教師は繰り返し続ける。

作品集: 7 投稿日時: 2009/11/21 22:12:35 更新日時: 2009/11/21 23:41:33



夜を一人で飛ぶのは危ない。夜の王である二人の吸血鬼に見つかりその美しい紅の爪で喉を引き裂かれ、次に子供の様に小さい口のなかに眠る尖った牙で首筋を噛まれ、体液を吸われてしまう。
だからこの世界で夜に飛ぶのは危険なのだ。もし飛ぶのであれば覚悟するべきである。吸血鬼の慰み物になっても後悔するな。
しかし夜の地上も例外では無いのだが。

そんな夜。この世界の夜、誰もが恐れる夜、そして妖怪にとって楽しい夜。
そんな夜空を大きくもなく小さくもない、ただ黒い夜の中に宵闇の球がふよふよと浮かんでいた。

「今日も新月なのかなー?吸血鬼にバレないように少しだけ外を見よっと!!お月様は真ん丸がいいなー」

黒い宵闇を纏って夜空を飛び回るのは金の糸の様なさらりとした髪に可愛らしい赤のリボンの少女ルーミアである。ルーミアは毎日変わる夜の月を見ながら飛ぶのが大好きだった。しかし最近は吸血鬼の姉妹が我が物顔で夜空を飛び回るため、自分を自身の能力で闇で隠しつつ飛ばなければならないものでルーミアは心底イライラしていた。

「あははー今日は三日月だー。昨日よりほっそーい!!」

ルーミアは宵闇の隙間から夜空で一番輝く丸い星を見た、細く、とても綺麗な曲線を描いていた。
そして闇を閉じて月を覚える。

「…吸血鬼が居なかったら毎日月を見ながら伸び伸び飛べるのになー。」

しかし吸血鬼の肉体能力、魔力、そしてプライド、どれにも自分は勝てっこない、というのをルーミアは知っていた。

「博麗の巫女が動かないとなるとこれが『夜』なのかなぁ。」

今度博麗の巫女に相談してみよう。そう思いルーミアは再び闇に完全に身を隠そうとしたがすぐ近くで叫び声がした。人間の声だろう。

「た、助けてくれ!!」

声のした方の闇を解くと一人の男が七色の宝石のような細い異形の羽の少女に襲われていた。
恐らく紅の吸血鬼の妹、フランドールであろう、姉はもっと黒くもっと吸血鬼らしい羽だから。

「ひ、ひぃっ!!」
「おにーさん?遊びまっしょ!!」
「…!!」

フランドールの右手が赤味を帯びていく、破壊するのだろう。

「助けなきゃ…!!」
ルーミアは何を思ったか今にも紅く光る右手を男の脳に振り下ろそうとしている吸血鬼に烏を形取った弾幕を大量に放ち、ばら撒いた。

「…だぁれ?私と遊んでくれるのだぁれ?いいよ、弾幕ごっこなら私みんなといっぱいやっているから強いぞー!!ってあれ?」

フランドールが烏の弾幕を避けきり、その方向の敵に反撃しようとして後ろに振り向くがその視界には誰も居なかった。

「どコ!?ドコにいるの!?私に喧嘩を売っといて逃げるなんて許さない!!見つけ出してお姉さんに処分して貰うんだから!!」

怒りで我を忘れたフランドールは人間の男の存在を忘れたかのように夜の空に飛び去った。
その隙にルーミアは男の元に降りた。

「んしょっと。大丈夫?人間。」
「あ、ああ…助かったよありがとう。」

男はルーミアに手を合わせて礼を言った。何もそこまで、と思うルーミアだったが男にとっても命に関わる問題であったし、ルーミアにしても一歩間違えば自分の命が無くなってしまうのだが。そこまで怖くは無かった。
しかしまたフランドールがここに戻ってくる可能性があるのでルーミアは男を背中に背負って闇で隠し人里まで送ることにした。幸い人里はすぐ見つかった。

