Deprecated: Function get_magic_quotes_gpc() is deprecated in /home/thewaterducts/www/php/waterducts/neet/req/util.php on line 270
『全ては裏目に』 作者: おたわ

全ては裏目に

作品集: 7 投稿日時: 2009/11/23 18:52:56 更新日時: 2009/12/06 00:46:58
注意
・日本語になっていない文章だらけです。
・中途半端に長いだけで内容は薄っぺらいです。
・キャラ崩壊注意 この村紗ではムラムラできません。






















またこの呪われた海に、哀れな舟が一隻やって来た。
人間って馬鹿だなぁ。この海を通って、無事生きて帰れる訳が無いのに、何故わざわざここを通るのかな。
それとも、私の噂もまだまだ、地上じゃ知れ渡って無いのかな。
まあその方が都合はいいや。沈没させれる舟が増えて、私も楽しいし。
さてと、早速いつも通り舟を沈めますか。

「船長! 大変です! 水が、水が、船底に……!」
「何だと!? 早く水を舟から出せ!」

私の柄杓で水を入れるペースよりも、貴方たちが水を出すペースの方が早いって言うの?

「船長! 出しても出しても、水がどんどん溢れてきます! このままでは全員……」
「止むを得ん。全員、海に飛び込め!」

あーあ、浮き輪の様な掴まる物の無いっていうのに、海に飛び込んじゃった。まさに自殺行為。
甲板の板でも一枚剥ぎ取って、それに掴まってればまだ助かる可能性はあるのにね。ばっかみたい。
あはは、船長さん、「助けてくれーッ!」だって。可笑しいなぁ。
自ら助かる道を絶ったと言うのに、片腹痛い。
んー、まあでも、本当に危機的状況に陥ると、助けて貰える対象がいなくても、自然に声が出るもんなのかな?
って、何時の間にか全滅してる。今回の舟は楽勝だったなぁ、つまんない。
そんでも、これで今月沈没させた舟は18隻目。月間記録の20隻まで後少しね。
よーし、もっともっと頑張って、もっともっと沈没させて、もっともっと妖怪としての格を上げて……
ゆくゆくはこの私を縛るこの海からも離れて、ふふ、ふふふふふ……


-------------------------------------------------------------------------------------------------


「ああああっ!」
私は奇声を上げ、飛び起きた。
額にべったりと付いた綺麗な黒い髪。
背中を伝わる夥しい量の汗。
粗相をしたかの様に、べっちゃりと湿っている布団。
他人の目からしたら、海にでも飛び込んだのではないかと思うくらい、汗まみれだった。

「はぁ……まただ。また、あの悪夢だ……」

最近悪夢をよく見る。
悪夢とは言っても、昔の自分の悪事を思い起こした夢を見ているだけなのだが、今となっては悪夢に等しい。
……私は今でもあの呪われた海に縛られているのか。
私は一先ず、汗を吸い過ぎて重くなった服を脱ぎ、着替えることにした。

体はスッキリしたが、先程の悪夢の所為か、寝起きの所為かは分からないが、頭がクラクラする。
外に出て空気でも吸って、体をシャキッとさせよう。そう思い、聖輦船の外に出た。
外はもう既に朝の様だ。薄暗い聖輦船内部とのギャップに目が眩む。
船の上甲板に立ち深呼吸をする。春の空の冷たい空気が体中を巡る。
少し冷た過ぎるくらいだが、眠気を覚ますには丁度いいくらいだろう。

体も頭もスッキリしたが、何か心はモヤモヤしたままだ。
釈然としない気持ちで溜息を吐いていると、船の見張り番である雲居一輪が話かけてきた。

「おや、ムラサ。外に出て来るなんて珍しいね。普段からもっと外に出て来ればいいのに」
「私は船長ですから、余り持ち場を離れることはできないからね」
「聖輦船は自動操縦でしょ? で、飛倉の破片についてなんだけど、まだ余り集まってないみたい」
「へぇ」
「ナズーリンに集めさせてはいるのだけど、一日2個集めてくれば良い方よ」
「そっか」
「……聞いてる? もう、ムラサが率先して姐さんを助けよう。って言ったんだから、しっかりしてよ!」
「あ、うん……」
「まあいいや。私は仕事に戻るから、ムラサも頑張ってね」

悪夢の件で悩んでいた私は、一輪の言葉が身に入らずにいた。
今も夢の中で尾を引く、残酷な過去を持つ自分が、聖を復活させた後、傍に付いていて良いのだろうか。
今一度、自分の過去を振り払う
必要があるのではないか。
しかし、そんな過去を持つ自分すらも受け入れてくれたのが聖だ。今更ぶり返す必要は無いのではないか。
そんな二つの感情が葛藤していたが、私はどうするべきかを、片一方に決めた。

