観察日誌

作品集: 10 投稿日時: 2010/01/21 03:23:26 更新日時: 2010/01/21 03:34:21
 私は階段を一歩ずつ踏みしめながら博麗神社へ向かっていた。木々はすっかり紅く染まり、空気も冷たく鋭いものになっていた。この神社の桜がきれいなことは知っていたが、意外と紅葉も映えるのだなあと思わされる。
普段なら飛んでくるものをわざわざ歩いてきたのは気まぐれでしかなかったが、その気まぐれに大いに感謝せねばなるまい。


 私の後ろには、大きな黒い帽子が揺れている。ただ、その帽子の主にいつもの快活さはなく、表情も帽子の中に埋もれて、こちらからは窺うことはできなかった。
次第に朱色の鳥居がその姿を現す。紅葉の中に佇む鳥居は、その荘厳さを増したかのようだ。


 有意義な紅葉巡りを終え、鳥居をくぐりぬけたところで、私は黒い帽子の方を振り向く。
帽子の陰に隠れたその表情は暗く、いつもの尊大さも、またかわいらしさもなかった。
真っ青な唇を震わせながら、帽子の主である霧雨魔理沙はつぶやいた。


「な、なあ…本当にやるのか?」





 きっかけは些細なことである。私がたまたま〈魅了〉の術を使えるようになったのだ。といってもそれは偶然手に入れたマジックアイテムのおかげであり、大した術式ではないと考えていた。
だが手に入れた力には興味がある。そこでいつものように私のところに押しかけていた魔理沙に実験の協力を頼んだのだ。


 魔理沙も好奇心の塊のような存在である。快く依頼を引き受けてくれた。最初は簡単な雑事をさせたりしていたのだが、予想以上に術式の効果が長く、強いことが判ってきた。
特に魔理沙が最も嫌がるであろうと思われた、「弾幕勝負でわざと負けろ」という命令にも従った時、もっと実験のレベルを上げるべきだと感じた。


 今日の神社参りはその実験の一環である。予定通り神社裏に向かうと、私は魔理沙に目線で指示を送る。実験内容は神社に来る前に伝えてあった。


 魔理沙の眼には拒否の色がありありと浮かんでいた。弾幕勝負の時もそうだったが、やはり拒否感は残るようだ。
ただ私に手を向けないように、とは命じてあるので、それ以上のことを魔理沙はできない。


「やっぱりさ、やめようぜこんなこと。霊夢にばれたらタダじゃ済まないだろうし…」


 どうやら拒否を口にすることもできるようだ。私の知っている類似の術式は、相手の意志を完全に奪ってしまうものが多いため、こうした反応は非常に興味をそそる。
私は高まる知的興奮を表に出すまいと、再び視線だけで魔理沙に指示をする。
人目を気にしてあたりを見回す魔理沙に対して、人除けの結界は貼ってあるとだけ伝えた。もっとも、効果のほどは疑わしいが。





「わかったよ…やりゃいいんだろやりゃ!」


 しばらくの見つめ合いの後、声を荒げた魔理沙は、おもむろにドロワーズを下げ、しゃがみ込んだ。大きな帽子越しにキッと睨みつけられる。私は静かにそれを見下ろした。


 再び魔理沙と見つめ合いが始まった。魔理沙は射抜くように私をじっと見上げていた。最初その視線は真っ赤な怒気を孕んでいたが、次第に普段の魔理沙には見られない潤んだ瞳へと変化していった。
許しを乞う可憐な少女の瞳に、私は思わず引き込まれてしまう。


 ふと、むき出しになった魔理沙の尻は寒くないだろうか、という心配が浮かんだ。
これはあくまで実験に過ぎない。であるが、私の中に不思議な感情が湧きあがってくるのを、否定することはできなかった。それに抗うように、私は瞳をガラスに変え、魔理沙を『観察』することに努める。




 どれくらいの時間がたったのだろうか。歪んでいた唇がくっと結ばれると、あの美しい瞳は帽子の中に消えた。そのかわりに帽子の中から漏れでてきたのはいきみ声だった。


「んっ、んん…」


 私は我に返ったように、魔理沙の全身に目を向ける。この子は思っていたよりもずっと小さいのだな、と感じた。


「ふんっ、んんん…はぁ…んんんっ」


 寒さで出が悪いのだろうか。この実験を選んだのは、術の命令が生理反応にまで影響を与えるか確かめたいという関心の元にあったが、その点には疑問が残るようだ。


「んんっ…んむあぁ」ミリミリムリ


 断っておかなければならないが、私には別にスカトロジストの類ではない。脱糞行為や糞そのものに性的興奮を覚えることはなかった。


「ああっ…んふっ…んん、んぅふ」ムリムリブリミチミチブリブリュポチャ

 
 だから次第にこちらまで漂ってきた糞の臭いにも、不快に思うことはあれど、快感に思うことなどない。
私からは糞は見えないが、そのことを残念に思うことも、それをみたいと思うこともなかった。


