理由をちょうだい

作品集: 6 投稿日時: 2009/11/14 22:10:11 更新日時: 2009/11/16 16:52:07
私は逃げていた。
昼間から薄暗い魔法の森の中を、無数の追跡者に追われ逃げるしかなかった。
そもそも何故追われているのかがわからない。理解できない。私があなた達に何をしたというの?
走るには厄介なロングスカートの裾に舌打ちをして、皺になることも気にせずくしゃくしゃに握り締める。
風にあおられた前髪が、毎朝時間をかけて手入れするほど大切にしているもののはずなのに邪魔で仕方がない。
攻撃手段と同時に防御手段である人形たちは、ほとんどが壊されてしまって使い物にならない。絶望的な状況だった。
それでも私が走るのは、彼女なら助けてくれると確信しているから。

「魔理沙!お願い私を、」

そう、彼女ならきっと――

「悪いがそいつは無理な相談だぜ」
「え?」
「恨まないでくれよな、愛してるぜアリス」

魔理沙の八卦炉が膨大な魔力に輝く。
理解する間もなく、私の身体は力任せの熱線に焼かれていた。
激痛と、肉や髪の焦げる嫌なにおい。熱い、ような冷たいような。
魔理沙、私はあなたを信じていたのに。

「どう、じ、で・・・」



そして、私は死んだ。



□■□



気が付くと博麗神社の境内で、私は石畳に膝をついていた。
腕は後ろに回され、縄できつく縛られている。
身動きするたびに、縄に巻き込まれた皮膚がじくじくと痛む。
後ろで巫女がため息をつきながら私を処刑する準備をしている。
いや、彼女が言うなら『妖怪退治』の準備か。

「ねえ、私が何をしたって言うの?」
「何って、里の子供をさらおうとしたでしょう」
「だからそれは迷子をっ」
「泣きわめく子供の手を引いて笑うあんたを何人も見てたのよどう見ても決定的じゃない」


ネタは上がってんだ、と巫女は私の鼻先に指を突きつけて宣言する。
人間たちが私を悪だと決め付けた。そいつらが巫女は何をしているんだと酷いことを言っていたのも知っている。
だから霊夢も焦って。中立のはずの霊夢は私の言葉を聞くことすらしない。あなたも人の子だったのね。
でもおかしい。なにもかもが間違ってる。

「ねえ、私はあんたのことを厄介ではあったけど友人だと思っていたの」
「え」
「でもアリス、あなたは違ったみたいね」
「待って、誤解よ霊夢!お願い信じ、て」
「却下」

結界が私の周りを取り囲む。光の壁が音を遮断する。
喉がかれるほど叫んでも、もう誰にも届かない。
壁の向こうで、霊夢の唇が動いた。

「あいしてるわ」



そして、私は死んだ。



□■□



ノックの音で目が覚めた。
慌てて着替えをしながら考える。こんな夜遅くに来る非常識は誰だろう。
魔理沙は非常識だけれど人間だから、夜の森が危険なことは知っているはず。
もしかすると、道に迷った人がこの家を見つけて助けを求めているのかもしれない。
そうだったなら朝まで泊めてあげましょう、そう決めて扉を開けた。

「こんばんは」
「はあ」

そこに居たのはいつだったかに出会った竜宮の使いだった。
道に迷った様子も怪我をした様子もない。静かによそ行きの笑みを浮かべるだけ。
なぜ。どうして。まさか地震が起こる事を知らせに来たのだとしたら。
身構えた私に、彼女はああ、そうではなくてと首を振る。

「今日は別の用事で来ました」
「え?他にあなたがここに来る理由が見当たらなっあ、ああああぁああ?」

とりあえず客人なのだから紅茶を用意しようと彼女に背を向けた私は、言葉が続けられなくなった。
胸が焼けるように熱い。私の体から凶器が生えている?ちがう、貫通している。熱いのではなく、痛い。
ああ刺されたのだ、と理解するまでに私の体からは大分血が流れてしまっていた。
私は痛みと驚きに悲鳴を上げているはずなのに、意識はどこか他人に起きた出来事のようで冷静。
崩れ落ちた私の目が見たのは、羽衣を赤く染めた、りゅうぐうの。

「用事、終わりましたよ」
「あ、あなたなんで、どうして、わた、わたし、」
「そう、ですね・・・多分あなたを愛してしまったんです」

ああ、嫌になるわ。
竜宮の使いは最後まで空気を読んだ。そうすることが当然のように。



私は死んだ。



□■□



「私は何かしたかしら?」

私は何故だか紅魔館に居て、長いテーブルの真ん中、一番大きな皿の上に仰向けに寝かされていた。
シャンデリアのまぶしさに目が痛い。瞼を閉じようにも痺れたように身体が動かない。感覚もない。
かろうじて言葉を発することが出来たけれど、私をここへ寝かせた犯人がわざとそうしたに違いない。
そしてその犯人は淡々と、いつも持っているナイフとは違ったものを私の体に突き立てていた。