「悪いなお前さんは俺の命の恩人だ!!本当にありがとう。」
「えへへ〜これからは夜出歩く時は霊夢にお札を貰うこと!!いいね。おにーさん。」
「あはは、そうするよ、お、寺子屋の慧音先生だ、俺が帰ってこなくて必死に探してくれたのか。」

人里に張られた結界の向こうから青い長髪の女性が走って来ていた、男が女性に手を振ると…


「おお帰ってきたか、ったく馬鹿者め…夜は危ないと教えていただろう…お、ルーミアじゃないか。こんばんは。」
「こんばんは。先生!!」

軽くお辞儀をするルーミア、ルーミアは人里の寺子屋で上白沢慧音の授業を受けている。今日も勉強をしたいという自主的なルーミアの気持ちを考えて夕方すぎまで補習をしていたのだ。

「二人共知り合いだったのか?」
「生徒と教師の関係だ、しかしまさか妹紅じゃなくてルーミアがこいつを送り届けてくれるとは…変わったな。」
「そうかな?今でもお肉食べたくなるときはあるけど…その時は妹紅先生の所で筍を食べるんだー!!」
「ははーん。妹紅めルーミアの為に筍を集めていたからこいつを永遠亭から送り届けなかったのか…妹紅にきつく言っておこうかと思ったがルーミアに免じて許してやるか。」

慧音は軽くため息をついた。そしてルーミアにお礼を言おうかと思ってルーミアの方に目を向けると地面にうつ伏せで眠っていた。
「よほど疲れたのか。ホントにお前は変わったよ…ルーミア。」
「あぁ、先生よ、この子は吸血鬼から俺を守ってくれたんだ。そりゃ疲れるに決まってるよ。」

男と慧音はぐうぐうと寝息を立てているルーミアを人里で寝かしてやることにした。慧音がルーミアを背負って寺子屋まで運んでいくことにした。

「んしょっと、今日授業中に居眠りしないといいが…今日は許してやるか。」
「あはは。それだと他の生徒達も寝ちゃいそうですけどね…」

男に軽く注意をした後男と別れて、ルーミアを寺子屋に寝かせるために布団を敷くことにした。布団を押入れから出すと小さくルーミアの寝言が聞こえた。

「…先生ー。ここわかんないー教えてー」

授業の夢でも見ているのだろうか。しかしどうやら完璧には内容を把握して無いようである。

「明日も言ってくれれば補修してやるぞ。もしかしたら最後なのかもしれないんだしな…いや最後なんていつ来るのかわからないのだが…」

…慧音は明日の授業内容の確認をして床に着いた。




霧の湖の近くに紅く紅く不気味な館がある。夜の王レミリア・スカーレットは怒っていた。

「フラン?つまり人間を壊そうとして邪魔されたけど結局その邪魔した誰かさんを見つけられずに更に人間を取り逃した…と?」
「うん、」

フランドールが申し訳なさそうに言うとレミリアはフランドールの小さな腹を蹴りつけた。小さな身体の中にびっしり詰まった内臓が揺さぶられる感覚が電流の様にフランドールの体を走った。小腸から大腸へ。そして胃まで伝わり、外部からの衝撃を受けた胃は胃液と食物だったものを吹き出し、食道を昇り、幼くて小さな口から黄色を帯びた透明度がまったくない物を吹き出した。

「うえっえ…げえ…おね…さま?」
「床が汚れたじゃないの。ったく、能力の加減が出来るようになったと思いきゃ…今度はそこら辺の妖怪に舐められるとは…」
「負けてないもん!!」

