されたりして欲しいねえ
13. 名無し ■2009/10/25 00:23:27
いいから霊夢さっさと死にさらせ
14. 名無し ■2009/10/25 00:25:05
おおーすごい 読んでてかなりハラハラした
全体が動いていく感じがいいっすね
あと霊夢がなんかカッコいい
15. 名無し ■2009/10/25 01:24:33
個人装備の小火器でごらんの有様なのか・・・
重火器や装甲車両が持ち込まれたらどうなってしまうんだ
16. 名無し ■2009/10/25 01:50:32
>>6
>ソリッド・スネークレベルが一個小隊で襲ってきたようなもん
なんてこったい
17. 名無し ■2009/10/25 02:44:58
いやぁ面白かった!
続きにも期待
18. レイムスキー ■2009/10/25 05:54:45
スターゲイトシリーズ思い出した.
驕りと慢心と見通しの甘さ,自己中で他力本願な甘え,
プライオリティを考えない変な拘りと,根拠の無い性善説は
平家物語の昔から日本人ときっても切り離せないもの.
幻想郷もそれで滅びるのはさびしい限りです><
って,俺ら自身が今それでヤベェってのにワクワクする.是非続きを...
19. risye ■2009/10/25 08:35:37
こんなにボリュームがあって、しかも中身も詰まっていてすごく読みやすかったです。

>>5
フランクさんはもう人間じゃないだろ…
20. 名無し ■2009/10/25 12:44:05
ここまでは奇襲や集団戦でスムーズに強キャラを仕留められたが
地霊殿は既に完璧な迎撃体勢
妖怪の山にも命蓮寺の増援が到着すれば圧倒的な戦力が集結する事になる

これらを軍人チームはどう攻略するのか?
期待しながら読ませてもらいますぜ
21. 名無し ■2009/10/25 18:29:32
coolだぜ
22. 名無し ■2009/10/25 19:25:38
情報を広く集められる椛とスイカがやられたのは痛いな……
どうなる!
23. 名無し ■2009/10/25 23:56:43
現代戦vs幻想少女で今後の展開が楽しみ。
あと雪の中の戦いということで冬季戦技教育隊を思い浮かべた。でも「Open fire!」って言ってたから外国の部隊かしら。
24. 名無し ■2009/10/26 09:21:13
妖怪にとって科学文明の兵器は異次元だし、科学世紀の人間には妖怪の力は異次元。
その噛みあわなさを、上手く鍔競り合わせて熱いバトルにして欲しい。
25. 宮田司朗 ■2009/11/14 21:03:46
どうあがいても 絶 望
26. 名無し ■2009/11/30 22:56:24
萃香がきれいな萃香で吹いたwwww
お前が一番「徒党を組んで私らに対抗する修行を積んだり小細工を考えてきた人間たち」
を卑怯よばわりしてたくせに何言ってんだwww
27. 名無し ■2009/12/01 00:44:19
さぁ殺したり殺されたりしよう

外界で生き抜けないモノが外界に狙われたらどうなるのかってずっと妄想していたけどいいSSだ!
どちらが勝っても満足いくのはもう目に見えてる

土蜘蛛や鬼は日本刀でばっさばっさ殺されたし天狗は弓矢や火刑で殺されたりする話が多い
予想が付かないのはスキマ妖怪だがどこかで聞いたが紫が最新式戦車と同程度の力らしいから
ちょっとわかりづらいんだよね。境界操作がちゃんと通用するかとかも気になるし

※23
日本語は理解できるみたいだけどどうなんだろう?
文明も持たない原住民に虐殺されたどこぞの帝国の精鋭(笑)とは格の違うガチの精鋭部隊だから
語学堪能でも驚きはしないけど
28. 名無し ■2009/12/01 01:17:47
鬼は昔話でも、神に賜った酒で酔い潰して昏睡させて首を切ろうとしたまでいいが
相手が無抵抗にもかかわらず固すぎて中々首が落とせなかったとかいう話があるから
小火器で受けるダメージは中々リアル(?)なところだなー
早く続きが読みたいぜ
※27
遠征する場合現地の住民の言語や文化についても多少は研修を受けるのではないか?
少なくとも「妖怪は飛ぶ」とかそれくらいの知識と準備はあるようだからそれなりの予習はしてそうだな
紫が戦車と同等ってのは純粋にパワーの話だろうと思ってたけどねえ
そうでなきゃ力の質が違いすぎて比べられない、というか比べる意味がないというか。それにしたってよくわからんけど。
まあ酔っ払いのたわ言といえばそれまでだが
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