こんな中途半端な状態では面と向かって聖と会えない。
自分の忌まわしい過去を全てを振り払うべきだ。
もう一度、過去に自分を縛った海へ向かい、自分を咎めよう。

しかしここは幻想郷、博麗大結界がそれを許さない。どうやって外に出ようか考える必要がある。
昔、地底に来た小鬼が喋っていた噂を小耳に挟んだことがある。地上にいるという妖怪の賢者に頼めば外の世界に出して貰えるらしい。
しかし、その妖怪の賢者とやらが誰なのか、何処に住んでいるのか、どんな風貌なのか、名前すらも分からない。
ならば、博麗大結界を管理する博麗神社の巫女に、外の世界に出して貰える様に頼んでみてはどうか。
……妖怪である私なんかを出してくれる訳が無い。

外の世界に行く方法は早くも万策尽きた……と、思っていたが、忘れていた。身近な物を忘れていた。
宝塔があるじゃないか、宝塔が。難解な法界の結界すらも解くと言う、毘沙門天の宝塔が。
しかし、星からどうやって宝塔を奪えばいいのだろうか。
飛倉も集まって無いのに、魔界に行って星に会いに行くという行動自体も、一輪に怪しまれる。
第一もし奪えたとしても、宝塔が本当に博麗大結界にも応用できるかは分からないし、リスクが高過ぎる。

あーあ、どうしよう。と思っていると、前方からいきなり眩い光が迫って来た。それも眩しくて目を開けがたい程の光だ。
何とか薄目で確認してみると、その光の正体は私が切望していた物だった。

「やっとだ、やっと宝塔が見つかった。随分苦労したが、これでご主人様も喜んでくれるだろう」

何故だかは分からないが、ナズーリンがご機嫌で宝塔を持ってこっちへ向かって来ている。
状況は全く掴めないが、これは千載一遇のチャンスだ。ここで宝塔を奪えなければ、もうチャンスは回って来ないだろう。
一輪は船内のトイレに向かった様で、甲板には私以外誰もいない。故に犯行現場は誰にも見られない。完璧な状況が整った。
ナズーリンの死角なる船の荷物の裏で待機し、確実に当てられる射程範囲内に入ったナズーリンに碇を投げた。

転覆「道連れアンカー」

ゴッ!!

「!? ぐ、ぐがあぁ! うあああああ!!」
「ごめんなさい、ナズーリン。宝塔の為にはしょうがないの……でも急所は外したから大丈……夫?」

狙い通り、ナズーリンが痛みに耐えきれず宝塔を落とした。
しかし、碇は狙い通りには当たらなかった様だ。余りの光の眩しさに、手元が狂ったのだろう。
大事に至らない様に急所を外したつもりが、かなり深めに腹部へヒットした。

赤黒い血、真っ赤な血、綺麗な様な、汚らしい様な、そんな血が瀑布の様に溢れ出ている。
比喩ではない。血がブシャアァァーッ!と大きな音をたて、本当に滝の様に出ているのだ。
その幼児の様に小さな体からは不似合いな程の量の血が出ている。これは相当不味い。
血の勢いが少し収まると、臓器が見え隠れしているのが分かった。
更には腸も飛び出し、燻製している最中のソーセージの様に、だらりと垂れている。

私がその凄まじ過ぎる光景に唖然としていると、船内から走って来る音が聞こえてきた。
まずい、一輪だ。ナズーリンの叫び声を聞いて様子を見に来たのだろう。早くこの場から逃げねば。
ナズーリンは尚も金切り声を上げ、血を噴き出している。
大丈夫、大丈夫。ナズーリンは鼠だ。生命力は伊達では無い。きっと生きていてくれる、きっと大丈夫……
そう自分に言い聞かし、この場を後にした。



さっきの光景が未だ鮮明に目に浮かぶ。
ナズーリンには悪い事をしたと思うが、これはしょうがなかった事だ。そうだ、しょうがなかったんだ。
心の中で言い訳を繰り返している自分に嫌気が差したが、かと言って既に死んでいる私が自殺なんて行為できない。
私は暗く沈んだ表情をしていたが、いざ地上へ落ちた宝塔を見つけると、頬が緩んだ。
早速回収しようとすると、私より先に手を伸ばし、誰かが宝塔を取った。