あ、そう、とレミリアは床を始末するためにメイドを呼んだ。
メイドは汚物で綺麗に汚された床を見て小さく溜息をした後「終わりました」と一言。

「そう、下がっていいわ、ありがとう。咲夜」

床についた汚物はシミ一つなく消えていた。
先ほどレミリアに呼ばれ。完璧かつ迅速に床のシミを消した咲夜という女性は
紅魔館メイド妖精達をまとめ上げる立場にある十六夜咲夜である、彼女は紅魔館に仕えて20〜30年経っているが見た目は二十代前半にしか見えない。おそらく彼女自身の能力によるものだろう。しかし誰もそれに言及しない。

「で、フランドール。次はないわよ?」
「は、はい。お姉様。」
フランドールは姉の言われるがままに怯えながらも、昨日取り逃した男と男を取り逃す原因となった者を必ず殺すと約束した。
二人の吸血鬼は今夜の復讐に備えてゆっくり眠ることにした。





寺子屋での授業は終わり下校する時間である

「先生ありがとうー!!補習ありがとう!!」
「はいはい、どういたしまして。気をつけて帰るんだぞー」

慧音はルーミアを送ってやった、ルーミアには家がない、帰る場所は夜だけである。
夜の暗さと沢山の烏が友達だったときがあった。しかしある日慧音に出会って寺子屋に授業を受けに行き出してからはルーミアの生活は変わった。
友達もできたし、授業の楽しさも知った、今までただの食料としか見ていなかった人間にも色々な者がいて面白いと感じるようになった。
最初はルーミアを避けていた里の人々だったが彼女の授業を受ける態度や慧音と妹紅の協力もあり、今ではルーミアを恐れる里の民は少ない。

「今夜の月はどんな形かなー?」

ルーミアは人里の土をスキップしながら走っていく、その姿はまるで無邪気な子供である。

「ねーねールーミアねーちゃん!!」

里の子供の一人が彼女の黒いスカートの裾を握りながら聞いてきた。

「なあに?お姉ちゃんにわかることなら教えてあげるよ。流石に勉強のことは難しいけどね。」

すっと屈んで少年の目と高さを合わせるルーミア。無邪気な質問に答えようとしていた。

「ルーミア姉ちゃんって、妖怪なんだろ?強いんだろ?だったら湖の吸血鬼をやっつけてよ!!おばあちゃんが吸血鬼に食べられちゃったからやっつけるんだ!!」
「…そうだね。お姉ちゃんも吸血鬼にたくさん困ってるの。でもね、お姉ちゃんはそんなに強くないの。ゴメンね。」

少年は予想外の答えに豆鉄砲を食らったような顔をして、残念そうにどこかに行った。

「ごめんね…お姉ちゃんは強くないの…」

ルーミアは人里から湖に向かった。今日は湖で氷精チルノと大妖精と花冠作りで遊ぶ約束をしていた、人間と遊んだり会話したりする日もあれば昔からの友人と遊ぶ日もある。彼女は自分が気まぐれだと信じていた。


…ルーミアが湖に辿り着くといつもと違うということにすぐ気づいた。そこら中から漂ってくる血の匂い。荒らされつくされた木に、湖は紅魔館の近くだということを再認識させられると、ルーミアは急いで友達の元に向かった。
一瞬血の中心に人影が見えて焦っていたが幸い二人はすでに蘇生していた。二人の周りの血の跡からするとかなりスプラッタに殺されていたようだった。

「…いたた、ったくあのメイド…殺しすぎよ…」
「あたいが何もできなかったなんて…大ちゃん立てる?肩を貸してあげるよ。」

チルノがフラフラの大妖精の腕を肩に回し。その姿はいつもバカな行動を繰り返しているいつものチルノからは想像のできない姿だった。

「ルーミア、気をつけて、紅い屋敷のメイドと中華な奴が『姿を消せる妖怪』を探している。あんたかミスティアかサニー達かは解らないけど…ルーミア何かした?」

何かしたと言われればその『何か』以上の事をしている悪魔の妹であるフランドールに喧嘩をふっかけたのだから。

「あたいは大ちゃんを安全な場所に運んでからサニー、ルナ、スターの様子を見に行ってくる。まさかとは思うけど一番誰にも気付かれない能力を持っていて喧嘩早いというか悪戯好きなのはあの三人だから心配なのよ…」

