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『二択ジジ抜き 中編』 作者: 灰々

二択ジジ抜き 中編

作品集: 14 投稿日時: 2010/04/07 04:09:58 更新日時: 2010/04/07 20:35:02
※中編ですので、前編を見ていない方はそちらを見てから中編を見ることをオススメします。
でないと、何をやっているのかわからないと思います。
面倒な人は箇条書きの部分だけでも、読んでいただければ大分違うと思います。



前編で説明し忘れてましたが、魔理沙以外の二人も、能力を封印されています。てゐの能力で確立が変化することはありません。



あと、前回の説明といいますか、私の文章では解りにくかったと思いますので下に部屋と通路の見取り図的なものを書きました。

           機械
      →『セッティングルーム』→ 
     ↑    ロッカー     ↓
     通             通     
     路             路
     A             B
     ↑     モニター     ↓
      ←『   待合室   』←
            ↑
     (映姫や魔理沙たちが入ってきた扉)


こんな感じになってます。
それから、てゐの語尾にウサをつけてます。これは、だれが、どのセリフを言ったかわかりやすくするためです。
では次から本編です。













―1―



「さあ、これから、どうなりますかね」


映姫はいくつものモニターの中から魔理沙たちが映っている画面を注視しながらさとりに問いかける。


「ふふ、心の読める私にもこれから何が起こるのか予想出来ませんよ」
「早く気付くべきですね。ゲームはもう始まっているってことに……」







待合室では、沈黙が続いていた。映姫に順番を決めろと言われてもう一分が経とうとしている。


「あの……、どうしましょう。順番……」


静寂を破ったのは文だった。


「やはり、ここは平等にジャンケンできめますか?」


おどおどと二人にジャンケンでの順番決めを提案した。その様子は自信と活気にあふれた普段の彼女からは程遠いものだった。


「ジャンケンか……」


たしかに、それもよいのかもしれないと魔理沙は思った。それなら、だれも文句を言わないし、平等だ。
しかし、映姫が言っていたゲームの鍵を握ると言っても過言ではない、と言う発言からして、順番は今後の運命を左右する重要なファクターなのは間違いないだろう。最初の者はカードを引ける回数が一回少ない。それが、有利なのか不利なのかはわからない。それ故、ジャンケンなどという安易な手で決めるのにはいささか抵抗を感じる。


「うーん、ジャンケンというのもなんだか安易すぎるウサ」


てゐも同じことを考えていたようだ。


「じゃあ、どうすんだ?」
「……私に考えがあるウサ、ちょっと、待ってて」


てゐは部屋に備え付けの受話器をとり、何かを要求しているようだった。
しばらくして、扉が開き、勇儀が入ってきた。てゐは駆け寄ると、何かを受け取った。


「何をするんですか?」


どうやら、てゐが受け取ったのはメモ帳とシャープペンシルのようだ。


「これに、第一希望から第三希望までの順位を書くウサ」
「なるほど、第一希望が優先されるってことか」
「そうウサ♪」


てゐは束になっているメモ用紙の上二枚をとってこちらによこした。


「みんな書くときは他の人に見えないように後を向いとくウサ、書き終わっても、全員が済むまで、他の人に見せないようにするウサ」


シャープペンシルは一本しかなかったので、皆でまわして使った。


「準備はできたウサ? じゃあ、みんな紙を出すウサ」


出した紙は三枚とも、同じ内容だった。
第一希望3番、第二希望2番、第三希望1番だった。
やれやれ結局ジャンケンになるのかと魔理沙はガックリした。


「まあ、待つウサ。こんなのはどうウサ?」


てゐはまた、一人に一枚メモ用紙を渡す。
自分も一枚取ると、真ん中に“て”と書いた。


「みんな、紙に印を書いて四つ折りにするウサ。文なら“あ”魔理沙なら“ま”って書くウサ」


二人はてゐにいわれた通り、紙の真ん中に自分のだとわかる印を書いた。互いにそれを確認したあと、四つ折りにしたあと、床に置いた。


「魔理沙はこれもっててウサ」


てゐが魔理沙に手渡したのはマッチだった。


「これでなにすんだ?」
「これから、説明するウサ。文は後向いてくれウサ」
「え、は、はい……」


文が後を向くとてゐは話し始めた。


「これから、私がこの紙をシャッフルするウサ。文の後に横に並べるから、右、左、真中、のどれか二つ言うウサ。そうしたら、魔理沙がそのマッチで文の言った紙を燃やすウサ」
「で、残った紙に書いてあるヤツが3番手ってことでいいのか?」
「OKウサ。これなら、傷や降り方で自分の紙がわかっていても、自分で選べないからイカサマできないウサ」
「わかりました。じゃあ、早速やりましょう」


