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『ナズーリンは三度死ぬ』 作者: 赤間

ナズーリンは三度死ぬ

作品集: 19 投稿日時: 2010/07/24 04:04:46 更新日時: 2010/08/16 23:11:47
・キャラ崩壊
・俺設定
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 ナズーリンは150回死ぬ。
 あれだけのカリスマを持ちながら、なかなかどうして一面というロリキャラの仲間入りを果たし、アワレなことに一面の立ち絵より五面道中の立ち絵の方が可愛いと評判である。
 だが、それには誰もが一度は予想したであろう、しょーもない理由があるのだ。
 あの一面ナズーリンと五面道中ナズーリンはまったくの別人である。この場合別妖という造語を用いるとしよう。とにかく、一面と五面道中のナズーリンは別妖なのである。見分け方?そんなもん立ち絵見たらわかんだろうがよ。
 そのため聖輦船のメンバーは一面ナズーリンを「ナズーリン」と、五面道中ナズーリンを「ナズ」と呼び分けているのである。
 二人は双子の鼠であり、物心つく前からこうして呼び分けられているため、本人達が間違えることはそうない。
 ならば他のメンバーが間違えるのではないかという疑問が浮かびそうだが、案ずること無かれ、二人の性格は180度違っている。パッと見区別はつかないが、相手に対しての態度や表情ですぐに見分けられるのである。
 今回は、双子の姉であるナズーリンについて語ろう。









 一面のナズーリンには表情や言葉が侮辱と皮肉に満ち満ちている。一言一言に皮肉が混ざっており、ひとに対して「キミは死んだ方がいいのではないかねぇ?」「むしろ死ね。氏ねじゃなくて死ね」というように、平気で心をポッキーのようにパキパキと砕き咀嚼するように踏みにじるのが得意中の得意である。生真面目なようで怠惰であり、内蔵が全て反転しているのではないかと疑わしいほどに天の邪鬼で、目上相手にへつらう素振りさえ見せず、口を開けば文句を垂れ流し、それでいて自尊心は有り余るほど詰め込み、ひとの不幸――特に上司である寅丸星が物を無くしたと泣きついてきた日には、深夜にこっそり台所に侵入し寅丸のすがるような表情と目尻に溜まった涙を思い出してはそれをおかずに飯が三杯食えるという、神がおわしますこの船に一番ふさわしくない、まさに妖怪らしい妖怪である。

「ご主人、無くし物見つけておいたよ。……まったく、なんでぬいぐるみを鍋の中に入れたまま忘れるかな。というか、何故あんなところにぬいぐるみを置いたのかというところから説明して欲しいね。
 もしかしてあのまま煮込んで夕飯にでもするつもりだったのかい? おいおい、よしてくれよご主人。私はグルメで食べることを専門としているが、何百年とかけて培われた私の舌が回答するに、間違いなくそれは不味いよ。これは憶測だが、きっと糞尿をじっくり煮込んでちゃんとした味付けした料理とはいえないグロテスクなモザイク必須のモノより不味いよ。いやまぁ、私はそんなもの食べたことはないし一生食べたいとも思わないが。
 とにかく、こんなうっかりはよしてくれないか。食事当番の貴方のことだから、ついこうしたうっかりをしてしまっても見つからないとでも思っていたのだろう? 甘い、甘すぎる。綿菓子より甘い。私の部下達は常に目を光らせているのだよ。優秀なことにね」

 ここまで言い切ってため息を吐くナズーリン。尻尾のほうからはチュウチュウと得意げに胸を張る鼠たちがいた。
 一方いつものうっかりパワーを発揮してしまった星は、塩をかけられた蛞蝓のようにしおしおしぼむ。

「てかさぁ、貴方のような獣臭さが染み付いたぬいぐるみを煮込んだら間違いなく臭いだろう? ほら、どこか南の島にあるヤギ汁。あれは獣の臭いが酷すぎてエンターテイナーが大きすぎるリアクションをとるのさ。わかるかい? 獣の臭いってのはどう調理しても取れないのだよ。貴方の体から染み出る生肉ばっか食って歯も磨かない腐った牛乳をたっぷり染み込ませた雑巾のような臭いはね」

 ここで言うヤギ汁はヒージャー汁という。美味しいのだが、めちゃくちゃに臭い。手は伸びるのに鼻が拒絶するという不思議体験ができるよ!

