幸せ者の魔理沙の話

作品集: 15 投稿日時: 2010/05/17 04:45:17 更新日時: 2010/05/17 04:47:15
0.

霧雨魔理沙は今、アリス・マーガトロイドの家にいる。
眼前の惨状から目を背けたい自分と、この状態から目を放せないでいる自分が居た。
霧雨魔理沙の目の前にはアリス・マーガトロイドがいる。
しかし、息はない。
話は十分前にさかのぼる。






     ※     ※






1.

魔理沙はアリスが度々、本を返せと五月蝿かったので、
やむなく本を返しに行く事にしたのだ。
しかし、ただ返しに行くのは癪だった。

そこで魔理沙はアリスの家に行く際に、
あるお土産を持っていく事にした。
それはクッキーだった。
ただ、クッキーの生地の中に、
催眠作用のある成分を混ぜておいた。
それは別に新しい薬草ではなかったし、
何度か実験で使っていて、使い慣れた薬草だった。

しかし、運命の悪戯か。
彼女はその使い慣れた薬草を潰した粉末を生地に混ぜようとした時に、
くしゃみをしてしまったのだ。

くしゃみでばら撒かれた粉末を少し吸い込んで、寝惚けた状態で生地に材料を混ぜ込み、
生地を冷やす作業に入ってしまっていた。
その状態で眠りに付き、再び目覚めたときには慌てて、クッキーを焼いた。
魔理沙は当然、生地の中に入っている薬草の粉末の量に気付いていない。

そして、アリスの家に赴き、お茶にしようという事で、
クッキーをアリスがかじった瞬間に、
椅子からアリスは転げ落ちてしまった。

流石に入れすぎたか? と思う魔理沙がアリスに近寄ると、アリスは息をしていなかった。
そして現在に到るのである。




     ※     ※





2.

こんなつもりじゃなかったんだ。
悪いのは、あの薬草のせいだ、私のせいじゃない。
それにアリスが本を返せなんて、何度も何度も私の家に来るのがいけないんだ。
私は何も悪くない。私は何も悪くない……!

そう自己弁護を続ける魔理沙だが、
眼前の状況を誰かに見られでもしたら、大変である。
特にあのパパラッチなぞに見られようものなら……。
魔理沙は身の破滅を感じて、急いで証拠隠滅を始める。

自分が来たという痕跡を消していきながら、
アリスの死体を片付けようとする。
しかし、人一人を抱えていくには魔法の森は危険すぎる。
かといって、空を飛ぼうものならあっという間に見つかってしまう。

そんな時、文々。新聞が目に付いた。
一面の記事には、『犯人の狙いは!? 人里放火事件!』という記事だった。
魔理沙がこの時、どんな行動を取るかは分かりきっていた。




     ※     ※




3.

魔理沙が人里に行くと、射命丸文が号外新聞をばら撒いていた。
記事の一面には、でかでかと『魔法の森で火災発生! 連続放火魔の犯行か!?』と書かれていた。
魔理沙は思惑通りに事が進み、肩をなでおろした。

これで自分に疑いの目が向く事は無いだろう。
時限式の発火装置はにとりが作っていた発明に、ちょっと手を加えたものだった。(発火装置自体はにとりがくれた)
痕跡も残らないし、その間には魔理沙は紅魔館の図書館で時間を潰していた。
そして機を見て、図書館を出て人里に向かった。完璧だった。

すると文が、こちらに気付いたようで近づいてきた。

「あやや、これは魔理沙さん。魔法の森の火事、大変でしたねぇ」
「そうなのか?」
「あや? 知らなかったんですか? かなり大きな火災だったんですが」
「いや、ちょうど図書館に行ってたから気付かなかったぜ」
「ふむ、そうでしたか。いやはやアリスさんは災難でしたねぇ。あんな酷い姿で……」

正直、私はアリスがどうなったのかは知らない。
発火装置を設置してからは、図書館に直行したので、
アリスがどんな姿になっているのかはわからない。
想像はしたくないが。