てゐは三つの紙をクシャクシャっと混ぜると、文の後に置く。


「できたウサ」
「えっと、右と……真中で」


文が言うと魔理沙はマッチに火をつけ文の指摘した紙を燃やす。


「何が残ったウサ?」


言われて、魔理沙が紙を開く。
中には“て”と書かれていた。


「じゃあ、てゐさんは3番ですね」


続いて、第二希望も同じように、決められた。
その結果、1番は文、2番は魔理沙、3番はてゐとなった。


調度、順番が決定したとき、ガチャっと扉が開く音がし、映姫たちが入ってきた。
てゐはメモとシャープペンシル、マッチをありがとうといって勇儀に返す。


「順番は決まりましたか」
「はい、私が最初で、次が魔理沙さん、最後がてゐさんです」
「わかりました。それではトップバッターの文さんにはこれから『セッティンゲルーム』の前に移動してもらいます。私が、放送でスタートといいますので、そしたら入って下さい。それがゲーム開始の合図です」


文は『セッティングルーム』の前に立たされ、魔理沙とてゐは『待合室』のソファーに座りながら、映姫の放送を待つ。







『監視部屋』に戻ってきた、映姫たちはモニターの前のイスに腰掛けた。
映姫はマイクのスイッチをONにする。


「それでは、『二択ジジ抜き』を始めます。スタート!」


凛とした声がゲームの始まりを告げた。




―2―


文が『セッティングルーム』に入り、待合しつのモニターの済みに時間が表示される。


「ついに、始まったか……」


だんだんと緊張感が増してくる。魔理沙の掌は汗でじっとりと湿っていた。
しかし、10分は長いなと、魔理沙が考えていると、てゐが話かけてきた。


「驚きウサね。あんな、ビクビクした射命丸をみるのは」
「……そうだな。ある意味貴重なものが見れてラッキーかもな」


緊張を紛らわそうと、冗談を言ってみるが、場は全く和まない。


「きっと、あいつは追いつめられるとテンパって周りがみえなくなるタイプウサ」


文は普段烏天狗という、幻想卿でも比較的高位な種族のため、追いつめられるなどということは滅多にないのだろう。しかし、今は能力を封じられ、強さという鎧を失っている。これが、彼女の素の姿なのかもしれない。


「だれだって、追いつめられりゃそうなるさ。みんなこんなこと……」
「ねえ、魔理沙」
「ん?」


見ればてゐの瞳が魔理沙をジッと見つめている。


「私と取引しないウサ?」


ドキンと、一瞬、魔理沙の心臓が跳ね上がった。


「え……」
「まあ、取引といっても、ちょっとしたことだウサ」
「どういうことだ?」


魔理沙は恐る恐る聞き返した。


「魔理沙には文が何のカードをセットしたか教えてほしいのウサ」
「何のカードをセットしたか……え、なんで?」
「よく、考えるウサ。文がセットするカード、それは、文にとってジジではないカードウサ」


そうか、何故そんな簡単なことに気付かなかったのだ。と魔理沙思った。
最も点数の高い自分のジジをセットするバカはいない。セットされるのはそれ以外のカード。


「魔理沙が教えてくれれば、私がそれ以外のカードを表にして、セットするウサ」
「なるほど」
「ここで、重要なのは、もう片方を裏にしておくことウサ」
「片方を裏?どうして?二枚表にしてセットした方が早く相手のジジが……あ!」
「ふふ、気付いたウサ?」


そうなのだ、二枚表ではどちらか、ジジでない方を取られてしまう。それではダメだ。


「一枚表のカード。これが、ジジだったら、魔理沙ならどうするウサ?」
「そりゃ、もう片方のカードをとるぜ。」
「じゃあ、ジジじゃなかったら、どうウサ?もしかしたら、自分のジジと同じカードかもしれない裏をわざわざ引くウサ?」


なんてことだろう。確かにてゐのいった通りだ。相手にもう片方の裏を取らせるカード、これが相手のジジ!


「そこで、頼みなんだけど、私には両方表でセットしてくれないウサ?はじめの周だけでもいいウサ」
「わかった。そのかわり。きちんと、結果を教えてくれよ」
「もちろんウサ!」
「あ、そうだ」


魔理沙は、重大なことに気付く。どうやって、てゐに文のカードを教えればよいのだろう。


「魔理沙。これを、渡しとくウサ」


てゐが手渡したもの、それは、先ほど順番決めの時につかったメモ用紙とシャープペンシルの芯だった。


「おまえ、これ」
「さっき、何枚か抜きとっておいたウサ。あと芯も」
「もしかして、あの決め方って……」
「なんのためにあんなまどろっこしい方法にしたと思ってるウサ。すべてはこの、シャー芯とメモをゲットするためウサ」
「すげぇな、おまえ!」
「せっかくだから特殊カードも教えあいっこするウサ。そうすれば、文がなんの特殊カードを持っているかわかるウサ」


これも、悪い話だはない。


「わかった。私は“プレーヤー一人の手札をランダムで一枚見れるカード”だ」
「私は“裏返しのカードの数字が見れるカード”ウサ」
「じゃあ、文は“選ばれずに戻ってきたカードの数字も次の番セットできるようになるカード”か」
「そうなるウサ。できれば、その特殊カードで文の手札を探ってくれると助かるウサ」
「……わかった、考えとくよ」


ここで、スピーカーから間もなく10分です。という放送がきこえてきた。


「あと、くれぐれも文には私たちが取引してることを感づかれないようにするウサ。もし、ばれれば、面倒なことになるウサ。あと、相手がなにか言ってきても、乗ったふりして逆に利用するのうさ」
「おう。わかった」


暗中模索するしかなかったこのゲームに一筋の光が差し込んだ気がした。
魔理沙は勇んで『セッティングルーム』に向かった。


―3―


『セッティングルーム』は『待合室』とくらべて妙な圧迫感があった。これから、10分間この中にいないといけないと思うとなんだか息苦しい。
魔理沙は自分のロッカーから手札を取り出した。
魔理沙の手札は

1・2・3・6・7・8・9

ジジは“1”、ジョーカーなし、特殊カードは“プレーヤー一人の手札をランダムで一枚見れるカード”

機械をみると、左右両方とも裏側でセットされている。


(両方裏かぁ、まあ、わかった、方を教えればいいよな)


魔理沙は右側の蓋をパカッと開ける。すると片方のカードは機械の中に落ちてしまった。


「うぇ!!??」


思わず、変な声が出る。顔から血液が降りて行くのがわかる。


「嘘だろ……」


引いたのは“1”のカードだった。
さっきまで、てゐと結託していて、安全な所にいたつもりが、一気に足場がくずれてしまった。
魔理沙は早くも、一周目にして自分のジジを失ってしまったのだ。


「や、やだぁ、捨てたくない……」


画面には「手札に同じカードがあります。捨てて下さい」と出ている。


「……クソッ!」


魔理沙は“1”のカードを叩きつけるように、機械のなかにほうりこんだ。


(……そうだ、何、楽観視してたんだ。何ボーっとしてんだ私!こんな状況考えられただろ!てゐはそれを回避する方法を考えてた。自分のみは自分で守らなきゃいけないんだ。考えろ!)


