アリスの献身生活100

作品集: 13 投稿日時: 2010/03/24 02:13:07 更新日時: 2010/03/24 02:13:07
「じゃあ、身体、拭くから」
「あ、ああ…。よ、よろしく、アリス」
 リクライニングベッドの背もたれにもたれ掛かった魔理沙のブラウスのボタンを上から一つ一つ外していく。
 もともとは私が昔、着ていた服だ。
 私より身体の小さい魔理沙にこの少し懐かしい感じがする服はぴったりでなんだか昔の私を見ているような、そんな歯がゆい気分になってくる。
「あ、あんまりじろじろ見ないでくれよ…」
 気恥ずかしそうな魔理沙の言葉に思わず頬がゆるむ。
 けれど、見ないで身体を拭けというのは無理な話。
 私は曖昧に分かったわよ、と頷いてブラウスを脱がせる。
 純白のブラウスの下は薄桃色のキャミソール。その下にはレースのブラ。
 これもどちらも私のお古だ。
 魔理沙はブラなんていいから、なんて言っていたけれど、女の子なんだからその辺りはキチンとした方がいいと思う。
「ほら、腕。あげれる?」
「あ、ああ…」
 私の言葉に促されて魔理沙がゆっくりと腕を上げる。
 そこにはあまり活力というものが見いだせない。
 よく見れば二の腕には深い裂傷の痕とそれを線対称に交互に並ぶ抜糸の痕が見える。
 露わになった背中にも、今はシーツの下にある太ももの側面にも同じような痕が魔理沙には刻まれていた。
 その理由、魔理沙が私の家のベッドの上でこうも患者然としていることの理由を話すには時間を数週間前まで遡らなくてはいけない。




 あの日、私たちはここ魔法の森の上空で空中戦を繰り広げていた。
 理由は些末なこと、魔理沙が勝手に私の家から大切な魔道具の一つを拝借していこうとして、私がそれを咎めたからである。
 私の操作に従って七色の弾幕を放つ人形たち。
 それを急旋回で避け蒼い空を貫く星光でもって撃ち落としていく魔理沙。
 いつもの光景。いつもの弾幕ごっこだった。
 私がゲームを征しようと大技を放った刹那、急旋回に耐えかねて魔理沙の箒の柄が折れなければ。
 その内のどちらかだけならば、いつもの通りのスペルブレイク。
 弾幕ごっこの決着だったはず。
 私の大技を受けた魔理沙は煙を吐きつつ「参ったぜ」と負けを認め、
折れてしまった箒ではなんとか浮くことは出来ても私の攻撃を避けることなんてとても出来ないだろうから「参ったぜ」と魔理沙は負けを認めるしかない。
 どちらか、片方だけなら。

「あっ」
 そんな魔理沙の声をその時聞いた気がする。
 幻聴だったかも知れない。
 けれど、その次に見た光景。空中に咲いた爆煙の中から魔理沙の身体がゆっくりと重力に引かれ落ちていく姿は紛れもなく現実だった。
 私はすぐに追いかけたけれど、距離が離れすぎていた。
 とても空中で追いつく事なんて出来ず、魔理沙の身体は黒い森の中へ吸い込まれるように落ちていった。
 
 その後を追って、森の中に降り立った私が見たものは無惨な魔理沙の、躰、だった。
 新しく間接が増やされた左腕。
 皮膚を破り白い骨が赤い血肉を纏って突き出ている。
 右膝は逆の方向へ曲がっていた。
 左足は骨でも抜き取ったみたいにぐにゃぐにゃに。
 右手はかろうじて無事だったのだろうけれど、爪が幾つかはがれ落ちた指には必死につかみ取ろうとしたであろう木々の枝葉が握られていた。
 そうして、首は、曲がってはいけない方向へ曲がって、いた。
 彼女が好んで着ていた黒い衣服は今は朱に染まり、あのいつも前を見据えていた蒼天の色した瞳は曇天のように濁っている。
 どこからどうみても死に体、だった。
 