「さあ、どうでしょう」

そういえば。人間の彼女は、ここの主の食事も用意しているのかしら。
だとしたらどんな気持ちで?形は同じでも私は妖怪だから気にならないのかもしれない。
はぐらかされた返答。その間にもメイド長はどんどんと仕事をする。

「それにしても魔法使いの生け作りだなんて、吸血鬼はずいぶんと悪趣味みたいね」
「発案はパチュリー様が」
「なら悪趣味なのは魔女の方ね」

意味もないのにとても幸せな気がして、私は笑う。
生きたまま調理されるなんて今まであるはずがなかったから、どうしたらいいかわからなかった。
それでも私は必要とされている。愛されている。それで、いい。
それでいいことにした。



私は死。



□■□



私はある日ふと気が付いた。なんだか、つまらない。


毎日寝て起きて人形を作って魔法の研究をして寝て起きて。
たまに魔理沙と異変解決に行ったり、霊夢に宴会に誘われたりした。
でも、その他の私の日常は酷く単調で無駄なものに思えた。
いや、そんなはずない。こんなことを考えるなんて疲れているのかもしれない。
その日はそう思って眠ったけれど、それ以来私は変わった。
朝日が嫌いになった。思い通りに動かない人形に腹が立って当り散らして壊した。
後になってなんて事をしたんだと夜遅くまでかけてなおした。
肌が荒れた。食欲が増えた。服を変えなくなった。掃除をしなくなった。
ためいきが増えた。爪を噛むことが増えた。風呂に入らなくなった。食欲が減った。
この頃にはもう、楽しんでいたはずの静かなティータイムも寂しいだけだった。


散らかった部屋。こぼれた砂糖に群がった蟻を一匹一匹踏み潰す。
その感触が気持ち悪くて、でも少しだけ楽しくて、押しつぶされているのは私のほうでもあった。
大切なものとそうでもないものとゴミと埃がまぜこぜになった部屋に寝転んだ。
色んなものを下敷きにして、ぼんやりと湿った空気を吸ってやっと、私は安心することが出来た。


時々、一人が好きなはずなのに誰かと話をしたかった。
でも話をすることが怖かった。変わってしまった私の姿を見られることが嫌で外にも出ていない。
それでもそんな私を受け止めてくれる誰かが、急速に色あせていく私の世界に気が付いて救ってくれることを望んでいた。
大切なものとそうでもないものとゴミと埃がまぜこぜになった部屋に寝転んで私は。
ひたすらに、望んで、望んだまま。



死。
突然の衣玖さんの出現に、書いた人も困惑

※追記
>ディアボロ
言われて初めて気が付いた。ほんとだ。
snk
作品情報
作品集:
6
投稿日時:
2009/11/14 22:10:11
更新日時:
2009/11/16 16:52:07
分類
アリス
死にました
1. 名無し ■2009/11/14 22:21:44
アリス「わ、私は何回死ぬの!?
    次はど……どこから…… い…いつ「襲って」くるの!?
    私は!私はッ!私のそばに近寄るなああーーーーーーーーッ」
2. 名無し ■2009/11/14 22:28:00
思ったままを書こうとしたら↑に書かれた

くやしい…!ビクン
3. 名無し ■2009/11/14 22:48:23
なんというかディアボロ。そして突然の衣玖さん乱入に私の心がサタデーナイトフィーバー
4. 名無し ■2009/11/14 22:50:35
俺「どうして皆様はアリスを殺すのですか?」
排水の皆様「そこにアリスがいるから」
5. 名無し ■2009/11/14 22:58:36
つまり、逆説的にディアボロも愛されているという事が証明される訳か。
6. 名無し ■2009/11/14 22:59:22
コロネじゃ、コロネの仕業じゃッ!!
7. 名無し ■2009/11/14 23:13:37
先に書かれているが言わせてくれ
なんつディアボロだww
8. 宮田司朗 ■2009/11/14 23:18:39
おまえはクリリンか?!
9. 狼狐 ■2009/11/14 23:42:05
ディアボロアリスも可愛いなぁ
10. ■2009/11/15 00:15:12
アリスちゃんってばモテモテね!
11. 名無し ■2009/11/15 15:10:54
俺もディアボロを思い出してしまった・・・
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