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『刹那に輝く月よ、私は―― その5』 作者: 上海専用便器

刹那に輝く月よ、私は―― その5

作品集: 20 投稿日時: 2010/09/11 02:47:44 更新日時: 2010/09/11 18:33:47
世の中は不条理に満ちている。
――はそう思っていた。

どうして、分かってくれないのだろうか。
そっとしておいてくれれば、何もしなかったのに。
この世界の住人は、どいつもこいつも間に割って入ってくる。
最初は、邪魔だと思っていなかったのに。
最初は、邪魔なんて思ってもいなかったのに――


――は思った。
ならば、分からせてやればいい。
こんな思い通りにならない世の中なら、私が思い通りにしてやればいい。
私になら、できるはずなんだ。
私はしなければならないんだ。

私が、誰にも邪魔されずに――――するために









永遠亭の住人は寝息を立てて、、昔と変わらぬ平和な日常を過ごす夢を見ていた。
眠ったままの妹紅や文も、意識が無いまま、それぞれの幸せな日常の夢を見ていた。

そして、妖夢は―――その重い体を起こす。
隣には、愛する主が目を閉じていた。
「幽々子様……………全て、終わらしてきますね。」
近くに置いてある愛刀を手にし、幽々子の顔を最期に見届けた時である。

―――とある人物が、妖夢の目覚めを見逃すわけがなかった。

「あ、あなたは……?」
「さぁ………宴が始まるわよ………」
「どいて下さい………私は、幽々子様のために……」
妖夢は刀をゆっくりと抜き、その女と対峙する。
しかし、妖夢は彼女を切るのには気が引けており、峰打ちで済ませようとしていた。
そして、その女は妖夢の心の隙間に入り始める。
「ねぇ、妖夢。大好きなご主人様が捕まった時、誰かが酷いことを言わなかった?」
「酷い……こと?」
目の前の女は、よく妖夢が目にする表情をしながら、そう問いかけてきた。
いつもと変わらぬ態度に少し安心したのか、妖夢は警戒を解いて、その女と会話をする。
妖夢は思い出す。
幽々子が犯人と知らされた時のことを。
犯人であるはずがないのに犯人と決めつけられた時のことを。

『う、そ………!』
『な、何これ…………どうなってんのよ、一体!!』
『こ、これじゃあ…………』
『何てことだ……信じられない………まさか、本当に幽々子が?』
輝夜、てゐ、はたて、神奈子。
この4人はそれぞれ、このようなことを口にした。
しかし、どれも妖夢の心を傷つけるほどのものではなかった。
「よーく思い出して。誰かが絶対に酷いことを言った奴がいたはずよ。」
誰が酷いことを言ったのか、その女は確信を得ていた。
輝夜たちが永琳、そして慧音と対峙していた時の状況を、とある人物から"聞き出し"ていたのだ。
妖夢はさらに深く思い出す。
頭に思い浮かぶ限り、輝夜や永琳たちの言葉を出す。

『優しいわね、輝夜…………でも、こんな従者失格のクズなんて無視よ。』
永琳からの、冷たい言葉。
しかし、妖夢は本当に自分は失格と思っていたため、憎んではいない。
『妖夢、やめて!!こんなことをしても、何も変わらないよ!!』
現実から目を逸らそうとして、暴れ始めた時のてゐの言葉。
納得が行かない部分もあるが、それほどのものではない。
これらの言葉を投げかけられても、それほど妖夢は気にしていない。
幽々子への罵倒でも無く、侮辱でも無かった。
妖夢は目の前で立っている女性が思い過ごしをしているだけなのだろうと思い始める。
この様子では自分一人では思い出さないだろうと考えた女は、こう言った
「妖夢………気絶しかけた時のことを思い出して。」
「気絶、しかけた時?」
妖夢はもう一度だけ、博麗神社でのやりとりを思い出す。
首に衝撃が走って、目の前が暗くなっていく時に聞こえてきた声。

『幽々子が犯人なのは、"当たり前"なのに』


「そうだ………あの女が………」
蓬莱山輝夜の、この言葉が妖夢の反感を買うには十分だった。
輝夜はもちろん、写真を見たからそう言っただけであり、幽々子を悪女と思ってなどいない。
しかし、妖夢はその言葉を『幽々子が犯人か。そういうことをする女だからね。』と捉えた。
何も分かっていないくせに。
私の大好きな幽々子様のことなんて、何一つ分かってないくせに。
「思い出したのね?」
「はい………蓬莱山輝夜が………」
やっぱりね、と言い、その女はほくそ笑む。
なぜこの女が分かっているような様子なのか、妖夢は気にしなかった。
それよりも、輝夜に罰を与えることの方が重要だった。
「あの部屋よ。あの部屋で眠っているわ。」
「…………ありがとうございます。」
頭を下げ、感謝の意を伝えた妖夢は、静かに、そして確実に輝夜の部屋へと向かう。


葉音が聞こえてきた。
風が吹いている。
妖夢の銀の髪は、月の光に照らされながら、風に揺れていた。
その光は、輝夜への部屋まで続く道も照らしていた。
これほどまでに美しい光と音を堪能できるなんて、生まれて始めてだった。
幽々子のための復讐も、これならば絶対に失敗しない。
自然の恩恵なのか、自分の行為を祝福してくれているのか。
妖夢は、恐ろしいほどまでに落ち着いているいた。
刀を強く握り、目を瞑る。