チルノはルーミアに助けにきてくれたことに感謝し、遊べなくなったことを詫びてから近くの森に大妖精を抱えて飛んで行った。
一人残されたルーミアを待ち望んだかのように上から銀の髪を丁寧に結ったメイド服の女性、十六夜 咲夜が降りてきた。

「こんにちは。人肉しか興味のない妖怪」
「何の用?」
「姿を隠せて烏の弾幕を使う子を探しているの。何か知らない?…それともあなた?」
「知らない。私そんなに馬鹿じゃないし、それに強くもないもん。」
「ぷ、あはははは、そうね、そうだったわ。貴方程度の妖怪がフランドール様から『おもちゃを守り通す』なんて無謀なことするなんてありえないわね…そうだったわ。あははは」
「見当違いだったのならどっか行ってよ…私は忙しいのよ。」
「あはは。ごめんなさいね、じゃあね、とと、アレ…誰だったかしらそうだ、頭が無駄にバカな妖精と大妖精というのに小心な妖精の始末をしてくれたのはまさか貴方?だったら感謝するわ。」
「二人を殺したのは…お姉さん?」
「だったら何?あの二人なんてどうせすぐ『治る』んでしょ?軽く四回ぐらい殺してあげたわ。しかしあれね…」

咲夜は自慢げに二人の妖精をどう殺してやったのかを説明し始めた

目に沢山のナイフを刺した。1回目
体の関節全てにナイフを突き立てて昆虫標本の様にした、2回目
胴体と首を切り離した、3回目
首を片方の妖精の目の前で落としてやった、4回目

仕事のストレスを思い出すだけで疲れる咲夜にとって、いいストレス発散だったようだ。

「んじゃ。さよなら。弱小さん」
「…さよなら。」

咲夜の話はルーミアにとって心底気持ち悪かった、友人が殺されるのを自慢げに聞かされたのだから、今すぐにでも咲夜を殴りたかった。しかしそうした所で返り討ちに合うのは分かっていた、何もできないと再認識した後、ポロポロとルーミアは大粒の涙を流した。
涙も少し落ち着いた後スカートの裾で涙を拭いた。

「私は…弱いのかな…」

「あたいが保証する。弱くないよ。ずっと強いよ。」

チルノが大妖精を安全な場所に運び終えたのかチルノがルーミアの目尻に残った涙を指で拭いてやった。

「死んでいたあたいと大ちゃんはすごく怖かったよ、起きたときにまたメイドが居たらと考えると怖かった…でもルーミアが来てくれて本当に良かった、ありがとう。」

チルノは痛みを我慢しながらもルーミアに笑顔で礼を言った。

「…そんなの、私は遅かったんだよ!!あのメイドから二人を守れなかった。私が来たときも二人はとっくに『治っていた!!』私は…最悪だもん…」
「ルーミアのわからず屋!!」

肉が肉を叩く音。パチンと乾いた音が響いた。

「ここの妖怪はみんな自分の事ばかり考えてるけど、ルーミアは周りの皆に気を配りすぎ!!!自分の事も考えなさいよ!!」
「あぁ…うぅ…」

白い肌に仄かに染まった赤い跡を擦りながら再び涙を浮かべ人里に飛び去った。

「馬鹿…ルーミアは強いのに…」
「頭の悪い子見〜つけた♪これで5回目よ!!」

チルノは頭にナイフを突き立てられて本日5回目の死を迎えた。



人里にたどり着いたルーミアは里にいつもの活気が無いと感じるとこっそりと里の中心の広場に向かうことにした。
そこではレミリア・スカーレットによる憂さ晴らし兼拷問が人里の民に対して行われていた。
十二本の十字架の様なものが中心に磔にされている慧音を中心に円を描いて並んでいた、十二本の柱には寺子屋の子供たちが磔にされていた。
子供たちの額の前には今にも動き出しそうなナイフが宙に固定されていた。このナイフの動きは咲夜…いやレミリアの意思によって変わるであろう。

