東方惨劇録 Episode2（Episode1の解答編）第１話

某月某日、
この日、紅魔館でパーティーが行われていた。

めずらしく、参加者が少なめな方だった。



レミリアはワインを啜った。
「少ない方って言っても結構盛り上がってるじゃない」
「そのようですね」
咲夜は笑顔で言った。
少ない方でもワイワイやっている。
「咲夜？」
「はい、お嬢様」
レミリアはあたりを見渡した。
「妖精メイドは？」
「厨房にいます」
「そ」

「あ。咲夜」
「何でしょうお嬢様」
レミリアは『あること』を思い出した。
「さっきまでバルコニーにいたじゃない？」
「そうですね」
「で、咲夜がティーセット持ってきたじゃない」
「はい」
咲夜は相づちを打った。
「それで・・・」
その時、パチュリーが来た。
「バルコニーに忘れてしまったってことね？」
レミリアは意外そうな顔をした。
「正解よ」
パチュリーは嘆息した。
「しょうがないわね私がとってくるわ」
「そう？助かるわ」
咲夜はパチュリーに「すいません。ありがとうございます」
と、頭を下げた。
それに対し、パチュリーは「いいのよ」と言った。


それから４０分後。
現在６時３０分。
パチュリーが戻ってこないのだ。
レミリアは貧乏揺すりをした。
「パチェ、遅いわね・・・」
咲夜はレミリアに訊いた。
「私が見てきましょうか？」
レミリアはうなずいた。
「少々お待ちください」


咲夜はバルコニーへつながる階段を上っていた。
あたりに、階段を上る音が響く。
コツコツコツコツ・・・

やがて、バルコニーにつながる唯一の出入り口の前に着いた。
「パチュリー様？いますか？」
パチュリーからの返事はない。
その時、ドアの向こうから誰かの声が聞こえてきた。
「咲夜さん・・・！？」
美鈴の声だった。
その声は、「ただ事ではない」と、咲夜は感じ取った。

咲夜はドアノブをひねり、ドアを開けた。
目の前には美鈴。
「あっ・・・！？」
足下には横に倒れたパチュリー。
様子があからさまにおかしい。
死んでいるのだ。
心臓部分にはナイフが刺さっていて、両腕が刃物で引き裂かれている。
手遅れだった。
「美鈴」
咲夜は冷たい感じで、美鈴を呼んだ。
「お嬢様に報告してくるわ。お客様は全員帰します。美鈴は先に戻りなさい」
「はい・・・」

咲夜は、余計な者が入るのを防ぐために、
バルコニーにつながるドアの鍵を閉めた。


咲夜は階段を駆け下りた。
やがて、パーティーが行われている大広場に着いた。
すぐさまに、レミリアに報告した。
「なんですって！？」
レミリアは驚いた。
「ですので、お客様を全員帰します」
そう咲夜は言った。
しかし、レミリアにそれは聞こえていなかったようだ。
レミリアはすぐさまに席を立ち、駆け出した。
「お嬢様！？」
咲夜は追いかけた。


レミリアはバルコニーにつながるドアの前にたった。
レミリアはドアノブに手をかけた。
ひねる。しかい、ドアは開かない。
鍵がかかっているのだ。

このドアは、内からは鍵で閉められるようになっている。

「外から閉めたわね！！」
レミリアは後ろに下がった。
「お嬢様？何を・・・」
「ドアをぶち破るわ」



その時、咲夜の脳裏にあることが浮かんだ。


パチュリー様が死んだ。
バルコニーにいたら殺される。




「お嬢様！！おやめください！！」
しかし、咲夜の声は聞こえない。
レミリアは突進を始めた。

「しかたないですわね・・・」
咲夜は時を止めた。
懐からナイフを取り出し、レミリアの心臓にさした。
そして、ドアと反対（後方）に思いっきり突き飛ばした。

「！？」
「お嬢様！？」
レミリアは後ろに大きく吹き飛んだ。

咲夜はレミリアを抱えた。
レミリアは不気味に笑い出す。
「きひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ・・・・・」
その笑い声は、「やってくれたわね、咲夜」という意味が込められていた。

咲夜は立った。
「・・・」







【ここから語り部は咲夜】
面倒なことになったわ・・・。
お嬢様が殺されるかもしれないからという考えが浮かんだからって、
頭の中が真っ白になったからって、殺してしまったなんて・・・。

私はパーティー参加者を集めた。
皆は何だ何だとざわつきながら集まってきた。
「さっき、バルコニーでパチュリー様の死体が見つかったわ」
「え・・・？？」
皆の中から驚きの声が聞こえてくる。
「さらに、バルコニーに乗り込もうとしたお嬢様まで殺されたわ・・・」
「何・・・！？」
「そういうわけで、ここから出て行くことを推奨するわ」

私の声にただ１人反応した人がいた。
魔理沙。
「わ、判ったぜ」
魔理沙は玄関まで歩いて行き、ドアノブに手をかけた。
本人は開けるつもりだったのだろう。
しかし、「開かないぜ？どうなってるんだ？」と言った。

「え？」
私は閉めていない。
玄関のドアは、外から鍵、内からは捻って開くようになっている。
だから、魔理沙は何度も捻ってみる。
しかし、何度捻っても捻返されて、開けることができないのだ。

その時、私の後ろから気配を感じると同時に、
私の頭の横を、薄っぺらいモノがかすめた。

それは、一枚の手紙（封書）だった。

私は後ろを確認する。
私が集めた人たちは、全員私の前方にいる。
だから、この人たちにはこんなことをするのは不可能だった。
お嬢様は死んでいる。
じゃあ美鈴？
いや、美鈴も、この人たちと一緒にいる。
じゃあ誰が？いったい・・・。








私はとりあえず、
参加者たちを全員客室に１人１人避難させた。








そういえば・・・、

「妖精メイドたちはどこに行ったのかしら・・・」



現在、７時１０分。
紅魔館内での惨劇が始まった。