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『スーパー飲み屋』 作者: 暇簗山脈

スーパー飲み屋

作品集: 6 投稿日時: 2009/11/10 14:33:42 更新日時: 2009/11/10 23:33:42
「メリークリ○リス」
「蓮子、私『メリークリ○リス』だなんていう人と一緒にいられないわ」
「待って!メリー!」
「さよなら」

11月中盤。活気とは裏腹に肌寒い商店街で、
蓮子の声なき慟哭は木枯らしに消えていった・・・。











「ちょっと店員サン」
「はい」
「ここ『スーパー飲み屋』だって聞いたンで来たんだけど」
「はい」
「飲み屋ないじゃない」
「だってここは『スーパー能見屋』ですもン」
(やられたワ・・・)

蓮子は夜中だというのにスーパーマーケットにやって来ていた。無意識の内にだろう。
そういえば昔マエリベリーハーンとかいう変な奴が『ここは飲み屋じゃァないんだな』と酔っぱらって叫んでいた気がする。
 
「帰る」
「いやァ、待ってください。ここアンタみたいに勘違いする人多いンで、駐車場の一角に怪しい呑み屋台に来て貰ったンですわ」
「はァ」
「店長が分かるオヤジでしてね」
「へァ」

蓮子は店員に別れを告げるとスーパーを出てふらりと駐車場の一角に確かにあった赤提灯に入って行った。













「それァな、ねーチャンが悪いンでねェか」
「何よ、そんな卑猥な言葉ぐらいで傷つくお嬢じゃねェわよ」
「いや、それなら季節外れなトコだな」
「はン?」
「11月中盤にクリスマスは早ェーんだって話しだヨ」
「いいのよそンぐらい。10月終盤には街中がイルミネーションだらけになる程のこの国がオカシイのよ」
「中世貴族の世界でもなァ、季節外れの和歌を詠む奴ァ哂われたンだぜ」
「物知りねェ」

屋台には、30代半ばぐらいのねじり鉢巻きを巻いている体格の良い男がいた。
いかにもステレオタイプな飲み屋の大将だ。
客は蓮子以外にいないらしく、それもあってか彼女は言いたい放題喋っていた。
この大将も話しの面白い男で、蓮子は時間が過ぎるのも忘れて酔っていた。

「あらァ、いけないもうこんな時間」
「ウチは締めのラーメンって決まってンだぜ?」
「じゃあ一つ」












翌日、蓮子は某ゲームショップで何の気なしにエロゲーコーナーを彷徨っていた。
その一つのソフトを手に取る。

「えーと、『エロエロ腕相撲選手権』?誰が得すンだか」

話のネタにでもなると思って、
パッケージに上腕二頭筋がやたらと目立つ女が描かれたそのソフトをレジに持っていく蓮子。

「300円になりまーす・・・あ、貴方こんなとこで何やって・・・」
「げっ!メリー!?」
「信じられない!こんな卑猥なソフト買って!」
「てかこんなとこでバイトしてたとか・・・」
「さよなら!」

ショップの店員服を着たまんま涙を浮かべて去っていくメリー。
その様子を唖然とした表情で見ている親父がいた。ここの店長だろう。

「・・・ッ!!服置いてけ!!」

そりゃァそうだろうなと思う蓮子だった。















そしてまたあの飲み屋に来てしまう蓮子であった。

「まァたかい、アンタ懲りねーなァ」
「ていうか私の運の悪さにウンザリ」

呑みすぎて愚痴を連発する蓮子。
大将は苦笑を浮かべていた。

「まァ、アンタまだ若いじゃん。これからだろ?」
「アンタもまだ若いじゃない」
「いーや、俺の青春なんてもう終わったサ」
「アンタの青春どんなだったの?」
「青春つってもなァ・・・灰色の青春だったヨ」
「へェ?」
「柔道に惚れこんじまってな、学生時代全部柔道につぎ込んで五輪に出られるぐらいのタマになったんだが・・・」
「うんうん」
「イザ選抜って時に背骨がズれてな。それでもうオジャンになっちまった」
「それで飲み屋を?」
「あぁ」

大将は切なげに笑った。

「・・・店の前のZアンタの?」
「よくわかったナ」
「イーイZじゃないの」
「わかるか?」
「私もクルマ好きだったわ・・・でもこの店に来るまでそのことも忘れてた」
「・・・乗るか?」
「エ?」
「お前の友達ン所行こうじゃん」
「でも・・・」
「昔のオレを思い出しちまった。それだけさ」

うわー超恥ずかしい台詞出ちゃった。

「じゃあお願いできる?」
「ククク・・・結局好きなンだな・・・オレも、アンタも」











フェアレディZのS30型・・・当時、あれ程クルマ好きの心を擽った車もそうあるまい。
昔愛された車は今も愛される資格がある・・・そんなことを思わせる走りだった。

「ここね」
「もう着いたか。それじゃ行くぜ!」

そう言うと大将は、Zごとアパートのメリーの住んでいる部屋に突っ込んだ。

(やりやがった・・・)
「ここか?」
「あ、ウン」

なんか部屋が凄いことになっているが大将は気にしないようだ。

「テロだ・・・絶対テロだ・・・」
「あ、メリー」
「後は頑張れよ」

そう言ってZと共に去っていく大将。
逃げやがったなコイツ。

「蓮子・・・」
「ごめんねメリー」
「いや、車で突っ込まれるとは思わなかったわ」
「いやそっちじゃなくて」
「どっちよ」
「クリスマスの方」
「いや、だってアンタ普段私のことメリーって呼んでる上に卑猥なこと言うから」
「ああ、そっちの『メリー』ね・・・」
「っていうか何で私メリーなの?」
「は?」
「え?だから何で」
「アンタメリーじゃないの?」
「昔マエリベリー・ハーンですナイストゥミーチューってアンタに言わんかったっけ」
「別人だと思ってた」
「ありえない」
「じゃあペンネーム?」
「しね」



11月の雨空は異様に寒くて
――完――
随分前の話ですが、初めて書いたSSが秘封倶楽部だったな、と
今さら思い出したわけです
暇簗山脈
作品情報
作品集:
6
投稿日時:
2009/11/10 14:33:42
更新日時:
2009/11/10 23:33:42
分類
蓮子
メリー
1. 名無し ■2009/11/10 23:55:01
畜生・・・
この話読んだ後だと、
秘封倶楽部が卑猥な言葉に聞こえる・・・
2. 名無し ■2009/11/11 01:22:08
ちゃんと名前で呼んであげようぜ
3. のび太 ■2009/11/11 08:28:49
フェアレディーZね…そういえば、当時、連とメリーのスカイライン(C110型)があってね…。
4. 名無し ■2009/11/11 10:04:15
Zとかダサい
5. nanashi ■2009/11/11 18:19:15
プアマンズポルシェと言ってもZはいい車。
てか、メリーなんて所でバイトしてんだw
6. なきかぜ ■2009/11/12 02:07:50
フェアレディZ乗りがきましたよ。

Zって単語出てきたから、ドキがムネムネ!
7. 名無し ■2009/11/12 10:28:34
こういうナンセンスなコメディもいいね!!
蓮子の悩みを押しつぶしながら明るく廻ってゆく世界が好きだ
8. 暇簗山脈 ■2009/11/12 21:29:06
皆さんZ知ってて良かった

>>のび太さん
ケンメリのこと忘れてた・・・
9. 名無し ■2009/11/13 23:23:16
フェアレディZ…
思い出のクルマだ…
10. レベル0 ■2015/03/20 08:05:46
大将……なにやってんですかwww
なんだかんだ言っても仲良いんじゃないか
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