輝夜は不老不死、差し違える覚悟はできている。
精神が壊れるまで、あの女に死を与えるのだ。

妖夢は、輝夜の部屋の障子に手をかけた。
音を立てないよう、ゆっくりと開けていく。
そこでは蓬莱山輝夜が、妹紅と幸せな時を過ごす夢を見て、幸せそうな顔で眠っていた。
自分の主は苦しんでいるのに、どうしてこいつは眠っているのだ。
「許さない…………幽々子様の仇……………」
外部からの干渉があり、頭が狂いかけていた妖夢の思考は完全に狂っていた。
輝夜が仇と考えるのは間違いなのは、誰の目にも明らかだった。
しかし、今の妖夢には怒りをぶつける相手が欲しかったのだ。
本当ならば、慧音や紫を殺したいがどうでもいい。
(早く、幽々子様のために、こいつを殺さなければ。)
ゆっくりと、そして確実に、輝夜の首元に、刀の刃先を置く。


ザシュ

輝夜の脈に切れ目ができ、部屋一面に血が飛び散る。
布団に血がつき、妖夢の銀色の髪も赤色に染まった
「ひぎぁっ!!?」
輝夜の獣のような叫び声が聞こえてから数秒後、輝夜は絶命した。
しかし、まだ気が済んでいなかった。
妖夢は次は、頭を削ぎ落とそうと頭部を切り取り始めた。
「だ、誰!?誰が私を―――ぎぎゃゃあああぁぁぁぁあぁぁぁっっ!!」。
ちょうどその時に輝夜は再生したのだが、頭を切り取られたショックでまた命を落とす。
輝夜と妖夢の近くには頭部や脳の欠片、眼球が散乱している。
「や、やめべぇっ!?ぐぼおおおほおおほほおほほ!!がばらばばばあばばばばばばばばばばば!!」
妖夢が、輝夜の頭に刀を突き刺している間も、輝夜は蘇生を繰り返した。
そのたびに死を繰り返し、想像を絶する痛みを感じる。
次はどうしてやろうか、と考えた妖夢はあることを思いついた。
「や、やめて………………おねがい…………」
訳が分からず、幽々子のように許しを請い始めた輝夜の両腕を妖夢は切り取った。
「ぐぐぐぅぅぅぅぅぅぅぅ!!い、いたぃ…………やめて……………」
外で聞こえていた葉音とは比べられない、汚い音を耳にした妖夢の気分が悪くなる。
妖夢はそれを気にせずに切り取った輝夜の腕を拾った。
輝夜は体を震わしながら、その女が何をしようとしているのかを考えて、怯えていた。
「まだまだ………まだだぞ……!」
切り取った両腕を持った妖夢は、その腕から晒けている骨を輝夜の目に突き刺す。

数秒間、部屋の中は無音となった。

輝夜の視界は暗くなったのに気づくと同時に、目から伝わる痛み。
それに気づくと同時に、輝夜の声は発される。

「ひぎゃああああああああああああああああああああ!!」
ついさっきまで流れていた涙は血の涙と変わり、輝夜の叫び声もさらに痛々しいものとなる。
「えーりん、たすげでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
壊される、この女に心を壊される。
誰かに来てもらわないと、私の精神が壊れてしまう。
「貴様ごときに、幽々子様の何が分かる…………!!」
妖夢の怒号の声が耳に入る中、輝夜は一方的に殺されていく。
何度も何度も輝夜は再び命を落としていくうちに、意識を保つことすら辛くなってくる。



その様子を見ながら、女は楽しんでいた。
邪魔者をただ消すだけでなく、苦しみながら消え去っていく姿を明日から少しずつ見ることができる。
――ああ、生きていてよかったと思える日が来るなんて。
女は、声を出して笑いそうになるのを堪えて、宴の準備に取りかかった。
輝夜に退場してもらうのはまだ早かった。
もっと苦しませ、絶望を与えなければならない。
でなければ、気が済まないのだ。
そのためには、輝夜と共に行動していた者たちを利用する必要がある。
「ふふ、あの二人にも手伝ってもらわないとね。」
その女は目を怪しく光らせて、別の部屋へと向かっていった。







「はっ!?」
輝夜は突然に目を覚まし、自分の体と周辺を見る。
昨晩、自分は誰かに襲われて、酷い目にあったのだ。
しかし、どこにも異常は見あたらない。
布団は綺麗な白色を保ち、畳にも一切血は付着していない。
あれだけのことをされていたならば、どこかに証拠が残っているはずだ。
ところが、どこにもそんな痕跡は無い。
「ゆ、夢………?」
輝夜はそう思い、外を見る。
太陽の位置を見ると、まだ朝なのが分かった。
「…………今日はもう起きようかしら。」
夢で気分が悪くなって、もう眠れない。
輝夜はそのために、重い体を持ち上げた。

食卓に向かうと、永琳や鈴仙、てゐが朝食を取っていた。
「おはよう、輝夜。」
「おはようございます、姫様。」
「今日は、早いウサー」
家族の様子もいつもと変わらず、輝夜はやはり、昨夜の出来事は全て夢だったのだと安心した。
「ふぅ、今日は最悪よ。」
「あら、どうしたの?」
「眠れなかったし、二度寝できる気分じゃないのよ。」
「珍しいわね。」
「珍しいですね。」
「珍しいウサー。」
「うるさい!」
いつもと変わらないやりとりと交わしながら、輝夜たちは談笑を繰り返す。

輝夜は、妹紅たちの様子を見に行った。
いまだに誰も目を覚まさず、ただただ眠り続けているだけだった。
輝夜を虐殺した――輝夜にとってはただの悪夢である――妖夢も眠ったままだ。
「ふぅ………まだまだ時間はかかるのかしら?」
妹紅が搬送されてから、もう5日が経つ。
この様子だと数ヶ月かかるのではないだろうか。
まだ妹紅のお腹は膨らんでいないが、その時になれば………
「だめよ、輝夜!そんなことは考えないで!!」
妹紅が妊娠している可能性は高いと話を聞いていたため、妹紅を見るとどうしてもそのことを考えてしまう。
そんなことよりも、妹紅とどう接していくかが大事なのだ。
「妹紅、また明日も来るわ。」
妹紅に別れの言葉を告げると、輝夜は治療室の扉を開けようとした。