「中々吐きませんね…どうしますかお嬢様?」
「一人ずつナイフで脳を刺し貫きなさい。目の前、いや真後ろの生徒から順に殺して、最後には真っ正面の子をあっさり殺しなさい、そこまでに壊れるかもしれないけどね。」
「了解しました。では血が飛び散るので…」
「慣れているわよ。」

そう言うとレミリアは人里の民の死体の上にソファーにでも飛び乗るかのように登り、これから始まるショーを楽しむかのように笑顔で十三本の柱を見ていた。

「助けて!!先生」
「いぐっ…もう、帰りたいよぉ…」
「嫌だよ、助けてよ先生…」
「お父さん!!お母さん!!お兄ちゃん!!助けてよ!!ねぇ先生!!」
「早くきてよぉ…巫女のお姉ちゃん…」
「えーん!!えーん!!」
「先生…助けてくれるよね?妹紅姉ちゃんが来てくれるよね?」
「もう嫌ああああ…」
「もっとみんなと遊びたかったのに…」
「吸血鬼なんて…吸血鬼なんて…」
「もういやもういやもういやもういやもういやもういやもういや…」
「先生…お兄ちゃんが…食べられちゃったよ…」

慧音は十二方から聞こえてくる我が子の様に可愛がっていた生徒の強くもあり弱くもある消えそうな叫び声に全力で反応していた。

「大丈夫だ!!妹紅や霊夢が助けにきてくれる!!泣くな…かわいい顔が台無しじゃないか…おのれ!!吸血鬼!!こんなことをして…」

レミリアに説得を試みようとするとレミリアは咲夜に笑顔を向けた。

「まず一人目…」

慧音の真後ろから叫び声が聞こえた。

「ナイフがこっちに来る!!先生たすけてよせんせい!!先生!!!うわああああああ!!!」

ざくり、

「おぐっ…」

十一人の子供たちが叫ぶのを止めた…そして慧音は真っ正面の生徒とその両隣3人の生徒の青ざめた顔を見て最悪の展開に自分は居ると気づいた。

「嘘…だよな?おい!!返事をしてくれ!!お前が死んだら天国のお兄さんはどうなるんだ!!おい!!返事をしてくれ!!先生はここに居るから…返事を…」

真後ろに磔にされているはずの生徒の名前を慧音は何度も叫んだ…その姿を見ている彼女の生徒たちはもう叫ぶのをやめていた…
そして返事は無いということと重いものを地面に落とす音が一つの事実を叩きつける。

「やめてくれ…これ以上…生徒達を…」
「いぎっ…」

今度は右斜め後ろから声が聞こえて消えた。

「はい、二人目ですね。さ、どんどん刺すわよ。人殺しを大っぴらにできるなんて久しぶりだから楽しませてもらうわよ。」

姿こそ見えないが声の主である咲夜は楽しそうだった。

「おい!!やめて…」
「ああああああ!!…あぐっ!!」

左斜め後ろからの声も聞こえて消えた

「あと九人ね。よし、3人同時に。」
「や、やめ…ろ」

身を縛る紅い鎖さえ解ければ…と願うが現実に引き戻されるのは生徒の叫び声である。

「いやっ…」
ざくり
「ひぃっ、やめ…」
ざくり
「お父さん…」
ざくり

右、左、と交互に聞こえてきた断末魔、そして最後の親を呼ぶ断末魔は右から聞こえた。

「周りの様子をみたいかしら?ダメよ、もうすぐ目の前で見れるから。せっかちねぇ…まだ六人よ。半分残っているじゃない。」


先ほど湖で出会ったメイドが楽しそうに手を動かしナイフを操っていた。儀式を行うかのように立てられた十三本の十字架か何かには十二人の生徒たちが磔にされいた。遅かったとルーミアは泣きながら目の前の処刑ショーをただ見ていた…