 ああ、その後、私が取り乱したりもせず、成すべき事を成せたことを魔界におられる母さまに感謝したいところだ。
 私はその時、まだかろうじて息が残っていた魔理沙を急いで我が家の工房…魔法使いが自分の魔術を研究する実験室、まで運び、自分の持てる魔導の技術と魔界から持ってきたグリモアに記されていた治療の法、中には禁断とされる外宇宙の魔術をもって何とか治療…いや、蘇生したのだ。

 けれど、その蘇生も完璧ではなかった。
 私の技術が未熟だったからか、それとも完全な治療など神ならざるこの身ではいかな奇蹟が起きようとたどり着けぬのか、九死に一生を得た魔理沙だったがその身体には障害が幾つか残っていた。

 首から下の不随や各種内臓機能の低下。
 
 意識を取り戻すまでの数日。
 そして、それからの数週間。魔理沙はずっと私の家のベッドの上で暮らしているのだった。




「じゃあ、じっとしていてね」
 お湯に浸したタオルを軽く絞り魔理沙の細くなった腕をぬぐう。
 上腕から二の腕。細い指の間を丁寧に拭いていく。
 その間、魔理沙は本当にじっとしていた。
 私に言われたとおりにしているのではなく、僅かに動くことさえも今の魔理沙には重労働なのだから。
「腕、あげるわよ」
 自分の肩でもって魔理沙の腕を持ち上げ、脇の下をぬぐう。
 まだ、何も生えていないそこからは少し魔理沙の汗の臭いがした。
 日がな一日ベッドの上では汗もかいてしまうだろう。ここはとくに丹念に拭いてあげる。
「んっ…」
「どうしたの?」
 最中、少しだけ魔理沙が身じろぎする。
「い、いや、なんでもないぜ」
 そう、と応えて一旦、タオルを洗い、今度は逆の腕を同じように拭いていく。
 腕を拭き終わったら背中。そして、
「魔理沙、前も拭くから、バンザイして」
「え、あ…分かったぜ…」
 ぎこちない動きで両手を挙げる魔理沙。
 その手助けをして、薄い絹地のキャミソールも脱がす。
「ブラ、外すわよ」
「ああ」
 返事を待ってパチリと金具を外す。
 キャミソールとブラは洗濯カゴへ。
 どちらも丸一日身につけていて汚れているだろうから替え時。
 けれど、あまり汚いとは思えないのは魔理沙が綺麗だからだろうか。
「う、後ろから拭いてくれると有難いん…だぜ」
「はいはい」
 気恥ずかしそうな魔理沙の言葉に適当に相槌。
 だけど、言われたとおりに後ろから手を伸ばして魔理沙の身体を拭いてあげる。
「………」
 暖かい布地越しに日々、ごつごつとしていく魔理沙の肌を感じる。
 大怪我を負ってなんとか生き返ったあの日から魔理沙はだんだんと痩せ衰えていっているようだった。
 骨が浮き始め、頬がそげ、金糸だった髪も少しずつ荒れ始めている。
 食事は一応、しっかり摂っているけれど、一日中ベッドの上ではやせ衰えていくばかりなのだろう。