「はあっ……んんっ、んぅぅ…あぁ…んっ」ブリ、ミチミチプポプシュムリミリムチブリュリュ


 ただ、先ほど思わず魔理沙の尻を気にかけたことを思い出した。
その尻についた肛門が寒風にあてられながら、ひくつく。その後肛門が大きく押し広げられて、糞がひり出される。そんな光景がふと頭をよぎった。
充満していく強い臭いに、また表情が崩れそうになるのを私は必死にこらえた。


「ん゛っ、んぐぅ…んふぅ、あ、んっ、あはぁ…はぁ…はぁ……」ブピュ、ミチミチプスブリブリュブピ、ペチョ


 どうやら事は済んだようだ。「博麗神社で野糞をしろ」という命令も、有効らしい。ただし、すぐ糞が出なかったところをみると、生理反応自体に術式の命令が効くのかどうかには疑問の余地が残ると言えるだろう。






「あら、魔理沙じゃない。…ん?、あんたもいっしょ?」


 裏手から戻ると、横からぶっきらぼうな声を投げかけられた。魔理沙はその声にぎょっとしたようだ。
声の方に目を向けると、博麗霊夢が縁側でいつものように茶を飲んでいた。突然の来客に、あまり機嫌は良くなさそうである。もっとも、この巫女の応対の悪さはいつものことではある。


「よ、よう……」


 私の挨拶の後に、魔理沙は顔を引きつらせながらぎこちなく答えた。
私がお茶うけを持ってきたことを霊夢に伝えると、とたんにその不機嫌な顔が明るくなり、一杯茶でも出すから上がるようにと言われた。
魔理沙には、実験後も私と行動を共にするようにと命じておいたので、ついてこざるを得なかった。




「いや、この神聖な神社でね、何してんのかと思ったのよ。あんたら意外と気が利くじゃない。」


 私が持ってきた羊羹を手にしてとたんに饒舌になった霊夢は

「ちょっと待っててね、とっときのお茶を出すわ」

と言いながら部屋の奥に消えていった。


 私と魔理沙は居間の卓に、向かい合わせになって腰をかける。魔理沙にとってここは自分の家のようなものであろうが、どこか居心地が悪いように体を絶えず揺すっていた。

よく見ると自分の体の臭いをしきりに確認しているようだ。

便所から帰ってきたときに、魔理沙は自分についた体の臭いをいちいち確認するのだろうか?
その微笑ましいいじましさに、私は心が弛みそうになるのをこらえつつ、紙を渡さなかったのが悪かったのだろうか、とも思った。


 先ほどから、魔理沙が視線をこちらに向けることはなくなっていた。それどころか顔は帽子の下にすっかり隠れ、こちらからは全く様子を窺うことはできなかった。
何かしていないと落ち着かないのか、卓の真ん中にあった、まだ青みが残る蜜柑を手に取ると、少しずつ皮をむき始めたようだ。

柑橘類の爽やかな香りが、私の方にも漂ってきた。


 しばらくすると、きれいに切り分けられた羊羹と、急須と茶碗を載せた盆を持って、霊夢が戻ってきた。
ただ、その顔には先刻までの明るさはなかった。
上物の茶を荒っぽく椀に注ぎながら、霊夢は誰にともなく愚痴を垂れ始める。


「もう聞いてよ。さっきね、保管しといたお茶を取りに裏手の方に行ったの。そしたらさ、入口の横にでっかいウンコがあんのよ。勘弁してほしいわ。」


 私は引き続き魔理沙を観察していた。
「裏手」という言葉が出たところで身体をびくっと震わせたが、その後は何の反応もないように見える。

お茶と蜜柑の香りが部屋に満たされる。


「それがひどくでっかいやつなのよ。たまに獣とかが神社でしてったりするんだけどさ、あれは違うわ。人間かそれに近い妖怪の仕業よ。誰だか知らないけどやらかした奴をとっちめてやらないと。」


