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『罪と幻想の果てに 前編 東方蒼魔郷』 作者: ヨーグルト? いいえ、ケフィアです(笑)

罪と幻想の果てに 前編 東方蒼魔郷

作品集: 20 投稿日時: 2010/09/24 09:13:38 更新日時: 2010/09/24 18:13:38
とあるところに幻想郷という村がありました。

その村は日本のとある地域のある山奥に存在するごく小さな村でした。

ある日、大賢者であった八雲紫という妖怪は、博麗神社の巫女の博麗霊夢と協力し、
外の世界と幻想郷の間に博霊大結界を張り、そこの周辺一帯は、完全に幻想郷と完全に分けられましたとさ。

その日から長い年月が経ち、
今は鬼やら妖怪やら、さらに、魔界の住人やらが共存しています。

今から始まる物語は、そこから始まります。

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罪と幻想の果てに
    前編
     東方蒼魔郷

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「霊夢」
「何」

ここは博麗神社。
ここではいつものように、いつもの2人がいつものようにしていた。

「暇だ」
「帰りなさい」
「………」

少し前の異変(?)から少しの時が経過した。
異変が起きたら長い日が経過しないと異変が起きないといういつものシステムで、やることがないのである。

「弾幕ごっこならしないわよ」
「言うつもりなんかない」

魔理沙は心の中で、文が特ダネとやらでも持ってきてくれないかと思っていた。
しかし来ない。

「たまには異変を起こす側になってみたいな」
「あんたが異変を起こしたら速攻で駆けつけて速攻で叩きのめすわ」
「………」
「確かに、最近はまともな異変が起きてなかったからね………」
「また、レミリアみたいに霧とか出してくれねぇかな………あの異変は面白かったのにな」
「人の生死に関わる異変なんてダメでしょ」
「なら幽々子や輝夜の異変だって問題あるじゃねえかよ」
「まぁね………」

2人同時で溜め息を吐く。
レミリアが異変を起こしてから、白玉楼の令嬢の西行寺幽々子の春雪異変。
輝夜の永夜異変が続々起きていた。
だが、霊夢に取っても不都合であり、神社が崩壊したりなどの災難まであった。
「まるでそこら辺の野良犬みたいじゃないの」とまで霊夢は悪態をつきかけた。

「年に2回は起きてほしいレベルよ」
「だろうな」

そとでは蝉が鳴いている。様々な種類が混ざっていて区別が出来ない。
チルノ達がいれば涼しいんだけどな、と、魔理沙は呟く。

「もう少しで夏も終わる」
「あぁ………」

■■■■■■■■■■

しかし、霊夢達の知らないところで、秘かに異変が起きていた。

幻想郷のとある一角。
大結界に最も近いところである場所。

そこには、鴉天狗達、文やはたてたちが集まっていた。
皆はそれぞれ手帳とカメラ、その他諸々、個人で携帯しているものを持ち寄っていた。

「本当なんですか?」

男の鴉天狗が文に軽く怒鳴った。

「この人を見れば解るでしょう?」
「まぁ確かに………」

天狗達の集まりのちょうど真ん中には、1人の人間が倒れていた。
死んでいるように見える。

「先ほど、簡単な検査を行ってみましたが、死んではいません」
「じゃあ、なんなんですか?」
「状態は死んでいますが、死んでいません。 私にもよく判らない状態です」
「仮死状態ですか?」
「死んではいないが仮死状態でもない仮死状態を若干通り越した状態………だが死んでいない………」
「い、意味が分からない………」
「私に言わないでください………」

文は視線を地面に倒れている人間に戻す。

「ですが、問題は………どうしてこんな状態に陥ったかです」
「………」
「一旦この人を永遠亭に送りましょうか………?」
「どうかなさいましたか?」
「何かある………」

文が少し奥に視線を向けた。
その視線の先には何かがあった。

「何ですか………これは………」
「霧のようですが」
「………!!」
「文さんはこの人を永遠亭に運んでおいてください。 ここは私たちに任せてください」
「すいません………くれぐれも命の方には気をつけてください」

