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『題迷未定〜此処は何処と飛ぶ反魂蝶〜・伍/後』 作者: シ骸中尉

題迷未定〜此処は何処と飛ぶ反魂蝶〜・伍/後

作品集: 18 投稿日時: 2010/07/07 09:28:26 更新日時: 2010/07/23 12:13:08
題迷未定〜此処は何処と飛べ反魂蝶・伍/後

「愛に形状も定義も無い。それは真理だよ」
チェス盤のような柄の床、黒い高そうなソファー、植木鉢に植えられた観葉植物、
透明なガラス製のテーブル、その上にはクリップで留められた書類が
無造作に置かれていた。
ソファーに座っている武装親衛隊の格好をした眼鏡を掛けた男、中尉が
向かい合って座っている東風谷早苗に言った。
中尉は相変わらず死んだ魚のような眼をして、ソファーに寄り掛かって
のんびりしていた。何時も一緒に居る筈の奴隷兼恋人である幽々子は、
どういう訳か中尉の足に踏まれていた。
まるで虎の毛皮の絨毯(?)のような扱いである。

此処は中尉の「オフィス」兼調教部屋である。
主に新米調教師の代わりに奴隷を調教したり、銃火器を密輸入もしくは
密輸出するビジネスをする際の部屋として使われる事が多い。
中尉のgdgdな美的センスが盛り沢山のこの部屋は、巨大な水槽はあるわ
大きな額縁に収められた「人花」の写真はあるわでカオスである。

東風谷早苗は、この都市で知らぬ者は居ないと言われる奴隷商人(多分)
の会社「モリヤインダストリー」の社長をしている。
対する中尉は、ある意味で有名な「狂人」であって何らかの会社などを経営
している訳では無い。
たまに仕事を依頼されて、それを遂行して生計を立てている(多分)、
つまりは「何でも屋」をする事はあるが。

「それで?結局此処が「本物の」幻想郷だったのか?」
「いや、そんな事は中尉もご存知の筈ですが。
ええ、まあはい。ようこそ、とでも言っときましょうか。幻想郷へ」
中尉は窓から見える長方形の建造物を見る。
それは東京タワーよりも、きっと外界のどんな建物よりも長いであろうと
言えるほどの長さだった。
「俺がゆゆ様・・・もとい幽々子を飼う前から、あのよく分からん塔が
 あった訳だが、アレは一体何なんだ?」
「アレは・・・アレは「第二の幻想郷」と此処を繋いでいる「糸」です。
 外見上は塔に見えますが、中身は・・・例えるなら空港を縦長にして
 規模を肥大させた「ターミナル」です」
早苗はまさに蛇のような目つきで中尉が踏ん付けている幽々子を見る、
目隠しをされ、首輪を着けたその姿はとても滑稽だった。
中尉はPDAをポケットから引っ張り出すと、ある小説の一部を表示した。
それを読み上げる中尉。
「「幻想郷は崩壊と再生を繰り返す。八雲紫と博麗霊夢はもはや
 「管理機能」として生かされているだけである」これが今の幻想郷の真実の一部
 か」
「まぁ、そうなった原因の一つが貴方達外界の人間なんですけどね。
 幻想郷は一度完全に崩壊しました。どんな崩壊かは・・・思い出したくありません」
「知らないだけではないのか?」
「本当に言いたく無いだけですよ」

中尉はPDAを閉まって、書類を持ち上げる。
「Project//Clone」と名付けられたそれは、早苗が中尉に会いに来た理由である。
「幾ら生命維持装置に繋げても、無駄な「パーツ」を削いで栄養の無駄を
 無くしても、もう身体そのものが限界を迎えてます」
「そして、クローンを作る事になったわけだ。それだったらオリジナルから
作ればいいじゃないか。なのに何でこんな―――」
書類には「ターミナルより行き来可能の第二幻想郷に向かい
捕捉できた「オリジナル」の体毛もしくは身体の一部を採取する」と
簡潔に綴られていた。
「何でこんな面倒臭い事をする事になってるんだ?」
中尉が早苗を睨んで言う。
「実はですね、確かにクローンを開発するならオリジナルから創れば良いのです
 が問題は、遺伝子が壊れちゃっている。とでも言うのでしょうか。
 13体開発して8体が完成直後にゲル状になって死亡。
 内3体が、カプセル内で死亡。最後の2体が、一応完成したのですが・・・
 一週間後に暴走。研究員5名を八つ裂きにして「処分」されました」
負けじと早苗もまるで家畜を見るような眼で睨む。
しかし、中尉はそんなもの気にも留めずに同じように睨む。
「成る程、だから「あんな所」に行く訳か。要はあいつらはもはや
 管理する事しか出来ない「システム」に成り果てたって訳だ」

「ハッキリ言ってやる。無理だ。今あそこがどんな事になってるのか分かってて
 言ってるんだろ?100回も崩壊と再生を繰り返している、まるで
 ビデオテープのような世界で、しかもその崩壊の原因が霊夢の色恋だぞ」
ターミナルの頂上にある「幻想郷」は、霊夢の初恋が原因で100回もの
崩壊と、再生を繰り返している。
「あっちでは親切な誰かさんのお陰で再生してもらって更に崩壊の原因を見つけ
 たが、今まで一回も崩壊を食い止めた事は無かったんだぞ。
 オマケに、予測されている崩壊の日まで後たった一週間なんだ。
 リンダキューブよりムズイじゃねぇか」
珍しく中尉の眼に光が宿り、明らかに拒否と恐怖が入り混じった色を成している。
「分かってます。ですが、このままではオリジナルの幻想郷が崩壊して
 しまうのです。お願いです、このトチ狂った楽園を守って下さい」
早苗が頭を下げた。
それに心を打たれたのか中尉が頭を掻きむしって答える。
「・・・分かった。分かったよ行けば良いんだろ行けば」
「ありがとうございます。それで、用意して欲しい物とかは・・・」
「別にいらない。「もう準備」してあるからな。ただ一つ言っておく」
「何ですか?」

「俺が今マットとして使ってるこの愛おしい奴隷に手を出してみろ、
 その翌日「人花」で発見されると思え」
人花。
それは狂った芸術。
人間の脳に植物の種を植え、人間植木鉢にする芸術。
中尉の額縁には、何故か「人花」にされた幽々子の写真が入っている。
両手足は切り落とされ、眼は虚ろに澱んでいて、頭からはピンク色の
花が咲いている。
恐らくは「クローン」なのだろう。彼が愛しい奴隷を殺す事をすることなど
ありえないのだから。



「ターミナルに行ってくる」
「ご主人様、理由を聞いてもよろしいかしら」
早苗が帰った後、中尉は幽々子をベッドに拘束して、その豊満な胸で
遊んでいた。
理由は特に無い。中尉は冷めた表情で馬乗りになって揉んでいた。
「理由?あぁ聞いてたのか。あの蛇女の為にサンプルパクりに
 第二幻想郷に行くんだよ」
「お言葉ですがご主人様、第二幻想郷は明日で後一週間でまた
 崩壊するですわ。私がそんな危険な事を放っておくと思ってるの?」
「いや、大丈夫だ。崩壊するのは「秩序」だけだ。部外者の俺に何らかの影響が
 あるとは思えない。いや思いたくない」
中尉は少し後悔した。早苗にはああ言ったものの、やっぱり怖い物は恐いのだから。
だが、明日には出発しなければいけない。
だからこそである。
だから、今ここで最も愛する奴隷であり恋人である幽々子の感触を
身体に、脳に焼き付けようとしているのだ。
少しでも恐怖を和らげればそれでいいのである。
「じゃあ、もしですわ。もしご主人様が秩序が崩壊したお陰で狂っても、
 この奴隷の事を、忘れないで欲しいわ。ご主人様」
幽々子も中尉が「消える」事を恐れてか、その表情には恐怖が見えた。
「私はもう、中尉無しにはいられないモノになってしまったのですから」
「素晴らしいよ幽々子。俺も君がお前無しにはいられないモノになっているのだから」

「じゃあ、私は何時も通り「マゾの作法」でご挨拶するのね」
「あぁそうさ幽々子。そして俺はコインロッカーから準備した道具を全て
持って行く。んで後は長い幻想郷への旅路って訳だ」
二人はお互いに微笑み合うと、激しく求め合った。



一方インダストリー。

「早苗、中尉は行ってくれるって?」
「はい、行ってくれるそうです」
「しっかしあの狂ったSSもどきのあの中尉。一体何考えて生きてるんだか」
早苗、諏訪子、神奈子の三人が、オフィスで中尉の写真を囲んで言った。
「「本物」を持っているのに、「民間用」の幽々子を大量に買っていましたしね。
 しかも勝手に私達に請求書まで送って」
「そしてその幽々子は殆ど嬲っている。それも調教師が吐き気を催せる位に」
「一部は達磨にしたり「人花」にしている。しかもそれを写真に撮って
 飾ってるもんな」

「一番変なのは、一体どうして第二幻想郷の状況を把握しているんだ?」
さっきも話した通り中尉は何らかの会社や組織を纏めている訳では無い。
つまり、情報収集の際には自分の足か奴隷で探し集めなければならない。
しかし中尉は、そんな素振りを見せずに、様々な情報を揃えている。
時には、一世帯の家庭全てまで。
「流石は、「本当の外界」の人間。と言った所でしょうか」
「だけど私は思うよ二人共」
諏訪子が言った。
「あいつは死にたくないから幽々子を奴隷にしたんだろう。あいつは死を
 操るからな。だけど今回のように、死ぬかもしれないような依頼を
 受け入れて行くんだ。死ぬのが怖すぎて、とうとう人格までもどうか
 しちゃったんだろうねぇ」



翌日ターミナル

「これもお願いしますわ。あ後これもですわ」
幽々子は頼まれた荷物を次々と管理員に渡していく。
それはトランクだったり、釘で打ち付けられた木箱だった。
それらには必ずSSのマークとナチスドイツのマークがシールが貼られていた。

そして、中尉はと言うと。
コインロッカー3つ使って隠しておいた「準備」を全て持ち出して、
第二幻想郷へと向かおうとしていた。
「あ〜ぁ、結局行く羽目になっちゃったが、まぁいいや。丁度暇だったし
 それに―――――」

「面白そうだしな」

中尉の眼に、光が宿った。
それは子供のような―――純粋な色だった。
縦版の新幹線に乗り込み、自分(早苗)が取っておいた席に
座ると、幽々子に電話を掛けた。
「ご主人様、どうしましたか?」
「あぁ、もう一回挨拶の練習をしてもらいたくてな」

「分かりましたわ。では、ごきげんよう。私西行寺幽々子と申しますわ。
 昔は冥界の管理人をしておりましたが、今では武装親衛隊の恰好をした
 ご主人様こと中尉の忠実な外僕ですわ」
「良く出来ました。じゃあ、また会おう。愛しい奴隷」
「光栄ですわ。ではまた会いましょう。愛しいご主人様」
後書きでもあるシ骸の鳴き声

最近スランプ気味+忙しくて執筆する時間が無いでござるの巻。
おは4番レジへどうぞ、シ骸中尉です。
前の短編の日本語版忘れたでござるの巻。

相変わらず意味不明な駄作ですが、一応、プロローグから
脱出できた。と思います。
中尉は幽々子をちゃんと愛してます。
幽々子は中尉をちゃんと愛でてます。

>>1
最期は一体どうなるのか、自分でも考えてませんww
シ骸中尉
作品情報
作品集:
18
投稿日時:
2010/07/07 09:28:26
更新日時:
2010/07/23 12:13:08
分類
題迷未定シリーズ
新章開幕?
7/23コメント返信
1. 名無し ■2010/07/08 01:56:01
最後まで見よう
続けてくれ
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