「先生…みんな…ゴメンね…ごめんなさい…私が…私が…」
「私が…何かなぁ?悩み事ならこの紅美鈴姉さんにご相談だよ。」

後ろの声に気づき振り返ろうとすると体が宙に浮かんだ。中華服に身を包み、スラリとした長身の女の姿が目に入った

「あ〜…ルーミアか。まぁ咲夜さんの話によるとハズレっぽいけど…今の発言は気になるなぁ…」
「やめて!!放してよ!!」
「そうはいかないのよね…これによっちゃ今夜の献立が変わること言う事を恨みな…紅美鈴、今日は仕事しますよ…」

ルーミアはジタバタと暴れ美鈴の手から逃れようとするが美鈴の腕力には勝てなかった…
どうにか一発当てて逃げるためにルーミアは手の平を握り締め、弾幕を作り。美鈴放った。

「いつっ!!」

弾幕は命中した。がルーミアは一つ大きなミスをしたことに気づいた。とっさの反撃で慌ててたのか、フランドールに放った弾幕と同じ形の弾幕を美鈴に放ってしまった。
その事に気づいて歯を震わせているルーミアを美鈴はじっと見て考えた

「烏の弾幕…確かフランドール様が攻撃を受けたのは深夜…お前か。ルーミア。」
「……」
「沈黙は肯定…か魔女狩りでも何でもないのにね…」

「おぐぇっ!!うぇっ…」

ルーミアの小さな体を背負い投げで地面に叩きつけた後拳を猛スピードで小さな子供の腹に叩き込んだ。

「ああぁ…うぷっ…」

あまりの衝撃にルーミアは白目を剥きながら気絶した。美鈴はそれを担ぎ、死体の上で楽しそうにしているレミリアの元に向かった。




十三本の十字架に飾られた紅と死体は十一、そして今一つ増えた。中心に縛られている慧音の目からは涙が止まらず。瞳からは光が消えていた。壊れている。

「先生!!起きてよ!!先生!!先生!!…うわぁあああ!!!」

ざくり、

「おうっ…げっ…」

生徒の断末魔を聞くと慧音はビクンと震え、光のない瞳から涙を流す。

「これで十二人…次はあなたよ…って美鈴どうしたの?その子はハズレだって…」

咲夜が慧音に死ぬ意思があるのか確かめようとしたが、美鈴がルーミアを担いで来たから事態は変わった。




「美鈴。それは本当なのかしら?」

死体の山の頂上で月を浴びているレミリアはそう聞いた

「ええ、恐らく間違いないかと、先ほど私に烏の型の弾幕を私に向かって放ちましたし…」
「弾幕の型ぐらいなら練習すれば誰にでも変えれるわよ?」

レミリアの言う事も正しかったがそれ以上に美鈴の説明力の高さも素晴らしかった。
レミリアの質問に正直に答え、知っていることで必要な言葉を選んでいく。レミリアも最初は信じられなかったが美鈴の話を聞いている内に信用していた。

「…中々の推理じゃない美鈴…でも」
「物理的証拠ですよね」

レミリアは確実を求めていた。美鈴の推理は素晴らしいが確実とは言えなかった。レミリアは確実な証拠が欲しかった。
少し落ち込んだ様子の美鈴を少し見てから、うつ伏せで気を失っているルーミアを見て笑顔で言った。

「そこの容疑者さんは何で黙っているのかしら?」
「それは…」

レミリアの発言の意図を察したのか美鈴は気を失っているルーミアを見て、笑顔で答えた

「真実を突きつけられたからですよ。お嬢様。」
「成程ね、沈黙は?」
「肯定に決まっているじゃないですか。お嬢様。」

美鈴が自分の望む回答をした事にレミリアは気分を良くし、笑顔を見せた。

「咲夜。あの女の正面の十字架にこの子を磔に。」
「しかし…あの女はもう…」

壊れている。今も涙を流しながら人の名前らしき言葉を呟き続けている。殺された人里の住民たちの名前だろう、この状況で何をしようが泣くだけである、と咲夜は言いたかった。

