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『私は……』 作者: 名前がありません号

私は……

作品集: 17 投稿日時: 2010/06/16 20:41:34 更新日時: 2010/06/18 02:12:45
1.

私は。
私は。
私は。
私は。
私は誰?




      かちり




暗い。
薄暗い。
ここはどこだ?

とても身体がだるい。
目が見えない。
私は何処に居るんだ?

臭い。
何だこの臭いは?
くそっ、身体が動かない。

なんだ? 急に身体が……

ぎゃあああああああああああ!!!
痛い痛い痛い痛い痛い!!

な、ナニが、おこって……

うぎゃあああああああ!!!

臭いがどんどん強くなって……

うごぉ、げぇぇ!!

うぐぁぁ……あ?
急に痛みが引いていく。
臭いも消えた。

なんだ、ただの夢か。
はぁ、びっくりさせられた。
こんな夢はもうウンザリだ。
はぁ、早くこんな夢からは目覚めてしまおう……。





      ぶつん













2.


私は。
私は。
私は。
私は誰?




      かちり



うぅ……。
腹の虫がぐぅぐぅ鳴ってやがる……。
もうずっと飯なんざ食ってないからな。
腹の虫も鳴くよな。

でも、こいつの為だ。
仕事のできねぇ俺の身体じゃ、こいつらを養ってやれねぇ。
平太郎の為には、俺が我慢しなけりゃ、な。

く、くそっ。
俺は何をしようとしてた?
平太郎が、うまそうに見えた?
何考えてる!
くそ、どうにかなっちまったのか俺は!

や、やめろ。
く、喰うな。
そいつは、俺と弥生の間に生まれた命なんだぞ?
やめろ、やめろよ。
喰うな。食うんじゃねぇ!

喰うなぁぁぁぁぁぁ!!!!




      ぶつん














3.

私は。
私は。
私は誰?




      かちり





目の前がしょぼしょぼする。
目の前に誰かいる。顔に何かがぽたぽた落ちてる。
誰だっけ? とても厳しいけど、優しい人だった気がする。
そう、その人は……。

先生。そう、先生だ。
私に文字の読み書きを教えてくれた先生だ。
優しかった先生だ。

なんだろう、冷たい。
お水かな?
なんで、先生はお水を私にちょっとずつ落としてるんだろう?
うーん、わかんないや。
でもきっと、先生のことだから、何か意味があることなんだよね?

あ、少し眠くなってきちゃった。
居眠りなんてしたら、先生に怒られちゃう。
ごめんなさい、先生。
今、とっても眠いの。

あれ?
なんで、先生は泣いているんだろう?




      ぶつん














4.



私は。
私は……誰だ?



      かちり


あ。
来たね。
ずっと待ってたんだ。
見てよ、これ。

俺もようやく一人前の“妖怪”になれたんだ。
先生と同じ、妖怪に。
ずっと、ずっと先生に憧れてた。
こうでもしないと、先生はこっちを向いてくれなかった。

嘘を言うな!
先生は皆を見る。
俺は、先生に俺だけを見て欲しかったんだ!
俺は先生を独り占めしたかったんだよ!

へぇ、やるの? 先生。
いいよ、先生を力ずくで物にしてやる!!







はは、当然だよね。
だって、俺は人間だもん。
妖怪になんか、なれっこなかった。
でもさ、ようやく先生に近づけた気がする。

先生が俺の為に本気で怒ってくれた。
それだけで、俺うれしいよ。
先生、泣いてくれるの?
俺みたいな奴の為に、泣いてくれるの?

でも、先生に殺されて良かった。
このままだったら、もっと殺してたかもしれなかったから。
ありがとう、俺を止めてくれて。
ありがとう、慧音先生。



      ぶつん
















5.



私は……。





        かちり



誰かの夢を見ていた気がする。

連続で、誰かの夢を見ていた。

かなり疲れているらしい。このところ満足に休めてなかったからかもしれない。

田植えは順調に進んでいる。天候もこのまま行けば豊作が見込めるはずだ。

睡眠時間は充分に取れるだろう。

健康を保てないようでは、先生としての面目も立たないしな。

徹夜は今後は控えるようにしよう。


必要な予算がこれだけか……。寺子屋の増設はまだ先になりそうだな。

とりあえず、当面の予定はこれで済んだかな。

臨時の予定が無ければ、今月の予定もお終いか。

初孫が生まれる三田の家にも、お土産を持っていかないとな。

一太郎は元気だろうか。鍛冶屋で頑張っていると聞くが、今度遊びに行ってやろう。

弥七が怪我をしていたと行っていたな。時間が取れたら、お見舞いにいくか。

ダメだ、眠気が大分頭に回ってきた。

よし、今日はもう寝よう。明日からまた頑張らないとな。



                 ぶつん
慧音が倒れた。
妹紅はそれを聞いて、急ぎ永遠亭に向かった。

通された部屋では、まるで死んだように眠る慧音の姿があった。
そして傍らには、永琳がいる。

「なぁ、慧音が倒れたって……」
「過労が祟ったようね。殆ど休み無く働いていたみたいね。命に別状はないわ」
「そうか……」
「ただ、精神の方はかなり深刻よ。当分は入院した方がいいわ」
「え? どういう……」
「原因はわからないけど、病室に運ばれた後、暴れたりうなされたりが酷かったのよ。多分、精神になんらかの異常があるのだろうけど、詳しくは……」
「………私はどうすればいいんだ?」
「しばらくは、彼女のそばに居てあげなさい。多分、それが一番いいと思うわ」
「わかった」
「それじゃあ、私は他の患者を診てくるから。何かあったら、そこの兎に知らせて頂戴」
「ああ」

そういって、永琳は病室を出て行った。

妹紅は、眠る慧音の手を握る。
慧音の顔はやや血色が悪く、手も少しほっそりとしていた。
その顔は少し苦しそうで、妹紅は辛い顔になる。

「なぁ、慧音……お前は何を隠してるんだろうな」

妹紅は呟く。
妹紅は慧音の能力を知っている。
歴史を作る能力と、歴史を食べる能力。
もし、そのどちらかの能力が影響しているとすれば、
その苦しみは慧音にしかわからない苦しみなのだろう。

だが、それなら私に言って欲しい。
伝えて欲しい。吐き出して欲しい。
その苦しみを。自分の中に溜め込まずに。
妹紅はその手を握る。
しかし、どんなに強く思っても、願っても、その手を握ってみせても。

何も妹紅には、伝わってはこなかった。








     ※最近、人気のあとがき※

5.に慧音の叫びが隠れていたりするのです。

※4氏への返答
分かりやすく言うと、慧音が人里で起こったり、人里の人間が巻き込まれた惨い事件を全部食べたけど、
毎回食べた歴史にうなされ続けて(本文中)、ついに耐え切れずにダウンしてしまった(あとがき文)。

というか、こういう説明が必要な時点でアウトだよね、もうしわけない。
今読み返すと、あちこち説明不足だわ。
名前がありません号
作品情報
作品集:
17
投稿日時:
2010/06/16 20:41:34
更新日時:
2010/06/18 02:12:45
分類
慧音
1. 名無し ■2010/06/17 10:47:09
誰かの夢を見るって何かのゲームであったな
何だったかは思い出せんが
2. 無白 ■2010/06/17 18:57:43
けねもこ好きの自分……
そういうテンションの作品じゃないのに、歓喜してしまった…!

来になる…
3. 名無し ■2010/06/17 21:24:55
だれかたすけて ひとりはいやだよ
4. 名無し ■2010/06/17 22:01:14
バカですまんが、よく状況が分からぬ
5. 名無し ■2010/06/18 09:26:04
誰でも人に分かってもらいたいと思っているから、案外さとりとか好かれやすいんじゃないかな?
逆に恨みを買って殺されたりして。
6. 名無し ■2010/06/18 20:06:48
夢の内容って自分じゃ理解できない時があるよね。
そういう時は誰かに教えてもらうと安心する。
まあ自分のことすら分からん奴には何を聞いても無駄だが・・・
7. 名無し ■2010/06/19 04:39:09
慧音は苦労人だな
だからこそいじめが映える
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