「…早くよくなりたいな」

 ぽつりと魔理沙がこぼした言葉は願望なのだろうか。
 それとも不安を振り払うため?
 元気なときは見えなかった魔理沙の弱さを見たような気がして、心の奥からなにか形容詞しづらい感情がわき上がってくる。
「魔理沙…」
「あ…」
 前に回って、魔理沙の身体を拭く作業を続ける。
 魔理沙が、すこし驚いたように声を上げたけれどそれ以上は何も言わなかった。
 首回りを拭いて胸元へ、そのままお腹周りへと丁寧にゆっくりと布を動かす。
「アリス…その…」
「前からじゃないと拭きぬくいでしょう」
 魔理沙の言葉を遮って腰回りをぬぐう。
 お尻の上の方は拭きにくいので魔理沙のお腹に顔を寄せる形になる。
 魔理沙の匂いを直に感じる。
「く、くすぐったいんだぜ」
「我慢しなさい」
 お腹に当る私の吐息。
 普段より深いことに、普段より熱いことに魔理沙は気づいているのだろうか。
「…前、もうちょっと拭くから」
「あ、うん…」
 リクライニングシートを倒して魔理沙を寝そべさせる。
 座っている格好も結構、体力を使うもの…そういう言い訳。
 まだ、タオルをぬるま湯で温め直して魔理沙の胸の上で広げる。薄い、桜色のぽっちの上に。
「んっ…♥」
「がまん、しなさい」
 円弧を描くように優しく、優しく、汗を拭き取る。
 だっていうのに、魔理沙は火照り始めたのか、肌からうっすらと汗を浮かべ始めた。
 逆の方の胸も拭いてあげる。
 今度はピンクのボタンを狙わずに。
 肋骨の溝をなぞるように往復する。
 わきの下から、みぞおちへ。
 布越しに魔理沙の心音を感じる。
「魔理沙…下も、拭くから」
「えっ…」
 息を殺すように口を閉じていた魔理沙が小さく驚きの声を上げる。
 顔の赤みが朱に変わる。
「し、下はいいよ…そ、そんなに汗かいてないから…!」
 下半身を覆っているシーツを押さえ拒否の意思表示。
 けれど、今の魔理沙の力は蝸牛よりも弱い。
「ダメよ。ああいう場所はデリケートなんだから、キチンと綺麗にしないと。あせもとかできたらどうするの」
 出来てもいいから、やめて、という魔理沙の言葉を無視してシーツを引きはがす。
 ピンクのリボンをあしらった白いショーツが現れる。
「そのままでいいから…」
「何度も言わせないで」
 魔理沙の腰を浮かせショーツに手をかける。

 するりと脱がせたショーツに銀糸が伸びる。

「あっ…あ」
 うっすらと金糸が生えた魔理沙の秘所は湿り気を帯びていた。
 汗とは違うぬめり気のある体液が離れたショーツと繋がっている。
「うあああ…」
 耳まで真っ赤に染め上げた魔理沙はそんなうなり声みたいな声をだして恥ずかしさに耐えているみたいだった。
「…催しちゃったの」
「ううううう…」
 返答ではなくうなり声。もう、トマトもかくやというほど魔理沙は真っ赤になってしまっている。
「まぁ、こんな状況だからね。ずっと身体、動かなかったんだし…」
「い、いいから早く拭いてくれよ! は、は、はずかしいから!」
 大きな声で怒鳴る魔理沙。
 わかったわよ、と私は魔理沙の彼処へ手を伸ばした。
「あれ、アリス、タオル…」
 すっ、と人差し指でスリットを撫でる。
 瞬間、魔理沙が大きく息を呑むのが分かった。
「もう、今更でしょ。おトイレのお手伝いもしているんだから…こういう事もしてあげるわよ」
「いいか…っぅ!」
 秘裂の間に指を滑り込ませ指を上下させる。
 既に濡れていたお陰で指は苦もなく動き、二度三度、四度五度と往復させる度に滑りがよくなっていった。
「…アリス、アリス」
「いいから、黙っていて。今、私の指は貴女の指の代わりだから」
 ちゅくちゅく、ちゅくちゅく。
 水音がし始める。
 スリットが少し開き始める。
 開花した桜のよう。ああ、そうだ。サクランボを忘れていた。
「ひぃっ♥」
 胸のぽっちにも手を伸ばす。
 軽くつまみ上げこりこりと指の腹で転がして遊ぶ。
 ときどき親指で押しつぶしてあげたりまだまだ乳房の形をとれていない胸の小さなふくらみを手でつかみ込むように押さえまさぐったりと、全体的にマッサージする。
「くすぐったい…っつ♥」
 もう、満開と言った風情の花園。
 指を折り曲げて鈎状に、中指を追加して二本を魔理沙の中へ挿入する。
「ひっ、だ、ダメっ、アリス…!」
 熱い密坪の中。
 ドンドンあふれ出してくる粘液をぐちゃり、ぐちゃりとかき混ぜる。
 ここは魔女の釜/魔法少女の釜。
「ダメ、止めてくれ…恥ずかしいキモチいい、ああ、違う、恥ずかしいから…えっ…!」
 花弁の密でびしょびしょになった私の手を魔理沙の口の中へと突っ込んでみせる。
 最初、魔理沙は嫌がっていたようだけれど、すぐに自分の愛液の味に酔いしれたのか千歳飴を舐める稚児のように私の指をなぶりはじめた。
 その間に胸を揉んでいた手の方を下へ、下へとおろしていく。
 肋骨をなぞり、お腹を撫で、おへそをくすぐり、更に下へ。
「んっ!!」
 開いた花弁の上に実っている小さな桃の種をつまむ。
 驚いた魔理沙が私の指を噛むけれど、弱っている今の彼女の力じゃ甘噛みぐらいにしかならない。
 顔を出した新芽をそのまま優しくいじめる。
 その度に魔理沙は小さくひっ、と悲鳴を漏らす。ここが一番、弱いみたい。
「アリス…そこは…もう、やめて…くれ」
 もう、息も絶え絶え。
 私の指からやっと口を離した魔理沙はそんな言葉を発した。
 もちろん、その後ろにある、涙がにじんだ瞳に見える快楽を求める光りを私は見逃さない。
「そうね…じゃあ、これでおしまい」
 言って魔理沙の唇を私のソレで覆う。
 舌を強引に口内へと進入させる。
 舌同士を絡ませさせる。
 これで悲鳴はでない。
 準備は揃ったと私は親指と人差し指、二本の指で敏感な桃の種を強くつまみ上げると残った三本の指を花弁へと差し入れた。
 そのまま我ながら器用に、人形を操る技術でもって丁寧に、しかし、激しく刺激を与え続ける。
「んっ、んんんんんんん♥♥♥♥♥♥♥♥!!!!」
 私の腕の中で魔理沙が痙攣する。
 秘裂からはぴゅぴゅと間歇泉のように潮が吹き上がりシーツを濡らす。
 どうやらイったみたい。小さく震える魔理沙が余りに愛おしくて顔が自然とほころぶ。