「咲夜?私の命令には?」
「yes or yes…」

その名には逆らえないそれが従者である。咲夜は自分が誇り高き従者であることを思い出し。青い瞳を紅に輝かせ、気を失っているルーミアを血と子供の脳で彩られた十字架に縛りつけた。


「ん…先生!!私だよ!!ルーミアだよ!!しっかりしてよ!!先生なら『無かったことに』できるんでしょ!?」

聞き慣れた声に慧音は小さく答えた。

「だ…なんだ、何度やり直しても…同じ結果…今のこの悲劇に…もう…疲れた…もう、お前と生徒が死ぬのは見たく…な、い」

慧音は『歴史を食べる』事が出来る。が歴史を変えようがレミリアが操る「運命」には敵わなかった。
レミリアは「憂さ晴らしに人里を攻めたら真犯人に会えた」という運命を望んでいる。
それからは逃れられない、慧音は何度もこの状況…ルーミアら十二人の生徒と人里の民が殺されるのを見ていた。

何度も何度もやり直しても結果は変わらなく。自分が死んでしまう前に昨日に戻る事を繰り返していた。

「クスクス…良かったじゃない二人共。」

十字架の下でレミリアと咲夜は笑う。

「生徒は教師の目の前で最期を見せてもらえるし、教師はこれで十三人の死を間近で見たのよ?いや…10569人かしら?やり直しも大変ねぇ…これからの授業に大活躍よ?吸血鬼の強さでも生徒に教えたら?」
「子供には縁の薄い死を教えるのは素晴らしいことですよ。では。通算10582人目を…」

そういうとすぐルーミアの脳と心臓を狙うかのように二本のナイフが現れた。そしてナイフはカタカタと震えていたが、しばらくすると首輪の外れた狂犬の用にルーミアに襲い掛かった。

「い…だっ…」
「ルーミア!!!おのれ吸血鬼!!この子が何をした!!この子は妖怪…いやお前の妹に襲われていた人間を救っただけじゃないか!!誇り高き吸血鬼?そんな小さな事で、ここまでするとは誇りとやらもたかが知れている!!」
「どんなに小さくても屈辱は屈辱よ。そんなことよりもあの子の最期の声でも聞いた方がいいんじゃない?何かいいたそうだし。」

ルーミアは慧音に最後の一言を伝え。笑顔で十字架の飾り物になった。




人里に一人の女性が入ってきた、腰より下にまで伸びた銀色の髪と白く、しっかりとした細い腕には沢山の筍を抱えていた。

「筍を取ってこいと慧音に言われたときには乗り気じゃなかったけど…ルーミアも居るとなれば…話は別なんだよね…」

慧音の周りで一生懸命で頑張っているルーミアは何故か助けたくなる妹紅であった。
そして慧音を探して村の中心に向かうとき。仄かに感じていた異変に気づいた。

「…あの柱は何だ…誰か磔にされている…慧音!!」

十三本の柱の中心の柱の下に慧音は倒れていた。その周りには十二人の子供の死体と黒い服の切れ端だった。

「も…紅か…お願いだ、私の部屋から巻物を…この歴史を…運命を…吸血鬼に勝つんだ…」
「吸血鬼だって!?なんだったら今すぐ私が…」
「いいから持ってきてくれ!!」
「わ、わかったわよ…」


妹紅は急いで慧音の住居から歴史を無かったことにするための巻物を取ってきた、慧音は傷だらけの体で起き上がり巻物に術を書く…ルーミアの最後の『私も運命を変える』と言われたのあれば諦めるわけにはいかなかった。