「! だ、だれ?」
「おっと、私はただのしがない蒐集家だ。気にしないでくれ」

ただの
蒐集家と言っているが、そうは見えない。体から滲み出る魔力を見たところ、魔法使いといったところか。
また、光が眩しくて良く見えないが、魔法使いとしても普通には見えない。
白黒に赤を添えた奇抜なファッション、手に持つはよく分からない捻れた杖、更には箒にまで跨っている。魔法使いは箒が無くても飛べる筈だが。

「そんじゃ、そういう訳で」

宝塔を持ったまま逃げようとしたので、慌てて服の端を掴む。

「いや、待って。その宝塔は私の物ですよ」
「おっと、いざ空を飛ばんとするときに掴むな。危ないじゃないか」
「空を飛ぶのだったら、その宝塔を置いてからです」
「あー? この宝は私の物だよ。道端に落ちている宝は早いもん勝ちだ」
「だから、それは空から私が落とした物で」
「関係ないぜ。もう既に所有権は私に移った」
「いやいやいや、言ってることが」
「うるさいな。私はこの後宝船を追う予定があるんだ。邪魔をしないでくれ」
「それは貴方の都合でしか……」
「にしても凄い光だな、眩し過ぎるから止めて欲しいが」
「私にお渡ししてくれれば、止めてあげない事も無いですよ?」
「お、ちょっと捻ったらすぐ止まった。もうお前の手も煩わせることもない、じゃ」
「あ、ちょ、待ってってば!」

再び逃げようとしたので、また慌てて服の端を掴む。
それにしても、話が全く進まない。私もこんな所で道草を食いたくないので、さっさと終わらせよう。

幽霊「シンカーゴースト」

元々幽霊なので、気配を消すのは得意だが、この技により完全に気配を消すことができる。

「……ま、そんなにこいつが欲しいなら、弾幕勝負で。ってあれ?」

気がつくと手に持っていた筈の宝塔と、目の前の少女が消えていた。
魔法使いは呆気に取られ、ぽかんとしていたが、暫くすると

「案ずることは無い。ここは幻想郷だ」

と、一言残し、その場から去って行った。



私はしてやったりの顔で、幻想郷の最果てまでやって来た。
そして早速、博麗大結界を解く準備に入った。
もしこの宝塔の力で博麗大結界が解けなければ、今までの苦労は水の泡だ。
それだけに、少し緊張の面持ちになった。

くいっ

宝塔を捻ると、眩い光と共に結界が解けていき、丁度一人分入れるくらいの大きさの穴ができた。
「やった」と大声を出しそうになるが、もしこの現場を妖怪や何かに見られたら一大事だ。
それこそ、幻想郷から永久追放や、博麗の巫女から永久的な封印を施されたりするかも知れない。
そんな訳もあって、私は静かに結界を潜った。


-------------------------------------------------------------------------------------------------


結界を潜った先は森だった。高く太く連なった木々は、幻想郷の木々と同じ様な生命力の高さを感じさせる。
外の世界はもう殆ど自然が失われたというのは都市伝説だったのか、と思いつつ、深呼吸をしてみた。
……ん? 何か喉が痛い。もしかして空気が汚いのか。森の中は普通、空気が綺麗な筈なのだか。
もう一度深呼吸をしてみる。やはり喉が痛くなる。
よくよく周りの空気を感じとってみると、妙に生温かく、淀んでいる。
その瞬間、ようやく外界にやって来たのだ。という感覚が湧いて来た。

ああ、私が人間であった頃の日本は空気は素晴らしく透き通っていた筈なのに、ここまで崩壊してきているのか。
空気を吸うだけで頭が痛くなる。更には少し、咳も出る。
瘴気と化け茸の胞子が混沌としている魔法の森よりは居心地は良いが、妖怪の山の麓の森と比べると雲泥の差だ。
森の中でここまで酷いのなら、町はどうなっているのだろう。考えただけで嫌になる。
結界を潜る前のウキウキ気分は何処へやら、不安と心配が募りながらも、町を目指す事にする。

町を目指す途中、妖怪に全く遭遇しない事に驚いた。
外の世界の妖怪はもう既に全種幻想入りしてしまったのだろうか。
お陰で障害が少なく、どんどん進めれるという点では良いかもしれないが、やはり何か寂しくもある。
そうこう考えていると森を出て、町に着いた。そこには無機質の世界が広がっていた。
私が知っている町とは、余りにも大きくかけ離れていた。
灰色の道を上を駆け巡る鉄の塊、大きく聳え建つ石の塊、手に直方体の形をした何かを持ち、それに話掛ける不気味な人間達。

