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『No Country for Old Women 2』 作者: マジックフレークス

No Country for Old Women 2

作品集: 21 投稿日時: 2010/11/06 13:48:37 更新日時: 2010/11/24 00:54:07
「スカボローの市場へ行くのですか? パセリ、セージ、ローズマリーにタイム
 そこに住むあの人によろしく伝えて下さい 彼女はかつて本気で愛した人だから

 優雅であるということと気取っているということは似て非なるもの、後者は出来もしないことや身の丈に会わないことをしようとするさまのこと。普段はしないことを人前や特別な時だけに行おうとすればボロもでるし時に滑稽ですらある。対して前者は自分自身に課す制約というべきかしら? 人前でかくあるべしという事も大事だけれど、それ以上に一人でいる時、孤独な時間でこそ大事にしたい。それは生き様だから。私は私が思うがまま、私が望むがまま、私の考える優雅さに生きる。私のルールが私自身を創る」















チョキッ チョキッ   カラカラカラ

 アリス・マーガトロイドは洋服を手作りしている。
 人間が着るには、それがたとえ生後間もない赤子であってもきついのではないかという程度の大きさしかない洋服を。
 だがそのミニチュアサイズの洋服ですら、いやだからこそか、細部に拘り丁寧な仕事をしてゆく。

 白くしなやかな腕が、指が、裁ち切りバサミを走らせる。機能美という言葉が似合う錆びようもないステンレス光沢を放つそれは“近代のダマスカス鋼”、“現実的な魔法金属”と呼ぶにふさわしい。ソーイングボックスのポールに差し込まれたボビンはアリスが糸を欲するとクルクルと回って差し出した。
 糸切バサミはすぐそこの小さな引き出しに入っている、しかしそれを取らずにアリスは必要な長さの糸を目測で計るとその地点を口に咥えた。白く整然と並んだ歯が糸を挟み込む。見るものはいなかったが歯を出し続けるようなことはせず、その糸は彼女のピンク色の艶やかな口に咥えられ、白い歯は淑女の唇という古今東西永劫不変のミステリーでもって包まれた。

「んっ」

プチッ

 ハサミで切られた糸は切断面が整い、それはまるで刷毛の毛先のようにファサッっと広がってしまう。それを針の細い穴に通すときは糸の先を舌に含ませるなどして水分で纏め上げると良い。だがはじめから歯で引き千切る様に切れば切断面は力の方向にバラバラになる。さらに口内で水分を貰った糸は先端ほど密度の薄い錐状になる。

 糸切バサミを取らないことが横着なのではない。使わないことが粗雑なのではない。
 ものには適切な方法というのがある。なんでもかんでも美しく装うよりも、身近な一つ一つの物事のベストあるいはベターを探し実践し続ける。
 それが彼女の生き様だった。この些細な仕草を庶民臭いと感じるか優雅だと感じるかは見た者に委ねられる。彼女にとってはそれでいいのだから、人の目を気にしてしていることではないのだから。

「…………」

サクッ

 針が布の上を泳ぐように進み、縫い糸が終点で結ばれる。余分な部分の糸は今度こそ糸切バサミで丁寧に切られた。

 完成を見た洋服を人形に着せてやる。普段は上海と呼び戦闘のサポートやお茶汲みをさせている人形に。今作ったばかりの洋服を着せてやり、先に作っておいた頭巾を被せる。その横ではマスクを被った人形がくるくると小さく踊っている。蓬莱と呼ばれているそれは子供向きにデフォルメしたオオカミの役割を演じるようだ。狼の恐ろしさに拘らずデザインしたので愛らしさのほうが漂いそうな出来栄えだった。服と頭巾を身に纏った上海も一緒になって踊りだす。

 無論これら人形たちが自主的に踊りを披露しているのではなくアリスの指示である。半自立型人形とでも呼ぶべき彼女らはアリスに踊れと命令されれば止めるまで適当に踊り続けた。

「もういいわ、本番では和気藹々とした雰囲気よりもダークな感じを演出しなさい」

 人形に言って聞かせる。蓬莱は何処か愛らしいオオカミマスクのまま両手を挙げて上海に襲い掛かるポーズをとる。上海はそれを受けて跪き頭巾を手で押さえつけるように縮こまって怖がるポーズをした。

「…………服飾と小道具の次は演出の仕事ね、忙しいわ」

 これから上海と蓬莱へのプログラミング(脚本を読んで聞かせること)とコンパイル(脚本通りに実際に動いてもらうこと)とデバッグ(演出上の調整)をしなくてはならない。人里での公演は明日に迫っている。

 別に彼女が準備を怠っていたのではなかった。むしろ逆だ。人形たちの調整はもとより一日あれば事足りたのだが、ギリギリの日程になったのは彼女が脚本を吟味しすぎていた所為だ。子供向けの劇ではあったが彼女はダークファンタジーを好み、また幻想郷という土地柄それはそれ程評判悪くもなく、怖い話を聞きたがる子供や一部大人たち(彼ら大きなお友達は話よりも別の目的があるかもしれない)の支持を得ていた。だからこそその選定やアレンジには気を使った。

 彼女ほどの魔法使いが日銭を稼ぐ方法などほかにいくらでもある。マジックアイテム類を製作・販売して生計を立てることも容易いし、同じ時間をかければ稼ぎは段違いだ。研究や研鑽を本分とする魔女なら当然そうする。でも彼女は人形遣いなのだ、その本分を満たすことは人形の使役の精度を上げたり高機能な人形の開発という形でこそもたらされるだろう。

 大変だったがやりがいのある仕事だった。何より楽しかった。










 里の小さなホールを借りて公演が始まろうとしている。
 当初は通りの隅で開いていた程度だったのに、大きなお友達の誰かが働きかけてくれたらしく、里の公民館ともいえる場所を借り受けて劇をさせて貰えることになった。観客も数十人に達し、人形の劇を見に来た四半数は子供、半数は青少年(勿論少女もいる)、残りはいい年こいた大人という構成だった。



【昔々あるところに一人の女の人が住んでいました。その人はパンを焼いて娘に言いました】

『この焼きたてのパンとミルクを森に住むお婆様に届けてらっしゃい』

 お母さん役の人形が女の子役である上海人形にパンを手渡します。

【女の子は言われた通りパンとミルクを持って出かけます。道が二つに分かれているところに差し掛かると狼に出会いました】

『どこへ行くの?』

『お婆様のところへ焼きたてのパンとミルクを届けに行くのよ』

『どっちの道を行くんだい? 縫い針の道? それとも待ち針の道?』

『縫い針の道にするわ』

 狼のマスクを被った蓬莱人形を登場させて女の子と会話させます。

【女の子は縫い針の道で針を集めながら進みました】

『それじゃあわしは待ち針の道を行こう』

【狼は待ち針の道を通ってお婆さんの家に行き、お婆さんを殺してその肉を戸棚のなかに入れ血は瓶に入れて棚の上に置きました】

 アリスは声の演技をしないことにしていたのでナレーションもお母さんも女の子も狼も同じ声で演じました。優しく落ち着いた声での朗読と言ったところです。

【女の子がやってきて家の戸を叩きました】

『戸を押してごらん、鍵は掛かっていないよ』

『こんにちは、お婆様。焼きたてのパンとミルクを持ってきたわ』

『戸棚の中に入れておくれ。お腹が減ったろう、戸棚の中にある肉と上に置いてある葡萄酒をおあがり』

 アリスの魔法で動く人形たちはその魔力と指示を伝える糸が微かに見えるだけでまるで生きているかのような自然な動きをしました。

【女の子が肉を食べてしまうとそばに猫が来て言いました】

『それはお婆さんの肉だよ、君はお婆さんの肉を食べたんだよ』

『お婆様、猫がいるわ。私がお婆様のお肉を食べたって、そう言っているわ』

『もちろん嘘に決まっているさ、そんな猫には木靴を投げつけておやり』

【お肉を食べて喉が渇いた女の子は葡萄酒を飲みました。すると小鳥が飛んできて煙突に止まって言いました】

『それはお婆さんの血だよ、君はお婆さんの血を飲んでいるんだよ』

『お婆様、鳥が飛んできたわ。私がお婆様の血を飲んだって、そう言っているわ』

『もちろん嘘に決まっているさ、そんな鳥には頭巾を投げつけておやり』

 猫も鳥も、劇のためだけに作った動物型の人形です。お母さんとお婆さんの人形もそのためだけの人型のものでした。女の子と狼だけは上海と蓬莱が演じています。

【肉を食べて葡萄酒を飲んだ女の子は眠くなってきました】

『服を脱いでこっちに来て一緒にベッドにお入りよ』

『脱いだ服はどこに置いたらいいかしら?』

『火にくべておしまい。もういらないから』

【女の子が着物を脱いで寝台へ近付くと、お婆さんは頭巾を顔の方まで被って、奇妙な格好をして寝ていました。女の子はお婆さんの隣にもぐり込むとこう言いました】

『まあ、お婆様、なんて毛深いの!』

『このほうがあったかいんだよ』

『まあ、お婆様、なんて爪が長いの!』

『かゆいところがよくかけるようにさ』

『まあ、お婆様、なんて大きな肩なの!』

『薪をかつぐためさ』

『まあ、お婆様、なんて大きなお耳なの!』

『おまえの話がよく聞こえるようにさ』

『まあ、お婆様、なんて大きなお口なの!』

『おまえを食べるためさ』

 狼役の蓬莱人形は舞台装置のベッドからマスクを被った頭を出して女の子役の上海と観客に姿をさらします。

『お婆様、おしっこがしたくなっちゃったわ』

『布団の中でしておしまい』

『外に出てしてきてもいいでしょう?』

『しょうがないね、すぐに済ませなさい』

【狼は女の子の足にひもを結びつけて、外に出してやりました。時々狼は紐を引いて女の子が結わえ付けられていることを確認しました。女の子は外に出ると、そのひもを解いて庭の木に結び直してしまいました。狼はじれったくなって言いました】

『おまえ、そこでしてるの? まだしてるのかい?』

【答えがないので狼はベッドから飛び出し、女の子が逃げてしまったことを知りました。あわてて女の子を追いかけましたが、来る時に縫い針を丁寧に全て拾っていた女の子はその道を駆け抜けてすんでのところで自分の家に逃げ込みました】

「というお話でしたとさ。ご清聴有難う御座いました」

 アリスがやはり変わらない素の声で幕締めをすると、女の子、狼、お母さんにお婆さん、猫と鳥のそれぞれの人形が彼女の横に並び立つように浮いてペコリとお辞儀をした。

 それと共に会場は拍手に包まれる。
 子供たちはおっかなびっくりしながらも楽しめたという表情で、大人たちはその物語に含まれる意味を推理するかのようにううむと頭を捻りながら、一部の大人はハァハァ呼吸が荒くなっていたり鼻血を垂らしながらそれぞれ拍手をした。

「それでは怖いお話の後は幾つか恐くなくなるおまじないを致しましょう」

 そう言うとアリスは人形たちを引き連れて子供たちの前に来た。子供たちは女の子と男の子で分かれて座っていたので女の子たちの方に。

「いい? 狼は野山を駆け巡っている恐ろしい動物だけじゃないのよ、もちろんおっかない妖怪もそうだけれど人間にも狼になる人がいるの。男の人なんかなりやすいから気をつけなさい」

 諭すように話すアリスに聞き入る女の子たち。男の子たちは良く分からない様子で、里の大人たちはうんうんと頷いたりしている。

「お話の女の子がそうだったように、女の子はかしこくて強くなければいけないわ、自分の身を守るために。狼さんに襲われたら勇気を持って、知恵を使って逃げ出しなさい。それと人間の男の人が恐い狼になったときは、ここを思いっきり蹴っ飛ばしてあげるといいわよ」

 そう言って股下に手を当てる。
 一部の男たちがサッとそこを押さえて屈みそうになった。

「縫い針は手のかかるお裁縫仕事をするための道具、待ち針……ピンはそれをせずに一時的に布をつなぎとめておくための道具。このお話の場合は、女の子が働き者であるのか横着者であるのかと言うことね。みんなもお母さんの言うことを聞いてちゃんとお手伝いすれば、それが役に立つときもあるわ」

 演目の原作や童話そのものには得てして訓戒を垂れる意図が含まれている。それを一々説明しないというのも一つの見せ方ではあり、それぞれの解釈に委ねることもできる。しかし舞台の規模を大きくして貰った事により、ダークな話を好まない人を納得させる必要もある。教育的であるというのは、過激な表現に目を瞑らせる最も効果的な説得方法だった。

「それでは皆さん有難う御座いました。次回もお楽しみに」

 一歩下がって再び人形たちと共にお辞儀をした。



 小道具を入れて来た箱には観客が入場時に入れたお金が入っていた。
 小銭ばかりで重たいのが難点ではあるが、盛況ぶりを示すかのごとくこの手の路上芸としては一日やってもなかなかお目にかかれない額が一時間程の公演で手に入っている。

 小銭を減らして軽くするため、食料や紅茶葉、布や糸などを買った。
 目の前に一人の少女が現れぺこりとお辞儀をする。

「アリスさん、先ほどの人形劇を拝見しました。お話してもいいでしょうか?」

「あら、ありがとう。ふふふ、手前にいた子供たちよりも恐がっていたから隅っこにいても気がついたわ」

 そのように言われて魂魄妖夢は顔を真っ赤にした。

「はううっ、恐いお話は苦手なんです。でもとっても面白いと思いました、ぜひお話ししたい事があるんです」

「それならお茶でも飲みながらにしましょう」

 そう言ってアリスは妖夢を茶屋に誘う。アリスにとっては緑茶の美味しい店、妖夢にとっては主が団子や饅頭を気に入っているお店だった。

「それで話ってなにかしら?」

「はい、物語の言わんとされていることはアリスさんの説明で少し理解できました。しかし一つ気になる事がありまして。………狼になる人間というのはどういうことなのでしょう? そこのところだけ良く分からなかったのですが」

 運ばれてきた緑茶に口をつける。

「ふふふ、そうね。確かに劇を見ていた子供たちにも、まだ難しいことだったかもしれないわね。でもまさかそこらの人間よりは長く生きている貴女にそう言われるとは思わなかったわ、うぶな子ね」

 クスクスと笑う。妖夢は何を笑われているのか良く分からないのか不思議な顔をしていた。

「あの―――」

「いえ、ごめんなさい。あの物語で言っているのは実のところ動物の狼の恐さではないの、ましてや妖怪ですらないわ。狼というのは貴女みたいな愛らしい娘をたぶらかす悪い男のこと。お婆様を殺したのは口煩い身内の排除。血肉を肉と葡萄酒と偽って飲ませたのは女の子が一人前の大人になった証として。警告を与える動物、周囲の友人や大人たちの言うことなど聞かずに自分の意のままになる女にし、服を脱がせてベッドに誘った。食べちゃうために」

 民俗学の教授の講義のようにずけずけと遠慮の無い切り口でのアリスの講釈に、聞いていた妖夢の顔が真っ赤に紅潮してゆく。

「でもまぁすぐに狼になる困った人もいるだろうけれど、紳士的な人だったら一人二人お付き合いしてもいいのではない? 貴女にはそういう人はいないの?」

「い、いませんっ!」

 妖夢をからかうのは楽しい、魔理沙と違って反応が初々しくていいと思った。

「あ、あの。お時間取らせて申し訳ありませんでした、お話下さってありがとうございます。でも、今日の劇のお話はアリスさんの仰っていた“女の子は強く賢くあるべし”ということだけ心に留め置いて、あまり難しく考えないことにします」

 しゅんとしてそう言い残して席を立つ。

「貴女の言う強く賢くというのは剣術の話?」

「もちろんです。………お恥ずかしいですけど私にはそれしかありませんので」

「それは違うわ妖夢、剣は貴女という人間、いえ半人半霊を作り上げている大きな要素かもしれない。でも絶対にそれだけということじゃない。今すでに持っているかもしれないし、そうでないとしてもいつか見つかるといいわね」

 妖夢はアリスに丁寧にお礼を言いなおして店を出た。結局注文したお団子も食べぬままアリスに譲って。



 妖夢の団子を食べお茶を飲んでゆっくりとする。あとは小道具と買った荷物を自分と人形で持って帰るだけ、次の公演までは時間があるがその話を考えるのも楽しい時間になるだろう。

「アリス・マーガトロイドさんですか?」

 今日は呼びかけられるのが多い日だ。そう思った。















 魔理沙に手紙を渡した後、彼女は方々を飛び回っているらしい。置き忘れていた盗品の本を回収しに来たっきり自分のところに来ないのは少しばかり寂しく思った。

「さてと、魔理沙に盗られた本は別としても残りは図書館に返しに行かなければいけないわね」

 借りていた本を机の上に並べて風呂敷に包む。先ほどの軽食として作ったクッキーを袋に小分けにしてバスケットに入れ、それら二つを持って家を出た。



 紅魔館の赤い外観が見えてくる。それ程急ぐことも無く湖を飛び越え、門の前に静かに降り立つ。幻想郷だって何処かへ出かけるたびに出会った相手と戦わなければいけないような不自由な世界ではない。まぁ数人そういう者に心当たりがあるし、自分もスペカ戦そのものが嫌いなわけではない。ただ本を返しに来たというのにその者のように門番を打ち倒し、図書館に穴を開けて出入りする気にはならなかった。

「こんにちは門番さん。図書館に行きたいから通して下さらない?」

「ええ、勿論ですアリスさん」

 紅魔館の門番紅美鈴は門を開けてアリスを中に通す。

「ありがとう美鈴、これは貴女へのお礼よ」

 バスケットからクッキーの一包みを取り出した。

「ありがとうございます、あぁ〜、でもこれ貰っちゃっても良いんですかねぇ? 中に通してかわりに貰うようじゃ収賄に当たるんじゃないかと」

「あら、気になるんだったらパチュリーか咲夜に渡したうえで、貴女にって言っておくけれど?」

「いやいや冗談ですよ、アリスさんからであるなら皆さん許して下さいます。ありがたく頂戴しておきます、が、帰りに私からもお礼をさせて欲しいのでまた話しかけて下さいね」

「ええ、わかったわ」

 美鈴はクッキーの包みを受け取り、アリスは屋敷に入っていく。
 アリスの後姿を見送った後門を閉め、再びその前に立つ。来客に気がついて出てきた門番隊の妖精に一時的な交代を頼んで持ち場を離れた。



「お邪魔するわ」

 図書館の扉を開いて中に入る。

「ああ、アリスさんですか。図書の返却にいらしたのですね、こちらへどうぞ」

 パチュリーの使い魔で助手でもある小悪魔はすっかり図書館司書という仕事が板についてきたようだ、魔理沙はまともな形で借りていったことがないそうだが自分以外にも何人か借りに来る者がいるのだろうか?

「いつもありがとう、これは貴女の分よ」

 図書を受け取って何かのノートらしきものに印をつける。一冊一冊を彼女のほうでもとの場所に戻してくれるらしい。実際の図書館のように分類番号の書かれたシールが貼っているわけではないので大変な作業なのかもしれない。

「わぁ、ありがとうございます♪ 私の分ということはパチュリー様の分も?」

「もちろんあるわ、彼女はどこに?」

「今はお休みになっておいでです、私からお渡ししておきましょうか?」

 今は午前の10時だ、ここの魔女は魔理沙とは対極にあるような気質の持ち主だというのに両者とも時間の感覚にルーズであることは共通しているらしい。

「はぁ、いっつも外に出ないで暗い図書館にこもっているから時間が意味を成さなくなっているのかしら? 植物でも育ててみることを薦めるわ」

「進言しておきます」

 小悪魔は苦笑交じりの愛想笑いをアリスに返す。訪ねてきてくれた来客と彼女の心遣いは嬉しいが、主はあまりそういうことをしそうにはない。アリスがアリスであるための生き様があるように、主のパチュリーには彼女なりの魔女の生き様というものがあるのだろう、健康的で活動的な生活というのはらしくなかった。

「主人が不在なら今日は別の本を借りて帰るのはやめにしておくわ、今度彼女と会ってお話した後にする。それじゃあさようなら、お菓子の感想を聞かせて頂戴ね」

 小悪魔は本の棚戻しの作業に移り、アリスは図書館を後にした。



「あら、門番の美鈴はいないのかしら?」

 図書館を出てから屋敷内を門まで徒歩で移動した。交代要員なのか門番役の妖精が門の前にいる。それは別に構わないのだが、帰りに声をかけてくれといったのに………とアリスは思った。

「美鈴さんでしたら花壇の方に向かいました、あちらです」

 そう言って妖精は紅魔館の門の外、その敷地の隅の方を指差した。この位置からは門番の詰め所らしき小さな小屋が見えたが、アリスのように空を飛んで紅魔館を訪ねるものなら皆知っている。そのそばに小さいが美しい花畑が存在していることを、それらを丁寧に管理している花を愛でる心優しき妖怪がいるということを。

「ありがとう、行ってみるわ」



 門番のはずの美鈴はそこにいた。どうやら花の手入れをしているらしい。

「あら門番さん、お誘い頂いたご本人がいなくなるなんて失礼じゃない」

「あれっ!? アリスさんお早いですね、これは申し訳ありませんでした。お礼にお渡しできそうな物を取りに来たのですが、まだ時間があると思ってつい土いじりを………」

 アリスのそれは嫌味な言い方だったが本人は微笑んでおり美鈴を責めるような言い方ではなかった。

「綺麗なお花たちね、来るとき空から見ていたけれど良く手入れがなされていると常々思っていたわ。もしかしてそのお花を頂けるのかしら?」

「その方が良かったですか? でしたら摘んでいって貰っても全然構わないのですが、お渡ししようと思っていたのはこちらなんです」

 美鈴は巾着袋を取り出してアリスに渡す。アリスがクッキーを入れてきた袋と大体同じくらいの大きさだ。
 アリスは袋を受け取って口紐を緩め、中身を覗き込んだ。小さな木のきれっぱしの様な物がコロコロと幾つも入っている。一瞬だけラスクのような菓子の類かと見紛いそうになったがすぐにその考えは打ち消された。

「漢方?」

 口を開けた袋から漂ってきたのはその強い匂い。不快な訳ではないのだが、なんとも特徴的な匂いにそのままの感想が口をついて出た。

「ええ、まぁ。ほとんど全ての漢方薬にはこれが入っていると言っても過言ではありません。飲み薬を甘く口当たりのいいものにしてくれますし、喉や胃の痛みを和らげる効果もあります。漢方は数々の生薬を配合した相乗効果で使用者の体質を改善するのが目的なのですが、これ、つまり甘草はその基礎部分として優れていると言うわけです」

「つまり漢方に於いて口当たりを良くし胃の負担を軽減する為に良く使っていたら、その甘草の香りと言うのが漢方の匂いの代名詞的になってしまった。と、そういうことね?」

 説明を入れる美鈴は楽しそうで、アリスの質問に美鈴はさらに笑顔になった。
 私が劇を披露し、それを見た人達が喜んでくれることが嬉しいように。彼女は自分の育てた花や植物を褒められたり、それについて説明すると言うことが楽しいのだろう。

「ええ、甘草は甘い草と書くのですが、その名の通り独特の甘さを持っています。科学的なことは私は良くは存じ上げないのですがどうやら砂糖とは違う成分の甘さらしく、さらには先ほど言った様な薬効もあります」

「これも貴女が栽培したのかしら?」

「はい! ここではありませんが少し離れた場所で管理しています。これは根っこの部分を乾燥させた物です。臼で挽いて粉にしてから飲んでもいいんですが、というかそれが漢方的な使い方なのですが、このままの状態でお湯に入れてお茶のようにして飲んでもいいんです。甘草湯といって単体でも楽しめるはずですよ」

「そう、それは嬉しいわ。私自身ハーブとかのお茶が好きだから、頂いたこれと色々ブレンドを試すことにする。美味しい組み合わせが見つかったら教えてあげるわね」

 そう言ってアリスは微笑み、美鈴もニコッと快活な笑みを返した。

「あらあら〜、門番が門を放ってお花畑デートかしらぁ? いいわねぇ、私も混ぜてもらいたいくらいだわ〜」

「さ、咲夜さん!?」

 いつの間にやら美鈴の背後に立っていた紅魔館の従者十六夜咲夜が口の端を引きつらせた笑顔で話す。

「あらメイドさん、先程までお屋敷の方にお邪魔していたわ。図書館の用事が済んだらすぐに帰ってきてしまったから顔を合わせなかったわね」

「いえいえこちらこそせっかくお越し頂いたのに何の持て成しも出来ませんで、申し訳次第もありませんわ」

 わたわたしている美鈴を尻目にアリスと咲夜の二人は落ち着き払ったやり取りを行っていた。

「あ、あはは〜。じゃ、じゃあっ私は門番の仕事に戻らないとっ!」

タッタッタッタッ

「んもうっ! 美鈴ったら」

 逃げるようにその場を後にした美鈴の背中にを睨む。

「彼女は彼女なりに来客である私を接客してくれたのよ、そんなに腹を立てなくてもいいじゃないの。貴女にだってあの笑顔を、いえそれ以上の顔を見せてくれる事だってあるのでしょう?」

「…………私は貴女みたいに彼女の話をちゃんと聞いたことなんかないわ。彼女のこの園芸の趣味を共有してあげれたらと思うのに………。貴女が羨ましい、以前貰ったハーブみたいに自宅で植物を育てている貴女なら美鈴との話も弾むでしょうけれど、私は忙しいしせっかく時間が空いて美鈴と会えるなら………」

 そこで口を噤んだ。

「ふ〜〜ん。なるほど、成る程。そうかそういう事なのね、ンフフフフ」

「な、何よ。気持ち悪いわねぇ」

 不気味な笑みを湛えてニヤニヤしているアリスとそれを怪訝そうな目で見る咲夜。

「つまりこういうことでしょ咲夜。貴女は美鈴の傍にいる時はもっと二人きりの話がしたい、もっと自分を見て欲しい構って欲しい、他の誰にも見せない言わない子供の様な姿と我侭を受け止めて欲しい。それなのに花ばかり弄って、もっと私を見て欲しいのに。という感じ、どうかしら? 図星?」

「妄想もそこらへんにしておかないと花壇の養分にするわよ」

 耳まで顔を真っ赤にした咲夜がナイフを手に凄む。アリスの妄想と斬って捨てるには顔に出ちゃってるよ脇が甘い、甘すぎる。そりゃあもうとらやの羊羹みたいな甘さだよ、咲夜の詰めも美咲ちゅっちゅも。

「別に一緒に土いじりする必要も無ければ、花壇に咲く愛らしいお花さんたちに嫉妬する必要も無いでしょうに。ましてや私になんて論外もいいところよ、瀟洒を気取るならもっとしっかりしなさい」

「うぐぅ; ど、どうすればいいっていうのよ?」

「ほら御覧なさい、彼女が栽培しているのは花だけじゃないみたいよ、これなんか青々とした葉っぱに綺麗な花だけれど、ジャガイモよこれ。知ってた?」

 そう言って花壇の一角を指し示す。花々が並ぶ一般的な意味での花壇の中に、大きく葉が茂った中に咲く花々の一角を。
 咲夜は葉が青く茂る種類の花を育てているのだと見た目そのままに思っていた。

「え………うそ………? みんなただのお花だと思ってたのに、そんなにご飯が足りなかったのかしら?」

 アリスは足を滑らせて後ろに倒れそうになる。つまりは ズコッ っという効果音のするあれだ。

「そ、その発想からしてNGよ。ここ紅魔館で食事を作っているのは誰なのかしら?」

「勿論私よ、だけれど私は美鈴にこんな仕事をさせるほど紅魔館の財政は逼迫してはいないし、食材だって私が厳選した最高の物で調理を………」

「そういうことではないの。私が思うにあの門番さんは野菜とか薬草とかを育てて貴女に調理したりして欲しかったのではないかしら? 自分が育てた植物を収穫して貴女が調理する。彼女の性格を考えれば館の皆に振舞うつもりだったのでしょう、『私と咲夜さんで作った云々〜』とか言って。そういうのも園芸の喜びの一つなのよ。綺麗な花を大切な人に見てもらうのも、栽培した物を調理して味わうのも。その両方の趣を満たしたいと思っても不思議は無いじゃない」

「じゃ、じゃあ美鈴がお野菜を作っているのなら」

「貴女がそれを生かせばいい。この子達を次代の種以上の意味を持つものにしてあげればいい」

 咲夜の言葉のあとを継ぐようにアリスが重ねる。

「………何で今まで気がついてあげれなかったのかしら?」

「お熱いことね、貴女の方が夢中になりすぎていたのではない? それはそれで情熱的で結構なことだけれど、一歩引いた場所から全体を俯瞰することで見えてくるものもあるわ。たぶん門番さんの方はそれが出来ていそうね、貴女の仕事や体調、生き方を尊重して気を使ってくれた事があるんじゃないかしら? 心当たりは?」

 そういえばそうだ、夜お酒をともにした時だって私の気分が悪いときはあまり話しをせずにベッドに横にして帰っていった。私の虫の居所が悪いときは自分は相槌を打つだけで一方的な私の話をずっと聞いていた。
 それを私は冷たい対応だと思った。私といて楽しくないんじゃないかって思った。本当はどうなんだろう、事実そう思っているのだろうか? それとも私の事を考えて気遣ってくれたのだろうか?

「フフッ、やっぱり他人に悩みの種を植え付けるのは楽しいわね。この場合は幸せか不幸か分からない花が咲く種でもあるのだからなおさらだわ♪」

 目線を落として考え込んだ咲夜を眺めながら言う。
 その咲夜は目の前の嫌味が洋服を着て歩いているような女に気恥ずかしさも苛立ちも通り越して呆れたような視線を向ける。

「ああ、忘れるところだったわ。これは貴女の分として持って来たの、門番さんにもあげたけれどそれでどうこう言わないでね」

 クッキーの入った包みを手渡し、この花壇の位置から飛んで帰ろうと背を向けた。

「一応礼を言っておくわ、だけれど言われっ放しというのも癪だから私も一言貴方に言わせてもらう。いつまでも超越者の視点で俯瞰するだけでは世界は変わることはない。時を止めて世界を眺めて回っても誰に対しても何の影響もない。同じ時の中を生きることではじめて互いに影響し会うことが出来る。これが私が貴方たちに比べてずっと短い生を生きてきた中で見出したことよ」

 時が止まったように体が硬直し、彼女のほうを振り返ることなくアリスは言葉だけを返す。

「貴女と彼女は喩え同じ時を生きていったとしても、ある地点で必ず岐路に立つ。貴女の方が歩みを止めてしまう場所に到達してしまう。それでもいいの?」

「私はそれでも良い。彼女がそれでも良いなら私たち二人はそれで良い。かくあれかし」

 アリスの言葉に対して僅かに恐怖を内包した、それでいて信念に満ちた力強い言葉。咲夜の言葉。

「羨ましい、私もそうあればいいのに。…………私は欲張りだから」

 アリスは咲夜の方を振り返らなかった。

 静かに空を切って飛んでゆく人形師を見送る。
 彼女の後姿が小さくなったところできびすを返し門のほうへ向かって歩く。

「ポテトグラタン、ハッシュブラウン、クロケット、ヴィシソワーズ、肉じゃが………どうしようかなぁ」

 ブツブツと呟きながら咲夜は館に戻って行った。















 外に出た用件は片付いた、クッキーも人数分配ってしまったし本は今回は借りなかった。お供の人形を数体引き連れていたが手荷物は美鈴から貰ったお返しだけ、このまま家に帰ってしまうのもつまらない。

 ふと思い出す、幻想郷にはもう一人魔法使いがいる。それも自分と同じタイプの新参が。彼女と話をしたいと思った。
 恐らくはさっきの咲夜の言葉の所為だ、気にしていない風を装っても胸のしこりのように滞留する鈍痛。自分の生き様を自分自身が疑い始めることほど苦しいことはない。

 静かに方向を転換して命蓮寺に向かう。宴会で軽く挨拶をしただけだったが天狗の新聞に載っていたので寺の場所は知っていた。



「ようこそおいで下さいました。大した持て成しもできませんがご自分の家のようにお寛ぎ下さい」

 突然の来訪にもかかわらずアリスは快く迎え入れられる。茶の間に通されて座布団を敷いてくれた。

「急に押しかけてごめんなさい」

「いえ、お気になさらずに。もうすぐうちの子がお茶を淹れてきてくれると思います。実は私も貴女とお話したいと思っていたのです。アリスさんも魔法使いとしての生を歩まれていると伺っておりましたし、それでいながら里では人形劇を盛況させ人々から慕われているとのお話が耳に入りましたから」

「私こそそんな大したものではないわ、劇だって好きでやっていることだし有償だから慈善事業でもない。そういう貴女は人と妖怪の融和を説くと言う事をなさっているそうね? 良ければお話を聞かせてもらえないかしら」

「お話、ですか。そうですね………、里の人々がお越しの時はお話できる説法が幾つもあるのですが、アリスさんはそのようなものをお望みでいらしたのではないですよね?」

 スッ と障子が開いて小さな女の子が入ってくる。左右非対称な羽の色と形をした彼女は机の上に二人分の湯飲みと和菓子ののった小皿を置いた。

「ありがとう。頂くわ」

「ご苦労様、ぬえ。ここはもういいから遊んでいらっしゃい」

「うん!」

 彼女は元気に返事をして外にかけていった。

「ねぇ、聖さん。貴女は私よりもずっと先輩の魔法使いさんみたいだから聞くわ。貴女は人間であることをやめて魔法使いになったことを後悔したことが一度でもあるかしら?」

 白蓮は両手で湯飲みを持ち上げ、ズズッっと音を立てて飲んだ。

「白蓮で結構です、アリスさん。そのご質問の前に私が魔法使いになった理由はお聞きにならないのですか?」

「貴女が信徒の方に説法を行うのと同じこと、人生の先輩の話を聞いて自分自身に役立てる。だから白蓮さん自身の理由は必要ない、好奇心で聞いているのではないから。………これは聞き手としては話し手の気分を害する言い方ね、気に障ったら謝るわ」

「その必要はありません、私もあまり人に話したいことではなかったものですから。そうですね、私は……ない……と、思います。ええ、無いです。魔法使いになったことを後悔したことはありません」

「そう」

 アリスは両手で持った湯飲みを覗き込み煎茶の香りを一杯に味わう。目を瞑って口元に持っていき、ズズーーッっと音を立てて飲んだ。
 湯飲み越しにも伝わる茶の熱さは唇から入る空気と一緒に撹拌され、冷まされながら喉元を流れ落ちた。

「後悔なさっているのですか?」

「………それがわからないの。だから誰かの話を聞いたら分かるかもしれないと思った」

「お力になれなくて申し訳ありません」

 竹串できんつばを半分に切る。小さなナイフのような串を半分になったそれに突き立てて口へ運んだ。
 手を口に当てながら咀嚼する。薄い甘みながらもしっとりした小豆の風味が生きていた。

「もう一つだけ良いかしら? もし大事な相手と、共に歩んで行きたい相手と歩いていた道が途中からそれぞれの方向に分かれてしまっていたら。相手の道の方に貴女がついて行く? それとも貴女の道に相手について来てもらう?」

 今度は白蓮がアリスと同じような所作でゆっくりと茶菓子を口にした。
 茶と菓子、そして人によっては煙草や酒かもしれないが、それらをゆっくりと嗜む時間が思索の時間をつくる。

「…………もう私の道など無いのです。そのために私は魔法使いになった。――いえ、それは美化しすぎですね、私は私の欲望の為に人の道を捨てた。だから大勢の人や妖怪と共に歩ける道を作りながら、そこを歩く他に生きる術が無いのです。私は歩きながら道を広げ、一緒に歩いてくれる仲間を増やしながら進んでいくしか」

「…………でも後悔はしていない」

 疑問形じゃなかった。小さい声で語尾を下げて噛み締めるように。

「先程貴女は私の話は参考にするだけと仰いました、是非そうしてください。私と貴女は同じ“方法”を過去選択したというだけで、全く違う生き方をしています。貴女には道がある、悩めるだけの道が。悩みが無いというのは決して良い生き方だとは思えません」

 アリスは残りの半分のきんつばを口に入れてお茶を飲んだ。白蓮も同じようにした。

「ありがとう白蓮さん、お茶もお菓子も美味しかったわ」

 座布団の上で丁寧に礼をした。
 立ち上がって部屋を出て行く。

「貴女がどちらの道を歩もうとも、それが貴女自身が選んだ道であるなら後悔などしないはずです。なぜなら歩いているうちにそれが貴女の道になるのですから」

 アリスの背中に向けて言った。変化は小さかったが心なしか頷いたように見えた。















「よっ! 頼んでたやつはあがってるかな?」

 ノックもなしに人ん家の扉を開けたと思えばこれだ。

「服の補修なら済んでいるわよ、他にも薬品跡の染み抜きもね」

「悪ィ悪ィ、一番綺麗なのを気合入れて洗濯したんだがそれでも所々ほつれてたからな。助かったよ」

 まるで新品のような綺麗な服を胸に抱きしめてクルクルと回る。
 職人にとって自分の仕事の成果を人に喜ばれること以上の喜びはない。アリスは微笑んだ。

「明日でしょう、準備は済んでいるの?」

 ピタッと止まってアリスの方を向く。服を大事そうに胸に抱えたままポケットから小さな袋を取り出して見せた。

「紅魔館の門番のやつに土産をもらってな、いい香りのする葉っぱだ。こいつと一緒にクローゼットに入れておけば移り香がして良いって言われてな」

「それ、漢方の匂いじゃないわよね? クンクン………あら、普通のポプリかしら。こういうのもやっていたとは、侮れないわね門番さん」

「私も和洋どちらともいけるが、中華っぽいかんじは合わないんじゃないかと思ったけどなかなかどうして」

「中華とは限らないんじゃない? あら? ものが何であれこの場合中国産になるのかしら?」

 哀れなり紅美鈴。

「どうだ、これで完璧だろう? これでどこからどう見ても私は一人前の大人の女だ、惚れるなよ♪」

「足りない、圧倒的に足りない。貴女に足りない物、それは! 思想、理念、頭脳、気品、計画性、女らしさ、貞淑さ、そして何よりも―――優雅さが足りない!! と、まぁそれは冗談だけれどもそんな一朝一夕に変われるものじゃないわ。無理に演技なんかしても余計に怪しくなるだけだし、素の貴女でいた方が弟さんと妹さんにも良いわよ。家族になって何度も会うことになるなら尚更ね」

「へいへい。とにかく服あんがと、それと今日は家の大掃除をしてて飯用意するの忘れたんだわ。晩飯食べさせておくれよぉ〜」

 捨てられた子犬のような下からの視線でねだる。余談だが[ねだる]は漢字で“強請る”と書き、[ゆする]とも[もがる(言いがかりをつけて金品をたかる)]とも読める。日本語に漢字を当てはめた人はこの辺良く分かってらっしゃる。

「呆れた、まだ時間あるじゃない。今からだっていくらでも準備できるしどっかに食べに行ったっていいのに」

「いいじゃんか、アリスの料理が食べたいんだから」

 結局アリスは魔理沙の分も夕食を作ることになった。



 とはいえまだ4時前、6時に夕食にするにしても時間はある。カレーやシチューではないらしくこの時間からはまだ準備は始めないらしい。

♪〜 ♪〜〜

 丁度4時になって仕掛け時計が2時間おきの音楽を鳴らす。魔理沙も度々聞いているが毎回同じ曲らしい。悲しい感じの曲調であまり好みではなかった。

「彼女に木綿のシャツを作ってと伝えてください パセリ、セージ、ローズマリーにタイム
 縫い目も針の跡もないように そうしたら彼女は私の本当の恋人になるでしょう」

 いきなり語りだしたアリスに魔理沙はビックリした。音楽が終わった後だったし、あわせて歌っているというより詩を朗読しているようなリズムのない滑らかさだ。

「??? なんだ、そういう歌なのか? だけど木綿って布団とかに入れる綿だろう? あとはタオルとかハンカチとか、シャツは聞いたことがないな。私の裁縫の腕前はお前ほどじゃないが、アリスだって縫い目も針の跡もないように縫うなんて出来るのか?」

「彼に1エーカーの土地を見つけるように言って下さい パセリ、セージ、ローズマリーにタイム
 海水と波打ち際の間の土地を そうしたら彼は私の本当の恋人になるでしょう」

「また無茶苦茶な、1エーカーってどんだけだよ」

「約4000平方メートル、およそ1200坪のこと」

「私が言うのもなんだが………、そいつは碌な男女じゃないな」

 お前が言うな。

「解釈は色々あるわ。別れた男女がよりを戻すときに、互いに不可能な事を要求し合って相手の愛を試すとか。戦地、というより死地に赴く兵士が愛する女性に別れ際に唄って、こういった事をしてくれたらきっと無事に帰ってくるよ、っていう意味だったりね」

「そうか、そういえばアリスって色んな意味に取れる詩や物語を考察するのが好きだったっけか。それじゃあ私からも一つ、斬新な解釈をプレゼントしてやろう。ずばり! 晩飯はタイムで香り付けをしたハンバーグ、横にはソーセージとパセリが添えられ食後のお茶はローズマリーティーで決まりだ」

 自信満々のどや顔でアリスを見つめる。

「そうね、そうしましょうか」

「あれ?」

 突っ込み待ちだったのか。
 拍子抜けた魔理沙はアリスがその通りの食事の準備を始めたので慌てて手伝い始めた。
 それとセージは豚肉の臭み取りに使われていてソーセージの語源の説もあるので微妙に間違ってはいない。





 いい食事だった。流石はアリスといったところか。

「それじゃあそろそろお暇するよ」

「ええ、気をつけて帰ってね。明日に響かないように今日は早く寝るのよ」

「お母ちゃんかよ。手紙も書かなきゃいけないし、けど忙しいほうが何も考えなくて済むってもんだ」

「ねぇ、魔理沙。今度二人で飲みましょうね。料理とお酒、用意しておくから」

 二人は抱擁を交わした。















 目が覚める。日の光の入りづらい森の中の家だったがアリスはいつもどおり6時頃に起床した。

 洗面所で就寝前につけたカカオバターとオリーブオイルで自作した肌クリームを洗い落とす。別につけたままでも何も問題はないのだが、呼んでもいないのにやってきたいつもの白黒に「今日のアリスはチョコレートの香りがするな、食べてもいい?」などと聞いてきて頬を舐め上げられたことがあった。ベースに使ったカカオバターの残りを思う存分食べさせてあげたら胃もたれを起こしたのか腹を抱えたまま辛そうに帰っていったが。

 顔を純白の綺麗なタオルで拭いた後、髪を整えて軽いコロンをつける。今日は別に誰とも会う約束はしていない。里の園芸屋が栽培・収穫したカモミールを漬け込んだ化粧水を顔につけて伸ばす。気持ちの落ち着く香りだ。



「頂きます」

 外の世界、洋の東西は違えども多くの場所で食事前の作法、礼というものは似てくる。相手が食べ物であったり生産者であったり或いは神であったりするのだが、それはアーキタイプと呼ばれる人類の根幹の類似性の所為なのか。魔法使いとしての生を生きている彼女にとっては何れだろうか?

 朝食は軽めにし、十時頃に軽食をはさむのが日課のアリスは二日ほど前から作り置いてあるビスコッティを口にする。
 余談だが実はクッキーとビスケットに違いはない。英語圏に於いて米国がクッキーと呼ぶものと英国がビスケットと呼ぶものは同一の物と言っていいのだ。ちなみに米国のビスケットは英国ではスコーンと呼ばれ、日本で言うところのサクサクのクッキーをフランスではサブレと呼んだりとややこしい。
 材料によって区分することも出来るが、とりあえず外の世界で欧州と呼ばれる地域の生活様式が肌に合い自らに取り込んでいるアリスは棒状に固焼きにしたそれをビスコッティと呼んでいた。二度焼きを意味するイタリア語がそのまま名前になっているように、それは保存食としての性格があった。

 彼女に対して理解の無い記述をするならば、それは作り置きの乾パンもどきを口に含んで紅茶で押し流すというもっさりとした朝食だ。もしこれがアリスではなく例えば魔理沙のような女の子がしていたらずぼらな朝食に見えたかもしれない。外で言うところのカロリーメイトとかバランスパワーとかソイジョイとかを口に放り込んで済ませる朝ごはん………ちょっぴり寂しい。

 今更だが彼女は自らの思うように生きているのでそれを他者がどう見るかは気にしてはいない。
 この姿を見てどのように評するかは見た者に委ねられ、それは自分には関係ないことだと考えている。



 軽い朝食を摂ってから朝の庭いじりをする。もっとも、ハーブガーデンは土の湿り気の多い魔法の森ではほとんど水やりの必要が無い子らで構成されている。適当に見て周り、匂いを嗅ぎ、摘み取る。通気性の良い籠に入れて家に戻り、玄関に置いておく。葉の乾燥と来客に対する芳香剤とを兼ねて。

 数冊の本を手に机に戻る。先日再び赴いた紅魔館で今度こそそこにいた主から借りてきた本を数冊積み上げ、一番上の本を手に取り読み始めた。
 午前中のティータイムは十時ごろ、それまでの一時間近くはこうしてゆっくり静かに読書が出来る。普段ここを訪れる客人はこの時間まだ寝ている公算が高いし、午前に来るとしても正確なアリスのタイムスケジュールに合わせて茶と菓子をたかりにティータイムに合わせて来る。
 もっとも、今日彼女にはそれ以上に大事な用事があるはずだが。



コン、コン

 数ページを読み進めていたアリスの耳にノックの音が入る。
 はて、どんな客人だろう? 心当たりが無い。

「今行くわ」

 本を閉じて椅子から立ち上がる。玄関の扉を開けた。

「あら、何か御用かしら?」

「簡単なお願いがあって来たの、時間は取らせないから協力してくれない?」

 アリスは相手を中に招き入れる。玄関から戻るとき、入り口の横にあった籠を持っていった。机の上の本を片した後、彼女の椅子を用意して卓に着いてもらう。

「お願い事って言うのはお茶を淹れながらでも聞ける事なのかしら?」

 相手は席に着いてキョトンとした顔を返す。彼女にしてみれば別に玄関先でも良かったのだが、招き入れてくれてお茶をくれるというのならそれでもいいか、と思った。

「喜んで頂くわ、それでは話し始めても良いかしら?」

「どうぞ」

 アリスは立ち上がりアルミニウム製と見られる缶の蓋を開けた。茶葉というには大きい塊の……乾燥した木の皮あるいは植物の根……らしきものが入っていた。それをスプーンで掬い出してはティーポットに落としてゆく。次に玄関から持ってきた籠の中のものを入れた。

「私とコイン投げの勝負をして欲しいの、このコインを賭けて」

 左ポケットから一枚のコインを取り出す。金色に輝く硬貨だった。

「そう。貴女がそのコインを賭けて勝負するとして、私は何を賭ければいいの?」

 アリスが淹れようとしているお茶も気になったが、彼女が背を向けて準備をしてくれている間に部屋を見回した。本がいっぱい入った本棚、一人分ではなく数人分ずつ用意されているらしい食器棚、自分が着いている机の他にも部屋の隅に小さな机があった。その上にはミシンや裁縫のセットらしきもの。編み物をするための尖った棒針もある、竹か何かで出来ているのだろうそれは用途を考えても軽くてあまり丈夫そうじゃない。

「こう考えて頂戴、このコインは誰のものでもない宙ぶらりんでここにある。私が勝ったら私のものに、貴女が勝ったら貴女のものになるコインだって」

「コインはそれ一枚?」

 湯を沸かしてティーポットに注ぎいれる。甘い香りが漂ってきた。砂糖を入れたわけでもないだろうに。

「いいえ、何枚かあるわ。でも貴女と勝負するのは一回だけ、賭けるのも一枚だけよ」

「それは何のコイン? 煌びやかだけれど流通しているようには見えないわ、初めて見るのだもの。それにいくら純金で作られているのだとしても、額面の10万円というのはいささか金銭的価値としては無茶がありそうね」

 ぐるっと部屋を見渡して最後に腰を捻って自分の背後を見やる。数体の人形が行儀良く腰掛けて座る衣装箪笥、いや客間に自分の下着や服の入った箪笥があるとは思えない。おそらく人形用の衣装が入っているのだろう、箪笥に腰掛ける人形たちはみな可愛らしい服を着ていた。槍や剣を持った人形は無い、それらも箪笥の中にしまってあるのだろうか。

「なんでも外の世界の記念硬貨とか言うらしいわ。お目出度い行事とか記念日とか、そういう日にだけ販売するとか。額面は販売価格だけれどその金額として普通に使うのは無理みたい。ただその時だけ売るものだし、後々になって欲しい人が高く買うことはあるかもね」

「そう、それで勝負の方法は?」

 槍も剣もなかったが別のはあった、盾だ。人形たちは樹脂やプラスチックなどの有機物やシリコンのように軽くて質感に温かみのありそうな素材で作られているようだったがその盾は金属製だ。小さいが重く硬そうだった。

「コインを使ってコイン投げよ。コインを投げて裏表を当てる。貴女が決めていいわ、あなたが言ったのが当たっていたらこのコインは貴女のもの、外れていたら私のもの」

「お茶が入ったわ」

 捻っていた腰を戻し椅子に姿勢良く座り直す。出されたお茶の香りが強く感じられる。

「漢方?」

「やっぱりそう思う?」

 クスクスっとアリスは口に小さく手を当てて笑った。
 ソーサーに乗せられたカップはワンポイントの花柄の彫り物が自分の方に向いている。取っ手は右側に、右手でカップを持ち上げ浮き上がる花の模様を見ながら口に含んだ。

「…………やっぱり漢方の味がする。ずっと昔に飲んだ薬の味。全然口にしていなかったのに何で覚えているのかしら。それと舌先に残るこの甘さは……?」

「これは甘草あるいはリコリスと呼ばれている植物の根を乾燥させたもの、それとローズマリーをブレンドして湯出したものなの。お茶の淹れ方とさして変わらないから便宜上お茶にしましょうって誘ったけれど、ローズマリーが無ければ甘草湯っていう薬湯ね、喉の痛み、咳、胃痛に効果があるそうよ。甘草の名前の通り甘みを感じるでしょう? 砂糖の50倍の甘さを感じるグリチルリチンっていう成分が含まれているらしいわ。普通は甘さって舌の奥や喉で感じるはずなのに、この生薬の甘さは舌の先でそれを感じる。最初は違和感があるけれどそれも含めて楽しめると思わない?」

 美鈴にもらった後で個人的に調べた。彼女より詳しくなってしまったかもしれない。

「へぇ〜、そうね。楽しいかもしれないわ」

 アリスもカップに口をつける。いったん口に含んでからゆっくりと飲み下した、まるでワインを嗜むように。

「コインは私が投げて貴女が当てる、それでいいかしら?」

 聞く。

「ええ、どうぞ」

 アリスは答えた。

 取り出した後机の上に置いておいたコインを再び手にする。

「この鳳凰と瑞雲が描かれている面が表、反対の菊と桐と唐草が描かれている面が裏ね」

 指の上に乗せて弾いた。

ピーーン  カンッ パシィッ

 回転しながら高く跳ね上がったコインは机の上に落ちてバウンドした直後に左手によって机の上に押さえつけられた。

 アリスは目を瞑ってカップを啜っていた。

「表か裏か、Choose ― heads or tails?」

「表」

 目を瞑ったまま答える。彼女は舞い上がった硬貨も、落ちて音を立てた机も、それを押さえ込んでいる手も見なかった。

「その選択には何か意味が?」

「物事全てに意味があるとは限らないわ。でももしあえて相手の意思を無視して考察するのならば。1、アリス・マーガトロイドは人形遣いである。2、彼女は異変解決に友人の霧雨魔理沙と組む事がある。ということがヒントになるかもしれないわね。例えば人形劇だけれど、主役は人形であって人形師は裏方と言えるわ。そして異変解決時は魔理沙が主役で彼女はサポートに回ることが多い。無論彼女自身はそのどちらに於いても自分無しでは成し得ない事であると自負しているでしょうし、実際にそうでしょうね」

 ゆっくりと目を開いてまるで人事のように、というより学生が文学や芸術について“この時の作者の心情を述べよ”的な問題を解くかのように語る。
 現代を生きている人ならインタビューする事も出来るだろうが、死後だと考察とか解釈しか出来ないではないか。またまた余談だがとあるギャグ漫画で対象が連載作家であるなら『締め切り延びるか出版社が爆発しないかなぁ』で大体正解するのではないかと考察されていた。勉強になる。

「なのに表なの?」

「不思議? アリス自身は裏方が好きなのかもしれないわ。手元に置いている人形たちが劇で主役を張るように、行動派の友人を立ててあげるように、自分の傍にいる相手には表を向いて輝いていて欲しいのかも」

 机から手を離した。

「表ね」

「表だわ」

 アリスは硬貨を摘み上げると手のひらの中に入れて優しく握った。

「大切にするわ」

「ううん、貴女の好きなようにして構わないわ。売ってもいいし誰かにあげてもいい、捨ててもいいのそれはもう貴女のものだから。お茶、美味しかったわ。じゃあね」

 彼女はカップのお茶を丁寧に飲み干した後、アリス邸を後にした。















 読んでいた本から目を離し、視線を上に上げて壁に掛かった時計を見る。
 彼女は家族と会えただろうか。

 カップを手に取り冷めてしまったハーブ入り甘草湯を口に含む。甘草はローズマリー独特の渋みを緩和させ、ローズマリーの香りは甘草の漢方臭と融合してより上質なものへと昇華していた。冷えたそれはよりいっそうの甘みを舌先にもたらし、アリスは自分の舌が痺れてしまうような感覚を覚える。
 期せずして良いブレンドが見つかった。あの門番にも教えよう。

 空になったカップをソーサーに置いた。

 本を読んでいた間静かに寄り添って座っていた上海と蓬莱をそれぞれ左右の手で掴み、向かい合わせに立たせて一人芝居を始めた。

 上海人形を動かす。

『人であることを捨てて私と同じ時を生きて欲しいと彼女に伝えて下さい
 パセリ、セージ、ローズマリーにタイム
 私の為に少しだけ信念を曲げて欲しい
 そうしたら彼女は私の本当の恋人になるでしょう』

 蓬莱人形を動かす。

『魔法使いであることを捨てて私と同じ時を生きて欲しいと彼女に伝えて下さい
 パセリ、セージ、ローズマリーにタイム
 私の為に限りある人生を共に生きて欲しい
 そうしたら彼女は私の本当の恋人になるでしょう』

 二つの人形を動かす。

『出来ないことだというのなら、私はこう言いましょう
 パセリ、セージ、ローズマリーにタイム
 ああ、せめてやってみせると言って下さい
 でなければ決して恋人になることはないでしょう』

 互いを向き合わせて動かした二つの人形。最後の台詞とともに両者を反転させ、アリスの手を離れた彼女達はふわふわとゆっくり飛びながら距離をあける。上海はアリスから見て右側にある食器棚の上に、蓬莱は左側の本棚の上にそれぞれ座った。



 壁に掛かった仕掛け時計が開き、二人の男女の人形が踊るように互いの周りを一回転してから引っ込む。

 もの悲しいような旋律が流れ、十二時を知らせてくれた。
あとがき

 前回ご質問下さった方にお答えせずに申し訳ありません。勝手ながら今回の作品は完結するまでこの場での解説は入れないことにします。
 ですが続き物を続き物ですっていうくらい答えるべきでした。よろしければ最後までお付き合い下さい。
マジックフレークス
作品情報
作品集:
21
投稿日時:
2010/11/06 13:48:37
更新日時:
2010/11/24 00:54:07
分類
血と暴力の土地
すべての美しい女
アリス
1. NutsIn先任曹長 ■2010/11/06 23:58:56
スカボローフェアの歌詞とストーリーが、アリスの生き方と物悲しい雰囲気を醸し出して、
少ししんみりしました。

運命のコイントスで前回の話を思い出し緊張しましたが、今回は助かりましたね。
一体、『彼女』は何のためにコインの裏表で人の生き死にを決めるような真似をしているのか?
外の世界の物や知識を持つ『彼女』は何で…?
2. 名無し ■2010/11/07 01:39:12
ということはまだまだコイン投げは続くということですね
衒学的な台詞回しがアリスっぽくて好きです
3. 名無し ■2010/11/07 03:22:57
おお、今回は生き残った!
コインの当たり外れで生死分岐するんだろうか
生前の魔理沙が見れて嬉しいやら切ないやら
このシリーズはほんと主役以外のキャラも立ってるなー
前回に引き続き主役の人生観も出てておもしろかった
4. 名無し ■2010/11/07 09:48:34
いやあ、今回も面白かった
コイントスが的中すれば生き残れるのかな?

どうでもいいけど、幻想郷で10万円って凄まじい高額貨幣だなあ
こっちじゃ金の高騰でついに額面超えしちゃったってのに
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