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『最後のアダム』 作者: ND

最後のアダム

作品集: 16 投稿日時: 2010/05/27 12:52:04 更新日時: 2010/05/27 22:13:20
目が覚めると、僕はソファーで寝ていた。

本を読んでいる途中で寝ていた。

本は、消えていた。

机も消えていた。

このソファーは僕の店にあったものではなかった。

周りを見渡すと、ソファーの横には硝子のテーブル

部屋は全体的に石、いやコンクリートという物質でできているものだった。

『ごきげんよう。霖之助さん。』

そこには、紫が一人窓に佇んでいた。

『ここはどこなんだ?』

『私の新しい家よ。』

冗談は止めてくれ。

僕は不満げに、不愉快に溜息を吐いた。

『もういいよ。僕はもう帰ります。』

僕は、ソファーから降りて出口の方に向かった

『あら、帰るってどこに?』

紫の言っている事が分からなかった。

だが外に出ると、その意味が分かった。









幻想郷の全てが崩壊していた。

ほとんどが崩れていて、草や木が生えていた

この森の入口に、僕の店があるはずだった。

その店も、ほとんど草に包まれていた。

空には、優しい陽が当たっていた。

空気が綺麗だった。

僕の頭も、綺麗さっぱり白くなっていた。






気が付いたら、僕はまたソファーで寝ていた。

紫が、横でコーヒーを作っていた。

僕は、質問をした。

『一体、僕が寝ているときに何があったんです?』

すると紫は、さみしそうな口調で、微笑んで言った

『あなたはかなり長い時間眠っていたの。』

さらに、紫は淡々と喋った

『いえ、私が眠らせたと言った方が正しいわね。あなたが寝ているときに戦争が起こったの』

戦争。

考えたくないが、人間と妖怪か、

妖怪と妖怪だろう。

『霊夢と魔理沙は?』

『死んだわ。』

僕は、また真っ白になった。

ショックを受けて3秒後、僕はまたソファーで横になった

『どうして戦争が起こったんだ』

『分かんないわ。』

紫は、相変わらず不吉な笑顔で僕を見ていた。

『どうして僕が生きているんだ?』

『私が助けたからよ。』

どうして僕を助けたんだろう。

だが、なぜか理由を聞きたくなかった。

紫は、僕にコーヒーを差し出してきた

『いらない』

僕はそう言うと、紫は悲しそうな顔をした

『折角作ったのに』

『そんな事よりも聞きたい事が山ほどある。どうして戦争が起こったんだ』

『そんなの分かんないわよ。』

紫は、複雑そうな顔で僕の目から逸らした

本当に分かんないかは僕にも分からない。

でも、言いたくなさそうだったから言うのを止めた

『で、結局どっちが勝ったんだい?』

すると、紫はまた悲しそうな顔をしてこちらを見た、

『どっちも負けちゃった。』

紫は、顔を引きつりながらも笑顔を出した、

よほど悲しい事だったのだろう。

『だから、もう誰も居ないのか。』

僕は、分かり切っているようにそう言うと、

紫はまた少し、悲しそうな顔をした。

『せめて墓を作ってやりたいものだな。』

僕がそう言うと

『お墓なら。もう作ってあるわよ。』

紫は、当り前のようにそう言った。

なら、話が早い。

『僕をそこに連れてってくれ。』

僕は、ソファーから腰を上げた。











博麗の神社

僕が寝る前までは、そう呼ばれていた。

今は、草木が神社を包んでいる。

霊夢が生きていたら、多分怒って僕に手伝いを頼まれるだろう。強制的に

そう思いながら、神社の裏に回った。

そこには、墓があった。

結構前の墓らしく、これも苔だらけだった。

一体、僕は何年寝ていたのか。

一体何年戦争が続いたのか。

知りたかったが、その戦争で知り合いが死んだ

あまり、追求したくもあり、したくなかった。

複雑だった。

『やっぱり寂しいかしら?』

紫が僕の後ろにいつの間にか居た

寂しいに決まっている。

話相手が君しか居ないとなると、なおさらだ。

紫は、さい銭箱に手を当てた

『霊夢達も元気だったのは昔の話、今は私と霖之助さんしかいないわ。』

僕は、その言葉を聞いてショックを覚えた

『皆、死んだのか。全滅したのか。』

『ええ。私のそばに居た八雲家も、普通の人間も、全滅よ。』

僕は、ますます血の気が引いた。

つまり、この幻想卿は崩壊寸前なのだ。

だけども、紫は全く悲しそうな顔をしていなかった。

さっきまで悲しそうだった顔が、嘘みたいに消えていた

『どうして笑っているんだい君は』

『あら、だって今の私達ってまさにアダムとイヴじゃない?世界で私とあなたと二人きり』