「な、なに、なにこれ……」

私は驚愕した。これが本当に幻想郷と同じ日本なのか、余りにも違い過ぎる。
そうだ、と思い、試しに空気を大きく吸った。

「……けほっ、げほっ、げぇ」

……喉が爛れる様だった。これは深呼吸は絶対にしては駄目だ。
こんな空気の中に住んでいて、ここの人間は喉に炎症でも起こさないのか疑問に思った。
私が閉じ込められていた地底よりも、遥かに空気が悪い。
それでも、村紗は進まなければならない。
まずは現在地を知る為、人間に話しかけなければ。
丁度通り掛かった人間の男に話を掛けてみた。

「あの、すいません……ここは何処でしょう?」
「……はい?」

私の質問が余りに漠然としていた為か、男は素っ頓狂な声を上げた。
私は気にせず質問を続ける。

「見た限り、日本には見えないのですが。ここは本当に日本?」
「はあ、ここは日本の長野市ですが。見た限り貴方は日本の方に見えますが、そんな質問をするなんて異国の方ですか?」
「え? あ、日本人です。生粋の日本人です。」

ここは長野市と言う場所らしい。私が目指しているのは隠岐だが、どのくらい離れているのだろう。
それにしても、外の世界での自分の設定を考えていなかった為、急な質問に少し困惑してしまった。
後で適当に考えておいた方が良いのかもしれない。

「じゃあ何故、その様な質問を?」

そうこう考えを頭の中で回らせている間にも、男が怪しんで更に追及してくる。
ボロが出る前に早めに質問終わらせなければ。

「そ、そんなことより、私は隠岐を目指しているのですが、どの様に進めば辿り着けるのでしょうか?」
「おき? 隠岐諸島の事なら聞いたことあるけど……確か島根県にあったかな?」
「しまねけん?」
「ここからひたすら西に進めば辿り着くと思いますが……もしかして島根県、分からない?」
「あ、いえ、分かります分かります。あ、ありがとうごうざいました! では!」

質問を終わらせると、事を大きくし過ぎないよう、早めにその場から立ち去る。
慣れぬ質問に少し疲れてしまったが、必要な情報は粗方聞き出せた。
まず、私が過去に舟を沈没させていた海がある隠岐は、島根県という場所にあるらしい。
そして、その島根県がある方角は西。
現在地である長野市からどのくらい離れているかは分からないが、飛んで行けばまあすぐだろう。
聖が封印される前に「何となく船長っぽいでしょ」という理由で貰った方位磁針を取りだす。
聖輦船は自動操縦なので、使う機会は滅多になかったが、お守りに取っておいたのだ。

いざ、西へ飛んで行こう。と思ったが、今は余りにも人が多い。空を少女が飛んでいたら確実に怪しく思うだろう。
夜には人間は眠りに就く(少なくとも私が人間だった頃はそうだった)。夜までは歩いて行こうと思った。
しかし歩いて行こうにも、鉄の塊がそこら中を走り回っていて、思う様に行動ができない。
注意深く観察して見ると、灰色の道の上に、白く棒状の形をした模様が連続してあるのが分かった。
その上を横断したり、横断せず前で留まったり、人間は規則的に行動している様だ。
規則性はよく分からなかったが、他の人間に合わせて行動すれば、まあ事故を起こす事はないだろう。



そして夜になった。
……おかしい。夜なのに、昼以上に人間が跋扈している。
昔は夜は妖怪の天下だった。よって、人間は夜を恐れ、家で静まり寝帰った筈なのに……
人間は夜の恐怖など、大昔に忘れてしまったのだろうか。
私の様に、ちんけな人間など簡単に殺せる様な妖怪が、人間の中に混ざっているかもしれないと言うのに。

それともかく、こんなに人間が多くては空を飛んで移動ができない。
顎の手を当て悩んでいると、近くの人間の話声が聞こえてきた。

「今日は流星群が見頃だってよ」
「ほぉ、夜空を肴に酒を飲むのも良いってもんだよな」

良い話を聞いた。今は流星群が飛ぶシーズンらしい。
私は人気の無い路地裏に入り、宝塔を光らせ遥か上空へ飛んだ。

「お、噂をすれば。流星群が飛んでるぞ」
「流星群ってこんなに大きい物なのか? まあ綺麗だしいいか」

先程の人間が会話をしている。よく聞こえないが、これで地上の人間は完全に私を流星群だと思い込んでる筈だ。
障害物が多く、思う様に進めなかった地上旅と比べると、空の旅は段違いに快適だった。
風を切り、輝く星の一角となって夜空を飛ぶ。
普段からしたら、特段変わった事ではないのに、感慨を覚えた。
慣れない異界の地に着いて、漸く初めて幻想的な気分になった。


