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『ふとりんのゲロ飲み干したい』 作者: ゴゴゴ

ふとりんのゲロ飲み干したい

作品集: 12 投稿日時: 2010/02/16 18:09:13 更新日時: 2010/02/17 03:09:13
 身長142cm、体重83kg。
 豊満な肉体は身を包む衣にぎゅうぎゅうと締め付けられ、艶めかしい曲線を幾重にも描いていた。
 衣服の各部より伸びるサードアイのコードも、ぱっつんぱっつんの肉に食い込み今にも千切れそうである。
 いわゆるボンレスハム状態。俗に言うふとりんであった。

「燐。おかわり」
 そう言ってふとりの突き出した茶碗は、通常のそれより一回りも二回りも大きい。最近になって食欲が旺盛になってきた彼女のための、世界にたった一つのオーダーメイド品だからである。人の頭一つ分まるまる入りそうな器を燐は恭しく受け取って、いそいそと釜から炊きたての白飯をよそった。
 常人の数倍も食べる主人専用の釜は、勿論茶碗同様大きい。ふとりの妹であるこいしなどはかくれんぼの際に好んで隠れるほどだ。しかしそれほど大きな釜であっても、一日の中の朝昼晩三食取る内の一食でまるまる平らげてしまうというのだから筋金入りである。日頃運動しないふとりがぶくぶく太っていくのも自然なことであった。

「はい、さとり様。運動もしなきゃだめですよ」
「ありがとう燐。運動なんかしなくても大丈夫よ」
 ほかほかの白飯がたっぷりと盛られた茶碗を、幸せなことこの上ないといった表情で受け取るふとり。その横では、こいしがふとりと同じ量の白米を口いっぱいに頬張っていた。毎日毎日ほぼ同じメニューを食しているというのに、妹の方は全く太る気配が見られない。太らない体質なのかもしれない。日常的にふらふらとどこかへ散歩に出掛けるのも影響しているのかもしれなかった。
 テーブルを挟んだ反対側にはペットの地獄鴉、霊烏路空。こちらは既に食事を終え、デザートのゆで卵を優雅に食している。背筋をぴんと伸ばし、スプーンで一口ずつゆで卵をすくい口に運ぶ姿は淑女そのものだ。喋らなければここまでまともに見えるものなのだろうか、残念美人とはよく言ったものである。
 他のペットたちの様子を見ても、大方何も問題はない。さて、一段落したらあたいも食事をとるとしようかな。燐はそんなことを頭の中で考えながら、薬缶から茶を湯呑みへ注ぎ口へと運んだ。
 そんな、昼下がりの一時のことだった。

「うっ……」
 うめき、ふとりは口を押さえる。持っていた箸は床に落ち、からんと乾いた音を立てた。突然の変事にペットたちは慌てふためき、隣に座っていたこいしは立ち上がって口元を押さえる。

「お姉ちゃん……お姉ちゃん? ちょっと、どうしたの!? 大丈夫!?」
 肩に手を置き、ふとりの体を前後に強く揺さ振る。ふとりの頭はぐらんぐらんと機械的にヘッドバンギングするが、そんな瑣事はこいしは全く意に介さない。ただただ全力で、姉の体を掴み乱暴に激しく殴るように揺するだけだった。これが悪意でなく、純粋に姉を助けようという好意からくる行為であるあたり余計救いがなかった。

「お姉ちゃん! お姉ちゃん! お姉ちゃんんんんんんんんんんんんんん!!」
「こ……いし……ちょ、っと、待って……待って」
 がしり、とふとりの両手がこいしの顔を掴む。不意のことに驚いたこいしは思わず姉を揺さ振る手を止めた。その隙を見逃さなかったふとりはすかさずゆっくりと顔を妹の顔に近付け、そっと口付ける。
 そしてきゅっと結ばれたこいしの唇を強引に舌で割ると、逆流してきた先程の昼食を胃液とともに一気に中へと流し込んだ。

