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『お嬢様がホームセンターでラックを買うSS』 作者: 大車輪

お嬢様がホームセンターでラックを買うSS

作品集: 15 投稿日時: 2010/04/28 17:19:32 更新日時: 2010/04/29 02:19:32
※あとがきでは遅すぎるので、今言います。
※このSSはやたら長い割りに内容は凄く薄いです。
※どうしてこの内容でこんなに長くなってしまったのかは分かりません。









ピンポーン
「こんにちわー! レミリアさん、にとり配送センターです! ご注文の品、お届けに参りましたー!」



・・・・・・・・・反応が無い。



ピンポーン
「もしも〜し、にとり配送センターです! 誰かいませんか〜!?」

紅魔館の玄関に一人、河童の少女が佇んでいる。
必死で呼びかけるが返事をする者は誰もいない。

「ちゃんと日時は、合ってるよね?」

受け取った注文票を取り出して確認してみる。
間違いない。今日の午後、紅魔館の玄関先に運んでくれと、確かに書いてある。

ピンポーン
「ちょっと、冗談じゃないよ。もしもし! もしもし!! 誰か返事して下さい!!!」



客が自分の希望した配送時間帯を失念し、何処かへ出かけてしまう。
この仕事にはそれほど珍しいことではない。
しかし、やられた方にしてみたらこれはとんだ迷惑だ。
ただでさえ大変な力仕事、そこに余計な手間を増やされるのだから。

特にこんな辺鄙な所に立った一軒屋、何度も往復したいとは思わない。
こんなに重い荷物を倉庫に持って帰って、後日改めてここに配送する。
その苦労を考えると気が滅入る。



ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン
「すみませ〜ん、誰か! 誰かいませんか!? お届け物ですよ!!!」

この館の住人がひょっこりと出て来る事を期待して、何度も呼び鈴を鳴らす。呼び掛ける。
それでも何一つ反応は返ってきてくれない。

「全く、ふざけんじゃないって。こちとら、汗水垂らして持ってきてやってるのに・・・」

悪態をつきながら怨めしそうに館を見上げる彼女。
こんないい加減なブルジョアジーの為に汗水垂らして働かなければならない。
資金稼ぎの為に始めた仕事とは言え、不満も募るのは当然だ。

もう、これで最後にしよう。
最後に一回、これで誰も出て来なかったら今日はもう帰ろう。

腹に目一杯、空気を溜め込む。
そして喉が裂けんばかりの大声で叫んだ。



ピンポーン
「すみませーーーーーーん!!!! にとり配送センターです!!!!
 ご注文の品、お届けに参りましたーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「馬鹿馬鹿しい。帰ろ」









その日の夜。

「いや〜、たまには芝居もいいものね」
「でもお嬢様、途中から寝てませんでしたか?」

この館の主、レミリア=スカーレットが従者と共に帰ってきた。
彼女は今朝、何を思ったのか突然芝居が見たいと言い出したのだ。
咲夜が急いで特等席を手配し、その芝居見学に同行した。
もっとも、最初の30分ほどで主は深い眠りに落ちてしまったが。

「寝てなんかいないわよ。あれは目を閉じて静かに芝居の世界に浸っていたの」
「その割にはいびきがうるさかった・・・あら? これは?」

玄関先のポストに一枚の紙が入れられていた。



「何よ、それは?」
「ちょっと読んでみますね。なになに・・・?」

『にとり配送センターです。
 ご注文の品をお届けに参りましたが、ご不在の様でしたので引き上げました。
 お手数ですがもう一度、ご連絡下さい』

「そう言えば昨日買った荷物が届くのって、今日でしたよね」
「もう、何やってるのよ! この駄目メイド!」
「すみません、お嬢様。すっかり忘れてました」

「しっかりしてよね!? お陰でまた届けて貰わないといけないじゃない!」
「申し訳ございません・・・」

「全く。それにしてもパチェとかフランとか、他の連中もどうして出てくれなかったのよ?」
「はい、一人くらいは出てもいい筈ですよね」
「本当に、どいつもこいつも使えないんだから。まいっちゃうわね」

「取り敢えず、また明日にでも配送して貰いますね」















事の発端は2日前、レミリアの入浴直後に遡る。

「咲夜ぁー、咲夜ぁー、いるー?」

主の自分を呼ぶ声を聞きつけ、咲夜は脱衣所に駆けつけた。

「はい。お嬢様、いかがなさいましたか?」
「ちょっと、これ見てよ」
「ああ、これは酷いですね」

脱衣所の一角にある小さな棚が、崩壊していた。
それに詰まれていた大量のタオルが床に散乱している。
まるで山の崩落現場だ。

「こんな小さな棚ではこのタオルの重みに耐えられなかった、ということですね」
「前から危ないとは思っていたのよ。みんな無理やり乗せるんですもの」
「何しろ、うちは大所帯ですからねぇ」

そう、紅魔館は大所帯なのだ。
まず主のレミリア、その妹のフラン。
メイド長の咲夜に、門番の美鈴。
居候のパチュリーに、使い魔の小悪魔。
それに加えて有象無象の妖精メイド達がざっと300ほど。

その一方で、紅魔館の浴場はこの一箇所しかない。
入る時間をずらしながら、全員がこの浴場と脱衣所を利用する。

咲夜の能力で広さの問題は解決していたが、思わぬ落とし穴があった。



「今すぐ美鈴に頼んで直して貰いましょか?」
「いや、駄目ね。ここまで見事に壊れたら手の施しようが無いわ」

「そうですか。と、なると・・・」
「うん。こんな時は・・・」

「パチュリー様に頼みましょう!」
「パチェに何とかして貰おう!」






そして二人は紅魔館地下、大図書館へ。



「いや、ホームセンター行きなさいよ」
「「ええっ!?」」



「何故ですか? パチュリー様」

「何故って・・・あんた達、どこまで私の魔法に頼りっぱなしなのよ?
 ホームセンターにでも行って新しい棚でも買えば済む話じゃないの、普通に考えて」

「でもパチェの魔法なら棚の修理くらい楽々なんでしょ?」

「いや、だから、そういう下らない事くらい自分達で解決しなさいって言ってるのよ。
 幾ら居候させて貰っている身だからって、ここまで扱き使われたら身が持たないわ」

「どうやら、パチェは当てにならないみたいね」
「困りましたね。これで全ては振り出しです」
「落ち着いて考えましょ。きっと何かいい手がある筈だわ」

「だからホームセンター行きなさいって・・・」






ざわざわ・・・ざわ・・・ざわ・・・
一時間後、紅魔館の大広間。

数え切れない程の妖精、妖精、妖精。
主君レミリアの命令により、館の全住人がここに集められた。
咲夜が壇上に上がり、状況の説明を始める。



「えー、こんな時間に集まってくれてありがとう。
 早速だけど今、この館に起こっている事を皆に教えるわ。
 
 ・・・脱衣所の棚が壊れた。とてもじゃないけど、修理できそうも無い」



「えっ!? 本当に?」
「嘘でしょ・・・?」

妖精メイド達の間から軽いどよめきが湧き上がる。
冷静に考えればどうでもいい事なのだが、そこはノリで生きる妖精達。
咲夜の真剣な口調につい、過剰な反応を示してしまった。

「そんな! それじゃ私達、明日からお風呂に入れないの!?」
「嫌! 汗だくになってもそのままなんて、絶対に嫌よ!!」
「もし本当にそんな事になったら、私死んじゃうよ!」

流石は周りに流されやすい妖精共。
一人の混乱が全体に波及し、互いの動揺が互いを益々興奮させていく。
いつしか広間は上を下にの大騒ぎになっていた。



「お風呂が壊れたってどういうことですか!?」
「もっと納得の行く説明をして下さいよ!」

「お、落ち着きなさい。棚が壊れただけで別にお風呂に入れなくなった訳じゃ・・・」

「でもタオルが無いと身体が拭けないじゃないですか!!」
「濡れたままだと風邪ひいちゃいますよ!」
「メイド長は私達が病気になってもいいんですか!?」

咲夜が慌てて集団を落ち着かせようとするが、焼け石に水。
最早、いつ暴動が起きてもおかしくない。



そんな中、一人の妖精がレミリアに質問する。

「お嬢様! お嬢様は!?」
「うん?」
「お嬢様はお風呂に入るんですか!?」

「馬鹿ね。入るに決まっているじゃないの。今日も、明日も、明後日も」

この返答が悪かった。



「うわぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!! 壊せっ! 壊せっ! 壊せっっっ!!!」
「私達、妖精なんかにはお風呂は勿体無いって言うんですか!?」
「その癖、自分だけは大きなお風呂に入るなんてッッッ!!!!」
「もう、我慢の限界よ!!!!!!」
「悪政反対!!! 断固粉砕!!!」
「妖精に権利をっっ!!! 労働者に自由をっっ!!!」
「我々妖精メイドは経営者によるファシストを絶対に許さないぞ! 奮起せよ! 労働階級諸君!!!」

怒りの葡萄は遂に収穫の時を迎えた。
暴徒と化した妖精達は館のドアや窓を次々と破壊。
紅魔館は見るも無残な姿に変えられた。






「なんか、エライことになっちゃったわね」
「だから大人しくホームセンターに行けば良かったのよ」

窓の外、中庭には妖精の集団が陣取っている。
彼女達はあくまでレミリアら首脳陣と全面対決するつもりらしい。
そこら中に『労働条件改善』、『横暴を許すな!』などと書かれた立て看板がずらりと立ち並ぶ。

「お嬢様、話し合いが終わりました」
「咲夜! どうだった?」

そこに咲夜が帰ってきた。
彼女は妖精メイド側のリーダーと一対一の話し合いをしてきたのだ。



「脱衣所の棚の早期修理、または買い替え。これが実現されるまでは業務の全面ストを続けるそうです」
「それでいいんだ・・・」

「まあ、そうと決まれば話は早いわ。明日にでもホームセンターで新しい棚を買えばいい。
 咲夜、ホームセンターの位置は分かる?」

「はい。近くに私や美鈴がよく利用する所があります」
「流石、メイド長ね。美鈴、あなたも一緒に来てくれるわよね?」

「え? 勿論構いませんが、もしかしてお嬢様も?」
「当然よ。うちに置く棚なんだから、私が選ばないと。変な物買って来られても困るし」
「別にそんな心配いらないとは思いますが・・・」

「パチェ、あなたは来てくれるの?」
「私は行かない。元々レミィが蒔いた種じゃないの」
「全く、こんな館の一大事の時にまで引き篭もりなんて」
「買い物ごときにそんな人数要らないわよ」

「まあいいか。とにかく、行くのは私と咲夜と美鈴の3人! 行き先はホームセンター!
 二人とも、明日に備えて今日は早く寝なさい!」

「「はいっ!!!」」



「待って、お姉様。私も行く!」

その時フランが手を挙げた。
するとレミリアは妹をギロリと睨みつけ、こう言い放つ。

「フラン、分かってる? 明日は館の命運が掛かった大事な買い物。あなたが来ても足手纏いよ」
「そ、そんな事無いよ。私だってちゃんと役に立つから」
「どうかしらね? 迷子になって皆に迷惑かけるのが関の山じゃないの?」
「お姉様・・・酷いよ・・・」



「あの、お嬢様? いい機会ですから妹様にも買い物を体験させてみてはどうでしょうか?」
そこへ、咲夜がフォローに入った。

「咲夜、館を管理する立場のあなたが何て事を言うのよ?」
「ですが、これは妹様にとって良い成長の機会ではないかと・・・」

「そ、そうですよ。妹様は力もありますし、きっと連れて行けば頼りになりますって」
続いて美鈴がレミリアを説得した。

「馬鹿ね、あなた達。こいつは物を壊す以外に何の取り得もない奴なのよ!」

「そんな事、無いですよね。妹様?」
「う、うん。頑張るよ」



「この・・・私の言うことが聞けないのかしら?」

そんなフランと咲夜のやり取りを見ていると、いつの間にか口の中に鉄の味。
レミリアは自分が唇を強く噛み締めている事に気が付いた。

「とにかく! フランを連れて行くことには絶対に反対よ。明日は家で大人しくして貰うから」



レミリアはそう断言したが、それでも美鈴は説得を続ける。

「では、こういうのはどうでしょうか?」
「何よ?」
「明日一日、妹様は私が責任を持って見守ります。ですから・・・」




「却下!!!」

ビリッビリッビリッッッ

「きゃぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

レミリアの手によって切り裂かれる美鈴の服。
束縛を解かれ、弾け出す少女の乳房。
その勢いでピュッと飛び出す純白の母乳。

「ま、待って下さい! や、やめ・・・!」
「うるさい! 無能の癖に主人の言うこと聞かない門番なんて、こうしてやる!!!」



レミリアはたわわに実った美鈴の果実を鷲掴みにし、噛み付くように貪り、先端から果汁を吸い始めた。

びゅる・・・びゅる・・・びゅるるる・・・

「ふあぁぁあああぁぁ・・・だめぇ・・・そんなに激しく吸っちゃ、嫌です・・・」
「ふんっ! 無能の癖に乳だけは一人前に甘いのね!」

余談ではあるが、美鈴の母乳はとても甘い。
はっきり言ってコンデンスミルクと同じ味がする。
これは甘党にとってはたまらない。



「あっ、お姉様ばっかりずるい! 私も吸う!」

当然、甘党のフランにとっても大好物だ。
たまらなくなって、美鈴の空いている方の乳首に吸い付いた。

「妹様! やめっ・・・てくだ・・・いやぁぁ・・・両方なんて嫌ぁぁぁ!!!」

ぶちゅぅぅぅぅ・・・びゅるるるるるぅぅぅぅぅ・・・・・・

「うほぉぉぉぉぉぉぉぉ!? ぉぁぁぁぁああああおおぉぉぉぉぅぅふふぅぅぅああぁふぉぉぉぉ!!!?」


「あっ! こら、フラン! 私が吸ってるのよ!?」

びゅぅぅぅぅぅぅじゅるじゅるじゅるじゅるるるるぅぅぅぅぅぅ、ごくごくごくごくごく・・・・

「きっ、きぃぃぃぃぃぃいぃぃぃあぁぁぁぁぁぁぁぁおへぇぇぇぇえぇぇぇえぇあぁぁぁぁ!!!!!」


「いいじゃない、だっておっぱいは2つもあるんだし」

ずちゅぅぅぅぅずるぅぅぅぅびゅびゅびゅびゅびゅううううぅぅ・・・・・・

「らっ、らめぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇへぇへへぇぇぇぇあぁぁぁぅおぁぁぁあああっっっ!!!!!」



「わ、私にもっ! どうか、私にも吸わせて下さい!」

言うまでもなく、咲夜も美鈴の母乳には目が無い。
順番待ちが耐え切れなくなった彼女は、何とかおこぼれを貰おうと無理やり谷間に顔を押し込めた。
そして二人の口に入りきらずに球面を伝う白い雫を必死で舐め取るのである。
彼女もこの時ばかりは、瀟洒なメイドを演じていられない。

「もっ、もうやめへぇぇぇ! おかしくっ! おかしくなひゃぅぅぅうううっっっ!!!」



「やっぱりっ! 何かいい臭いがすると思ったら!!!」
「私も吸いたい! 甘いの大好き!!」
「さっき暴れたから、お腹ペコペコだよ!」

甘い臭いに誘われたのだろうか?
中庭に集結していた筈の妖精メイド達が大挙して押し寄せてきた。
その様子はまるで餌を見つけたピラニアの大群である。



「いっ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」












その翌朝。

「ここがホームセンターです・・・」
「ああ、思ったよりも広いのね・・・」

レミリアと咲夜がホームセンターに着いた。

二人とも目の下には大きな隈、口元のミルク筋はいくら拭っても落ちやしない。
朝の新鮮な空気さえ完徹後の身には疎ましい。

同行する筈だった美鈴はここにはいない。
どれだけ呼びかけても、虚ろなレイプ目で「らめぇ、もう・・・れないよぉ・・・」と呟くばかり。
とても外出できる状態ではないと判断し、やむなく館に置いて来た。

レミリア、痛恨のミス。
夜通し行われたミルクパーティの代償は余りに大き過ぎた。









「へぇ、中々の品揃えじゃないの」
「はい。私もこの店にはよくお世話になっています」

「でもさ、ホームセンターって何なのよ? 私は来るのは初めて何だけど」
「はい。主に日用雑貨やDIY用品、家具等を中心に販売している大型小売店のことです」
「ふぅん。スーパーや百貨店とはどう違うの?」
「衣類やアクセサリー、食料品は殆ど扱っていませんね。あくまで『ホーム』の為のお店です」
「なんだ、つまらないお店ね」

「あ、でもここにはアイスクリームのチェーン店がテナントで入ってますよ」
「何ですって!?」

レミリアの眼が輝いた。

「咲夜、早速そのアイスクリーム店に案内しなさいよ」
「駄目ですよ、お嬢様。まずは目的の品を買ってからです」
「しょうがないわね・・・」

「ついでですから、他にも色々買いましょう。昨日の騒動で館も随分と壊れてしまいましたし」
「いいけど、早くしなさいよ」



「あれ? レミリアさんと咲夜さんではないですか?」

その時、二人を呼ぶ声。
振り返ると長い緑色のロングヘアーの少女がそこにいた。

「ああ、あなたは確か、守矢神社の・・・」
「はい。東風谷早苗です」
「こんな所で合うなんて、奇遇ね。あなたもお買い物?」
「ええ、何か諏訪子様に似合う物でも買おうと思いまして」

多分、朝一で来ていたのだろう。
カートには既にバールや犬小屋、ペット用トイレなど様々な商品が乗っている。

「丁度良かった。出来れば貴女にも見て欲しいんだけど、来てくれるかしら?」

と、咲夜は早苗を誘う。

「え? まあ、いいですよ。折角お会いしたんですし」






こうして、咲夜の先導で3人はキッチン用品売り場にやって来た。

「咲夜、新しいナイフでも欲しいの?」
「いいえ、今日欲しいのはナイフではなくて・・・あ、ありました」

鍋やまな板の中で咲夜が見つけたもの、それはピンクや白色のお洒落な・・・

万力だった。



「ちょっと、これ何よ?」
「これ、本当にキッチン用品なんですか?」

「何って、『キッチン用万力』ですよ?」

「キッチン用・・・?」

「最近流行りなんです。私もずっと前から欲しかったんですよ」
「どうしてキッチンに万力が必要なのよ?」
「分かりませんか? 例えば、瓶の蓋が固すぎて開けられなかったりするじゃないですか」



「えっ!? きゃ、きゃぁぁ!!」

突然、咲夜は早苗を後ろから羽交い絞めにし、ディスプレイ用の万力に押し付けた。
丁度、早苗の豊満な胸が万力に挟まれる形になった。


キーコ、キーコ
「そういう時はですね、瓶をこの万力に挟んで・・・」

「ちょ、ちょっと待って! いきなり何をするんですか!?」

咲夜が万力のハンドルを回していく。

「分かった! 瓶を押し潰して中身を取るんだ」
「違いますよ。そんなことしたら破片が混ざってしまいます」

キーコ、キーコ
「い、痛っ! じょ、冗談じゃないですよ。洒落になりませんって!」
早苗の胸が、少しずつ万力に圧迫されていく。


「そうではなくて瓶を十分固定したら、こうやって瓶の方を持って体重をかけて開けるんですよ」

咲夜はそう言ったが、ハンドルを回す動作に全く変化は無い。

キーコ、キーコ
「こ、こんなこと、私にしていいと思ってるんですか!? 私は現人神ですよ!? 自機なんですよ!?」


「そんなもの無くても、美鈴にでもやらせればいいんじゃないの?」
「ですが、瓶の蓋開けるのに門までわざわざ行くのは時間の無駄ですよ」

キーコ、キーコ
「お、お願いします! 止めて! 私が悪かったのなら謝るから! 止めて下さい!!!」

胸に口金は深く食い込み、はみ出た肉の膨らみが服の上からでもよく分かる。


「だけどねぇ、瓶を固く閉めないように注意すればいいだけの話じゃないの?」
「そこをなんとか、お願いしますよ。これがあれば私もより一層、頑張ってお仕事できますから」

キーコ、キーコ、キーコ、ブチッ、ブチッ、ブチッ
「やめっ! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃっ!!!」

遂に肉が潰れていく音がしてきた。
もう早苗の服は血で赤く染まり出している。


「しょうがないわね。そこまで言うなら買ってやるわよ」
「本当ですか!? とっても嬉しいです! お嬢様、お慕い申し上げます!!」

ブチィィィィッッッッ!
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!」



結局咲夜が選んだのは、青地に鯨や魚の絵が描かれたキュートな万力だった。

「これがいいです。これが一番可愛いです」
「本当、あなたって変なところで少女趣味よね(まあ、そこがいいんだけど)」

失禁しながら泡を吹いて気絶した早苗を余所に、咲夜の足取りは弾んでいた。






そして二人は園芸品のコーナーへ。

「そう言えば美鈴がもっと長いホースが欲しいって言ってましたよね」
「はいはい、ホースね。他に欲しいものは?」
「ええ。カラス避けのネットがあればいいかな、と」
「そうね。買っておきましょう」

こんな風にして、カートには次々と商品が投げ込まれていく。
ずっしりと重くなったそれを、咲夜は慎重に押していた。

「ねぇ、これいいと思わない? 中庭に置きましょうよ」

ある商品にレミリアの目が留まった。
それは子供用の小さなブランコ。
子供用とは言っても、鉄製でそれなりに高級感はある。

「中々楽しそうじゃない?」
「これは止めておいた方がいいと思いますよ」
「どうしてよ?」
「恐らく、お嬢様が使うには耐久性に問題ありかと」

「大事に使うわよ。絶対に壊さないから」
「駄目ですよ。前にも滑り台を壊したことがあるじゃないですか」
「・・・分かったよ」

咲夜に説得され、渋々ブランコを諦めるレミリア。
勿論、本心では納得がいかない。



「あら? お嬢様、これなんてどうでしょうか?」

するとレミリアの機嫌も直らぬ内に、今度は咲夜がある物を見つけた。

「ふん。そんなもの、何に使うのかしら?」

『そんなもの』とは、ロールで売られている人工芝だ。



「妹様のお部屋に敷こうと思います」
「フランの・・・?」
「ええ、きっとお部屋も明るくなりますよ」

「駄目よ! 絶対に駄目!!」
「ええっ!?」

「あいつに人工芝なんて、100年早い! 買ったところで無駄になるだけよ」
「でも妹様は滅多に外出できませんから、せめて外の雰囲気だけでも・・・」
「うるさいわね。私が駄目と言ったら駄目なのよ!」

ついさっき咲夜にブランコを却下されたばかり。
その癖、フランには人工芝を買ってやると言うのだから、無性に腹が立つ。
レミリアは意地でもそれを買わせないつもりでいた。

「ですが、今日は来れなくて残念そうでしたし、お土産として買ってやってはどうで・・・」

「しつこいわねっ!!!」



「ごはぁっ!? きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ガラガラガラガラガラ・・・



つい、手が出てしまった。
レミリアの強烈な拳が、咲夜の腹部にクリーンヒット!
咲夜の身体は10m近く吹っ飛び、幾つもの商品棚を薙ぎ倒して地面に転がった。

「あ・・・咲夜・・・?」

次の瞬間レミリアは我に帰ったが、時既に遅し。
殆ど手加減の無い致死性の一撃を生身の人間に放ったのだ。
これが何を意味するか、それが分からないレミリアではない。

「さ、咲夜! ゴメン! 大丈夫!?」

工具に埋もれた従者の元へ急いで駆け寄る。

「咲夜! 咲夜!! お願い! 返事して!」

必死で呼びかけるも反応は無い。
咲夜の腕はありえない方向に曲がり、視線は宙を泳ぐばかり。
彼女が激突した商品棚は人の形に凹んでおり、衝撃の凄まじさを物語っていた。

「嫌だ・・・お願い・・・返事してよ。咲夜ぁ・・・」

「・・・・・・・・・」

棚にぶつかった時に切ったのだろう。
頭から流れた血が彼女の銀髪を真っ赤に染めていた。

「ブランコなんていらない・・・人工芝も買っていい・・・だから・・・」

「・・・・・・・・・」

折れた肋骨が内臓に突き刺さっているのか、口から大量の血を吐き出している。
顔は見る見るうちに青ざめていき、呼吸の音すら聞こえない。

「もう我侭言わないから・・・怒ったりしないから・・・死なないで、咲夜」

「・・・・・・・・・」

「嫌だ・・・嫌だ・・・嫌だ・・・嫌だ・・・嫌ぁ・・・」



「ぉ・・・じょ・・・ぅ・・・・・・さま・・・」

「咲夜っ・・・!?」

「もう・・・我侭、言わ・・・ないん・・・ですよね?」

「言わないよ! 言わないから・・・だから死なないでっ!」

「良かった・・・これで、私も・・・安心して・・・・・・・・・」



「咲夜? 咲・・・夜・・・・・・? 咲夜ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッ!!!!!!」









「ラックの売り場はここらへんですね」
「今日はこれが目当てなんだからね。これだけは忘れずに買っておかないと」

応急措置はしたものの、咲夜の怪我が心配だ。
まだまだ店内を見て回りたいが、予定を繰り上げてラックを選ぶことにした。

「どのラックにしましょうか?」
「そりゃ貴女、頑丈なのに決まってるわよ」

「では、このステンレス製のものなんてどうでしょう?」
「確かに丈夫そうだけど、1つで足りるかしら?」

「いえ、3つは必要だと思いますよ」
「でも1つしか無いみたいよ?」
「在庫がある筈です。店員を呼びましょう」
「そう。分かったわ」



「ちょっと! そこの店員、こっちに来なさい!」

レミリアは近くにいる河童の店員を呼びつけた。

「あーはい。なんでしょうか?」
「これを3つ欲しいんだけど、在庫はあるかしら?」
「えぇ、ありますよ。これを3つですね。あと、追加料金で配送もやってますが、どうします?」

「いらないわ」
「でも結構かさばるし、配送の方がいいと思いますが」
「いいわよ、わざわざ送って貰わなくても」

「あの、お嬢様。私も配送して貰った方がいいと思います」
「何よ? 貴女まで」
「他の買い物も随分ありますし、私は傘を持つから片手が塞がってしまいますし」

勿論、貴族たるレミリアは荷物持ちなどしない。

「・・・それもそうね。やっぱり配送して頂戴」
「はい。分かりました」



「それにしても、美鈴さえ来てくれれば良かったのにね」
「そうですね。重い物はあの子に運んで貰うつもりでしたから」

「全く、こんな時に使い物にならないなんて」
「ええ。本当に、ピクリとも動きませんでしたね。それにあんなアヘ顔、今まで見たことありません」
「だけど、私の見込みだとあれはまだまだ搾り出せるわよ」

「そうですか? 空になるまで搾り取られて完全に枯れ果てた、って感じだったじゃないですか」
「甘いわね。出そうと思えば幾らでも出せるのよ、美鈴は」
「それは凄いですね。昨晩だけでも軽く数十ガロンは出したというのに」

(二人とも、一体何の話をしているんだ・・・?)

にとりはそう思った。



「あっ、そうだ。いい事思いつきました。お嬢様、こちらに来て下さい」

突然、咲夜がそう言ってレミリアを連れ出す。

「ま、待って。あんた達、結局これはどうするんだい?」






再びキッチン用品売り場にて。

「何か買い忘れたものでもあったの?」
「いえ、そういう訳ではなく・・・ほら、これです!」

「これって、かき氷機?」
「違いますよ。これはアイスクリームメーカーです」

そう、アイスクリームメーカー。
バニラやクリームなど材料を入れて、よくかき混ぜて。
後は氷精にでも冷やして貰えばご家庭で気軽にアイスクリームを作ることが出来る。

「でもねぇ、結局材料を買いに行く手間を考えたら・・・ハッ、もしかして!?」
「ウフフ、そうですよ。ウチならアイスクリームを無限に作る事だって、可能です」

「・・・流石は咲夜、ね。貴女を従者にして本当に良かったわ」
「ありがとうございます、お嬢様」
「霊夢でも呼んで盛大にアイスクリームパーティーと言うのも悪くないわ。きっとビックリするわね」
「アイスクリームでかまくら作りましょうよ!」

無限アイスクリーム、なんと言うスケールだろうか?
レミリアは胸の高まりを抑えきれずにいた。



「そうだ。アイスクリームと言えば・・・勿論、約束は覚えているわよね?」

「えっ?」

「アイスクリーム屋よ。忘れちゃったの?」
「いえ、アイスクリームなら帰って好きなだけ食べられるようになったじゃないですか」

「何言ってるのよ!? これとそれとは話が別でしょう?」
「別に別ではないと思いますが?」

「私はねぇ、アイスクリーム屋に行くのを楽しみにしていたのよ? それをあなた・・・」
「はい。ですからアイスクリームを館で食べればいいじゃないですか」

「今、この店で食べたいの! アイスクリームを! 私は!!」
「でもそれだと太りますよ」



「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

レミリアが怒りにまかせて思いっきり地団駄を踏む。
周りは小さな地震でも起きたかの様に揺れ、床には大きなクレーターが出来た。

「あ、あの、お嬢様、落ち着いて・・・」
「話が違うじゃないのっ! 後で寄ってくれるって言ったのは貴女でしょ!?」
「え、ええ。ですがあの時は・・・」

「うるさいっ!!!」

続いて近くにあった棚を全力で殴りつける。
他の棚を幾つも巻き沿いにしながら、店の壁際近くまで吹っ飛んだ。

「うわぁぁぁぁぁ!!! 文さん!!!?」

その時に偶然居合わせた天狗が一人、棚に挟まれてミンチになったがレミリアはそんな事は気にも留めない。



「一体どういうことよ? 私を騙したのね? あんたなんか、拾わなきゃ良かった」
「そんな・・・私はただ、お嬢様のことを思って・・・」

「黙れ!」

「ま、待っ・・・!」

次の瞬間、レミリアは咲夜に襲い掛かった。

ブチブチブチブチィッッッ!!!
「あ・・・がぁ・・・」

そして頭を鷲掴みにし、力任せにもぎ取ってしまった。



「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・・・・・・・はぁっ・・・・・・・・・」


「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・私・・・何を・・・?」



自分が今やったこと、レミリアにはそれが分からなかった。
およそ信じられない。信じたくも無い。
しかしその手に握られているのは見慣れた銀髪の頭だ。


「嘘・・・違う・・・ごめん・・・嘘・・・違う・・・ごめん・・・嘘・・・」

売り場の一角を崩壊させた腕が、重みに耐え切れず手に持った頭を落とした。

「違う・・・違う・・・違う・・・違う・・・違う・・・違う・・・」

床に大穴を開けた脚が、自分の体重すら支えられずその場にへたり込む。



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!」

休日のホームセンターにレミリアの慟哭が響き渡る。
その叫びを聞いた客達、店員達の何人もがショック死した。



「馬鹿! 馬鹿! 馬鹿! 私の馬鹿!!! なんて事、するのよ!!!」


「どうして、こんな事! どうして!? なんで咲夜を!?」


「馬鹿・・・ヒック・・・馬鹿・・・グスッ・・・私の・・・馬鹿・・・」






「お嬢様、私は無事ですよ」

「え・・・咲夜、どうして・・・?」

「はい。咄嗟にすり替わっておいたんです。手品は得意ですから」


落ち着いて床に転がった生首を良く見てみる。
銀髪は一緒だが、全然違う。
犬の耳の生えた、全くの別人の首だ。



「さくやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「まぁ、お嬢様ったら」

感極まったレミリアが咲夜の胸に飛び込んで行った。

「ゴメン! ゴメンね、咲夜! 私なんて最低の主君よ!!」
「いいんですよ、お嬢様。でも、もうあんなことしちゃ駄目ですよ。約束して下さい」

「約束する。約束するから・・・ずっと傍にいて。咲夜・・・」









「えーと、『ラムレーズン』に『チョコレートチップ』?」
「『キャラメルリボン』というのも美味しそうですよ」
「この『ホッピングシャワー』って何かしら?」
「はい。アイスの中にパチパチ弾けるキャンディが入っているんです」

「それじゃ、私はそれにするわ」
「では私は『バナナアンドストロベリー』を」

いよいよレミリアお待ちかね、アイスクリーム店だ。
もっとも、ホームセンター内は飲食禁止。
アイスはここに設置されたテーブル席で食べていかないといけない。

「それにしても驚きだわ。アイスだけであんなに種類があるなんて」
「ええ。このチェーン店は常に31種類以上のフレーバーを揃えているんですよ」
「中々やるわね。小さな店じゃ、そうはいかな・・・あれ、あいつは?」

客で賑わう店内に、見知った顔を見付けた。



「あれ? レミリアさん? それに咲夜さん?」
「そういう貴女達は、確か守矢神社の・・・」

緑のロングヘアーに蛇と蛙の髪飾り、東風谷早苗。
その足元には守矢神社の一柱、洩矢諏訪子もいた。

「こんな所で会うなんて、奇遇よね。あなた達もお買い物かしら?」
「はい。諏訪子様がアイスを食べたいとおっしゃったので」

床に四つん這いになった態勢の諏訪子の口元には小さな皿がある。
その上に乗っているのは、間違いなくドライアイスだ。


「うぅぅ・・・さなえぇ・・・」
ポリポリポリ、ガリガリガリ

手を使わず、犬の様にドライアイスを頬張る諏訪子。
舌や唇が破れたのか、口の周りに凍った血がこびり付いているのが痛々しい。


「諏訪子様は神様ですから、ドライアイスが大好きなんですよ」
「へぇ、そうなの。やっぱり神様の食事って変わってるのね」

「私は別に、こんなの食べたく・・・」


「諏 訪 子 様 ?」

早苗がキッと足元の諏訪子を睨みつける。

「う、うん。私、ドライアイスが大好き・・・」
ポリポリ、ガリガリ、ポリポリポリ

「本当に、諏訪子様はドライアイスが大好きですねぇ」

「う、うぅぅ、あうぅぅぅぅ」
ポリポリポリポリポリポリ・・・


「神様の癖に食意地が張ってるのね」
「余程ドライアイスが好きなんでしょう」

「ええ、そうなんですよ。この前なんて・・・」

「さなえぇぇ・・・」
「はい? どうしました?」

「全部、食べたよ。食べたから、もう行こう?」

いつの間にか皿の上のドライアイスは無くなっていた。
あの量は変温動物には辛かったろう。


「あらあら、お代わりですか? そんなにがっつかなくても、まだまだいっぱいありますよ」

ガラガラガラ・・・
「げ、げぇっ!?」

早苗が皿に山盛りのドライアイスを追加する。

「ほら、思う存分食べてくださいよ」
「あ、あの、早苗?」
「どうしたんですか? 諏訪子様はドライアイスが大好きなんでしょう?」

「は、はい・・・」
ガリガリガリガリガリガリガリガリ

「呆れた。まだ食べるなんて」
「やはり神様と言えど、ピンからキリまでなんでしょうか?」

「ウフフ、本当に諏訪子様のドライアイス好きにも困ったものですねぇ・・・
 でも、それもしょうがないですよね?
 だって諏訪子様は神様ですから。
 神様はドライアイス大好きですよね?」

「ぁぁぅぅぅ・・・」
ゴリゴリゴリボリボリボリゴリゴリゴリボリボリボリ


「ちなみに・・・私は人間だから、甘いアイスがだ〜いすき!!!」

そう言って早苗は手に持った苺のアイスを舐め上げた。

「私は吸血鬼だから冷えてないカレーが大好きよ」
「私はメイドですから焼いてないおやきが大好きです」



「ねぇ、ところで咲夜」ボソッ

突如、レミリアが咲夜の服を引っ張り、耳元で囁き出した。

「どうしました?」ボソッ
「やっぱり、あの巫女のアイスの方が美味しそうな気がするの」ボソボソ
「もう一度レジに行ってあれを買いましょうか?」ボソボソ
「馬鹿、そんなことしたら恥ずかしいでしょ?」ボソッ

「と、言うことは・・・」ボソボソ
「ええ。分かってるわよね?」ボソッ


そして咲夜が隠し持っていたナイフに手をかける。



「諏訪子様、まだまだドライアイ・・・ウゲェッッ!!」
「ブゴッ!」



次の瞬間、早苗の喉が裂け、諏訪子の首が飛んだ。

「な・・・何が起きて・・・?」

大量の血潮を吹いた一人と一柱は、そのまま動かなくなった。




「こうして、私は自分のアイスと巫女のアイスを独り占めしたって訳ね」
「流石ですわ。お嬢様」

「それにしても、蛙の方まで殺すことは無かったんじゃないの?」
「いえ、私はこれが欲しかったのです」

咲夜は皿の上に盛られたドライアイスを、根こそぎバッグに詰め込んでいた。


「食べたいからって殺すなんて、意地汚いわ。恥を知りなさい」

「違いますよ。これは妹様の為に・・・」
「フランの?」

「はい。妹様にアイスを買って行こうと思うのですが、途中で溶けないようにと」
ガリガリガリボリボリボリ

「へぇ、フランの・・・為にね・・・」

「妹様も、きっと喜んでくれると思いますよ」
ポリポリポリゴリゴリゴリ


「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・?」
ガリガリガリボリボリボリゴリゴリゴリポリポリポリ









「あっ、あんた達、どこ行ってたんだよ!?」

ラック売り場に戻ると、にとりがカンカンに怒っていた。


「どこって、別に? ずっと店の中にいたわよ?」
「何も言わずに行っちゃうから、ここで待ってたんだよ? しかもカートまで置きっぱなしで」

「私達のカート、見ていてくれてたの? 助かるわ」
「あれは買い物の邪魔になりますからねぇ」ガリガリガリ

「とにかく、買うなら買うでハッキリしてくれないと・・・」
「買うわよ。買うって言ったじゃない?」
「買わないなんて言ってないですよね」ボリボリボリ

「だったら! これ書いてから行ってよ。どこに配送すればいいか、分からないじゃない」

河童が配送表を突き出した。

「あー、これに私の住所と名前を書けばいいのね?」
「それと電話番号もありますね」ボリボリガリガリ
「あと、他の荷物は自分で持って帰ってよ? 勿論、お金を払ってから」

「失礼ね。それくらい分かって・・・あっ、しまった!」

「どうしました? お嬢様」ボリボリボリ
「ハンコ、忘れたわ」

「別にそんなの、いらな・・・」

「でしたら、ハンコ売り場で買えると思います」ガリガリガリ
「凄いわ、そんなものまで売ってるのね!」
「このお店は品揃えがいいんですよ」ボリボリガリガリ



「あー! ちょっと! だから、どこ行くんだよ! 待て、待てって!!」









「す、す、す、末次、周防、菅原、鈴木・・・駄目ね」
「ありませんか?」ボリボリボリ
「『スカーレット』ってそんなに珍しい苗字でもないと思うけど」
「でも幻想郷には他に『スカーレット』さんなんて見たことありませんよ」ゴリゴリゴリ
「うーん、これは困ったわね」

「でしたら、私が館までハンコを取りに戻りましょうか?」バリボリバリボリバリボリ
「いや。良く考えたら私、元々ハンコなんて持ってなかったわ」
「それはいよいよ困りましたね。あっ、もう無い・・・」



「ハンコなら作れますよ」

「「ええっ!?」」

近くのカウンターにいた店員が声をかけて来た。

「あ、あなた、ハンコが作れるの!?」
「はい、ここではオーダーメイドのサービスもやっているんです」

「それじゃ、『スカーレット』って出来るかしら!?」
「分かりました。今からお作りします」

「フ、フフフ・・・これは正に渡りに船って奴ね。こんな所にハンコ職人がいるなんて・・・」
「良かったですね、お嬢様」



「オプションで印鑑保険を付けられるのですが、いかがなさいますか?」
「印鑑保険? 何よ、それ?」
「はい。万が一ハンコを紛失なされた時、それによって生じた損害を補償する保険です」

「折角だし、お願いするわ」
「はい。1000円になります」

「ああ、それとプラス3000円でオリジナルケースもお付けしますが」
「じゃあ、それもお願い」

こういった販売戦略に一々引っかかるのが、いかにも金持ちらしい。

「では、30分ほどで出来上がると思います。」

「30分、ね」
「それまで店内を見て回りましょう」






30分間の暇つぶし。
二人はこのホームセンターで、まだ行ってない所に行くことにした。
それは2階の、家具コーナー。
家具と言っても下にあったラックよりもっと高級な、本格的なアンティーク家具が並んでいる。

「ラックはこっちで買っても良かったかも知れませんね」
「まあ、いいのよ。どうせ脱衣所に置くやつなんだから」


「ではカーテンでも買っておきましょうか? そろそろ古くなって・・・お嬢様?」

気が付くと隣にいた筈のレミリアがいない。
迷子になったのかと思ったが、彼女はすぐに見付かった。


「こんな所にいたんですか?」
「うん。凄く気持ちいいわよ」

咲夜の主は入り口の近く、展示品のベッドの上にうつ伏せになっていた。

「お嬢様、いくら寝ていないからって、売り物の上で寝るのはお行儀が悪いですよ?」
「ごめんなさい。でも本当に気持ちがいいの。このベッド、欲しいなぁ」
「駄目ですよ、今月に入ってベッドは3台目じゃないですか?」

「いいから、貴女も来なさいな」
「きゃっ!」

レミリアは咲夜の腕を掴み、ベッドに引きずり込む。
想像以上に柔らかい、大きな動物のお腹の様な感触が彼女を包み込んだ。

「ああ、本当に、柔らかくて気持ちいい・・・です」
「そうでしょう? なんか私、眠ってしまいそう」
「私も、眠く・・・なって・・・」



レミリアがゴロリと寝返りを打ち、咲夜の胸元へ転がり込む。
微笑を浮かべて、咲夜はその頭を抱き寄せた。
その様子はまるで仲の良い姉妹の様だ。


眠くて、柔らかくて、温かい。
幼い吸血鬼の意識は深い眠りの中へと・・・



ふぅ・・・
「ひゃぁっ!?」


ぞくりとした。
脊髄のトンネルを通って覚醒の信号が足の先まで駆け巡る。

熱っぽい吐息がレミリアのうなじをくすぐったのだ。

「ちょっと、何するのよ」

レミリアは咲夜を引き離す。

「うわっ、待って!」

それでも咲夜の白い手が、同様に真っ白なレミリアの脚を蛇のように這い上がっていく。
ゆっくりと、ていねいに。まるで舐め挙げるように。

「止めて、止めてよぉ・・・」

そんな言葉、発するだけ無駄だ。
咲夜の手はスカートの中に潜り込み、太股を越えて、尻を迂回して脚の付け根へ。
レミリアの小さなところ。レミリアも持っている、彼女の秘密の場所。

トン、トン
「・・・んっ!」

ノックする様に、軽く指で突いた。



トン、トン
「さっ、咲夜ぁぁぁ」

トン、トン
「やめなさ・・・ぁぁ」

トン、トン
「だからちょっと待っ・・・くぅぅ」

咲夜は何も言わない。
言葉でなく指先のノックで繊細なコミュニケーションをとる。

頬を薄桃色に染め、少し笑みを浮かべ、主をじっと見つめて。
イタズラっぽい、それでいて真剣な、挑発するような、甘えるような表情。
まるで母親を見上げるような、若しくは愛娘を見守るような視線。



「ば、馬鹿じゃないの!? ふざけないでよ」

何とか力を振り絞り、レミリアは再び寝返りを打つ。
咲夜に背を向ける格好になった。
それでも咲夜の指からは逃れられない。
腰を回って、まるで誘導ミサイルの様にもう一度、同じ場所に行き着いた。

「ふぁぁっ! いい加減にしないと怒るわよ?」

勿論、レミリアの口から出る言葉など既に何の意味もない。
今度は指が下着越しにスリットの上を優しく走る。

「ま、また・・・?」

触れるか触れないかの、微かな刺激。
それでも、そんな弱い摩擦がゆっくりとレミリアを蕩けさせていく。

「あぁぁぁぁ・・・駄目ぇぇ・・・いやぁぁぁ」

表面を軽く撫でるだけの指先は、次第に深く擦り上げるようになっていた。
動きも単調な往復運動から、弱いところを重点的に責めるジグザグ運動へと。

「うわぁぁぁ! お願い!! 許してっ!!」

これを境に、レミリアの声質も変わってきた。
戸惑いの混じった吐息から、ハッキリと聞こえる艶声へ。

「やぁぁっっ! あぅぅぅ・・・ん! くぅぅぅぅぅ」

指の動きは更に進化。
折り返し地点、少女の小さな小さな突起を・・・こね回すようになった。

「あっあっあっ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



クリクリクリ・・・コリコリコリ・・・
「お嬢様ったら・・・こんな場所で勃起なんて、恥ずかしいですわ」

「おおおおっ!! うわぁぁぁぁ!! やぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

クリクリ、コリコリ、クリクリクリ、コリコリコリ・・・

咲夜の屈辱的な言葉も、もうレミリアには届かない。
仮に届いていたとしても、肉芽が膨れ上がっていくのを止める事は不可能だろう。
誇り高き夜の王は、従者の指先一つで踊らされていた。

「それにここをこんなに濡らして・・・いやらしいお嬢様です」
「あ・・・?」

いつの間にか咲夜の指は下着の中に入り込み、レミリアと直に接していた。
レミリアもそれには気が付いたが、抗えないことは分かっている。
ただ、咲夜の思うままに。彼女に翻弄されるだけ。



つぷっ!
「ひぃあ!?」

ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・
「あっあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ」

長いしなやかな指が、レミリアの内側へ入り込む。
肉を押し分け、粘膜の坑道を突き進む。
そして一番奥に到達した後、先端を折り曲げ、指先を壁に押し付けながら戻っていく。
これを何度も何度も繰り返した。

ぬちゃ・・・くちゅ・・・じゅぷ・・・

もう一方の手も薄い胸板を這い回り、服の上から小さな突起を押しまわす。

「いやっ! やぁぁっ! あふぅっっ!!!」
「ふふ、分かりますか、お嬢様? 私の指がお嬢様の中に入っていますよ?」
「わ、わからっ! あはっぁぁぁ!!!」

ちゃく・・・くちゃ・・・くちゃ・・・

蜜が絡んだ白い指が、店内の照明を反射して銀色に光る。

「私は分かります。お嬢様の中、ヒダヒダがいっぱい絡み付いて・・・」
「やだぁっ! そんなことっ・・・」

ぐちゅ・・・じゅる・・・ぐちゅ・・・

白とピンクと透明、2色の水彩絵具と水が混ざり合っていくかのようだ。

「お嬢様がこんなに凄いヒダヒダを持ってるなんて、他の人は誰も知らないでしょうね」
「言わないっ・・・でっ! 恥ずかしっ・・・やぁぁっ!!」



「それに、ここ・・・」

突然咲夜の指の動きが変わった。
前後運動を止め、一番奥をムニムニと踏み荒らすようにマッサージする。

グリグリグリグリグリグリグリグリ・・・・・・

「このプニプニしたところが・・・いいんですよね」
「あっ! やっ!! ふぁぁん!!! うわぁぁぁぁぁ!!!」
「図星、ですね」
「だめっ! いやっ!! あむぅぅぅ! あぁぁぁ! あぁぁ!」

鍵を回すように、挿し込まれた指が手首ごとグルリと一周する。
もう一度回って定位置に戻る。

「それにしても、レミリア=スカーレットの弱点がこのプニプニなんて、もし皆に知られたら・・・?」
「やだぁっ! いっ、言わないでぇぇぇ!」
「勿論言いませんよ? お嬢様のヒダヒダも、プニプニも、二人だけの秘密です」

信じられないくらい恥ずかしい言葉が飛び出してきた。
それでもレミリアはその言葉に耐えるだけ。
もう、完全に屈服していた。

グリグリグリグリグリグリグリグリ・・・・・・

「うわっ! うぅぅあぁぁぁっ! くぅぅぅぅぅっ!!!」
「そろそろ限界みたいですね。ここでイってしまわれますか?」
「え・・・!? やだっ! イくのやだっ! やだぁぁぁぁぁっ!!!」

「何が嫌なんですか? お嬢様はこんなに・・・歓んでいるというのに」

グリグリグリグリグリグリグリグリ・・・・・・

(嫌だ・・・だって、こんな所でイったら・・・咲夜がロリコンで逮捕されちゃう・・・)

快感の高波に浚われてしまわぬよう、必死で、必死で耐えるレミリア。
しかし、今の彼女は例えるなら沈み行く船に乗った船乗り。
救命ボートも無く、どんな努力をしても最後には溺れる。そんな儚い運命。



「おっと、ここが寂しそうですね。最後はここにしましょうか?」

外に残った親指が穴の上、皮を被った小さな肉の粒にあてがわれる。

「では、剥いて差し上げますよ」
「ま、待って! 剥いちゃ駄目ぇっ・・・」

ビチッ!
「あくぅっ・・・」

親指が包皮を持ち上げ、固く勃起した桜色の真珠が勢い良く飛び出した。

「あ・・・うぁぁ・・・うぅぅ・・・」

最後に残った皮のフードまで取り払われ、無防備な肉豆が冷たい外気に晒される。

この瞬間、レミリアは悟った。自分の敗北を。
舐める、吸う、摘む、こねる、弾く、擦る。
咲夜の次の行動が何であれ、それがとどめとなる。
なすすべなく惨めに絶頂する自分の姿、そのイメージがハッキリと浮かび上がった。

でも、もう悪い気はしない。
むしろ、その悲惨な最期を望んですらいる。
その証拠にこの時、レミリアはこんなことを思っていた。

(早く・・・早く私にとどめを刺してよ、咲夜)



ブブブブブブブブブブブブブブブ・・・・・・

すると、どこからか聞こえて来る振動音。
目を開けるとそれは小型の足裏マッサージ機のものだと分かった。

「さあ、いきますよ。イって下さいな」

結局、この従者は主に対して一片の情けすらかけてくれなかった。
最初から最後まで、初志貫徹して非情。
そして一切の容赦の無いとどめの一撃。



ブブブブブブブブブブブブブブブ・・・・・・

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」

ブシャァァァァァァァァァァァ!!!

その瞬間、レミリアの身体は背骨が折れそうなほど仰け反り、高く潮を吹き上げた。
それから何度も激しく痙攣し、小便を垂らす。



ジョロジョロジョロジョロジョロジョロジョロ・・・

「あっ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


「あらあら、ベッドもマッサージ機もびしょ濡れ。これでは私達が買わないといけませんねぇ・・・」

「はぁ、はぁ、ねぇ、咲夜ぁ・・・」
「はい。なんでしょうか?」

「喉渇いた。何か冷たいもの、食べたい」
「かしこまりました。お嬢様」

咲夜は優しく笑って見せた。









「ここが私が言ったアイスクリーム店です」
「ふぅん。小さな店だけど、入ってやるとしますか」

レミリアはそんな事を言ったが、内心ではワクワクしている。
なにせ、待ちに待ったアイスクリーム屋なのだ。

「それじゃ、何にしようか? ・・・って、あれ?」
「いらっしゃいませ。・・・ん? レミリアさん!?」

店内に入った時、二人はとても驚いた。
ショーケースの向こう側にいた店員、緑のロングヘアーの少女は守矢神社の風祝、東風谷早苗だったのだ。

「ちょっと貴女、どうしてこんな所に?」
「バイトですよ。ちょっと欲しい物があるので」

店の制服に身を包んだ早苗がそう答えた。

「ま、いいか。何かオススメのアイスはあるかしら?」
「はい。ドライアイスなんか、いいと思いますよ?」
「はぁ? 馬鹿じゃないの? そんなの食べられる訳が無いじゃない」

「諏訪子様もドライアイスが大好きで、いつも美味しそうに食べているんですよ」
「お嬢様、こいつ頭がおかしいみたいです。放っておきましょう」



「えーと、それじゃこの『ピーチメルパ』ってのを」
「では私は『コットンキャンディ』にします」

「はい、分かりました。今すぐ・・・ふぁぁ!?」

「・・・??? どうしたのよ?」

「い、いいえ。何でもありませんよ。はい、どうぞ」
「変な奴・・・」

今の早苗の妙な声に疑問を持ちつつも、二人はアイスを持ってテーブル席の方へ向かった。



「くぅ・・・うふふ、今のは危なかったですね。諏訪子様?」

びちゃ、くちゅ、じゅるる
「むぅ、むぐう・・・」

カウンターの裏側、客にとって死角の位置に諏訪子がいた。

「ほら、怠けないでしっかり舐めてくださいよ」

ちゅる、ぴちゃ、ぴちゃ
「むぐぅ、むぐっ・・・」

今の早苗はショーツを穿いてない。
むき出しの股間を、諏訪子の口に押し付けている。
そして諏訪子は必死で早苗の秘部に奉仕しているのだ。

「あっ、そこ、いいです! もっと、もっとぉ!」

じゅる、じゅるる、じゅるるるる
「ぐぅ、ぷはぁ、むぐぅ? ん〜〜〜〜〜〜!」

早苗は諏訪子の頭を掴み、乱暴に自らの性器に押し付ける。
彼女は息が出来ないのを我慢して、そこを舐め続けた。

「いいです。最高ですよ、その表情。正に私の奴隷って感じです」

ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
「んっ、んんん〜〜〜」

口の中に広がるアンモニア臭に耐えながら、ひたすら舌を動かす諏訪子。
早苗から見れば、そんな諏訪子が上目で自分を見上げている。涙さえ、浮かべながら。
その姿が何よりも、早苗の支配欲を満たすのだ。

「どうですか? 悔しいですか? 諏訪子様?」

くちゅ、れろ、くちゅ、れろ
「むぅ・・・」

「でも逆らっちゃ駄目ですよ。今の私はアイスクリーム屋で、諏訪子様はその奴隷なんですから」

「・・・・・・・・・」

「分かったら、もっと舌を使ってくださいよ!」

ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ!
「むぐぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

考えて見ればこれほど屈辱的な事は無い。
神が人間、それも自分に仕える筈の風祝の性の道具にされている。
何と言う罰当たりだろうか?

しかし事もあろうに諏訪子は・・・興奮していた。
アイスクリーム屋の店員と、その奴隷。
その関係が神の御身体を熱くさせるのだ。

自分でも気が付かぬうちに諏訪子は、自らの股間を擦り上げていた。



「あらあら、いけませんねぇ。諏訪子様?」

「ひぎぃ!?」

早苗の素足が諏訪子の手を押しのけ、その秘裂を踏んづけた。

「奴隷にされて興奮して、こんな所でオナニーですか!? 立派な変態ですね」
「あがっぁぁ・・・やめっ・・・さなえぇぇ・・・」

愛液に塗れた小陰唇を足の指で器用に開く。
充血したクリトリスを親指で捏ね繰り回す。
爪の先で尿道口を引っ掻く。
どれも人が神にしていい行為ではない。

もし、これを拒むことが出来たら・・・
こんな行為に感じずにいられたら・・・
諏訪子にとって、それはどれだけの救いになったことだろうか?



「ああっ、うんっ、はぁぁぁっ・・・」
「ふふ、どうしたんですか? そんな声を出して」
「いやっ、きゃぁぁ、ひぃぃあっ・・・」

「もしかして、感じているとか? 大事なところを私に足蹴にされて?」
「ちがっ、やぁっ、そんなんじゃ、ふあああぁっ・・・」

「全く、諏訪子様は最低ですね。こんなスケベな神様じゃ、信仰も無くなりますよ」
「言わないでぇ・・・言わないでぇ・・・いやぁぁぁぁ!?」

早苗に責められるたび、諏訪子の中で何かが崩壊していく。
このまま祟り神、洩矢諏訪子は消え去ってしまいそうな。
そしていやらしくて浅ましい、この世で最も恥ずかしい生き物になってしまいそうな。

そんな気がしてきた。



「こんな変態には、やっぱりお仕置が必要ですよねぇ?」

「お・・・おねが・・・もうや・・・あがぁぁぁぁぁ!?」

「これでイきなさいよ! この淫乱神!!!」

遂に指が、諏訪子の膣に潜り込む。
足の親指なのに、信じられないほど奥まで入って・・・
諏訪子の最深、絶頂スイッチを押し込んだ。



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」



ブシャァァァァァァァァァァァ!!!
ジョロジョロジョロジョロジョロジョロジョロ・・・
ブリッ! ブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリ・・・

神が潮を吹き、小便を垂らし、ゼラチン状の卵を幾つも吐き出した。
目の前にチカチカと、星が瞬いた。


「あ、ははははははははははははははははははっっっ!!!
 最低っ! 最低ですよっ! 諏訪子様っ!
 こんな所でアクメ晒してっ! 潮柱おっ立ててっ!
 お漏らししてっ! おまけに卵まで産み落としちゃうなんてっ!!!
 最低っ! 最低の神様ですよ!!!」


「あぅ・・・」



「ちょっと! 何よ? これは!?」

その時、席にいたレミリアが怒鳴りつけてきた。
早苗は急いで元の営業スマイルに戻る。

「は、はい。どうかしましたか?」
「どうもこうもないわよ! これ、見なさい!」

レミリアが食べていたアイス、その中に蛙の卵が混入していた。

「あっ、しまった・・・」

何がどうなってそんな所に入り込んだのかは皆目分からない。
分からないが、食べ物を扱う店で産卵なんてするものではない。
それだけは確かだ。

「も、申し訳ございません! すぐに変わりのアイスを・・・」
「変わりなんていらないわよ。だけどね・・・」

「うぐぅっ!?」
「私にこんな気持ちの悪いものを食べさせた罪は、キチンと償って貰うわよ?」

レミリアが早苗の首根っこを掴み、その身体を高く持ち上げた。

「やめって・・・痛い! 痛い!」

キリキリと締め上げられる早苗の首。
当然、息が出来ない。当然、苦しい。

「あが・・・たすけ・・・諏訪子さ・・・」
「ぐぇ・・・早苗・・・足! 足! 締め付けないで・・・」

早苗が知らずに取った行動だが、実は足で諏訪子の首を強く締めていた。
それは溺れる者藁をも掴む、と言ったものかも知れない。

「ゆる・・・ひてぇ・・・」
「さな・・・くるひぃ・・・」

余りに人間離れした握力で締め上げるレミリアの手。
これが吸血鬼の力なのか?

およそ人間とは思えぬ力で締め付ける早苗の足。
死に瀕した者はこれほどの力を発揮するのか?



「お嬢様!!!」

遅ればせながら、咲夜がテーブル席から駆けつけて来た。
そしてレミリアに対してこう言うのだ。

「ファ・イ・ト!!!」



ボキィッ!!!

「ぐへぇぁぁ!!」
「あうぅぅ!!」

二つの頚椎は同時に砕けた。



「全く、なんて店よ」
「申し訳ございません、私が付いていながら・・・」
「あ、そう言えばそろそろ30分経つんじゃない?」
「そうですね。急ぎましょう」

こうして、一人と一柱の命は儚くも散った。
願わくば、諏訪子が産み落とした卵、それから生まれる子らが実り多き一生を過ごさんことを・・・









「で、どこ行ってたんだよ?」

「どこって・・・ハンコがないから買いに行ったんでしょ?」
「どうしてハンコ一つ買うのにこんな時間がかかるのさ?」
「馬鹿ね、あんたら庶民と違って貴族の買い物ってのは時間がかかるものなのよ」

「いいから早くしてよ。もう、そのハンコ押すだけなんだろ?」

「うふふ、感謝しなさい? これが記念すべき私のハンコ第一回目よ」
「感謝するから、早く」

「あら、しまった」
「どうしました? お嬢様」

「朱肉がないわ」
「じゃあハンコはいらな・・・」

「ハンコと一緒に付いて来たんじゃないんですか?」
「いや、これが付いてないのよ」

「だから、ハンコはいいって」

「これは困ったわね」
「しょうがありません。店内で朱肉を買いましょう」
「それもそうね。行きましょう」

「ああ! 待って! またどっか行く気なのか!?」

「咲夜、朱肉の場所は分かるかしら?」
「ええ。恐らく文房具コーナーに」



「お客様ッ!!!」
ダンッ!!!

「「・・・?」」

その声と音に振り返ると、にとりが鋏を自分の掌に突き刺していた。

「ほら、お客様? 朱肉の代わりにこの血を使えばいいじゃないですか。早く、サインを・・・」

「うわ! 何こいつ? キモい」
「これはドン引きですね・・・」






買い物は全て終わった。
他の商品もレジで会計を済ませ、二人は入り口まで戻っていた。

「何だかんだあったけど、無事に終わって良かったわね」
「はい。あのラックならタオルをどんなに乗せても壊れることは無いでしょう」

「それにしても、ホームセンターって私は初めてだったけど、結構楽しかったわ」
「気に入って頂けましたか?」
「うん。こんな買い物も悪くないわね」

「そうですか。では、もし宜しければまた今度・・・」
「そうね。また、一緒に行こうか?」

「ええ、次は妹様も一緒に」

「フランも・・・?」

「はい。妹様もきっと気に入ってくれると思います」
「・・・・・・そう」
「・・・お嬢様?」

また少し、イラッとした。
『一緒に行こう』と言うのはそういう意味ではない。
それを分かってくれないのは、少し寂しい。



「あ、あの・・・」
「うん?」

所々破けた服、古くなって汚れたから傘。
二人の前に、みすぼらしい格好の少女が現れた。

「何よ? 貴女」
「あの、その、お金、恵んで下さい。お願いします」

彼女、多々良小傘は物乞いだった。

「嫌よ、なんで私が貴女なんかに」
「そ、そこをなんとか・・・お願いします・・・」



ここ1年ばかりの間、小傘の身には災難ばかりが降り掛かる。
まず去年の暮れ辺りから、まともに人間を驚かせられていない。
元々酷い成功率だったが最近はもう、話にならない。
これは妖怪の彼女にとっては死活問題である。

次にあの新参の巫女の存在。
去年、あいつと偶然会ってしまったのが運の尽き。
ちょっと出歩いただけなのに、妖怪退治だと言って襲い掛かってくる。
小傘は弱い、虐めるのに手頃な妖怪としてマークされてしまったのだ。
お陰で街道で村人を待ち伏せするのにも一苦労。

それだけではない。
あの巫女に何度もやられているせいで、世間からはザコ妖怪のレッテルを貼られてしまった。
そのせいで小傘の妖怪としての格は下がるばかり。
ますます落ちていく狩りの成功率。
更に増長する新参巫女。

負の螺旋を転げ落ち、結局物乞いまで身を落とす羽目になった。



「しつこいわね・・・」
「お願いします。お金が駄目なら、食べるものでもいいんです」

「お嬢様、もうこいつは始末してしまいましょう」
「ひっ、ひぃぃっ?」

咲夜が業を煮やしてナイフを取り出す。
刃がギラリと冷たい光を放ち、小傘を怯えさせた。



「待ちなさい。やっぱり気が変わったわ」

レミリアから待ての合図。

「え・・・? 気が変わったって・・・?」
「お金を恵んでやるって言ってるのよ? 欲しいんでしょう?」

「ほ、本当ですか?」

小傘の表情が一気に明るくなる。
その一方で、レミリアは歪な笑みを浮かべていた。

「ただし私の言う通りにしたら、の話だけどね」
「言う通り・・・って?」

なんて事は無い。
レミリアは、単にこの不幸な少女を虐めて憂さ晴らしがしたいだけなのだ。

「咲夜?」
「はい。今すぐに」

何も聞くことなく、咲夜が消えた。
2人にとってはこの程度の以心伝心は当然と言ったところか。

「それじゃ・・・まずはね・・・」

改めて目の前の乞食少女を見る。
頭のてっぺんから、つま先まで。
それこそ、品定めでもするかのように。

薄汚れてはいるが、まだあどけなさの残る少女。
そしてその顔に浮かんだ恐怖の表情。
まるで捨てられた子犬のよう。
これは虐め甲斐がありそうだ。



「パンツを脱いで貰おうかしら?」
「ええっ・・・!?」

「嫌ならいいのよ? お金、欲しくないって言うなら」

「脱げば、お金くれるんですね?」
「当たり前よ」
「・・・分かりました」

意外とあっさりと了承する小傘。
よほど金に困っているのか?
それとも乞食少女にとって、この程度のことは日常茶飯事なのか?

とにかく、少女はスカートの下に手を潜らせた。

「で、では、脱ぎます」
「早くしなさい」
「はい・・・」

スルッ・・・

上半身を少し前に屈めながら、少女は下着を足元まで下ろす。
そして右足、次に左足を持ち上げて完全に脱ぎ終えた。

「うぅぅ、スースーするよ・・・」

小傘は心細くなった下半身を、スカートの上から押さえ付ける。



「それ、寄越しなさい」
「・・・・・・」

無言で手渡された布を広げてみる。
向こう側が透けて見えるほど擦り切れていて、それでもしっかりと黄色いシミが付いていた。

「匂うわね、ちゃんと洗っているのかしら?」
「うるさい・・・・・・」

下着すら買えなくなっても、小傘は少女だ。
あまりに残酷な言葉が胸に突き刺さる。

「も、もういいでしょ?」
「うん?」
「言うこと聞いたから・・・お金、頂戴よ!」

「まだ駄目よ」
「へ・・・?」

「これ位じゃ、ビタ一文出せないわね」
「そんな! 話が違う!」
「あら? 私はパンツを脱いだらお金をやるなんて、一言も言ってないわ」
「く・・・」



「お嬢様、買って参りました」
「ああ、ご苦労様」

そこに咲夜が戻ってきた。
咲夜が買って来たもの、それは・・・

ステンレス製のワイヤーロープ、直径0.81mm、100m巻き。



「そんなもの、何に使うのよ・・・?」

一気に小傘の顔が青ざめる。
どう考えても、目の前の吸血鬼はロクな事を考えていない



「これをね、貴女のおしっこの穴に入れるのよ」

「は・・・はぁ!?」
「10cmごとに1000円あげる。どう? 面白そうでしょ?」

「ば、馬鹿じゃないの!? あんた達!!!」

小傘は耳を疑った。
いくら乞食になったからって、こんな公衆の面前でそんな変態的な行為をするなんて。
この2人は何を考えているのだろうと、心底軽蔑した。

第一、10cmで1000円は微妙にケチだ。

「あら? やらないの?」
「お断りよ! 誰がそんな事、するものですか!」

「でも、お金が欲しいんでしょ?」
「いくらなんでも、限度ってものがあるわよ! 頭おかしいんじゃない!?」

「言ってくれるわね・・・どうしてもやりたくないの?」
「やらないわよ! いいからもう、下着! 返してよ!」

「まあ、もう降りられないんだけどね」



「えっ? きゃぁぁぁっ!?」

レミリアが目にも留まらぬスピードで小傘の背後に回り、彼女を羽交い絞めにした。

「放っ・・・放してっ! 放してぇ!!!」
「では、私が入れさせて頂きます」

咲夜が片手にワイヤーロープの先端を持って小傘ににじり寄る。

「やめてっ!!! やめてぇ!!!」
「ほら、暴れちゃ駄目よ」

小傘は全力で縛めを振りほどこうとするも、ビクともしない。
まるで鋼鉄製の枷でも嵌められられたかのようだ。



「いやぁぁぁ! こないでぇっ!!!」

遂に咲夜が彼女の目の前まで到達し、そこで小さく身を屈める。
そしてカーテンでも開けるかのように、最後の布を捲り上げた。

それと同時に、鼻をつく強烈なアンモニア臭。
咲夜はワザとらしく顔を歪めてこう言った。

「・・・臭いわね。女の子がこんなに不潔にしちゃ、駄目よ」
「ちくしょう・・・グスッ・・・ちくしょう・・・」



しかし咲夜は内心ではそれほど嫌がってはいない。
ふっくらとしたクレバスから、ほんの少しはみ出した肉身。
その上部には、申し訳程度に生えたエメラルドグリーンの産毛。

実にいい。いい感じだ。
この少女が乞食でなければ良かったのに。

例えばそう、あの陰毛を舐め上げる。
肌の滑々と、舌に絡みつく数本の柔らかいザラザラ。
歯で挟んで数本引き抜いてしまうのも、いい。

それから恥丘全体を、円を描くように舐めまわし・・・次第に半径を縮めていって・・・
あのスリットを滑走路にして一気にテイクオフ! そしてゆっくりとランディング。

いや、本当に惜しい。
そんな事をしたら確実にお腹を壊してしまう。
せめてもう少し清潔だったら『お掃除』してあげるのに。

舌のモップで拭き掃除。
恥垢を全て舐め上げて、おしっこの臭いが消えるまで。
綺麗好きの本領発揮だ。
特に女の子の汚れやすいところを丹念に・・・



「咲夜!?」
「あっ! はい、すみません!」

主の一喝で我に返った。
不覚である。今、自分に課せられた責務、それを果たさないといけないのに。



「では、いきますね」

指でスリットを割り開き、蕾の内側を確認する。
いよいよワイヤーの先端が小傘のか弱い排水口へと迫る。

「やめてっ! お願いっ! やめてぇぇぇ!!!」
「あ! こら! だから暴れるな!」

当然、小傘は激しく抵抗した。
上半身は完全に押さえ付けられているが、自由な下半身を必死にバタつかせる。

「ちょっと、これじゃ入れられないじゃない!」
「やだぁっ! やだぁぁっ!! こんなの、いやだぁぁぁぁぁ!!!」

「だから動かないでよ! 狙いが定まらないわ」
「どうか、どうか許してぇぇぇぇ!!!」



ブチィィッ!

「え・・・?」

その時、小傘の下半身に刺すような違和感。

「クスクス・・・馬鹿ね。あんまり暴れるから、違う穴に入っちゃったじゃない?」

咲夜が先程、ゴミ箱の中で見つけた割り箸。
それがもう一つの穴、ヴァギナに挿し込まれていた。

「嘘・・・嘘でしょ・・・?」

「貴女が悪いのよ? 大人しくしていれば・・・・・・ん? これは?」

膣口から始まり、割り箸を伝って、咲夜の手まで。
鮮血が一筋の河となって滴り落ちた。

それを見て2人は残酷な笑みを浮かべる。



「貴女、処女だったのね! ごめんなさい! ウフフフフフフ」
「悲惨よね! 初めてが、誰かの使用済みの割り箸なんて! アハハハハハハハ!」

「あ・・・あ・・・あ・・・あ・・・・・・」

『処女』
そんな単語がホームセンターの入り口に響いた。
当然のことながら、周りの買い物客の視線が集る。
集らざるを得ない。

しかし、相手は世にも恐ろしい吸血鬼とその従者。
たかが乞食なんぞの為に命を張る馬鹿など、いる訳が無い。
勿論、小傘に抵抗する気力はもう残っていない。
あとは悪魔達の思うがまま。



つぷっ!
「あ・・・」

「入りましたよ」
「いいわ、どんどん入れちゃいなさい」

誰にも邪魔されず。



ぬぷ、ぬぷ、ぬぷ、ぬぷ・・・
「あ、あ、あ・・・」

「意外と入りますね」
「そうね、凄いわ!」

悠々と。



ぬぷ、ぬぷ、ぬぷ、ぬぷ、ぬぷ、ぬぷぷぷぷぷ・・・
「あ・・・・・・あ・・・・・・」

「本当に凄いです! 1m越えました!」
「これは2mはいけそうね!」

ただただ、悠々と。






「記録は・・・2m26cmです!」
「あー、楽しかった」

「ぅ・・・ぅ・・・ぅ・・・」

「それじゃ、またね。貴女には驚かされたわよ!」
「お嬢様、お金は?」
「ん? ああ、そうそう。そういう約束だったよね」
「2万2千円になります」

ちゃっかり端数は切り捨てだ。

「ところで咲夜、このワイヤーって幾らした?」
「はい。2万2千円です」

「あら!? ちょうどいいじゃない! それじゃお金の代わりに、このワイヤーあげるわ!」
「私達にはもう、必要ないですからね」



「それ! 出してあげる」

とどめにレミリアは、小傘の中に入っていたワイヤーをグイッっと全て引っ張り出した。

「きひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!????????」

絹を裂くような断末魔。
それを最後に小傘は動かなくなった。

「それじゃ、さよなら! 可愛い乞食さん!」



「ぅ・・・ら・・・め・・・し・・・・・・や・・・・・・」

一人残され、股間の周りに血の水溜りを作った少女。
彼女を助けてあげる者は、誰一人いやしない。















「・・・と、こんな風に私達が苦労して買ったのよ?」

その翌日の夜、再び紅魔館の広間にて。
またもや全住人による大集会が開かれた。

「あんた達、それだけ雁首揃えて留守番もロクに出来ないって、どういうことよ!?」

レミリアはカンカンだ。
本当ならこの日届く筈だった荷物。。
この場にいる100名以上、全員がそれを無視したのだから。



「これから一人ずつ尋問するわよ。まずは美鈴! 貴女は何していたの!?」
「わ、私ですか?」

最初に名指しされたのは美鈴だった。
荷物が来た時、彼女は勤務中。正門にいたのは間違いない。

「そうよ。玄関ベルの音は貴女にも聞こえてた筈よ。どうして出なかったの?」
「あ、あの、すみません。私の専門は門なので、玄関のことはちょっと・・・」
「チッ、それなら仕方が無いわね」

何とか責任を逃れることが出来て、美鈴はホッとした。



「次に小悪魔! 貴女は!?」
「パ、パチュリー様が急に発作を起こして、その手当てをしていました」
「当然、ベルは聞こえていたのよね?」
「は、はい。ですが、きっと誰かが出てくれると思って、パチュリー様の看病を続けてました」

「全く、だから貴女は駄目なのよ。人任せにする前に、自分から率先して動きなさいよ」
「ごめんなさい・・・」



「それじゃ、パチェ。貴女はどうしたの?」
「え、私?」
「小悪魔がベルを聞いたって事は、一緒にいた貴女にも聞こえてたんでしょ?」
「いや、確かにそうだけど・・・」

「その時、出てくれれば良かったじゃないの。私達、友達でしょ?」
「だって無理よ。今、小悪魔が言った通り、その時私は・・・」
「酷いじゃない! パチェはいつでも私の味方だって、信じてたのよ? なのに・・・」

「・・・ごめんなさい」



「さあ、次は貴女ね。どうして出なかったのかしら?」

今度は一人の雑魚メイドが名指しされた。

「あ、あの、その、えっと、私は、その」
「どうした? 答えられないの?」

「中庭にいたので、ベルの音が聞こえなくて・・・」
「見え透いた嘘付かないで。外にいたって十分聞こえるのよ?」
「う、嘘じゃないです」

一応、嘘ではない。
彼女は中庭で遊びに夢中だったため、玄関ベルの音に気が付かなかったのだ。



「お嬢様、お言葉ですが」

その時、妖精達の中でもそれなりに頭のいい者が立ち上がった。

「どうしたのよ?」
「私達妖精メイドは現在、全面スト中です。業務には当然、来客への対応も含まれている訳でして」
「つまり、何が言いたい?」
「我々が責任を問われる謂れは無いということです」

「生意気ね。猪口才な知恵ばかり身に付けて」
「心外です。スト権は労働者に与えられた当然の権利です」

そうだそうだと、周りのメイドも立ち上がる。

「使えない癖に、権利だけはしっかり主張するのね」
「なんと言われても、こちらの要求が通るまで我々はストを続行しますよ」

「これは厄介な事になりましたね」
咲夜が腕組みして呟いた。



「じゃあ、最後にフラン! 貴女はどうして出なかったのかしら?」
「う、うん。私はね・・・」
「正直に言いなさいよ? 家にいたのは分かってるんだから」

するとフランはなんとも気まずそうに、こう答えた。

「・・・寝てた」

「はぁ!?」

「ごめんなさい」

「ごめんじゃないわよ! あんた、館の一大事に何やってるのよ!」
「だって、凄く眠かったから・・・」
「ああ、そう! 咲夜に買って貰った人工芝はさぞかし寝心地が良かったんでしょうね!」
「ごめんなさい、お姉様」

「全く。ちょっとは皆の役に立てって、いつも言ってるじゃないの!」



「あの、妹様が眠ってしまったのもしょうがないと思います」

この日も美鈴からフォローが入った。

「しょうがないって、何がしょうがないのよ?」
「だってお嬢様がアイスクリームパーティーやるなんて言い出すから・・・結局、二徹ですよ?」

確かに、昨晩は少々無理をしすぎた。
広間の隅には、まだアイスクリームの残雪が積もったままだ。

「それがどうしたのよ? 私だって二徹よ。」

昨日より更に大きくなった隈を擦る。
目やにが取れた、と思ったらミルク粕だ。

「ですけど妹様は一番大変な搾り役を買って出た訳ですし」
「甘いわね。そんなんじゃ言い訳にもならない」
「そこをなんとか・・・」

「うるさい!!!」

ビリッビリッビリッッッ

「きゃぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

突然振り上げられたレミリアの爪。
切り裂かれた服の切れ端が木の葉のように舞い落ちる。
そして露になった二つの乳房。

広間の空気が変わった。



「アイスクリーム、食べたい・・・」
「それじゃ私、ミルク搾るね・・・」

「あ・・・ちょ、ちょっと待って下さい。皆さん、落ち着いて。
 ほら、今夜こそはゆっくり寝ないと。
 明日は荷物も届くんですし・・・」

慌てて胸を隠したが、もう遅い。
レミリア、フラン、咲夜、それにパチュリーや小悪魔、その他メイド達。
家族も同然だった者達が獣に変貌した。
そして襲い掛かってくる。スプーンを手に。






びゅるびゅるびゅるびゅるびゅるびゅる・・・・・・

「おほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

びゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ びゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ

「らめっ! らめっ! らめっ! らめぇっ! ほあぁぁぁぁ!?」

びゅっ、びゅっ、びゅっ、びゅるる、びゅるる、びゅるぅぅぅぅぅ

「おぎよょょぉぉぉぉぉぉぉぉ!? ご、ごわれるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

びゅぅぅぅーーーーーーびゅっ、びゅるる、びゅうぅぅぅぅーーーーーー

「でりゅっ! でりゅぅぅぅぅ!!!! まだでてりゅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

ぼたぼたぼた、びゅうぅぅぅぅぅぅ、びゅるるるるるるるるぅぅぅぅぅぅぅ

「んほぉっ! ほぁぁぁぁぁぁぁ! ひぬぅっ! ひんじゃうぅぅぅぅ」

びゅるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! びゅぅぅぅ! びゅぅぅぅ! びゅるびゅるびゅるびゅるぅぅぅぅ

「もうでないっ! れないっ! れないよぉぉぉぉぉ! またれるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・






ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅっ

「も・・・でな・・・・・・」

ぴゅ、ぴゅ、ぴっ・・・・・・・・・びゅるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ

「あ・・・あははは、また・・・れてるぅ・・・・・・」















ピンポーン
「にとり配送センターです! 今日こそは受け取って貰いますよー!」

・・・・・・・・・・・・

ピンポーン
「もしもーし、ま さ か 今日もいないんですかー!」

・・・・・・・・・・・・

ピンポーンピンポーン

「おーい、洒落になりませんよー! 2日連続なんて!」

・・・・・・・・・・・・

ピンポーンピンポーンピンポーン

「今日届けてくれって言ったの、あんただろ! なんでいないんだよ!!!」


ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン

「おい! ナメてんのかコラ!? こっちは遊びでやってるんじゃねぇんだよ!!!」


ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン

「いい加減にしろよっっっ!!! ええっ!? ちょっと金持ちだからっていい気になりやがって!!!」



ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン

「畜生! こっちだって好きでこんな仕事やってるんじゃねぇんだよ! 研究資金の為に仕方なくやってんだよ!! 本当はバリバリの頭脳派なんだよ! こんな肉体労働! ガラじゃねぇんだよ!!!」



ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン

「テメェ、ラプラス変換分かるのか!? ローレンツ短縮知ってっか!? 粘性解理解出来るのか!!!? 無理だろうなぁ! お前らの貧弱なオツムじゃ一生かかっても無理だろうなぁ!!! だって、馬鹿だもんな! 頭の中身空っぽだしな! え? こちとら、そんなの子供の頃にマスターしたんだよ!」



ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン ガシャンッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゲシッ ガシッ ゲシッ ガシッ ゲシッ ガシッ ゲシッ ガシッ ゲシッ ガシッ ゲシッ ガシッ ゲシッ ガシッ ゲシッ ガシッ ゲシッ ガシッ

「あっ? 私に言わせりゃお前らの知能なんてなぁ、虫と同レベルなんだよ! 蚤の脳みそで考えたのが、こんな嫌がらせか!? 馬鹿の癖に天才の私を愚弄するのか? 大体、なんでお前らみたいな低脳が幻想郷で大きな顔してるんだよ! 白亜紀みたいな連中ばかり図に乗りやがって! 天狗共だってそうだ! ちょっと腕力があるからって、上から目線でデカイ顔しやがって・・・この前なんて、ロクに理論も理解できない馬鹿記者が私の研究を茶化した記事書きやがるし・・・ ふざけんじゃねぇ! 私の研究が完成したら、テメェらなんて纏めて消し炭なんだよ! ・・・よし、分かった。こんな館、ふっ飛ばしてやる! 嬉しいか!? にとり砲の実験台にしてやるだよ! その時いくら謝っても絶対に許してやらねぇからな! お前らの時代、きっちり終わらせっからな! それまで精々ふんぞり返ってろ、このゴミム・・・」



「あの・・・」

「はっ!?」

完全に不意を突かれた。
インターホンに罵詈雑言を浴びせるのに夢中でフランの存在に気が付かなかった。

「えっと、配送の人、だよね? 怖い人じゃ、無いよね?」
「な、なんだ。いるなら早く言ってくれれば良かったのに」
「いや、結構前から呼んでたんだけど」

「まあいいか。お家の人とか、いないのか?」
「いるけど、みんな全然起きなくて」
「じゃあ、お嬢ちゃんでいいや。この荷物受け取って」
「うん!」

憔悴しきった顔から笑顔がこぼれる。
明け方近くなった頃、誰もが力尽きるように眠っていった。
そんな中、荷物を受け取るためにフランだけは我慢して起きていたのだ。



「え〜と、お届けものはラックが3台に、ベッドが1台。これでいいかい?」
「ベッドは知らないけど、ラックがあるならいいと思う」

「じゃ、ここにハンコ押して」

「ハンコ? ハンコが必要なの?」

「ああ、ないなら別にサイ・・・・・・・・・」

その時ハンコに纏わる忌々しい記憶が脳裏に蘇った。



「・・・やっぱりハンコがないなら渡せないね」

「ええっ!?」


あれだけ時間掛けて買ったハンコだ。
是非、押して貰おうじゃないか。
つまりはフランに八つ当たりしているだけなのだが。



「ほら、ここにハンコが押してあるだろ? これと同じものが欲しいんだ」
「絶対に押さなきゃ駄目?」
「だってそうしないと、もしかしたら全然違う人に渡しちゃうかも知れないじゃないか」

「私、ここの家の子だよ? お姉様の妹でフランドール=スカーレットだよ?」
「だったら、このハンコを押しておくれよ」
「でもあれは・・・」

確かに2日前、姉はハンコを買っていた。
だが散々自慢した挙句『お前にはまだ早い』と言ってそのまま金庫に入れてしまった。
勿論フランは金庫の番号など分からない。

「そう、無いなら仕方ないね。私は帰るよ」
「待って! それが無いと私達は困るの!」
「それじゃ10秒だけ待ってやるよ。それまでにハンコを持って来てくれ」



「じゅ〜〜〜〜うううぅ」

(ど・・・どうしよう・・・?)

フランは狼狽した。
やっとラックを受け取れると思ったのに、このままでは配達員は帰ってしまう。
そうなれば、きっとみんな悲しむ。

「きゅ〜〜〜〜うううぅ。 あ、そうそう、帰ったらこのラック捨てちゃうから」
「え!? えええっ!!!?」

「だってそうだろ? 2回も持って行ったのに、受け取ってくれないんだから。
 つまりいらないって事なんだろ?」

「いらなくないよ! 必要だよ!」
「それなら今すぐハンコくれよ。はぁぁぁぁぁ〜〜〜〜ちぃぃぃぃ」

(どうしよう? どうしよう? どうしよう?)

当然、にとりの言葉は嘘だ。
客に問題があるとは言えそんな事が出来る訳が無い。
それでも、フランには絶好の脅しになった。



「なぁぁぁぁぁ〜〜〜〜なぁぁぁぁぁぁ。どうした? 早く取りに行けばいいじゃないか?」

(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)

今から姉達を起こしに行くか?
駄目だ。あれだけやっても起きなかったのだ。
どう考えても時間が無い。
ではいっその事、金庫を破壊して・・・

それも駄目だ。
そんな事をしたら確実に姉は激怒してしまうだろう。
では、どうしたらいい?

「ろぉぉぉぉぉ〜〜〜〜くぅぅぅぅぅ」

カウントダウンが余計にフランを混乱させた。
情緒不安定に生まれたこの子にとって、急かされるのは何よりも苦手なのだ。

(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)

もしもこのままタイム切れになったら。
ラックが手に入らなくなったら。
紅魔館はどうなってしまうのだろうか?

まずは姉から大目玉を食らうだろう。
それだけは間違いない。
ちょうどこんな風に。






パァァァン!

「・・・この馬鹿!」

容赦の無い張り手が頬を叩いた。

「あれがどんなに大事なものか、分かっているのかしら?」
「ごめんなさい。でも、ハンコが・・・なくて・・・」

パァァァァァァァンッ!!

また姉に叩かれた。

「言い訳をするな」
「はい・・・」

「紅魔館の存続に関わる問題なのに・・・お前はよっぽど私を困らせたいらしいね」

「ち! ちが・・・」

パァァァァァァァァァンッッ!!!

「うるさい!」


「う・・・う・・・ごめ・・・ヒック・・・なさ・・・」

パァァァァァァァァァンッッッ!!!

「泣くんじゃない!!!」


「グスッ・・・はい・・・分かり・・・えぐっ・・・」

パァァァァァァァァァンッッッ!!!

「だから! 泣くな!!!」

フランが泣き止む筈も無い。
泣きたくて泣いているのではないし、止められるものならとっくに止めている。

それでもレミリアは怒りのままに妹を殴り続けた。



「ヒック・・・ふぇぇ・・」
パァァァン!

「グスッ・・・」
パァァァン!!

「うぇぇ・・・ヒック」
「いい加減にしろ!!!」
パァァンッ! パァァンッ! パァァンッ! パァァンッ! パァァンッ! パァァンッ!



・・・・・・・・・

「お前の泣き顔見ているとイライラしてくる。本当に不愉快だよ」
「ヒック・・・えぐっ・・・えぐっ・・・」

もうフランの顔は青痣だらけ。
涙と鼻水でグチョグチョで、泣きすぎてシャックリが止まらない。
しかし姉の怒りは微塵もおさまってはいなかった。

いや、怒り心頭なのはレミリアだけではない。



「私も同感ね」
「パチェ・・・?」
「泣けば済むとでも思っているのかしら? 全く、不愉快だわ」
「そんな、違うよ」

「私も。何と言うか、ガッカリしました」
「美鈴も・・・?」

こんな時、いつもフランを庇ってくれた美鈴まで彼女を責め立てる。

「今までずっと我慢してきたけど、もう限界ですね。妹様がここまで役立たずだとは思いませんでした」

「美鈴・・・」



「さて、咲夜はどう思っているの?」
「私ですか?」
「そうよ。貴女は怒ってないのかしら?」

美鈴と同じように、いつもフランに優しかった咲夜。
彼女にまで嫌われたら、もう館にフランの味方はいない。

「さあ、どうなのよ? 馬鹿な妹だとは思わない?」

「いいえ」

「咲夜・・・! やっぱり咲夜だけは私の・・・」



「こんな奴、妹様じゃないです。素敵なお嬢様の妹が、こんなクズな訳がありません」






・・・というようなことになるかも知れない。

「ご〜〜〜〜おぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜」

そういった絶望的な想像をしている間にも、にとりのカウントダウンは続く。
数字は遂に5を折り返した。

(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)

こんな事を考えても仕方が無いとは分かっていても、つい考えてしまう。
紅魔館の暗い未来を。






「ヒャッハーーーー!!! 壊せっ! 壊せぇっ!!」

無軌道な妖精達が廊下を蹂躙していく。
窓を割り、壁紙を剥がし、壁に穴を開けて。
とにかく目に付くもの全てを片っ端から破壊している。

ストライキ開始から1ヶ月。話し合いは一向に進まず解決の糸口すら掴めない。
次第に不満が募り、彼女達の様にグレる妖精が増えてきた。
咲夜や美鈴が館の警備にあたっているが数が多すぎるので対処しきれない。

「流石は妹様の部屋だぜ! 中々広いじゃねぇか!」
「や、止めて! 壊さないでよ!」

遂にはフランの部屋まで堂々と押し入る者も出始めた。



「おいみんな。今からこの人形の股、裂こうぜ!」
「そりゃ楽しそうだ! ヒャハハハーーーーー!」

不良妖精達はフランが一番大事にしていた人形に目を付けた。
二人が人形の足を持って綱引きのように引っ張る。

「だ、駄目! やめて!」
「あぁぁん?」
「それはお姉様に買って貰った、たった一つの人形なの!」

泣きながら懇願するフラン。
それでも妖精は、なんとも不貞腐れた口調でこう言うのだ。



「何れすかー? 妹様ー?」
「妹様にそんなこと言われてもなぁー」
「そうそう、妹様さえしっかりしていればねぇー」
「全ての元凶の妹様が何言ってるのかなぁー?」

「確かに、私が悪かったよ。でも、もうこんな事は止めてよ」

「うぇー? なにそぉれぇー? つごーよすぎじゃねぇぇぇぇのぉぉぉ?」
「そーだ、そーだ、はんせーが足りなくねぇぇぇ?」
「ここまでずーずーしーとはぁぁぁー、思ってもみませんでしたよぉぉぉぉ」

「本当に反省してる。反省してるから・・・」



「るっせーな、そーれ、ワッショイ、ワッショイ」
「ワッショイ、ワッショイ」
「ワッショイ、ワッショイ」

「やめてっ! やめてっ!やめてぇぇぇぇぇぇ!!!」

ブチブチブチ・・・ブチィ!

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」






このように、紅魔館は滅茶苦茶になってしまうかも知れない。

「しぃぃぃぃぃ〜〜〜〜いぃぃぃぃぃぃぃ」

(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)

館がそんな状態であまり長く持つとは思えない。
まず最初に、大黒柱の咲夜が倒れてしまう。






「咲夜ぁ! 咲夜ぁ!! しっかりして!!!」
「ゴホッゴホッ すみません・・・こんな時にメイド長の私が・・・」
「今頃仕事の話なんていいよ! それより死なないで! 咲夜ぁ!」

メイド長の自室にレミリアの悲痛な叫びが木霊する。

スト突入から数ヶ月、咲夜は妖精達から館を守る仕事に追われていた。
通常の業務をこなすのは時間を止めている間。
そのせいで休憩時間が無くなってしまった。

1日46時間の激務に人間の身体が持つ訳が無い。
遂に過労で倒れてしまった。
医者が言うには、今まで働けていたのが不思議なくらい。
臨界点を越えた後は、最期の時を待つだけになっていた。

「やっぱり・・・ゴホッゴホッ 人間って役に立たないですよね」
「そんなこと言うな! 死ぬな! 咲夜! 生き返って!!」
「ごめんなさい。お嬢様をゴホッ こんなに悲しませて・・・ゴホッ しまうなんて」

「咲夜さん・・・」
「咲夜・・・」

パチュリーも美鈴もフランも、2人のやり取りを見守ることしか出来ない。
溢れる涙も止められないまま。



「妹様、ゴホッゴホッ すみませんがちょと来てくれますか?」
「私・・・?」
「はい。お願いします」

フランが瀕死の咲夜の枕元に寄った。
気を使ったのかレミリアは一歩下がる。

「どうしたの? 咲夜」
「最期に妹様に言っておきたい事がありまして」

「最期!? 嫌だ! これで最期なんて嫌!」



「全て妹様のせいですよ」

「えっ!?」



咲夜はとても落ち着いた口調でこう続けた。

「あの日、妹様がラックさえ受け取ってくれればこんな事にはならなかったのに。
 どうしてくれるんですか? 妹様のせいで、私は死ぬんですよ?」

「ご・・・ごめんなさい。ごめんなさい、咲夜・・・」

「今更謝っても遅いです。
 私はこれから死にますが、忘れないで下さいね。
 十六夜咲夜は、いつまでもあなたを・・・恨ん・・・で・・・」



「咲夜!? 咲夜ぁ!!!」

レミリアは妹を撥ね飛ばし、咲夜の下へ駆け寄る。
しかしもう、息は無い。

「どうして!? どうして!? 咲夜ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「こんなの、あんまりです。咲夜さんが死んじゃうなんて・・・」
「せめてもう少し・・・一緒にいたかったのに」

3人の嗚咽が漏れる部屋の中、フランは咲夜の死を呆然と見つめる事しか出来なかった。






咲夜はきっと、最期まで自分を許してくれないだろう。

「さぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜ん」

(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)

そして咲夜亡き後、紅魔館はどうなるのだろう?
それは容易に想像できる。






「レミィ・・・悪いけど私、ここを出るわ」
「私も、お暇を頂きます。お嬢様」

「ど、どうしてよ!?」

レミリアは我が耳を疑った。

「もうかなり長い間お風呂に入れてないし、妖精達のせいで本も大分無くしてしまったから」
「私は、新しい職場で自分を鍛えたくなったのです」



あれから半年が経った。
既に紅魔館は組織の体をなしていない、ただの無法地帯と化していた。
館から離れられない姉妹はともかく、美鈴やパチュリーはずっと我慢して住んでいたのだ。

しかし、それももう限界だった。

「ま、待ちなさい! 二人とも! 待ってよ!!」

「ごめんなさい。離ればなれになっても私達は友達よ、レミィ」
「また手紙でも送ります。すみません、お嬢様」

「まっ、待って!!!」

バタンと、無情にもドアは閉められた。



・・・・・・・・・

「酷い。酷いよ。グスッ 咲夜も美鈴も、パチェも私を残して行っちゃった。
 もう、ヒック 紅魔館は終わりなのかな・・・
 ・・・そうだよね。こんなお家、誰も住みたくないよね」

寝室で一人、レミリアは泣いていた。

穴だらけのベッド、破れた絨毯、割れた窓はダンボールで塞いでいる。
外は花を全て引き抜かれ、荒れ果てた庭。
従者の一人もいない館。不良妖精の溜まり場となった我が家。
これがスカーレット一族の魂の拠り所であった紅魔館の、今の姿だ。

まるで貧乏神でも居ついたかのよう。
レミリアと紅魔館は見捨てられたのだ。

「どうせみんな・・・グスッ 私だけ残して・・・」



「お姉様・・・まだ私がいるよ」

その声に振り返ると、妹がそこにいた。

「フラン?」

「みんないなくなっちゃったけど、私だけはお姉様の妹だもの。
 これからもずっとずっと、一緒だよ」

「・・・馬鹿。こんなボロくて汚くて、メイドの一人もいない家に本当に住みたいの?」
「勿論だよ。だってここは私のお家だから」

「別に美鈴やパチェと一緒に出て行ってもいいのよ?」
「他の誰よりも、私はお姉様と一緒がいいよ」

「フラン・・・あなたって子は・・・」

フランが出て行かない理由の半分は償いだった。
1年前、自分が犯したミス。
ここに残るのはその責任を取るためでもある。

しかし残りの半分の理由は、単純に姉を見捨てたくないからだ。
だから例え自分が全く悪くなくても、フランは紅魔館に残っていただろう。
結局、この世で最も強い絆は血縁なのだから。
フランはそう考えていた。

そう考えていたのに・・・



「・・・ふざけるな」

「え・・・?」

「ふざけるな。どうしてお前だけが残る?」

「どうしてって、私達姉妹でしょ?」

「お前のせいで咲夜もパチェも、美鈴までいなくなった!
 なのにどうしてお前だけがいつまでも私の傍にいるんだ!
 おかしいじゃないか! お前も出て行けよ!!!」

「お、お姉様・・・」

「来いっ!!」
「痛いっ!」

レミリアは憎き妹の腕をぐいっと引っ張り連れ出した。

「私はただ! お姉様を一人にしたくないだけだよ!」
「ふん、お生憎様。私はね、お前と一緒にいるくらいなら一人の方がよっぽどマシなのよ!」

壁材が剥きだしになった廊下を通り、玄関へ。
かつてラックを受け取り損なった場所に、フランは突き飛ばされた。

「ほら、せめてもの情けよ!」

傘を1本だけ放り投げ、レミリアはドアを閉める。
そしてガチャリと、鍵の非情な音がした。

ドン! ドン! ドン! ドン!
「開けて! 開けてよ! 私はお姉様と一緒がいいの!」

「うるさい! 私は一人がいい! ずっと一人でここに住む!」

「そんな! 謝るから! 謝るから二人でやり直そう!
 二人で紅魔館を元の素敵なお屋敷にして・・・
 そうすればきっとパチェや美鈴も帰ってくるよ!!」

「・・・・・・・・・」



すると少しの沈黙の後、ドアの向こうからこんな声が聞こえてきた。

「フラン、私はね・・・もう一人がいいの。
 妹も従者も友達もいらない。ずっと一人がいい。誰もいらない。
 だからね、どうか私を一人にして。もう私に関わらないで」

それはとても寂しい声だった。



「お姉様・・・」

「私のせいだ・・・私のせいで・・・お姉様が一人ぼっちになっちゃった・・・」






自分のせいだ。自分のせいで咲夜も美鈴もパチュリーもレミリアも、全員不幸にしてしまう。

「にぃぃぃぃぃ〜〜〜〜いぃぃぃぃぃぃぃ」

(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)
(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)
(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)
(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)



「いぃぃぃぃぃ〜〜〜〜ちぃぃぃぃ」

(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)
(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)
(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)
(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)



「ぜぇぇぇぇぇ〜〜〜〜ろ・・・・・・ありゃ?」



「うぅ・・・グスッ・・・ヒック・・・」



「ああっ、こりゃすまない! ちょっと意地悪しすぎた!」

「・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・うわぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

「い、いや! ちょっと待って、落ち着いて、落ち着いてね」

にとりも本気で泣かせてしまう気なんて無かった。
流石に大人気無かったと反省した。

「た、確かにハンコは必要だけど、どうしても無いって時は別にサインでも・・・」



「ごめんなさい・・・」

「へ・・・? うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

突如フランがにとりの頭を鷲掴みにし、恐ろしい程の握力で締め付けてきた。



キリキリキリキリキリキリキリキリキリキリ
「いっ、痛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! やめっ!! やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「ごめんなさい! でもこのラックがないと、みんなが不幸になっちゃうの!」

キリキリキリキリキリキリキリキリキリキリ
「やめっ! おねがっ!! つぶれっ!!!」

「ごめんなさい! こうしないと、お姉様が一人ぼっちになっちゃう!!」

キリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリ
「助けてっ! 助けっ!! たすっ!!!」



「ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!」



グシャ















「はっ! 朝!?」

違う、夕方だ。
それも6時を回っている。

「畜生! 損した! すっごい時間損した!!」

不死身の上にほぼニート。毎日が日曜日。
そんなレミリアでもやっぱり一日丸々寝て過ごした時の後悔は人間と変わらない。



「ちょっと! 起きなさいよ、あんた達! いつまで寝てるのよ」

ゴスッ! 「うごぉっ!」
ゴスッ! 「あがぁっ!」
ゴスッ! 「ぐぉっ! おごぉぉぉぉっっっっ!!! うげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

一人ずつ足蹴りで起こしていくレミリア。
パチュリーを起こした時、なんか腹のキツイところへモロに入ってしまったが気にしない。



「う〜ん、何ですか、お嬢様?」
「もう少し寝させて下さいよ」

「馬鹿! 寝ぼけてるんじゃないわよ! 今日も荷物を貰い損ねちゃったじゃないの!」

「今日もですか?」
「だったら明日まで寝てましょう」

「ふざけるな!どうして荷物一個貰うのにここまで手こずるのよ!」

「うわっ! 甘っ!!」
「お嬢様の息、甘っ!!」

「私の息はどうでも・・・うわっ! 本当に甘っ!!」

周りは一面の銀世界。腰の高さに連なるバニラ山脈の遥かなる銀嶺。
その中を溶けたアイスと誰かのゲロが渓谷を作り、湖となって溜まっていた。



「いくらなんでもこれはちょっと、はしゃぎ過ぎたわね」
「お掃除が大変そうです」
「ベトベトします」

「いや、それよりも! どうするのよ? またラック受け取れなかったじゃない!」

「うわっ! 甘っ!!」
「お嬢様の息、甘っ!!」

「だからそれはもう・・・うわっ! 本当に甘っ!!」






「あ、みんな起きてたんだ」

そこへフランが広間に入ってきた。
なんだか少し元気がないようにも見える。

「ああ、フラン? どうせあんたも寝過ごしたんでしょ?
 全く、使えないよね。どいつもこいつも・・・」

「荷物なら私が貰ったよ」

「はいはい、咲夜に買って貰った人工芝はそんなに良かったの?
 さぞかし気持ちがいいんでしょうね。まるでお日様の下で昼寝するみたいで。
 あ〜あ、本当に羨ましいなぁ」

「そうじゃなくて、ラックは私が貰ったよ」



「・・・へ? ほ、本当なの!?」
「本当だよ。ほら、あれ」

フランが指差した先には幾つものダンボール箱が積まれていた。

「これ、全部フランが?」
「うん。配達員の人はこれだけ置いていったけど、これでいいかな?」

嘘だ。
本当は伝票を見て紅魔館宛ての荷物だけを残しただけだ。
他は全部死体と一緒に湖に捨てた。



「本当に、お前は・・・」
「な、何? お姉様?」

「・・・良くやったね」

レミリアはフランを優しく抱き寄せて、その頭を撫でてやった。

「お姉様?」
「ずっとお前のこと役立たずだって思ってたけど、そんなことない。お前は私の自慢の妹だよ」
「うん。お姉様も・・・お姉様も私の自慢のお姉様だよ」



しかし吸血鬼の鋭い嗅覚は見抜いていた。
フランの身体から、血生臭い匂いがすることを。



「うわっ! お姉様の息、甘っ!!」









「では、張り切って組み立てましょう!」

「へ?」
「え?」

「どういう事よ、咲夜?」
「どういうって、これは組み立て式ですから。組み立てないと使えないんですよ」

咲夜が箱を開ける。
ラックはバラバラの状態で入っていた。
どうりで小さな箱だと思った。

「何よ、面倒臭いわね」
「まあまあ、みんなで作ればすぐ出来ますよ」
「みんなって言ってもねぇ・・・」

「はい。私達は手伝いません」

妖精達のリーダー格が一歩前に出て、そう宣言する。

「あんた達が待ちに待ったラックなんでしょうに」
「組合の規則でストライキ中は働けないのです。どうかご理解を」
「ストって厄介ね。二度とやらないでよ」
「それはお嬢様次第です」



「つまり残るのは私と咲夜と美鈴とパ・・・」

「いやぁぁぁぁぁぁ!! パチュリー様が! パチュリー様が息をしていません!!」

突然、小悪魔が悲鳴を上げた。

「・・・パチェってば、いつも肝心な時に役に立たないのよね」
「はい。少しマイペース過ぎるところがあると思いますわ」

「パチュリー様! しっかりして!」






「・・・と言うことで小悪魔もどっか行っちゃったし、残るのは私と咲夜と美鈴と・・・」

「うん! 私も頑張る!」

フランが元気いっぱいに立ち上がった。

「果たして貴女に出来るかしらね?」
「で、出来るよ! これくらい」
「まあいいか、人手も少ないし。でも壊したら承知しないからね!」
「うん、分かったよ」

箱から中身を取り出し説明書を開く。
遂にラックの組み立て作業が始まった。



「全部で3つあるけど、手分けして一気に作ろうか?」
「いえ、1つずつにしましょう。その方が確実です」

「どうやら工具が必要みたいですね」
「そうね。美鈴、持って来なさい」
「それは大丈夫です。箱に同梱されている筈ですから」

「ねえ、これってここに付けるの?」
「説明書に組み立て方が書いてあります。まずは全員でそれを読みましょう。」

経験者など一人もいない。誰もが試行錯誤だった。
慎重に説明書を読み返し完成のイメージを頭に叩き込む。

そうして拙いながらも4人の間に家族の和が出来上がった。



「じゃあ、私とフランが両脚をやるわ。咲夜と美鈴は天板と中板をお願いね」
「「はい!」」

「ネジはいきなりキツく締めないで、まずは仮止めでお願いします」

「中々ネジが締まらないよ」
「妹様、それ回す方向が逆だと思います」

「美鈴、ちょっとここ押さえてくれないかしら?」
「はい。分かりました」

「ねえ咲夜、15番のネジってどれかしら?」
「あ、はい。え〜と、これですね」

「中板の高さはどうしよう?」
「少し低めにしておきましょう。うちは平均身長低いですから」
「勿論、私の方と合わせるのよ」

「すみません、ちょっとレンチを貸して下さい」
「ちょっと待ってて。ここやってから」

始めはただの鉄パイプの束だったものが、少しずつ形になっていく。
かなり完成形に近付いて来た。

しかしその時・・・






ポキッ!
「あっ!」

フランが何かをやらかしたらしい。
3人の視線がその手元に集中する。

「どうしよう? これ・・・」

4人が共同で使っていた小さなL字型の6角レンチ。
それがポッキリと折れていた。
フランが力の配分を誤ったのだろう。



「何やってるのよ! もうすぐって時に!」

レミリアが烈火の如く怒りだした。

「壊すなって、あれほど言ったじゃないの!?」
「ごめんなさい・・・お姉様」

「あーあ、どうしてくれるのかしら? これが無いと組み立てられないのに」

「え・・・? 組み立てられない?」
「当たり前でしょ? 指でネジ締めろとでも言うのかしら」

「私のせい・・・私のせいで・・・?」
「そうよ。あんたがレンチを壊したりするから・・・」

「全部、私のせい・・・?」

今更言うまでもないが、ラックが無ければ紅魔館のストは終わらない。
再び、あの白昼夢がフランを襲う。
彼女の誰よりも繊細な心は再び揺れ始めた。

全身から汗が噴出す。
肩が小刻みに震え出す。
目が虚ろを漂う。



『全部、妹様のせいですよ?』

『こんな奴、妹様じゃありません』

『フランさえいなけりゃ、こんな事にはならなかったのに』

『お前みたいな妹、いらない!』



「ちょっと・・・フラン?」



(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)
(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)
(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)
(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)
(どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう?)



「い、いえ! 大丈夫ですよ、妹様!」
「レンチくらい、何とかなりますって!」

そうしたフランの異常を見逃す筈は無い。
すぐに咲夜と美鈴がフォローを入れた。



「大丈夫・・・なの?」

「はい。ラック自体が壊れた訳ではないのですから」
「だけどレンチが無いと組み立てられないのは確かよ。どうするの?」
「ちょっと待って下さい・・・ほら、ありました!」

レミリアは同じラックを3つ買っていた。
そしてレンチは箱の中に入っていた物だ。
つまり他の2つのラックの箱には、1つずつ別のレンチが付いている。
それを使えばいいだけのことだった。

「これがあれば作れますよ」
「全く、一瞬焦ったわ」
「では気を取り直してラック作りを再開しますか」
「うん! 最期まで頑張ろう!」






それからほんの数分後。

「出来た!」
「こっちも出来たわ」
「私も終わってます」
「同じく」

とうとう、4人は担当の部位を作り上げた。
もう後はそれぞれのパーツを合体させるだけだ。

「まずは天板と中板を妹様の作った脚にはめ込みましょう」
「うん、上手く出来るかな?」

片方の脚を床に置き、そこへ板を降ろしていく。
寸文の狂いも無く、脚の穴に全ての板の突起が嵌り込んだ。

「やったぁ!!!」
「へぇ、中々やるじゃない」

「では板と脚もネジで止めて・・・これで片側は完成です」



こうしてフラン、咲夜、美鈴の作った部分が一つになった。
最期にレミリアが担当した片脚部分が加われば完成となる。

「ここまで来て失敗とかしないでよ?」
「分かってますって・・・あれ?」

先程とは逆に脚の方を上からはめ込もうとする。
しかし、ここで咲夜はおかしな事に気が付いた。

「ここ、逆じゃないですか?」
「逆だって?」

脚には天板や中板をはめ込む穴がある。
その内、一番下の板の為の穴だけが他とは逆を向いていた。

「あ、本当ですね」
「これは作り直さないといけないよね?」

しかもよりによって一番下の穴。
構造上、この脚は最初からやり直しになる。



「・・・お嬢様、ちゃんと説明書は読みましたか?」

「!!? な、何言ってるのよ、咲夜!?」
「いえ、どうもさっきからお嬢様が勘で作っているような気がしたので」
「う、うるさいわね! ちょっと間違えただけじゃない!」

「どうして今まで気が付かなかったのですか? 普通、もう少し早く分かると思います」
「何よ! そんな事、どうでもいいじゃない!」
「どうでも良くないですよ! もっと注意深く作ってください!」
「この・・・」



そこへ美鈴が追い討ちをかける。

「あ、しかもこれ滅茶苦茶固いですよ。このネジ外すのは大変そうです」
「え? そんなに固いの?」
「はい、簡単には外せそうにありません。かと言って本気でやったらレンチかネジが潰れますし」



「お嬢様、ネジは仮止めにして下さいって言ったじゃないですか?」
「だって・・・」

「しっかりして下さいよ。お嬢様の怪力でネジ締められたら二度と外せなくなるじゃないですか」
「だけど・・・」

「これ、余計な分は一台も無いんですよ? 壊れたらどうするんですか?」
「ごめん・・・」

「慎重にやれって言ってたのはお嬢様じゃないですか?」
「うん・・・」

咲夜と美鈴から交互に叱られるレミリア。
それを見ている妹はまごまごしているだけ。
誰からもフォローは無い。
すっかり針のむしろだった。



「大体、お嬢様は妹様の事を言う前に、まず自分の事に気を付けるべきだと思います」

「・・・・・・・・・っ!!」

だが咲夜の口からこんな言葉が飛び出した時、レミリアの中の何かが切れた。



「黙れっ!!!」

パァァァァァッッッン!!!

「え・・・?」

突然車に撥ねられたかのような衝撃。
咲夜は頬を思い切り叩かれた。
それから錐揉み状に吹っ飛んで、壁に激突する。


「お嬢様・・・?」

殴られた咲夜にとっては何が何だか分からない。
じわじわと頬と頭部に擦り寄ってくる痛覚。
そして数m隔てた向こうに鬼の形相の我が主。



「お姉様! 咲夜に何するのよ!?」

フランが二人の間に割り入った。
その顔には怒りが滲んでいる。

「いきなり殴るなんて酷いじゃない!」
「そう?」
「咲夜に謝ってよ!」
「嫌よ。主が従者を殴って何が問題なのかしら?」



「私も、今のお嬢様は横暴だと思います」

美鈴もレミリアに詰め寄る。

「うるさいわね。あんたも殴られたいの?」
「ですから、そういうところが横暴だと言っているのです」
「生意気を言うんじゃないわよ」
「いえ、お嬢様が反省するまでは・・・」

「生意気なのは胸ばかりにしろっ!!」

ビリッビリッビリッッッ

「なっ!?」

その刹那、目にも留まらぬ速さで繰り出されるレミリアの爪。
服が裂かれ、豊満な乳房が勢いよく飛び出した。

「口を出す暇があったら、乳を出しなさいよ! この牝う・・・」



「止めて下さい!!!」

「し・・・?」

乳首までほんの数cmまで迫った唇が止まった。

「いい加減にして下さい! 私、本当に怒っているんですよ!!!」

美鈴は叫んだ。
大きく髪を振り回し、腕を振り下ろし、幾ばくかの母乳を吐き出して。
普段、温厚な彼女からは想像も付かない程の気迫を感じる。



「う・・・うぅ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
 美鈴の馬鹿ぁっ! 咲夜の馬鹿ぁっ! フランの馬鹿ぁっ!
 馬鹿ぁっ! 馬鹿ぁっ! 馬鹿ぁっ! 馬鹿ぁっ! 馬鹿ぁっ! 馬鹿ぁぁぁぁ!!!!」

「あっ! お姉様!」

レミリアは泣きながら走り去った。


「ちょっと待ってよ! お姉様!」

「うるさい! うるさい! どうしてみんな、フランばっかり!? 酷いじゃないの!」

バタンッ! ガチャリ

そして自分の寝室へ逃げ込んで、鍵をかけた。



「どうしよう? お姉様がグレちゃった」
「これは放っておくのが一番だと思います。暫く一人にさせてあげるべきかと」
「だけど・・・」

「それより、続きを始めましょう。立派に出来上がったラックを見れば、お嬢様の機嫌も直りますよ」
「うん、そうだね」






そして数十分後。

「出来たぁ!」
「やりましたね!」
「素人が作ったとは思えない出来ですね」

遂にやった。
ガチガチのネジには悪戦苦闘したものの、遂にステンレス製ラックの出来上がりだ。

「これならきっと、妖精達も満足してくれますよね」
「ええ。何人分のタオルだってドンと来い、よ」

「・・・・・・・・・」

「妹様、どうかしましたか?」
「え? う、ううん、何でもない。早く、残りの2つも作っちゃおうよ!」

「「はい!」」






その頃、レミリアの寝室にて。

「みんなの馬鹿・・・馬鹿・・・馬鹿・・・」

この前ホームセンターで買ったベッドは、確かにフカフカで気持ちがいい。
しかしその横に咲夜はいない。
昨日枕にして眠った美鈴の乳もない。



ブブブブブブブブブブブブブブブ・・・・・・

足裏マッサージ機のスイッチを入れる。
無粋な、単調な振動しかしない。
どこに使っても何も感じなかったので、諦めて床に放り投げた。



「もう妹も従者も友達もいらない。ずっと一人がいい。誰もいらない」






「あ・・・私の息、甘っ・・・」
お久しぶりです。
セガの麻雀ゲームは二度とやらない。
大車輪
作品情報
作品集:
15
投稿日時:
2010/04/28 17:19:32
更新日時:
2010/04/29 02:19:32
分類
紅魔館
エログロ
95.0KB
話の着地点が見えてこない
適当に思うまま書いた結果
1. 狼狐 ■2010/04/29 03:29:32
終始笑わせていただきましたwwwそれ一本でSSが書けそうな場面が多々ありなにやら贅沢な気持ちにwww
2. nekojita ■2010/04/29 03:34:59
感動した。最初から最後まで面白かったです。今このタイミングでこんな神がかった物が登場してくるとは。
95KBずっとクライマックスでした。適当に書いてこうなるんだったらきっとあなたは天才です。はっきり言って歴史に名前が残ります。
歴史の教科書にあなたの名前が載って全ての受験生は『大車輪』の名前を必死で暗記するでしょう。いつの日かこんなん書けるようになりたいと心から思います。
本当に楽しませていただきました。有難うございました。
3. 名無し ■2010/04/29 04:00:25
文にとり椛辺りも翌日辺りに復活してるんだろうなこれw
4. 名無し ■2010/04/29 08:14:32
最高峰
5. 名無し ■2010/04/29 09:05:06
フランちゃん可愛い
6. 機玉 ■2010/04/29 17:56:50
凄すぎるww
読んでて全く飽きが来ませんでした
続きがあるなら読んでみたいくらいです
7. 急降下ペンギン ■2010/04/29 18:09:49
こんなにいい作品を・・・爆笑した!
8. 名無し ■2010/04/29 20:15:39
とってもカオスフルw
そして何度もぷちりな早苗さんw
9. 名無し ■2010/04/29 23:25:10
>(嫌だ・・・だって、こんな所でイったら・・・咲夜がロリコンで逮捕されちゃう・・・)
笑いすぎて椅子から転げそうになった
10. 名無し ■2010/05/01 10:52:47
ラック買うのにこの長さ…だと…?
11. TTm ■2010/05/01 15:41:59
とにかく早苗ちゃんが哀れだった・・・
12. 名無し ■2010/05/03 15:39:34
ラ ッ ク 買 え
13. 名無し ■2010/05/05 15:51:29
おもしろすぎる
早苗が何回も出てくるのにワロタ
14. 名無し ■2010/05/08 12:59:04
これ…なにこれ?いや、面白かったです。
15. 名無し ■2010/05/14 20:24:52
早苗とレミリアと咲夜が酷い事にwww
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