ストロベリークライシス

作品集: 13 投稿日時: 2010/03/17 16:14:56 更新日時: 2010/03/17 16:14:56
 岡崎夢美は教授である。
 若干18歳にして、比較物理学の教授である。

「ピリ辛チキン&鶏そぼろ弁当490円」

 しかし、目の前にあるのは、パックに山盛りになったイチゴだった。助手の北白河ちゆりが、差し入れにと持ってきたのである。
 指に付着したイチゴの果汁を舐めとる。唾液が空気に触れて、ひんやりとする。まだ果汁が残っているのか、べとついた感触が残っている。それを気にもせず、夢美は次のイチゴを手に取った。
 研究室には、イチゴの甘い匂いが充満していた。床一面がイチゴで敷き詰められ、その一角に小さな山ができていた。それはちゆりだった。イチゴの隙間から覗く目が、黒く淀んでいる。

「ちゆり」
「ちゆ」
「ち、ゆ」
「痴百合」

天井からは、紫色をしたイチゴが、ヒモを伝ってするすると降りてくる。それを気にもせず、夢美はパックから次のイチゴを手に取った。またしても指にイチゴの果汁がべっとりと付着する。そして口の周りにも、果汁と一緒に小さなタネがくっ付いている。
 夢美は口元を右手でぐいと拭って、その手をスカートへなすりつけた。彼女のスカートは、元々は純白であった。度重なるイチゴ果汁の侵食によって、それは今では真っ赤なスカートへと変貌していた。それを防ぐために、白いエプロンをつけていた時期もあった。それも今では、真っ赤なマントへと変身していたのであった。

 紫色のイチゴが部屋を飛び回り始める。あるものは蛍光灯を破壊し、あるものは壁へと激突して、十字架状に飛び散った。

「苺クロス」

 ちゆりの振動が、さらに激しくなる。あまりに激しい高速振動によって、彼女の周囲のイチゴは沸騰し、マグマのように果汁を噴き上げている。それを気にもせず、夢美はパックから次のイチゴを手に取った。一口でクシャリと果肉をほおばり、それによってまたしても指にイチゴの果汁がべっとりと付着した。
 壁を伝い降りてきたちゆりが、その指を口に含む。ぬめりと温かい舌が、外気に冷やされた指先を包む。ちゆりの口腔内には、幻想が満ちていた。人差し指を根元まで飲み込み、上顎と舌で指を挟みこんで扱くようにして吸い上げ、指の腹をねっとりと堪能したちゆりの舌は指の根元、人差し指と中指の間にまで及び、執拗になぞりながら中指の脇に唇を押し付ける。

 夢美の指は、いちごの味がした。
 それはストロベリークライシスであった。

 七人に増えたちゆりが激しく回転し、飛び散ったイチゴのエネルギーによって、研究室の壁はついに爆散した。それを気にもせず、夢美はパックから次のイチゴを手に取った。紫色のイチゴを追いかけて飛び回っていたちゆりが、イチョウ並木を吹き飛ばした。それを気にもせず、夢美は次のイチゴを手に取った。指を舐めていたちゆりは、口から逃れていった指を、潤んだ瞳で物欲しげに見つめている。

「Maple Dream...」
「日が照ってるぜだぜ」

 夢美はイチゴを手に取った。パックの中のイチゴは、それが最後の一つであった。そのことに気が付いた夢美は、寂しさと愛おしさの入り混じった眼差しで、最後のイチゴを見つめている。その夢美の指を熱い目で眺めていたちゆりは、欲求不満のあまり、自分がそのイチゴと入れ替わってしまいたいとさえ思った。しかし、そのイチゴはちゆりではなかった。ちゆりはイチゴではなかった。しかし、よく考えてみてほしい。視点を変えれば、ちゆりはイチゴたりえるのではないだろうか。ちゆりとイチゴの間に、一体どれだけの違いがあるというのだろうか。血ゆ

 そう、イチゴはちゆりであった。
 夢美は大量のちゆりを撒き散らしながら、ちゆりの果汁をスカートになすりつけ、次のちゆりを手に取った。紫色のちゆりが部屋を飛び交い、床一面を埋め尽くすちゆりは、微小震動を繰り返していた。

「ストロベリークライシス:






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初投稿です
ちゆりかわいいよちゆり
作品情報
作品集:
13
投稿日時:
2010/03/17 16:14:56
更新日時:
2010/03/17 16:14:56
分類
東方夢時空
岡崎夢美
北白河ちゆり
1. 名無し ■2010/03/17 22:47:20
なんかエロいぞ

夢美さんといえばちゆりを殴ったときのあの顔
2. 名無し ■2010/03/18 04:52:53
つい何度か読み返してしまったぜ
いちごすげえ
3. 暇簗山脈 ■2010/03/18 20:47:49
苺食いすぎじゃね?
って思ったらちゆりだったというこのトキメキ
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