文は地面に倒れていた人間を抱え、はたてと2人ほどの天狗を随伴させ、永遠亭に向かった。
現場に残った天狗達のことが気がかりだった。

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「原因は………私には解りません………やはり、文さんの言う通り、仮死状態と結論づけることしか出来ません………」
「永琳先生でも解りませんか………」
「おそらく、毒物によるものだと思っても良いとは思いますが」
「いえしかし………現場では奇妙なものを見つけました」
「?」

文は手等を開き、無言で永琳に渡した。
永琳はそれをまじまじと見た。

「これは?」

最初に言ったことがそれであった。

「現場の近くから、そのようなものが出ていました」
「規模は?」
「まだ調査段階です。 数人の天狗が調査しております」
「………」
「どうかしました?」
「その天狗達、この人と同じ状態になるかもしれないわ………」
「あ!!」

■■■■■■■■■■

再び現場。

そこは既に蒼い霧で包まれていた。

「永琳先生!!」
「遅かったかしら?!」

文が口を手で押さえる。
永琳は文を後ろに突き飛ばす。

「この霧を吸っては危険と判断したわ!! 貴方は戻っていなさい!!」
「ですがっ!! 永琳先生と言えど、危険ですよ!!」
「私は不老不死よ!!」
「この霧は死に至らしめるのではなく、仮死状態も同じ状態にするのですよ!?」
「安心なさい!!」

永琳は霧の中に身を包ませた。

「あ、ああぁ………」

文はすぐに飛び出した。
蒼い霧を後ろ目に、どこかに向かった。

■■■■■■■■■■

博麗神社。

いつのまにか、魔理沙の他にアリスまで来ていた。
3人でだべっていた。

「異変なんて起きなくていいわよ、面倒くさいだけじゃない」

アリスが吐き捨てる。

「暇、という状況はどうすれば良い?」
「寝てれば良いと思うわよ」
「………文来ねえかな………」

「み、皆さん!!」

「お、来たか。 噂をすればなんとやらって言うやつだな」

少女説明中………

「………」
「そう言うわけで………蒼い霧は危険ですので………」
「面白そうだな」
「今私が貴方達に言ったことは解ってますか? 仮死状態ですよ? ほぼ永遠的に」

文がさっき知ったことを魔理沙と霊夢の2人に説明した。
しかし、霊夢は多少面倒くさそうな態度を取り、魔理沙はその話を面白そうに笑いながら聞いた。

「で、何? 文は………私に解決策でも求めろというの?」
「異変解決家としては当然でしょう?」
「まぁね………」

「今のところの被害は?」
「人里の住人と見られる人間1名と天狗が10未満です」
「そんなもん?」
「いえ、私が知ってる範囲なので………」
「じゃあ、今から調査に行く必要があるわよね?」
「はい、確かに………今の現状を知るにはその必要があります。 ですが、霧が危険です………」
「文」

霊夢は文を冷たい目で見据える。

「私たちはレミリアの時に堂々と闘ったのよ? 死ぬ霧に比べればそんな、蒼い霧は大したことないわよ」
「さすが、異変解決家であり博麗の巫女である御方! 他の人と比べて全然違います!」
「おいおい………私を忘れていないかい?」
「魔理沙さんもですよぉ(汗)」

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「あれ?」

霊夢たちはまず始めに、幽々子達に協力してもらおうと、冥界の入り口に来ていた。
しかし、異変の時に邪魔されたように、いるはずのプリズムリバー3姉妹の姿が見当たらなかった。
その状況を、魔理沙は嬉しそうにした。
「チャンスじゃないか、邪魔されることも会話する手間も省けたぜ」
「魔理沙はチャンスだと思ってるの?」

霊夢は入り口である幽冥結界をジッと見た。
結界は解除されている。扉は閉じられている。

「文」
「何でしょう?」
「その蒼い霧は、幽霊にも効くのかしら?」
「いえ………どうでしょう………いくら幽霊に効くと言えど、騒霊は幽霊ではありませんから………」
「………さっぱり解らないわ」
「ん? 霊夢、この門のスキマから何かが出てきてるぜ?」
「え………?」

魔理沙に指摘され、霊夢と文は門のスキマの方に注目する。

「あれ? これってもしかして………文の言ってた蒼い霧って言うやつ?」
「………はい………まさか………もしかして………!!!」

魔理沙が気づいたことは間違いなかった。
言った通り、門のスキマから蒼い霧が少しずつ出てきていた。

「と、とりあえずはここを離れるわよ!!」

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再び博麗神社。

拝殿の前で、霊夢達は話し合いをすることになっていた。

博麗霊夢。
博麗神社の巫女、もとい、博麗の巫女であり、博霊大結界を見守る役を務めている。
今回の異変では、異変解決メンバーのリーダー役に就くことになった。

霧雨魔理沙。
魔法使いの少女、魔法の森に住む魔法使いであり、霊夢の友人。過去にも異変解決に多少貢献している。
今回の異変では、異変解決メンバーの補佐役のようなものに就く。

射命丸文。
幻想郷に広まっている『文々。新聞』の創設者である妖怪。その情報収集能力は本物。
今回の異変では、異変解決メンバーのメインポジションに就くが、情報収集の係の方にも就くことになっている。

アリス・マーガトロイド。
魔法の森に住む魔法使い。『七色の人形遣い』の通り名を持つ人形遣い。
今回の異変では、異変解決の戦闘面での防衛戦を担当する。

「御待たせしました」
「あぁ………はたて、来たのね」
「文。 私ばっかに任せてないで自分でも調べてくださいよ」
「私たちの方もたくさん調べましたよ?」

「それじゃあ………向かいましょうか………」

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博麗霊夢らが異変解決に向かう数刻前。

場所は白玉楼。

いつもの通りに、西行寺幽々子は食事をとっている頃だった。
しかし、この時点では異変の噂が幽々子の耳にも入っていた。

妖夢は心配そうに見つめる。

「いいんですか?」
「何がかしら?」

溜め息。

「あっちのほうでは少し騒ぎになっているというのに」
「別に、面倒くさいし………霊夢達の様子なんか見に行かないわよ」
「何でですか?」
「あの子が自分でなんとかするわ」
「………それに、こちらのほう………つまり冥界側にも蒼い霧が及んでいます」
「それも知ってるわよ」

幽々子は顔を妖夢に向けなかった。

「貴方は逃げようと思ってるの?」

妖夢は俯いてしまった。
自分の主人である人物に本心が見抜かれてしまったことで。

「万が一の危険が及んだら逃げるべきだと思いまして………」
「間違った判断ではないと思うけどね………妖夢」
「はい」
「今現在、この冥界の中で蒼霧がどれだけ及んでいるか知ってる?」
「………」
「白玉楼のこの部屋のすぐ近くまでよ」


妖夢は襖を勢いよく開けた。

「!」

幽々子が言った通り、蒼霧はすぐそこにまで迫っていたのだ。
妖夢は振り返った。

「幽々子様!! すぐに脱出してください!!」
「落ち着きなさいよ、私はもう既に死んでいる身よ? こんなものが聞くわけがないじゃない」
「幽々子様!!」

別のとこから、この白玉楼に務めている幽霊が駆けつけてきた。

「ここにいる使用人達が蒼霧にやられてしまいました!!」
「何ですって?」
「幽冥結界の番人でもあったプリズムリバーの方も霧にやられました!!」
「………」

幽々子は帽子を自分の頭から下ろし、どこかに投げ捨てた。

「つまり?」
「私たちにも聞くのではないかと………プリズムリバーの連中は幽ではありませんし………」
「打つ手がないわね………妖夢!!」
「はい!」

幽々子は怒鳴りつけるように妖夢の名前を呼んだ。

「命令よ、ここを脱出しなさい」
「ゆ、幽々子様は!?」
「もちろん………」

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「はぁ………」

幽冥結界を出て数分。
あの後、幽々子に追加で命令されていて、結界の扉だけを閉じるように言われた。

そう言う意味では、幽々子は脱出する自信があったのだろうか………。
妖忌は………。

「よ、余計な心配は………!!」

妖夢たち………幻想郷の最期は刻一刻と迫っていた。

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罪と幻想の果てに
   前編
    東方蒼魔郷
        -中編-
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「永琳先生が帰ってきていない?!」
「はい………」