「…慧音…私も協力する。」
「あぁ…ありがとう。」



術が完成し。歴史は戻った。




夕方、寺子屋の下校時間である。今度も戻ってこれたと慧音は安心すると目の前のルーミアが挨拶しているのに気づいた。

「先生さようならー!!」
「さよなら。ルーミア。気を付けて帰るんだぞ。」
「わかってるよ先生!!」


ルーミアは今日も男を助けるであろう。レミリアのストーリーはそうなるようになっている、慧音は飛び去ったルーミアに手を降り、そして小屋に戻った。


「…今度こそ、運命に負けるわけにはいかない…」

そう決意したのも数知れないが、


最悪のシナリオを回避する為に慧音は何度も歴史をやり直し続けた















これからも。
慧音が無限ループに苦しむ話を書きたかった。

レミリアは怒り狂っちゃってるんで吸血鬼条例なんて知ったこっちゃありません。その部分は表現できてなかった自分が甘かった、
慧音に関してはあれぐらい能力がチートでも良いような気がします。

※5
それ絶対キャラ配置が同じで同じシチュがあると思いますよ
risye
作品情報
作品集:
7
投稿日時:
2009/11/21 22:12:35
更新日時:
2009/11/21 23:41:33
分類
慧音
レミリア
ルーミア
これはシリアスだと思う
若干長め
pnpさんの様なシリアスが書きたかった
慣れないことはするもんじゃない。
1. 名無し ■2009/11/21 22:33:45
吸血鬼条約はどうした?と思ったが、良く考えたら無かったことにできる奴がいるじゃないか。
つまりこれは慧音先生がルーミアを苦しめるために仕組んだ罠だったんだよ!!
2. 名無し ■2009/11/21 22:45:24
な、なのかー!!
3. 名無し ■2009/11/21 22:48:19
な、なんだってー!!
4. 名無し ■2009/11/21 22:52:25
ひぐらしっぽいな
フランちゃんの館内ヒエラルキーの低さに泣いた
5. 名無し ■2009/11/21 22:57:42
おーい、人里に手ぇ出す事は禁止されてるはずですよー。
と言うわけで、ゆかりん&霊夢主催のゴミリア一家大粛清祭りをだね・・・
6. 名無し ■2009/11/21 23:16:29
何らかの理由でゆかりんいなくなっちゃって暴走してるんじゃないの?
もしくは強い妖怪や神は駆逐しちゃったとか、「吸血鬼条約」の元となる戦争で
吸血鬼側が勝ってる世界とか……
7. 名無し ■2009/11/21 23:23:30
むしろ吸血鬼異変でこんな事やってたとか?
8. 名無し ■2009/11/21 23:26:23
慧音って、歴史を隠して「無かったこと」にできるけど
れきしのやりなおしは出来ないんじゃなかったっけ
9. 名無し ■2009/11/21 23:49:05
永遠に続くんだろうなぁ
10. 名無し ■2009/11/22 00:48:52
あんまり設定を踏まえ過ぎてると書きたいものも書けないで御座るよ!
11. 名無し ■2009/11/22 02:26:27
取り敢えず、レミリアとメイド長とのウザさは異常
12. 名無し ■2009/11/22 03:39:39
けーね先生頑張ってw
フランはこのくらいの立場でちょうどいいや
13. 名無し ■2009/11/22 14:13:40
吸血鬼条例に噴いたwww
14. ■2009/11/22 20:46:37
いつかのルートでルーミアが覚醒してEXルーミアになって紅魔館勢に打ち勝つストーリーを想像しました(笑)
15. 名無し ■2009/11/23 08:20:17
へけけっ、ルーミアがもっともっともっともっと苦しめばいいと思います
16. 名無し ■2009/11/24 10:15:01
レミリアと慧音の能力をぶつけるという発想がとてもいい
終わり方も、すごく好きです
名前 メール
パスワード
投稿パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード