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『幻想郷』 作者: メランコリア

幻想郷

作品集: 8 投稿日時: 2009/12/06 02:44:50 更新日時: 2009/12/06 11:50:49
*レイマリです
*パラレルワールドです。
*書いた人は東方初心者です

以上のことをご承諾頂いた上で、平気だと言う方はスクロールしてお読みください。



















「なあ、霊夢」
魔理沙は呟いた。

「なあに」
隣で、湯飲み片手に何とも無しに空を眺めていた霊夢は、さして興味も無さそうに素っ気無い返事をする。視線はそのまま、ぼんやりと空を眺めて居る。
魔理沙はそんな彼女を前に暫し逡巡すると、彼女に倣う様にして空を見上げてみた。

「何よ、言いたい事があるなら早く言いなさいよ」

そのまま幾分か二人して空を眺めて居たが、何故かそのまま黙りこくってしまった魔理沙に、霊夢はとうとう痺れを切らした。
見れば、魔理沙は両の人差し指を突合わせぐりぐりと弄びながら俯いている。
「柄にも無いわね。正直今ちょっと、気持ち悪いって思ってしまったわ」
「な…!」
魔理沙は勢い良く顔を上げる。
霊夢はやれやれと溜息を吐いた。

二人は、いつもの様に博霊神社の社の縁側に腰掛けて茶を啜っていた。
勿論、これも魔理沙がいつもの様に「来てやったぜ」と無理矢理押し掛けて来たために、霊夢は嫌々ながらも茶を用意するしかなかったのだが。
「なんだよ、今日は茶菓子は無いのか?」
「ったく、良いご身分ね。生憎切らしてるのよ」
「つれない巫女だぜ」

そんな感じで二、三言交わした後、魔理沙は、ふう、と雁木に落着く。 霊夢がその隣に腰掛けて二人分の茶を用意すると、やはりこれもいつもの様に下らない世間話が始まる。

幻想郷は、夏を迎えようとしていた。
爽やかな初夏の風は、社を吹き抜け、庭の木々に青々と色付いた新緑をさわさわと靡かせる。そして二人の髪も優しく撫ぜる様に。
魔理沙は、一瞬風にふわりと持ち上がった帽子の鍔を直す。

そんな穏やかな時間の流れる、博麗神社のいつもの午後。
魔理沙はふと呟いた。

「なあ、霊夢」
「なあに」

霊夢は素っ気無く返事をする。
しかし、それきり魔理沙は何かを言いあぐねる様に俯いて、しかしすぐに顔を上げて、彼女と同じ様に空を見上げて。

沈黙が続く。

「霊夢は、ここに来た時の事、覚えてるか?」

魔理沙は思い切って口を開いた。

突然の質問に、霊夢はぽかん、と口を開ける。

「……は?」

「い、いやっ、…やっぱり、何でも、無い……」
霊夢は暫く、そう言って柄にも無く狼狽する魔理沙を見詰めていた。
が、「ふーん」と、何処か納得した風に呟くと、手にして居た湯飲みを置く。
「ここって、幻想郷のこと?」
霊夢がそう尋ねると、魔理沙は何故か一度驚いた風に目を見開くと、やがてこくん、と頷いた。
「そうねえ…」
霊夢は暫く考え込む様な仕草を見せると、
「覚えてる訳ないじゃないの」

魔理沙は、がくん、と顔を落とした。
「……だよなあ、やっぱり」
「当然じゃないのよ」
てゆーか今更何なのよとでも言いたそうな表情だ。
「と言うより、どっかの山の上の脇巫女とは違うんだから。私は元からここの住人よ」
「それを言うならお前も脇巫女じゃないか」
「ふざけるんなら、話に乗らないわよ」
冗談を言いつつもどこか神妙な顔付きの魔理沙に、霊夢は少し違和感を感じて居た。
「ああ、すまん」
さらりと謝った。
益々気持ちが悪い。
「どうでも良いけど、言いたい事があるんなら早く言ってよね」
今不機嫌なのよ、とでも言う様に、ずぞ、とわざと音を立てて茶を啜る。
「あ、ああ…」
魔理沙はやはりまた俯いてそう答えた。
その表情は、帽子の鍔に陰ってはっきりとは伺えない。
だが、彼女の様子がおかしいのは一目瞭然である。
「あんた、何かあったの?」




「記憶喪失、ねえ…」
一通り彼女の話を聴き終えた霊夢は、これまでの彼女の言葉を反芻するように呟いた。
「そうなんだ。最近、気付いたんだが…」
「最近?自分の生い立ちとか、それ以前に去年以前の記憶が全く無いって事に?」
「あ、ああ、そうなんだ……へ、変な話だろ?」
魔理沙はそう言うと俯く。自分から催促して霊夢に淹れて貰った茶も、彼女はまだ一度も口を付けていない。すっかり冷たくなった湯飲みを両手でぎゅっ、と握り締めながら、自身の両膝の上に視線を落としていた。
彼女は霊夢にこの話を切り出した途端、まるで堰を切った様にこの様に力無くうなだれた状態のままだ。
全く彼女らしくもない。
「去年だけじゃない。もう、色々と思い出せなくなって来てるんだ……その、先週の事とか」
「それ、他の誰かに言ったかしら?」
「ああ、昨日、永琳んとこに相談しに行こうとしたんだが……」
魔理沙はそこで一旦言葉を切った。
霊夢の表情が険しくなる。
「もしかして、あいつの所までの道筋を忘れた、とか言わせないわよ?」
「そ……!……そ、その通りなんだ」
霊夢は絶句した。
「それよりも、永琳って……誰だったんだろうかと」
「魔理沙!!」
霊夢は魔理沙の肩に掴み掛かった。

「覚えてないかしら?あの永い夜の事…、あんたはアリスと組んで、あいつらの退治に行った事――」


「――アリス?誰だ、そいつは」



決定的だった。
霊夢は衝撃のあまり魔理沙の肩を掴みながら暫く呆然としていたが、目の前の彼女が慌てた風に「おい、霊夢!?大丈夫か!」と叫んだ声で我に返る。
「ええ。取り敢えず、あんたの話を整理しましょうか……」
霊夢は自分を落ち着かせるべく、何度か深く深呼吸をすると、再び腰を落ち着かせて、先程までの記憶を反芻する。

今日、魔理沙が神社に来たのは、いつもの様に茶菓子をたかる為ではなかった。
それこそ、最初は下手な冗談を言って普段の様にはぐらかしていたが、その都度、彼女の表情が一瞬だけ陰るのを霊夢は見逃さなかった。
彼女の勘はよく当たる。
出来れば、こんなことなら当たらずとも良かったのだが、嫌な予感は見事に的中したと言う訳だ。
魔理沙が今日、神社に来たのは、他でもない。 最近自身を苛む、この謎の記憶障害について、霊夢に相談する為だった。
それでも最初の内は巧く切り出せなかった魔理沙は、悩んだ末に霊夢に全てを打ち明けたのだ。

「じゃあ、私の事は、まだ覚えてくれていたのね」
「いや、実は何度か道に迷ったんだ。それに最近、魔法が巧く使えなくなって来た気がするんだ……」



帰り道を忘れ掛けていた魔理沙を自宅まで送り帰すと、霊夢は深く溜息を吐いた。

紫にでも相談してみようかしら――?



「幻想郷だからよ」

紫は、それだけ言って黙りこくった。
「どういう意味よ!全然理由になってない!!」
霊夢は珍しく言い淀む紫に対して激昂した。しかし、紫はどこか申し訳無さそうに優しく微笑むと。
「これは、言わば自然の、いえ、幻想郷の摂理でもあるのよ」
「いずれか解ることよ、霊夢――」
それだけ言うと隙間に姿を消し、神社には霊夢だけが取り残された。
「何なのよ、それ……」

次に霊夢はアリスを訪ねた。
霊夢がそのことを話すと、アリスは酷く悲しんだ。
「う、そ……じゃあ、魔理沙は私の事を、……全く覚えていないと言うのね」
「そうよ」
「……っぅう」

次第に泣き出したアリスに、罪悪感を感じつつも、霊夢は淡々と真実だけを述べた。
「何か、知っている事はあるかしら?」
「……っん、うぅぅ……わから、ない、わ……」
「――そう、ありがとう」

霊夢はアリス邸を後にした。


打つ手が無いまま、数ヶ月が経過した。霊夢は手当たり次第色々な人物を訪ねたが、やはり全員が俯いて首を振るばかりだった。
そして霊夢にとって一番気掛かりだったのが、人を訪ねて歩いて行く内に、魔理沙を知らないと口にする人が増えて行ったと言う事だ。
つい先週、再びアリスの元を訪ねた時に、霊夢はその話題を持ち掛けたのだが、アリスは魔理沙の名前を聴いても誰の事かと首を傾げるばかりだった。
霊夢は驚愕した。

そして、気付いてしまった。


魔理沙もまた、幻想郷に忘れ去られつつあるのだと。


魔理沙の記憶障害は、次第に悪化して行った。 彼女は既に昨日の事すら覚えていないらしい。 もう一人では生活させられないからと、霊夢は魔理沙を神社に呼び、二人での生活を始めたのだが、朝を迎えて、目が覚める度に魔理沙はこう言うのだ。

「ここは、どこだ……?」

そして、いつでも彼女に対応出来る様にと隣で添い寝をしていた霊夢を見て、首を傾げる。
もう魔理沙は、霊夢の事ですら殆ど覚えていなかった。
それでも二人で一日を過ごす内に、魔理沙は決まって一日の終わり頃になると、朧気ながら彼女の事を思い出す事が出来ていた。
そして床に就き、霊夢が魔理沙の隣で微睡でいると、
「ありがとうな、霊夢…」
弱々しく、呟くのだった。
霊夢は微笑む。
この瞬間があるから、毎日がどんなに辛くても頑張れるのだ――
霊夢は魔理沙を優しく抱き締めると、魔理沙もまた、背中に腕を回して来た。その力は弱々しいものだったが、霊夢はそれでも幸せだった。

「霊夢、だいすき…」

「私もよ、魔理沙……」

おやすみなさい。








夏が終わって、冬が去り、春が来て。

幻想郷に再び夏が訪れた。

霊夢は、今日も縁側で一人茶を啜っていた。

「ああ、暇ねえ……何かこう、唐突に破天荒な奴が現れて騒ぎでも起こしてくんないかしら」
「それは楽しそうね」
どこからともなく紫が現れた。
「物騒極まり無いけどね」
「あなたは巫女で、他には天狗に兎耳さんに……ああ、魔女っ子みたいな子がいたら、楽しそうね」
「ふふ、そんな都合良く行かないわよ」
霊夢は想像して笑った。
「そう言えば、」
紫が切り出した。
「魔法の森で面白いものを見つけたのよ」
「なあに?」
「うふ、空き家なんだけどね…」
「待って、魔法の森って、アリスんとこの近くよね?空き家って何よ」
「ええ。それが、空き家なんだけどね、凄く人間の残り香の強いお家なの」
「はあ?」
「でも、あそこって今まで誰も住んでいなかったでしょう?……でも、凄く強いの。残り香が」
「どういう意味よ?」

霊夢は訝しげに問うた。
紫はそんな彼女に優しく微笑み返すと。


「――今度は、誰が忘れられてしまったのでしょうね……」









目が覚めたら、一番最初に目に入ったのは見覚えのある天井だった。
無機質な、白い天井。
過去に何度となく目にして来た、嫌な天井。

意識が覚醒して間もない彼女の耳に、まず届いたのは

「まりさああああっ!!」

女性の悲鳴だった。
次の瞬間、私の身体に鈍い衝撃が走る。
「まりさまりさまりさぁあっ!!良かった!!」
まだはっきりとしない視界の中に飛び込んで来たのは、見覚えのある顔だった。
彼女は、泣きながら私に勢い良く抱き着いて来て。
「先生、真理沙さんの意識が戻りました」
「よし、聞こえますか?真理沙さん?大丈夫ですか?」
白衣を纏った男の人が、私に手を伸ばして来る。
「真理沙っ、お母さんだよ……真理沙!!」
「おか…さん?」
「聞こえますか、真理沙さん?」


私は、どうやら三か月もの間、意識を失っていたらしい。言わば植物人間の様な状態だった。

覚えている。
私は三か月前、ナイフで左手首の動脈を裂いた。理由は単純にして明快。
死にたかったから。

自殺するつもりで深く刺したつもりだったのだが、どうやら母親に見付けられ病院に搬送されてしまったらしい。

そして、こうして生き長らえてしまった。

「…なんで、死なせてくれなかったんだよ」
「……」

誰も、答えない。


私は、夢を見ていた。

一つ言えるのは、それは、私が目覚めなければ恐らく永遠に見ることが出来て居たであろう、とても、心地よい夢。
否、夢と言うにはあまりにも現実味に溢れていて。

しかし、現実と呼ぶにはあまりにも朧気な世界で。

何だかとても心地よかったのだけれど、私はもうそのほとんどを忘れてしまっている。


それでも、
社を駆け抜けた爽やかな初夏の風の感触が忘れられなくて。
黒髪の綺麗だった、あの女の子の優しい温もりが思い起こされて。

現実のものでなくとも良い。いっそ私の妄想が生み出した幻想の郷でも良い。
それでも、再び夢の中へと旅立って、あの子に逢えると言うのならば――

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――!!」
霧雨真理沙は心の限り叫んだ。泣いた。
涙腺は決壊したダムの如く、双眸から止めど無く涙が零れ落ちていく。
「ま、真理沙ちゃん!?先生、鎮静剤を……!」
「真理沙、真理沙!?」
「っく、あ、あああああ!!うああああー!!」






私は久し振りに高校へ登校することにした。
ねっとりとした湿気を孕んだ真夏の陽射しが、非常に不愉快だった。
それに、左手首に巻いた包帯の中が蒸れて、傷口が痛み出してしまうから。

久し振りに引く教室の引き戸は、いつもよりも重く感じられた。
私は、暫しその場に立尽くして代わり映えのしないクラスを見渡す。

次の瞬間。

「――また今日から登校するみたいよ、あいつ」
「懲りないね、あんだけシメてやったのに。マジウケる」
「リスカで大量出血して、そのまま死ねば良かったのに――」

私を嘲る様々な声。

ああ、また始まるんだ、私の日常が。


「れい、む……」


名前を、呼んだ。
誰の名前かは解らなかったけれど。
不思議と口をついた、響きの良い、心地よい名前。

しかしその呟きは、すぐに教室内の雑多な喧騒の中に掻き消えて行ってしまった。

私はなんだか非常に悲しい気持ちになった。


初めまして、メランコリアと申します。
由来はそのまんまです。

今までrom専だったのですが、皆さんの作品を読んでいる内に書きたくなってしまいました。

執筆は全て携帯で行ったので、色々と見苦しい場所もあるかと思いますがどうかご容赦ください(泣)そして東方は知ってから間もないので、色々と設定がおかしい部分があると思います。が、そこもまたご容赦ください……^^;
私なりの魔理沙いぢめでした。楽しかったです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
メランコリア
作品情報
作品集:
8
投稿日時:
2009/12/06 02:44:50
更新日時:
2009/12/06 11:50:49
分類
魔理沙
レイマリ
魔理沙いぢめ
1. おぎ@暇同 ■2009/12/06 11:50:57
負けた。
完全に負けた。
すいません、これ以外にコメントできないです。
これからもがんばってください。
2. 群雲 ■2009/12/06 12:10:35
夢オチで下げて上げるかと思ったらまさかの下げて下げる話とは……。
3. Sfinx ■2009/12/06 12:34:03
素晴らしい。
この一言に尽きます。
4. 名無し ■2009/12/06 13:08:06
なんというきつい欝ss。可哀想に…
しかし東方知って間もないのに、ここまでのssを書くとは…文才に嫉妬。
5. 名無し ■2009/12/06 13:29:21
何度か似たような内容の小説を見たことがあるけど、あなたのが一番凄いと感じた。

まさしく“幻想”と書いて“ゆめ”と読む世界。
6. 名無し ■2009/12/06 13:55:15
良かったじゃん、魔理沙
またすぐに幻想郷に戻れるんだろうし

いや、皮肉でもイヤミでもなくてマジで……
7. 名無し ■2009/12/06 14:31:51
まりさのことかぁぁぁっーーー!!
って覚醒するれいむが出てきそうな小説だと思った僕は脳にアリスが涌いているよ
面白かった
8. 名無し ■2009/12/06 16:28:46
泣いた
9. soobiya ■2009/12/06 16:29:37
こんな良いモンを書きやがって……(涙
ちきしょう、スンバラスィよ…アンタ。
10. 泥田んぼ ■2009/12/06 16:30:30
魔理沙はセーラー服が似合うよね……手首の包帯も似合うよね……
展開と結末がすごく甘酸っぱ苦かったです。
11. 名無し ■2009/12/06 17:38:56
夢落ちで終わらなかった…

(゚д゚;)…ゴクリ
12. 名無し ■2009/12/06 18:07:21
胸に突き刺さりました。
何という良作。
13. 名無し ■2009/12/06 19:35:17
こういうのが読みたいからここにくるような身としては最高の作品でした
また書いてください
14. 名無し ■2009/12/06 22:08:05
こういう話が一番好きだ……
初めてここに来たきっかけがこういう現実の非常さを思い知らされるSSを探しに来たのがきっかけなのを思い出した
お礼の言葉をいわせてください、ありがとうございます。
これからも頑張ってください
15. 名無し ■2009/12/07 00:51:19
すげー!すげーよあんた!
脳内再生余裕でした。

何て言うか、.hack見たいだな。
16. ペロ゚)ヘ ■2009/12/07 01:16:42
ペロ゚)ヘ 〈 グレイト )
これで初心者たぁ末恐ろしいやつめ
17. risye ■2009/12/07 09:30:30
>>15
.hackわかる、
「未帰還者を元に戻す方法を!!!」は個人的名台詞。
18. 名無し ■2009/12/07 12:33:47
すごい良い夢だったのに起きた瞬間、夢の記憶がごっそり現実に持ってかれて
思い出したくとも思い出せなくなるときの喪失感を経験することがごくまれにあるな
向こう側はとても楽しいけど、やっぱり現実は放置できないって認識してるんだな
19. 名無し ■2010/04/25 13:02:19
オチがひねってあって良かった
霊夢も魔理沙も紫も寂しいな
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