「はぁはぁはぁ…ああっ」
 唇を離すと魔理沙は打上げられた魚のように酸素を求めて口をぱくつかせた。
 潤んだ瞳が私を見据えてくる。
「アリス…」
「…あっ、その…ごめん、なさい」
 しまった、と思うけれどもう遅い。
 実は私は耐えきれなかったんだ。
 毎日、魔理沙に食事を与えて、着替えの手伝いをしてトイレの世話をして、身体を拭いてあげる時、そう言うときに垣間見える魔理沙の可愛らしい仕草、愛おしい表情、そうして、性的な反応。
 最初はくすぐったそうにしているところを知らないように見せかけて必要以上に触れたりしてその反応を楽しんでいた程度だった。
 けれども人が更に強いアルコールを求めるように、廃人が更に強い阿片を求めるように、私も魔理沙の更なる反応を求めていたみたいだった。
 屈折した感情。
 元から魔理沙のことは好きだったけれど、大怪我を負わせてしまった負い目や逆に命を救った優越感、介護を含めた共同生活、そんな特異な状況の所為でその感情が歪んでしまったのかも知れない。
「その…ごめんなさい」
 もう一度謝る。
 はたしてそれで許してもらえるとは思っていないけれど。
 これまでの夢みたいだった日々はこれで終わってしまったみたいだ。
 いえ
「いや…うん、謝らなくてもいいぜ。そ、その…キモチ…よかったし…」
 俯いたまま顔をまた真っ赤に染めて次第に消え入りそうな言葉の魔理沙。
 けれど、そこに私に対する嫌悪の色というものはないように思えた。
「そ、そのお前さえよければ…また、し、シてくれると嬉しいかな…なんて…」
 かんらかんらと笑って、無理に笑ってみせる魔理沙。
 ああ、私はどうやら許されたようだ。
 まだ、この生活を続けていいと、魔理沙から、言われたんだ。



