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『此処に居る理由 後編』 作者: 冥

此処に居る理由 後編

作品集: 21 投稿日時: 2010/11/02 15:44:54 更新日時: 2010/11/03 00:44:54
――――――――――


今日は良い天気だ。
見渡す限り 雲一つない青空が広がる。

顔を出した太陽が 眼下の街を照らしだす。
太陽と人々の起床と共に 月は対の地平線へと沈み、就寝しようとしていた。

私はこの時間帯が好きだった。
日と月、二つの天体が同時に姿を表す。

それはまるで、別たれた二柱の神、八百万の最高神である太陽の神 天照大御神と、彼女の弟にあたる月の神 月讀命が 運命に逆らってでも再開をしようとしているようにも見えるからだ。
月讀に 相反する世界に住まうことを命じながらも やはり弟である月讀が恋しいのだろうか…。

私は実際に天照大御神と月讀命に会ったことは無いが、天照が起こした岩戸隠事件は 今でも記憶に残っている。
私も八百万の一柱として、その大宴会に参加したからだ。

ただ、あまりにも神々の数が多かったため、天照本人を目にすることができなかったのである。
逆に言えば、集まった神の数こそ 事の重大さを物語っていたのだ。


岩戸隠は、『八俣遠呂智(ヤマタノオロチ)』を討伐したことで有名な
『建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)』と天照の間に起きた、些細な誤解が原因だったという。

いうなれば姉弟喧嘩のようなものであるが、そのおかげで世界は闇に包まれ 災いが溢れ 全生命の存亡を脅かしたのだから、我々としては大変良い迷惑であった。


天照大御神。月讀命。建速須佐之男命。

この三柱の神は 三貴子と呼ばれ、同じ神を親に持つ いわば姉弟であった。
彼等三神に纏わる話といえば 大抵は何らかの騒動だったりするので、その都度ヒヤヒヤさせられたものだ。

今となっては、知り合いの神との酒の肴に 丁度良い思い出話になっているが。


地平から序々に登り行く太陽をボーっと見つめながら 昔の記憶に耽っていると、いつの間にか早苗がやってきていた。
もうそんな時間か…

いつものように社の前に立ち、一礼して手を合わせ 目を閉じる。
数秒後 目を開けて再び一礼し、鞄を持って街への道を歩いていく。

すっかり見慣れたこの光景。
過ぎていく早苗の背中を見送り、小さく手を振る。


このときの私に もうすぐ起きるであろう事態に 気付く術はなかったのだ。



早苗を見送った後、私は近くの池に居た。
社の裏手にある細い小道を進んだ先にある、小さな池。

この季節ともなると 以前より住処にしていた御玉杓子が一斉に成長し、蛙へと変化するのだ。
そして昼夜関係なく その歌声を周囲に響かせる。

彼等は雨を特に好む種らしく、その天候のときには 一層と綺麗な声色を出す。

世間では『梅雨時』なんて呼ばれる 六月の今日。
晴れてさえいなければ、雨を降らせていたものだ。

もちろんこの雨は 単なる自然現象によるものだけでなく、我々神達が 意図的に降らせている時もある。
農作物に影響を与えようと 豊穣の神が。
水の災害が起きぬようにと 水の神が。
大地に潤いを持たすために その地を護る神が。

雨に限らず、あらゆる天候は 神の意のままに発生、抑止できるのだ。

神を怒らせれば、相応の災いとなって人々に襲い掛かる。
神の前では 人間とは儚く無力な生物なのだ。

別の神に助けられたとしても、人々は神に感謝などしない。
神の存在すら信じていないのだから。


「お前達でさえ、ちゃんと感謝してくれるのにねぇ…」


目前で合唱中の蛙達を見ながら、人間達への若干な皮肉を込めて呟く。
かつて天災から人々を護ってきた私だからこそ、時の移り変わりによって
人間の神に対する考えが薄れてきている事に対し、軽い嘆きを覚えるのだ。


その時。

私はふと空を見上げた。
視界には鬱蒼と茂る葉が広がるが、私はその向こうを見ていた。


「……なんだろう」


なんか胸騒ぎがする。
はっきりとは判らないが、きっと良くない事が起きる。

そう直感した私は、池から離れ 社へと戻り、街を一望できる場所へと向かった。


「…………っ!!?」


私は言葉を失った。
目前に拡がる街。
いつもと変わらぬ風景の中、ただ一つ 異なるものがあった。

ある大きめの建物から、正確には建物の向こうから 巨大な風の柱が猛威を振るっていた。
大地から飛び出した龍の如くその身を捩じらせ、周囲にある物を飲み込み 破壊している。


私はすぐさま その発生源へと飛んだ。
その建物には、制服を着た子供たちが大勢いた。
そう、いつも早苗が着ているものと同じ…!

飛び交う悲鳴、破損する校舎、飛ばされる人々、吹き荒ぶ強風。


「くっ!!」


私は咄嗟に両手を前に出し、力を行使する。
竜巻は威力を落とし、数秒後には完全に消滅した。

上空から見るその爪痕は とても酷かった。

集まる人々、非難する生徒達。
その中に 早苗の姿を見つけることは出来なかった。

私は学校の周囲に修繕の力を施し、しばらく上空から学校の様子を伺っていた。

これは一体何事だろうか。
私が居ながら こんな現象が起きるなんて有り得ない。


少し調査したほうが良さそうだ。
それから大地に降り立ち、日が沈む頃まで 私は学校近辺を調べて回った。



――――――――――



「………はぁ〜」

日は沈み、空が夕焼けに染まる刻。
私は社にいた。


「手掛かりなし、か…」


幾ら調べて回っても、竜巻が発生した原因、そして 発生するまでそれに気付けなかった理由が判らなかった。
いや、大方の見当はついてるが 確たる証拠が見つからない。
と言ったほうが正しかった。


「…………早苗」


特に意味もなく その名を呟く。
そう、あの竜巻は きっと早苗が起こしたものだ。
早苗の力が暴発した。で済ませれば手っ取り早いが どうも納得がいかない。

こういう事態が起きぬ様に、夫妻も そして早苗自身も いつも鍛錬していたというのに。
そして何故、あれ程の竜巻を 街に被害が出るまで 私が気付けなかったのか。

如何なる自然現象であれ、大気の歪み、空気の密度や質量。温度によって 天候変化が起こる事は事前に判る。
人為的にいきなり発生させたとしても、自然に介入できる程の力を使えば 私はそれを感知できる。

つまり、私に一切気付かれず 大気への事前兆候も出さず、あの竜巻を発生させる事は不可能なのだ。
きっと何かを見落としている…。


その日の夜、私は東風谷一家の神社へとお邪魔した。
昼間の出来事において 夫妻が何を思っているのか、そして何より早苗の様子が気になったからだ。

薄暗く 静まり返る室内。
時間も時間だし もう就寝しているのだろうか?

廊下を歩いていくと、とある一室 襖の隙間から溢れる僅かな光が目についた。
あそこは確か居間だ、中から声が聞こえる。

私はその襖の前に移動し 襖越しにその会話を聞いた。
様子からして、父と母の二人だけのようだ。



「あなた。どう思います?」

「どうも何も、やはり早苗だろうな」

「でも…一体どうして…」

「解らない。だが、あの竜巻は 早苗に溜められた畏れが具現したものであるには違いない」

「私達はまだ、あの子に力の発散の仕方を きちんと教えていませんでしたね…ふとした切っ掛けで 力が解放されないとも言い切れませんし」

「うむ。我が一族に伝わる魔符で 学校に結界を張っていたから、幸い死者こそは出なかったが…」

「…それでも、重軽傷を負った生徒達は少なくありません」

「それほどまでに 早苗に秘められた力は 相当たるものなのだな」

「えぇ、おそらくは先祖代々からみても あの歳であの力を有するのは 早苗しか居ないかと…あの子は今?」

「部屋で寝ているよ。早苗のせいではないが、やはり随分と堪えているようだ」

「しばらくはそっとしといた方が良いでしょうか」

「そうだな。だが、まるっきり放っておく訳にもいくまい。明日 ゆっくり早苗とも話をしよう」

「そうしましょう。これは あの子の力を把握しきれていなかった我々全員の問題でもありますからね。あの子を咎めるつもりは無いけれど、やはり ちゃんと話はしておいた方が良いでしょうね」

「うむ。早苗がその力を完全に従える事ができれば、何ら問題は無かろう。しかし まだ早苗は発展途上だ。それまでの間に また同じ事が起きないとは 決して言えない。…最悪の場合、早苗から風祝の力を封じなければならぬかもしれないな」

「そんな……」

「そんな顔をするな。そうさせない為にも 我々は此処に越してきたのだろう。我々が早苗を導いてやらねばならぬのだろう。親として、先代風祝として、我々が早苗を見守っていくのだ」

「……そうですね、その通りです」



父は母の肩に手を置き 優しく微笑む。
そして母も それに応じるように微笑んだ。

それ以上 何も言うことなく、二人は寝室へと向かった。
今の話を振り返り 私の疑問もいくらか解決した。

あの竜巻を起こしたのは やはり早苗であること。
早苗は自ら他人を傷付けるような人間ではない。
あの二人が言うように、何かの拍子に力が暴発してしまった。というのが妥当だろう。


これは私の推測だが、暴発というよりは 溜めに溜めすぎて溢れかえったのではないかと思う。
発散させて消費する畏れよりも 溜め込む畏れの方が多ければどうなるか、解は単純な足し算だ。

杯に酒を注ぎ続ければ いずれ酒が零れてしまうのと同じように。空気を際限なく入れて 許容量を超えた風船のように。
早苗の器に収まり切らなくなった畏れが溢れ、小さな穴から堤防を崩したように一気に放出し あの竜巻となって具現したのだろう。


そして私が直前まで気付けなかった理由。
先程会話に出た、東風谷一族に代々伝わる魔符による その結界こそが原因であろうこと。

その魔符がどのような効果を持つかは不明だが、会話から察するに 早苗の力、正確には風祝の力を抑制させるようであった。
力を封印するとか言っていたが、おそらくこの結界も 同類のものなのだろう。

その結界が学校敷地内と外側を隔てる障壁の役割を果たし、早苗の力を緩和。その結果 私は感知するのが遅れてしまった…。


こう考えれば 全て合点がいく。

力を抑える結界があって尚、あの威力の竜巻。
きっと風祝であるからこそ 竜巻という形になったのだろう。
もし、更に多くの畏れを溜め込んでいて 夫婦が張った結界が無ければ、大型の台風くらいの破壊力を持った災害として具現したに違いない。
やはり早苗には 相当の力があるのだろう。

その力を完全に抑制させるには、並大抵の努力では儘ならないことが 容易に想像できた。
故に、早苗の歳を考えれば それはとても酷なことであった。

他の同年代の娘は 楽しく遊んでいるというのに…

なぜ、こんな強すぎる力を早苗に与えたのか。
私は神を呪うしかできなかった。

自身が神であるにも関わらず……。



学校の修復も 日々順調に進み、今や授業を再開できるまでに仕上がっていた。
私はその間も学校に赴き 工事現場の人を守護すると共に、作業に差し支えないように 地盤や天候を安定させる役割も担っていた。

しかし、私以上にある 人々の活気があったからこそ、修復作業が進んだといえよう。

明日から授業が再開されることになったという話を小耳に挟む。
所々まだ僅かに破損箇所はあるものの、ほぼ 竜巻が起こる前の形を取り戻していた。
ここまでくれば、もう私が居なくとも もう大丈夫だろう。

もうしばらく様子を伺い、社へと戻ることにした。


そうして一週間後には 学校は見事に修復されたのだ。
更に言えば、それは早苗の姿を見ていない期間でもあった。

あの竜巻が起きた日から今日まで 早苗は私の社には訪れず、私が神社に行っても 早苗は不在だった。

何処へ行ったというのだろうか…。



そして翌日の朝、学校が再び始まる日。
私は社で早苗を待っていた。

今日なら いつものように参拝に来るだろう。



しかし、いつもの時間になっても 早苗は来なかった。
それは夕刻になっても同様だった。

もしや、あの事件が切っ掛けで寝込んでいるのでは?
気になった私は神社に行き 夫妻の会話を聞いたが、早苗は学校に行っているらしかった。

つまりは 早苗は意図的に社に来なかったということ。
その話を聞いた際も、早苗は神社には居なかった。



次の日も、そしてその次の日も。
早苗が社に訪れることはなく 姿を見なくなってから ついには二週間が経過した。

初めの方こそ 自身の手で友達を傷つけた早苗の辛さや気持ちに同情し 理解していたが、日を重ねるにつれ それは次第に苛立ちへと変わっていた。
早苗にしてみれば 確かに相当ショックだっただろう。しかしそれをいつまでも引き摺っていたら 何も解決などしない。

過ちを犯す事は 決して悪い事ではない。
過ちと知って尚 それを正そうとしない事こそが、悪い事なのだ。

もし次の日も同じ様であれば、自分の力を早苗に合わせてでも姿を現し 一度、直接話をしようと思っていた。


そんなのは建前であって、本当は ただ早苗が心配だった。
ただ、早苗の姿が見たいだけだった。

という自分の本心に対して、敢えて気付かぬふりをしていたのか それとも本当に気付けなかったのか。
何か 胸に言い知れぬモヤモヤを感じながらも、翌日 早苗が来てくれる事を信じて 社で待ち続けた。



――――――――――


いつの間にか世が明け、太陽が顔を出していた。
いつもと変わらぬ朝。
私が好きな朝。

それでも今では 心の底からその景色に浸る気分では無かった。
一晩中 早苗の事を考えていたからだ。

社の境内をウロウロと歩き回る。
石段に座り 空を見上げる。


昨夜からのモヤモヤも晴れず、ジッとしてもいられず、落ち着きなく身体のどこかしらを動かしていた。
私から神社に向かっても良いのだが、それはしたくなかった。
あくまでも、早苗自身からこちらに来てくれる事を望んでいた。


「全く。どんなつもりなんだろうねぇ…」


社の階段に座って足を放り、空を見上げながら呟く。
誰に言った訳じゃない。無論 早苗に対してもだ。


これは 自分が勝手に待っているのだから、早苗が来なくても それに関して早苗をどうこう言うものでもないのだ。
だが、言わずにはいられなかった。
もしかしたら、自分自身の行動に対して呟いたのかもしれない。


そうこうしている間に 太陽は高度を上げ、以前なら早苗が来る時間を とうに過ぎていた。


「ふぅ……」


短く、且つ深い溜息をつき、私は立ち上がった。
早苗は今日も来てはくれなかった。


目を閉じ、両手を合わせ印を組む。
文字通り早苗と会って話をするべく、自分の力を制御させる儀式に入ろうとした。
息を整え、第一声の為の息を吸った その時、私の聴覚が ある音を捉えた。

ふと目を開け 音がした方向を見る。
砂利を踏み締める音だ。


 ジャリ
     ジャリ


人が歩く程度の 一定の間隔を開けて鳴る音は、どんどん大きくなる。

誰かが来た。

私は無意識に それが誰だか判った。
吸った息を吐き出し 印を解き その人がくる方向を見ていた。


淡い緑の髪を揺らし 白と緑の色合いをした巫女服を身に纏った彼女が 姿を現す。
表情は 以前より見馴れたものではなく、凛としており 覚悟を決めたような、強い意志を持っているかのような、静かな焔をその瞳に宿したような…勇ましさに包まれた表情であった。

そして 片手に箒を持ち もう片手にバケツと雑巾を持ち、この社へとやってきた。

服と表情と持っている物。
少しながらの不意をつかれた早苗の訪問に、私は当初の目的も忘れ ただその場に立ち尽くしていた。


もちろん早苗には私がまだ見えず、そんな私をそっちのけで 社の方へ歩いて行った。
箒とバケツを傍らに置き、社の前に立ち 深々と一礼した後 両手を合わせて目を閉じる。


久しぶりに見た早苗の姿には、私が思っていた事の気配は微塵も感じられなかった。
それが 私が早苗に対して 動くに動けなかった理由でもあろう。

原動力そのものが無くなってしまった様な感覚に陥る。


約五分間に及んだあと、早苗は目を開け 再び深々と一礼した。

その後 持ってきた箒で境内の落ち葉を隅々まで掃き、バケツに張った水で雑巾を濡らし 社を綺麗に拭いていく。
一人で黙々と掃除を続ける早苗を 私も同じ様に黙って見ていた。


そうか、今日は確か日曜日だ。
だからこの時間でも制服じゃなく 巫女服を着ているのか。
唯一働く頭で それだけは理解できた。


「ふぅ。これくらいで良いかな…うん、綺麗になった」


早苗が気が済むまで掃除をして 片付けを始めた頃には、太陽はもう真上に来ていた。
境内は以前と比較にならないほど綺麗になった。

帰り支度を済ませた早苗に 私は着いて行く。
今日が日曜日ならば、早苗が普段どう過ごしているかが判る筈だ。

あの竜巻が起きてから今日までの二週間、早苗はどうしていたのか。
彼女の二〜三歩後ろを歩く。

早苗が社の境内を出ようとしたその時、急に振り返った。
私は吃驚して立ち止まる。

そして私に向かって、社の前でした様に 深々と一礼したのだ。


「……さ…早苗…?」


もちろん早苗には 私の姿も 声も まだ感じ取れないだろう。
彼女にじてみれば 私の向こう、つまりは社に向かって御辞儀したのであろうが、私の立ち位置が位置なだけに この驚きも ある意味は仕方ないだろう。

顔を上げ 神社へと向かう早苗。
少し遅れて 着いて行く私。


気のせいだろうか。
早苗と目が合ったのは……。



神社に着いて、早苗は掃除道具を片付ける。
そのまま室内にはいるのかと思いきや、再び歩き出し 神社の裏手の小道へと向かった。

丁度、神社を挟んで私の社とは反対の側だ。
こんな道 在っただろうか。
不思議に思いつつも、小道を進む早苗の後に続く。

舗装すらされていない獣道を少し進むと、開けた場所に出た。
感じとしては 神社が建つ前の跡地に似た様な。

八方を木々に囲まれた 約二十メートルほどの空間。
木漏れ日が射し込み そよ風に葉を揺らし、鳥の鳴き声が微かに聴こえる。

その広場の中央に 私の腰くらいまである小さな岩が置いてあり、それを祀るかの様に 周囲に杭が立てられ、縄が張られていた。
その縄にも 所々に呪符が貼られており、まるでその岩を封印でもしているみたいでもあった。


永らくこの地に居るが、この場所は初めて見た。
きっと東風谷一家が越して来てから 彼等が創った空間なのだろう。

あの岩が無ければ 茣蓙でも敷いて酒の一酌でもいきたいところだが、酒の席には あの岩は少し存在感がありすぎる。

そんなことを考えている最中、早苗は予め 広場の隅に置いていた荷物から、榊などの枝に紙垂(しで)をつけた 玉串と呼ばれる道具を取り出し、縄の内側へと入り、岩に近付いていく。

一呼吸置き 玉串の端を両手で握り、目を閉じる。
暫しの黙想を終えた後、早苗は梵字を唱え始めた。

すると 瞬く間に周囲に風が発生し、この空間を包みだした。

穏やかに 緩やかに、早苗と岩を中心に 風の渦がゆっくりと流れる。
時々、強烈な逆巻き風が生まれ 風の流れを乱そうとするが、早苗が全神経を以ってそれを抑える。

傍からそれを見れば、風が吹く空き地に 一人の少女が目を閉じて立ちながら小声で呟いているだけ。
しかし、その少女の表情は真剣そのものであり 一筋の汗が額を伝っていた。


私はその光景を目の当たりにし、全てを理解した。
早苗は此処で風祝の修行をしているのだ…と。

それこそ毎朝 私の社に行く時間も、放課後友達と遊ぶ時間すらも惜しみ、日が沈んだ後も 自身の娯楽の時間を削ってまで この場所に訪れて…。

そう思える根拠が、今の早苗から感じ取れる力であった。
ほんの二週間前と比べ、早苗の中に秘められる力の差の違いは歴然だった。

私は なんて愚かな勘違いをしていたのだろう。
早苗は 挫けてなんかいなかった。
まさにあの時 私が思った通り、同じ過ちを繰り返さぬ様にと修行しているではないか。
昨夜から感じていた胸のモヤモヤは きっとこの勘違いから来ていたものだったのだろう。

早苗に対し 感心と申し訳なさを感じていたが、それ以上に抱いていたのが 悲しさだった。


あの竜巻が起きたのは、全てにおいて早苗のせいではない。
これ程までに身を削って責任を負う必要なんて どこにもない。

一度きりの人生。
最も楽しむべきであろう年齢なのだから、めいいっぱい遊んで 同様に笑ってほしい。

早苗は今、あまりにも頑張り過ぎている。
このままでは やがて身体を壊してしまうのも時間の問題だ。

先民として、神として、もっと私を頼ってほしい。



今の早苗を見てると、何故か悲しみが込み上げてきた。
もともに頭も回らず 箇条的にしか思考が働かないが、ただひとつ 確かな思いはあった。
居ても立っても居られず、私はこの思いを早苗に伝えたかった。

巫女服と髪を風に靡かせ 尚も修行に没頭する早苗に近づく。
縄を跨ぎ その中に立ち入ったその直後、強い風が私を襲った。


「…っ!!?」


咄嗟に身を屈める。
縄の外と内で 溢れる力の両はまったく違っていた。
この縄も おそらく結界の役割を果たしていたのだろう。

帽子は吹き飛ばされ 縄の外の地へ落ちたが、それに気を取られている暇などなかった。


強風にも慣れ 改めて近くで早苗の後姿を見つめる。
私の服は強風に煽られ 激しく揺れているのに対し、早苗の衣服や長い髪は 微風に身を任す様に 緩やかに漂っていた。

それは、早苗がこの力を抑制し、風を従えている事を意味していた。
この数日間、どれほどの苦労をしてきたのだろうか。
味わう必要なんてない その苦労を…。

私は更に早苗に近づき その肩へと手を置いた。
自身の力を調整することすらも忘れ、早苗には感じ取れないことも承知の上…で。


その時、早苗が急に静かになった。
式を解除した為に 周囲の風は途端に霧散して消え、次第には当初のような静かな空間へと戻った。

そして早苗は 私が手を置いた側の方へ ゆっくりと振り向いたのだ。




私は思わず手を引っ込めた。
もしかして、私が見えて……?

しかし、早苗の視線は 私に向けられる事はなく すぐに反対側へと顔を向けた。

少し辺りを見回し 首を傾げた後、早苗は梵字詠唱を始め 修行を再開させた。
再び風が吹き荒れる周囲。
私は縄の外に出て、飛ばされた帽子を拾う。

帽子に付着した砂や葉を払い落としながら、もう一度早苗を見た。


やはり早苗は まだ私の姿を認識するには至っていない。
それでもうっすらと 私の存在に気付くことは出来ていた。

この数日に亘る修行の賜物なのだろう。
このまま更に数日修行を続ければ、はっきりと私の姿を見れるまでに成長するだろう。

そうなれば嬉しい。
という感情もあったが、それはあくまでも 今のまま修行を続行すれば、の話だ。
先程早苗に抱いていた想いもあって、もしそうなったとしても素直に喜べるとは思えなかった。

やはり、今のままではいけない…

早苗をその場に残して社へと戻り、内部の祭壇にあった紙と筆を取り出して 早苗へ宛てる文章を書き記した。
その手紙を持って早苗が居る場所へと向かう。
ものの十分程度ながらも 早苗は変わらず其処に居た。

当初と同じように、真剣な表情で。


持って来た手紙を 早苗の荷物の傍らへと置いて 暫く早苗を見つめたあと 社へと戻った。

彼女に 私の想いが伝わるようにと願いなら…。




――――――――――


なんだろう。
今日はなんだか集中できない。
つい先程 違和感を感じてから、どうにも気が逸れてしまう。

梵字詠唱を中断し、空を見上げる。

うまく言い表せないけど、暖かくて…優しくて…そしてどこか悲しくて…。

そんな 何とも居えない不思議な感覚が、左肩辺りから身体の中に流れ込んできたような気がした。


気にしないと思いつつも、身体がその感覚を覚えてしまっている。
今日のところは終わりにしよう、こんな状態じゃ修行に身が入らないだろうし。

額の汗を拭い、置いていた荷物の場所へと行く。
玉串を仕舞い 神社へ戻ろうと鞄を手にしたその時、私の目にあるものが映った。


………紙?


鞄を置いた時には こんな物は無かったし、ましてや自分の所有物でもない。
綺麗に折られたその紙を手にした。
中に文字が書かれている。

私はその紙を開いた。


その筆跡は お父さんでもお母さんでもなく、見慣れぬ達筆で綴られていた。
そして 文頭には私に宛てる意味を示した文字。
即ち私の名が書かれていた。


「……何これ…誰だろう」


当然の疑問を口にしつつ、その紙の裏側をみたり 日に透かしてみたりした。
その質感から、とても年期の入った代物であろう事はわかった。

でも、一体誰が…?

残る疑問を抱きつつも、私は綴られた文章に目を通した。


最後まで読み終えた時 頬を伝う一筋の涙を
拭うことが出来なかった。



――――――――――


六月の中旬の今日。
朝から雨が降っている。

朝のいつもの風景が見れない変わりに、池の蛙達の 普段より元気な歌声が聞けた。

数多の蛙達の合唱に耳を傾けていると、歌声以外の音が聞こえた。
砂利を踏みながら、こちらに近付いてくる音だ。

私は社へと向かった。
この時間帯に此処へ来る人間といえば……。


池からの小道を抜け、社に着いたと同時に 彼女も姿を現した。
昨日の巫女服ではなく、学校へ向かう時の制服を着ている。

そう、以前の 登校前の参拝だ。
私を視界に入れつつも、何の反応も示さない所を見ると、やはり『今』は私が見えてはいにのだろう。

いつもの様に一礼したあと、社に向かって一言いった。


「『洩矢諏訪子』様。……有り難う御座います」


昨日と同様、もしくはそれ以上に腰から曲げて深々と頭を下げてから、早苗は社を見る。
その視線の先に 私は立った。ちょうど早苗と目が合う位置に。

私は早苗に向かって微笑んだ。
そして早苗も、顔を少し下げ 照れくさそうに微笑んだ。

きっと 自分の行動に対して 恥ずかしいなと思っての微笑みだろうが、そんなのはどうでも良かった。

足元の鞄を持ち、再び社を見た。


「それでは、行って参ります」


そう言って 麓のバス停へと歩いていった。


「行ってらっしゃい。早苗…」


早苗は 私の言いたい事を理解してくれていた。
久しぶりの光景ながら、以前とは違った朝。

いつの間にか雨が止み、太陽が顔を出していた。
空には虹が架かり、周囲の紫陽花や草木に付いた雨水に 陽の光が反射している。



その日以降、早苗は修行に費やす時間を減らした。
正確に言えば、がむしゃらに修行するのではなく、効率良く心身を鍛えていった。

時々学校に行って 早苗の様子を伺う。
友達と共に遊び、共に努力し、助け合い、そして笑っている。


私はこの地を護る神。
この地に住まう人々を護る神。
もちろんそれは 特別な力を持った早苗であっても例外ではない。

私が此処に居る理由。それは…………



――――――――――



「ふーん。そんな事があったのか」

「はい。八坂様がいらっしゃるよりも前の話になります」

「にしても、力を溜めすぎて災いとして溢れさせてしまうなんてねぇ。それでこそ早苗と言うべきか、早苗らしくないと言うべきか」

「っ…あっあの頃は 私もまだ未熟だったんです。今はもうそんな事はあり得ませんよ!」

「はっはっは、そう怒るなって。ちゃんと判ってるよ 今の早苗なら大丈夫だって」

「……もう」


早苗は若干拗ねた溜息を混じらせた。
酒を呑みながら そんな早苗を面白可笑しく見る 神奈子と私。


何か呑む酒は無いかと、押入れに頭を突っ込んで探していた神奈子が見つけたのは、木箱に入れられ 大事そうに布に包まれた一通の手紙。
興味を抱いた神奈子は早苗に訊ねた。

そこから始まった、昔話。


神奈子は 私が蔵から持ってきた酒を呑みながら、笑いながらも 真剣に早苗の話を聞いていた。


「おっと、酒が切れたようだね。早苗、悪いけど ちょっと取ってきてくれないかい?」

「あまり飲まれては、逆に呑まれますよ?」

「ははっ 早苗も旨いこと言うか。しかしこの程度で酔う程、神は貧弱じゃないぞ」

「ふぅ…わかりました。ちょっと待ってて下さいね」

「頼んだよ〜」


神奈子は早苗に追加の酒を頼む。
自分で取りに行けよ と言いたげな表情をする私に 気付きもせずに言う。


「本当に、そんな事があったなんてね…しかしまぁ、随分と早苗を贔屓してたんじゃないかい?諏訪子」

「別にそんなつもりはなかったよ。目の前に困っている人が居たら 助けるのは当然じゃん」

「本当にそれだけ?」

「……それに、早苗には。あの一家には 何か特別なモノを感じたからね。その力じゃなくて、もっと別の、私とあの一家に繋がる 根本的な何かを…」

「特別な力というのは、本来は自然に生まれるものでもない。それこそ 親から子へ、先祖代々受け継いでいくものさ。あの地で巡り合えたのは 何かの偶然か、それとも必然か」

「それは分かんないね。ただ言えるのは 不条理な神も居れば それに抗う神も居る。そして 酒を沢山呑んで更に持ってくる様に催促する神もね」

「……最後のは誰の事だい?」

「さぁてねぇ。神はみんな お酒を呑むからねぇ〜」


私は神奈子との会話を打ち切る様に、縁側へと出た。

目の前に広がる 色鮮やかな紅葉。
飛行機の代わりに 天狗が翔る青い空。
どこを見ても、コンクリートで出来た高層ビル郡も、車輪をつけた鉄の塊もない。
人ではなく、妖精や妖怪等の種族が蔓延り、それでいてとても静かな場所。


早苗には 親しい人との別れがあった。
二度と会えない別れ。

その悲しみは 神である私達には理解できるものではないだろう。
それを乗り越える事が どれだけ大変か、私には生涯味わえるものでもない。

手紙を持って 神奈子が来た。


「外の世界の土地を棄ててまで、この地に来たんだ。詰まる話が早苗の為…。充分贔屓してるじゃないか」

「あっちにはちゃんと私の社を残してあるし、別の神とも話をつけてある。あの地を護る神は居なくならないよ。社があれば 私の精神はあっちに行けるし それだけでも充分力は使えるからね」

「それに、あの地を手放した以上、この手紙の内容。これはもう意味は無いってことか」


神奈子は 人差し指と中指で挟んだ手紙を 怪しげに微笑んだ顔の横でヒラヒラさせながら、私に言った。


「意味はあるよ。私が神に成ったあの頃から、あっちの世界を守ってた時も、そしてこれからもね」

「私にはわからないな。諏訪子。教えてくれないかい? 諏訪子が大事な土地を棄ててまで、幻想郷に来た理由を…」

「幻想郷(ここ)に居る理由?そんなの決まってんじゃん」

「八坂様〜。洩矢様〜…お酒持って来ましたよ〜…」


私が言おうとしたとき、戻ってきた早苗が神奈子と私を呼んだ。
その声がする方向を暫く見て、神奈子に目を戻して言った。


「大切なものを護る為、だよ。昔も今もこれからも、大切なものを護る為に 私は其処に居続ける」

「ふふ…成る程ね。諏訪子らしい立派な答えだよ。はい」


私に近寄って手紙を手渡し、早苗のもとへと向かう。


「そちらにいらしたんですね 八坂様。何をしてたんですか?」

「ん〜。別に…お!おつまみまであるじゃん!」

「お酒のついでにと思いまして」

「気が利くねぇ〜。それでこそ私の早苗だ!それっ!」

「わ!?ちょっちょっと八坂様!?抱きつかないでくださいって!」

「ん〜よしよし早苗〜 お前には私がついてるぞ〜」

「ちょっ…たすっ助けへぶっ…」


居間で繰り広げられているであろう惨劇(?)を尻目に、私は幻想郷の空を仰ぐ。

外の世界となんら変わらない青。
同じように陽が昇り 月が沈む朝。

『妖怪の山』と呼ばれるこの場所に神社を持ってきたのは、少しでも外の世界の面影を残したかったから…
そんな 私以上にある早苗の意思を尊重してだった。


早苗にはもう両親は居ない。
幻想郷にも、そして外の世界にもだ。

両親の不慮の事故による他界が、早苗に幻想郷に来ることを決意させた最大の理由だろう。
自分の全てを手放して尚、その悲しみを決して表に出さない早苗は、やはり とても立派なのだと 改めて実感できる。


既に亡き母親と父親の代わりに、二度と会えない親しい友人達の代わりに。
そして先祖として、神として、早苗を護って行かなくてはならない。いや、護って行きたいのだ。


「も…洩矢様ぁ〜」


居間から響く 早苗の情けない声。
相変わらず 神奈子の嫌がらせともいえる寵愛を受けているようだ。


「全く。あの女は…」


私も居間へと向かって、蛙の人形を 神奈子の顔めがけて思いっきり投げつけた。


「ふふ〜。もう逃げられないぞ早なえぶっ!?……なっ何するんだ諏訪子!」

「こっちの台詞だ。何してるんだ?神奈子」


眉間に皺を寄せ、早苗を押し倒している神奈子を見下しながら 声のトーンを若干低くして言ってやった。
そんな私すら お約束通り無視し、再び早苗に向き直る神奈子。


「何って、早苗を可愛がってるにきまってんじゃん。ねー?」

「ぃゃ…あのその…」


さりげなく早苗に同意を求めるが、見るからに困っている。
視線で私に救出を求めている。

二人に近寄り 早苗に引っ付く神奈子を両腕で押しのけ、早苗を起こしてやる。


「こんなところをあの鴉天狗にでも見られたらどうすんの。ほら早苗、こんな馬鹿神は放っといて私と呑も」

「ばっ馬鹿とは何ぞ!」

「ぁ〜煩い煩い。ほら、早く来ないと神奈子のお酒とおつまみ無くなるよ」


それを聞いた神奈子は急いでこちらに駆け寄る。
三人揃って軽い溜息をついた後、再び杯を呑み交わす。
数分後には 先程の事も忘れ、笑顔が溢れていた。


この笑顔を護りたい。
早苗を、神奈子を、そして皆が住むこの神社を護りたい。


大切なものを護る為…

それが、私が『此処に居る』理由なのだ。


――――――――――End
まず最初に、前編と後編の文字数のバランスが良くなかったことをお詫びします(汗

そんなこんなで、やや原作無視気味ですが その辺は気になさらず。常識に囚わ(以下略)
諏訪子の神としての目線、早苗の巫女としての目線でやりたかったわけですが、原作の設定がきちんとしてないと難しいですね。

諏訪子が早苗に宛てた手紙の内容は 敢えて書きませんでした。
読み手によって、捕らえ方や考察の仕方が異なるでしょう。その中で 早苗の心を動かせるような内容はなんだろう…と。暇なときにでも読者様に考えてもらうのも面白いかななんて思いまして、はい。
作品情報
作品集:
21
投稿日時:
2010/11/02 15:44:54
更新日時:
2010/11/03 00:44:54
分類
早苗
諏訪子
神奈子
1. NutsIn先任曹長 ■2010/11/03 01:46:50
神様といっても、我々と大して変わらないのですね。
少し優れた能力を持っているぐらいで。
しかし、我々がなかなか出来ない事。努力するものに救いの手を差し伸べる事。
純粋な思いでそれをやるから、神様と呼ばれるのでしょうね。

能書きはこれくらいにして本作品の感想ですが、疲れきった深夜に読むと、沁みます。
早苗さんが捻じ曲がらずに能力をものに出来て、良かった良かった。
諏訪子様の手紙の内容は…グッと来ることが書いてあった事だけは確かでしょうね。
お八坂様とはどこで出会ったのかな?ひょっとしたら、あの大岩…?
この作品では、早苗さんは二柱を苗字で呼んでいるのですね。
実際はそうでしょうが、二次創作に慣れた身ではちょっと堅苦しいと感じました。
2. 名無し ■2010/11/03 02:37:32
一緒に頑張って行こう、こっちからも歩み寄って行くから、みたいな感じかなー?
3. 名無し ■2010/11/03 17:20:19
神奈子抜きで諏訪子が先にってシチュエーション何気に珍しいよな、早苗過去話は多々あれど
そういう点もおもろかった
4. 荷重 ■2010/11/04 15:59:59
いや、こういう話ってあんまり書かないからなんかぐっと来るな。
ちょっと言いたいこと言われすぎてコメントに困るけど。
とにかくかなり面白かった、感動しました。

・・・あれ、なんか目から流れてきたんだけど何コレ?
5. 名無し ■2010/11/06 23:32:14
早苗さんは強い娘だ。
それがひしひしと伝わりますな

二次作品などで 常に笑顔でいる彼女の裏には、こんな辛い出来事あったから。
それでこそ より可愛く見えるのでしょうね。
良い話です。

あと、神奈子のオヤジ臭にワラタww
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