 もはやぬるいぢめの領域に達しているナズーリンの毒舌は止まることを知らず、昨日寝ぼけてうっかり鍋の中に愛用のぬいぐるみを入れてしまったことを星は唇を噛みながら後悔した。もし鍋の中でなく冷蔵庫の中だったのなら、水枕代わりだと言い訳できたのに、と。
 考えるべきところはそこでないと思うが、とりあえず後悔しているフリをしておく。
 でも昨日夜更かししたせいか眠くなってきちゃったみたい。虎は夜行性であるが、一日一回昼寝をしないと人型である星には辛いのだ。夜はバッチリ目が覚めるくせに、起きていると疲労が溜まる。面倒くさい体になってしまったものだと悲観する。
 目尻には欠伸を噛み殺したために溜まった涙が今にも頬へ転落しそうだった。
 目ざといナズーリンは、それを後悔と自分の愚かさを憂いて溢れたものだと勘違いし、愉悦に歪めた顔をさらに歪に歪める。元々切れ目だった瞳はさながらのび○に自慢しまくるあの饒舌なスネ○のように細められ、一本線のようだ。口裂け女も逃げ出すほどつり上がった唇は、つり上がりすぎて美しい桃色が白く変色している。
 端から見れば凄く気持ち悪い。でもそこが可愛いよ。

「泣いてしまったのかいご主人。アワレだね、実にアワレだ」

 そこには欠伸を噛み殺すアワレな寅色の神がいた。

「でも仕方ないことなのだよご主人。これは貴方のためにやっているんだ。決して、自身の私情を吐き捨てているわけではないことを理解して欲しい。
 ご主人はうっかりさんだ。それは周囲の事実であり、寅丸星=ドジッ子という固定概念は簡単に覆すことはできないだろう。まぁ、それはそうなるように僭越ながら私もお手伝いさせて貰ったんだがね」オホンオホンとわざとらしい咳をして、「話を戻そう。ご主人、貴方は神である。毘沙門天の弟子、つまりは神の弟子だ。それ相応の態度と気迫がなければいけない。カリスマがなければいけない。真っ直ぐに生きていかなければいけない。ああ、真っ直ぐで思い出したが、貴方の弾幕。あれはなんだい。あのへにょりレーザーは。毘沙門天の弟子とあろうお方があんなナヨナヨとしたレーザー打って毘沙門天に面目ないとは思わないのかい? そうそう毘沙門天で思い出したが……」

 流石は鼠頭のナズーリン。話の飛び方が女子並みだ。
 長ったらしい、話の脈絡もない、本筋から必ず逸れてしまいには自分の部下への愚痴にまで発展するナズーリンの有り難くもないお話に、よくもまぁ口が回るなぁとのんびり構えながら星は夢の世界へ旅立たんとしていた。パッチリおめめは瞼のシャッターで見えなくなり、小うるさいナズーリンの説教も子守唄と化した。立ったまま寝るのは実に困難であるが、神の弟子がこれぐらいできなくては示しがつかないというもの。
 しょーもない特技であった。

「そしたらウチの小鼠達が……って、ご主人。ご主人! 部下がせっかく貴方を正しい方向に導かんとしているのに、ご本人は居眠りですか! ああ、嘆かわしい嘆かわしい。私の小鼠達も泣いている。チュウチュウと、ご主人のために泣いている。あれだけ愚痴を溢したが、この子らは本当にいい子達なのだよ。
 だからご主人! 目を醒ましてくれたまえ、私のために――かぺっ」

 瞬間、ごぅんと風を切り、どこからか飛んできた凹凸のある物体に、ナズーリンの体は吹っ飛ばされ、近くにある鋼鉄製の釜戸へ頭を突っ込んだ。バキャリと骨が潰れる音がした。悲鳴も上げる暇なく硬い釜戸にめり込んだナズーリンの体は強すぎた力のあまりアルミ缶を潰したようにコンパクトになり、頭から足の裏までおよそ30センチ。内蔵は全て圧迫されて、プレス機にかけられたように一つのブロックへと化していた。頭は衝撃で上半身にめり込み、目玉が見えるか見えないかぐらいまで沈没し、生意気な瞳はぐりんと白目をむいた。
 腕はもげ、生きているかのように星の首へ飛んできた。無表情のまま片手で払うと、気分の悪い音を立てて床に落ちる。小さな小さなおててはただの生ゴミになった。
 勿論息はない。

「……五月蝿い蝿だ。眠気軽く醒めたな、こりゃ」

 星は右手をプラプラとさせながら、空いた左手で煙草を取り出し火を付けた。

「寝起きの煙草はやっぱり不味いな……生臭いのも原因か」

 ナズーリンを殴り殺したその右手の持ち主は寅丸星。毘沙門天の弟子でありナズーリンの上司である。
 品行方正、成績優秀とまで謳われる彼女が何故こんな行動に出たのかはとてもとても簡単な理由があった。
 彼女は寝起きと睡眠を妨げられることを極端に嫌うのだ。逆切れするほどに嫌う。苛立つとかいうレベルじゃない。
 聖輦船のメンバー――特にナズーリンとナズ――はそれを知っているはずなのだが、毎回こうして嬲られるのである。まぁすぐ復活するというか復活させるから問題ない。


 これから巫女か、はたまた魔法使いがこちらに向かってやってくる。星たちを退治しに。
 聖も毎回よく封印されるよなぁ、と煙をもわっと吐きながらぼんやり考えていた。

「おい鼠。はやく戻ってこないと小傘ちゃんが慌てるだろう、このダラズ。手前一面だろ。早く準備しろ」

 ナズーリンは動かない。

「チッ……。手加減したつもりだったんだけどな。やっぱお前弱いわ。流石一面だな。小傘ちゃんと腕相撲しても負けるんじゃないのか。これだから頭でっかちは……ウチにそういうのはいらないんだけど」

 ナズーリンの瞳は水揚げされた深海魚のように飛び出ている。反論はおろか言葉さえ語りかけてこない。死体は喋らない。

「星、そろそろ聖を封印――って、またやったの? 飽きないね、あんたら」

 封印の準備が整ったのだろう、四面ボスの村沙水蜜が声をかけにきた。
 ぷかぷか煙草を吸う星と箱状になったナズーリンを見て、まぁいつものことかとため息をつく。

「アンタさぁ、短気すぎなのよ。眠いなら布団敷いてあげるから封印したら仮眠でもしなさいよね」

 このまま巫女と対峙して、相手が生きて聖の元に辿り着けるかわかんないからさぁ。とぼやく。
 星は煙を燻らせながら、呵呵とばかり笑った。

「とか言いつつ、ちゃっかり家具を丈夫にしてるところを見るとみなみちゅも学習してんでしょ?」
「そう呼ぶなって言ったでしょ」

 聖輦船は星とナズーリンがいつどこでどうなってもいいように、釜戸を始め冷蔵庫や掛け軸まで鉄を使用している。つまりいつでもやりたい放題なわけだ。
 初めてパッケージが開けられたときこそ、本当に聖が封印されていたのだから忙しくて嬲るどころではなかったが、ルナシューターを目指すシューターたちによって、ナズーリンはただの通過点でしかなくなりつつあった。どちらかといえば弾幕的な意味でシューターを手こずらせるのはナズの方。まあぶっちゃけて、ナズーリンはいてもいなくてもあまり変わらない。精々ボム一つか残機を減らすことぐらいだろうか。
 重宝されないからいくらでも甚振れるということだ。

 ナズーリンの出動前に死亡する回数が100に達したとき、聖輦船はズタボロの状態であった。
 ときには寝室で、ときには風呂場で、ときには居間で、ときには甲板で。
 星の右手が呻るとき、聖輦船は赤く染まるわ備品は壊されるわ死臭が一日中蔓延るわで目も当てられない状況だった。
 それを見かねた水蜜が備品を壊れ難くするために鉄を導入したのである。

「だからって、さあ。何でもやっていいわけじゃないのよ」
「前よりは楽でしょ」
「いやそうだけど……。アンタ毘沙門天の弟子っていう立場のクセに、なんでこんなにも大雑把なのかしら。嬲り殺すことだけには俊敏なのにいつもはうっかりさんなのよね」
「うっかりはその、まぁ、愛嬌」
「笑えるわね。愛嬌(笑)」
「ほっとけ」

 「ふん」と鼻を鳴らして、水蜜は血の臭いに顔を歪めた。
 幽霊なのに、死んでいるのに、血の臭いは苦手なのだという。
 辛い、と小さく呟く声が聞こえたかどうか知らないが、星がよっこらしょと腰を上げる。

「さぁて、聖封印して軽く寝ますか。本当なら、優しいお姉さんが添い寝に欲しいところ」
「アンカーでも抱いて寝る? その優しいお姉さんと大体同じ大きさだけど」
「冷たいなぁ。二重の意味で」

 煙草の火をナズーリンの窪みかけた瞳に押し付け鎮火する。ジュッと焼ける匂いが鼻を突いた。

「私は四面だし、アンタより早く出勤なのよ。アンカーは一個ぐらいなくても量産できるし」
「やだなぁ。私は人肌が恋しいって言ってんのに」
「もうそういう関係じゃないでしょうが」

 絡みつくような星の視線をするりとかわし、踵を返した。
 星はその腕を掴もうとして――空虚を掴む。
 舟幽霊には触れられない。

「水蜜」

 名前を呼んだ。
 この聖輦船で水蜜の名前を呼ぶのは数少ない。皆「キャプテン」とか「ムラサ」と呼ぶからだ。
 星のハスキー声が耳の中で輪唱する。
 昔よく呼ばれていた。懐かしくてもどかしい。

「……名前で呼ばないで」
「水蜜」
「…………アンタねぇ、ひとが迷惑してるってわかんないわけ。毎回毎回ナズーリン殺して、後始末は私に手伝わせるし。昔のよしみなんて、とっくのとっくに時効なのよ」
「執行猶予は?」
「……馬鹿言ってないで早く封印するわよ。いつまで経っても寝られないでしょうが」

 星に背を向けたまま、水蜜は淡々とした口調で捲し立てた。逃げ出したいと、言葉の端から漏れているのが聞こえた。

「ナズーリン復活させてから行くよ」
「あ、そ」興味無さげに水蜜は吐き出した。「ちなみに小傘とぬえはもうスタンバイしてるみたいだから、復活させたら投げ飛ばしてでも配置につかせなさいよ」
「また死んでもらっちゃ困るなぁ」
「手加減ぐらい、いい加減覚えてよ」その声色は懐かしむようでもあり、撥ね付けるようでもあった。「だから嫌い」
「はは、面目ない」
「……」

 それきり水蜜は口を閉じて、労いの言葉もかけず足早に去っていった。
 死体と星だけが残される。

「ふっ……んーっ、っはぁ……」

 少しでも眠気を覚ますために大きく伸びをする。それでもまだ体はずしりと重かった。
 颯爽と歩いていく後姿を眺めて、星は嘆息した。

「ままならないのが世の常ってか。世知辛いねぇ」

 笑いながら、しかし目は笑っていなかった。炯々と光るその瞳は、捕食者のそれに似ている。

「おい起きろ」

 軽く死体の足を蹴る。ぶにっとした感触に、全身が痒くなる。
 どうして死体はこんなモノなのに、水蜜はそう感じさせないのだろうか。
 まるで生きているかのよう。幽霊だから、肉体がないからそう感じるだけかもしれないが。
 触れたいのに触れられないのと、触れたくないのに感触はあるのと、どちらが辛いか。

「起きろっつってんだろ。仕事だ。早く起きて配置につけ」

 ナズーリンの顔を踏み潰しながら、星はニタニタとした笑みを顔に張り付けた。

「まぁ、もう一度死んで貰うことになるけどさ。すまないね、これがキミの仕事だよ」
誰もが一度は考えたようなネタ。ナズーリンの立ち絵進化しすぎて別人かと思った。
なので別人にしてみた。
ナズさんの方も今度書けたらいいなあ。

>>1様
ありがとうございます。現在執筆中です。
>>2様
ちなみに星ちゃんの持っているぬいぐるみはトラのふわっふわした可愛いヤツです。
>>3様
作者も最近星水ハマりました。おいしいです。
>>4様
ありがとうございます。嬉しいです。
続編は気長にお待ちください。
>>5様
過去話もいつか時間があれば。
>>6様
通過点止まりになってしまいましたね…。
赤間
作品情報
作品集:
19
投稿日時:
2010/07/24 04:04:46
更新日時:
2010/08/16 23:11:47
分類
ナズーリン
水蜜
1. 名無し ■2010/07/24 13:20:07
よろしい。ナズさんの方も続けたまえ。
2. 名無し ■2010/07/24 20:52:15
ナズーリンざまーww
星ちゃんがぬいぐるみ・・微笑ましいw
3. 名無し ■2010/07/25 05:00:48
何気に星水おいしいい。
4. 名無し ■2010/07/25 15:57:47
やべぇ、この設定面白い、ぜひ続編をお願いいたします!
5. 名無し ■2010/07/26 13:57:23
「そういう関係」だった頃の二人が気になりまする。
6. 名無し ■2010/07/27 22:30:14
確かにluna一面ナズーリンにはもうほとんど殺されなく…
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