 そんな話をしながら羊羹を口に放り込む霊夢に半ば閉口しつつ、魔理沙をじっと観察していた。相変わらず反応はない。

蜜柑の香りが部屋から消えた。


「それにさ、そのウンコすっごいクサいの。ホントやんなっちゃったわ。あんなとこでウンコするってだけでもすでに終わってんのに、その上あの臭いよ。身も心も腐ってんじゃないかしらね。ああ気味悪い。」


 そこまで盛大にしゃべり終えた霊夢は、茶をひと啜りすると、周りの反応がないことに―特に魔理沙の反応がないことに―気がついた。

「どうしたのあんた?、なんか元気ないわね?」
と尋ねる霊夢に魔理沙は

「あ、うん…」

としか答えなかった。
ここに来る前に二人でやった『実験』が不調だったことを私が説明すると

「ふーん」

と興味なさげに答えた霊夢は、また嬉しそうに羊羹を口に放り込んだ。




「ちょっとさ、トイレ行ってくるよ。」


 唐突に立ち上がった魔理沙は、この言葉だけ残し、部屋の外へと消えていった。ずっといじっていた蜜柑だけが、魔理沙が座っていたそこにポツンと転がっていた。
私には部屋を出ていく魔理沙が小刻みに震えているように見えた。


 魔理沙を眼で追う私に対して、霊夢がつまようじで私を指しながらにやりと笑いかける。


「全くさ、あんたもいい趣味してるわよね。」


 実験に際して、霊夢には協力をお願いしていた。場所の許可もあるが、実験終了後の魔理沙の認知様式を確認しておきたかったためである。
実験で行った行為に対して、その後どのような意識を持っているのか、記憶はどれくらいあるのか、などをちゃんと調べてみたかった。
そのため、霊夢に、糞を見たことを証言してもらいたかったのだ。


「トイレに行くだなんて、もう出すもん出しちゃったくせに何言ってんだかねえ。」


 霊夢はにやにや笑いながら羊羹を再び頬張る。
交渉にあたってどれだけふんだくられるかと思ったが、意外なことに要求されたのは、上等なお茶うけと賽銭だけだった。


――で、その出したブツは、ここに置いてってくれるんでしょ。ならいいわ。


 確かそんなこともこの巫女は言っていたか。まるで私を変態かのように言っているが、霊夢の方がよっぽどひどい趣味をしている。
私はただ、術式の実験をしているだけなのだ。
そもそもこの巫女があそこまで言い放つとは私も思っていなかった。
すまないことをしてしまった。あれでは魔理沙がかわいそうだ。


 霊夢に対する怒りを、茶と一緒に飲みこむ。確かに上質な茶のようだ。やわらかな香りが鼻をくすぐる。

落ち着きを取り戻した私は、次の実験について思案を巡らした。
今回の実験だけでは結果を判断することはできない。さらなる実験を行う必要があるだろう。魔理沙と親しい人妖や、行きつけの場所はいくらでもある。
次はどこへ行こうか。部屋に立ちこめる蜜柑や茶の芳香にどこか物足りなさを感じながら、私の興味は尽きることなく膨らんでいった。
はじめまして。

以前、行きつけの某掲示板(非東方・非18禁)に、「ツルマンのフランちゃんをマジレイプして孕ませたい」と誤爆した奴のせいで、これを思い立ちました。

「私」が誰なのかは特に決めておりません。
んh
作品情報
作品集:
10
投稿日時:
2010/01/21 03:23:26
更新日時:
2010/01/21 03:34:21
分類
霧雨魔理沙
多分スカじゃない
1. 名無し ■2010/01/21 04:02:56
この話の登場人物は皆
理性的に行動してるつもりでも、どこか破綻して逸脱してるよな

こういうの好きだぜ
2. 名無し ■2010/01/21 07:41:52
魔理沙が可愛かった
「私」はずっとアリスかと思ってたけどどうだろうか
3. 名無し ■2010/01/21 16:16:03
直接書いてある訳じゃないけど
魔理沙の心理描写が良かった
4. 名無し ■2010/01/22 00:13:14
やっぱいじめられてる魔理沙はかわいいな
5. 名無し ■2010/01/22 02:49:42
スカじゃん
6. 名無し ■2010/01/22 20:46:36
泣いてる魔理沙が可愛いよ。
7. 名無し ■2010/01/22 23:11:55
めちゃくちゃかわいかった
乙です
8. 名無し ■2010/01/22 23:31:17
霊夢のやつ…
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