-------------------------------------------------------------------------------------------------


それから、日が出て地上に降り、月が出て上空に飛び、再び日が出て地上に降りた。
そして通り掛かった男に尋ねた。

「あの、すみません。ここは何県でしょう?」

質問をするのももう慣れた。
また、今の日本は県と言うもので大きく地域を別けているらしい。
場所によっては府になっていた所もあったが、基本的には県で区別を付けているみたいだ。
それにしても、色々な交通の規制も分かってくると、割かし外界も窮屈では無い気がしてきた。

「ここ? ここは山口県です」

遂にここまで辿り着いた。後もう少しだ。
尚も興奮した声で質問を続けた。

「あ、あの! 隠岐、隠岐、隠岐! そう、隠岐って何処にあります?」
「え? ああ、隠岐? 隠岐でしたら、ここから北に進めば隠」
「北、北ですね? ありがとうございます!」

男の話を途中で遮り、私は一目散に駈け出した。


-------------------------------------------------------------------------------------------------


太陽が沈みかけ、夕闇の染まる海が見えた。昔とは随分変わってしまったが、私は直感的に感付いた。ついに、ついに私はやって来たのだ。因縁の海へ。
目の前には幻想郷でも見れない、幻想的な風景が広がっている。普通の者なら、これを美しくないと思う筈が無い。
しかし私は、美しさよりも恐怖を感じた。
ここは私の死地であると共に、私が悪事の限りを働いた地でもある。怖くない筈が無い。今にも逃げ出したいくらい怖い。
私が溺死させて来た数々の人間が、私を睨んでいる様な錯覚を覚えた。足が竦んで動かない。蛇に見込まれた蛙の気持ちが今ならよく分かる。
ああ、情けない。自ら望んでここに来たというのに、怖くなって硬直して動けなくなるなんて。

30分は経っただろうか、私は未だ動けずにいた。
太陽は既に沈み、暗い海が静かに波立っていた。暗くなった海は、私の恐怖心を一層煽った。
暗い海から時より、手の様な物が見える。それは私の方向に向けて伸びていた。
そいつはきっと、私に殺された人間の緊縛霊のものだろう。
私を再びこの海に封じようとでも言うのか、弱弱しく伸びた腕だが、私には今にも捕らわれそうなくらい、強く伸びた腕に感じた。

キッ

余りの恐怖に私は目を閉じた。しかしこれはただのその場凌ぎに過ぎない。
私は過去の自分を振り払う為に再び来たのだ。現実から目を逸らしては駄目だ。
しかし瞼が開かない。いくら目に力を込めようとも、全く開かない。

「うああああ!」

私は半ば狂乱状態になりながら、目を見開いた。
すると目の前には、夥しい量の手が、私の方向を向いて、伸びていた。
更には頭や顔、足のみが見えている幽霊もいる。

『忌々しい妖怪めッ! 何の用だッ!!』

『お前のせいでッ! 私は死んだッ!!』

『今更のこのこ海に戻って来てッ! 許して貰おうとでも思っているのかッ!!』

『お前だけ救われてッ! 何故私たちは報われないッ!!』

『消滅してしまえッ! 消滅してしまえッ!!』

まだ妖怪化していない幽霊は喋れない筈なのだが、私の頭の中には目の前の緊縛霊たちの悲痛な叫びが響いている。
怖い。
怖い怖い怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい。
でもでもでも目の前の苦しむ幽霊たちはもっと苦しんでいる。
怖いけど怖いけど謝らなきゃ。全てを終わらせないと。

「あああああああああ! ごめんなさいいいいいいい!! 私が! 私が悪かったんですううう!!」

私は叫ぶ様な声で、海に向かって土下座をして謝った。
その瞬間、霊たちが静まった。
私の心からの謝罪を聞き入れてくれたからなのか、私の必死過ぎる姿を見て呆れてしまったのか。
理由は分からなかったが、海からはもう脅威は感じられなかった。
それどころか、優しく抱擁されている様な、不思議な感覚に陥った。

『……』

大量に浮き出ていた手は、静かに消えていった。
私の過去の罪をきっと許してくれたのだろう。
その瞬間、私も漸くこの海から解放された様な気がした。
ぺたんと尻餅を付き、海を眺める。不思議と海は綺麗に感じた。
さっきまで見るのすら怖かったのに、今はこの海と別れを告げるのが悲しいくらいだ。