妖夢はなんとなく、永遠亭に来ていた。
単純な思考の中で、永遠亭が安全だ、とでも考えた。

「何でも、蒼い霧を調べるために………」

鈴仙は寂しそうな顔で答えた。
しかし、すぐに表情を元に戻した。

「妖夢さんが出来る限りなら、私から頼みたいことがあるんです」
「?」
「霊夢さん達が異変の解決に向かってるそうなので、そちらの方に参加していただきたいんです」
「以前にも似たようなことがあった気がするんですが………」
「もちろん無理にとも言いませんので、気が向いたら貴方から協力してあげてください」



妖夢は永遠亭を後にし、迷いの竹林から出た。
相当の強い人でなければ、この竹林に迷ったらひどい目に遭ってしまうからだ。
いつも愛用している白楼剣と楼観剣の2つを持たなくては、調子が整わない。

「妹紅さんは大丈夫なんでしょうかね………永琳先生や輝夜さんと同じで不老不死ですが………永琳先生がもし、蒼い霧の効果が聞いたというのなら、妹紅さんにも効くことになっちゃいますね………」

独り言を呟く。

「ま、とりあえずは自分の身が安全ですね」

竹林の地面に生えてる雑草を踏みしめ、1秒でも早く脱出しようと歩いて行く。
しかし

「止まれ!!」
「?!」

不意に、妖夢は誰かに呼び止められた。
妖夢は楼観剣に手をかける。

「剣から手をはな………って、妖夢か」
「そちらこそ………妹紅さん、驚かさないでくださいよ」
「ふぅ、すまんすまん、最近は蒼い霧とやらで騒がしいからな、通るやつが輝夜も含めて敵に感じてしまう、音だけで」
「確かにそうですがね」

妹紅は、近くにあった比較的丈夫な竹に背をもたれかけた。
そして1息吐く。

「お前はどうするんだ? 霊夢達に参加するのか?」
「分かりません」
「私も鈴仙にな、霊夢達に協力しろと促されたんだ。 正直迷ったんだよ………永琳に効くのなら私なんかが対抗したって無力だと思ってな」
「………でも、永琳先生は霧にやられたとも限らないんじゃないんですか?」
「まあそうだが………帰ってこない以上は、霧にやられたぐらいしか言えないな」
「何故ですか?」
「文が霧に入るとこを目撃して、飛び立つ時には、地面に倒れ込んでたからかな。 もちろん、演技という可能性もあるが」

妹紅は「それは私に分からん」と付け足し「ふっ」と笑った。

「もちろん、私はこの異変を起こしたりはしていない。 証明は出来ないかもしれないが、私は1、2ヶ月は竹林を出ていないからな」
「そうですね。 霧の発生場所と言われてるのは結界の近くと言われていましたし」
「はたての話だと、結界の近くではなく別の世界と言われているが」
「外の世界ですか?」
「いや、あいつの調べによると『魔界か彼岸か冥界か地霊殿の方が規模が大きい』などの推測から出た結果な訳だな」
「そうなんですか………詳しいことは、先に霧の被害に遭った人にしか分からないということですか」
「もちろん、先に遭いそうになってぎりぎりで逃げ切ったやつがいるかもしれないけどな、いるわけがないと思う」
「私もその意見には同意します………ですが、いることは願っておきます」
「そうだな」

「まぁ………見せかけの幻想には気をつけろよ?」

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現在。

場所は紅魔館。

「手遅れだったみたいね………」

霊夢達の眼前には、蒼霧に包まれた紅魔館があった。
おそらく、誰1人として脱出には成功していないだろう。
そんな予想をした。

「おい霊夢、あれ!!」

魔理沙が門の方向を指差す。

そこには、美鈴が倒れていた。
偶然なことに、門はぎりぎりで霧に包まれていなかった。

「………」

霊夢が駆け寄り、さわってみる。
乱暴に殴ったり蹴ったりしてみる。
しかし、美鈴は起きない。
手や足を踏みつぶしてみる。
反応はない。

「おそらく、霧にやられたと思います」

文が静かな声でゆっくりと告げる。

「霧も門まで来るでしょう。 すぐにここから立ち去りましょう」
「そうね………」

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レミリア・スカーレット。
数日前に発生した蒼霧の被害に遭い、紅魔館内にて仮死状態に陥る。

下記の人物も、レミリア・スカーレットと同様とする。

フランドール・スカーレット
十六夜咲夜
パチュリー・ノーレッジ
小悪魔
紅美鈴
その他の妖精メイド

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人里。
ここは被害こそ出ていなかったもの、奇妙な異変によって人里の住人達は怯えきっていた。
妖夢が人里の1本道を歩いていると、通りすがりの人から

「勇気があるなー、死ぬ気かい?!」

などと言われる。
途中、慧音と顔を合わせた。

「冥界もやられてしまったんだよな………」

と言われた。



「………」

もうすでに夕方になっていて、子供の姿は全く見かけなかった。
それのせいもあってか、人里にはほとんど人もいない。
逃げる気もない以上、蒼霧にやられるまで暮らしていくつもりなのではないだろうか。
と、妖夢は考えた。

はたてから報告を受けた妖夢。
蒼霧の被害を完全に受けたのは

冥界

魔界

地霊殿

彼岸

で、
入り口が隔てられていたことを考えると、この幻想郷にある蒼霧の出所はこの辺だろうか。
地霊殿では既に対策が設けられており、入り口に巨大な塊と結界を張って入り口を完全に封鎖した。

冥界は戸を閉められ、結界が張り直されたらしい。

魔界はどう処理されたのかは不明だが、処理はされたらしい。

こうなると、彼岸が霧の出所ではないのか………と妖夢は思った。

今夏の異変は蒼霧によるもの。
生物の身体に異常な反応を示すということは、霧自体に何かが入っているのだろうか。
だとしたら空気よりは重いはず。
こうなると、妖怪の山が一番安全じゃないのだろうか。
そうは言えない。

もはや………







この幻想郷に安全な場所などないのだから。







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「文は少し重装備すぎるんじゃないの?」
「え?」

日は沈み、夜になり、時は既に日付が入れ替わり、午前の3時になっていた。
まだ辺りは暗い。

「普段のカメラに加えて、その………少し小さめのテープレコーダーとか言われているやつ」
「そうですか?」

文は笑った。

「そういや、これを言うのもあれなんだけどさ」

魔理沙が周りを見渡す。

「誰かに見られている気がするんだよな………気のせいかな」
「………」
「………」
「気のせいじゃない?」

アリスが無愛想な感じで返した。

「まぁ、そうだよな………」

場所は守矢神社。
しかし、生憎の留守だった。
早苗どころか2人の神様すらいない。

「これは、おそらく………霧にやられてるんじゃないかしら」

霊夢が眉間にしわを寄せて言う。

「間違っていないと思います」
「そうね」
「馬鹿な奴らだな、こんな騒ぎが起きている時に出かけるなんて」

文とアリスと魔理沙はそれぞれ適当なことを言った。

「捜す必要はないわよ霧にやられてると思うし………それに」
「それに?」
「はたてがそういうのをやってるから」
「危険だなおい」





東風谷早苗。
妖怪の山の麓にて、蒼霧の被害に遭ったのを確認。
八坂神奈子および洩矢諏訪子も東風谷早苗に同行していたため、同じように被害に遭った。





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それから更に数日が過ぎていった。





















































人里と迷いの竹林は蒼霧に包まれた。



そして、残されたのは妖怪の山と頂上にある守矢神社だけとなった。

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「紫さん、どうしても………ダメですか?」
「うーん………」

博麗神社の礼拝殿の前。

そこには2人だけで、文と紫がいた。
文は少し強めの態度で紫に何かを要求していた。

「せめて、霊夢さんたちを外の世界に脱出させてあげてくださいよ!」
「そう言われてもね、今、外の世界は不景気な上に高齢化社会が進んでいるのよ」
「だからそこを………」
「過疎化が進んでいるところに送っても喜ばないわよ。 それに、人口増かも話の種だわ」

「よく判ってるんじゃないの………」

「貴方は!!」

文は後ろに3歩ほど下がる。
紫は顔を強張らせた。

「何で生きてるんでしょうか………貴方が………」

「文句はあるかしら? 死体確認が出来ないならダメでしょう?」
「そう言う情報を集めているのははたてですから」
「賢者も驚くわぁ………どうやって生き残ったかは知らないけど………」

紫は一息つく。

「私が脱出させる人は、生き残ってもらいたい人だけよ」

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罪と幻想の果てに
     前編
      東方蒼魔郷
          -後部-

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博麗神社。

紫達が集まってから半刻後。
霊夢達が戻ってきた。

「紫、現在の生き残りは?」
「まぁとりあえず、ここにいるのが全員と言ったところね」

霊夢
魔理沙

アリス

妹紅

「はたては!?」

魔理沙が怒鳴るような声で質問する。

「私は知らないわよ。 死にたいからどっかに言ってるんじゃない?」
「ぁ………」

「あやああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「あれ?」

少し遅れてはたてがやって来た。
少々息を切らしている。

「これで全員なのかしら?」

紫がけらけらと笑い、この場にいる人たちを1人ずつ指差して確認を取る。
その行動に、霊夢は違和感を感じた。

「自分はその中に入れないの?」
「あら忘れてたわ………ついつい………うっかりね………」

紫は手で口を隠し「うふふ………」と笑った。
霊夢は疑問に思うばかりだった。

■■■■■■■■■■

霊夢は石段の下の方向の方に目を向けた。
その顔は、認識できない何かを必死に認識しようとする顔であった。

「霊夢………あれが分かるかしら? 蒼霧よ………」
「ええ、大体ね………」

紫が傘を霊夢に直接手渡す。
それは、何を意味しているのだろうか………

「私が直接飛び込んで確かめてくるわ」
「ゆ、紫!! あんたは自分で何をしようとしているか解ってるの?!」
「ええ、もちろんよ………これも、友人とそれ以外の人たちのためなのよ? 賢者が勇気を出さないでどうするの?」
「………ぅ!!」

紫は霊夢を優しく抱きしめる。

「霊夢………及び、ここにいる『賢者達』に告げる!!」

紫の声に、この場にいた皆が反応する。

「これより、幻想郷の大賢者八雲紫は蒼霧の海にこの身を投じる!!」
「紫っ!!」
「そしてお前達にはまだやることがあるな!! だが、助かる道は恐らくない!! しかし、私はお前達に最期まで生き延びるチャンスを与える!!」
「………」
「生き延びる権利があるものは後に救われる!! だが………最期まで闘うものよ!!」

『死ぬな!! 生きて帰れ!!』

『願わくば………そのままの身体で還れるだろう!!』

その言葉の後、紫は蒼霧の海に飛び込み、姿の確認がとれなくなった。









■■■■■■■■■■










「霊夢………これ以上ここにいたら危険だ。 とりあえず守矢神社に移ろう」
「うん………」

霊夢は顔に悲しみを見せなかった。
泣かなかった。
しかし、心の中は泣いている。
だが、これを外に出してはいけないと………自ら自覚していた。


「………」
「どうした、文?」

しかし、はたてたちが浮遊を開始した頃だった。
文は飛び立とうとしない。

「何かがいますね、礼拝殿に」
「はぁ?」

魔理沙が首を傾げる。
しかし、危険にも関わらず、文は礼拝殿に近づいていった。

「何かいるのか?」
「いえ………人とかの気配ではないようです………何かの創造物とでも言うのでしょうか………」
「誰かが作ったものか?」
「それを今から確かめるんです………」