「幽々子様の…………何が…………」
突然、妖夢の声が聞こえてきた。
輝夜はすぐさま振り向いた。
「妖夢、目を覚まし――――っ?」


視界が反転し、時間が遅くなっているような感覚を覚える。
ゆっくりとゆっくりと、自分が床に落ちていくのが分かった。
ぐるぐると回転する視界の中に、首から血を吹き出す体が入ってきた。
「え…………?よ、妖夢?」
血の付いた刀を手にした妖夢が、自分の体の真後ろに立っている。
まさか、あの夢は現実だったのか。
生首になった輝夜は目の前に広がる光景を見て、そう信じざるを得なかった。

そう思ったとき、輝夜はハッと目を覚ます。
「え!?あ、あれ?体はどこにも…………」
見ると、輝夜は玄関の扉に手をかけていた。
すぐに後ろを振り向いても、妖夢は目を閉じて、ぐっすりと眠っているだけだった。
離れた場所には刀が置いてあり、輝夜はすぐにその刃を見る。

血など一切付いていなかった。

輝夜はゾッとし、その部屋からすぐに出た。
「ど、どうしちゃったのかしら………」
幻覚を見るようなことになるなんて、今まで一度もなかった。
自分は妖夢に殺される夢じゃなく、妖夢に殺される幻覚を見ていたのだ。
これは永琳に相談しなければならない。
治療室から外に出て、輝夜は駆け足で永琳がいるであろう部屋へと向かった。
永遠亭の治療室に入った輝夜が見たのは、薬の整理を行っている鈴仙だった。
「あ、姫様。師匠にご用ですか?」
鈴仙は薬の片付けをしながら、輝夜にそう尋ねる。
「ええ…………ちょっと幻覚を見るようになって………」
気分を悪くしながらも、輝夜は正直に自分の症状を鈴仙に伝えた。
その言葉を聞いた鈴仙は手にしていた薬を全て片付けると、棚から瓶を取り出した。
「えっと………確か、これが幻覚を見たときに効く薬だったはずです。」
「はず?」
「あ………や、やっぱり師匠に聞いたほうがいいですね。」
鈴仙はよく失敗すると思ったから、輝夜はそう言ったのではない。
永琳の薬の中には、幻覚を見せる薬や毒薬、劇薬も多くあるのだ。
もしもそれらを飲んでしまったら、輝夜といえども治療が大変である。
――もっとも、輝夜に効く薬はそれほど多くはないが。
「永琳なら、蓬莱人にも効く薬を作ってくれるわ。もしくは、もう作ってあるか。」
「そ、そうでした。姫様には普通の薬は効果がないんでしたね。」
「ええ。じゃあ、永琳を呼んできて頂戴?」
「はい!」
鈴仙は輝夜の言葉に頷くと、すぐに部屋から出て行った。

一人残った輝夜は椅子に座り、机に伏して眠り始めようとした。
と思った矢先、部屋の扉が開かれた。
「永琳?やっと来てくれ………………」


そこに立っていたのは、銀色の髪の毛を持つ少女だった。


「う、うそ…………」
輝夜は尻餅をついてしまい、椅子も倒してしまう。
「い、いや………やめて…………」
「幽々子様は…………お前が思っているような女じゃない…………」
刀を抜き、一歩ずつ自分に歩み寄ってくる妖夢。
恐怖のあまり、自分の股間が生暖かくなっているのに気づけなかった。
「お願い………もうやめて…………」
体の震えが止まらず、さっきから少しも動けていない輝夜はそれでも許しを請い続けていた。
もちろん、妖夢の耳に届くわけがない。
「幽々子様を………幽々子様は……………」
輝夜のすぐ側まで近づいた妖夢を見て、輝夜はもう頭の中が空っぽになった。
そんな輝夜の腹に刀をあてがう妖夢。

「死ね。」


妖夢は、輝夜の腹を裂く
「………………………………」
恐怖のあまり、言葉すら失った輝夜は悲鳴すらあげない。
その腹の中に手を突っ込むと、大腸を取り出した。
失禁している輝夜の側に、数多くの肉片が飛び出した。
「今日はこれよ…………」
その大腸で輝夜の首を思い切り締め上げる。
「ぁ………………………ぅ………」
ところが、輝夜は言葉を発さない。
聞こえてくるのはほんの僅かのうめき声だけだった。
妖夢はそれでも輝夜の首を締め付けていくと、裂けた腹が直っていくのに気づいた。
不老不死め、どうしてお前みたいな奴が生き延び続けるのだ。
ますます妖夢は怒り、妖夢の手に力が入る。

締めすぎたせいで首が細くなっていることに気づいたのは、輝夜の首が宙に舞ったときだった。
「面白くない………もっと頑丈だと思っていたのに。」
口を動かすことのできない輝夜の耳には、妖夢の足音だけが聞こえていた。



「輝夜、どうしたの?」
「えっ!?ま、また!?」
気づくと、永琳と鈴仙、てゐが自分の目の前で立っていた。
さっきまで幻覚を見ていたようであり、自分はしっかりと椅子に座っていた。
「え、永琳。もう幻覚が酷いのよ!」
「ウドンゲから聞いたわ。一体、どんな幻覚?」
「それはね…………………………あれ?」
思い出そうとしたのに、輝夜の頭からは幻覚の記憶が出てこない。
自分は誰かに殺されたはずだ。
それなのに思い出せない。
そもそも、私は本当に殺されていたのか。
本当に幻覚を見ていたのか。
現実に起こっていたことじゃないのか。