「ま、まぁ、貴女がどうしてもって頼むんじゃやぶさかじゃないわよ。どうせ、まだまだ介護が必要でしょうし」
「ああ、いや、うん。その事なんだけどさ…」
 不意に、魔理沙の声色が変わった。料理の中に苦いものでもはいっていたような、そんな含みのある物言い。
「明日さ、永遠亭に連れて行ってくれないか。あそこの藪医者なら多分…私の身体も治してくれると思うんだ」
「え…」
 永遠亭の藪医者。八意永琳。永夜事変の主犯、月の頭脳、幻想郷一番の名医。
 地上では到底及ばない魔界の英知に匹敵する月の科学を持つ才女。
 ああ、確かに彼女なら私が出来なかった魔理沙の完全治療も出来るだろう。
 なんたってあの人とあそこの姫様は不死人だ。
 永劫の果ての忘却さえも乗り越えられる不死者。
 魔理沙を治すなんて訳もないはず。
「え、ええ、そうね…」
 でも、どうして私はその考えに、彼女を頼るって言う考えにたどり着かなかったのかしら?
 ここに運んだとき、すぐにでも魔理沙の手術を始めないと危険だったから?
 じゃあ、今は?
 今じゃなくてもいい。
 昨日でも一昨日でも魔理沙を連れて永遠亭に行けばよかったはずだ。
 なのにどうして私は忘れていたの?
 といううか、そもそも…どうして、その考えに至らなかったの?
「じゃあ、すまないけれど、明日頼むぜ。ああ、やっとこれでまた空が飛べるな」
「そう、ね…」
 魔理沙の言葉。
 それはこの生活の終わりを意味していた。
 そして、また、昔の世界へ。
 亜音で飛び回る彼女の黒い影を眺め、彼女が他の誰かと居るところを見て嫉妬して、それで誰もいないこの家に帰ってくる。
 以前の、いいえ、今この幸せを知っている分、余計に絶望する情景が脳裏に浮かんでくる。
「―――ッ、ダメ」
「え…?」
 その妄想を、メガロマニアックを振り払うために、否定の言葉を口にした。
 もう駄目。とうにタガは壊れてしまっていたようだ。
「ま、魔理沙の看病は私がするんだから…私が、私が、面倒を、食事も、着替えも、トイレも、性処理だって、私が、私がするんだから…!」
「あ、アリス…何言って…」
「ううっ…!」
 本当に、私は何を言っているんだろう。
 気がつくと私は魔理沙を放ったまま部屋から飛び出していた。
 足は勝手に工房へ。
 自分の部屋はいま魔理沙にあてがっているから。そういう判断だったと思う。
「くっ…ああ、もう…なんで、どうして、畜生、わた、私は…!!」
 感情が騒ぎ立てている。涙を流せ吠えろ忘れろ、全て名がしてしまえと。理性が黙れと叫び続けている。ダマレダマレダマレと叫び続けている。だというのに狂気はそこらかしこから湧き出てくる。
「わぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
 雄叫びを上げて机の上の器具を、作りかけの人形を、棚の魔導書をしっちゃかめっちゃかにする。
 暴れていないと、何かで発散しないと自分自身の狂気に押しつぶされそうになっている。
 そうして、一頻り暴れて、一頻り涙を流して、一頻り叫んだところで、
「…魔理沙?」
 玄関の扉が開く音が聞こえた。
 急いで工房を出て玄関に向かう。
 開け放たれた扉の向こう。
 折れた箒の柄を杖代わりに、ゆっくりと生まれたての子馬のような足取りで進む魔理沙の姿が見えた。
「魔理沙…!」
 走って追いかける。
 幸い、リハビリも満足にしていない魔理沙の足は亀よりも遅くすぐに追いつけそうだ。
 けれど、魔理沙は足を止めてくれない。
「まってよ、そんな身体で何処に行こうって言うの…!」
「ハァハァ…どこって、永琳の所だぜ。身体を…ハァハァ、治して貰わないとな」
「…そ、それなら明日私が」
「…いや、いい」
 呼吸が辛いはずなのに妙にしっかりとした物言い。
 えっ、と私は足を止めてしまう。
「多分、私が一人でこうやっていかないとダメなんだと思うんだ。今日まで、お前に世話になりすぎたんだと思う。だから、なんか、こんな変なことになっちゃったんだよきっと」
 決別の言葉に、とてもよく似た、言葉が聞こえる。
「じゃあな、アリス。身体が治ったらまた、遊びに来るから」
 片手をあげて、それでも振り返らず歩みを続ける魔理沙。
 私は待ってと腕を伸ばし、その場に無様に転けてしまった。
 痛みに視界がにじむ。
 膝を擦りむいたみたいで痛くてすぐには立ち上がれない。
 にじむ視界の向こうでは魔理沙が足を引き摺りながら向こうへ行ってしまっている。
 行かないで、と喉から絞り出すように声を上げる。
 けれど、声は想いは届かない。
 だんだんとは慣れていく魔理沙。
 もう少しでその姿は森の中へ消え入ってしまう。
 二度と会えない、そんなメガロマニアック。それが更に変換する。
 魔理沙を行かせるあの足が、私が治した、私が作った足なのに、それが憎いと、想った。想ってしまった。
「え?」
 唐突に魔理沙の身体がぐらりと揺れた。
 まるで案山子みたいに、唐傘お化けみたいに、魔理沙は片方の足だけで立っていた。
 もう片方の足と言えば膝の上ぐらいからぷつりと断ち切れ、進行方向に向かって倒れていた。
「なんで、私の足が…え?」
 足を斬られたというのに魔理沙はまだ何も理解できてなかったみたいだ。
 それでもバランスを保つのは難しいのかその場に倒れてしまう。
 「え? え?」と疑問符を浮かべている間に斬れた太ももから大量の血液が流れ出していく。
 止血しないと、また死んでしまう。私はまた無意識のうちに人形を操るのに使う鋼糸を手繰り、魔理沙の足を縫い付けた。
「アリス…なんで…?」
 魔理沙がこちらに向かって手を伸ばしてくる。
 その手も使えない方がいいかもしれない。
 下手に付いていると魔理沙を何処かにやってしまうからだ。
 私が折角治してあげたのに。不幸者の手足だ。魔理沙には不要な、部品だ。
 すぱすぱすぱと指先からなますに切り刻む。
 逆の手も肘の上ぐらいで断ち切る。
 人形を操るための鋼糸はかなり強靱な鉄線で出来ている。
 弾幕ごっこの最中に断ち切られないようにするためだ。
 だから、人の身体なんてチーズを切るより簡単に斬り取れる。
 断裁分離。
 残った片足も、いりはしない。
「アリスアリスアリスアリス、なんだよ、なんだよこれ…?」
 ガタガタと震える魔理沙かわいいかわいい魔理沙。
 これなら手足が麻痺していても関係なさそう。
 だって、手足がないんだもの。
 体力の低下も問題ない。
 動かなければ使わないから。