文が礼拝殿の戸を開ける。
静寂に包まれている博麗神社ではを開ける音がしっかりと聞こえるのであった。

戸を開けきった。

文が礼拝殿に入った。

「!!」

入ってすぐ、文は何かに気づいた。
足下に何かがある。

「何か見つかったのか!?」
「これは!!?」

文が怯えた顔で後ろに振り向く。
魔理沙達が文の足下にあるものを確認しようと、周りに集まって来る。

「は!?」
「何で………こんなものがあるんでしょう………」

文達の目の前に在ったのは………


















































1個の爆弾。


















































「何のよ、これは!」

アリスが驚きをあらわにする。
もちろんアリスだけでなく、周りの皆も驚きをあらわにする。

「ど、どうすればいいの!?」

突然目の前に現れた爆発物は、しっかりと時間を進めている。

残り2分。

「私の神社が大変なことになっちゃうじゃない!!」
「問題はそこですか………」

「とりあえず、霊夢とはたて………アリスと妹紅は守矢神社に移れ!!」
「はぁ!?」

魔理沙の唐突な発言に、霊夢は猛反対するような態度を取る。

「ここは、文と私がなんとかしてみせるから………」
「外の世界に逃げるんだから………ぶっ壊さなくても良いでしょう!?」
「そうかなぁ………文」
「はい」

魔理沙に言われ、文はカメラを取り出した。

「まぁ、準備なんてとっくに出来てましたよ」
「魔理沙!! 文!! 待ちなさい!!」
「おいおい………」

魔理沙が手で制し、霊夢が礼拝殿に入ろうとするのを止める。

「紫がさっき言ったことを忘れたのか?」
「………え?」

『死ぬな! 生きて帰れ!!』

「待って!! 待ってえぇっ!!」
「落ち着いてください!!」

今にも飛び出しそうな霊夢を、はたてとアリスが腕をつかみ止める。


















































はたてとアリスに連れられ守矢神社に向かったとき、霊夢は博麗神社の方向に振り向いた。

そこには、あの爆発物が爆発した瞬間が確認できた。



















































■■■■■■■■■■

「残りは3人ね………」

アリスが溜め息まじりで言った。
その発言に対しての他の人たちの反応は無い。

先程の爆発物。
もちろん、突然現れただけに何故あるかが解らず、誰が置いたのかも解らなかった。

「礼拝殿はあまり入ってないから………私たちがいない間なら誰でも置くことが出来るわ」

霊夢のその言葉には力も確信も何も隠っていなかった。

「爆発物関係なら、外の世界の技術を利用………紫とにとりが怪しいわよね………」
「アリスは本気で言ってるの?! 疑うの!? 私の友人と、にとりを!!」
「そう言うわけじゃないんだけど………」

霊夢の突然の態度の変化に驚き、アリスは冷や汗を垂らす。
はたてはその状況をただ無言で見ていた。

「はたて、妹紅は?」
「え、う、ううん………って、え?」

アリスに言われ、はたては周りを見渡した。

場所は守矢神社。
幻想郷の住人であれば大体の人は知っているはずの場所。
ここへ向かう途中、妹紅は付いて来るだろうという前提で霊夢達はここに来た。
しかし、いない。

「何………で………?」

現在、博麗神社にいるのは………アリス、霊夢、はたての3人。

「アリス?」
「え?」

霊夢がアリスをもの凄い形相で睨む。

「あの爆発物も………妹紅も………それ以外のも………一連の事件はあんたじゃないの?!」
「何でそうなるのよ」
「じゃあ、それ以外のことがアリスじゃなかったとしても………爆発物は否定できないんじゃない?!」
「………ッ!!」

その発言に対して、アリスは反論が出来なかった。

霊夢はじりじりとアリスに詰め寄る。

「反論しないの? 人殺し?」
「ふん………確かに、私は疑われても仕方が無い身かもね………」

アリスの後ろは守矢神社の石段であった。
その高さは博麗神社より高さがある。落ちたらひとたまりも無いだろう。

その階段の状況を、アリスはちらちらと確認している。
もちろん、蒼霧でほとんど確認できない。

「落ち着きなよ霊夢!! アリスさんが犯人とは限らないでしょう?!」

はたてが止めるが効果はない。

そして刹那。

アリスが大きく後ろに吹き飛んでいく。

はたてはそれを呆然と見つめている。

「人殺しいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!」

その間、スローモーション。
はたての視点では、スーパースローカメラの映像と同様であった。

はたての顔に映るアリスの顔は………。

■■■■■■■■■■

「はたて」
「うっ!!!」

霊夢の声に大きく反応する。
はたてにとっては当然、先程アリスを蒼霧に包まれた石段に落としたからだ。
次は自分も殺されるかもしれないという恐怖感に襲われていた。

「私が今、あんたの目の前でアリスを殺したのを見たでしょう?」
「………」
「人が人を殺した以上、私的には自殺じゃ罪が償えないと思うの」
「だから、何なの?」
「私を………アリスと同じようにこの石段に突き飛ばしてほしいの」
「何で!?」

はたてが霊夢に1歩詰め寄る。

「あなたは生きる資格のある人じゃない!! 博麗の巫女じゃないの!!」
「紫から少し聞いたの………生きる資格があるのははたてなんだって」
「何で?!」

「文にも生きる資格が有ったのよ………なんでかというとね、この異変のことを新聞に………『情報』にして伝えてほしかったんだって。 私のような妖怪じゃ外の世界ではかまってくれない………だから、文やはたてのほうが………記者の方がそういう仕事にも向いてるし………それに………それに………」

霊夢はここで言葉を詰まらせた。

「言う必要が無いわ」

霊夢が石段を背に、手を大きく広げた。
そのポーズは「私を突き飛ばして」と言ってるものだった。
はたては霊夢を突き飛ばすことに躊躇する。

しかし、はたては両手を前に突き出し、その手を霊夢に向けた。

「そう………それでいいのよ………」

霊夢の身体が宙に浮く。

そして、神社の階段の……………。







■■■■■■■■■■


「それで………」

はたては独り言を呟く。

「私に何で生き残る価値があるのよ………」

神社中を彷徨いながらの。

そして、蒼霧は守矢神社の礼拝殿にまで迫ってきた。

「逃げられるなんて思っていないわ………え?」

はたては礼拝殿の真ん中に何かを見つけた。

「何で………?」

それは、はたてを幻想郷から脱出させるためのスキマがあった。
しかしはたては、このスキマに入ろうとしない。

「私には助かる資格なんて無いわ!! 霊夢を殺したのも!! 私だけ助かるなんておかしいもの!!」

はたては大粒の涙を流した。

「この………罪で穢れた身体!! ううぅっ………!!!」


「うわああああああああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁああっぁぁあああああぁぁぁああああああぁぁぁぁっ!!」

























































----------朝目覚める度に 君の抜け殻が横にいる







          蒼霧異変。
          幻想郷の住人の間ではこう呼ばれた。







----------ぬくもりを感じた いつもの背中が冷たい





          この霧は幻想郷全土を覆い、多大な被害を出した。







----------苦笑いをやめて 重いカーテンを開けよう






          この霧は幻想郷どころか、冥界や魔界、彼岸や地霊殿など、他所にも被害を及ぼした。







----------眩しすぎる朝日 僕と毎日の追いかけっこだ






          異変の出所は捜査のしようがなく、詳細は不明。





----------あの日 見せた泣き顔 涙照らす夕陽 肩のぬくもり







この異変による幻想郷などの住人で助かった者がいるかどうかは不明である。







----------消し去ろうと願う度に 心が 體が 君を覚えている






----------Your love forever
----------瞳をとじて 君を描くよ それだけでいい
----------たとえ季節が 僕の心を 置き去りにしても






          幻想郷の蒼霧は何時晴れるか不明であり、その捜査は幻想郷を良く知っている者にしか許されないことになっている。







----------いつかは君のこと なにも感じなくなるのかな







         もちろん、部外者の侵入は許されていない。






-----------今の痛み抱いて 眠る方がまだ いいかな






          この事件のせいで、外の世界の博麗神社には誰も寄り付かなくなったという。






-----------あの日 見てた星空 願いかけて 二人探した光は








          現在、生存者を確認中である。








-----------瞬く間に消えてくのに 心は 體は 君で輝いてる

-----------I wish forever


「はっ!!!?」
■■■■■■■■■■






































姫海棠 はたて

外の世界の博麗神社で目を覚ます。
総集編です。

この異変は誰に起こされているものなのか、
というのが重要な鍵だと思われ(ry

では、誤字等の指摘はよろしくお願いします。
ヨーグルト? いいえ、ケフィアです(笑)
作品情報
作品集:
20
投稿日時:
2010/09/24 09:13:38
更新日時:
2010/09/24 18:13:38
分類
蒼霧異変
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