ふと頭に聖を一緒に復活させようとしている仲間の姿を思い浮かべた。
今きっと、ナズーリンはその生命力で傷を完治させ、再び飛倉集めに励んでいるだろう。
一輪も自動操縦の船の見張り番を今もしているだろう。私がいきなりいなくなって心配を掛けてしまったかもしれない。
星もこの宝塔が急に無くなって慌てているところだろう。真実を伝えれば星のことだ、きっと許してくれる。

……この海には用は無い。
海に向かって再び深く一礼して、私は海を後にした。



行きはよいよい帰りは怖いとは言うが、帰りは行きで慣れたお陰か、半分くらいの時間で元の結界の元までやって来れた。
巫女が結界を修復したのか穴は塞がっていた。
仕方ないので再び宝塔の力で結界に穴を開け潜った。
大きく空気を吸い込み、深呼吸をした。
……うん、空気がおいしい。私は幻想郷に帰って来たという感覚が強まった。
おっと、結界の近くでじっとしていると怪しまれる。さっさと私の聖輦船へ帰るとしよう。

そうだ、急にいなくなって皆に迷惑掛けただろうし、お詫びの品の一つでも、皆に買って帰るとしよう。
そう思い、私は人里のお店に寄って帰ることにした。
ところが人里の様子がおかしい。里全体の活気が無い。屋根などが壊れている家も見受けられる。
どうしたのかと思っていると、そこに見覚えのある人間が現れた。

「よう、いつぞやの妖怪じゃないか。お前もここの惨劇を見に来たのかい?」
「惨劇? 何か人里で事件でもあったのですか?」
「ん? 知らないのか?」

この白黒魔法使いによると、どうやら人里で事件があったらしい。
この魔法使いも少し落ち込んでいる様子だったが、私は詳しく情報を聞くことにした。

「はい。ここ3日くらい、私用があった為、人里には訪れてなくて」
「それじゃ、教えてやるよ。最近、宝船が空を飛んでただろ?」

ん? 宝船って聖輦船のこと? きっとそうだろう。
でも、それとこれとはどう関係があるのだろう。

「その船が、人里に墜落したんだ」
「!?」

私は言葉が出なかった。

「ここはその墜落した船の破片が飛んで来たくらいで、被害は少なかったらしいが」
「え……え……」
「ここから1.5里進んだあたりの里は壊滅状態だ」
「嘘……ですよ、ね……?」
「嘘じゃない。大量の死者も出ている。私も大切な友人を二人も失ったからな。ああ、霊夢に早苗……何故あの船に丁度乗っていたんだ……」

魔法使いが帽子で顔を隠す。よくは見えないが、その目には薄ら涙が浮かんでいた。

「え、嘘ですよね!? 嘘って言ってよ!」

私は信じたくなかった。
私の船のせいで死者が大量に……?
嘘だ、ありえない。あの船は私がいなくても、自動で動くのだ。墜落するなんでありえない。

「嘘でしょう!? 嘘でしょう!?」
「嘘じゃないって言ってるだろ! 私だって嘘って思いたいよ! でも本当なんだよ!」

ありえない、ありえないよ。
そんな話があってたまるか。私自ら確認してやる。
そう思い、私は墜落現場まで走り出した。
魔法使いが止めようとするが、そんなのお構いなしに走った。


-------------------------------------------------------------------------------------------------


そこはまさに地獄だった。
潰れた様な死体がゴロゴロと転がっており、原型を留めている家は全く無い。
人間は殆どおらず、死体を貪り食う汚らしい低級な妖怪ばかりが大量にいた。
そこに半壊状態で横たわっている船があった。装飾ですぐ私の船と分かった。
聖輦船はかなり大型の船だった。その分、被害も大きくなったのだろう。

「あ、ああ、何で、どうして」

恐ろしい死臭や、臓器が飛び散る地面を見て激しい吐き気を催したが、何とか耐え、私は聖輦船に近づいた。
そこには肢体を切断され、悲しい顔をしている一輪がいた。

「い、いいい、一輪! どうしたの! どうしたのこれ!?」
「あ、ああ、ムラサ……貴方がいない間に、何もかも失ったよ、何もかも」

一輪の顔には涙の跡が見れた。
しかしもう今の一輪には泣く程の水分も残っていない程、からっからの様だ。

「他の皆は……!」
「他の皆……? ああ、残っているのは私だけ。他はもう全滅したわ……」
「どういうこと」
「まず、ナズーリンは何者かから大傷を負わされ、下に墜落した後、妖怪に食われて死んだ。」
「え?」

ナズーリンは、私の所為で死んだ、の?