輝夜の頭が混乱し始めていることに、永琳が気づく。
「輝夜………ひとまず、布団の中で休みましょう。」
「そ、そうね…………」
「鈴仙、布団を敷きに行くウサー」
「うん、分かった。」
鈴仙とてゐが先に部屋を出て行くと、永琳は輝夜を抱えて寝室へと向かった。
その間も、輝夜は幻覚の内容を思い出そうとしていた。
「それじゃあ、しばらく休んでなさい。」
「ええ…………お休み、永琳。」
「ふふ、お休みなさい。」
永琳がそう告げると、鈴仙とてゐが敷いた布団の中で輝夜は眠りについた。

しかし、体に重みを感じる。
布団中で何かが自分の上に乗っている。
(何か入っているのかしら?)
輝夜は掛け布団を払うと目を丸くする。


魂魄妖夢が、のし掛かっていたのだ。


「幽々子様が苦しんでいるのに…………お前は………お前はぁぁ!!」
輝夜が助けを求めようとした時には、輝夜の首に刀が突き刺さっていた。
「が………ごぁぁ…………うげぇぇ…………………」
意味をなさない言葉を発しているようだったが、輝夜は永琳に助けを求めていた。
しかし、これも幻覚ではないのか。
本当は全て、自分の幻覚で幽々子も妖夢も実は眠っていないのでは。
妖夢は本当は永遠亭にはいなくて、自分がそう思い込んでいるだけじゃないのか。

そんなことを思いながら命を落とすと、輝夜は目を覚ます。
「はぁっ、はぁっ………い、いない。」
布団をすぐに調べてみたが、やはり妖夢はいない。
それに、どこにも血は付着していなかった。
「もう………本当に訳が分からないわ…………」
「姫様、起きたウサー?」
「て、てゐ?ええ、起きたわ………」
輝夜の声を聞いたてゐは、声をかけて部屋の中へと薬を持ち運んできた。
それは、永琳が新たに作った薬だった。
「姫様、これで幻覚を見ずに済むらしいウサー」
「ほ、本当!?」
「えーりんが言っていたウサー」
「よかった…………」
胸をなで下ろした輝夜はその薬と水を一気に飲み干した。
(ああ、これで幻覚を見ずにいられるのね。)
永琳の作る薬に間違いはない。
そう信じるのは、永琳を知る者なら当然のことである。
「そろそろ夕飯だけど、どうするウサー?」
てゐがそう尋ねてきて、輝夜はすぐに首を縦に振る。
「なら、一緒に行くウサー」
「ええ、行きましょう。」
てゐに連れられ、輝夜は食卓へと足を進める。
「あら、起きたのね。」
「起きるわよ、永琳。薬をありがとう。」
「ええ、あれならば大丈夫のはずよ。副作用もないわ。」
「大丈夫ですか、姫様?」
「私は大丈夫よ。」
永琳と鈴仙、そしててゐが食卓を囲んでいた。
輝夜も空いている席に座り、箸を取って、食事を取り始めた。
「それにしても、大変だったわ。あの幻覚…………」
「そんなに?」
永琳がそう尋ねる。
「ええ、それはもう……………」

「私に殺される幻覚ですよね?」

聞き覚えのある声を聞いた輝夜は、その声の主の顔を見る。
「よく眠れたようで何よりです。」
魂魄妖夢が、輝夜の対面で、永遠亭の食卓を囲んでいたのだ。
「な、なんであなたが!?」
「どうしたの、輝夜?あなたは、妖夢の殺人の練習相手でしょ?」
「え、永琳!?」
永琳がおかしい。
永琳は、絶対にこんな冗談を言わない。
「どうしてなの!?どうして、貴方が!?」
「姫様、どうしたウサー?」
「お、落ち着いてください!今はそ、その……食事中ですから………」
てゐと鈴仙はそれぞれ、暴れ始めた輝夜を抑えようと声をかける。
その二人の様子もおかしいことに、輝夜は気づいた。
「何なの!?何なのよ、これはぁぁ!!」
「少し、静かにしてくれませんか?幽々子様のお体に触ります。」
その言葉が聞こえた直後、自分の体に二本の刀が突き刺さっていることに気づいた。
「がはぁっ!ど、どう……して……………」
後ろに倒れた輝夜の足が食卓に当たらないよう、妖夢は鞘で輝夜を突き飛ばす。
体が壁に当たると、輝夜の体の中で刀が動いて、さらなら痛みが輝夜を襲った。
「ぐがあぁっぁっ!た、たす…………え……りん………………」
「いつものことでしょ、輝夜。」
「いつものことですね、姫様。」
「いつものことウサー」
「全くですよ。」
輝夜の方に目を向けず、永琳たちがそう言い捨てると4人はそのまま食事を続けた。

何が何だが分からないまま、輝夜はまた命を落とした。



「姫様、食べないのかウサー?」
「えっ!?な、何なのコレ!!」
「な、何と言われましても………河童からもらったキュウリで作った料理ですが………」
輝夜はまた"幻覚"を見ていた。
もちろん妖夢は食卓を取り囲んでいないし、自分が突き飛ばされた方向を見ても、やはり血痕はない。
永琳の薬の効果は、まだ無いのかと心配していた。
「輝夜、大丈夫なの?」
「え、ええ………大丈夫よ。」
永琳が心配になり、輝夜に声をかける。
薬は飲んだばかりだから、まだ効果が無いのだろうと思い、幻覚のことは言わなかった。
最初のうちは我慢するしか無いのだとあきらめていた。
そのために箸が進まず、輝夜は夕食を堪能することができなかった。
「姫様、大丈夫ですか?」
鈴仙は輝夜の様子を見て、心配そうに輝夜の身を案じていた。
「ええ…………最近、気分が優れないわ。」
「そうですか………早く、みんなに目を覚まして欲しいです。」
「そうね………」
妹紅が目を覚ましてくれれば、少しは状況が変わるかもしれない。
それを願いながら、輝夜は自分の部屋へと歩いていた。

数時間、輝夜はいろいろと自分の部屋にあるもので遊び続けると眠気が襲ってきた。
「今日は大丈夫そうね。薬の効果も出てきたみたいだし。」
夕飯からは一度も幻覚を見なかったために、いよいよ永琳の薬の効果が出てきたのだろう。
今日こそ安眠できる自信があった。
「それじゃあ、お休み…………」
明日には妹紅が目を覚ましていると願いながら、輝夜は深い眠りについた。













「輝夜。輝夜、起きて。」
「ん………だれ…………?」
誰かが自分を揺さぶっている。
重いまぶたを開けると、輝夜は目を疑った。
「も、妹紅!?」
「ふふ、おはよう。」

笑顔の藤原妹紅が、自分の目の前にいるのだ。

輝夜の眠気はあっという間に吹き飛び、その体を起こして妹紅に抱きついた。
「妹紅!!妹紅、やっと目を覚ましたのね!!ううっ、うわあぁぁぁぁぁぁん!!」
感激のあまり、輝夜は大声で泣き始めた。
そんな輝夜を優しく抱きしめて、妹紅は言葉を続ける。
「ごめんね、輝夜。こんなことになって…………」
「ぐすっ………いいのよ…………もう、大丈夫だから…………」
「ふふ、これからはずっと一緒だよ。」
この感覚は幻覚なんかじゃない、確かに暖かさが伝わってくる。
妹紅もいつもと変わらない様子だ。
(よかった………永琳の薬に効果はあったのね………)
幻覚を見ることはもう無くなったのだろうと安心していた。
安堵の顔を浮かべる輝夜に、妹紅はこう告げた。
「さぁ、輝夜。妖夢と幽々子のところに行こう。」
「ええ、妹紅と一緒なら………………え?」
妹紅の笑みが一瞬で恐ろしい笑みに変わると、妹紅は自分の後ろの光景を見せた。

そこには、いつもと同じような雰囲気を漂わせる妖夢と―――扇子で口を隠す幽々子が立っていた。

「もこ?なに、これ?」
「ごめんね、妖夢に幽々子。私の輝夜が酷いことをしちゃって………」
「いいんですよ、妹紅さん。あなたは何も悪くないですから………」
「そうよ〜、悪いのはこいつと紫だから〜」
輝夜の思考は、完全に止まっていた。
さきほど、妹紅から伝わってきた暖かさは、間違いなく現実のものだった。

なら、目の前で起こっている出来事は?
妹紅が妖夢と幽々子と仲よさそうにしているの?

輝夜は床にぺたりと座り込んでしまった。
「それじゃあ、好きなようにしていいよ?」
「ありがとうございます、妹紅さん。」
「ありがと〜、さぁ、妖夢?」
「はい、幽々子様!」
「輝夜、立って。」
妹紅に無理矢理立たされると、輝夜は服も下着も全て脱がされる。
しかし、抵抗する気力も今の輝夜にはなかった。
すると、妖夢は刀を抜くと、それを輝夜の恥部へと向けた。
「輝夜は初めてだったよね?初めてがこんなのなんて、本当に羨ましいわ?」
「もこ…………うそでしょ………?」
「幽々子様の目が覚めたお礼です。今までの無礼を働いてきたお詫びの意味も込めて……失礼します。」
「うふふ、羨ましいわ〜私や妖夢より先に経験できるなんて。」

その言葉が合図となり、輝夜の子宮目掛けて、刀が突き刺された。



「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっっっっっ!!?!?!?」

言葉で表すことのできない獣の叫び声が永遠亭中に響き渡る。
輝夜の処女は、どんな物でも大抵斬ることができる刀に突き破られた。
輝夜の性器は切り傷だらけとなり、痛みも耐え難いものとなっている。

そして、子宮に入る直前で、妖夢は手を休めた。

「幽々子様、どうしましょうか?」
「もこ〜、どうする〜?」
幽々子はとぼけたように妹紅に尋ねると、こうとだけ答えた。
「上下運動が大事だから。」
その言葉が何を意味するのか、妖夢には分からなかった。
しかし、知識だけはあった幽々子にはその意味は分かった。
「妖夢、刀を出したり入れたりを繰り返すのよ。」
「な、なるほど!」
妖夢はこんな考えを思いついた妹紅とそれにすぐ気づいた幽々子に感心しながら、刀を手にする。

「なんで………」
その時、輝夜は人間にも理解できる言葉を発した。
「なんで、こんなことするの………?」
「なんでって?」
「どうして、こんなことするのよぉぉ!!」
輝夜は自分の力の全てを振り絞り、大声で妹紅たちに訴えかけた。
しかし、妹紅たちは、何を言っているんだこいつは、というような顔をしていた。
「だって、輝夜は邪魔者なんだもの。」
「そうですよ、輝夜様は邪魔なんですよ。」
「そうよ〜、あなたは邪魔なのよ〜」


「あなたは、私の邪魔なのよ。」


この3人とは違う声が聞こえてきたのと同時に、妖夢は刀を動かし始めた。
「ぐぐぎぎぎぎっぎぎいぎぎぎぃぃぃぃぃ!!」
子宮の一番奥に刃先が刺さると輝夜の絶叫が再び響き渡る。
そして、それを勢いよく輝夜の恥部から引き抜いた。
「ひぎゃがああがががああああああああああああああああぁあぁっぁっぁぁぁっ!!」
「ふふふ、これであなたには退場してもらうわ。」
妹紅たち3人とは違う声には聞き覚えがある。
毎日のように、輝夜はその女の声を聞いていたのだ。
妹紅や妖夢、幽々子もよく知っている女だ。

まさか。
まさか、こいつが犯人?
こいつが全ての元凶?

性器がボロボロになり、死にたくなるような痛みを感じながら、輝夜はその女を罵倒する。
「どうしてなのよ!?どうして、あなたがこんなことをするの?!」
「言ったでしょ、貴方は私の邪魔者だって。」
「だから!?だから、こんなことするの?!」
「行きますよ、輝夜様。」
妖夢が再び、刀を恥部へと差し込んだ。
今度は一回目の時とは違い、子宮まで速度を落とさずに突き刺した。
しかし、決して手元は狂わさなかった。
「ぎぎぎいいいいいいいいいいぃぃっ!!うっ………おげええぇぇぇぇぇ!!」
あまりの痛みに、輝夜はついに嘔吐してしまう。
部屋に異臭が漂いはじめたが、それすら気にせずに妖夢は刀の挿入を繰り返した。
「はぁ、はぁ…………」
「妖夢、お上手ね〜」
「あ、ありがとうございます!」
「はは、輝夜も喜んでいるよ。」
「ぅあ…………殺し………て……………」
早く死にたい。
こんな苦しみ、生まれて初めてだった。
そんな輝夜を笑いながら見ていた女は、最後にこう告げた。

「心配しないで。明日が最後よ。それで貴方の出番は終わり。」


「きゃああっっ!あ、あれ………夢?」
布団は汗でびっしょり濡れていた。
輝夜はすぐに布団から出て、血の跡が残っていないか調べる。
しかし、やはりどこにも汚れはなかった。
「や、やっぱり…………幻覚、なのね?」
複雑な気分だったが、輝夜は外を見る。
ここ数日、自分が目覚めるときはいつも太陽は殆ど同じ位置にある。
ちょうど、朝食の準備が出来ている時だ。
「もう起きましょう…………」
汗で濡れた布団の中で二度寝など出来ない。
それに、あんな幻覚か夢を見た後で眠れるほど、輝夜の精神は強くなかった。

いつもと変わらない食卓に向かうと、永琳や鈴仙、てゐが朝食を取っていた。
「おはよう、輝夜。」
「おはようございます、姫様。」
「今日も、早いウサー」
家族の様子もいつもと変わらず、輝夜はやはり、昨夜の出来事は全て夢だったのだと安心した。
「ふぅ、今日も最悪よ。」
「あら、どうしたの?」
「眠れなかったし、汗でびっしょりなのよ。」
「いつものことね。」
「いつものことですね。」
「いつものことウサー。」
「うるさい!」
いつもと変わらない怒号の声が、部屋に響き渡る。
そんなやりとりをしながら、輝夜は今日も退屈ですばらしい日々が過ごせますようにと願った。
永琳ならば、絶対に治してくれる。
妹紅が目覚めれば、絶対に支えてくれる。
鈴仙とてゐも、絶対に助けてくれる。
あんな幻覚を見たところで、輝夜の心は折れない。
これぐらいの困難は、自分の家族や親友と一緒に乗り越えられる自信があった。
「さてと、今日ものんびりしましょう。てゐ、私の布団を外に干して。」
「わかったウサー……って、自分でやってほしいウサー」
体を伸ばすと、てゐに布団を干すよう命令する。
「輝夜、鈴仙にお風呂の準備をさせておいたわ。」
「さすが永琳ね、ありがとう。」
寝汗を全て洗い流して、気分を変えたがっているのだろうと永琳は考えていた。
もちろん、輝夜もそう考えていた。
「姫様、お使いに行きますけど、何か欲しいお菓子はありますか?」
「そうね………いつものお饅頭をお願い。」
お使いに行く鈴仙に自分の要求を伝える。
鈴仙は笑顔で、分かりました、と言い、永遠亭から出かけていった。
輝夜はお風呂の準備が終わるまで、部屋でごろごろし始める。
「妹紅が目を覚ましたら、ここに住まわせようかしら。」
もう二度と、こんな事件が起こらないようにもできるし、大好きな妹紅と一緒にいられる。
「それなら、慧音も引っ越しさせましょう。」
慧音もいれば、家事はさらに楽になる。
ちなみに輝夜に取っての家事は、いかに自分の面倒を他人に見させるかである。

妹紅と慧音も食卓を囲み、6人で毎日を暮らす退屈で幸せな日々。
そんな日がいつか来ることを夢見ながら、輝夜は天井を見つめていた。
――自分の股間から、破瓜の血が流れていることに気づくこともなく。


「輝夜、お風呂が沸いたわよー」
「分かったわー」
永琳の声が聞こえてきた。
お風呂に入って、気持ちを切り替えよう。
浴室に入り、全裸の輝夜はお風呂を堪能した。
「ふぅ………心が癒されるわ……………」
今にも眠ってしまいそうになりながらも、輝夜は極上の時を過ごそうとした。
「さぁてと。輝夜、綺麗にしてあげるよ。」
「お背中を綺麗にして差し上げますね。」
「私は、胸を綺麗にしてあげるわ〜」
「あら、気が利く……………………え?」

その言葉通り、輝夜の体は"綺麗"にされていく。

「うぐえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!あづいあづいあづいぃぃぃ!!」
「だめだよ、輝夜。こんなに体を汚したままでいたら。」
妹紅は自分の燃えさかる手を、輝夜の胸に当てた。
皮が全て燃えさかり、輝夜の体は見るも無惨な黒こげの状態となっていた。
もちろん、輝夜はすぐに再生し、黒こげになっていた体も元に戻る。
「あ、輝夜様。お背中、流しますね。」
まだ頭がクラクラしている輝夜の耳に、うふふ、と笑い声が聞こえてきた
混乱している場合じゃない、すぐに逃げ出さないと。
すぐに浴槽から外に出ようとしたが、妹紅と幽々子は話さない。
その豊満な胸を輝夜の体に押しつけて、いつもと変わらない笑みを浮かべていた。
「よ〜む、背中を綺麗にね〜」
「はい!では、行きますよ………」
刀を鞘から抜く音が聞こえる。
これから起ころうとしていることが何なのか想像するのは容易かった。
「や、やめて!!それだけはっ!!」
「もう、妖夢も幽々子も私も輝夜を綺麗にしてあげようと思っているだけだよ。」
ジタバタ暴れる輝夜の両手足をしっかりと掴んで、輝夜の体を固定する。
その直後、妖夢は輝夜の背中に刃を置いた。

砥石で刀を磨くように、刀で輝夜の背中を磨き始めた。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」
皮が剥かれていき、輝夜の背中が少しずつ、綺麗になっていく。」
浴槽には、その皮が浮かんでおり、透明だった温水も汚れ始めていた。
妖夢の悲鳴が再び、浴室内に響き渡った。
「妖夢〜、痛いみたいよ〜?」
「ご、ごめんなさい、輝夜様!それでは、もう少し………」
幽々子の諫言を聞いた妖夢は刀を動かすその手の動きを変えた。
「ひぃっ!ひぃぃぃっ!!!ふぅぅぅぅぅぅ………ふぅぅ…………」
断続的な痛みに耐える輝夜の声はあえぎ声になっていった。
そして、妹紅たちの目には皮膚が無くなった輝夜の赤い背中が写っていた。
「じゃあ、お湯を流しましょう〜」
「行くよ、輝夜。」
「えっ!?だ、だめ!!やめてやめてやめてやめてやめてぇぇぇぇぇぇぇええええ!!!」
背中から痛みを感じ、周りに落ちている肉片を見たら、背中がどうなっているのか分かる。
こんな状態の背中に、お湯を流されてしまったのなら―――

そして、妹紅は桶に入れたお湯を輝夜の背中に流した。
「ぎゃああああああぁぁぁぁああああっ!いだいいだいいだいいだい!!いだいよぉぉおぉぉぉ!!」
「あはは、綺麗になってるよ。」
「よかったわね〜妖夢は上手いのよ〜?」
「い、いえ!!私は、まだまだ未熟者です………」
妹紅たちの楽しそうな声が聞こえてくる。
輝夜は、妹紅との殺し合いで痛みの何十倍も大きな痛みを感じながら、意識が闇に落ちていった。



しかし、意識が戻ったときには、3人はどこにも存在していなかった。
「はぁっ。はぁっ………!お、お風呂でも…………」
血で汚れていた浴槽も、入った時と同じく綺麗なままだった。
もちろん、皮膚の破片などどこにも落ちていない。
輝夜は体を拭いて、すぐに浴室から離れようとする。
そして、気分を和らげるために竹林へと散歩に出ていった。
「ふぅ…………ここで落ち着きましょう。」
「あ、輝夜。こんなところで何してるの?」
誰かから声をかけられると、何も警戒せずに答えてしまった。
「何って、ちょっと散歩に…………っ!!」
その声の主は、やはり自分のよく知っている人物だった。
「散歩なら、私と一緒に行こうよ。」
「ひっ!!」
輝夜はこの女に手を握られる。
妹紅のその手は、激しく燃えさかっていた。
妹紅に握られた手から、自分の体に炎が伝わってくる。
だが、輝夜は痛みに耐えながら、妹紅にこの行為の理由を尋ねる。
「なんで!?なんで妹紅がこんなことするのぉ!?」
「え?いつものことじゃない。」
肩にまで炎が伝わってきた。
悪臭が自分の鼻を劈く。
「目を覚まして!!お願い、もこぉぉぉぉぉぉ!!!」
「起きてるよ、私は。」
首元まで、燃え始めた。
これが最後だと思い、輝夜は最後の言葉を紡ぐ。
「目覚めて!!騙されないで、妹紅!!あの女に、あの―――」」


「ほら、今日も竹林の中は気持ちいいよ。」
妹紅は輝夜と手をつないで、竹林の中を歩いていた。
二人の散歩には、数多くの同行者が存在していた。
彼らは皆、輝夜の体にまとわりつき、その肉を食べようとしている。
「だめだよ。輝夜は私の大切なものだから。」
死臭を嗅いで寄ってきた虫たちを全て燃やすと、妹紅は輝夜の体を抱きしめた。




再び、輝夜は目を覚ます。
気づいたときには、妹紅はどこにもいなかった。
「も、もういや…………え、永琳のところに戻りましょう………」
輝夜は散歩をやめ、永遠亭の玄関にまで戻っていた。
玄関から廊下に足を踏み入れると永琳の部屋へと直行する。
「輝夜様、ご気分が優れないのですか?」
誰かが輝夜の身を案じて、声をかけてきた。
その声も、輝夜は聞き覚えのあるものだった。
「よ、よう……む?」
「幽々子様がお待ちです。さぁ、ついてきてください。」
「い………いやああぁぁぁぁぁぁ!!」
輝夜は今来た道を引き返し、走って外へと出ようとした。
「おっと………輝夜、どうしたんだ?」
「ひぃっ!?も、もこ!?」
妹紅が目の前に立ちはだかったために、輝夜は別の方向へと向かった。
もちろん、その方角にも輝夜の道を遮る者が現れる。
「どうしたの〜一緒にお菓子を食べようと思っただけよ〜?」
「こ、来ないで!もう来ないでよぉぉ!!」
輝夜は叫びながら、何とか逃げ切ろうとする。
しかし、両腕を誰かに捕まれる動けなくなった。
「輝夜様、おいしいお菓子ですよ?」
「そうそう。さぁ、一緒に行こう?」
暴れながら、どうにかして妹紅たちの側から離れようとする。
しかし、見た目に反して力の強い妖夢と妹紅を振り切ることはできない。

「助けて!!助けて、永琳!!えいりん、たすけてよぉぉぉぉ!!」
その叫び声が、"輝夜"の最期の言葉だった。








「姫様、お饅頭を買ってきましたよー。姫様ー、姫様ー?」
輝夜の部屋の前で輝夜に呼びかける鈴仙。
「あら、イナバ。買ってきてくれたのね。」
輝夜は鈴仙の手にしているものに気づくと、自分が鈴仙に頼み事をしていたのを思い出す。
――妹紅たちに苦しめられていたことなど、まるでなかったかのように元気な姿を見せていた。
「はい。今日もまた、お昼寝ですか?」
「もちろんよ。これを食べたらすぐ寝るわ。今日こそ、ぐっすり眠れそうよ。」
「ふふ、それではお休みなさい。」
鈴仙はそう言うと、輝夜の部屋の障子をゆっくりと閉めた。
「それじゃあ、師匠のところへ行きますか。」
そして鈴仙は、愛する師の元へと駆け足で向かう。

輝夜は鈴仙に買ってきてもらった饅頭を食べながら、部屋でくつろいでいた。
「そうだ。妹紅たちにもこの饅頭を分けないと。」
そう思い立った輝夜は部屋の外へ出ようとした。
ところが、数秒間思案にふけると布団の中へと戻った。
「またウドンゲに買ってもらった方がいいわね。今度はたくさん。」
幽々子のような食いしん坊がいるのでは、輝夜一人分しかない饅頭を分けるわけにはいかない。
それならば、買い直してもらった方がいい。
「事件も解決したし、妹紅たちも無事。のんびりしててもいいしね。時間はたっぷりあるのだから。」
急ぐ必要もないのだと言って、布団の中でごろごろしながら、輝夜は饅頭を口にする。

饅頭を平らげると、輝夜は頭を枕に乗せ、その瞼を閉じた。
昼寝の時は来た、月が昇るその時まで体を休めなければ。

あぁ、こんなにも生きていてよかったと思える日が来るなんて―――

輝夜は自分をこんなにも幸せにしてくれた世界に、心から感謝しながら、深い眠りについた。
今度こそ、妹紅たちに殺される幻覚などに邪魔されない、安らかな眠りへと。














「今日もみんなの面倒を見るウサー」
てゐは意気揚々としながら、妹紅たちの眠っているはずの治療室へと足を踏み入れた。
「妹紅、妖夢、幽々子、文、今日はいい天気ウサー!」
励ますための言葉をかけながら、妹紅たち一人一人の顔や髪を洗おうとした。
その時、てゐは治療室の異変に気づく。
「う、うそ…………た、大変!!」
急いで治療室から外に出て、治療室における異常事態を永琳に伝えに行く。


藤原妹紅、魂魄妖夢、西行寺幽々子、射命丸文。
その4人が搬送されていた、この治療室から―――射命丸文が失踪していた。
それほど輝夜が酷い目に遭っていませんね、ごめんなさい
さて、次で完結です。
ただ、他のキャラも真犯人に苦しめさせようかと悩んでおります。
いずれにせよ、真犯人は次で明らかに。

(ここからが、本当の愚………後書き)
グロを表現するのが難しい

>>おうじさん
卑屈になりすぎていましたね、失礼
上海専用便器
作品情報
作品集:
20
投稿日時:
2010/09/11 02:47:44
更新日時:
2010/09/11 18:33:47
分類
輝夜
1. NutsIn先任曹長 ■2010/09/11 12:34:10
それほど…って、本格的な『酷い目』とは何ですか!?中性子爆弾でも使うのですか!?

肉体は破壊不能なので精神を挫く。対不死者戦の基本ですが、
つまり犯人はこの手の戦闘手順を熟知しているものとなりますね。
それもかなり陰湿な手合ときています。

目的は輝夜の不死の体のジャック?それも更なる目的のワンステップ?

楽しい楽しいギグは今日も明日も続くのか。
2. 名無し ■2010/09/11 14:45:43
てるよはひどい目にあうやくがにあう

真犯人を口調から導きだせるかな
3. おうじ ■2010/09/11 18:25:15
後書きに不服
あなたは文章書きに向いている。
4. 名無し ■2010/09/11 20:01:10
確かにグロ描写に関しては精進の余地があるかもしれない。
でも、可哀そうな目にあう少女の可愛さを書くセンスは
現時点でも相当なものだと思う。
何が言いたいのかというと僕はあなたの作品が好きです。
本編に関しては、最終回一歩手前ながら謎が更に増えた感じ。
今一体、誰に何が起きているのか? 犯人は誰? 目的は何?
なんにせよあと一歩ですべてが終わる。楽しみに待ってす!
5. 名無し ■2010/09/11 22:36:11
風呂場のシーンまじぱねえ
どんどん精神的にも肉体的にも姫様追い詰められてるなあ
しかし身体で刀とぐなんざよく思い浮かんだなあw
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