自分の頬をパンパンと平手でたたき、気合いを注入する。


(落ち着け……私も、周りがよくみえてなかったみたいだ。)


ゆっくりと情報を整理していく。まず、基本のカード。これは、1〜9のいずれか、欠番なし、手札は七枚、プレーヤーは三人、ということは……三枚ある数字が三つ二枚ある数字が六枚という組み合わせしかない。
ジジは三枚か二枚か今の時点ではわからない。しかし、文が1を出してきた以上三人ともが一緒のジジということはない。
ジジが三枚ならまだ、チャンスは残っている。てゐが持ってるはずだ。
ジジが二枚しかない場合、ここからぬける方法は、最低でも他人のジジを一枚持った状態で一位になる必要がある。これには、他人のジジをいち早く知り、それ以外のカードはすべて捨ててしまわなければいけない。


(どちらにしろ、てゐがたよりだな……)


魔理沙は 2と9をてゐに言われたとおり表向きでセットする。少なくともてゐのジジをセットしていたとしても取られることはないだろう。
魔理沙はメモを取り出し、文が何のカードを出したか記す。

1とウラ

それを台の上に置いた。


特殊カードはどうするか、魔理沙は悩んだ。
文に使ってくれとてゐに言われていたが、ここはてゐに使って、“1”を確認したい。
もし、“1”をてゐが持っていれば、ジジは各三枚あることもわかり、今後のゲームも有利に進めれる。


(そうだ、私は、4・5を持っていない、てことは二人の手札の中に4・5があるってことじゃないか!てゐに使って、文の手札には“4”があったよって言えばばれない)


魔理沙は特殊カードを機械に入れる。
画面に「どなたの手札にしますか?」と出ている。
魔理沙はてゐを選ぶ、


(頼む、頼む!“1”を持っていてくれ!)


しかし、無情にも機械が告げたのは


「てゐさんは、“4”を持っています」という分かりきったことだった。


(くそ、早すぎたんだ!)


もっと、手札が少ない状態で使えばよかったと、魔理沙は後悔した。
しかたなしに、メモに

とくカーしよう、4もってる

と書きたしておいた。
10分経過し、部屋からでるよう指示がある。


(こっからは、慎重にいこう……)


『待合室』にもどると文が、ソファーに座って、ジッとモニターをみている。
魔理沙が1を捨てたため、画面の数字は20に変わっていた。
しばらくすると、てゐがカードを引いたのだろう。数字は18になった。
文とは、何の会話も無いまま、10分が過ぎた。
文が出て行き、入れ替わりでてゐが帰ってくる。


「ただいまウサ。ありがとう。色々助かったウサ」
「いや、かまわないぜ。それより、何をセットしたんだ?」
「とりあえず、4をセットしたウサ」


二人で画面のほうをむくと、18が16に変わり、時間のカウントが止まる。
と、ここで、ピンポンパンポーンとチャイムがなる。
スピーカーから映姫の声が聞こえてきた。


「一周目が終了しました。これより、廃棄された。カードを発表します」


ゴクリと二人は固唾をのむ。


「1・4・9です。二周目も頑張ってください」


―4―


はぁ、と魔理沙はため息をつく。ここで、文のジジがわかれば少しは気持も楽になったかもしれない。


「まあ、いきなりうまくはいかないウサ。続けて次も頼むウサ」
「わかった」


10分経ち魔理沙は『セッティングルーム』に移動する。その足取りは一周めよりも重い。
部屋に入りさっきと同じように手札を取り出し、機械に向かう。
現在の魔理沙の手札は2・3・6・7・8


今度は“2”が表に片方は裏になっている。


(文もこの方法に気付いたのかな?)


魔理沙は“2”に手をとろうとした。
が、直前で手をとめる。


(まてよ。私はジジを持っていないんだ。裏のも取れる。そうすれば、てゐにも多く情報を与えることができ、早く文のジジもわかる。それに、裏をとれば、文は私のジジは“2”だと思い込むかもしれない)


魔理沙は裏側になっているカードの蓋を開けた。
カード“5”だった。


“5”は被っていないので何も捨てなかった。
何をセットしようか迷ったあげく。せっかくなので、取りたてほあほやの5を表に、もう一枚は7を裏返しにしてセットした。


(二枚表は一周目だけでいいって言ってたよな……)


2と5

とメモを残し、魔理沙は部屋をあとにする。


(次こそは、文のジジがわかることを期待するぜ……)


『待合室』にもどると、前回と同じ様な光景が目に入った。
文はソファーに腰掛けジッと、モニターを見ている。
違うとすれば、モニターの数字が14になっていることくらいか。
そんな中、文がぼそりと漏らした。


「また、椛にあいたいなぁ……」


それをきいて、魔理沙の頭に霊夢やアリスたちの顔がよぎった。


(あいつらには、悪いことしたなぁ。四又は流石にきつかったか。今度は二人位に絞ろう)


もしも、帰れたなら……そんなことを考えていたら、いつの間にか10分が過ぎていた。


てゐが帰ってきたので、早速、なにを出したか聞いてみる。


「なあ、今回はなにを表でセットしたんだ?」
「うーん、教えるかわりに条件があるウサ」
「条件?」


魔理沙が聞き返した刹那、また、チャイムが鳴り、二周目の終わりを告げた。


「二周目が終了しました。今回、破棄された、カードは3・5、です。では、続きを再開して下さい」


放送によると、文が取ったのは“3”のようだ。


「……条件のことだけど、2と8とジョーカーのいずれか、持っていたら。表向きでセットして欲しいウサ」


(2と8なら手札にあるな)


「わかった。だから、はやく、文に出したカードを教えてくれ」
「交渉成立ウサね。私は、“3”をセットしたウサ」


またしても、ダメだったか。
流石にあせってくる。


「すまないウサ」
「いや、てゐが悪いんじゃないよ」
「でも、カードも少なくなってきたから、次くらいには、特定できるウサ」
「そうか、わかった」


文のセットの時間が終わり。魔理沙は三度目のカード選択に向かう。
一方その頃、『監視部屋』は、驚嘆の空気に包まれていた。
さとりは、口元に手を添え、一言しぼりだすように言った。


「てゐ……恐ろしい子!」


―5―


「そいつは、本当かい!?」


いましがた、萃香と交代して戻ってきた勇儀は、さとりの言ったことが信じられないといった様子で聞き返した。


「ええ、間違いありません。てゐさんは、今現在、ジョーカー以外のすべてのカードと他の二人のジジを把握しています」
「でも、いったいどうやって?」
「さとりさん、私もどうやって知ったのか知りたいです。解説していただけますか」


コクンとうなずき、さとりは、話し始める。


「では、説明しましょう。彼女の行動と、心の流れを……
てゐさんの策略はすでに、順番決めの時から、はじまっていたんです」
「メモ用紙とシャープペンシルの芯の確保ですね」


映姫が返す。


「それだけでは、ありません。てゐさんのやった、あの決め方には、ちょっとしたトリックがあったんです」
「トリック?狙って三番目をとったってのかい?」
「はい、実は、あの四つ折りにされた紙は全部てゐさんの印が書かれた紙にすり替えられていたんです」
「いったい、いつそんな紙を用意したんですか?」
「三人で第一希望から第三希望を決める時です。三人とも自分の書いてるとこを見られないように後を向いてましたよね?」
「なるほど、それなら、怪しまれずに紙に書けるな」
「そして、てゐさんのうまいところは、先にマッチを魔理沙さん渡し、動体視力のよさそうな文さんを後ろに向かせてから、やり方を説明した所です」
「すると、自然にてゐさんが紙をまぜる役になれるってわけですか」
「はい。あとはシャッフルする時に、うまいこと紙を全部、自分の印付きのものに変えればいいんです。証拠はマッチで燃やされ無くなります」


二人は感心したといった具合にうーむと唸った。


「ゲームがはじまり、文さんが『セッティングルーム』にいっている間に、魔理沙さんに取引をもちかけ、文さんの出したカードを教えることと、二枚とも表にすることを約束させ、特殊カードも訊き出す」
「ほうほう」


モニターでその様子を見ていない勇儀にもう少し詳しく説明し、さらに続ける


「そして、魔理沙さんが出て行ったあと、帰ってきた文さんにも取引を持ちかけるんです」
「さっそく、魔理沙を裏切ったてわけかい」
「まあ、協力ではなく、取引ですから」
「それで?」
「さとりさん、そこは、録画映像をみてもらったほうが解りやすいんじゃないですか?」
「あ、そうですね」


映姫が録画してある映像を巻き戻し再生ボタンを押す。
映像はてゐが文に取引をもちかけるところから始まった。




「取引しないウサ?」
「取引ですか?」


文は驚きと戸惑いを隠せない。


「とりあえず、はじめの周だけでもいいウサ。私の指定したカードの中から一枚だけ表にしてセットして欲しいウサ。代わりに文が指定したカードの中から一枚、表でセットするウサ」
「……えっと」
「はじめに自分のジジを引く可能性だってあるウサ。それを回避できるだけでもかなり大きいと思うウサ」
「た、たしかに悪い条件ではないですね。」
「そうウサ」
「しかし、てゐさんの指定したカードをセットする意味ってなんですか?」


文が眉間にしわを寄せききかえす。


「私は、魔理沙の出したカードを知ることができるウサ。魔理沙の出すカードって、自分のジジ以外でしょ?みんなそうするウサ」
「あ、そうか」
「そこでウサ、文には私の指定したカードを表に、片方を裏にして出して欲しいウサ」
「片方裏ですか?」
「そうウサ。そうすれば、表のカードが魔理沙のジジだった場合、魔理沙は裏のカードをとるウサ」
「そっか。わざわざリスクを冒して裏をとる時なんて、自分のジジが表だった時しかないですね」


文は、感心しきっている。


「魔理沙のジジが判れば、ゲームも大分楽に進めれるウサ」
「はい、進めれます!」


いままでしなだれた花の様な様子だった文に一瞬、元気が戻る。


「やってくれるウサ?」
「はい。もちろんです」
「このことは魔理沙には感づかれないように気をつけるウサ。文は正直表情に出やすいウサ」
「え、ああ、はい」


手で顔に触れあたふたする。


「もし、魔理沙が何か言ってきたら。乗ったふりをして、逆に利用するウサ」
「やって、みます」
「じゃあ、文が出して欲しいカードを教えるウサ。あ、三枚だと二枚が持っていないカード、一枚が自分のジジってことになりかねないウサ。だからお互い四枚候補をあげるウサ」
「わかりました。じゃあ……4・5・7・8のどれかでお願いします」
「了解ウサ、私は魔理沙のセットしたカードを見てから、教えるウサ。さっき、使ったメモとシャー芯があるウサ」
「それでさっき、あんな決め方したんですね!」
「メモは次会ったとき返してウサ」


ここで、まもなく、10分だという、放送がかかった。






「この取引には、どういう意味があるんだい?ただ単に魔理沙のジジを探るのが目的ってわけじゃないんだろう」


二人のやり取りを見た勇儀がさとりに解説を求める。


「ええ、その通りです。じゃあ、てゐさんが『セッティングルーム』に入ったところから、解説しましょう。」
「頼む」
「文さんのあげた候補、4・5・7・8っていうのは、全部自分のジジでないカードなんですよ」


さとりは、紙を取り出す。


「まず、はじめに。てゐさんの基本の手札ですが1・3・4・5・6・7・9、の七枚。ジジは“7”です」


紙に書きだす。


「プレーヤー三人、手札七枚、1〜9の数字のどれかで欠番無し、みな平等、この条件を満たせるのは三枚のカードが三つ、二枚のカードが六枚。この組み合わせしかないのは、おわかりですね」
「そうなのかー、今知ったよ」


正直に白状する。


「……すると、自分の持っていないカード、2・8が魔理沙さんと文さんがもっていることがわかるんです」
「ほうほう」


勇儀は頷きながら聴く。


「魔理沙さんのメモ。1とウラ≠アの書き方からして魔理沙さんは1をとったと判断できます」
「取った方しかわからなかったんですね」
「これと、文さんの候補からはずれる数字は2・3・6・9です」
「そうだな」
「それを、てゐさんは候補にあげたんです。その結果、文さんは2を表、5は裏にしてセットしました」
「したな」
「魔理沙さんは、“1”を……自分のジジを失っていますから、自分のジジを“2”だと思わせ、かつてゐさんに多くの情報をあたえるため、ここで、裏にしてある“5”をとったのです」


ふうと一息いれる。


「魔理沙さんのメモ2と5≠見て、てゐさんは疑問に思ったんです。候補以外の数字が書かれていたんですから。魔理沙さんは本来、裏にしてあるはずの“5”を取ったことになります。何故、裏をとったんだろうって思いますよね?」
「そしたら、てゐさんも騙されて、“2”が魔理沙さんのジジだって思ってしまいませんか?」
「映姫様、よく思い出して下さい。魔理沙さんがはじめにセットしたカードを」
「あ、2と9です。じゃあ……」
「そうです。てゐさんは気付いたんです。なぜ、自分のジジが表になっていたわけでもなのに、裏のカードをとったのか……それは、魔理沙さんがすでにジジを失っているからではないかと」


おお、と映姫と勇儀は声をあげた。


「となると、破棄された、“1”が魔理沙さんのジジということがわかります。さらに、てゐさんの手札には“1”がありますから、“1”は全部で三枚……みな手札が平等ということは、ジジは三枚ずつあることがわかるんです」
「ひゃー、よく、そんなことわかるね」
「ここからは、口で言うだけではちょっとわかりづらいので紙に書きながら説明します」


まず、とさとりは


「文さんと魔理沙さんの現在の基本の手札枚数は『待合室』のモニターをみれば容易にわかります。二周目のてゐさんが『セッティングルーム』でカードを引いた時点で、魔理沙さんは五枚、文さんは四枚です。」


さとりは、紙に

文 □□□□
魔 □□□□□

と四角を書いた。


「このうち、二人が持っているカードは自分の持っていない2・8」


四角に書きいれる

文 28□□
魔 28□□□


「そして、てゐさんのジジである“7”です」


文 287□
魔 287□□


「そして、文さんのジジである、Xが入っているはずです」


文 278X
魔 278X□


「Xの候補ですが、魔理沙さんのジジ“1”、文さんがあげた候補4・5・7・8、そして、てゐさんが指定して文さんが表でセットした“2”以外の数字……3・6・9のどれかになります」


3・6・9と紙にも書きこむ


「魔理沙さんの空白の手札は“1”、2・7・8、そして、魔理沙さんがセットして、てゐさんが取り破棄された、5と9、これ以外の数字……3・4・6となります。」


3・4・6、書き加えられる。


「“4”はもう、てゐさんが表にセットし、文さんが取って破棄されています。“4”は文さんのジジでないことがわかります。ジジでないカードは三枚ありませんから、魔理沙さんの手札に“4”はないのです。つまりわかっていない二枚は3と6」


文 278X
魔 27836


「これで、Xは3か6であることがわかります」
「こりゃ、たまげたね!」
「ええ、おどろきました!」


よくもまあ、こんなことに気付いたなと、二人はただただ驚くしかなかった。


「ですので、てゐさんは6と9を裏側にセットしたんです。その結果、文さんは自分のジジ、“3”を引いてしまったのです。」
「ここまで、てゐの計算どおりってことか」
「はい、それに、仮に“6”をとられても文さんのジジが残るし全員の手札は把握できるわけです」
「非常に合理的ですね」


勇儀は画面のてゐを眺めながら、つぶやく


「これは、こいつの一人勝ちになるかねぇ」
「いえ、まだ、わかりませんよ。逆転は十分可能です」
「……てゐさんの手札がもう三枚ですね」
「ええ、ここで魔理沙さんが6と7を出せば大分苦しくなります」


てゐの手札は、1・6・7、しかも、6は、さっきセットしたので使えない。


「まあ、それをみこして、魔理沙さんに2か8、ジョーカーのどれかを出してくれるよう頼んだんでしょうね」
「魔理沙は気付いてんのかい?」
「いいえ、残念ながら、まったく」





――後編につづく――
長くなってしまいましたので、中編と後編にわけました。
後編に続きます
灰々
作品情報
作品集:
14
投稿日時:
2010/04/07 04:09:58
更新日時:
2010/04/07 20:35:02
分類
魔理沙
てゐ
映姫
さとり
心理戦
ライアーゲームっぽい何か
中編
名前 メール
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