「星は、船が壊れた所為で、魔界から戻れなくなってしまった」

そうだ、魔界へは私の船が無いと行くことができない。

「故に、姐さんも……法界から帰って来れない」

ということは……聖の封印も解く事ができないという事に繋がる。

「ムラサ……どこへ行ってたのよ……船の墜落の原因は姐さんの法力が尽きた事にあるのだけど、貴方がいれば手動操縦に切り替えて、皆助かっていたと言うのに」

一輪の話を要約すると、私がここにいれば、船も墜落することなく、何事もなく事は進んでいた。と言う事?
そして人里の死者も一人も出なかった筈だった。って事?

私は自然と涙が出て来た。

「う……ぐぅ、私の所為で……私の所為で、皆……うぁぁ……」
「もういいの、ムラサ。貴方が生きていてくれただけで、やっぱりもう満足よ……」
「ううぅ、う、うああぁぁ……」
「……ん? ムラサ、そういえば何で貴方が宝塔を持っているの?」
「……うぇ?」

一輪が、私の持っている宝塔に気が付いた。

「ナズーリンは死ぬ直前、宝塔を盗まれたと言っていたわ。もしかして、貴方まさか」
「実は、わ、わた、私が、ナズーリン、から、盗ん、で……」

ここで、ナズーリンが盗まれた宝塔を私が取り返しに旅をしていたとでも嘘を吐いていれば良かったものを。
私は馬鹿正直に答えてしまった。

「貴方が、貴方がナズーリンを殺したのね!? 行方不明の理由は盗人して逃げる為だったと言う事か!」
「ま、待って一輪、はな、話を、えっぐ、聞い」
「うるさい! 言い訳は聞かん!」

一輪は完全に頭に血が上っている様子だ。
雲山を呼び出し、本気で私を殴り殺そうとしてきた。凄まじい殺意を感じた。
それを反射的に避け、私は一輪に碇を直撃させた。
碇は心臓部にヒットし、完全に貫通した。

一輪は声を上げることも無く、一瞬で絶命した。

今回はナズーリンの時と違い、自分の保安の為に殺した。言い訳すらもできない。
私がいち妖怪を殺したのを見て、周りの僅かな人間や、低級妖怪が逃げ出した。
私だけが、この地に取り残された。

「あは、あはは……」

もはや乾いた笑い声しか出ない。本当に、一瞬で何もかも失ってしまった。
周りの死体数を数えてみる。
……過去に私が溺死させた人間よりも、遥かに多い数死んでいる。
私は、こんなつもりではなかったのに、何で。ああ、何で。

「もし、そこの大量殺人魔さん」

私の背後から、いきなり気味の悪い声がした。
振り向くと、見慣れぬ妖怪が立っていた。
誰だろう、もう誰でもいいや。私は少し自暴自棄になっていた。

「貴方の過去の行い全て見させて貰いました」
「……」
「いや、結界を開けて外界から入って来た妖怪がいるって藍から聞いたから。閻魔様の『浄玻璃の鏡』をお借りしてね」

私が外界から、幻想郷に入ってくる瞬間は見られていたらしい。大失態だ。

「結界を弄られる事は幻想郷の存続にも関わるからね、閻魔様も快く了解してくれたわ」
「……」
「鏡を覗いたらあら吃驚。初めに結界を開けたのも貴方だったのですね。2回も結界を修復する仕事をつくってくれて有難う」
「……」
「そこにいる、貴方が殺した妖怪がいるでしょう? そいつから聞いた話と鏡で見た貴方の行動を照らし合わせてみたの。そしたらまた驚いたわ」
「……」
「人里の一部壊滅の大元も貴方だったのね。私はてっきり、初めはその妖怪の仕業だと思って、とりあえず反抗できない様に肢体を切断しちゃったのですが」
「……」
「何か言う事は無いの? ねえ」

こいつが誰だか分からないが、言っている事は全て事実だ。反論もできない。

「貴方は外界にも影響を与えてくれましたね」
「……」
「外界の日本人、およそ5万人が死んだわ」
「……え? 待って、それは知らないよ?」
「あら、漸く喋ったわね」