 ×××の神社にだって行けない。
 図書館の×××××もそう。
 ×××がいる妖怪の山へなんて絶対に無理だ。
 魔理沙は私の部屋から外に出る必要がなくなったんだから。

「よかった。さぁ、部屋に戻りましょう魔理沙。お外に出て汚れちゃったから身体をもう一度綺麗にしないとね」
 もっと軽くなった魔理沙を持ち上げて私はにっこりと微笑んだ。この重さが心地よい。

END
二作目。
昼飯にサケフレーク喰ってるときに思いつき、
更に神主リスペクトで空きっ腹に米焼酎流し込みつつ、何とか書き上げました。
まだまだ精進せねば…
sako
作品情報
作品集:
13
投稿日時:
2010/03/24 02:13:07
更新日時:
2010/03/24 02:13:07
分類
アリマリ
流血
ヤンデレアリス
1. 名無し ■2010/03/24 08:16:31
米焼酎のどこにこんな妖しい成分が・・・
2. 紅のカリスマ ■2010/03/24 10:07:52
これは良いアリスだ……。

そして、サケフレークと米焼酎すげぇ。
3. 名無し ■2010/03/26 10:31:32
アリス、独占欲の強い女は嫌われるぜ。
4. ギョウヘルインニ ■2014/07/13 00:02:01
これはすごい。
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