「ともあれ、魔理沙さんの家まで飛び火しなくてよかったですね」
「あぁ、そうだな。燃え移ったら大変だった」
「偶然にも通りかかったにとりさんが、消火活動をしたお陰で森全体に燃え広がらなかったのが救いですかね」
「にとりが?」
「ええ、何でも魔理沙さんの家にいく途中だったとか」
「そうか……」

しかし魔理沙はにとりと会う約束をした覚えは無い。
ともあれ、魔理沙の家にまで火が燃え広がらなかったのは良かった。
あの時は魔理沙自身、早く証拠隠滅を図る余り、視野狭窄になっていたのだ。
にとりが火消しをしてくれたのならば、感謝しなきゃな。
今度きゅうりでもご馳走してやろう。




     ※     ※




4.

人里では、放火魔の話で持ちきりだった。
やれ、人里を追われた者達が報復の為にやっているだとか、
妖怪達が紛れ込んで、人里への侵略をたくらんでいるだとか、
色々な噂が飛び交っていた。
そのどれもが、3面記事にもならない他愛のないものであった。

魔理沙は丁度その頃、研究の真っ最中であったため、
そんなことにはまったく気付いていなかった。
実際、アリスの家で新聞を読むまでその存在を知らなかったのだ。
無論、魔理沙の家にも新聞は届くが、
大抵後で読むといって、読まずじまいになるのである。

その結果が、これまで本を借りては積んでいる今の魔理沙の家の惨状である。
人の持ち物に興味を持っても、いざ手にすると直ぐに飽きてしまう。
魔理沙の悪い癖であった。
その癖、借りたものを返す事だけは彼女にとっては、嫌な行為の一つでもあった。
宝の持ち腐れとはこの事である。


いずれにせよ魔理沙は幸運な事に、
魔法の森の火災はさほどピックアップもされず、
人里から遠いことから大した調査もされぬまま、
しばらくの時間が過ぎた。
そして人里の放火事件は、魔法の森の一件を最後にぱったりとやんでしまった。




     ※     ※





5.

それからしばらくして、魔理沙の家ににとりがやってきた。
にとりは何処かそわそわとした様子で、少し震えていた。

「どうしたんだ、にとり?」
「あ、あのさ……この前使った発火装置だけど……まだ、ある?」
「え……」

魔理沙は硬直した。
まさかにとりが、発火装置を取りにくるなど夢にも思わなかったのだ。
自然と額に汗が流れる。

「ど、どうしたの? 魔理沙」
「い、いや、なんでもないぜ。あ、あれだ、発火装置はその、使っちまった」
「そ、そうなんだ……」

そう魔理沙が言うと、にとりは青ざめた顔をしていた。
下手に嘘を付くと返って怪しまれると思い、使ったことを話した魔理沙だったが、
にとりの反応を見て不味かったか、と思ったが、にとりはしばらくすると笑顔で、

「そう、なら、いいんだ」
「ご、ごめんな。まさか必要なものだとは思わなくってさ」
「ううん、いいよ。使われてこそ道具が意味があるもん。魔理沙は悪くないよ」

そういうと、にとりは笑顔で魔理沙の家をあとにした。
その笑顔と『魔理沙は悪くない』という言葉の意味に、魔理沙はその時気付かなかった。

後日、にとりは人里に現れると、自らが放火魔だと主張。
人里と魔法の森に放火したと自白し、その後、人里の人間達によって処刑された。




     ※     ※




6.

にとりが処刑された事を聞いた魔理沙はショックだった。
にとりが放火魔だという事実にもショックだったが、
魔理沙がやった魔法の森の放火の事までも、にとりがやったと言った事実に混乱していた。

(なんで、魔法の森の放火まで自分がやったなんて言ったんだ?)
(まさか、にとりに見られてたのか?)

そういえば以前文が言っていたことを思い出す。
魔法の森の消火活動を行ったのはにとりだと。
もしかすると魔理沙が設置していた発火装置に気付いたのかもしれない。
でも何故、魔理沙を庇うような真似をしたのか。それだけが魔理沙は理解できなかった。

(とにかくこれで、魔法の森の一件は私のせいじゃなくなったわけだ)
(にとりに感謝しなきゃいけないな)

そんな風に魔理沙は思っていた。

そんな風に思っていた魔理沙は、後に届いた手紙を読んで後悔する事になる。




     ※     ※




7.

ある日の事。
にとり処刑からさらに日が経ち、最早放火事件は忘れ去られつつある頃。
犬走椛が魔理沙の家に赴いてきた。

「こんにちは、魔理沙」
「ん、お前は……」
「犬走椛よ」
「ああ、お前か。何の用だ?」
「にとりから預かっている物があるから、それを渡しにね」
「私に?」
「ええ、自分で渡せばいいって言ったんだけど、どうしてもってね」

そういうと、椛は封筒を渡す。

「中は読んでないわ。友人としてそれはしてないから安心して」
「そうか」
「しっかり読んであげて。あの子の為にもね」
「? ああ」
「じゃあ、私は仕事があるから。失礼するわ」

そういって、椛は妖怪の山へと戻っていった。
戸を閉めて、封筒を開けて中身を取り出す。
中には、一通の手紙が入っていた。
魔理沙はそれを読んでいく。





     ※     ※




8.

―――魔理沙へ

これを読んでいる頃には多分、私は居ないと思う。
人里で騒がれてた放火魔は私だったんだ。

だって、あいつらは私の作った発明を『ただのガラクタだ』なんて言ったんだ。
それだけじゃない。あいつらは私の目の前で、私の発明を壊したんだ。
許せなかったんだ。発明品は私にとっては子供みたいなものなんだ。
それを壊される事は、子供を殺されたのと同じ事なんだ。

だから、私は遠隔操作で発火できる装置を作ったんだ。
この装置を使えば、通信機でその場に居なくても発火できるんだ。
正直、最初は小火程度で驚かしてやろうとしたんだけど、
その日は乾燥していて、小火どころか大火事になったんだ。

私の発明をガラクタと言ったそいつは、火事で焼け死んだ事を後で知った。
そうしたら、もう後戻りは出来なかったんだ。
一人殺したら、後は何人殺しても大差はなかった。
そうやって次々殺していったんだ。
でも、このままじゃいけない。だから私は人里に行って真実を話すよ。

魔法の森の一件も私がやったんだ。
魔理沙にあげた発火装置、あれは欠陥があったんだ。
それを伝えに行こうと、魔理沙の家に向かっていたら、
発火装置を置いて、慌ててアリスの家から出て行く魔理沙の姿が見えたんだ。

光学迷彩を使って、アリスの家に入ったら、
死んだように眠っているアリスを見かけたんだ。
そしたら、アリスがゆっくりと起き上がったんだ。

「う、うぅん……」
そんな声を上げて、ゆっくり立ち上がった。
私は途中で逃げる魔理沙の姿を見て、何かあったことを察した。
そしてアリスが生きている事は盟友である、魔理沙にとって都合の悪い事だと察したんだ。
私は、アリスを後ろから首を絞めて気絶させて、
発火装置を使って、アリスの家を燃やしたんだ。

それが、全てなんだ。

魔理沙は他の盟友の中でも一番、私の発明を褒めてくれたよね。
それがどんなにうれしい事かは、魔理沙にはわからないかもしれないけど。
私は凄くうれしかったんだ。
だから魔理沙の為なら、どんな事でもしてあげられるんだ。
魔理沙の代わりに、魔理沙を虐める悪い奴をやっつけるなんてわけないんだ。

でも私は魔理沙には何も求めないよ。
盟友に何かを望まないのが、真の友情だもんね。
だから、死んでも寂しくないよ。

それじゃ、ばいばい。
魔理沙。


                ―――にとり





     ※     ※




9.

「あ、ああ……ああああ……」

手紙の内容は、魔理沙にとって想像を超えたものだった。
魔理沙はにとりを、“数ある友人の一人”としてしか見ていなかった。
しかしにとりは、魔理沙を“唯一無二の友人”として見ていたのだ。

この互いのギャップがもたらした結果が、
この手紙の告白であった。
椛は手紙の内容は知らなかったが、
それとなく、にとりの様子から全てを察していたのかもしれない。
だからあの時、「あの子の為にも」などという言葉を使ったのかもしれない。

しかし魔理沙にはどうする事も出来ない。
死んでいなかったアリス・マーガトロイド。
アリスを殺し、家ごと燃やし、そして人里の連続放火魔であった河城にとり。
そのにとりも処刑された今、事の真相を知っているのは魔理沙一人である。

魔理沙は一生、この真相を抱えて生きていかなければならないだろう。
最早、放火魔事件は風化し始めており、
そもそも魔理沙の放火が未遂に終わる筈であった事、
人里まで被害が及ばない事を考えれば、
彼女が真相を話したところで、何の意味も無いだろう。


全てが遅すぎたのである。




     ※     ※




EX.

魔理沙は何処か虚ろな表情で博麗神社に向かっていた。
ただ現実逃避したかったのかもしれない。
受け止めるには辛すぎる現実を、この場所では忘れていたいのかもしれない。

「よぉ、霊夢」
「あら、魔理沙。研究は終わったの?」
「あ、ああ」
「そう」

いつもの素っ気無い様子の霊夢。
その様子に魔理沙は安堵の表情を浮かべる。
すると霊夢は、魔理沙そっくりの人形を魔理沙の前に置いた。

「ん? なんだこれ?」
「火事になったアリスの家にあったの。かなり強固な結界が張ってあって、これだけ無事だったみたいよ」
「え……」
「アリスはあんたにプレゼントするんだ、って張り切って作ってたみたいね。誕生日に渡すんだーって。私に見せびらかしてた」
「たん、じょう、び?」
「何言ってるのよ、あんた」

「火事があった日はあんたの誕生日だったじゃない」
魔理沙がアリスに拷問されて自殺する話におけるコメント欄10〜13番

10. 名無し ■2010/02/28 03:03:09
ゴミクズとか言う奴がゴミクズなんだよ
11. 名無し ■2010/03/13 13:22:04
>>2
>>4
>>5
>>8
死 ね や ゴ ミ め ら
12. 名無し ■2010/03/14 16:34:26
魔理沙はゴミじゃねぇよ。
魔理沙がいないと悲しむ奴だっているんだよ。
13. 名無し ■2010/04/10 01:15:11
ざまぁとか言う奴死ね


という発言を見て、今回このような作品を書かせていただく事になりました。
EXは蛇足かな?
魔理沙が死んだら悲しんでくれる人たちはこの作品だけでも二人居ますね。
全く魔理沙は幸せものだなぁ。うらやましい。


え? 魔理沙虐めだって?
まさか。
魔理沙の身体には傷一つ付いていませんよ?
名前がありません号
作品情報
作品集:
15
投稿日時:
2010/05/17 04:45:17
更新日時:
2010/05/17 04:47:15
分類
魔理沙
アリス
にとり
1. 名無し ■2010/05/17 05:45:00
幸せな奴ほど、自分の幸せには中々気付けないよな。
だから無くしてから気付く。
2. 名無し ■2010/05/17 09:56:16
魔理沙ざまぁwwwww
3. 名無し ■2010/05/17 10:50:25
これは自殺してもおかしくない…
4. 名無し ■2010/05/17 21:41:39
>>魔理沙の身体には傷一つ付いていませんよ?
本編もさることながらこの言葉の方が怖かったりして
5. 名無し ■2010/05/18 03:08:56
「ご用件は?」
「処刑されに」

これはかなり格好良いよ時と場合により
6. 名無し ■2010/05/18 03:21:37
確かにかっこいいな、>>5w
そして魔理沙はなんて幸せなんだ、あはは〜

淡々と語られる文章が怖かった
7. 名無し ■2010/05/18 17:29:10
にとりコエェ
8. 名無し ■2010/05/19 12:23:51
なんだこの摩理沙。

幸せ過ぎるだろ。嫉妬!
9. 名無し ■2010/05/19 18:41:24
よかったね魔理沙、殺されなくて
10. Greenknights ■2010/05/19 21:25:13
飯がうまいなw
11. 名無し ■2010/05/20 20:08:50
飯うま。俺得。
12. ふすま ■2014/07/08 12:17:43
ちょっとだけ読むつもりが最後まで読んでしまった。素晴らしい。
けど、パチュリーも出してほしかった……
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