冗談じゃない。

こんな事、僕は全く望んでいない。

ましてこんな不吉な奴と二人きりとは、悲しくなる

『どうして僕を生き残らせたんだ』

『悲しい事言わないで』

紫は微笑みながらそう言った。

僕は、寂しくとぼとぼ歩き、紫と距離を広げていった。

ついて来る気配は無かった。

いや、いつでも来れるからか。


ついこの間までは、僕はこの神社の巫女と酒を飲んでいた。

僕は比較的酒に強い方なので、酔い潰れて動けなくなった霊夢や魔理沙を運んだのも良い思い出だ。

良い思い出だ。

だがその霊夢や魔理沙も、もう居ない。








本当に誰一人居なかった。

僕は、そこに紅魔館があったであろう草の固まりに、腰をかけた

『霖之助さん。帰りませんか?』

紫が、僕の顔をのぞいた

僕はもう歩く気力も無かった。

紫は、僕をスキマに入れて部屋に連れて行った。





本当に僕と紫しか居なくなった

どうしてこんな事になったのだろうか。

僕は悲しくてしょうがなかった。

『霖之助さん』

紫が、僕の布団の中に入ってきた

僕はすぐさま、布団から出た

『あら、それは失礼ではなくて?』

『勝手に僕の布団に入って来る事が失礼だと思うが』

僕がどんな事を言っても、紫は笑顔で答えていた。

『今は私とあなたしか居ませんのよ?別に私をどうしようとあなたをどうしようと誰も言ってくる人は居ません』

『結構だ。今日はゆっくり寝かせてくれ。』

僕は、そこにあったソファーで眠った。

だが、また紫が邪魔をしてきた。

今度は僕の上を乗ってきたのだ。

僕は紫さんを手でのけて、寝る場所を探した。

だが、探している途中で紫が僕に抱きついて来た

僕はそれを振り払って、外に出た。

下に生えていた草は柔らかく、野宿するのにはちょうど良かった。

僕は、結局野宿することにした。

だが、また紫が僕の所に来た

『霖之助さん。そんなに拒まなくてもいいのに。』

『拒むにきまってるだろう。君は何をしてくるんだ』

『いいえ、私はただ一人で寝たくないだけよ。だから近くで寝るくらいいいでしょ』

紫はそういうと、僕の隣で背中合わせに寝ころんだ。

大妖怪様が野宿。傑作ではないが少し笑えた。

紫が眠ったと思った時、

僕も深い眠りについた。









目が覚めると、紫が僕に抱きついて寝ていた。

僕は、それから振り払おうと立ちあがった。

置いていこうと思ったが、大妖怪が道端で寝ているのはなんだか可哀想だったので

紫の家までおぶって行くことにした。

ソファーに寝かせた2秒後、彼女は起き上がった。

『あら、寒かったから霖之助さんにしがみついたはずなんだけど、どうして私はここにいるのかしら?』

『やはり意図的にしがみついて来たのか君は』

僕がそう言うと、紫は微笑んで僕の方を見た。

それから、紫は大妖怪とは思えないほど無邪気に、子供のように走り回った。

僕と手をつないで

僕は体力が無いので、すぐに息切れをした。

そこで僕らは、道にあった草だらけのベンチに座った。

紫が、僕の膝を枕にして寝た。

『調子に乗るな』

僕はそういって、紫の頭をのけたが、

また乗ってきたので、僕は立ちあがった。

『なによケチ』

紫は、頬を膨らませながら不満を言った。

『本当にどうしちまったんだろうな。君の愛した幻想卿は』

僕はそう言うと、紫は真顔で言った。

『もう、この村は終わりよ。だからもういいの』

とても紫が言うセリフとは思えなかった。

『だから、もっと私と一緒にいましょう。』

そう言うと、紫は僕の手を握ってまた走り出した。

勘弁してくれ、僕はそう心から叫んだ



そして、廃れてしまった幻想郷を見渡していたら夕方になってしまった。

『あら、もう陽が沈むのね。』

紫は、残念そうに陽を見ていた。

この幻想郷の変わり果てた姿を見て、もう見なれているかのような反応で見ていた

そして今日も、また家に戻り

僕の寝込みを襲おうと紫が僕の寝ている布団にもぐりこんで、

また僕がどこか別の寝どこをさがした。

昨日と同じだ。

そして朝にはまた紫が抱きついて寝てくるのだ。

今度は息ができない夢を見た。

目が覚めると紫が僕の口を口で塞いでいた




次の日、僕たちは兎をみた。

僕たちの植物以外の命を見たのは、初めてだった。

紫がその兎を追いかけた所、

結局逃げられてしまった。


また次の日、今度はダチョウを見た

どうしてこんな所にいるのか分からないが、居た

紫が、そのダチョウの背に乗り、

首をハンドル代わりに使った。

まるで子供だった。

どうして大妖怪と言える人がこんな事をしている?

僕は呆れ斬っていた。



こんな日を過ごし、僕たちはずっと優しい陽に包まれて生きていた。

このたくさんの人が死んだ場所で、

僕たちは遊んでいた。

いや、僕は嫌々だが、

とても複雑な気持ちだった。

今日も紫は飲んでいたコーヒーを僕に差しだしたり、

僕の飲んでいたコーヒーを貰ったりしていた。

どうして、彼女はこんな愛していた幻想郷の変わり果てた姿で笑顔で居られるのだろうか。

だが、日を重ねていく事2週間

その笑顔は急に消えた。



朝目が覚めると、

紫は奇声を上げていた

『紫さん!?』

僕は、紫のそばに近づいた。

紫は、心臓のあたりを手で押さえ、

もだえ苦しんで暴れていた。

だが、立ちあがる事ができなかったのだろう。

傷が付いているのは床、壁はなんにも傷が付いていなかった

彼女は心臓が痛いらしく、

血の気もどんどんなくなって来ていた

『あ…………あ……………あああ』

どんどん彼女は苦しそうな声を出していた

大妖怪は、心臓に病気を持つ物なんだろうか。

それが疑問に思ったが、今はそれどころではなかった。

僕は、心臓の病気の薬の作り方を知っていた。

だから僕は、外に行って材料を探すことにした。

あの医者の所に行っても、どうせ死んでいて居ない。

薬も全て割られている可能性の高いからだ。

『霖之助さん……………待って……………』

紫が、僕を呼びとめていた。

『待って………霖之助さん…………行かないで…………行かないで……………』

紫は、苦しそうにもだえながら必死に訴えていた。

『大丈夫だ。すぐに戻ってくるよ。』

僕はそう言い残して、材料を探しに出かけた。




今は草木だらけの幻想郷は、材料を探すのは楽だった。

それぞれ同じ色をした植物が多く、同じ種類の植物を固めている所も多かったからだ。

材料は大体そろった。

あとは、僕の店に飾ってある花。

僕はそれを覚えていた。

それも材料の一つなので、取りに行くことにした。


森の入口付近に存在している僕の店

そこまで走って行くには、下り道なので行きは大丈夫だが、

帰りは大変だ。

僕は、走って山を、森を下っていった。

だが、僕は運悪く石に躓いてしまった。

躓いた体は、スピードが止む事無く転がり続けた。

背中に石を打った。

腹に木を打った。

転がり続けるうちに、僕はやっと自分の店まで戻って来れた。

幸い、僕には傷一つないらしい、血が一滴も流れていなかった。

僕は、苔だらけの店の中に入り、我が家の中をあさった。

そこには、ちゃんと薬の材料があった、

だが、増えていた。

お花畑状態であった。

戦争でほったらかしにしたからだろうか。

僕は、とりあえず何も考えずに店の中にあった袋に材料を入れた。

だが、この店の僕の机の上に真新しい本が置かれてあった。

僕はその本が気になり、少し中身を見た。

そして僕は最後のページを見て、

閉じた











『ただいま。』

紫は無事だろうか。

無事で無かったら困った。

だが、

『おかえりなさい。』

紫は、ソファーに座っていた。

少し青ざめていたが、苦しそうな声は全く出していなかった。

『心臓に効く薬、作ってきました。』

紫は僕の行った言葉を聞くと、嬉しそうな顔になり、嬉しそうな声を出し、僕の作った薬に手を取った

『ありがとう霖之助さん。これはありがたく飲ませてもらうわ。』

と紫はそう言って、僕の作った薬を飲みほした。

僕は、紫に聞きたい事がたくさんあった。

『紫さん、どうして心臓が痛くなったのですか?』

紫は答えなかった。

ただ、僕に微笑みを返すだけだった。

『それじゃあ、もう一つ聞きたい事を聞かせてもらいます。』

僕は、自分の店の中にあった真新しい本を取りだした

『この本、』

僕がそう言うと、紫から少し微笑みが消えた

『この本は、どうして発行されたのが2995年なのですか?』

この本は、僕が寝てから985年も後に発行された本だった。

その本が幻想入りしていると言う事は…………。

『今は、西暦何年ですか?』

僕はそう質問すると、紫さんはまた、微笑みを増した

『気づいちゃったのね。霖之助さん。』

さみしそうにそう言うと、また淡々と話をしてきた。

『今は西暦3004年。』

僕は耳を疑った。

僕が寝たあの日から、996年も経過している

10世紀も近く、僕は全く記憶が無い事になっていた。

『霖之助さん、私のそばに座ってくれないかしら?』

紫が、僕に弱弱しくお願いしてきた。

僕は言うとおりに、紫さんの隣に座った。

『何があったのか教えてくれませんか?』

僕はそう言うと、紫は答えた。

『別に何もなかった。戦争も嘘よ。嘘。』

戦争が嘘。

それを聞いて、少しほっとした。

だが。もう10世紀も立っているのだ、皆死んでしまっている。

だが、10世紀くらいでは妖怪はまだ生きている種族がいるはずだ、幻想郷全滅はおかしいと感じた。

『霖之助さん、あなた覚えていないかもしれないけど、あなた魔理沙にプロポーズされていたのよ。』

全く覚えが無かった。

そんな事あった事も分からなかった。覚えていなかった。

『でも結局あなたは断ってしまって、魔理沙は別の男と婚約してしまったわね。』

僕は、それを聞いて少しショックを受けてしまった。

だが、もっと疑問に感じた事があった。

魔理沙が婚約するまでの年になった年の記憶が無かった。

僕が覚えているのは、魔理沙と霊夢が僕の店で僕の作ったご飯をたかりにきて

帰っていった所だけだった。

『魔理沙ね、”絶対幸せになってやるからなー!!”って泣いていたのよ。可愛そうね。』

一体、何が起こっているのか分からなかった。

戦争の方がまだ分かりやすかったのが今の感想だ。

『霊夢も、霖之助さんの事を思っていたのよ。気づいていた?』

これが真実なのだろうか、本当は戦争なんか無くて

今、紫が言っている事が…………本当の真実、現実にあった事なのだろうか。

『でも結局結ばれなかった。あなたが断ち切ったんですけどね。でも、それでも彼女達はあなたの店に遊びに来ていた。』

『だが、全く覚えていないのだよ。』

『そう。』

紫は、顔色を変えずに、自分の言わなくてはいけない事を必死に言おうとしていた。

『時が来て、二人は死んでしまったわ。人間はそう長く生きられないから。
その時から、私はあなたとずっと一緒に居たのよ。覚えていないのなら、少し残念ね。
私だってあなたにずっとアブローチしてたんだから。結局気づいてもらえなかったけど。』

紫は、少し笑った。微笑んでいた。

『でも、あなたも寿命が来る前に死んでしまった。何者かに殺されてしまったの。』

殺された

その言葉で僕は反応した。

『私は、あなたを殺した妖怪を殺しにかかったわ。そして妖怪の餌にして存在を抹消させた。』

紫は、悲しそうな顔をして

『でも、あなたは帰って来なかった。死んだ妖怪も人間も戻って来ないのだけれど、私ね、とっても寂しかったの。』

紫は、微笑んで、でも悲しそうで、そして涙を流して、僕の手を握って話を続けた

『私は、その日を境に引きこもったわ。でも、そのせいか結界がおかしくなっちゃったの。でもその時の私はもう
何もかもがどうでもよくなっていたから、ほっといたの。』

紫の手が、よりいっそう強く僕の手を握った。

『そしたらいつのまにか幻想郷の人間と妖怪は皆消えていたの。』

僕は、その話を聞くうちに、どんどん胸が苦しくなってきている事が分かった。

『結界に私の負が混じってしまって、結界が逆に周りの人達の悪影響を及ぼして、皆を死なせてしまった。
私は、独りぼっちになっていたの。』

『どうして僕は生きているんだい?』

僕がそんな質問をすると、紫は僕の目を見て喋った。

『私は、幻想郷を捨ててしまったの。だから私はずっと生きている事が嫌になってしまったの。だから人間の作った技術で、
時間が経ったら、心臓が止まるようにセットしたの。』

『つまり、今朝苦しんでいたのは君が死ぬ事を望んだ末路と言うわけか』

紫は、静かにうなずいた

『霖之助さん、人間の作り出した技術でロボットって知っていますか?』

僕は、首を横に振って否定した

『ロボットに心を入れた物をサイボーグと言います。私は、そのサイボーグの作り方と言う物を学び、
自分の魔力でそのサイボーグに魂を入れたのです。』

僕は嫌な予感がした。

『それじゃぁ、君が言いたいのは僕がサイボーグだと言う事かい?』

『ええ。』

悪い予感は的中した。

だが、僕はもう紫を悪いとは思わなくなっていた。

『でも、私はあなたにものすごく会いたかった。
会いたかったから、不完全のまま、あなたを完成してしまった。』

『僕に血が出なかったのも、僕がロボットだからか。』

紫は、少し暗くうつむいた

僕は、傷の付いた場所を引っ張ると、

そこには、光沢のある灰色の物体と銅線が露出していた。

紫は、手をつないで欲しいと言わんばかりに手を僕の手まで伸びていた。

僕は、その手を握ると紫は嬉しそうな顔をした。

『記憶は、その996年前しか無くなっているけど、でも私は、あなたに会えて本当にうれしかった。』

紫は、泣きそうで、でもうれしそうで、微笑んで僕の方を見た

『あともうすぐで私は死ぬ。』

紫は、微笑みながらそう言った。

『でも、あなたも、もうすぐ死ぬ』

僕に死の宣告をされた。

『あなたがその体に魂を定着させる期間は、15日しかできないの。』

15日

今日がその15日だった。

『それじゃぁ、僕は君と一緒に死んでしまうと言う事か』

紫は、少し俯いて

『ごめんなさい』

と謝った。

『いいえ、別にいいですよ。どっちみち一人で生きるのも嫌ですから。』

と、僕は返事をした。

だが、紫はまだ俯いたままだった

『霖之助さん。』

紫が、口を開いた

『私…………もうそろそろ時間みたい。』

声がさらに弱々しくなっていた。

僕は、さらに胸が苦しくなっていた。

『霖……之……助………さ……ん』

その声は、さらに弱々しくなっていた。

『霖………之…助……………さ……ん…………
私の………事……好き………です……か?』

紫が、どんどん弱々しくなった声で質問をした、

僕は、その質問の答えを、素直に伝えた。
















紫は、微笑んだ。

とっても微笑んで、涙を流して、笑顔で。

僕に寄り添って、目をつぶって。


最後に言った言葉は、

『大好きよ、霖之助さん』

だった。

そう言ったきり、紫は全く喋らなくなった。

そして、彼女の体温がみるみる冷たくなっているのを感じた。

僕の体温を、彼女はどんどん奪っているのを感じた。

この時を感じて、

僕は独りぼっちになった事を実感した。

僕は、この幻想郷で一人になった。

ついに、この幻想郷の人口が一人になってしまった。



僕は、目から何かが垂れている事を感じた。

それはオイルだった、

僕は故障したようだ。

目からオイルが止まらなかった。



魔理沙は、どんな顔で結婚をしたんだろうか。

魔理沙は、幸せに過ごせただろうか。

霊夢は、幸せな人生を送れたのだろうか。

霊夢は、僕の他に好きな人はできたのだろうか。

紫は、最後は幸せだったのだろうか。





だが、僕にはもうそれを知ることもできない。

知る権利もない。

後悔、無念は不思議となかった。

僕は、紫の手を握ったまま、

自分の中のモーターの音がどんどん弱々しくなっているのを感じ





静かに目を閉じた
アダムとイヴの逆バージョンを考えて構想した結果、こうなりました。
タイトルにイヴの名前が無いのは、ただ単に語呂が悪くなるからです。
ND
作品情報
作品集:
16
投稿日時:
2010/05/27 12:52:04
更新日時:
2010/05/27 22:13:20
分類
霖之助
幻想郷
最後
1. 名無し ■2010/05/28 00:48:42
毎日霖之助ものが読めるなんて
作者様に感謝です
2. 名無し ■2010/05/28 01:18:48
だが甘いのはここでは読めないッ!
3. 名無し ■2010/05/28 02:24:30
彼等にイヴはいない。
4. 名無し ■2010/05/28 03:11:28
目からオイルのくだりがグッと来た
5. 名無し ■2010/05/28 08:17:20
このこーりんはきっとクライシスアームを装備出来るな
6. 名無し ■2010/05/28 23:47:02
霖之助さん、今の貴方は人間ロボットなんだ!


うん、ごめん、貴方の霖之助作品が大好きです。
7. 名無し ■2010/06/02 08:11:38
ZOOの陽だまりの詩を思い出した

泣いた
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