「うげぇぇぇヴぇろろろろぅぅぅぅぅぶぶぇぇぇええ!!」
「っが……ぐ……いぎぎ……っ!」
 必死に身をよじらせ、吐瀉物の雨から逃れようとするこいし。けれどもふとりは逃がさない。がっしりと頭を掴み、微塵も動かないようにロックした上でせり上がってきた胃の中の汚物をひたすらホースのように吐き出す。初めこそ嫌がっていたこいしも段々と抵抗する意思を失い、最終的にはぐったりとされるがままに姉に身を任せていた。
 ごきゅる、ごきゅる。部屋の中に茶色く液体状のそれを嚥下する音が響き渡る。まるでペットボトルの水を飲み干すかのように、こいしはそれが至極当然の行為であるかのように、姉の吐瀉物をただ受け入れていた。
 部屋の中に充満しつつある刺激臭。鼻をつんと刺激する酸っぱい臭いは、官能的な光景と相反するもののようで、どこか背徳的な香りを帯びているように燐には思えた。
 際限なく続く嘔吐。地獄絵図のような惨状がいつまで続くかと思われたが、しかし、燐はその時あることに気付いた。

「さとり様の体が……縮んでる……!?」
 いや、縮んでいるという形容は間違っているかもしれない、と燐は思い直す。実際には「痩せていっている」のだから。
 腹の中の過剰な食物を吐き出したからだろうか。その時、ふとりの体は確かに細くなっていた。いや、最早ふとりではない。彼女はさとりだった。目で見てもはっきりと分かるくらい、さとりの体には変化が訪れていた。
 それとは対照的に、顔を真っ赤にしてさとりの離乳食を飲み干すこいしの体型は、僅かにだがふとましくなっているような気がした。それも当然の話だろう。さとりの体積が減った分は、こいしにそっくりそのまま口移しされているのだから。
 小柄でスレンダーだった体型は、時間を経るごとに水風船のように膨らんでいく。見ていればそれはまるでポンプのようだ。空気を入れれば風船は膨らむ。やっていることは、それと何ら変わりなかった。


「……ふぅ」
 やれやれ、とさとりは一息つく。その頃にはすっかり、さとりはかつての体型を取り戻していた。吐けばすっきり、などというレベルではない。何も事情を知らない者が見ればまるで別人と錯覚してしまうような、それは劇的な変化だった。
 しかし既に言わずとも分かるだろう、その余剰分はどこに行ったか。勿論行き先は妹の腹の中で、こいしはほんの数分前までのさとりの体型をそっくりそのまま再現していた。
 胸に手を当て、苦しそうに、やや俯いてうめくこいし。いくら食べても体型が変わらないとは言っても、自らの体重の二倍――三倍。それだけの分量を一気に腹に直接流し込まれては、どんなタフな妖怪でも気分が悪くなって当然だろう。
 ふらっ、と、その場で崩れ落ちそうになるこいしを、さとりは慌てて抱きとめる。真っ青な顔をしたこいしはさとりの肩に頭を預け、そっと耳元で囁いた。

「ゲロマズ」
 満面に笑みを湛えて。
 間髪を入れず口付け、舌を絡ませる。うねうねと動き回る蛇のような舌の動きは、いとも容易くさとりの心をえぐり取った。
 そして、緩慢に吐き出す。
 一度咀嚼された汚物を、更にもう一度咀嚼し、また姉の口の中へと流し込む。どろどろに溶けた二人のご飯は、ピリッと酸の味がした。
 姉妹の顔はよだれと鼻水と吐瀉物にまみれ、べちゃべちゃとして思わず顔を背けてしまいそうなほどおぞましいものになっていた。だというのに二人ともがとてもとても幸せそうな顔をして、互いの唇を貪り合っている。片方が吐き出し、片方が飲み込み。無限に続く、螺旋の機関。
 あぁ、綺麗だな、と燐は思った。
 第二種永久機関の確立の瞬間だった。
おいしいです
ゴゴゴ
作品情報
作品集:
12
投稿日時:
2010/02/16 18:09:13
更新日時:
2010/02/17 03:09:13
分類
さとり
こいし
ゲロ
1. 名無し ■2010/02/17 09:16:43
メビウスの輪?ウロボロス?
2. ばいす ■2010/02/17 09:52:32
これほどまでに魅力的な書き出しは久々に見た
3. 名無し ■2010/03/31 11:39:22
書き出しがまるっきり想創和のふとりん話と一緒な訳だが
まさかね
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