今までは反論の余地も無かったが、お次はなんだ。
外界で5万人、人間を私が殺した? それは知らない、本当に。

「貴方は知らず知らずの内に、人間を殺していたのですよ」
「おかしいよ! 私は外界じゃ殺人行為なんて」
「貴方、過去の自分をスッパリ振り払いに、外界の海に言ったのでしょう?」
「……はい」
「その時、霊に土下座をして謝ってたわね。それで貴方は全ての幽霊から許された、と勘違いをした」
「どういう事……?」
「貴方を許さない霊が大量にいたのよ。そいつらは貴方にこっそり纏わりついた。そして、その幽霊だらけの体で貴方は町中を歩いた」
「……」
「霊は見えないからね、人間は知らず知らずの内に攻撃的な霊の影響を受け、急に暴れだした」
「そんな」
「こうして全国各地で殺人が起き、5万人死んだわ。重軽傷の人も含めればもっと増えるでしょうね」

あはは、私が良かれと思ってやった行動は全て殺人に繋がっていたんだ。こんなにも可笑しい話があるか。
何が、完全に呪われた海から解放されただ。全然解放されてないじゃないか。
それどころか、それ以上に呪いの元凶を創ってしまった。
あーはっはっは、可笑しい可笑しい。

「……はぁ、ここまで幻想郷のパワーバランスを崩してくれた妖怪は貴方が初めてよ」
「……」
「霊夢も死んだし、また新しい巫女を探さないといけないわ。面倒ねぇ。」
「……ふふっ」
「何が可笑しいのかしら、それともついに狂った?」
「……あはは、もうどうでもいい、ぜんぶ、どうでもいい」
「本当に狂った様ね。でも安心して、貴方はこれ以上殺人行為を犯す事は無いから。何故なら、貴方を永久にスキマの中に閉じ込めるの」

良く分からないが、もう、私は一生日の出を浴びることは無くなるらしい。へえ、どうでもいい。
ああ、頭の中で仲間の皆との思い出が蘇ってきた。死ぬ直前って訳じゃないけど、走馬灯って見るもんなんだね。

「結界を2度壊し、人里の一部を壊滅させ、博麗の巫女を殺した挙句、外界の多くの人間も殺した。自分の罪を自覚しなさいね」
「ひじりぃー、わたしをおすくいになってありがとうございみゃふ」
「……自覚できる程の頭も既に残ってないか。ああ、気持ち悪い。さっさと閉じ込めよう」

くぱぁ

「うふふふふ、しょうー、なずりぃんー、いちりんー、いっしょにひじりをたすけましょー」

ずずずずず

「ぬえー、ちりぇーでんにいたじゅらするのぉー?」
「さて、後はスキマを閉めるだけ。さようなら、船幽霊さん」

すぅ

こうして村紗水蜜は、永遠のスキマの住民となった。
初投稿です。

村紗が余りにも可愛過ぎるので虐めてしまいました。
説明不足な点、どうみても理に適っていない論理、余りにも崩壊し過ぎている日本語等々、荒いところが多過ぎますね。

時事ネタとして流星群を使ってますが、よくよく考えたらこれは春の話だった様な……
……幻想郷と外界は実は季節が同期してない、ということで。
これ以外にも矛盾点とかあるんだろうなぁ。

【追記とか】
こんな拙作に沢山のコメントありがとうございます。うへへ。

1. 排気ガスさん:僕も一緒に殴らせて下さい。殴られて蹲る村紗かわいい。
2. かるはさん :村紗を見てると、つい心をぶっ壊したくなりますよね。心が壊れた村紗もかわいい。
3. 名無しさん :平等に星自機勢は全員殺すつもりだったのですが、動かしやすいキャラを一人残しておきたかったので。
4. 名無しさん :何という偶然の一致。信州は東方と色々と縁のある地だったので、使わせて貰いました。
5. 名無しさん :二人が人間とは桁外れの力を持っているとは言え、所詮は人間なので。勢いで殺してしまいました。
6. 名無しさん :自分も取り返しのつかない様な、後味の悪い作品が大好物です。
おたわ
作品情報
作品集:
7
投稿日時:
2009/11/23 18:52:56
更新日時:
2009/12/06 00:46:58
分類
村紗水蜜
1. 排気ガス ■2009/11/24 05:41:31
可愛い船長さん、こっちにおいでよ、ぶん殴ってあげるから
2. かるは ■2009/11/24 06:52:59
幼児退行した船長可愛いなあ
3. 名無し ■2009/11/24 12:33:42
魔理…沙が死んでない…だと?
4. 名無し ■2009/11/25 00:35:43
長野市って俺住んでる所じゃねーか
5. 名無し ■2009/11/26 18:00:49
霊夢に早苗、あっさり死んだな
肉片を神奈子たちに持っていって早苗さんです、と言ってやりたい
6. 名無し ■2009/11/30 01:15:46
悲惨だけど面白いお話でした。不幸が連鎖してとんでもない展開になるのはいいですね。
名前 メール
パスワード
投稿パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード