Deprecated: Function get_magic_quotes_gpc() is deprecated in /home/thewaterducts/www/php/waterducts/neet/req/util.php on line 270
『ゴミ屑地霊殿』 作者: ゴゴゴ

ゴミ屑地霊殿

作品集: 12 投稿日時: 2010/02/17 21:35:42 更新日時: 2010/02/18 06:35:42
 ところで、地霊殿が臓物で出来ていることは聡明な産廃諸兄なら既にご存知のことであろうと思う。


 薄暗い館の中、密閉された空間ではどこからともなく腐臭がぷんと漂ってくる。充満しているわけではない辺り、腐ったものは定期的に入れ替えているのだろう。時折壁が痙攣するように脈動するのはご愛嬌。怨霊どもが中に入り込んでいるのだ。
 一歩足を踏み入れると、ぬちゃり、と柔らかな肉布団を踏んだ感触がする。ペットの死骸で出来たカーペットだ。ゆっくりと一歩一歩力強く足を踏みしめると、床にめり込み、腐汁が靴の中へと入り込んでくる。ぶぎゅるぶぎゅると空気の漏れるような間抜けた音も聞こえる。ぷちっと何かを踏み潰すような感触もまた心地良い。
 長く腐敗した廊下を道なりに進むと、突き当たりになんの装飾も施されていない、簡素で最低限の機能性を備えた小さな扉が目に入る。血と肉でしか構成されていないこの屋敷の中で、唯一まともと呼べるものだった。いや、むしろ異常というべきか。いずれにしろただ一つそこにあるだけの一枚の扉は、だというのに異様な存在感を放っていた。
 ノブを回し、重心を前に傾けて扉を開く。ぎぎ、ときしむ音を立て床と擦れ合いながら動く薄い木の板。向こう側に見えたのは、少女が一人、自身の背丈にも等しいのではないかと思われるくらい大きなロッキングチェアに深く腰掛け読書を嗜む光景だった。
 部屋の中は狭い。それだけにこれまでの廊下とは違い空気の逃げ場のないこの密閉された空間の中で、肉の腐り落ちる酷い悪臭がこれまで以上に嗅覚を刺激した。劇薬のような臭みに、目まで汚染され涙がぽろぽろと落ちてくる。そのような状況下にいるというのに、少女はまるで平然として手元の本を朗読していた。

「あの……さとり様、ただいま、戻りました」
「……あぁ、空。お帰りなさい」
 ぱたんと扉を閉め、大きな体躯の少女がたどたどしく言葉を紡ぐと、さとり様と呼ばれた少女は軽く一瞥だけして返した。
 ふと空という名であるらしい少女が視線を横に遣ると、そこには尻尾の二本生えた黒猫が血だまりの中でうつ伏せに倒れていた。ピクリとも動かない。よく見てみれば背骨が折れ、通常では曲がらないような場所で曲がっている。毛も一定の間隔で模様のような図形が刻みつけられており、側面から顔を覗かせる、直接の死因だろうと思われる腹部の大きな一閃の裂傷からはどす黒い色をした大腸がはみ出ていた。空はようやく状況を理解し、あれ、と小さく呟いた。

「お燐、死んじゃってたんですか。最近見かけないと思ったら」
「ええ、そうよ。何か……銀色の馬に蹴られた、ですって。帰ってきた時にはもう虫の息で、すぐに絶命しましたけど」
 事も無げにさとりは言う。空は何度もしきりにへーと感心するかの如く首を縦に揺らしていた。
 そもそもこの説明、空は既に七回も受けていたはずだ。しかし烏、鳥であるが故に記憶力はあまり良くはないらしい。燐というこの猫と親友であったことなど、今やすっかり忘れてしまっているだろう。さとりも最初こそは動揺していたが、回を重ねるにつれて段々と慣れていき、次第に嫌悪感もなくなり今では空に前回と同じ文言を一字一句間違えずに復唱できるくらいにまで心が安定している。妖怪の順応性はかなり高いようだった。
 そもそもといえば、今この部屋が臭気に満たされているのもこの死骸のせいである。二ヶ月以上前からそこにあった死骸。腐ってしまうのも仕方がない。けれどそれをすっかり忘れて同じことを度々主人に問いかけるのが、空が空たる所以だった。
 頭の中が空っぽなのである。

「さて……空も帰ってきたことだし、食事をとることにしましょうか。ねぇ、こいし?」
 本をぱたんと閉じて、さとりは膝の上にいる「こいし」などという大層立派な名前のついた肉虫に笑いかけた。
 肌色をした、おおよそ十五寸程度の抱きかかえるのに丁度よさそうな肉袋。顔と思われる位置にはそれぞれの部位に対応した凹凸だけが残されているが、ただ一つ丸い口だけは残されていた。下半身には短く細いスジが一本のみ。必要最低限の、生きるのに不可欠な外部器官しか与えられていないようだった。
 肉虫はさとりの「食事」という言葉に反応したのか、ぐねぐねと嬉しそうに身をよじらせている。小さな口元からは綺麗に並んだ歯が姿を現しており、きしししと掠れた笑い声を捻り出していた。
 そんな可愛らしい肉虫をいとおしそうに眺めていたさとりは、おもむろに肉虫の背中に手を伸ばす。何度か撫でてやりすっかり虫の機嫌が良くなったところで、さとりは肉袋のややあまり気味の皮をひとつまみ引っ張り、千切った。

「ピギイイイイイィィィィィィ! ピッグギギギギギギィィ!!」
「あっはは! お前も喋れたんだっけ? 面白い鳴き方するわよね本当!」

 はい、とさとりは右手に握った肉片を空に手渡す。ありがとうございます、と空は頭を下げ、口いっぱいに肉を頬張った。
 肉虫の体からは血がだくだくと止まることなく流れ続けている。恒例の風景だ。二人の食事はこの肉虫の体。こうして食べるのが、一種の礼儀作法と化していた。
 当然、殺しはしない。というよりできない。さとりの妹である古明地こいしがただの肉袋となった後、彼女には驚異的な回復力が備わったからだ。現に今こうしている間にも、虫の傷口はぐずぐずになっていたのが乾き始め、流れ出る血も止まっているではないか。あと数分もすれば傷口も完全に塞がるに違いない。心配する必要もなかった。
 しかしさとりは治癒を待たず、また同じ傷口から肉をむしり取った。

「ガッギッギャビィィィィィゥゥゥゥゥゥェッ」
 まるで断末魔のような金切り声を発する肉虫を、さとりは笑いながら愛情のこもった瞳で見つめる。直りかけた傷口を更に広げたのだから、それは痛いに決まっている。まるで地獄のような様相に、この光景を目の当たりにした者は恐れ慄くことだろう。しかし案ずることはない。こんなものはただの戯れだ。遊びと言い換えても問題はあるまい。
 さとりは知っていた。肉虫は――妹は傷つけられる時、心底嬉しいように表情を歪めていたことを。
 生粋の被虐趣味であり、これくらいされて初めて悦べるのだと。
 右手の中の赤々とした肉を、ひょいとさとりは口に投げ込む。
 肉虫の傷口は、もう既に塞がっていた。


「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」
「――……」
 二人が手を合わせて食事を終えようとしている時、肉虫はまだ飯を食らっていた。
 餌は壁や床の、ペットたちの臓物である。
 むしゃりむしゃりと、丸い唇の奥に存在する白く硬い歯で削り食らう。さとりにこいし、と呼び掛けられて振り返った時は、口の周りが血で赤く染まっていた。

「ちょっとこっちに来なさい」
 言われるがままに食事を止め、地面を這いずりさとりの方へ寄っていく肉虫。足下にまでたどり着くと、さとりは虫をひょいと持ち上げてまた膝の上に乗せた。
 頭部を優しく撫でてやると、気持ち良さそうに体をさとりに擦り寄らせる。その姿がまたなんとも愛らしく、食後ということもあり軽い運動をしてもいいかな、という気分にさとりはなっていた。
 とどのつまり、発情していたということだ。
 さとりは肉虫の下腹部に手を遣り、割れ目に乱暴に指を突っ込む。全く前戯をしていないというのにそこは既に湿っていて、それほど抵抗もなくするりと奥まで入ってしまった。

「あら……もう濡れているなんて。何を期待していたのかしらね、この子は。いやらしい子」
 さとりになじられ、肉虫は恥ずかしそうに身をよじらせる。しかしさとりがそこで突然ぐっと乱暴に指をかき混ぜると、虫はビクンビクンと痙攣したように身を震わせた。感度は良好。今日も異常なし。
 続いてピストン運動に移り、何度も何度も突き破りそうになるくらい力を込めてさとりは指を割れ目に突っ込む。それだけ力を込めれば多少は痛がりそうなものだが、殊この肉虫に限ってはそれすら悦びとなった。痛ければ痛いほどいい。千切って裂いて、切り刻んで。そうすればそうするほど快楽を得られることを、肉虫は既に知っていたのだ。だからこそ、彼女は肉虫になってしまったのだ。
 遠慮することなく、更にさとりは次の段階へと移る。指から握り拳に変え、抉り込むように内側にフックを叩き込む。肉虫の口からは先程まで食べていた臓物の欠片が一突きされるごとに飛び出ていたが、どちらもそれを気にする様子はない。ただひたすら、一心不乱に色事に耽るだけだ。
 一発を打ち込むごとに、下腹部がじわりと潤むのをさとりは感じていた。もう絶頂は近い。あぁ、早く、早く。でも達してしまえば、この楽しい時間は終わってしまう。できることなら続いてほしい。あぁ、でも、気持ち良くだってなりたいに決まっている。どっちを、どっちを選べば。ああどうしよう。
 迷っている内に、答えは出た。
 肉虫の跳ねる動きが、より一層激しくなる。あともう少しで終わってしまう。そのことを頭の中で理解していながら、さとりは殴るのを止められなかった。
 あと三発。あと二発。あと一発。何度も体を重ね合わせた彼女たちに、分からぬことなど最早ない。互いの限界も、手に取るように把握していた。
 最後の一発。さとりは自身の下腹部の疼きが解放されるのを感じながら、全力を込めて打ち抜いた。

「ピッ……ィイイギイイイイィィィィィィッッ!!」
 それまでで一番の嬌声を上げ、肉虫は果てた。
 さとりは愉悦の表情で、妹の達する姿を眺めていた。
クズはクズカゴヘ。
ゴゴゴ
作品情報
作品集:
12
投稿日時:
2010/02/17 21:35:42
更新日時:
2010/02/18 06:35:42
分類
さとり
こいし
リョナ風味
1. 名無し ■2010/02/18 07:38:39
地霊殿はエクスデス城だったのか……
2. 名無し ■2010/02/18 09:05:12
こいしちゃんをオナホみたいに扱いたい
3. 名無し ■2010/02/18 12:14:14
静岡みたいなシチュエーションだな。

肉こいし欲しい
4. 名無し ■2010/02/19 18:32:38
俺が今まで見た中でももっとも異常な部類の小説
銀色の馬ってなんだろう
5. おたわ ■2010/02/21 01:56:45
これはいいリョナ
こういう描写に徹した作品は大好きです
6. 名無し ■2010/02/23 23:42:01
かなり独特な世界ながらもその様子を想像するのに無理がないのが凄い
名前 メール
パスワード
投稿パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード