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『東方新政治 第1章』 作者: ゴルジ体

東方新政治 第1章

作品集: 16 投稿日時: 2010/06/06 11:49:09 更新日時: 2010/06/20 11:18:43
 





 私にとっては幻想郷なんてどうでもいいものであったし、人間と妖怪の関係とか、そんなものもどうでもよかった。
 私は、みんなと一緒に遊んだり、笑ったり、泣いたり・・・そんな当たり前の生活ができれば、余計なことなど一切考えずに、楽しく日常を送れれば、それで良かったのに。
 








 今、わたしに、たったひとつだけ願い事があるとすれば、

 神様、どうかみんなを助けてあげてください。

 どうか、救いの手を差し伸べてあげてください。

 たったひとつ、私が望んだ日常を返してください。

 ここはもう、生きていくのには辛すぎる。

 もう一度、みんなが笑って暮らせるような、そんな世界を造ってください。

 

 どうか、どうか・・・。














     東方新政治――第1章――













 それは、涼しげな風の吹く秋の夕暮れのことだった。
 八雲紫から博麗神社に、手紙が届いた。

 『本日をもってスペルカードルールを廃止し、午前0時より新制度を導入する旨をここに記す。制度関連の詳細は付随する〈敷令要項〉を参照されたし』
 
 〈敷令要項〉には、

 ・スペルカードルールに代わる新制度として、<敷令法>の作成。
 ・<敷令法>とは第1条〜第134条の条例から成る法律。
 ・内容は主に人間、妖精の処罰基準について。
 ・人間、妖精の迫害、弾圧の推進。
 ・妖怪至上主義の敷設。
 ・<敷令法>管理の為、また幻想郷の秩序再構築の為の、『政府』の創設。
 ・『政府』メンバーは主要妖怪から選別され、8の座席を用意してある。
 
 要約するとこのようなことが記されてあった。

 霊夢は突然のことに驚いたが、紫の冗談だろうと放置。
 
 後になって考えてみれば、この時点で巫女がなんらかの策を講じていれば、状況はすっかり変わっていただろう。
 巫女は危機感を抱かなくてはならなかったのだ。
 まあ、今になって言っても仕方のない話ではあるが。


 



 時計の針が午前0時を刻む。日は移り、――ルールも移行する。






 初めに異常に気がついたのは、霧雨魔理沙だった。彼女はその時、新しい魔法の研究をしていた。
 完成した魔法の試し撃ちをしようとしたが、失敗。魔法は発動しなかった。
 (理論は完璧だったはずだ)
 魔理沙は幾度も試したが、不発。不自然に感じてマスタースパークを発動するが、やはり不発だった。
 
 魔法を使えなくなった、という事実を認める為にはしばし時間を要したが、結果として、彼女はどうしようもなく実感させられた。
 そしてこれは異変だと、魔法を使えなくなったことを認識するのとほぼ同時に、感じることになった。これは霊夢と共に数々の異変に携わった彼女ならではの思考の卓越性で、不思議なこと、納得できないことは常に彼女にとって異変であった。
 ともかく魔理沙は、この自らのアイデンティティを揺るがす不可解な異変を、霊夢に相談することにしたのだ。
 この時点で、時刻は午前2時30分。そして、彼女が空を飛べなくなったことを知ったのは、その5分後だった。
 魔理沙は初めてここで恐怖を覚えた。なぜなら、魔法が使えないということは、この地を這いずる魑魅魍魎から自らを守る手段を失ったということだからだ。この森に住むのは、ルーミアやミスティアのような、言葉が通じる妖怪ばかりではない。そんな妖怪は基本低級だが、しかしそんな雑魚ですら、今の魔理沙には脅威になり得る。
 真剣に魔理沙は死を身近に感じた。平和ボケした彼女にとって、今の状況はあまりにストレスが強すぎた。
 結果、彼女は失神した。悶々と緩慢な恐怖に精神を焼かれながら朝を待つよりは、あるいは幸せだったのかもしれない。








 彼女が目を覚ますと、明るい色の天井が見えた。
 隣を見ると、アリス・マーガトロイドが安楽椅子に座って本を読んでいる。
 
 「アリス、私は・・・」

 魔理沙は静かに話しかけた。

 「起きたのね、魔理沙。どうしたの?今朝あなたの家に行ったら、呼び掛けてもまったく反応無しで、入ってみたら床で寝てたし。叩いても起きないから家まで運んで滋養強壮の薬を飲ませてあげたのよ」
 「そうだ、そうだ、思い出したぞ・・・アリス、大変なことになった!」
 魔理沙はベッドから飛び起きて、アリスに夜のことをすべて話した。



 「はあ、魔法が使えない、と」
 魔理沙の話を聞き終わったアリスは、しばし気難しそうな顔をした後、気の抜けた声で応えた。

 「はあ、じゃないだろ!魔法が使えないんだ、空も飛べないし、もう私はお仕舞いだ」
 魔理沙は涙目でアリスの服を掴む。アリスは紅茶を啜って、天井を見上げた。
 「うん、そうね。普通に考えれば異変かしら。でも魔理沙。私は魔法使えるわよ」
 アリスはそう言うと、お得意の人形を使った魔法を繰り出して見せた。
 「なんでだ、どうなってる。私だけ使えなくなってしまったのか、あるいは何かの病気か・・・」
 魔理沙は涙声で言う。額には汗が滲んでいる。どたどたと部屋を行ったり来たりしている。かなり焦っているのが容易に判断できた。
 「うん、うん。ここはまず霊夢に相談すべきかしらね。病気という線は薄いと思うわ、それだけ動ければね」
 「そ、そうか。そうだな、霊夢んとこへ行こう」
 
 「っと、あなたは空が飛べなくなっていたのよね。忘れてたわ」
 「あっ、そうか。行けないじゃないか!」
 「私に掴まれば飛べるわ。多少恥ずかしいかもだけど」
 「・・・この際なりふり構ってられないぜ」
 













 博麗神社に降り立った2人は、霊夢が縁側に居ないことに気付いた。いつもならこの時間帯は霊夢が縁側で座布団に座ってお茶を飲んでいる筈なのである。
 「あれ、霊夢がいないわ。おかしいわね。まだ寝てたりして」
 アリスは賽銭箱の横に立って言う。
 「ああ、どうしたんだろうな」
 
 縁側からお邪魔した2人は、茶の間の襖を開けた。
 そこには布団にすっぽり、頭まで包まれている霊夢がいた。
 
 「何してんの霊夢。もう9時よ。そんなに寒くないでしょうに」
 アリスが近付いて霊夢から布団を引き剥がすと、霊夢はビクッと一瞬震えた。
 「きゃあ!ア、アリスに魔理沙じゃない。どうしたのよいきなり」
 霊夢の顔は青ざめて、汗を掻いたのか服が少し湿っていた。
 「え、うん。なんか、魔理沙がね――」
 かくかくしかじか。魔理沙はアリスに伝えた夜のことをそのまま霊夢に言った。
 
 「まままさか、魔理沙も・・・。どうしようどうしよう」
 霊夢の表情は魔理沙の話が進むうちに強張っていった。話が終わる頃には大量の汗で布団が濡れていた。
 「おい霊夢。一体どうしたっていうんだ。さっきからなんかおかしいぞ」
 魔理沙の指摘に、霊夢は一度ブルッと身体を震わせて、意を決したような表情を作り、話し始めた。

 「実は、昨夜のことなんだけど――」
 霊夢は紫からの手紙を見せて、昨日の夕方の出来事をすべて話した。今朝起きたら空を飛べなくなっていた、ということも。

 
 「・・・なんだこれは、馬鹿馬鹿しい。紫のやつ、まさか本気じゃないだろう」
 魔理沙は〈敷令要項〉のページを捲りながら言う。
 「ちょっと待ちなさいよこれ。完全に妖怪の為の制度じゃない。これが本当に施行されたら、人間たちはまた一方的に食べられるだけの、妖怪の食料の為だけの存在になってしまう」
 アリスはさも呆れた、という顔をして言う。
 「ばっかじゃないの。悪戯にしても悪趣味だわ。第一、あの紫がこんなもの冗談でも書かないと思うわよ」
 
 「でもね2人とも。現に私たち、つまり私と魔理沙という『人間』が能力を使えなくなっているのよ。これと無関係とは思えないわ」
 霊夢はまだ真っ青な顔をしていた。
 「ここに書かれている<敷令法>の施行時間は今日の午前0時、魔理沙の話を聞くに時間的にも辻褄が合う」
 布団を畳む霊夢。それはどうしようもない焦燥感を打ち消そうとしての無意識の行動かもしれない。
 「どちらにせよ《私たちが能力を封じられた》という事実だけははっきりしている。関係あろうが無かろうが一度紫と連絡を取る必要があるはずだ」
 魔理沙は〈敷令要項〉を霊夢に返して言う。
 「私もそう思うわ。状況が釈然としない以上、私たちで議論していても無駄。さっさと紫に会いに行きましょう」
 アリスは静かに言う。

 「そうね、まずは・・・って」
 霊夢は立ち上がりかけて、また腰を下ろすと頭を抱えた。
 「どうしよう、紫の家なんて知らないわよ・・・」

 「っ!そうだった、紫あいつ確かマヨヒガとかって訳分からんところに住んでいたんだ・・・」
 魔理沙も眉間に皺を寄せて額をこつこつ叩いた。魔理沙はうまくいかないことがあったりするとこめかみ付近を指で叩く癖がある。
 「しかも私たち空飛べないし・・・完全に積んだ・・・」
 


 3人の溜息が午前の青空に溶けて消えた。
初投稿です。最近政治の話題が多いのでこんなテーマでやることにしました。一応シリーズにするつもりです。
カス文才ですが、批判なりしてやってくれるとうれしいです。
ゴルジ体
作品情報
作品集:
16
投稿日時:
2010/06/06 11:49:09
更新日時:
2010/06/20 11:18:43
分類
新政治
霊夢
魔理沙
アリス
1. 名無し ■2010/06/06 21:22:39
人間側は完全に詰みですなコレ。
親人間派妖怪の動向に期待。
2. 名無し ■2010/06/06 22:37:58
人妖のバランスを一方的に崩すとか、あのババァ、ついにボケたか!?
3. 名無し ■2010/06/06 22:49:10
少なくとも紫が堂々と正式な文章(おそらくスペカルール制定じと同じ手続き)で発表している以上、冗談ですませる理由はどこにもない。
それなのに霊夢が何も考えなかった時点で人間の積みはほぼ確定だし、紫がそんな制度を立ち上げたのは正解かもしれない。
4. 名無し ■2010/06/06 22:58:21
新制度施行後が気になる……。
やっぱりEnjoy & excitingな幻想郷になるんだろうか。
5. 名無し ■2010/06/06 23:49:01
アリスが出て来た時点で魔里沙ピンチかと思ったが
そういえばアリスは人間に友好的だったな
最近産廃に毒されてる
6. 名無し ■2010/06/06 23:50:06
何で妖精迫害するのー
7. 名無し ■2010/06/07 00:28:40
魔理沙は失神して霊夢の布団は汗で湿り
双方失禁と捉えた俺はだいぶ汚れている
8. 名無し ■2010/06/07 01:15:55
「博麗の」霊夢まで力が出ないという事は、紫一人で大結界を維持する方法を手に入れたのか…
このままじゃガリバーの馬の国のあの家畜並かそれ以下決定か…厳しいなぁ
9. 名無し ■2010/06/07 03:10:04
さあどうなる、そしてババァは何を考えているのか
10. ぐう ■2010/06/07 08:50:55
これは先が読めなくてドキドキします。
11. 名無し ■2010/06/07 17:48:46
核兵器を幻想入りさせてやれw
12. 名無し ■2010/06/08 01:56:45
世界観に駒を進めると茫洋として収拾付かなくなるから
誰か個人に焦点当てた方が逆に分かり易いぞ。
幾つか参考になりそうな有名な手本があるじゃん
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